JP4931088B2 - 走査型プローブ顕微鏡およびアクティブダンピング駆動制御装置 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡およびアクティブダンピング駆動制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、プローブと試料との相対的な走査を行って試料を観察する走査型プローブ顕微鏡に関し、特に、スキャナ等の制御対象に対してアクティブダンピングを行う制御技術に関する。
従来、典型的な走査型プローブ顕微鏡(SPM)としては、走査型トンネル顕微鏡(STM)および原子間力顕微鏡(AFM)が知られている。これらのうち、AFMは、例えば生体分子のナノ機能動態を観察するための技術として期待されている。
従来提案されている典型的なAFMは、プローブを自由端に持つカンチレバーと、試料ステージを走査するスキャナとを備え、カンチレバーの変位を検知して、プローブとスキャナの間隔を保つようにスキャナを制御する。
AFMでは、走査速度の向上による高速化が重要な課題の一つである。特に、上述したように生体分子の機能動態を観察する場合には短時間での観察が必要であり、そのために走査速度を上げることが望まれる。
AFMの走査速度を向上する上で、最も性能向上が難しいデバイスは、試料ステージを走査するスキャナーである。従来の一般的なスキャナーは、ピエゾ素子という圧電変換素子で構成されている。カンチレバーがミクロな大きさを持つのに対して、スキャナーはマクロな大きさをもつため、スキャナの共振周波数を上げることは難しい。そのため、望ましくない振動を起こさないためには、スキャナの共振周波数よりも低い周波数で走査を行わなければならない。このように、AFMの高速化にとってはスキャナがボトルネックになっている。
ところで、制御対象の状況(変位、速度、加速度等)に応じてダンピングを働かせるアクティブダンピングという制御技術が広く使われている。アクティブダンピングを使うと、制御対象の共振を除去あるいは軽減することができる。
アクティブダンピングの一種として、アクティブQ値制御法が知られている。アクティブQ値制御法は、制御対象から検出される振動信号を微分し、正負の符号を反転させたものを駆動信号に加えることにより、みかけ上粘性抵抗を増大させてダンピングを行う。しかし、スキャナのように、複数の共振成分が並列に入った共振系では、この通常のアクティブダンピング法の効果は十分でなく、共振成分がかなり残る。
従来のアクティブダンピング法についてより詳細に説明する。ここでは、まず、アクティブQ値制御法の原理について説明する。共振する最も単純な系の伝達関数G(s)は、2次ローパスフィルターで表現され、すなわち、下式(1)で表される。
Figure 0004931088
この系に対して、図1のブロックダイアグラムに示す操作を行うと、Q値を減少させることができる。Q値(Quality Factor)とは、共振スペクトルの鋭さを表す量である。共振系にかかる粘性抵抗が小さいほどQ値は大きくなる。逆に、粘性抵抗が大きいとQ値は小さくなる。図1の構成は、伝達関数G(s)の出力信号Uoutを微分し、かつ、正負の符号を反転し(−D(s))、さらにゲインを付与し、入力信号(駆動信号)Uinに加算する。
図1において、微分操作D(s)は、s/ω0である。図1の入出力関係を示す伝達関数は、以下の通りである。
Figure 0004931088
上式に示されるように、Q値制御により、Q値がQ/(1+gQ)へと減少し、共振が抑えられる。例えばゲインgを(2−1/Q)にすると、共振は完全になくなる。
上述したのは、伝達関数G(s)が単純な場合の例である。しかし、実際のAFMにおいて、スキャナは複数の共振成分が並列に入った共振系であり、上記のように簡単に共振を抑えることはできない。例えば、2つの共振成分が並列に入った共振系では、伝達関数は下記のように表される。
Figure 0004931088
ここで、A1とA2はそれぞれの成分の大きさの割合である。仮に、図2に示すように、それぞれの成分に対して別々にQ値制御ができれば、それぞれの成分の共振を完全に抑えることは可能である(図2は、2つの共振成分を個別にQ値制御できる場合のブロック図である)。しかし、実際の共振系の入力はひとつであり、また出力もひとつであるので、個別のQ値制御を施すことは不可能である。すなわち、図2の構成のように入力を2つに分けたり、出力を足したりすることはできない。
そのため、実際には、図3に示すようなQ値制御を行わざるを得ない。図3では、2つの共振成分の和に対してQ値制御が行われる。そのため、下記例のように、Q値制御は不完全になる。
図4は、2つの共振成分をもつ共振系の伝達関数(左)と、図3の構成によるQ値制御を施して得られる伝達関数(右)を示している。上側のグラフは、角周波数とゲインの関係を示し、下側のグラフは、角周波数と位相の関係を示している。この例では、元の共振系が、ω1=2π×100kHzとω2=2π×200kHzの共振成分をもっている(図4(左))。
図4に示すように、Q値制御の結果、ゲインに関してはピークが小さくなり共振は少なくなっているが、まだ共振は完全には消えていない。また、位相の谷はまったく消えずに残ることが分かる。したがって、2つの共振周波数のほぼ中央の周波数をもった入力信号に対して、特に、位相が大きく遅れてしまう。
AFMにおけるQ値制御は、例えば、特開2005−190228号公報に開示されている。同文献のAFMは、スキャナの変位を検出し、検出信号に基づいたフィードバック処理によりQ値制御を行っている(図17)。
また、特開2005−190228号公報は、スキャナの等価回路を用いたQ値制御技術も提案している(図19)。等価回路は、スキャナの伝達関数と等価の伝達関数を有している。等価回路の出力がスキャナの変位として処理されて、Q値制御が行われる。等価回路としては2次ローパスフィルタが例示されている。
以上に従来のアクティブダンピング技術について説明した。上述にて例を用いて説明したように、従来のアクティブQ値制御のようなアクティブダンピングでは、AFMのスキャナの振動を十分に抑制することは容易でない。AFMの高速化のためには、より効果的な振動低減技術の提供が望まれる。
また、アクティブダンピングは基本的には共振ピークを下げる技術である。AFMの高速化のためには、仮に共振点を高くするなどして使用可能な周波数帯域を伸ばせれば、さらに有利である。しかし、このような制御は従来一般には不可能であった。
以上に、AFMのスキャナを取り上げて本発明の背景について説明した。しかし、同様の課題は、AFMのスキャナ以外の駆動制御対象にも存在し得る。例えば、AFMのスキャナ以外の構成要素でも、振動制御技術は重要である。また、AFM以外のSPMにおいても振動制御技術は重要である。さらには、SPMに限られず、駆動制御される多様な制御対象においても、同様の要求が存在する。
本発明は、上記背景の下でなされたものである。本発明の一の目的は、駆動制御の制御対象の振動を効果的に低減できる走査型プローブ顕微鏡(SPM)を提供することにある。
また、本発明の一の目的は、制御対象に対してアクティブダンピングを効果的に行えるアクティブダンピング駆動制御技術を提供することにある。
本発明は、プローブと試料との相対的な走査を行って試料を観察する走査型プローブ顕微鏡であって、試料およびプローブの少なくとも一方を駆動するための物理的構成である制御対象と、制御対象に駆動信号を供給して制御対象を制御する駆動制御部と、を備え、駆動制御部は、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給するように構成されており、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。
