JP4928987B2 - 荷電粒子線調整方法及び荷電粒子線装置 - Google Patents

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Description

本発明は荷電粒子線装置に関し、特に、一次荷電粒子線が対物絞り、或いは荷電粒子線通過軌道中に存在する絞りの中心を容易に通過させるようにして、高輝度像を安定に得るのに好適な荷電粒子線装置に関する。
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く絞った一次荷電粒子線を試料上で走査して、試料からの情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置の鏡体には、試料照射電流(プローブ電流)を適切に制限するための対物絞りが存在する。もし、この対物絞りの中心と一次荷電粒子線の中心との間にずれがあると、対物絞りによって制限される一次荷電粒子線のプローブ電流量が大きくなり、試料像の明るさが低下する。この場合、適切なプローブ電流制御が実現できず、所望の明るさの試料像が得られないことになる。そのため、常に一次荷電粒子線を対物絞りの中心に通過させて正常な明るさの試料像を得るためには、高精度の調整が必要である。以下、この調整をビーム中心軸調整とする。
通常、ビーム中心軸調整においては、対物絞りの上部に専用の偏向器を配置し、この偏向器によって一次荷電粒子線を対物絞り上で走査し、対物絞りの像を得る。図2(a)に対物絞り孔の像の例を示す。この像は、対物絞りを通過した一次荷電粒子線が試料に当たって発生する二次信号によって生成される。この像全体の中心(走査中心)が一次荷電粒子線のビーム中心である。また白い円形の像が対物絞り孔の像であり、その円の中心が対物絞り孔の中心となる。図2(a)では、白い円の中心が像の中心からずれていることから、この状態では、試料像観察時においては一次荷電粒子線の中心が対物絞り孔の中心を通過していないことがわかる。
図2(a)に示したような状態において、一次荷電粒子線を対物絞り孔の中心に通過させるために、通常は、対物絞り上部に配置されたビーム中心軸調整用の偏向器(アライナー)を用いて、一次荷電粒子線を対物絞り孔の中心に移動させる。このとき、対物絞りの像は図2(b)のようになり、像全体の中心(走査中心)と対物絞り孔の像の中心を一致させることができる。
従来、このビーム中心軸調整用アライナーの設定は、オペレータがこの対物絞り孔の像(調整用像)を見ながら、手動で行っていた。また、荷電粒子線装置の光学条件に対してこのアライナー設定条件を記憶する手段を設け、操作時にこのアライナー設定条件を読み出して設定するという方法があった。更にアライメントを自動で行うために、画像処理によって軸ずれ量を把握する技術が特許文献1に開示されている。
また、走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く収束された荷電粒子線を試料上で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置では、レンズに対し光軸にずれがあるとレンズ収差が発生し試料像の解像度が低下するため、分解能の高い試料像を得るためには高精度な軸調整が必要である。そのため従来の軸調整では対物レンズの励磁電流等を周期的に変化させ、そのときの動きを最小とするように軸調整用の偏向器(アライナー)の動作条件を手動で調整していた。また、このような調整を自動で行うための技術として特許文献2に開示の技術がある。
この記載によれば、あるアライメント偏向器の偏向条件において対物レンズ条件を2つの条件に変化させた際の画像のずれを検出し、2ヵ所の画像のずれを方程式に当てはめ、最適なアライメント条件を見つけ出し設定を行うという自動軸調整法の技術が報告されている。
また、荷電粒子線の非点補正を行う非点補正器の中心からずれていると、非点収差の調整を行う際に視野が動き、調整が困難になる。そのため、非点収差補正器の動作に連動して荷電粒子の試料上での位置を制御する別のアライナー(偏向器)を設け、非点収差補正器の設定値(非点補正器)の変化に対する像の動きをキャンセルして、非点収差の調整時に観察像が動かないように視野補正している。このような調整を自動で行うための技術としても特許文献2に開示の技術がある。
先と同様にある非点補正器の偏向条件において対物レンズ条件を2つの条件に変化させた際の画像のずれを検出し、2ヵ所の画像のずれを方程式に当てはめ、最適なアライメント条件を見つけ出し設定を行うという自動軸調整法の技術が報告されている。
特開2005−310699号公報 特開2002−352758号公報
上述したような方法で手動によるビーム中心軸調整を行うには、十分な装置操作技術
