JP4918684B2 - 船体の永久磁気推定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、船体に磁場を印加したときの船体の永久磁気を推定する、船体の永久磁気推定方法に関する。
船舶は多種多様な鋼材で構成されており、木製やFRP製等の小型船舶を除けばほとんど磁性体で占められている。船体磁気は、静磁界と動磁界で構成される。ただし、動磁界は静磁界に比べて非常に小さく、問題になることは少ない。静磁界は、誘導磁気と永久磁気に区別できる。誘導磁気は、船体が地磁気により磁化されることにより発生する。永久磁気は、船舶の建造時の溶接、裁断等により着磁するとともに、船体が船台に長期的に同じ方向に置かれると地磁気によって着磁する。さらに、就役後も波浪や地磁気を受けることによって永久磁気は変化する。したがって、就役直後は船体は特に大きな永久磁気を帯びており、時間の経過によってそれはさらに大きくなる。これに対処するためには、定期的に船体の永久磁気を脱磁する必要がある。
従来、鋼鉄によって構成された船体が保持する永久磁気を消去するために、船体に幾巻きかの胴巻輪線を装着して、それらに電流の極性を正負に変えながら、その大きさを漸減して通電する(つまり磁場を印加する)脱磁処理を実施している。そして、脱磁処理後に複数個の磁気検出器で船体周辺の永久磁場を測定し、脱磁処理の効果を評価している。
なお、積分方程式法又は有限要素法といった数値解析手法では、船舶計算モデルを作成して、船舶に地磁気が印加されることによる誘導磁気を計算することが可能である。
しかしながら、以上の技術では、脱磁処理を実施した後でなくては複数個の磁気検出器による船体の永久磁気を把握することができないため、船体の形状及び材料に対応した最適な脱磁処理を実施することはできない。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、脱磁処理を実施する前に、船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定することが可能な、船体の永久磁気推定方法を提供することにある。
本発明のある態様は、船体の永久磁気推定方法である。この方法は、
船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定する、船体の永久磁気推定方法であって、
船体の磁性材を下記式で定義される磁化状態関数m(Ha,Hb)
によって磁化状態が表される磁気双極子であるヒステロンの集合体と仮定した場合の前記ヒステロンの分布数を前記Ha及び前記Hbの関数として表したプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)を、前記Ha及び前記Hbの所定範囲で取得する取得ステップと、
前記船体の数値計算モデルの各要素について、所定の印加磁場に対応した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)を、前記Ha及び前記Hbの所定範囲で導出する導出ステップと、
取得した前記プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)と、導出した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)とに基づいて、各要素の永久磁気を推定する推定ステップとを有する。
船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定する、船体の永久磁気推定方法であって、
船体の磁性材を下記式で定義される磁化状態関数m(Ha,Hb)
前記船体の数値計算モデルの各要素について、所定の印加磁場に対応した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)を、前記Ha及び前記Hbの所定範囲で導出する導出ステップと、
取得した前記プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)と、導出した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)とに基づいて、各要素の永久磁気を推定する推定ステップとを有する。
ある態様の方法において、前記プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)は、前記船体と同じ磁性材からなる試験片に磁場を印加して取得した前記試験片の複数の磁化特性に基づいて算出したものであるとよい。
ある態様の方法において、前記数値計算モデルは、積分方程式法用モデルであってもよい。
あるいは、前記数値計算モデルは、有限要素法用モデルであってもよい。