この構成により、上述のような調整関数の処理を経た駆動信号が制御対象に供給される。駆動信号は、模擬伝達関数の出力の振動が低減するように調整される。これにより、実際の制御対象の振動も効果的に低減できる。
また、駆動制御部は、駆動信号に調整関数の処理を施すことにより、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の駆動信号に模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させてよい。
また、駆動制御部は、駆動信号に対して調整関数の処理を施す駆動信号調整部を有し、駆動信号調整部は、模擬伝達関数の処理を駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、駆動信号と逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、ゲイン付与部の出力を駆動信号に付加する付加処理部と、を有してよい。
本発明の別の態様は、制御対象に駆動信号を供給すると共に、制御対象に対してアクティブダンピング制御を行うアクティブダンピング駆動制御装置であって、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給するように構成されており、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。
本発明の別の態様は、制御対象に駆動信号を供給して制御対象の駆動を制御する駆動制御装置に設けられ、駆動信号を制御対象に供給したときの制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数に従った駆動動作を、実伝達関数と異なる目標伝達関数に従った動作へと変換するための伝達関数変換装置であって、実伝達関数を模擬する模擬伝達関数の処理を駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、駆動信号と逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、ゲイン付与部の出力を駆動信号に付加する付加処理部と、を有する。
本発明の別の態様は、プローブと試料との相対的な走査を行って試料を観察する走査型プローブ顕微鏡にて、試料およびプローブの少なくとも一方を駆動するための物理的構成である制御対象に駆動信号を供給して制御対象を制御する、走査型プローブ顕微鏡の駆動制御方法であって、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給し、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。
本発明の別の態様は、制御対象に駆動信号を供給して、制御対象に対してアクティブダンピング制御を行うアクティブダンピング駆動制御方法であって、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給し、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。
本発明の別の態様は、制御対象に駆動信号を供給して制御対象の駆動を制御する駆動制御装置にて、駆動信号を制御対象に供給したときの制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数に従った駆動動作を、実伝達関数と異なる目標伝達関数に従った動作へと変換するための伝達関数変換方法であって、実伝達関数を模擬する模擬伝達関数の処理を駆動信号に対して施し、目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を模擬伝達関数の出力に対して施し、駆動信号と逆目標伝達関数の出力との差分を算出し、差分処理部の出力に対してゲインを付与し、ゲインが付与された信号を駆動信号に付加する。
本発明は、上述のような調整関数の処理を経た駆動信号が制御対象に供給することにより、駆動制御の制御対象の振動を効果的に低減できる走査型プローブ顕微鏡(SPM)を提供できる。また、本発明は、上述のような調整関数を用いることで、制御対象に対してアクティブダンピングを効果的に行えるアクティブダンピング駆動制御技術を提供できる。
以下に説明するように、本発明には他の態様が存在する。したがって、この発明の開示は、本発明の一部の態様の提供を意図しており、ここで記述され請求される発明の範囲を制限することは意図していない。
図1は、従来のアクティブQ値制御の構成を示す図である。 図2は、並列な2つの共振成分の制御を個別に行えたと仮定したときのアクティブQ値制御の構成を示す図である。 図3は、並列な2つの共振成分を持つ共振系に適用可能な実際のアクティブQ値制御の構成を示す図である。 図4は、2つの共振成分をもつ共振系の伝達関数(左)と、図3の構成によるQ値制御を施して得られる伝達関数(右)を示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係るAFMの構成を示す図である。 図6は、Z走査制御部の構成を示す図である。 図7は、駆動信号調整部の構成を示す図である。 図8は、逆目標伝達関数K(s)を適用することにより得られる伝達関数を示す図である。 図9は、アクティブダンピングを1回作用させた結果(左側)と、2回作用させた結果(右側)を示す図である。 図10は、アクティブダンピング制御を複数回行う場合の回路構成を示す図である。 図11は、アクティブダンピング制御を複数回行う場合の回路構成であって、共通のG(s)を設けた構成を示す図である。 図12Aは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す第1の図である。 図12Bは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す、図12Aに続く第2の図である。 図13Aは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す、図12Bに続く第3の図である。 図13Bは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す、図13Aに続く第4の図である。 図14Aは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す、図13Bに続く第5の図である。 図14Bは、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる場合の処理結果を示す、図14Aに続く第6の図である。 図15は、K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御を組み合わせる構成を示す図である。 図16は、制御対象がカンチレバーである場合に本発明の処理を施した結果を示す図である。 図17は、制御対象がカンチレバーである場合に本発明の処理を施した結果を示す図である。
以下に本発明の詳細な説明を述べる。ただし、以下の詳細な説明と添付の図面は発明を限定するものではない。代わりに、発明の範囲は添付の請求の範囲により規定される。