(操作経験)が必要である。そのため、初心者のオペレータが調整に時間を要したり、調整精度にばらつきが発生したりすることがあった。また、荷電粒子線装置の光学条件に対してアライナー設定条件を記憶する手段を設け、操作時にこのアライナー設定条件を読み出して設定するという方法においては、光学条件により変化するアライナー設定条件をその光学条件毎に記憶しておく必要があり、光学条件を替えて試料像を得る場合、その都度アライナー設定条件の登録および読み出しを行う必要があった。また、仮に同じ光学条件で使用する場合であっても、装置の状態変化などによって、登録したアライナー設定条件を使用すると、調整制度が低下するという問題があった。以上のことから、オペレータはビーム中心軸が対物絞り孔の中心からずれていることに気が付かず、正常な明るさの試料像が得られていないという心配があった。
また、特許文献1に開示の技術でも同様であり、外部環境や装置状態によって、アライナーに所定の制御信号を与えても、所定の偏向ができないことがあるため、正確なアライメントが困難であるという問題があった。
本発明の第1の目的は、光学条件を変更した場合や、装置の状態変化によって荷電粒子線のビーム中心軸が移動した場合であっても、容易にビーム中心軸の調整を可能とする荷電粒子線装置を提供することにある。
また、特許文献2に説明されている自動軸調整法では、アライナーから試料までの間に荷電粒子線や試料室の状態を制御する絞りがあった場合、アライナーの条件によって、荷電粒子線の一部もしくは全体が、絞りによってさえぎられてしまい、試料に到達する荷電粒子線は絞りを通過する前のものとは異なるものとなる。
この異なる荷電粒子線を用いて前記の自動軸調整を行った場合、前記のアライメント条件の変化に対する試料像のずれを導く方程式に当てはまらず、自動軸調整の結果は誤差が大きいものとなってしまう。
本発明の第2の目的は、アライナー以下に絞りを持つ荷電粒子線装置において、前記の自動軸調整法をより高精度に行う方法、及び装置を提供することにある。
上記した第1の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、前記荷電粒子線のビーム中心軸調整を偏向器(アライナー)で行う際に、前記アライナーの感度を計測する処理ステップ(1)と、前記一次荷電粒子線と前記対物絞りの中心とのずれを検出する処理ステップ(2)を設け、前記処理ステップ(1)で計測したアライナー感度と前記処理ステップ(2)で検出したずれ量を用いて、前記一次荷電粒子線が前記対物絞りの中心を通過するように前記アライナー設定値を決定し、このアライナー設定値を用いてアライナーを制御する手段を設けた。
上記第2の目的を達成するため、本発明の一例によれば、荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線について、対物レンズ及び/又は非点補正器への軸調整を行うアライメント偏向器と、試料から放出された荷電粒子に基づいて画像を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器を少なくとも2つの偏向条件に変更したときの前記画像の明るさを評価し、当該少なくとも2つの偏向条件の内、明るい側の画像を用いて、前記アライナー偏向器の調整条件を演算する装置が備えられている荷電粒子線装置を提供する。
以上のような本発明の第1の態様によれば、アライメント偏向器の感度を求めた上で、偏向を行っているので、装置コンディション等に因らず、正確なアライメントを実現できる。
また、以上のような本発明の第2の態様によれば、アライナー以下に絞りがあった場合でも荷電粒子線の光学条件に関わらず、精度の高い軸調整が可能となる。
(実施例1)
前記処理ステップ(1)で実施されるアライナーの感度計測と、前記処理ステップ(2)で実施される一次荷電粒子線の中心と前記対物絞りの中心とのずれ検出について説明する。
前記アライナーは、通常二次元(X,Y)方向に一次荷電粒子線をアライメントできる。ここで、アライナーの初期状態(X0,Y0)に対する、アライナー補正量をX1,Y1としたとき、ビーム中心軸調整用像上での円形像の中心位置WALB を複素数を用いて表すと、次式(1)の関係となる。
Figure 0004928987
ここで、Cは、ビーム中心軸調整用像の中心と円形像の中心とのずれ量を複素数で表したもの、DはX方向のアライメント信号Xに対応する円形像の移動感度を複素数で表したもの、εは前記アライナーのX方向に対するY方向の相対感度(感度比およびアライナーの直交ずれを示す)を複素数で表したものである。ビーム中心軸調整の目的は、式(1)に示したWALB を0にするアライナーの補正量X1,Y1を求めることに対応する。従って、式(1)において左辺を0にするためのアライナー補正量Xopt,Yoptは式(2)の関係になる。