ある態様の方法において、前記導出ステップは、印加磁場の極性の正負を変えながら前記印加磁場の大きさを漸減させた場合の各々の印加磁場に対応した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)を導出するものであるとよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置やシステム、プログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、脱磁処理を実施する前に、船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
本実施の形態は、船体に幾巻きかの胴巻輪線を装着して通電する(磁場を印加する)脱磁処理に先だって、前記船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定するものである。説明の順序は下記のとおりとする。
1.実際の船体の脱磁処理
2.プライザッハ図表(永久磁気の推定に用いる)
3.プライザッハ分布図(永久磁気の推定に用いる)
4.船体の永久磁気推定方法の流れ
1.実際の船体の脱磁処理
2.プライザッハ図表(永久磁気の推定に用いる)
3.プライザッハ分布図(永久磁気の推定に用いる)
4.船体の永久磁気推定方法の流れ
(1.実際の船体の脱磁処理)
図2は、船体の脱磁処理の模式的説明図である。本図に示されるように、脱磁処理の際には、船体1を係留用ワイヤ2とドルフィン3で固定した後に、船体1の外周に幾巻きかの胴巻輪線4を装着する。そして、磁気処理用電源5から磁気処理電流が通電され、船体の永久磁気を変化させる。船体1の下方の海底に設置される多数の磁気センサ6により、磁気処理電流通電後における船体周辺の磁場を計測し、コンピュータを有する測定室7に船体周辺の磁気波形が表示され、次の磁気処理電流が通電される。磁気処理電流値は、プラスマイナス交互に漸減しながら通電し、最終的に残留した永久磁場は磁気センサ6によって把握する。従来、磁気処理電流値は過去の実績を基に決めていた。本実施の形態では、磁気処理電流値を適切に定めるために、船体の脱磁処理に先だって、前記船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定するものである。
図2は、船体の脱磁処理の模式的説明図である。本図に示されるように、脱磁処理の際には、船体1を係留用ワイヤ2とドルフィン3で固定した後に、船体1の外周に幾巻きかの胴巻輪線4を装着する。そして、磁気処理用電源5から磁気処理電流が通電され、船体の永久磁気を変化させる。船体1の下方の海底に設置される多数の磁気センサ6により、磁気処理電流通電後における船体周辺の磁場を計測し、コンピュータを有する測定室7に船体周辺の磁気波形が表示され、次の磁気処理電流が通電される。磁気処理電流値は、プラスマイナス交互に漸減しながら通電し、最終的に残留した永久磁場は磁気センサ6によって把握する。従来、磁気処理電流値は過去の実績を基に決めていた。本実施の形態では、磁気処理電流値を適切に定めるために、船体の脱磁処理に先だって、前記船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定するものである。
(2.プライザッハ図表)
プライザッハ図表は、本実施の形態で船体の永久磁気を推定するのに用いる。一般に、磁性体の磁化特性を表すB−H曲線(磁束密度Bと印加磁界Hの関係)は、飽和磁場±Hsを印加した時のメジャーループと呼ばれる曲線で示されている。しかし、船舶の磁気処理において実際に印加する磁界は、船体に装着した胴巻輪線(図2参照)への初期の巨大な通電では飽和磁界となるものの、通電量は次第に漸減し、その磁気特性はマイナーループをたどることとなる。そのため、磁気処理中及び磁気処理後の船体の永久磁気や周辺磁場を推定計算するには、船体を成す鋼材のマイナーループを把握する必要がある。メジャーループやある指定した磁場を印加した時のマイナーループについては、あらかじめ、船体を成す鋼材と同じ材質の磁性体からなる試験片を作成し、ヒステリシス特性を計測することが可能である。しかし、任意に磁場をかけたときのマイナーループを全て事前に計測しておくことはできない。
プライザッハ図表は、本実施の形態で船体の永久磁気を推定するのに用いる。一般に、磁性体の磁化特性を表すB−H曲線(磁束密度Bと印加磁界Hの関係)は、飽和磁場±Hsを印加した時のメジャーループと呼ばれる曲線で示されている。しかし、船舶の磁気処理において実際に印加する磁界は、船体に装着した胴巻輪線(図2参照)への初期の巨大な通電では飽和磁界となるものの、通電量は次第に漸減し、その磁気特性はマイナーループをたどることとなる。そのため、磁気処理中及び磁気処理後の船体の永久磁気や周辺磁場を推定計算するには、船体を成す鋼材のマイナーループを把握する必要がある。メジャーループやある指定した磁場を印加した時のマイナーループについては、あらかじめ、船体を成す鋼材と同じ材質の磁性体からなる試験片を作成し、ヒステリシス特性を計測することが可能である。しかし、任意に磁場をかけたときのマイナーループを全て事前に計測しておくことはできない。