本実施の形態では、本発明が走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種である原子間力顕微鏡(AFM)に適用される。
図5は、本実施の形態に係るAFMの構成を示している。まず、AFM1の全体的な構成と動作を説明する。
図5に示すように、AFM1は、全体構成としては、試料を保持する試料ステージ3と、試料に近接して配置されるカンチレバー5とを備える。また、AFM1は、試料ステージ3をXYZ方向に走査する構成として、スキャナ7および走査制御回路9を有する。また、AFM1は、カンチレバー5を保持して共振周波数付近の周波数で振動させる構成として、ホルダ11、励振用ピエゾ素子13および発振器15を有する。また、AFM1は、カンチレバー5の変位を検知するために、レーザユニット17およびセンサ19を有する。また、AFM1は、カンチレバー5の変位信号に基づいてレバー振幅を一定に保つフィードバック走査のために振幅検出回路21およびフィードバック回路23を有する。さらに、AFM1は、装置全体を制御するコンピュータ25と、コンピュータ25から供給される観察画像を表示するモニタ27とを有する。
試料ステージ3は、下面に試料を保持するように構成されている。試料ステージ3はスキャナ7に取り付けられており、スキャナ7は、アクチュエータとしてピエゾ素子(圧電素子)を有しており、試料ステージ3をX、Y、Z方向に動かして、試料をカンチレバー5に対して相対的に走査する。XY方向は、水平面上で直交する方向である。Z方向は鉛直方向であり、試料の凹凸方向(高さ方向)である。
スキャナ7の駆動は、走査制御回路9によって制御される。走査制御回路9は、スキャナ7の駆動制御部に相当し、駆動信号をスキャナ7に供給する。スキャナ7では、駆動信号に従ってピエゾ素子の駆動回路が動作し、スキャナ7が駆動される。
走査制御回路9は、XY走査制御部31とZ走査制御部33を有する。XY走査制御部31はXY方向の駆動を制御し、Z走査制御部33はスキャナ7をZ方向に駆動する。Z走査制御部33は、後述するようにセンサ変位に基づくフィードバック走査を行う。
カンチレバー5は、窒化シリコン製であり、自由端にプローブ(探針)を有している。カンチレバー5はホルダ11によって保持されており、ホルダ11は励振用ピエゾ素子13(励振用圧電素子)と共に設けられている。励振用ピエゾ素子13には、発振器15から、駆動信号としての励振信号が供給される。励振信号の波形は典型的には正弦波である。励振用ピエゾ素子13では、励振信号に従って駆動回路が動作し、これにより励振用ピエゾ素子13と共に、ホルダ11およびカンチレバー5が振動する。
センサ19は、レーザユニット17と共に、光てこ式の変位センサを構成している。レーザユニット17は、レーザ光をカンチレバー5に照射する。レーザ光はカンチレバー5で反射してセンサ19に届く。センサ19は、フォトダイオードで構成されており、カンチレバー5の変位を表す信号を出力する。図では、センサに関連したレンズ等の光学系の構成は省略されている。
振幅検出回路21は、センサ19から入力される変位信号を処理してカンチレバー5の振幅を求める。検出された振幅値は、フィードバック回路23へ出力される。また、フィードバック回路23には、コンピュータ25から振幅目標値が入力される。フィードバック回路23は、検出された振幅値から振幅目標値を減算して偏差信号を生成する減算器と、偏差信号を増幅するPID回路とを備えており、これら構成によってフィードバック信号が生成される。
フィードバック信号は走査制御回路9に供給されて、フィードバック走査に利用される。フィードバック走査では、カンチレバー5の振幅を一定に保つように、Z走査制御部33がZ走査を行う。また、フィードバック信号はコンピュータ25に供給されて、試料画像の生成処理に使用される。
コンピュータ25は、AFM1の全体を制御している。コンピュータ25はユーザインターフェース機能も提供し、ユーザの各種の指示がコンピュータ25に入力され、コンピュータ25はユーザの入力に従ってAFM1を制御する。また、コンピュータ25は試料表面の画像を生成してモニタ27に出力する。
次に、AFM1の全体的な動作を説明する。走査制御回路9にコンピュータ25からXY方向の走査の制御信号が供給される。走査制御回路9は制御信号に従ってスキャナ7の駆動を制御し、スキャナ7にXY方向の走査を行わせる。駆動制御では、駆動信号がスキャナ7の駆動回路に供給される。また、コンピュータ25は発振器15へ励振強度(振幅)の指令値を供給する。発振器15は、コンピュータ25の制御下で励振信号を生成して、励振信号を励振用ピエゾ素子13へ供給する。励振信号に従って駆動回路が励振用ピエゾ素子13を駆動し、カンチレバー5が共振周波数近傍の周波数で振動する。このようにして、カンチレバー5が振動した状態で、カンチレバー5と試料が相対的にXY方向に走査される。
XY走査中、カンチレバー5の変位がセンサ19により検出され、振幅検出回路21によりカンチレバー5の振幅が求められる。そして、フィードバック回路23が、コンピュータ25から供給される振幅目標値に基づき、検出された振幅値と振幅目標値の差分に応じたフィードバック信号を生成する。フィードバック信号が走査制御回路9に供給され、走査制御回路9のZ走査制御部33は、フィードバック信号に従って、検出振幅値と振幅目標値が一致するようにスキャナ7の駆動を制御する。このフィードバック制御により、カンチレバー5と試料の距離が一定に保たれる。
このようにして、カンチレバー5と試料の距離を一定に保つZ走査を行いながら、XY走査が行われる。Z走査のフィードバック信号は、フィードバック回路23からコンピュータ25にも供給される。フィードバック信号は、試料のZ方向の高さに対応している。また、試料上のXY方向の位置は、コンピュータ25が発生して走査制御回路9に供給するXY走査の制御信号により特定される。コンピュータ25は、XY走査の制御データと、入力されるフィードバック信号とに基づいて、試料表面の画像を生成してモニタ27に表示する。3次元画像が好適に生成され、表示される。
以上に、本実施の形態におけるAFM1の全体的な構成と動作について説明した。次に、本発明の特徴的な構成について説明する。本発明は、従来のアクティブQ値制御のようなフィードバック制御と異なり、下記に説明するように制御対象への駆動信号に調整関数の処理を施してアクティブダンピングを実現する技術である。以下の例では、制御対象がスキャナ7であり、より詳細には、スキャナ7とそれに取り付けられた試料ステージ3である。そして、本発明の駆動制御の構成は、走査制御回路9のZ走査制御部33に設けられて、Z走査制御に適用される。
図6は、本実施の形態におけるZ走査制御部33の構成を示している。上述したように、この例では、Z走査制御部33が本発明の駆動制御部に相当する構成である。Z走査制御部33は、駆動信号生成部35と駆動信号調整部37とを有している。
駆動信号生成部35は、制御対象に対して要求する駆動動作に応じた駆動波形を持った駆動信号を生成する構成である。本実施の形態の場合、駆動信号はZ走査の信号である。駆動信号生成部35は、フィードバック回路23からフィードバック信号を入力され、フィードバック信号に基づいてZ走査の駆動信号を生成する。
駆動信号調整部37は、駆動信号生成部35と接続されており、駆動信号生成部35から駆動信号を入力される。駆動信号調整部37は、駆動信号に対して調整関数の処理を施す構成であり、調整関数は駆動信号を変換する関数である。このようにして、本実施の形態では、駆動信号が、調整関数の処理を経てから、制御対象に供給される。
