JP4930886B2 - 糖鎖分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、キャピラリー電気泳動法による糖鎖の高感度分析法に関する。
細胞に存在する複合糖鎖は極微量で多彩な生理機能を有する重要な生体構成成分であることから、生体に存在する複合糖鎖の極微量構造解析法の早急な確立は極めて重要である。
糖鎖構造解析の分野では、糖鎖をピリジルアミノ(PA)化などの芳香族アミノ蛍光標識誘導体として、蛍光検出器を用いて検出することが広く行われている(例えば非特許文献1参照)。分離分析装置としては、蛍光検出器を有する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やキャピラリー電気泳動(CE)などが通常使用されている。しかし、HPLCによる分析では、HPLCの吸着性により微量試料の高感度分析は困難である。そのため、複合糖鎖の分析法としてはCEが好適である。特にレーザー励起蛍光検出器(LIF)と直結したCE-LIFは、CEが有する低吸着性故、現在のところ極微量糖鎖の検出を可能にする唯一の方法であると考えられる(例えば非特許文献2および3参照)。
Structure analyses of oligosaccharides by tagging of the reducing end sugars with a fluorescent compound. Hase, S., Ikenaka, T., Matsushima, Y., Biochem. Biophys. Res. Commun., 85, 257-263 (1978). Two-dimensinal mapping of N-glycosidically linked asialo-oligosaccharides from glycoproteins as reductively pyridylaminated derivatives using dual separation modes of high-performance capillary electrophoresis. Suzuki. S., Kakehi. K., Honda. S., Anal. Biochem. 205, 227-236 (1992). Multi-dimensional mapping of pyridylaminated-labeled N-linked oligosaccharides by capillary electrophoresis. Zieske. LR., Fu. D., Khan. SH., O'Neill. RA. J. Chromatogr. A. 720, 395-407 (1996).
細胞には多種多様な糖鎖が含まれ、それらの含有量は極微量である。そのため細胞に含まれる糖鎖を高感度分析するためには、試料が極微量であっても複数の糖鎖を良好に分離できる手段が必要である。また、細胞には中性糖鎖と酸性糖鎖が含まれるため、中性糖鎖と酸性糖鎖を簡便に分離できれば細胞中の糖鎖分析に極めて有利である。更に糖鎖には複数の異性体が存在するため、将来的にはそれら異性体をも同定するために、質量分析計の導入が不可欠となると考えられる。
そこで本発明の目的は、将来予想される質量分析計による糖鎖同定を可能とするキャピラリー電気泳動を利用した糖鎖分析法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。
キャピラリー電気泳動において一般的に使用されている泳動液は無機バッファーである(例えば上記非特許文献2および3参照)。しかし、このような揮発性に乏しいバッファーを質量分析計(MS)へそのまま導入するとMSを汚染するため、CEにより分離した試料をMSへ導入するためには前処理が必要となる。そこで本発明者らは、泳動液として良好な揮発性を有する有機酸系バッファーを使用することとした。これにより、キャピラリー電気泳動装置によって分離した試料を直接MSに導入することが可能となる。しかし、本発明者らが更に検討を重ねた結果、有機酸系バッファーの使用によりCEにおける糖鎖の分離効率が低下し、これにより検出感度が著しく低下することが判明した。そこで本発明者らは有機酸系バッファーを使用したCEにおける分離効率低下を改善するために更に検討を重ねた結果、キャピラリー内に試料濃縮領域を電気的に形成した後に電気泳動を行うことにより、検出感度を顕著に改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]二種以上の糖鎖を含む試料を泳動液を充填したキャピラリー内へ導入し、該キャピラリーに電界を印加することにより、上記二種以上の糖鎖を電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法であって、