そこで、任意のマイナーループを推定するために、図3に示すように、ヒステロンと呼ばれる磁気双極子が無数に集まりメジャーループを構成していると仮定する。つまり、磁性体をヒステロンの集合体と仮定する。ヒステロンは、印加磁界がHaとHb(−Hs<Hb<Ha<Hs)を境界に磁化のプラスとマイナスが反転する仕組みを備えている。磁性体には、HaとHbの値が異なる様々なヒステロンが存在している。
ここで、あるHaとHbを持つヒステロンの磁化状態を表す関数(以下「磁化状態関数」と表記)m(Ha,Hb)を下記式
と定義すると、プライザッハ図表は、図4に示すように、横軸をHa、縦軸をHbにとる磁化状態関数m(Ha,Hb)の分布図となる。完全に消磁された状態であれば、プラスとマイナスのヒステロンは同じ面積となる。
図5は、一例としてHs=5としたときのプライザッハ図表とヒステリシス曲線の関係を示す説明図である。完全消磁状態の状態Iからプラスの飽和状態である状態IIに変化した場合、0<Ha<5の範囲がプラスに変わる。次に状態IIから状態IIIに変化した場合、−3<Hb<5の範囲がマイナスに変わる。さらに状態IIIから状態IVに変化した場合、−3<Ha<−1の範囲がプラスに変わる。このようにプライザッハ図表は、磁性体のヒステリシス特性に関係なく、印加磁場のみで一意的に求めることができる。
(3.プライザッハ分布図)
プライザッハ分布図は、上述のプライザッハ図表とともに、本実施の形態で船体の永久磁気を推定するのに用いる。あるHaとHbをもったヒステロンがどのくらいの大きさで分布しているかを表す関数をプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)と定義すると、プライザッハ分布図は、横軸をHa、縦軸をHbにとるプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)の分布図となる。図6は、磁性体の例示的なプライザッハ分布図である。色の濃い領域ほど多くのヒステロンが存在することを示す。図7は、立体的に示したプライザッハ分布図である。プライザッハ分布図は、磁性体の材料固有のものであり、磁性体の複数個の磁化特性の計測データ(図8参照)により算出される。
プライザッハ分布図は、上述のプライザッハ図表とともに、本実施の形態で船体の永久磁気を推定するのに用いる。あるHaとHbをもったヒステロンがどのくらいの大きさで分布しているかを表す関数をプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)と定義すると、プライザッハ分布図は、横軸をHa、縦軸をHbにとるプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)の分布図となる。図6は、磁性体の例示的なプライザッハ分布図である。色の濃い領域ほど多くのヒステロンが存在することを示す。図7は、立体的に示したプライザッハ分布図である。プライザッハ分布図は、磁性体の材料固有のものであり、磁性体の複数個の磁化特性の計測データ(図8参照)により算出される。
プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)の導出について説明する。図9(A)は、印加磁場をHs→−Hs→10と変化させたときの磁性体のプライザッハ図表及び磁化特性図である。同図(B)は、印加磁場をHs→2→10と変化させたときの磁性体のプライザッハ図表及び磁化特性図である。なお、これらの図では便宜上、飽和磁界Hsを「11」、−Hsを「1」としている。また、プライザッハ図表における横軸I及び縦軸Jは、ヒステロンのHa及びHbにそれぞれ対応する。
図9(A),(B)を対比すると、10≦I<11、1≦J<2の範囲内のヒステロンの磁化方向は反転(プラスとマイナスが逆転)しているのに対し、他の範囲のヒステロンの磁化方向は変化していない。したがって、図9(A),(B)の状態間における磁化の差ΔMすなわちM(10,2)−M(10,1)は、10≦I<11,1≦J<2の範囲内のヒステロンの磁化方向が反転したことによるものであり、下記式
と表される。なお、M(I,J)は、印加磁場をHs→J→Iと変化させたときの磁性体の永久磁気である。これを任意の点(I,J)について一般化すると、下記式
となる。したがって、任意の点(I,J)についてP(I,J)を一般化すれば、下記式
となる。磁性体の複数個の磁化特性の計測データ(図8参照)を基に各点のP(I,J)を求めることで、図6及び図7に示すようなプライザッハ分布図を作成することができる。
(4.船体の永久磁気推定方法の流れ)
図1は、本発明の実施の形態に係る船体の永久磁気推定方法のフローチャートである。本方法では、船体と同じ鋼材からなる試験片に磁場を印加して前記試験片の複数の磁化特性を取得し、これに基づいて船体の鋼材のプライザッハ分布図を導出する(ST1〜ST3)。他方、船体の数値計算モデルを作成し、導出したプライザッハ分布図を基に数値計算モデルの各要素の永久磁気を推定し、さらに船体周辺の永久磁場を推定する(ST4〜ST9)。各ステップは、基本的に、コンピュータとソフトウェアの協働によって実現される。以下、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る船体の永久磁気推定方法のフローチャートである。本方法では、船体と同じ鋼材からなる試験片に磁場を印加して前記試験片の複数の磁化特性を取得し、これに基づいて船体の鋼材のプライザッハ分布図を導出する(ST1〜ST3)。他方、船体の数値計算モデルを作成し、導出したプライザッハ分布図を基に数値計算モデルの各要素の永久磁気を推定し、さらに船体周辺の永久磁場を推定する(ST4〜ST9)。各ステップは、基本的に、コンピュータとソフトウェアの協働によって実現される。以下、詳細に説明する。