駆動信号調整部37において、調整関数は、後述にて詳細に説明するように、模擬伝達関数を利用する。模擬伝達関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する関数である。調整関数は、駆動信号が入力されたときの模擬伝達関数の出力の振動が低減するように、駆動信号を調整する関数である。
より詳細には、本実施の形態では、模擬伝達関数と別の目標伝達関数が設定される。調整関数は、下記に例を用いて説明するように、模擬伝達関数の出力を、目標伝達関数の出力に近似させるような駆動信号調整を可能にする関数である。
図6では、駆動信号調整部37での調整前の駆動信号(駆動信号生成部35で生成された駆動信号)が、「原駆動信号」として表されている。これに対して、駆動信号調整部37から出力される調整後の駆動信号が、「調整駆動信号」として表されている。これらの表現は、調整前後の駆動信号を区別するために使われている。
図7は、駆動信号調整部37の構成を制御対象R(s)と共に示す図である。図7の回路構成(R(s)以外)は、全体として、駆動信号に調整関数の処理を施す構成として機能する。すなわち、図7の全体が、一つの調整関数の機能を果たす。
図7において、入力Uinは、駆動信号調整部37に入力される駆動信号であり、すなわち、前段の駆動信号生成部35で生成された駆動信号であり、図6の原駆動信号に相当する。
また、調整信号U1は、駆動信号調整部37で調整された駆動信号であり、図6の調整駆動信号に相当する。調整信号U1は制御対象R(s)に供給される。制御対象R(s)は、制御対象の実際の系であり、本実施の形態ではスキャナ(より正確にはスキャナと試料ステージ)の系である。
図7において、模擬伝達関数処理部G(s)は、模擬伝達関数の処理を駆動信号に対して施す回路構成である。この回路構成を、以下、単にG(s)または模擬伝達関数G(s)という。G(s)は、R(s)を模擬する関数である。G(s)がR(s)と同等であれば、G(s)の出力Uoutは、実際の系の動作に等しくなる。
模擬伝達関数処理部G(s)の後段には、逆目標伝達関数処理部K(s)が接続されている。逆目標伝達関数処理部K(s)は、逆目標伝達関数の処理をG(s)の出力に対して施す構成である。以下、この回路構成を、単にK(s)または逆目標伝達関数K(s)という。逆目標伝達関数は目標伝達関数の逆数に相当する関数であり、目標伝達関数は、模擬伝達関数とは別の制御目標になる関数である。
K(s)は減算器41に接続されている。減算器41は、調整信号U1とK(s)の出力との差分を算出する構成であり、本発明の差分処理部に相当する。本実施の形態では、調整信号U1から、K(s)の出力が減算される。
減算器41にはさらに増幅器43が接続されており、増幅器43は減算器41の出力にゲインgを付与する構成であり、本発明のゲイン付与部に相当する。増幅器43の出力は加算器45に供給され、入力Uinに加算される。ただし、増幅器43と加算器45の間には、遅れ伝達関数処理部(遅れ処理部)L(s)が配置されている。以下、この構成を単にL(s)または遅れ伝達関数L(s)と呼ぶ。L(s)は、図7のダイアグラムを組むのに必要なアンプの帯域に相当する。図7の回路を組むにはアンプが必要であり、実際の回路系ではアンプの遅れが存在し(アンプはローパスフィルタに相当する)、このアンプの遅れがL(s)で表されている。
増幅器43の出力は、L(s)を経て加算器45に供給される。加算器45は、増幅器43からL(s)を経由して入力された信号を、入力Uinに加算する構成であり、本発明の付加処理部に相当する。
上記の回路構成によれば、調整信号U1がG(s)およびK(s)で処理される。そして、減算器41で調整信号U1とK(s)の出力の差分が求められる。この差分にゲインgが増幅器43で付与される。そして、増幅器43の出力が、L(s)を経て、加算器45で入力Uinに加算され、こうして入力Uinが調整されて調整信号U1になる。
図7において、入出力の伝達関数M(s)は、下記のように表される。M(s)は、Uout/Uinである。
Figure 0004931088
ここで、g=1、L(s)=1とすると、この伝達関数M(s)は、1/K(s)と等しくなる。もちろん、L(s)=1にすることはできないが、入力Uinに対するG(s)の応答Uoutが、K(s)の逆伝達関数の応答に似てくる。
K(s)は目標伝達関数の逆数である。したがって、UoutがK(s)の逆伝達関数の応答に近似するということは、Uoutが目標伝達関数の応答に近似するということである。そして、G(s)は、制御対象R(s)を模擬した伝達関数なので、制御対象の実際の応答も目標伝達関数の応答に近似する。
このように、図7の駆動信号調整部37の構成は、K(s)を所望の目標伝達関数の逆数に設定することにより、G(s)およびR(s)の出力を、本来の応答と異ならせて、目標伝達関数の応答に近似させることができる。したがって、適当な目標関数を設定し、その逆数をK(s)に組み込めば、それだけで、制御対象の応答を所望の目標伝達関数の応答に近似させることができる。
ここで、アクティブダンピングには、アクティブQ値制御の他に、逆伝達関数位相補償法がある。アクティブQ値制御は、背景技術として説明した通りである。一方、逆伝達関数位相補償法は、制御対象の伝達関数の逆数を駆動信号に掛けて、ダンピングを行う技術である。本発明の方法は、大きく分類すると逆伝達関数位相補償法の一種ということができるが、従来見られない上述の構成によってダンピングを効果的に行える。
次に、模擬伝達関数G(s)および逆目標伝達関数K(s)の例を挙げると共に、本発明の振動低減効果についてさらに説明する。
本実施の形態では、制御対象が、AFM1のスキャナ7であり、より詳細にはZスキャナと試料ステージの組み合わせである。この場合に、模擬伝達関数G(s)が、2つの共振成分が並列に入った共振系であったとする。このG(s)は、前出の式(3)に示される通りであり、また、前出の図4の左側に示される通りである。なお、G(s)を作成する場合、制御対象の伝達関数が測定され、測定結果に合うようにG(s)が作られる。伝達関数が予め理論的に分かっていれば、そのような既知の伝達関数が回路で実現されてよい。
上記のように模擬伝達関数が2つの共振成分をもつ場合に、目標伝達関数は、1次ローパスフィルタに設定することが好適である。そして、目標伝達関数が1次ローパスフィルタである場合、逆目標伝達関数K(s)(目標伝達関数の逆数)は、(1+微分)の形の伝達関数になる。
図8は、本発明の制御を行った結果を示す図である。図4に示すG(s)に対して、上記のK(s)が適用されている。G(s)は、ω1=2π×100kHzとω2=2π×200kHzという2つの共振成分をもっている。この例では、K(s)に含まれる微分操作のゲイン1となる周波数を200kHzとし、g=0.92、L(s)の帯域を8MHzとした。この条件で、図示のように、閉ループは発振していない。
図8は、本実施の形態の制御によって下記の3つの特徴的な変化が起こっていることを示している。
(a)もともとゲインのピークがあった周波数領域からは、ほとんどピークが消えていること。
(b)位相の谷がほぼ完全に消えていること。
(c)位相が90度遅れる角周波数が約3500rad/sまで伸びていること(周波数にして、557kHz程度まで伸びている)。ここで、位相が90度遅れるのは共振点である。したがって、本実施の形態により、共振点が大きくなっており、使用可能な帯域が伸びている。