前記キャピラリー内への試料導入を、前記キャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより行うこと、および、
前記泳動液として、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液を使用すること、
含み、
前記分離は、二工程以上の分離工程からなり、第二工程以降の工程は、直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液とはpHの異なる泳動液をキャピラリー内に充填もしくは直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液のpHを変更し、および/または、直前に行われた分離工程とは逆向きの電界を印加して行われ、
第二工程以降の分離工程と直前に行われた分離工程との間に、泳動液を充填したキャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより、キャピラリー内へ前記試料の少なくとも一部を導入することを更に含む、前記糖鎖分析方法。
[2]前記試料溶液は、キャピラリー内に充填した泳動液より伝導度の低い溶液である[1]に記載の糖鎖分析方法。
[3]前記糖鎖は、少なくとも1つの側鎖が塩基性置換基によって置換された中性糖鎖を含む[1]または[2]に記載の糖鎖分析方法。
[4]前記糖鎖は、前記中性糖鎖とともに酸性糖鎖を含む[3]に記載の糖鎖分析方法。
[5]前記塩基性置換基は、芳香族アミノ基である[3]または[4]に記載の糖鎖分析方法。
[6]前記芳香族アミノ基は2−アミノピリジニル基である[5]に記載の糖鎖分析方法
[7]酸性糖鎖と、少なくとも1つの側鎖が塩基性置換基によって置換された中性糖鎖と、を含む試料をキャピラリー電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法であって、
(1)酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
キャピラリー内の泳動液のpHを、前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させるか、または、
(2)前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
キャピラリー内の泳動液のpHを、前記酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させること、
を特徴とする糖鎖分析方法。
[]前記泳動液は、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液である[]に記載の糖鎖分析方法。
[]前記緩衝液は、ギ酸および/またはギ酸塩を含む緩衝液である[1]〜[]、[]のいずれかに記載の糖鎖分析方法。
本発明によれば、揮発性有機酸緩衝液を使用したキャピラリー電気泳動により微量試料中の糖鎖を高感度に分析することができる。
本発明は、二種以上の糖鎖を含む試料を泳動液を充填したキャピラリー内へ導入し、該キャピラリーに電界を印加することにより、上記二種以上の糖鎖を電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法に関する。本発明の糖鎖分析方法は、前記キャピラリー内への試料導入を、前記キャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより行うこと、および、前記泳動液として、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液を使用すること、を特徴とする。
以下、本発明の糖鎖分析方法について、更に詳細に説明する。
本発明の糖鎖分析方法は、キャピラリー電気泳動法により試料中の複数の糖鎖を分離することを含む。キャピラリー電気泳動を行うための装置としては、キャピラリー内の溶液に電界を印加可能な公知のキャピラリー電気泳動装置を使用すればよい。また、使用するキャピラリーは、分離対象の糖鎖の性質や分離能を考慮し市販品から選択することができる。
キャピラリー内への試料導入は、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより行う。これに対し、従来の糖鎖分析におけるキャピラリー電気泳動では、試料の導入は加圧導入法により行われていた。加圧導入法は、圧力を加えることにより試料溶液をキャピラリー内に導入する。例えば、泳動液を充填したキャピラリーの一端を、ゴム栓等により密閉されたバイアル中の試料溶液に浸漬した後、ゴム栓を上から押すことにより液面に圧がかかり試料溶液中に浸漬したキャピラリーの開口から試料溶液がキャピラリーに導入される。このような加圧導入法では、キャピラリー内への試料導入量はわずか数nl〜数10nl程度である。装置にセットする試料溶液量を、操作上実用的な5μl(5,000nl)程度にする場合、加圧導入法による試料導入では、99.8%以上の試料が注入されず分析に供されないこととなる。