Figure 0004928987
ここで、εおよびC/Dは未知数であるため、アライナー補正量(X1,Y1)をそれぞれSだけ変化させ、このときのビーム中心軸調整用像上での円形像の中心座標位置を、画像処理で計測する。表1に、アライナーの変化量に対する円形像の中心位置WALB の関係を示す。なお、円形像の中心位置を求める画像処理技術は、種々の方法があり十分既知の技術である。
Figure 0004928987
表1に示した、ビーム中心軸調整用像上の円形像の中心位置(W1 ,W2 ,W3 )から、εとC/Dを解くと、それぞれ、式(3),式(4)に示す関係となる。
Figure 0004928987
Figure 0004928987
式(3),(4)で得られた結果を式(2)に代入することにより、アライナーの補正量(Xopt,Yopt)を求めることができる。また、W3−W1とW2−W1は2つの偏向器の一方を調整したときに得られる第1の画像ずれと、2つの偏向器の他方を調整したときに得られる第2の画像ずれであり、本例ではこの2つの画像ずれに基づいて、アライメントのための偏向器の感度を検出している。
以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の概略図であり、荷電粒子線装置の一つである、電界放出形電子銃を搭載した走査電子顕微鏡である。
ただし、本発明は搭載された電子銃によって効果が限定されるものではない。陰極1と第一陽極2に印加される電圧V1によって陰極1から放出された一次電子ビーム3は第二陰極4に印加される電圧Vacc に加速されて、後段の電磁レンズ系に進行する。ここで、この加速電圧Vacc およびV1は、高電圧制御回路22で制御されている。一次電子ビーム3は第一収束レンズ制御回路23で制御された第一収束レンズ5で収束される。
ここで一次電子ビーム3は、対物レンズ6より陰極1側(荷電粒子源側)に配置された対物レンズ絞り6でビームの試料照射電流が制限されるが、ビームの中心を対物レンズ絞り6の孔中心へ通過させるために、ビーム中心軸調整用アライナー41およびアライナー制御回路42と、対物レンズ絞り6上でビームを走査するためのビーム中心軸調整用の偏向器43が設けられている。
さらに一次電子ビーム3は、第二収束レンズ制御回路24で制御される第二収束レンズ7で再び収束され、対物レンズ制御回路27によって制御される対物レンズ12によって試料13に細く絞られ、さらに偏向制御回路26が接続された上段偏向コイル8および下段偏向コイル10で試料13上を二次元的に走査される。また、ビーム中心軸調整像を得る際は、本走査信号がリレースイッチ44を介してビーム中心軸調整用の偏向器43に接続され、偏向コイル9の走査信号と同期が取られて動作する。
試料13は試料微動制御回路29によって制御される試料微動装置14上にある。試料13の一次電子ビーム照射点から発生する信号のうち、比較的浅い角度で放出されるエネルギーの高い反射電子15は、検出器18に検出されて増幅器19で増幅される。またエネルギーの低い二次電子16は、対物レンズ12の磁場によって巻き上げられて、対物レンズ上部に配置された直交電磁界(EXB)装置17によって一次電子ビーム3に軸ずれを起こすことなく検出器20に検出され、増幅器21で増幅される。
増幅器19および21は信号制御回路28によって制御されており、これを含めた各種制御回路22〜29は、装置全体を制御するコンピュータ30によって制御される。増幅された二次電子および反射電子の信号は、表示装置31の画面に試料の拡大像として表示される。
コンピュータ30には、他に該表示装置31上に表示された観察画像を画像情報として取得するための画像取得手段32と、これら観察画像に対して種々の画像処理を行う画像処理手段33と、この画像処理の結果から、アライナーの感度パラメータを計算したり、その他種々の計算をしたりするための計算手段34と、観察画像や計算結果を保存するための内部メモリ35と、観察条件などを入力するための入力手段36が接続されている。
次に、本発明を用いてビーム中心軸調整を行う方法について、図3および図4を用いて詳細に説明する。図3は、本実施例でのビーム中心軸調整の流れを示したものであり、これを処理するプログラムは内部メモリ35にプログラムとして登録され、コンピュータ
30からの命令で処理される。また図4は、本実施例でのビーム中心軸調整の表示像の様子を模式的に示したものである。
STEP1:
ビーム中心軸調整用の偏向器43により、対物レンズ絞り6上で一次電子ビーム3の走査を開始する。
STEP2:
表示装置31に表示された試料像から、STEP1より得られる絞り孔の像(調整用像)を表示する。
STEP3:
ビーム中心軸調整用アライナー41の現在の設定条件(1)(BX0,BY0)で、画像取得手段32を用いて調整用像を取得する。これを内部メモリ35に画像(1)として記憶する。このときの表示像の状態は、図4(a)の状態である。
STEP4:
ビーム中心軸調整用アライナー41を条件(2)(BX0+S,BY0)に設定して、
STEP3と同じように調整用像を取得し、画像(2)として記憶する。このときの表示像の状態は、図4(b)の状態である。
なお、ビーム中心軸調整用アライナー41を条件(2)(BX0+S,BY0)に設定した場合、調整用像中の円形像の移動量は、常に一定であることが望ましい。これは、移動量が大きすぎると、調整用像の画像領域から円形像がはみ出てしまう可能性があり、また、移動量が小さすぎると、画像処理にて円形像が移動していないと判断してしまう可能性があるためである。円形像の移動量を常に一定となるようにした場合、第一収束レンズ5で収束される一次電子ビーム3の収束点位置(クロスオーバ位置)と、アライナー変化量との間には、図8に示すような関係がある。従って、予め第一収束レンズ5のクロスオーバ位置に対するSの変化を装置に登録しておき、アライナーにSの変化量を与えるときは、現在設定している第一収束レンズ5のクロスオーバ位置を読み出すようにすれば、調整用像中の円形像の移動量を、常に一定にすることができる。
STEP5:
ビーム中心軸調整用アライナー41を条件(3)(BX0,BY0+S)に設定して、
STEP3と同じように調整用像を取得し、画像(3)として記憶する。このときの表示像の状態は、図4(c)の状態である。
STEP6:
画像(1),(2),(3)より、ビーム中心軸調整用像上での円形像の中心座標位置W1 ,W2 ,W3 を、画像処理で計測する。ここで、円形像の中心位置の計測は例えば画像処理手段33に登録されている既知の画像処理技術で行うことができる。また、円形像の重心位置を求めることに置き換えてもよい。この円形像の中心座標位置を内部メモリ
35に記憶する。
STEP7:
STEP6で求めた円形像の中心座標位置より、前記計算式(1)〜(4)に示した計算手順により、アライナーの補正量(BX1,BY1)を決定する。
STEP8:
STEP7で決定したアライナーの補正量(BX1,BY1)を、アライナー制御回路42を通してビーム中心軸調整用アライナー41に設定する。このときの表示像の状態は、図4(d)の状態である。
以上の処理ステップより、ビーム中心軸調整を実施するとき、従来のように手動で調整するステップが無くなり、調整が自動化できる。その結果、光学条件を変更した場合や、装置の状態変化によって荷電粒子線のビーム中心軸が移動した場合でも、操作初心者が容易にビーム中心軸の調整を実施することが可能となる。
また、本処理を実施する前に、ビーム中心軸調整用偏向器43による対物絞り上での走査幅を、第一収束レンズ5で収束される一次電子ビームの収束点位置(クロスオーバ位置)に応じて計算し、設定するステップを設けてもよい。これにより、調整画面上には常に一定の大きさの対物絞り孔の像(円形像)が表示され、ビーム中心軸の調整精度を向上させることができる。
また、円形像の中心位置を画像処理にて精度よく検出するためには、円形像はむらのない、均一の明るさの像である必要がある。しかし、円形像には、しばし試料構造の像情報や、対物レンズ形状の像情報が含まれてしまう場合がある。そこで、本処理を実施する前に、上段偏向コイル8および下段偏向コイル10による一次電子ビームの試料上での二次元走査幅を小さくするステップを設けてもよい。また、円形像の明るさやコントラストを、試料像を表示していたときの条件から変更して、適切に設定するステップを設けてもよい。また、円形像の外形には影響を与えない対物レンズ12の状態に対して、対物レンズ制御回路27を通してビームを試料上にフォーカスしない条件に変更するステップを設けてもよい。以上、これらのステップにより、対物絞り孔の像(円形像)には、対物レンズ12の二次電子像情報や、試料13に含まれた特徴的な試料構造の二次電子像情報が含まれないようになり、常に一定の明るさおよびコントラストを持った円形像を表示することができる。従って、画像処理による円形像の中心座標位置の誤検出を少なくすることができ、高精度のビーム中心軸調整を実施することができる。
また、本実施例では、調整精度を向上させるために、以下に示すような処理ステップAを、図3のSTEP2とSTEP3の間に追加することも可能である。
まず、アライナーの初期状態における、円形像の検出に関し、詳細に説明する。
