JP4928849B2 - 非侵襲的測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、測定プローブを介して光学的に被検体中のグルコースを非侵襲で測定する非侵襲的測定装置に関する。
人体中の分析物、特にグルコースの濃度の非侵襲的測定定量のための複数の先行技術の方法がある。これらの方法で共通するのは、一般的に、光学プローブを身体の一部と接触させ、一連の光学測定を実行し、かつ光信号セットを収集することである。検出された光信号又はこれらの信号から計算される派生光学パラメータは、次に較正関係を確立するために、基準方法によって定量される血糖濃度と相互に関連付けられる。較正関係は、較正モデルとも呼ばれる。患者データから導かれるこの較正モデルは、測定された信号をグルコース濃度に関係付ける数式である。患者のケアのため非侵襲的グルコースモニタを使用する場合、グルコース濃度は、その時測定された光信号、及び以前に確立された較正関係を使用することにより、定量される。
グルコースの非侵襲的測定(NI測定)の定量方法は、分子特性を追跡する直接的方法及び組織特性へのグルコースの効果を追跡する間接的方法のような、2つの広いカテゴリーに分類される。近赤外(NIR)吸収係数、中赤外吸収係数、旋光性、ラマンシフトバンド、及びNIR光音響信号のようなグルコースの固有特性を追跡する、直接的方法は、他の身体分析物と無関係な、かつ身体の生理的状態と無関係な、組織又は血液中のグルコースを検出する能力を前提とする。組織の光学特性へのグルコースの効果を追跡する間接的方法は、組織の散乱係数、間質液(ISF)の屈折率、及び組織中の音の伝搬を測定する方法を含む。
グルコース分子特性を追跡する方法は、グルコースに特異的と見なされ得る極めて弱い信号に出会う。生物雑音、プローブの再位置決め誤差、個人対個人の変動、及び測定雑音が、グルコース特異的信号の小さな変化を圧倒し得る。組織特性へのグルコースの効果を追跡する間接的方法は、散乱係数変化の定量の場合に関しては明白である、計算されるパラメータ及びグルコース濃度間の非特異的関係のために、大きな難題に直面する。Khalilは、グルコース定量の非侵襲的測定方法及び較正方法を再検討した。例えば、総論(非特許文献1及び2)を参照せよ。信号の低いレベル及び測定される生物学系の複雑さのため、特別な信号処理及びデータ処理方法が、較正及び予測アルゴリズムを設定するために使用されねばならない。
多変量解析が、複雑な混合物中の構成要素の濃度を定量するためのデータ処理に一般的に使用された。多変量解析は、グルコース関連情報を雑音のあるデータセットから抽出するためにも使用される。例えば学術論文(非特許文献3及び4)を参照することができる。多変量解析は、近赤外(NIR)スペクトル測定及びスペクトルへの温度効果に基づく、非侵襲的測定グルコース測定のデータ解析に使用された。例えば学術論文の非特許文献5、6、7、8、9及び10を参照せよ。非侵襲的測定グルコース較正のための多変量解析の使用は、特許文献1及び2で開示された。
較正モデルを確立する簡易な方法は、測定された非侵襲的測定データを、侵襲的に定量測定されることで真値近似で得られるグルコース濃度に、適合させることである。線形最小二乗(LLS)フィッティング又は部分最小二乗(PLS)フィッティングのような回帰方法が、一般的に使用される。較正相関係数(R)及び較正の標準誤差(SEC)が、次に計算される。
較正モデルは、次に1つのデータポイントを、較正セットとして残りのデータポイントを使用して、予測する能力を確認することによって検証され得る。該方法は、セット中の各データポイントに関して反復される。これは、一つを除外する交差検証(leave−one−out cross validation)(LOOCV)として知られている。次に予測値及び基準値は、交差検証予測の標準誤差(SECV)及び交差検証相関係数(Rcv)を計算するために、使用される。低いSECV及び高いRcvは、較正モデルの有効性を示す。これらのRcv及びSECV値は、モデルの予測能力を示すために、注意を払って使用できる。特に、少数のデータポイントのみが利用できる場合に注意が必要である。LOOCV手続きは、同じ実験セットからのデータポイントの使用を含むので、装置又は実験の時間依存性事象との擬似相関の効果が起きやすい。真の予測は、様々な期間にわたって得られた独立した較正及び予測データセットを使用することによってのみ達成できる。2つの計算される予測パラメータは、予測相関係数(R)及び予測の標準誤差(SEP)である。
非侵襲的測定の質は、予測の標準誤差(SEP)及び予測相関係数Rの大きさによって主に判断される。低いSEPは、高い相関係数と結び付けられた時、成功した定量であることを示す。(a)狭い範囲の分析物濃度、(b)他の時間依存性事象との偶発相関、及び(c)実験データのオーバーフィッティング(overfitting)の可能性を防止する必要がある。オーバーフィッティングの効果を回避するために、細心の注意を払う必要がある。較正(訓練)セット及び予測セットは、時間が経つと分離される必要がある。測定データポイントの数は、較正モデルの方程式のスペクトル、温度、距離等のような独立なパラメータに関する項数よりも大きくなければならない。
高いSEPは、次の3つの方式のいずれかで解釈できる。すなわち(a)較正モデルが、グルコース特異的情報に欠ける、(b)グルコース予測が、測定雑音によって限定される、又は(c)グルコース予測が、身体の一部中の生物的背景雑音、及び身体の一部に対するプローブの再位置決め誤差によって限定される。循環パラメータ、皮膚表面条件、皮膚含水量、概日リズム効果、及び温度変化のような生物的変数は、グルコースの非侵襲的測定定量において、まだ十分に詳細に考慮されていない、雑音源の例である。長期間にわたる、これらの生物的変数の変化は、先行技術において考慮されなかった。
ヒト血液中のグルコース濃度の概日変動、並びに体温及びその他の生命徴候の概日周期性の間に同時相関の可能性がある。概日体温の効果、及び非侵襲的測定への血流効果を分離することは、重要であり、従ってそれらは、血糖濃度を計算するために使用される信号を混同しない。