一方、本発明における試料導入は、泳動液を充填したキャピラリーの一端にプラグ領域(濃縮ゾーン)を形成し、この領域に試料(溶質)を電気泳動させることにより導入する。この方法によれば、試料を溶液として導入する加圧導入法に比べて、多量の試料をキャピラリー内に導入することができる。前述のように本発明では泳動液として有機酸バッファーを使用するため、無機バッファーを使用する場合と比べて分離効率の点では不利であるにもかかわらず、上記方法により試料を導入することにより検出感度を顕著に改善することができる。
以下に、上記試料導入法について更に詳細に説明する。
前記プラグ領域は、プラグ領域形成用の溶液を、加圧導入法と同様に圧力を加えてキャピラリーの一端から導入することにより形成することができる。プラグ領域の範囲は、濃縮効率と電気泳動時の分離効率を考慮し決定することが好ましく、例えばキャピラリー内の泳動液容量の30分の1〜100分の1程度とすることが好ましい。
プラグ領域形成用溶液としては、試料溶液をそのまま用いてもよいが、試料溶液調製用の溶媒(試料未含有)を使用することが好ましい。またプラグ領域において良好に濃縮を行うためには、キャピラリー内に充填した泳動液とは異なる種類の溶液を使用することが好ましく、泳動液中での電気泳動を良好に行うためには、泳動液の伝導度が高く、プラグ領域形成用溶液の伝導度が低いことが好ましい。具体的には、アセトニトリル、アセトニトリル/水混合溶液、アセトン、アセトン/水混合溶液等を使用することができる。
次いで、プラグ領域を形成した側のキャピラリー末端を、試料を含む溶液(試料溶液)に浸漬することにより、プラグ領域端面を試料溶液と接触させる。この状態でキャピラリーに電界を印加すると、電気泳動により、試料溶液中の試料がプラグ領域内に導入される。プラグ領域形成用溶液は泳動液とは異なる溶液であり伝導度に差があるため、プラグ領域内に導入された試料は両液の界面付近に留まる。電界を印加するほど試料溶液の導入量が多くなるため、プラグ領域に試料を濃縮することができる。上記試料導入時に印加する電圧が過度に高いと、両溶液間に伝導度の差がある場合であっても試料が越えて泳動液中(泳動ゾーン)に導入されてしまう。そのため、試料導入時に印加する電圧は、界面での試料濃縮を良好に行うことができる範囲に設定することが好ましく、具体的には、5〜20kV程度とすることが好ましい。また、試料導入のための電界印加時間は、プラグ領域の容量等によって適宜設定すればよいが、例えば0.5〜2分間程度とすることができる。試料導入終了後、試料溶液中に浸漬していたキャピラリー末端を適当な溶液(例えば電解液等)中に浸漬し、電気泳動を行う。
糖鎖分離のための電気泳動における印加電圧は、前記界面に濃縮された試料が泳動液中に導入されるように、前述の試料導入時の印加電圧より高く設定することが好ましく、具体的には、20〜30kV程度とすることができる。また、電界印加時間は分離すべき糖鎖の性質を考慮して設定すればよく特に限定されるものではないが、例えば10〜40分間程度とすることができる。泳動液の温度は特に限定されるものではないが、例えば15〜50℃程度とすることができる。
本発明において糖鎖の電気泳動のために使用される泳動液は、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液(以下、「有機酸系バッファー」ともいう)である。有機酸系バッファーによる電気泳動により分離された糖鎖は、そのまま質量分析計へ導入することも可能であるため、電気泳動を有機酸系バッファーにより行うことは、将来的な糖鎖の構造解析のためにきわめて大きな意義がある。前記緩衝液としては、ギ酸緩衝液、ギ酸/ギ酸塩(例えばギ酸ナトリウム)緩衝液、酢酸緩衝液、酢酸/酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)緩衝液等を用いることができる。前記泳動液のpHは、分離対象の糖鎖が電荷を帯びるように設定すればよい。