アライナー設定の初期状態によっては、図5に示すように、円形像が調整用像の端に寄りすぎて、円の一部が表示されない場合がある。この場合、画像処理によって円形像を認識して円の中心を求める際、実際の円の中心位置とは異なる位置を、円の中心と認識してしまう可能性があり、ビーム中心軸調整における調整精度が、大幅に低下する恐れがある。そこで、前記STEP3の状態である、ビーム中心軸調整用アライナー41の現在の設定条件(1)(BX0,BY0)で、画像取得手段32を用いて調整用像を取得する状態において、調整用像のある画像領域から外れた位置に円形像が存在した場合は、調整用像の中心方向に円形像が移動するようにアライナーを制御する。これを、図6および図7を用いて説明する。
図6において、ビーム中心軸調整の調整像の全領域が640×480画素であるとする。このとき、画像の中心座標を(0,0)とすると、画像の四隅角の各座標は、図6に示した通りとなる。ここで、この調整像内に表示された円形像の一部が、ある画像領域、例えば調整像全体の7/8となる560×420画素の外側に存在する場合は、円形像を中心方向に一定量移動させるようにアライナーを制御(例えばSだけ変化)する。円形像がこの領域に存在するか否かは、図6に示すように、円形像部分のX方向の最大値(Xmax )と最小値(Xmin )、およびY方向の最大値(Ymax )と最小値(Ymin )を、画像処理により求め、これが図7の表に示したような条件に当てはまるかどうかを確認すればよい。例えば、Xmin =−300,Ymax =+210(Y方向は調整像領域からはみ出している状態)となっている場合は、図7の表中の(1)に相当するので、円形像をX方向に
+S、Y方向に−S変化させるようにアライナーを制御すればよい。以上の処理ステップAにより、円形像が調整用像内の端に寄りすぎて円全体が表示されなくなるという心配がなくなり、ビーム中心軸調整における調整精度を向上させることができる。
(実施例2)
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図9は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。フィラメント51と陽極53には、マイクロプロセッサ(CPU)90で制御される高圧制御電源70により電圧が印加され、所定のエミッション電流で一次電子線54がフィラメント1から引き出される。フィラメント51と陽極53の間には、CPU90で制御される高圧制御電源
70により加速電圧が印加され、陰極51から放出された一次電子線54が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線54は、レンズ制御電源71,72で制御された収束レンズ55,56で収束され、絞り板58で一次電子線の不要な領域が除去された後に、対物レンズ付近で絞り板61を通り対物レンズ制御電源73で制御された対物レンズ
57により試料60に微小スポットとして収束される。対物レンズ57は、対物レンズ制御電源73から供給される電流によって、一次電子線54の収束条件を変化させるように構成されている。
一次電子線54は設定倍率に応じて、走査コイル制御電源74から供給される電流によって制御される走査コイル59によって試料60上を二次元的に走査される。一次電子線の照射で試料60から発生した二次電子等の二次信号62は、対物レンズ57の上部に進行した後、二次信号検出器63に検出される。二次信号検出器63で検出された信号は、信号増幅器64で増幅された後、画像メモリ75に転送されて像表示装置76に試料像として表示される。なお、上記CPU90には画像メモリ75に転送された画像情報を解析し、その明るさを評価するプログラムが組み込まれ、CPU90は画像解析装置としての機能をも備えている。
走査コイル59の近傍もしくは同じ位置に1段の偏向コイル101が配置されており、対物レンズに対するアライナーとして動作する。この偏向コイル101は、対物レンズ用アライナー制御電源81から供給される電流によって、その動作が制御される。また、対物レンズと絞り板との間には、XおよびY方向の非点を補正するための8極の非点補正コイル102が配置される。非点補正コイル102は、非点補正用制御電源82から供給される電流によって、一次電子線54の非点を抑制するように制御される。非点補正コイルの近傍、もしくは同じ位置には非点補正コイルの軸ずれを補正するアライナー103が配置される。このアライナー103は、非点補正器用アライナー制御電源83から供給される電流によって、その動作が制御される。
像表示装置76には、試料像のほかに電子光学系の設定や走査条件の設定を行う種々の操作ボタンの他、軸条件の確認や自動軸合わせの開始を指示するボタンを表示させることができる。