非侵襲的測定グルコース装置の較正は、種々の侵襲的に定量されグルコース濃度及び対応する非侵襲的測定信号が利用できることを必要とする。一つの較正のアプローチは、体内測定された信号が、観察できる範囲にわたるグルコース濃度の変化を誘発することである。このことは、経口グルコース負荷試験(OGTT)、又は食事負荷試験(MTT)を使用することによって達成される。これら全ての手続きが、先行技術に記載されている。OGTTにおいて、既知の負荷(load)、概して75gのグルコースが、絶食している被検体に与えられ、かつグルコース濃度は、時間に応じて追跡される。
MTTは、グルコース負荷よりも炭水化物負荷が食事として投与されることを除きOGTTに類似している。テスト期間に発生したデータは、後続の非侵襲的測定からグルコース濃度を予測するために使用できる。非侵襲的測定装置の応答が、相関するOGTT又はMTTデータに基づく較正に依存して、非グルコース関連の生理的効果を具体化し得るので、非侵襲的測定装置の応答は、検査された個人に特有の較正モデルをもたらす。
無作為抽出された経時的サンプリングが、実行できない時、時間依存性アーチファクトは、多変量較正の結果に影響を与え得る。装置関連の時間変数に加えて、すでに論じた人体の概日リズムは、順次MTTデータポイントに重ねられる擬似時間依存性生物的背景をもたらし得る。OGTT及びMTTデータは、特定の非侵襲的測定信号が、誘発されたグルコース濃度変化によって変動することを証明するために必要とされるが、長期間にわたる信号対血糖値の信頼できる較正を確立するためには十分でない。
時間依存性効果の影響が少ない較正方法は、一日の中で及び長期間にわたって無作為抽出された時間帯で実行される無作為スポット検査である。このアプローチは、複数の生理的条件をカバーし、かつ概日リズム関連の相関を回避するデータポイントの使用を可能にする。それは、ほとんど装置関連の偶発的相関を回避する。このタイプの調査は、長期的調査と呼ばれ、3週間を超え、かつ数ヶ月に及ぶ長期間、患者のグルコース濃度変化を追跡することを含む。
長期的調査において、Samann et al(非特許文献11)は、800〜1350nmスペクトル域にわたるヒト指の拡散反射率の長期精度及び安定性を報告した。糖尿病を持つ10人の患者のスペクトルが、評価された。個人較正モデルが、スペクトルから各患者に関して計算され、調査の初めに記録された。これらのモデルは次に、84〜169日後に記録された、続いて得られたスペクトルから血糖値を計算するために適用された。予測の二乗平均平方根誤差として表現される較正モデルの長期精度及び安定性は、3.1〜35.9mmol/Lで変動したが、それは、臨床的に有意なグルコース濃度の定量で使用するためには、高すぎる。結果は、検出及び較正方法の長期安定性を改良し、かつ根底にある経時的な生理的過程を理解する必要性を示している。それは、時間が進むにつれ、較正モデルが変動することも示している。Samann et alは、較正モデルを更新することを考慮しなかったし、その長期的調査時間にわたり、較正モデルを更新する方法を提示もしなかった。
Burmeister et al(前掲、非特許文献8)は、39日の期間にわたり、1型糖尿病を持つ5人の被検体の舌を通るNIR(1430〜2000nm)透過を、1日当たり5回の測定を実行して調査した。舌は、高い血管分布を有し、SC(表皮)を有さず、僅かな脂肪組織を有し、均質な身体の一部であり、ほぼ一定の温度を有し、かつ5〜6mmの水性有効光路長を提供するので、舌が選択された。予測データポイントの両方のセットが、異なる日に得られた。OGTT又はMTTの代わりに、数週間にわたってデータ収集を広げること(無作為な一連のスポット検査)は、時間的効果によるデータセットの汚染を軽減する。PLS較正モデルは、異なる個人に関して発生した。モデルは、(5回の測定毎の)ブラインドサンプル濃度、又は個人によって異なるSEP>3mmol/LかつRによるデータの後部を予測するために使用された。舌は、角質層又は皮膚層を有さないが、予測データは、限られた感度のものであるが、Samann et al(前掲、非特許文献11)によって開示された皮膚の場合よりも良い。Burmeister et alは、較正モデルを更新することを考慮しなかったし、その長期的調査時間にわたり、較正モデルを更新する方法を提示もしなかった。
Khalil(非特許文献1)は、「非侵襲的測定装置の応答が、相関するOGTT又はMTTデータに基づく較正に依存して、非グルコース関連の生理的効果を具体化し得るので、非侵襲的測定装置の応答は、検査された個人に特有の較正モデルをもたらす。この較正モデルは、侵襲的テストを使用して定期的に更新される必要がある」と主張した。しかしながら、Khalilは、長期間にわたり、較正モデルを更新する方法を提示しなかった。Khalilは、信号への季節的変動の効果を克服するための、較正モデル更新も論じなかった。
皮膚特性は、環境条件次第で変化する。Forst et alの非特許文献12は、糖尿病及び非糖尿病被検体に皮膚の厚さ測定、及び血流測定を実行した。検査は、温度が段階的に25℃から9℃に変動し、かつ次に次第に25℃に再度上昇した人工気候室内で実行された。測定は、前腕皮膚で実行された。皮膚温度は、9℃で32℃から24.5℃に下がり、かつ再度の25℃で28.6℃に達した。皮膚の厚さ及び皮膚血流は、環境温度が変化するにつれて、類似したパターンを辿った。皮膚の厚さ及び血流は、非糖尿病被検体よりも糖尿病被検体に関して低かったが、環境的変化への応答は、類似していた。それ故に、皮膚血液循環及び皮膚の厚さは、環境条件によって変動する。人工気候室内の温度変動は、長期間にわたる季節的な温度変化を模倣し、かつ機器及び被検体への極度な環境効果を検査する。
皮膚の水分補給は、季節により変化する。例えば冬には、皮膚は乾燥し、落屑性であり、夏には、湿って柔軟である。それ故に、時間が進むにつれ、かつ皮膚特性が、環境条件の変化に応じて変化し得る2つ以上の季節間を時間が経つにつれ、非侵襲的光学測定の較正関係を更新することが必要である。
種々の生理的条件、及びヒト組織、特にヒト皮膚の特性への季節的及び環境的変化の効果をカバーする、より強力かつ安定した較正モデルを導くことが必要である。