後述するように酸性糖鎖と中性糖鎖との混合物を分析するためには、酸性糖鎖と中性糖鎖と逆向きの電界で電気泳動することが好ましい。酸性糖鎖は負電荷を帯び得るため、上記観点からは、中性糖鎖には塩基性置換基を導入することが好ましい。塩基性置換基としては、一般に糖鎖を蛍光標識するために使用される各種の芳香族アミノ基を挙げることができる。中性糖鎖と酸性糖鎖との混合物を分析する場合等では、カルボキシル基等の酸性基を持たない置換基を用いることが好ましい。好ましい置換基としては、具体的には、2−アミノピリジニル基、2−アミノベンズアミド基を挙げることができる。中でも、2−アミノピリジニル基は、糖鎖の蛍光標識化(ピリジルアミノ化(PA化))に広く用いられており糖鎖への導入方法も確立されているため特に好ましい。前記置換基の導入は公知の方法で行うことができ、例えばPA化については前述の非特許文献1〜3等を参照することができる。また、分析対象糖鎖は、例えば、糖脂質、糖タンパク、糖アミノ酸等から公知の方法で遊離することにより得ることができる。また、酸性糖鎖と中性糖鎖の混合物を分析するために、該混合物に対して置換基導入のための試薬を作用させ、混合物中の酸性糖鎖と中性糖鎖の両方に置換基を導入することもできる。この場合、酸性糖鎖と中性糖鎖を個別に分離可能とするためには塩基性置換基を導入することが好ましい。前述の2−アミノピリジニル基は、酸性糖鎖および中性糖鎖の還元末端にきわめて効率良く反応し、キャピラリーに充填した緩衝液のpHの微妙な変化に対応して中性糖鎖と酸性糖鎖を個別かつ良好に分離することができるため特に好ましい。
異なる性質(帯電性等)を有する複数種の糖鎖を含む試料を分析するためには、キャピラリー電気泳動による分離を二工程以上に分けて行い、第二工程以降の分離工程を、直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液とはpHの異なる泳動液をキャピラリー内に充填もしくは直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液のpHを変更し、および/または、直前に行われた分離工程とは逆向きの電界を印加して行うことが好ましい。泳動液のpHを変えることにより、該pHで帯電し得る糖鎖のみを選択的に電気泳動させることができ、電界の印加方向を逆向きとすることにより、正電荷を帯びた糖鎖と負電荷を帯びた糖鎖のいずれか一方のみを選択的に電気泳動させることができる。より好ましくは、泳動液の変更と電界の印加方法の変更を併せて行う。具体的には、塩基性の泳動液を使用し、プラグ領域側が−、他方が+となるようにキャピラリーに電界を印加して酸性糖鎖の分離を行った後、キャピラリー内の泳動液を酸性に変更した上でプラグ領域側が+、他方が−となるようにキャピラリーに電界を印加して、塩基性置換基を導入した中性糖鎖の分離を行うことができる。これにより後述の実施例で示すように、中性糖鎖と酸性糖鎖を選択的に分離することができる。ほとんどの生体試料では、中性糖鎖と酸性糖鎖が混在しているため、CEにより同一試料中の中性糖鎖と酸性糖鎖を独立して分離できることは、糖鎖解析にきわめて有用である。
キャピラリー電気泳動による分離を二工程以上に分けて行う場合、第二工程以降の分離工程と直前に行われた分離工程との間に、泳動液を充填したキャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより、キャピラリー内へ前記試料の少なくとも一部を導入する試料導入工程を再度行うこともできる。第一の工程で酸性糖鎖を分離分析し、続く第二の工程で塩基性置換基を導入した中性糖鎖を分離分析する場合のように、異なる向きの電荷を帯び得る糖鎖を個別に分離する際には、第一の工程で印加した電界とは逆向きの電界を印加することにより、プラグ領域内へ目的の糖鎖を選択的に導入することができる。
電気泳動により分離した試料を検出器に導入することにより、糖鎖の解析や同定を行うことができる。検出は、電気的検出器、蛍光検出器、紫外検出器、質量分析計等によって行うことができる。後述する実施例ではレーザー励起蛍光検出器(LIF)をキャピラリーと直結したCE-LIFを使用しているが、本発明における検出器はこれに限定されるものではない。本発明では泳動液としてMSに直接導入可能な有機酸系バッファーを使用しているためCE-MSの適用も可能である。
更に本発明は、以下の糖鎖分析方法に関する。下記の糖鎖分析方法により、同一試料中に含まれる酸性糖鎖と中性糖鎖を選択的に分離分析することできる。
酸性糖鎖と、少なくとも1つの側鎖が塩基性置換基によって置換された中性糖鎖と、を含む試料をキャピラリー電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法であって、
(1)酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
キャピラリー内の泳動液のpHを、前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させるか、または、
(2)前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
キャピラリー内の泳動液のpHを、前記酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させること、
を特徴とする糖鎖分析方法。
上記方法においても泳動液として有機酸系バッファーを使用することはもちろん可能であり、有機酸系バッファーを使用する場合にも、試料を電気的に導入するため高感度な分析が可能である。