一次電子線54が対物レンズ57の中心からずれた位置を通過した状態(軸がずれた状態)でフォーカス調整を行うと、フォーカス調整に伴い視野の動きが生じる。オペレータが軸ずれに気が付いた場合、表示装置に表示された処理開始ボタンをマウスでクリックするなどの操作により軸合わせ処理の開始を指示することができる。オペレータから軸合わせの指令を受けると、制御CPU90は、図10のフローに沿って処理を開始する。
(実施例3)
図10の処理フローについて、以下に詳細に説明する。
第1ステップ:
対物レンズ57の現在の条件、あるいは、現在の条件に基づいて決められる(例えば、現在のフォーカス条件からフォーカスを少しずらした条件)を条件1として対物レンズ7に設定する。次に、アライナー101の現在の条件、あるいは、予め決められた条件をアライナー101の条件1として設定する。この対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
第2ステップ:
アライナー101の偏向条件を図11のように、条件1に対して光軸に垂直な平面内で180度偏向した条件を条件2として、これをアライナー101に設定する。そして、対物レンズ57の条件を1として、画像2を取得する。
第3ステップ:
アライナー101の偏向条件を条件1もしくは条件2に対して光軸に垂直な平面内で
90度偏向した条件を条件3として、これをアライナー101に設定する。そして、対物レンズ57の条件を1として、画像3を取得する。
第4ステップ:
アライナー101の偏向条件を条件3に対して光軸に垂直な平面内で180度偏向した条件を条件4として、これをアライナー101に設定する。そして、対物レンズ57の条件を1として、画像4を取得する。
第5ステップ:
制御CPU90の画像解析を用いて、画像1と画像2の平均明るさを算出し、比較する。より明るい方向のアライナー条件を条件5と、画像を画像5として登録する。
第6ステップ:
制御CPU90の画像解析を用いて、画像3と画像4の平均明るさを算出し、比較する。より明るい方向のアライナー条件を条件6と、画像を画像6として登録する。
第7ステップ:
アライナー101の偏向条件を条件5として、これをアライナー101に設定する。そして、対物レンズ57の条件を2として、画像7を取得する。
第8ステップ:
アライナー101の偏向条件を条件6として、これをアライナー101に設定する。そして、対物レンズ57の条件を2として、画像8を取得する。
第9ステップ:
画像1と同条件で再度画像を取得し、これを画像59として登録する。
第10ステップ:
画像5と画像7の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像5と画像7の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
第11ステップ:
画像6と画像8の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
第12ステップ:
画像1と画像9の視差を画像処理により検出して、これを視差3として登録する。画像1と画像9とは同一条件で取得したものであるから、これらの画像間にずれ(視差3)があれば、このずれは試料やビームのドリフトによって作られたものである。
第13ステップ:
視差3からドリフト成分を検出して、視差1,2に対してドリフト成分を補正(除去)する。例えば、画像1と画像9の取り込み間隔がt秒であれば、単位時間(秒)当たりのドリフト(d)は、d=(視差5)/tで表される。一方、画像1と2、画像3と4の取り込み間隔がT12,T34とすれば、視差1と視差2には、それぞれ、d×T12、およびd×T34のドリフト成分が含まれていることになるため、視差1,視差2からドリフト成分を差し引くことで、軸ずれに起因した正確な視差を算出することができる。
第14ステップ:
ドリフト補正された視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。2つの視差からアライナーの最適条件の導出は特許文献1に説明された条件による。
このように本発明実施例によれば、アライナー以下に絞りがあった場合でも、絞りによる誤差を低減し、変化する軸ずれの状態や荷電粒子光学系の動作条件(例えば、ビームエネルギーや焦点距離,光学倍率など)に対応が可能であり、軸調整の自動化を容易に実現することが可能になる。
図10の処理フローで対物レンズに対する軸ずれの自動調整の精度が向上する原理を図11,図12を用いて説明する。アライナーによりアライメント条件を変更すると対物レンズ上で荷電粒子線中心軸は対物レンズ中心よりWALだけ移動する。
しかしアライナー以下に絞り板を持つ走査電子顕微鏡においては図12の斜線部分のように絞り板により荷電粒子線が像面まで届かないけられ領域が発生する。通常よりもすくない量の荷電粒子線しか試料に届かなくなるので、画像は暗い物となり、視差検出の相関値も低下し自動調整に誤差が生じる。