米国特許第4974581号明細書 米国特許第5435309号明細書 O.S.Khalil,"Non−Invasive Glucose Measurement Technologies:An update from 1999 to the dawn of the new millennium",Diabetes Technol Ther 2004;6:660−697 O.S.Khalil,"Spectroscopic and clinical aspects of noninvasive glucose measurements",Clinical Chemistry 1999;45:165−177 D.M.Haaland et al,"Application of new least square analysis methods for the quantitative analysis of multicomponent samples",Appl Spectrosc 1982;36:665−673 D.M.Haaland et al,"Multivariate least−squares methods applied to quantitative spectral analysis of multicomponent samples",Appl Spectrosc 1985;39:73−84 S−j Yeh et al,"Monitoring blood glucose changes in cutaneous tissue by temperature−modulated localized reflectance measurements",Clin Chem 2003;49:924−934; S.F.Malin et al,"Noninvasive prediction of glucose by near−infrared diffuse reflectance spectroscopy",Clin Chem 1999;45:1651−1658 Gabriely I.et al,"Transcutaneous glucose measurement using near infrared spectroscopy during hypoglycemia",Diabetes Care 1999;22:2026−2032 J.J.Burmeister et al,"Noninvasive blood glucose measurements by near−infrared transmission spectroscopy across human tongues", Diabetes Technol Ther 2000;2:5−16 Robinson et al,"Noninvasive glucose monitoring in diabetic patients:A preliminary evaluation"Clin Chem 1992;38:1618−22 Ward et al,"Postprandial blood−glucose determination by quantitative midinfrared spectroscopy",Appl Spectrosc 1992;46:959−65 Samann et al,"Non−invasive blood glucose monitoring by means of near infrared spectroscopy:investigation of long−term accuracy and stability",Exp Clin Endocrinol Diabetes 2000;108:406−413 Forst et al,"Impact of environmental temperature on skin thickness and microvascular blood flow in Diabetic and non−diabetic subjects"Diabetes Technology and Therapeuticsの発表のために提出された論文
本発明の目的は、被検体中の分析物濃度の非浸襲的測定精度の向上を図ることである。
本発明のある局面は、被検体に接触される測定プローブと、前記測定プローブに接続される光源及び光検出器と、光学的に非侵襲で被検体中のグルコースに関連する情報を測定するために前記光源及び光検出器を制御するとともに、前記光検出器の出力から較正モデルによりグルコース値を予測するコンピュータ部とを有する非侵襲的測定装置において、前記コンピュータ部は、所定期間にわたる非侵襲的測定の繰り返しにより取得されたデータセットから前記較正モデルの較正回帰パラメータを決定し、前記所定期間後複数日にわたって各日ごとに非侵襲的測定の繰り返しにより取得された予測データセットから前記較正モデルを使って基準測定値に対する回帰計算を実行することにより前記較正モデルの予測回帰パラメータを決定し、続いて非侵襲的測定を実行し、前記較正モデルを使用してグルコース濃度を予測し、前記予測されたグルコース濃度により患者治療管理を行い、単一の非侵襲的データポイントとそれに対応する基準血糖値により再較正処理を実行し、前記較正モデルを使用して非侵襲的に定量されたグルコース濃度を予測し、前記予測したグルコース濃度及び前記基準グルコース濃度の間の差異から前記非侵襲的測定の精度をチェックし、前記較正モデルを更新する。
本発明によれば、被検体中の分析物濃度の非浸襲的測定精度の向上を図ることが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
まず、本実施形態はその概要において、時間経過に伴う組織特性の季節的及び生理的変動を明らかにするための較正関係を改良して、非侵襲的グルコース値の予測精度を向上するものである。該方法は次の複数のステップを有する(図5参照)。
(a)複数の較正日に関して非侵襲的測定(NI測定)及び基準侵襲的(I)測定を実行し、1日当たり複数のデータポイントを得る。複数の日にわたって得られたこのデータポイントのセットは、較正セットと称される。