以下、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
1.電気的試料導入CE-LIFによるPA化中性糖鎖混合物の高感度分析
(1)分析対象試料
本分析で使用したPA化中性糖鎖構造は以下の四種類で、全てタカラバイオから購入した。
CDH-PA (Galβ1-4Glc-PA)、
CTH-PA (Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)、
Globoside-PA (GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)、
Forssman antigen-PA (GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)
(2)プラグの形成
CE-LIF分析は、P/ACE MDQ型キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter)にHe-Cdレーザー励起蛍光検出器(Kimmon、Ex: 325 nm、Em: 405 nm)を直結したシステムに、フューズドシリカキャピラリー(30 μm i.d. x 100 cm、GLサイエンス)を装着して行った。まず、本システムのキャピラリーに100mMギ酸-100mMギ酸アンモニウム水溶液(1:1、v/v;pH3.6)の電解液(泳動液)を導入後、ミクロバイアル(PCRチューブ、PCR-02-NC、Axgen)に予め分注してあるアセトニトリル-水(7:3、v/v)にキャピラリーの一端を浸漬し、6.9x103Pa、30秒の条件下でアセトニトリル-水を加圧導入し、プラグを形成した。キャピラリー中の泳動液は約1000nl、プラグ容量は約10nlであった。
(3)試料導入
次に、上述のPA化中性糖鎖混合物(各50fmol、50 x 10-15モル)のアセトニトリル-水(7:3、V/V)溶液5μlをPCRチューブに分注後、プラグを形成した側のキャピラリー末端を浸漬し、10kVの電圧(プラグ側が+、他方が−)を90秒印加することで、予めキャピラリーに注入したアセトニトリル-水(7:3、v/v)プラグの中に試料を電気的に導入した。
(4)CE-LIF分析
次に、カラム温度を25℃、カラム印加電圧を30kV(プラグ側が+、他方が−)に設定して電気泳動を行った。キャピラリー電気泳動により分離された試料をLIFに付し蛍光を検出することでクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムを、上記(2)にて試料溶液を加圧導入し、上記(3)の試料導入を行わなかった点を除き同様の方法で得られたクロマトグラムとともに図1に示す。
2.電気的試料導入CE-LIFによるPA化酸性糖鎖混合物の高感度分析
(1)分析対象試料
本分析で使用したPA化酸性糖鎖構造は以下の九種類で、全てタカラバイオから購入した。
GM1-PA [Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GM2-PA [GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GM3-PA [NeuAcα2-3Galβ1-4Glc-PA
GD1a-PA [NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GD1b-PA [Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GD2-PA [GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GD3-PA [NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-4Glc-PA]
GT1b-PA [NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GQ1b-PA [NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
(2)プラグの形成
CE-LIF分析は、P/ACE MDQ型キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter)にHe-Cdレーザー励起蛍光検出器(Kimmon、Ex: 325 nm、Em: 405 nm)を直結したシステムに、フューズドシリカキャピラリー(30 μm i.d. x 100 cm、GLサイエンス)を装着して行った。まず、本システムのキャピラリーに100mMギ酸アンモニウム水溶液(pH6.5)の電解液を導入後、ミクロバイアル(PCRチューブ、PCR-02-NC、Axgen)に予め分注してあるアセトニトリル-水(9:1、v/v)にキャピラリーの一端を浸漬し、6.9x103Pa、30秒の条件下でアセトニトリル-水を加圧導入し、プラグを形成した。キャピラリー中の泳動液は約1000nl、プラグ容量は約10nlであった。