上記のうち、(a)の特性は、アクティブダンピングの本来の効果である。これに対して、(b)(c)の特性は、通常のアクティブダンピング法では起こらない効果である。特に、(c)の特性に見られるように、帯域が高周波まで伸びることは、極めて有効な効果である。これにより、共振を消去できるばかりでなく、制御対象である共振系を本来よりも高い周波数で駆動できる。このように、本発明の構成は、通常のアクティブダンピングの効果に加えて、使用可能な帯域の拡大といった新しい別の効果も提供できる。
上記のように、周波数帯域が伸びることは大変重要な意味をもつ。この重要性について、例を挙げて説明する。本実施の形態では、AFM1のスキャナ7に本発明が適用されており、スキャナ7は圧電素子(ピエゾ素子)で構成されている。電圧を印加すると変位する圧電素子は、ナノメータ精度の変位制御が可能なため、色々な分野で利用されている。圧電素子の共振周波数はその長さでほぼ一意的に決まってしまう。共振を利用する場合を除くと、共振は邪魔であり、共振周波数以下でしか圧電素子を駆動することができない。圧電素子を高速に駆動しようとすると、共振が発生して制御が不可能になる。ところが、本発明のアクティブ制御法を用いると、圧電素子という力学系を変更することなく、本来の共振周波数以上の周波数にて、共振を起こさずに圧電素子を駆動できる。つまり、力学系・機械系の限界を突破することが可能になる。
なお、ここでは、2次の共振成分がある制御対象を考えて本発明の利点を説明した。しかし、このような共振成分がない1次の制御対象でも、本発明を提供すれば、同様にして使用可能な周波数域を伸ばすことができ、良好な制御を行える。
以上に、本実施の形態におけるアクティブダンピング制御の効果について説明した。次に、本実施の形態の各種の応用例について説明する。
「アクティブダンピングを複数回行う構成」
上述の実施の形態は、本発明の新しいアクティブダンピング法を、共振系に1回だけ作用させているが、この応用例は、本発明のアクティブダンピング法を共振系に複数回作用させる。
図9は、アクティブダンピングを1回作用させた結果(左側)と、2回作用させた結果(右側)を示している。1回目では、微分のゲイン1となる周波数は600kHz、g=0.6、L(s)=8MHzとした。2回目では、微分のゲイン1となる周波数は900kHz、g=0.4、L(s)=8MHzとした。
図9の例では、位相が90度遅れる角周波数が、1回目の作用で約5000rad/sにまで伸びており(周波数にして、796kHz程度まで伸びており)、2回目の作用で更に伸びている。このように、複数回の作用によって、共振を起こさずに制御対象を使用可能な周波数領域をさらに広げられる。
図10は、アクティブダンピング制御を複数回行う場合の構成を示している。図10に示されるように、アクティブダンピング制御を複数回行うためには、複数の駆動信号調整部37が順次配列される。図10の例では、3つの駆動信号調整部37が設けられ、本発明のアクティブダンピング制御が3回行われる。各々の駆動信号調整部37は、図7の構成を有している。ただし、K(s)やgは異なって設定される。また、L(s)は図から省略されている。
図11は、図10の構成のさらなる応用例である。この構成では、複数の駆動信号調整部37が、共通する一つのG(s)を有している。この共通のG(s)には、最後の駆動信号調整部37を経た駆動信号が入力される。そして、共通G(s)の出力は、複数の駆動信号調整部37にそれぞれ設けられたK(s)に供給される。図11の構成によっても、図10と同様の効果が得られる。そして、G(s)を共通化することで、回路構成を単純化できる。実際問題としてG(s)を組む作業は多大な労力を要するので、図11の構成は有利である。
「K(s)の除去(K(s)=1の場合)」
図7の構成において、K(s)を取り去ってしまったとする。これは、K(s)=1の場合に相当する。G(s)の出力がそのまま減算器に供給される。この場合、Uoutは、伝達関数H(s)=1に近くなる。したがって、調整信号U1は、G(s)の逆伝達関数に近くなる。すなわち、この場合には、図7の構成により、任意の伝達関数G(s)に対する近似逆伝達関数を得ることができる。これは、伝達関数G(s)の近似逆伝達関数を使ってアクティブダンピングを行うことを可能としており、いわゆる逆伝達位相補償法に相当する。逆伝達位相補償法は色々な分野で利用されているが、従来の逆伝達位相補償法では、複雑な伝達関数に対する逆伝達関数を回路で実現することが難しかった。これに対して、本発明は、逆伝達関数に近似した関数の回路を比較的容易に実現できる。
なお、K(s)=1の場合の構成も、駆動信号を調整するものであり、この点で本発明の範囲に含まれる。
また、この応用例のK(s)=1の制御も、複数回行われてよい。1つの回路(図7でK(s)=1の回路)の出力にG(s)を繋げたものを新たに模擬系として、それに対する逆伝達関数を作ることを1回以上繰り返す。この繰り返しにより、徐々に理想系に近づけていくことができる。この場合の回路構成は、図10および図11に示した回路に従って構成されてよい(ただし、K(s)は外される)。
「K(s)=1との組合せ」および「Q値制御との組合せ」
(K(s)=(1+微分)、K(s)=1、Q値制御の組合せ)
この応用例は、K(s)=(1+微分)のアクティブダンピングと、K(s)=1のアクティブダンピングと、従来のアクティブQ値制御を組み合わせて、より大きな効果を実現する。
ここでは、制御対象の系は、以下のような3つの共振系が並列に入った構成であるとする。この系は、実際のZスキャナに対応している。
Figure 0004931088
ω1=2π×174kHz、ω2=2π×288kHz、ω3=2π×380kHz、Q1=18.22、Q2=20、Q3=20、a=0.58、b=0.02、c=0.4
図12A〜図14Bは、上記の系に対して、K(s)=(1+微分)の操作を3回行い、次にK(s)=1の操作を1回行い、最後に通常のアクティブQ値制御を行った結果を示している。
図12Aは、Zスキャナの元々の伝達関数であり、上述のように3つの共振成分をもっている。図12Bは、K(s)=(1+微分)の操作を1回行った結果である。図13Aは、K(s)=(1+微分)の操作を2回行った結果であり、図13Bは、K(s)=(1+微分)の操作を3回行った結果である。3回の操作で、共振ピークがかなり小さくなっている。
続いて、図14Aは、さらにK(s)=1の操作を行った結果である。図14Aでは、共振ピークが1つになっている。共振ピークの位置は、元の位置と比べてずっと高周波側に変わっている。
図14Aのように共振ピークが1つであれば、アクティブQ値制御を好適に適用できる。そこで、図14BではアクティブQ値制御が行われている。アクティブQ値制御により、共振ピークが好適に除去されている。
図14Bでは、横軸および縦軸の範囲が拡大されている。他の図と同じ周波数範囲では、ゲインが1に近くなっており、つまり、制御対象の伝達関数の逆伝達関数が概ね実現されており、共振系の影響が好適に除去されている。
このようにして、本発明のアクティブダンピング制御法を用いて、複数のピークをもつような複雑な伝達関数で表される系の出力を滑らかにするとともに、その物理系で制約されている周波数帯域を大幅に伸ばすことができる。当然のことながら、操作される対象には物理的な加工を施しているわけではない。代わりに、本発明は、その物理系を駆動する信号を加工している。ただし、この加工により周波数帯域は伸びるが、駆動電源の周波数帯域が十分でなければそれにより帯域の延長は頭打ちになる。
図15は、図12A〜図14Bの処理に対応する回路構成を示している。図15において、駆動信号調整部51、53、55は、図11の3つの駆動信号調整部37に相当する構成である。図11と同様に、共通のG(s)が利用されている。