(b)較正関係を得るために、線形最小二乗(LLSQ)又は部分最小二乗(PLS)フィッティングを使用して、非侵襲的測定及び侵襲的測定の基準データポイントに関して回帰計算を実行する。較正の標準誤差(SEC)及び較正相関係数(R)を定量する。それが指定範囲内にあるか確認する。それが許容可能な範囲内にあるならば、較正は、成功であると判定される。
(c)1又は複数の週にわたって、各日の中で無作為抽出された時間帯で、非侵襲的測定及び基準侵襲的測定のセットを実行する。複数の日にわたって得られたこのデータポイントセットを予測セットと称する。
(d)予測関係を得るために、線形最小二乗(LLSQ)又は部分最小二乗(PLS)フィッティングを使用して、非侵襲的測定(NI)及び侵襲的測定(I)の基準データポイントに関して回帰計算を実行する。予測の標準誤差(SEP)及び予測相関係数(R)を定量する。それが指定範囲内にあるか確認する。それが許容可能な範囲内にあるならば、予測は、検証に成功したと判定される。
(e)較正モデルの確立、並びに、グルコース値を予測するモデル及び装置の能力の確認後、無作為非侵襲的測定データポイントを得て、かつ較正モデル及び非侵襲的測定信号を使用して、グルコース値を予測するために、無作為非侵襲的測定を実行する。患者の血糖状態の評価、及び患者の治療管理に、結果として生じたグルコース値を使用する。
(f)非侵襲的測定データポイントを得るための1つの非侵襲的測定、及びグルコース基準値を得るための対応する血糖基準測定を実行することにより、装置及びモデルを定期的に再較正する。非侵襲的測定データポイント及び侵襲的データポイントセットは、再較正データポイントを含む。再較正データポイントのためのグルコース値を予測するために較正関係を使用する。非侵襲的測定定量されたグルコース値の精度、予測値及び侵襲的に定量された値間の差を確認する。差は、規格値毎に許容可能(許容可能なSEP値の範囲内)でなければならない。
(g)次のステップを使用して較正モデルを更新する。
a)nのポイント数を有する較正データセットに戻る、
b)(n−1)の非侵襲的測定データポイント及び対応する侵襲的グルコース値を有するために、第1データポイントを抜かす、
c)(n)の非侵襲的測定データポイント及び対応する侵襲的グルコース値を有するために、再較正データポイントの非侵襲的測定入力、及び対応する侵襲的グルコース値を加える、
d)非侵襲的測定データポイント対グルコースの線形最小二乗フィッティング(LLSQ)又は部分最小二乗フィッティング(PLS)を利用して較正関係を再実行する、
e)再較正データポイントを再度予測し、精度を定量し、許容可能であれば、血液サンプリング及び非侵襲的測定を続行するか、又は反復する、
(h)季節的及び環境的変化をカバーする長期間にわたる一定の時間間隔で、再較正及び更新過程を反復し、それにより更新された較正モデルは、非侵襲的測定への季節的、生理的及び環境的変化の効果を表すデータポイントに基づくようになる。
一定の時間隔で、例えば毎週、再較正及び更新過程を反復すること、最先の較正ポイントを抜かすこと、及び最新の再較正ポイントを加えること、及び較正関係を再実行することは、加えられた期間により時間基準を移すことによって較正モデルを更新する。複数の再較正データポイントが元の数の較正データポイントに代わった後、更新された較正データセットは、1年の異なる季節で得られたデータポイントを表す。過程を反復することにより、1年にわたる複数の環境条件に対応する1年毎の複数の較正モデルを有することが可能になる。定期的、例えば毎週又は3日毎に実行される更新過程は、グルコースの非侵襲的定量に関して季節調整された較正関係をもたらす。
図1に本実施形態に係るグルコースの非侵襲的測定装置を示している。プローブ1は、発熱体としての熱電気モジュール2と、被検体の皮膚に接触するパッド3とを有する。熱電気モジュール2による発熱量は、温度コントローラ4により調整される。さらに温度コントローラ4の温度調整動作はコンピュータ5の制御下にある。コンピュータ5は温度調整制御とともに、グルコース非侵襲的測定処理制御及び較正更新処理制御を担っている。プローブ1の略中央部には筒状に開口が形成され、そこに光ファイバ8、9が挿入される。光ファイバ8には光源6が光学的に結合され、光ファイバ9には光検出器(信号検出器)7が光学的に結合される。
光ファイバ8は中央に置かれ、その周囲を複数の光ファイバ9が取り囲む。光ファイバ8と光ファイバ9との最大距離は、2mm未満である。つまり直径4mmの略円形範囲に光ファイバ8、9が束ねられる。測定に際しては一滴のシリコン油を、被検体の皮膚に適用し、かつ拭き取り、皮膚上に非常に薄い油の層を残して、熱伝導率を強化する。
図2A、図2Bに、本実施形態に係る非侵襲的測定装置の典型的な外観を示している。当該装置のハウジング(筐体)10の一部には溝状に窪んだアームトレイ25が形成される。アームトレイ25の略中央部分には測定プローブ1の表面が露出している。アームトレイ25の両端にはそれぞれ固定プラットフォーム13が装備される。測定に際しては、被検体の腕の一部分(被測定部位)はプローブ1の表面に接触する状態で、被検体はアームトレイ25に腕を横たえる。
以下に、コンピュータ5の制御による較正更新処理について説明する。
(非侵襲的測定データの較正、較正データセット又は訓練セット)
較正データセットは、様々な生理的状態を含む特定期間にわたって収集される複数ポイント(n)の非侵襲的測定データである。1週間又は2週間のような期間で十分である。データポイントの数nは、線形最小二乗法、部分最小二乗法、人工ニューラルネットワーク(ANN)等を使用して、較正モデルを確立するために使用される。較正データセットは、訓練データセットとも呼ばれる。
(非侵襲的グルコース較正関係又は較正モデル)
較正モデルを確立する一つの方法は、測定された非侵襲的測定により取得したデータを、侵襲的に定量測定されたグルコース濃度に適合させることである。適合には、線形最小二乗法(LLS)又は部分最小二乗法(PLS)のような回帰方法が採用される。例えば線形較正モデルは、次の(1)式で表される。
[グルコース]=a+Σ×P(k,l,m) (1)