(3)試料導入
次に、上述のPA化酸性糖鎖混合物(各50fmol)のアセトニトリル-水(9:1、V/V)溶液5μlをPCRチューブに分注後、−10kV(プラグ側が−、他方が+)、90秒且つ1.4x104Paの条件下で、予めキャピラリーに形成したアセトニトリル-水(9:1、v/v)プラグの中に試料を電気的に導入した。
(4)CE-LIF分析
次に、カラム温度を25℃、カラム印加電圧を−30KV(プラグ側が−、他方が+)に設定して電気泳動を行った。キャピラリー電気泳動により分離された試料をLIFに付し蛍光を検出することでクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムを、上記(2)にて試料溶液を加圧導入し、上記(3)の試料導入を行わなかった点を除き同様の方法で得られたクロマトグラムとともに図2に示す。
評価結果
四種類の中性糖脂質由来のPA化糖鎖混合物(各50 fmol)を電気的導入法および加圧法により導入して分析した結果を図1(a:電気的試料導入、b: 従来型加圧試料導入)に、九種類の酸性糖脂質由来のPA化糖鎖混合物(各50 fmol)を分析した結果を図2 (a:電気的試料導入、b: 加圧法)に示した。
2〜5糖から構成される中性糖脂質由来PA化糖鎖(CDH-PA、CTH-PA、Globoside-PA及びForssman antigen-PA)は、ピリジニウムイオン由来の正電荷に依存して糖鎖の重合度が小さいものから泳動され、加圧法の電気泳動図において9.5分、10.7分、12.1分及び13.2分に観察され、また、電気的導入法において8.2分、8.9分、9.7分および10.5分に観察された。電気的導入法を用いた際に観察される各糖鎖のピーク強度は、加圧法に比べ約250倍増大した。また、PA化中性糖鎖はそれぞれ良く分離しており、従って、本電気的試料導入によるCE-LIFは、泳動液として有機酸系バッファーを使用したにもかかわらず分離能を損なうことなく、高感度化が達成されていることを示している。
九種類の酸性糖脂質由来PA化糖鎖(GM1-PA、GM2-PA、GM3-PA、GD1b-PA、 GD1a-PA、 GD2-PA、 GD3-PA、GT1b-PAおよびGQ1b-PA)の混合物(各50 fmol)を分析した結果、加圧試料導入CE-LIFのクロマトグラムにおいて、シアル酸を1残基有するモノシアロ糖鎖(GM1-PA、 GM2-PA、およびGM3-PA)が21分付近に、2残基有するジシアロ糖鎖(GD1b-PA、GD1a-PA、GD2-PA及びGD3-PA)が24〜26分付近に、3残基有するGT1b-PAが28分、更にテトラシアロ糖鎖(GQ1b-PA)が34分に観察された。電気的試料導入CE-LIFのクロマトグラムでは、モノシアロ糖鎖が22〜23分付近に、ジシアロ糖鎖が26〜28分付近に、GT1b-PAが33分に、GQ1b-PAが39分に観察された。シアル酸残基数が同一で、且つ、糖鎖の重合度が異なるモノシアロ糖鎖(GM1-PA、GM2-PAおよびGM3-PA)およびジシアロ糖鎖(GD1-PA、GD2-PAおよびGD3-PA)は、重合度が大きい糖鎖から順に、GM1-PA、GM2-PA続いてGM3-PA、また、GD1-PA、GD2-PAおよびGD3-PAの順に泳動された。同一のシアル酸残基数と重合度を有するGD1a-PAとGD1b-PAは、分離がやや不完全なものの、明瞭に分離していることが確認された。電気的導入法を用いた際に観察される各糖鎖のピーク強度は、加圧法に比べ約150倍増大した。また、PA化酸性糖鎖はそれぞれ良く分離しており、従って、本電気的試料導入によるCE-LIFは、泳動液として有機酸系バッファーを使用したにもかかわらず分離能を損なうことなく、高感度化が達成されていることを示している。
なお、電気的導入CE-LIFと加圧導入CE-LIFで得られるクロマトグラム上の各ピークの時の泳動時間の差は、電気的導入法における濃縮・導入の際に糖鎖が泳動されているためであると考えられる。
本方法における検出限界は、5μlの試料溶液とした場合、PA化中性糖鎖で25amol(25アトモル、25 x 10-18モル)/ミクロバイアル、PA化酸性糖脂質で100amol(100アトモル、100 x 10-18モル)/ミクロバイアルである。従って、本CE-LIF法は、同一試料中に存在する中性糖鎖と酸性糖鎖を個別に超高感度測定することが可能であるとともに、揮発性緩衝液を使用しているため、質量分析計(MS)と直結したCE-MSシステムにも応用可能であると考えられる。
3.電気的試料導入CE-LIFによる中性糖鎖・酸性糖鎖混合物の高感度分析