図15は、最初の駆動信号調整部55のさらに前に、駆動信号追加調整部57を有する。駆動信号追加調整部57は、K(s)を持たず、G(s)の出力を直接減算器に入力する。駆動信号追加調整部57は、K(s)=1の操作を行う回路構成であり、K(s)=1の駆動信号調整部ともいえる。また、駆動信号追加調整部57も、共通G(s)を利用しており、共通G(s)の出力が減算器へと入力される。
さらに、図15は、アクティブQ値制御部59を有する。アクティブQ値制御部59は、微分回路61、増幅器63および加算器65を有する。微分回路61には、G(s)の出力が供給される。微分回路61には、実際の制御対象R(s)の変位信号が入力されてもよい。微分回路61の出力信号が、増幅器63で増幅されて、ゲインg5を付与され、それから加算器65に入力される。加算器65では、増幅器63からの信号が駆動信号に加算され、これによりQ値制御が行われる。
「適用範囲の拡大」
本発明のアクティブダンピング技術は、上記のAFMのZ走査に限られず、他の用途にも利用可能であり、例えば、X走査およびY走査にも適用できる。本発明のアクティブダンピング技術は、さらに広く、圧電素子(ピエゾ素子)に限らず、さまざまな力学系・機械系のアクティブダンピングに利用することが可能で、広範な応用が期待される。そして、AFMまたはSPMに限られず、他の駆動制御対象に適用可能である。
また、本発明は、使用周波数域を高域化できる特性を利用して、アクティブダンピングの目的以外にも色々な使い方ができる。上記の例ではAFMのスキャナに本発明が適用されたが、AFMのカンチレバーにも本発明を適用可能である。カンチレバーへの適用例では以下の利点が得られる。
カンチレバーの共振周波数が高ければ高いほど走査速度を上げることが可能になる。しかし、通常はばね定数も大きくなる。ばね定数を小さいまま保って共振周波数を上げるためには、カンチレバーを小さく薄くする必要があり、加工が難しくなる。これに対して、本発明の方法を用いると、カンチレバーはそのままでも、もとの共振周波数よりも数倍高い周波数でカンチレバーを駆動(或いは励振)することが可能になる。
図16の例は、カンチレバーの伝達関数と(左側)、本発明の処理を施した結果(右側)を示している。この例では、カンチレバーの元々の伝達関数においては、共振角周波数が600krad/sである。本発明の操作では、微分のゲイン1となる周波数は230kHz、g=0.92、L(s)=8MHzとした。その結果、図示のように、共振ピークが無くなり、共振周波数よりも高い周波数でカンチレバーを駆動できる。
あるいは、共振のピークを残すこともできる。この場合、微分のゲインが1となる周波数を高くすればよく、これにより、図17の結果が得られる。図17では、共振角周波数が600krad/sである。本発明の操作では、微分のゲイン1となる周波数は450kHz、g=0.92、L(s)=8MHzとした。
カンチレバーに関しては、元々共振ピークが1つであり、単にダンピングを行うのであれば、従来のアクティブQ値制御が好適に適用される。しかし、アクティブQ値制御では、使用可能な周波数域はあまり変わらない。これに対して、本発明を適用すると、使用可能な周波数域を広げることができる。
以上に本発明の走査型プローブ顕微鏡について説明した。上述したように、本発明によれば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、試料およびプローブの少なくとも一方を駆動するための物理的構成である制御対象と、制御対象に駆動信号を供給して制御対象を制御する駆動制御部とを備える。駆動制御部は上記の例では、Z操作制御回路である。駆動制御部は、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給するように構成されており、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。
この構成により、上述のような調整関数の処理を経た駆動信号が制御対象に供給される。駆動信号は、模擬伝達関数の出力の振動が低減するように調整される。これにより、実際の制御対象の振動も効果的に低減できる。また、SPMには複数の種類があり、AFMにも複数の種類があり、上述にて例示したAFMと異なる構成のAFMも提案されているが、本発明はいずれの種類のSPMまたはAFMにも適用されてよいことはもちろんである。
また、本発明において、駆動制御部は、駆動信号に調整関数の処理を施すことにより、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の駆動信号に模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させてよい。
この構成により、駆動信号に対する制御対象の応答を、目標伝達関数の応答に近づけることができる。目標伝達関数を適切に設定することで、良好な振動低減効果が得られる。
また、駆動制御部は、駆動信号に対して調整関数の処理を施す駆動信号調整部を有してよい。駆動信号調整部は、上述したように、模擬伝達関数の処理を駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、駆動信号と逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、ゲイン付与部の出力を駆動信号に付加する付加処理部とを有してよい。
この構成により、駆動信号に対する制御対象の応答を、目標伝達関数の応答に近づけることができ、高い振動低減効果が得られる。
また、本発明によれば、上述したように、共振ピークを下げるアクティブダンピングの効果だけでなく、使用可能周波数域を伸ばす効果も得ることができる。なお、本発明を実施する場合、アクティブダンピングの効果だけを得るように本発明が実施されてもよく、周波数域を伸ばす効果だけを得るように本発明が実施されてもよく、両方の効果を得るように本発明が実施されてもよい。いずれの態様も本発明の範囲に含まれる。例えば、共振ピークがない1次系の制御対象でも、使用可能な周波数帯域を伸ばすために本発明を好適に適用できる。
また、駆動制御部は、制御対象に対して要求する駆動動作に応じた駆動波形を持った駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、駆動信号調整部は、駆動信号生成部により生成された駆動信号に対して調整関数の処理を施してよい。この構成により、駆動信号を調整関数で好適に調整して制御対象に供給できる。
また、駆動制御部は、図10に示したように、順次配列された複数の駆動信号調整部を備え、各々の駆動信号調整部が、模擬伝達関数処理部、逆目標伝達関数処理部、差分処理部、ゲイン付与部および付加処理部を有するように構成されてよい。この構成により、本発明の制御を複数回行って、さらに高い振動低減効果を得られる。
また、駆動制御部は、図11に例示したように、複数の駆動信号調整部が共通する一の模擬伝達関数処理部を有し、共通する一の模擬伝達関数処理部の出力が、複数の駆動信号調整部にそれぞれ設けられた複数の逆目標伝達関数処理部に供給されてよい。これにより、模擬伝達関数を共通化して、構成を簡素化できる。
また、駆動制御部は、図15に例示したように、逆目標伝達関数処理部を持たず、模擬伝達関数処理部の出力を差分処理部に供給するように構成された駆動信号追加調整部をさらに含んでよい。駆動信号追加調整部は、図15に符号57で示されており、K(s)=1の制御を行う構成に相当する。K(s)=1の制御を組み合わせることで、伝達関数を適当に操作できる。