(1)式中、[グルコース]は、グルコース濃度であり、aは、回帰係数であり、Pは、測定されたパラメータであり、k,l,mは、様々な波長、距離、温度等の種々の制約である。(1)式は、較正モデルとしても知られている。較正相関係数R及び較正の標準誤差SECが、次に定量される。
測定されたパラメータPは、1つの波長で、又は波長帯(スペクトルバンド)で定量された光学パラメータ値であっても良い。光学パラメータは、次のものを含む。
a;波長ごとの吸光度値
b;波長ごとのLog(I/Ireference)値(ここでIは拡散反射された光強度であり、かつIreferenceは、拡散反射された基準光強度であり、両値とも複数の波長で定量される)
c:波長ごとの拡散反射率値
d;波長と光源−検出器距離との組み合わせごとの局在反射率値
e;波長と、光源−検出器距離と、距離と、温度との組み合わせごとの局在反射率値(前掲のYeh et al参照)
f;波長ごとの吸収係数、散乱係数、又は両方の計算値
g;波長と、温度の組み合わせごとの吸収係数、散乱係数、又は両方の計算値
h;光音響信号又はラマンシフト
体外及び体内較正実験の間の主な相違は、人体が、概日リズムで明らかな、時間依存性の生理学的効果を有することである。休止状態では、心拍、血圧、血液循環、呼吸、体温及び皮膚血流は、概日周期性を受ける。これらのパラメータは、午前8時から正午の間と、午後4時から午後7時の間に再度、最高値に接近する。それらは、午後1時から午後3時の間と、午後10時から翌朝午前6時の間に再度、最低値にある。正常な健常人に関するこの規則的な周期性は、環境条件の変化、及びある種の疾病によって混乱する。その一方で糖尿病を持たない健常人、及び制御内糖尿病(in−control diabetes)を持つ患者におけるのグルコース濃度は、一日の中で変動し、かつ規則的な形状を辿る。一般的に朝のグルコース値は、低い(空腹時グルコース)。グルコースレベルは、朝食後に実質的に増加し、正午前の最下点まで減少し、昼食及び夕食後に再度増加し、かつ夜間は低い値に落ち着く。この形状は、糖尿病患者において歪められる。このパターンから逸脱することは、必要に応じてインスリン注射又は糖摂取のような干渉を必要とする。厳格な血糖制御は、糖尿病患者の一日のグルコース変動パターンを、健常人のそれに近く戻すことができる。
較正データセットが、できるだけ多くの生理的条件をカバーし、かつそれを構築するために使用するデータポイントが、無作為に、かつ種々の日−時間帯に得られることが、重要である。朝又は正午データポイントのような1つの特定の日−時間帯を使用することは、フィッティングアルゴリズムを信号の特定の時間行動に結び付け、かつグルコース濃度に起因する真の信号の変化に結び付けない。
(非侵襲的測定によるグルコースデータセット又は試験データセット)
真の予測は、異なる期間にわたって得られた独立した較正及び予測データポイントを使用することによってのみ達成され得る。他の週のような、異なる期間に得られたデータポイントのもう一つのセットnは、グルコース値を予測するために、較正モデルの能力を検査するために使用される。予測データセットは、検査セットとしても知られている。非侵襲的測定予測データセットのデータポイントと関連したグルコース値は、総数がnで、次に較正関係及び非侵襲的測定信号値又はこれらの信号から導かれるパラメータから定量される。2つの計算された予測パラメータは、Rであり、かつSEPが、異なる時間間隔でグルコース値を予測すべく、方法の能力を検証するために使用される。
(非侵襲的グルコース定量データポイント)
較正を完了し、かつモデルの予測精度を検証した後、コンピュータ部5は、測定された非侵襲的測定パラメータ及び記憶された較正関係からグルコース濃度を定量するために使用される。このように、無作為個人非侵襲的測定データポイントは、収集され、かつ各データポイントに関してグルコース値が、較正関係を用いて予測される。結果として生じたグルコース値は、次に患者の血糖状態、及び患者の治療選択の評価で使用される。グルコース定量データポイントは、随伴性基準血糖値を得ることなく、グルコース値を予測するために使用される非侵襲的測定データポイントである。それは、較正又は予測セットの一部でなく、かついつでも定量できる。
(非侵襲的グルコース再較正データポイント)
体外診断装置の場合のように、非侵襲的測定装置を再較正する必要がある。体外試薬キットは、機器/試薬キットの組み合わせを使用して、標準曲線を設定するために使用される較正器セット、及び機器及び/又は試薬キットが、設定規格値まで実行されているか確認するために定期的に実行される実行制御装置セットを有する。機器較正は、機器性能のドリフト及び試薬キットの劣化、又は環境又は操作条件の変化を確認するために実行される。
体外装置の較正は、問題の分析物の既知の濃度を有し、同じ機器及び試薬を使用して検査を実行する合成較正材料を使用することによって達成される。各較正用溶液の機器信号は、較正器の濃度にフィッティングれる。標準曲線が得られ、かつサンプル中の分析物の濃度を計算するために使用される。較正は、定期的に反復でき、かつ較正間の時間が長いほど、試薬/機器システムは良好である。
較正器の使用に加えて、実行制御装置が、機器較正の間の各実行の性能を確認するために時には使用される。実行制御装置は、分析物の既知の濃度を有し、かつそれに割り当てられた濃度範囲を有する溶液である。それは、機器操作の間、サンプルとして実行される。実行制御装置中の分析物濃度値は、実行制御装置の特定の濃度範囲内にあるか見極めるために確認される。分析物濃度の定量された値が、所定範囲外にあるならば、機器は、標準曲線をやり直すことによる再較正が必要であるか、又は新規な標準曲線が、試薬キットに関して確立される必要がある。
家庭グルコースモニタ(HGM)の場合、多数の検査ストリップの各々が、較正ストリップ、及び1種以上の制御溶液を有する。較正ストリップは、この特定ロットからストリップを使用して、グルコース濃度を計算するために、手持ち装置用の計算パラメータを設定するために使用される。較正器溶液は、既知のグルコース濃度を有するグルコース水溶液である。一滴の較正器溶液が、計器中に挿入された検査ストリップ上に置かれ、かつグルコース値が、定量される。体外診断装置によって定量される較正器のグルコース値が、所定範囲内にあるならば、計器及び検査ストリップロットの両方が、許容可能であると見なされ、かつ報告されるグルコース値は、糖尿病管理に使用される。