(1)分析対象試料
本分析で使用したPA化中性糖鎖構造は以下の四種類、PA化酸性糖鎖構造は以下の七種類であり、全てタカラバイオから購入した。
(中性糖鎖)
CDH-PA (Galβ1-4Glc-PA)、
CTH-PA (Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)、
Globoside-PA (GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)、
Forssman antigen-PA (GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc-PA)
(酸性糖鎖)
GM1-PA [Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GM2-PA [GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GM3-PA [NeuAcα2-3Galβ1-4Glc-PA
GD1a-PA [NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GD1b-PA [Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GT1b-PA [NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
GQ1b-PA [NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-PA]
(2)プラグの形成
CE-LIF分析は、P/ACE MDQ型キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter)にHe-Cdレーザー励起蛍光検出器(Kimmon、Ex: 325 nm、Em: 405 nm)を直結したシステムに、フューズドシリカキャピラリー(30 μm i.d. x 100 cm、GLサイエンス)を装着して行った。まず、本システムのキャピラリーに100mMギ酸-100mMギ酸アンモニウム水溶液(1:1、v/v; pH3.6)の電解液を導入後、ミクロバイアル(PCRチューブ、PCR-02-NC、Axgen)に予め分注してあるアセトニトリル-水(7:3、v/v)にキャピラリーの一端を浸漬し、6.9x103Pa、30秒の条件下で加圧導入してプラグを形成した。キャピラリー中の泳動液は約1000nl、プラグ容量は約10nlであった。以上の条件でプラグを形成した後、後述の(3)および(4)に記載した手順に従ってPA化中性糖鎖のみの試料導入およびCE-LIF分析を行った。その後、PA化酸性糖鎖分析を行うために、PA化中性糖鎖分析に用いたキャピラリーと同じキャピラリーに、100mMギ酸アンモニウム水溶液(pH6.5)の電解液を導入後、ミクロバイアル(PCRチューブ、PCR-02-NC、Axgen)に予め分注してあるアセトニトリル-水(9:1、v/v)にキャピラリーの一端を浸漬し、6.9x103Pa、30秒の条件下で加圧導入してプラグを形成した。キャピラリー中の泳動液は約1000nl、プラグ容量は約10nlであった。以上の条件でプラグを形成した後、後述の(3)および(4)に記載した手順に従ってPA化中性糖鎖のみの試料導入およびCE-LIF分析を行った。
(3)試料導入
上記(2)でプラグを形成した後、5lのアセトニトリル-水(7:3、v/v)に溶解したPA化中性糖鎖およびPA化酸性糖鎖混合物(各50fmol、50x10-15モル)溶液にキャピラリーの一端を浸漬し、10kVの電圧(プラグ側が+、他方が-)を90秒印加することで、PA化中性糖鎖のみを選択的に導入した。酸性糖鎖の選択的導入は、PA化中性糖鎖分析終了後、PA化中性糖鎖で用いたキャピラリーと同じキャピラリーに100mMギ酸アンモニウム水溶液(pH6.5)の電解液を導入し、プラグをアセトニトリル-水(9:1、v/v)に変換し、試料溶液を一旦乾燥させ、アセトニトリル-水(9:1、v/v)に再溶解した後、-10kVの電圧(プラグ側が-、他方が+)を90秒印加することで行った。
(4)CE-LIF分析
図3(A)には、PA化中性糖鎖とPA化酸性糖鎖が共存する混合物を従来の加圧試料導入法で分析を行った結果を示した。
図3(B)には、PA化中性糖鎖とPA化酸性糖鎖が共存する混合物を、まず、前述の(2)および(3)に記載した手順でPA化中性糖鎖のみの電気的試料導入後、30kVの電圧(プラグ側が+、他方が-)を加えて泳動を行って分析を行った。次に同一チューブ内のPA化酸性糖鎖のみの電気的試料導入を (2)および(3)で記載した方法で行った後、30kVの電圧(プラグ側が-、他方が+)を加えて泳動を行って分析を行った結果を図3(C)に示した。
評価結果