また、駆動制御部は、図15に示したように、さらにQ値制御部を有してよく、Q値制御部は、制御対象または模擬伝達関数処理部の出力の微分にQ値制御ゲインを付与して駆動信号に加算してよい。これにより、Q値制御部も組み合わせて、さらに適当な伝達関数を得ることができる。
また、目標伝達関数として1次ローパスフィルタが想定されてよく、逆目標伝達関数が1+微分に設定されてよい。逆目標伝達関数を1+微分に設定することで、目標伝達関数が望ましい1次ローパスフィルタに近似し、これにより、アクティブダンピング等の効果が上手く得られる。
また、制御対象は、プローブと試料とを相対的に走査するスキャナを含み、駆動制御部は、スキャナの走査を制御してよい。これにより、スキャナの共振振動を低減することができる。
また、制御対象は、プローブが設けられるカンチレバーの励振機構を含み、駆動制御部はカンチレバーの励振を制御してよい。これにより、カンチレバーの共振振動を低減することができる。
本発明の別の観点は、アクティブダンピング駆動制御装置である。この装置は、制御対象に駆動信号を供給すると共に、制御対象に対してアクティブダンピング制御を行う。この制御装置は、駆動信号を変換する調整関数の処理を経た駆動信号を制御対象に供給するように構成されており、調整関数は、制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の駆動信号に模擬伝達関数の処理を施すと模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように駆動信号を調整する関数である。この観点では、本発明はSPMやそのスキャナ等に限定されず、その他の制御対象に適用でき、アクティブダンピングや、上述した周波数域を伸ばす制御を好適に行える。また、この観点でも、上述の各種の付加的特徴が設けられてよい。
また、本発明の別の観点は、伝達関数変換装置である。この装置は、制御対象に駆動信号を供給して制御対象の駆動を制御する駆動制御装置に設けられ、駆動信号を制御対象に供給したときの制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数に従った駆動動作を、実伝達関数と異なる目標伝達関数に従った動作へと変換する。この装置は、上述の模擬伝達関数処理部、逆目標伝達関数処理部、差分処理部、ゲイン付与部および付加処理部を有している。ここでも、本発明はSPMやそのスキャナ等に限定されず、その他の制御対象に適用でき、アクティブダンピングや、上述した周波数域を伸ばす制御を好適に行える。また、この観点でも、上述の各種の付加的特徴が設けられてよい。
また、本発明は上記の装置の態様に限定されない。本発明は、方法等の他の態様で表現されてもよい。
また、上述の実施の形態では、図7等の特徴的な構成が主としてアナログ回路で構成されている。同様の回路は、デジタル回路で実現されてもよい。また、本発明の特徴的な構成は、プログラムを演算装置が実行することによって、ソフトウエアにて実現されてもよい。この観点では、本発明の方法をコンピュータのような演算装置に実行させるプログラムも本発明の一態様に含まれる。
以上に現時点で考えられる本発明の好適な実施の形態を説明したが、本実施の形態に対して多様な変形が可能なことが理解され、そして、本発明の真実の精神と範囲内にあるそのようなすべての変形を添付の請求の範囲が含むことが意図されている。
本発明にかかる走査型プローブ顕微鏡は、生体分子などの観察を可能にするための技術として有用である。

Claims (14)

  1. プローブと試料との相対的な走査を行って前記試料を観察する走査型プローブ顕微鏡であって、
    前記試料および前記プローブの少なくとも一方を駆動するための物理的構成である制御対象と、
    前記制御対象に駆動信号を供給して前記制御対象を制御する駆動制御部と、
    を備え、
    前記駆動制御部は、前記駆動信号を変換する調整関数の処理を経た前記駆動信号を前記制御対象に供給するように構成されており、前記調整関数は、前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施すと前記模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように前記駆動信号を調整する関数であり、
    前記駆動制御部は、前記駆動信号に前記調整関数の処理を施すことにより、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の前記駆動信号に前記模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させ、
    前記駆動制御部は、前記駆動信号に対して前記調整関数の処理を施す駆動信号調整部を有し、
    前記駆動信号調整部は、
    前記模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、
    前記差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、
    前記ゲイン付与部の出力を前記駆動信号に付加する付加処理部と、
    を有することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 前記制御対象に対して要求する駆動動作に応じた駆動波形を持った駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、前記駆動信号調整部は、前記駆動信号生成部により生成された前記駆動信号に対して前記調整関数の処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 前記駆動制御部は、順次配列された複数の前記駆動信号調整部を備え、各々の前記駆動信号調整部が、前記模擬伝達関数処理部、前記逆目標伝達関数処理部、前記差分処理部、前記ゲイン付与部および前記付加処理部を有することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  4. 前記複数の駆動信号調整部が共通する一の前記模擬伝達関数処理部を有し、前記共通する一の模擬伝達関数処理部の出力が、前記複数の駆動信号調整部にそれぞれ設けられた複数の逆目標伝達関数処理部に供給されることを特徴とする請求項3に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  5. 前記駆動制御部は、前記逆目標伝達関数処理部を持たず、前記模擬伝達関数処理部の出力を前記差分処理部に供給するように構成された駆動信号追加調整部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 前記駆動制御部は、前記制御対象または前記模擬伝達関数処理部の出力の微分にQ値制御ゲインを付与して前記駆動信号に加算するQ値制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  7. 前記目標伝達関数として1次ローパスフィルタが想定されており、前記逆目標伝達関数が1+微分に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  8. 前記制御対象は、前記プローブと前記試料とを相対的に走査するスキャナを含み、前記駆動制御部は、前記スキャナの走査を制御することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  9. 前記制御対象は、前記プローブが設けられるカンチレバーの励振機構を含み、前記駆動制御部は前記カンチレバーの励振を制御することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  10. 制御対象に駆動信号を供給すると共に、前記制御対象に対してアクティブダンピング制御を行うアクティブダンピング駆動制御装置であって、