非侵襲的測定の場合に、測定及び機器用の標準曲線を定量するための制御装置及び較正器の同等のセットはない。確立された較正関係からの機器の偏差を定量する、類似した試薬もない。非侵襲的機器に関する較正及び定期的再較正の両方とも、先行技術では論じられていない。
次の事項を考慮して、非侵襲的グルコース測定装置を再較正する方法を提供することは、本実施形態において重要な要素の一つである。
a)実際に患者から測定したデータは非侵襲的測定装置を較正し、かつ再較正を確認するのに不可欠である。
b)皮膚は、温度及び湿度のような環境条件に応じて、疾病の程度により、かつ角質層の水分補給変化によりその特性を変える。
c)皮膚の荒れ、血流。
d)皮膚の水分補給は、季節により変化し、冬には、皮膚は乾燥し、落屑性であり、夏には、湿って柔軟である。
e)患者の生理的状態は、時間により変化する。皮膚への血流は、温度により変動し、血流は、温度、湿度及び物理的活動に応じて変動し、かつ血流は、疾病の進行に応じて変動する。
f)コラーゲン構造及びコラーゲングリケーションは、血糖制御の程度に応じて、時間により変動する。
時間が進行するにつれて較正関係を更新する必要性は、皮膚が、環境条件の変化に応じてその特性を変化させることから生じる。Forst et al(”Impact of environmental temperature on skin thickness and microvascular blood flow in Diabetic and non−diabetic subjects”Diabetes Technology and Therapeuticsでの発表のために提出された論文)による論文において、彼らは糖尿病及び非糖尿病被検体に皮膚の厚さ測定及び血流測定を実行した。検査は、温度が段階的に25℃から9℃に変動し、かつ次に次第に25℃に再度上昇する人工気候室内で行われた。測定は、前腕皮膚で実行された。皮膚温度は、9℃で32℃から24.5℃に下がり、かつ再度の25℃で28.6℃に達した。皮膚の厚さ及び皮膚血流は、環境温度が変化するにつれて、類似したパターンを辿った。皮膚の厚さ及び血流は、非糖尿病被検体よりも糖尿病被検体に関して低かったが、環境的変化への応答は、類似していた。それ故に、皮膚血液循環及び皮膚の厚さは、環境条件によって変動する。人工気候室内の温度変動は、長期間にわたる季節的な温度変化を模倣し、かつ機器及び被検体への極度な環境効果を検査するために行われる。
皮膚の厚さ及び皮膚への血流、すなわち血液循環は、環境温度によって変動し、皮膚の吸収及び散乱係数の両方は、環境条件により変化する。血液循環の減少は、皮膚の吸収係数の減少をもたらし、かつ厚さの変化は、皮膚の散乱係数の変化をもたらす。皮膚は、測定が実行される間、光窓の役を務める。皮膚の光学特性の変化は、測定基準の移動をもたらす。更に、Simonsen及びGratton(前掲)の前に、グルコース濃度の変化が、散乱係数の規模に影響を及ぼすことが示された。この環境的に誘発された、皮膚の吸収及び散乱係数の変化は、皮膚が異なる特性を有する時に、異なる環境条件で実行された較正関係に基づきグルコース値を予測する能力に影響を及ぼす。
非侵襲的測定装置を再較正することが必要であるので、再較正データポイントを次のように定義する。基準血糖値により、グルコース値を予測するために使用される1つの非侵襲的測定データポイントは、3日毎又は毎週のような一定の時間間隔(頻度)で定量できる。再較正データポイントは、一日の中で複数の時間帯にわたって無作為に分布せねばならない。例えば、早朝、午前中遅く、昼食前、昼食後、午後遅く、夕食前及び夕食後のように、一日を2〜4時間の時間帯に分割することが、可能である。グルコース値及び非侵襲的測定は、各時間帯で実行され、かつ再較正のために使用される。
一日の中の様々な時間帯で得られる再較正データポイントが、できるだけ多くの生理的条件をカバーすることが、重要である。較正関係を更新するために使用されるデータポイントは、無作為に、かつ一日の中の種々の時間帯で得られねばならない。朝又は正午データポイントのような1つの特定の時間帯のみを使用することは、フィッティングアルゴリズムを信号の特定の時間行動に結び付け、かつグルコース濃度の真の変化に結び付けない。非侵襲的測定データポイント及び較正関係から予測される値、及び基準方法によって定量される血糖値の間の差は、測定の精度及び較正からの可能な偏差を確立するために使用される。
本実施形態は、時間経過に伴う組織特性の季節的及び生理的変動を明らかにするための較正関係を改良することによる、非侵襲的グルコース値の予測を改良する方法である。該方法は、次のステップを含む。
a)複数の較正日に、非侵襲的測定と基準侵襲的測定とを実行し、1日当たり複数のデータポイントを得る。複数の日にわたって得られたこのデータポイントのセットは、較正セットである。較正日数は、例えば1〜2週間である。較正モデルで使用するために、少なくとも30のデータポイントを要するため、1日当たり4又は5回データ測定を繰り返し、4又は5つのデータポイントを収集する。
b)線形最小二乗法(LLSQ)又は部分最小二乗法(PLS)を使用して、非侵襲的測定及び侵襲的測定により取得したデータに関して回帰計算を実行する。回帰過程は、較正関係又は較正モデルをもたらす。回帰パラメータ、すなわち較正の標準誤差(SEC)及び較正相関係数(R)を定量する。コンピュータ部5は、計算された回帰パラメータが、良好な較正モデルをもたらすと認められ、かつ測定方法及び装置に関して特定された範囲内にあるか確認する。SEC及びRが許容可能な範囲内にあるならば、較正は、成功と判定し、その較正モデルは、グルコース値を予測するために使用できると判断する。
c)他の期間で、一日の中で無作為抽出された時間帯で、複数のデータポイントに関する非侵襲的測定と基準侵襲的測定とをセットとして実行する。複数の日にわたって得られたこのデータポイントセットを予測セットとして使用する。