そこで、図11のようにアライメントの偏向方向を2方向だけでなく、それぞれ180°転換した4方向に偏向する。画像の明るさを検出し、180°対向した偏向方向での明るさを比較し、より明るい画像が得られる偏向方向を選択する。得られた2つのけられの影響が少ない偏向方向でもって自動軸調整を行うことにより、アライナー以下に絞り板をもつ走査電子顕微鏡においても、誤差の少ない自動軸調整を行うことが可能である。
(実施例4)
一方、非点補正器102についても、本実施例では図10のような処理フローでより精度の高い自動軸調整が可能である。得られた視差ずれから非点補正の最適条件の導出までの原理は特許文献2の説明による。
(実施例5)
図13の処理フローについて以下に詳細に説明する。
第1ステップ:
アライナー101を用いて絞り61上で一次電子ビーム53の走査を行い、絞り孔の像を得る。この絞り孔の像を用いてビーム中心軸調整を行い、一次電子ビーム53が絞り
61中心を通過するように調整を行う。得られた絞り孔像から、一次電子ビーム53が絞り61の中心を通過する最適アライナー条件の導出までの原理は、実施例2の説明と同等の原理に基づく。
第2ステップ:
実施例2の自動軸調整を実施し、対物レンズに対する光軸の調整を実施する。
このような方法によれば、自動軸調整を行う前に、一次電子ビーム53は絞り56の中心を通過しているので、ビームの初期位置によるけられの影響を少なくすることができる。また、アライナーの偏向量を適切に設定すれば、実施例2における偏向方向の比較を行わず、偏向方向を予め決めて自動軸調整を行うことも可能である。その場合、必要な画像数が減るため、実行時間を短縮することができる。
(実施例6)
絞り56は通常対物レンズ57と同軸で取り付けられているため、上記の絞り56に対するビーム中心軸調整を行っただけでも大まかな光軸調整となる。そこで、おおまかに光軸調整を行いたい場合には実施例4のステップ1に記載した絞り56に対するビーム中心軸調整のみを実施し、精密に調整を行いたい場合には実施例4のようにビーム中心軸調整と光軸自動調整の両方を実施するという、必要な調整精度に応じて処理を変更することが可能である。
図14,図15を用いて実施例5として上記のフローを説明する。図14は像表示装置76に表示される画像であり、光軸調整を行う際に使用者は図14の画像を表示し、図
15にしめすフローに沿って軸調整作業を行う。
この場合、大まかな光軸自動調整を行いたい場合に“オート粗調”を押すものとし、精密に光軸自動調整をおこないたい場合は“オート微調”を押すものとし、ボタンの表記、ボタン等調整種類の選択方法の表現はこれに限るものではない。
オペレータが光軸調整を行う場合、オペレータはまず、図14の画像を像表示装置76に表示する。そして画像が表示されると同時に光軸の手動調整用に対物レンズの励磁電流が周期的な変化を開始する。自動調整機能を使用しない場合、オペレータは図14のボタンを押さず、手動にてアライメント偏向機の調整を行う。調整終了後オペレータは図14を閉じて光軸調整を終了する。
自動調整機能を使用する場合、オペレータは図14中の“オート粗調”もしくは“オート微調”のボタンを押す。“オート粗調”を押した場合、制御CPU90は直ちに絞り
61に対するビーム中心軸調整を行う。この場合、自動軸調整は行わない。一方“オート微調”ボタンを押した場合、制御CPU90は、実施例4のように絞り61に対するビーム中心軸調整と自動軸調整を行う。調整終了後オペレータ図14を閉じて光軸調整を終了する。
“オート粗調”を行った場合、ビーム中心軸調整は少ないの画像取得で調整を行うことが出来るため、自動軸調整を行うよりも高速に処理を行うことができる。また、自動軸調整は周期性のある試料を苦手とするが、中心軸調整では走査対象は絞りのため、試料の周期性に影響されない。また、自動軸調整は試料上を走査するため、その際荷電粒子線により試料が損傷するおそれがあるが、ビーム中心軸調整では絞り上を走査するため、その心配がない。
対して“オート微調”を行った場合は、中心軸調整を行った後、自動軸調整を行うため、調整完了まで多少時間のかかるものとなるが、“オート粗調”よりも高精度な軸調整が可能となる。対物レンズの光軸と、対物レンズに取り付けられた絞りの中心軸の機械的な誤差が調整可能なためである。