    前記駆動信号を変換する調整関数の処理を経た前記駆動信号を前記制御対象に供給するように構成されており、前記調整関数は、前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施すと前記模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように前記駆動信号を調整する関数であり、
    前記アクティブダンピング駆動制御装置は、前記駆動信号に前記調整関数の処理を施すことにより、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の前記駆動信号に前記模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させる駆動信号調整部を有し、
    前記駆動信号調整部は、
    前記模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、
    前記差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、
    前記ゲイン付与部の出力を前記駆動信号に付加する付加処理部と、
    を有することを特徴とするアクティブダンピング駆動制御装置。
  11. 制御対象に駆動信号を供給して前記制御対象の駆動を制御する駆動制御装置に設けられ、前記駆動信号を前記制御対象に供給したときの前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数に従った駆動動作を、前記実伝達関数と異なる目標伝達関数に従った動作へと変換するための伝達関数変換装置であって、
    前記実伝達関数を模擬する模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理部と、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理部と、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理部と、
    前記差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与部と、
    前記ゲイン付与部の出力を前記駆動信号に付加する付加処理部と、
    を有することを特徴とする伝達関数変換装置。
  12. プローブと試料との相対的な走査を行って前記試料を観察する走査型プローブ顕微鏡にて、前記試料および前記プローブの少なくとも一方を駆動するための物理的構成である制御対象に駆動信号を供給して前記制御対象を制御する、走査型プローブ顕微鏡の駆動制御方法であって、
    前記駆動信号を変換する調整関数の処理を経た前記駆動信号を前記制御対象に供給し、前記調整関数は、前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施すと前記模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように前記駆動信号を調整する関数であり、
    前記駆動信号に前記調整関数の処理を施すことにより、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の前記駆動信号に前記模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させ、
    前記走査型プローブ顕微鏡の駆動制御方法は、
    前記模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理ステップと、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理ステップと、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理ステップと、
    前記差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与ステップと、
    前記ゲイン付与部の出力を前記駆動信号に付加する付加処理ステップと、
    を含むことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の駆動制御方法。
  13. 制御対象に駆動信号を供給して、前記制御対象に対してアクティブダンピング制御を行うアクティブダンピング駆動制御方法であって、
    前記駆動信号を変換する調整関数の処理を経た前記駆動信号を前記制御対象に供給し、前記調整関数は、前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数を模擬する模擬伝達関数を利用し、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施すと前記模擬伝達関数の出力信号の振動が低減するように前記駆動信号を調整する関数であり、
    前記駆動信号に前記調整関数の処理を施すことにより、調整後の前記駆動信号に前記模擬伝達関数の処理を施したときの出力を、調整前の前記駆動信号に前記模擬伝達関数と異なる目標伝達関数を施したときの出力に近似させ、
    前記アクティブダンピング駆動制御方法は、
    前記模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施す模擬伝達関数処理ステップと、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数処理部の出力に対して施す逆目標伝達関数処理ステップと、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数処理部の出力との差分を算出する差分処理ステップと、
    前記差分処理部の出力に対してゲインを付与するゲイン付与ステップと、
    前記ゲイン付与部の出力を前記駆動信号に付加する付加処理ステップと、
    を含むことを特徴とするアクティブダンピング駆動制御方法。
  14. 制御対象に駆動信号を供給して前記制御対象の駆動を制御する駆動制御装置にて、前記駆動信号を前記制御対象に供給したときの前記制御対象の実際の周波数特性を表す実伝達関数に従った駆動動作を、前記実伝達関数と異なる目標伝達関数に従った動作へと変換するための伝達関数変換方法であって、
    前記実伝達関数を模擬する模擬伝達関数の処理を前記駆動信号に対して施し、
    前記目標伝達関数の逆数に相当する逆目標伝達関数の処理を前記模擬伝達関数の出力に対して施し、
    前記駆動信号と前記逆目標伝達関数の出力との差分を算出し、
    前記差分に対してゲインを付与し、
    前記ゲインが付与された信号を前記駆動信号に付加することを特徴とする伝達関数変換方法。
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