d)線形最小二乗(LLSQ)又は部分最小二乗(PLS)及びステップ(c)で確立された較正モデルを使用して、非侵襲的測定及び侵襲的(I)データポイントに関して回帰計算を実行する。予測データセットに関する回帰計算を実行することは、予測回帰パラメータセットをもたらす。予測の標準誤差(SEP)及び予測相関係数(R)を定量する。回帰パラメータが指定範囲内にあるか確認する。それらが許容可能な範囲内にあるならば、予測は、検証に成功し、かつ患者のグルコース定量のために装置、並びに較正及び予測モデルを使用することが可能である。
e)較正モデルの確立、及びグルコース値を予測するその能力の確立後、無作為非侵襲的測定データポイントを得て、かつ較正関係及び非侵襲的測定信号を使用して、グルコース値を予測するために、無作為非侵襲的測定を実行する。患者の糖尿病管理及び患者の治療の評価に、結果として生じたグルコース値を使用する。
f)非侵襲的測定データポイントを得るための1つの非侵襲的測定、及びグルコース基準値を得るための対応する血糖基準測定を実行することにより、定期的再較正手続きを実行する。非侵襲的測定データポイント及び侵襲的データポイントセットは、再較正データポイントを含む。
g)次のステップを使用して較正モデルを更新する。
a.較正データセットに戻る、
b.(n−1)の非侵襲的データポイント及び対応する侵襲的グルコース値を有するために、第1データポイントを抜かす、
c.(n)の非侵襲的データポイント及び対応する侵襲的グルコース値を有するために、再較正データポイントの非侵襲的測定入力、及び対応する侵襲的グルコース値を加える、
d.侵襲的に定量されたグルコース値への非侵襲的データポイントのLLSQ又はPLSフィッティングを使用してnデータポイントの較正関係を再実行する、
e.更新された較正関係を使用して、再較正データポイントのグルコース濃度を予測し、精度を定量し、許容可能であれば、血液サンプリング及び非侵襲的測定を続行するか、又は反復する、
h)季節的及び環境的変化をカバーする長期間にわたる一定の時間間隔で、再較正及び更新過程を反復し、それにより更新された較正モデルは、非侵襲的測定への季節的、生理的及び環境的変化の効果を表すデータポイントに基づくようになる。
較正の標準誤差及び較正相関係数は、グルコースの非侵襲的測定定量のための較正パラメータである。それらは、成功した較正を示すために、複数の許容基準を満たさねばならない。例えば、グルコースの非侵襲的定量に関して、値Rは、高いことが好ましい。それ故に0.7<R<0.9の範囲内のR値は、許容可能である。しかしながら、0.8<R<0.95の範囲内のR値は、好ましい。0.9<R<0.99のような限定は、更に好ましい。較正の標準誤差の許容可能な範囲は、装置が使用される血糖範囲次第である。それ故に、装置が200mg/dlを超える高血糖振幅のみを検出するために使用されるならば、SEC値は、20mg/dL<SEC<40mg/dLの範囲内である。20mg/dL<SEC<30mg/dLのような、より小さい範囲が好まれる。18mg/dL<SEC<24mg/dLのような厳格な範囲は、更に好ましい。
予測の標準誤差及び予測相関係数は、グルコースの非侵襲的測定定量のための予測パラメータである。それらは、成功した較正を示すために、複数の許容基準を満たさねばならない。例えば、グルコースの非侵襲的定量に関して、値Rは、高いことが好ましい。それ故に0.7<R<0.9の範囲内のR値は、許容可能である。しかしながら、0.8<R<0.95の範囲内のR値は、好ましい。0.9<R<0.99のような限定は、更に好ましい。SEPの許容可能な範囲は、装置が使用される血糖範囲次第である。それ故に、装置が200mg/dlを超える高血糖振幅のみを検出するために使用されるならば、SEP値は、20mg/dL<SEP<40mg/dLの範囲内である。20mg/dL<SEP<30mg/dLのような、より小さい範囲が好まれる。18mg/dL<SEP<24mg/dLのような厳格な範囲は、更に好ましい。
装置が、低血糖及び正常血糖の範囲内、すなわち100mg/dL未満まで減少して使用されるならば、SEC及びSEPの許容可能な範囲は、より低く、かつより厳格でなければならない。それ故に、例えば較正及び予測の標準誤差は、低血糖及び正常血糖の範囲内での患者の糖尿管理に使用され得るグルコース値を与えるために、10〜18mg/dLの範囲内にあることが必要である。
一定の時間間隔で、再較正過程を定期的に反復すること、それにより再較正データポイントが、定量され、かつ精度に関して検査される。最先の較正ポイントが抜かされ、最新の再較正ポイントが加えられ、かつ較正回帰関係が再実行され、較正関係を更新し、かつ加えられた期間によって較正の時間領域を移す。最先の較正ポイントを抜かすこと、及び最新の再較正ポイントを加えること、及び較正関係を再実行することは、変化する生理的かつ季節的条件を取り込むために、較正関係を較正する。
較正セット中の30のデータポイントを使用し、かつ較正セット中の1つのデータポイントを再較正データポイントと代えることによって、較正セット中の1つのデータポイントを1週間に1回更新することは、元の較正データセットから12のデータポイント、及び16週にわたって広がる18の再較正データポイントを有する較正セットを有するために、再較正手続きの開始から120日(4ヶ月)に至る。再較正手続き開始から242日(約8ヶ月)後、完全に更新された全ての30のデータポイントを有する較正セットを有する。30のデータポイントは、30を超える週にわたって広がり、かつ広範囲な生理的及び季節的環境条件をカバーする。
較正手続きを更新するために、期間及び他のサイズの較正、及び予測データセット及び他の頻度を使用することが可能である。
較正関係の更新が、3日毎に影響を及ぼされる場合、全ての30の較正データポイントが、再較正手続き開始から87日(3ヶ月未満)後に、更新され、かつ再較正データポイントに代えられる。較正曲線は、3ヶ月毎に更新でき、より厳格な(季節内の)較正モデルをもたらす。Samann et al(前掲)の場合、長期間の調査が、84〜169日にわたって実行され、非侵襲的測定の生理的及び季節的条件を表すデータポイントセット内で更新できた。