走査電子顕微鏡の概略図。 対物絞り孔の像の例。 本発明の実施例を行うためのフローチャート。 ビーム中心軸調整の調整用像の様子を示した模式図。 調整用像内の円形像が端によりすぎている状態を示した模式図。 円形像が調整用像の端にあるかを判断する方法を示した説明図。 円形像が調整用像の端にあるかを判断するための条件を纏めた表。 第一収束レンズのクロスオーバ位置とアライナー変化量Sの関係。 本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図。 対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略処理フロー。 アライナー偏向方向の説明図。 絞り板による荷電粒子線のけられ発生の原理図。 対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略処理フロー2。 自動光軸調整機能操作用画像。 自動光軸調整機能操作用画像。
符号の説明
1 陰極
2 第一陽極
3 一次電子ビーム
4 第二陰極
5 第一収束レンズ
6 対物レンズ絞り
7 第二収束レンズ
8 上段偏向コイル
10 下段偏向コイル
12 対物レンズ
13 試料
14 試料微動装置
15 反射電子
16 二次電子
17 直交電磁界(EXB)装置
18,20 検出器
19,21 増幅器
22 高電圧制御回路
23 第一収束レンズ制御回路
24 第二収束レンズ制御回路
26 偏向制御回路
27 対物レンズ制御回路
28 信号制御回路
29 試料微動制御回路
30 コンピュータ
31 表示装置(画面)
32 画像取得手段
33 画像処理手段
34 計算手段
35 記憶手段(内部メモリ)
36 入力手段
41 ビーム中心軸調整用アライナー
42 アライナー制御回路
43 ビーム中心軸調整用偏向器
44 リレースイッチ

Claims (5)

  1. 荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を収束する収束レンズと、
    前記一次荷電粒子線を試料上にフォーカスするための対物レンズと、前記一次荷電粒子線の照射によって得られる二次信号を検出する検出器と、前記収束レンズと前記対物レンズの間に配置される走査偏向器とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記一次荷電粒子線の試料への照射量を制限するために前記走査偏向器と前記収束レンズの間に配置される対物絞りと、
    前記一次荷電粒子線の中心を前記対物絞り上で偏向させるアライナーと、
    当該アライナーによる前記一次荷電粒子線の光軸補正量を求めるコンピュータとを備え、
    当該コンピュータが、
    前記アライナーを動作させずに得られる前記対物絞りの第1の画像と、
    前記一次荷電粒子線を前記アライナーにより前記対物絞り上のX方向に一定量偏向して得られる第2の画像と、
    前記一次荷電粒子線を前記アライナーにより前記対物絞り上のY方向に一定量偏向して得られる第3の画像とを用い、
    前記対物絞りの画像の中心が前記アライナーのX方向とY方向の相対感度によらず動かない条件を求めることにより、
    前記一次荷電粒子線の光軸補正を行い、
    前記条件とは、
    前記第1の画像、前記第2の画像および前記第3の画像それぞれにおける前記対物絞りの中心位置(W 1 ,W 2 ,W 3 )を検出し、
    上記中心位置の情報を、アライナーの条件変化に対する中心位置を導く方程式に当てはめることにより、アライナーの感度を算出し、前記調整用画像を表示している画面中心と、調整用画像の中心とのずれが最小になる条件より求まる、アライナーの制御条件であることを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項に記載の荷電粒子線装置において、
    前記第2の画像および前記第3の画像を得るために、アライナー条件を第2および第3の状態に変化させる場合、そのときの変化量Sは、前記収束レンズで収束される一次荷電粒子線の収束点位置に応じて決定することを特徴とした荷電粒子線装置。
  3. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記第1の画像、前記第2の画像および前記第3の画像を求めるに際し、前記アライナーによる偏向に加えて、前記走査偏向器により前記一次荷電粒子線の試料上での走査幅を小さくする偏向制御を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記第1の画像、前記第2の画像および前記第3の画像を求めるに際し、通常の試料画像観察時とは、明るさおよびコントラストを変更する制御を行うことを特徴とする荷電粒
    子線装置。
  5. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記アライナーによる前記対物絞り上での走査幅を前記収束レンズによる前記一次荷電粒子線のクロスオーバ位置に応じて設定することを特徴とする荷電粒子線装置。
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