図3に示すように、本分析により同一試料に含まれる中性糖鎖と酸性糖鎖をそれぞれ選択的に分離することができた。特に、電気的に試料を導入した図3(B)、(C)のクロマトグラムでは高強度の蛍光を得ることができた。ほとんどの生体試料には中性糖鎖と酸性糖鎖が混在しているため、中性糖鎖と酸性糖鎖を選択的に分離分析できることは生体試料分析においてきわめて大きな意義がある。
本発明によれば、CE-MSによる糖鎖の高感度分析が可能になるものと期待される。
中性糖鎖混合物のCE-LIF分析結果を示す。 酸性糖鎖混合物のCE-LIF分析結果を示す。 中性糖鎖・酸性糖鎖混合物のCE-LIF分析結果を示す。

Claims (9)

  1. 二種以上の糖鎖を含む試料を泳動液を充填したキャピラリー内へ導入し、該キャピラリーに電界を印加することにより、上記二種以上の糖鎖を電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法であって、
    前記キャピラリー内への試料導入を、前記キャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより行うこと、および、
    前記泳動液として、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液を使用すること、
    含み、
    前記分離は、二工程以上の分離工程からなり、第二工程以降の工程は、直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液とはpHの異なる泳動液をキャピラリー内に充填もしくは直前に行われた分離工程においてキャピラリー内に充填した泳動液のpHを変更し、および/または、直前に行われた分離工程とは逆向きの電界を印加して行われ、
    第二工程以降の分離工程と直前に行われた分離工程との間に、泳動液を充填したキャピラリーの一端に泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ領域端面を、前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で該キャピラリーに電界を印加することにより、キャピラリー内へ前記試料の少なくとも一部を導入することを更に含む、前記糖鎖分析方法。
  2. 前記試料溶液は、キャピラリー内に充填した泳動液より伝導度の低い溶液である請求項1に記載の糖鎖分析方法。
  3. 前記糖鎖は、少なくとも1つの側鎖が塩基性置換基によって置換された中性糖鎖を含む請求項1または2に記載の糖鎖分析方法。
  4. 前記糖鎖は、前記中性糖鎖とともに酸性糖鎖を含む請求項3に記載の糖鎖分析方法。
  5. 前記塩基性置換基は、芳香族アミノ基である請求項3または4に記載の糖鎖分析方法。
  6. 前記芳香族アミノ基は2−アミノピリジニル基である請求項5に記載の糖鎖分析方法。
  7. 酸性糖鎖と、少なくとも1つの側鎖が塩基性置換基によって置換された中性糖鎖と、を含む試料をキャピラリー電気泳動により分離することを含む糖鎖分析方法であって、
    (1)酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
    キャピラリー内の泳動液のpHを、前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させるか、または、
    (2)前記中性糖鎖が有する塩基性置換基が正電荷を帯び得るpHを有する泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記中性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が+、他方が−となるように電界を印加することにより中性糖鎖を電気泳動させ、次いで、
    キャピラリー内の泳動液のpHを、前記酸性糖鎖が負電荷を帯び得るpHに変更した後、泳動液を充填したキャピラリーの一端に、前記泳動液とは異なる液体を保持したプラグ領域を形成し、該プラグ溶液端面を前記試料を含む試料溶液と接触させた状態で、該キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより、プラグ領域内に前記酸性糖鎖の少なくとも一部を導入した後、前記キャピラリーに、プラグ領域側が−、他方が+となるように電界を印加することにより酸性糖鎖を電気泳動させること、
    を特徴とする糖鎖分析方法。
  8. 前記泳動液は、有機酸および/または有機酸塩を含む緩衝液である請求項に記載の糖鎖分析方法。
  9. 前記緩衝液は、ギ酸および/またはギ酸塩を含む緩衝液である請求項1〜のいずれか1項に記載の糖鎖分析方法。
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