本実施形態による較正更新方法は、使用者自身が装置を較正する単一の使用者の場合に応用される。それ故に較正モデルは、個人特異的であり、かつ環境条件に応じた時間による移動によって変動する。
以下は、本実施形態による較正更新方法の具体例である。
図3は、本発明の季節的較正更新方法を使用した、非侵襲的センサの再較正方式を示す。データストリームは、3日毎の定期的再較正サイクル及び較正モデルの更新に基づくものである。
装置及びモデルは、14日目及び16日目の間で、患者のグルコース濃度を検査するために使用される。較正モデルは、3日毎、17、20、23、26、29日目等に更新される。簡潔にするために、図3では全ての再較正日を示していない。図3に示さないこれらの日の中間の日に、装置及びモデルが、患者のグルコース濃度を検査し、かつ患者の血糖レベルを管理することを可能にすべくグルコース値を提供するために再度使用される。較正関係の更新が、3日毎に実行される時、この実施形態で使用される全ての30の較正データポイントが、ほぼ1つの季節をカバーする、再較正手続き開始から87日後に、更新され、かつ再較正データポイントに代えられる。
図4は、本実施形態の季節的較正更新方法を使用した非侵襲的センサの再較正方式を示す。データストリームは、7日毎の定期的再較正サイクル及び較正モデルの更新に基づいている。
装置及びモデルは、14日目及び19日目の間で、患者のグルコース濃度を検査するために使用される。較正モデルは、7日毎、20、27、34、41、48日目等に更新される。図4に示さないこれらの日の中間の日に、装置及びモデルが、患者のグルコース濃度を検査し、かつ患者の血糖レベルを管理することを可能にすべくグルコース値を提供するために再度使用される。
この実施形態の較正セット中の30のデータポイントを使用し、かつ較正セット中の1つのデータポイントを再較正データポイントと代えることによって、較正セット中の1つのデータポイントを1週間に1回更新することは、1週間の期間にわたって得られた元のセットから12のデータポイント、及び16週にわたって広がる18の再較正データポイントを有する較正セットを有するために、再較正手続きの開始から120日(4ヶ月)に至る。較正セットは、再較正手続き開始から242日(約8ヶ月)後、完全に更新された全ての30の較正データポイントを有する。較正セットのための30のデータポイントは、30を超える週にわたって広がり、かつ広範囲な生理的及び季節的環境条件をカバーする。更新期間は、2つ以上の季節をカバーする。較正ポイントを1つの季節内に保つために、より短い3日毎の較正手続きを使用することが、好まれ得る。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から複数の構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本実施形態によるグルコースの非侵襲的測定装置の構成を示す図。 本実施形態において、非侵襲的測定装置の外観図。 本実施形態において、測定時の様子を示す図。 本実施形態において、3日毎の定期的再較正サイクル及び較正モデルの更新に基づくデータストリームを示す図。 本実施形態において、7日毎の定期的再較正サイクル及び較正モデルの更新に基づくデータストリームを示す図。 本実施形態において、時間経過に伴う組織特性の季節的及び生理的変動を明らかにするための較正関係を改良して、非侵襲的グルコース値の予測精度を向上するための手順を示す図。
符号の説明
1…プローブ、2…熱電気モジュール、3…パッド、4…温度コントローラ、5…コンピュータ、6…光源、7…光検出器、8、9…光ファイバ。

Claims (5)

  1. 被検体に接触される測定プローブと、
    前記測定プローブに接続される光源及び光検出器と、
    光学的に非侵襲で被検体中のグルコースに関連する情報を測定するために前記光源及び光検出器を制御するとともに、前記光検出器の出力から較正モデルによりグルコース値を予測するコンピュータ部とを有する非侵襲的測定装置において、
    前記コンピュータ部は、
    所定期間にわたる非侵襲的測定の繰り返しにより取得されたデータセットから前記較正モデルの較正回帰パラメータを決定し、
    前記所定期間後複数日にわたって各日ごとに非侵襲的測定の繰り返しにより取得された予測データセットから前記較正モデルを使って基準測定値に対する回帰計算を実行することにより前記較正モデルの予測回帰パラメータを決定し、
    続いて非侵襲的測定を実行し、前記較正モデルを使用してグルコース濃度を予測し、前記予測されたグルコース濃度により患者治療管理を行い、
    単一の非侵襲的データポイントとそれに対応する基準血糖値により再較正処理を実行し、前記較正モデルを使用して非侵襲的に定量されたグルコース濃度を予測し、前記予測したグルコース濃度及び前記基準グルコース濃度の間の差異から前記非侵襲的測定の精度をチェックし、
    前記較正モデルを更新することを特徴とする非侵襲的測定装置。
  2. 前記コンピュータ部は、前記較正モデルを更新するために、
    前記複数の非侵襲的データポイントから最初のデータポイントを除外して、(n−1)個の非侵襲的データポイントを発生し、
    前記(n−1)個の非侵襲的データポイントに前記再較正データポイントを加えることにより、(n)個の非侵襲的データポイントを発生し、
    前記(n)個の非侵襲的データポイントと基準グルコース濃度から前記較正モデルを更新し、
    前記更新された較正モデルを使用して、前記再較正データポイントに関してグルコース濃度を予測し、かつ前記測定精度を定量化し、
    季節的及び環境的変化をカバーする複数箇月の期間にわたって所定時間間隔で、前記更新処理を反復する請求項1記載の非侵襲的測定装置。
  3. 前記回帰計算方法は、線形最小二乗法、部分最小二乗法、主成分分析法のいずれかである請求項1記載の非侵襲的測定装置。
  4. 前記較正回帰パラメータは、較正の標準誤差及び較正相関係数である請求項1記載の非侵襲的測定装置。
  5. 前記予測回帰パラメータは、予測の標準誤差及び予測相関係数である請求項1記載の非侵襲的測定装置。
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