試験片の作成(ST1)… 脱磁対象の船体と同じ鋼材(磁性材)からなる試験片を作成する。図10は、作成する試験片の例示的な形状説明図であり、(A)は正面図、(B)は右側面図である。試験片は、例えば、内径30±3mm、外径50±5mm、厚さ1±0.5mm、質量約10gのリング形状とする。
磁化特性の測定(ST2)… ST1で作成した試験片に印加コイル及び受信コイルをそれぞれ例えば50回巻き、印加コイルへの印加電流値を変化させて(試験片への印加磁場を変化させて)、プライザッハ分布図を作成するために必要となる基本的な磁化特性を測定する。例えば、最初に試験片を成す鋼材の飽和磁界Hs(−30×105nT)を印加した後、2.5×105nT単位で25×105nTから−25×105nTまで磁場を印加し、再度飽和磁界Hsを印加する。これにより、図8に示されるような、複数パターン(この例では21個)の磁化特性を測定する。
プライザッハ分布図の作成(ST3)… ST2で測定した複数パターンの磁化特性から、メジャーループ内全域の傾きを取得して、試験片を成す鋼材のプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)を導出し、プライザッハ分布図を作成する。なお、P(Ha,Hb)の導出手順は上述のとおりである。P(Ha,Hb)は、例えば、−Hs≦Ha≦Hs,−Hs≦Hb≦Hsの範囲内で導出する。
船体の数値計算モデル作成(ST4)… 一方、有限要素法や積分方程式法といった公知の数値計算法に対応した船体数値計算モデルを作成する。図11に船体の有限要素法用モデルを示す。
各要素における印加磁場計算(ST5)… ST4で作成した船体の数値計算モデルの各要素(船体のメッシュ)における印加磁場を計算する。なお、ここで計算する印加磁場は、実際の脱磁処理における、船体に装着した胴巻輪線(図2参照)への通電量に対応するものである。
各要素におけるプライザッハ図表の作成(ST6)… 船体の数値計算モデルの各要素について、ST5で計算した印加磁場に対応する磁化状態関数m(Ha,Hb)を導出し、プライザッハ図表を作成する。m(Ha,Hb)は、例えば、−Hs≦Ha≦Hs,−Hs≦Hb≦Hsの範囲内で導出する。
各要素における永久磁気推定(ST7)… ST3で作成したプライザッハ分布図と、ST6で作成したプライザッハ図表とに基づいて、船体の数値計算モデルの各要素における永久磁気を算出する。具体的には、下記式
で表される永久磁気推定値Mを計算する。
船体周辺の永久磁場推定(ST8)… ST7で計算した各要素の永久磁気推定値Mに基づいて、有限要素法や積分方程式法といった公知の数値計算法により、船体周辺の永久磁場を推定する。
ST5〜ST8は、実際の脱磁処理において胴巻輪線(図2参照)に電流の極性を正負に変えながらその大きさを漸減して通電する場合の各通電量に対して順番に行う。例えば、通電量+10A,−8A,+6A,−4A,+3A,−2A,+1A,−0.5A,+0.5Aの各々に対して順番に、ST5〜ST8を繰り返す。ここで、必要に応じて各通電量に対応した船体周辺の永久磁場推定値(すなわち途中経過)を出力する。例えば、+10Aを通電した後に0Aとしたときの永久磁場推定値、−8Aを通電した後に0Aとしたときの永久磁場推定値、・・・、−0.5Aを通電した後に0Aとしたときの永久磁場推定値を出力する。
磁気処理後の船体周辺の永久磁場出力(ST9)… 最終的に通電量を0A(印加磁場なし)とした場合すなわち漸減した最後の通電量(例えば+0.5A)の後に0Aとした場合の船体周辺の永久磁場推定値を、磁気処理後の船体周辺の永久磁場推定値として出力する。
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
(1) 磁性材をヒステロンと呼ばれる磁気双極子の集合体と仮定し、脱磁対象の船体と同じ鋼材(磁性材)からなる試験片を用いて前記船体の鋼材のプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)を導出し、実際の脱磁処理における胴巻輪線への通電によって印加される磁場に対応する磁化状態関数m(Ha,Hb)を船体の数値計算モデルの各要素について導出し、導出したプライザッハ分布関数P(Ha,Hb)及び磁化状態関数m(Ha,Hb)に基づいて各要素における永久磁気を推定計算するので、実際の脱磁処理を行う前に脱磁処理中及び脱磁処理後の船体の永久磁気及び周辺の永久磁場を推定することが可能となる。
(2) 上記により、脱磁処理を行う前にあらかじめ、脱磁処理後の船体の永久磁気及び周辺の永久磁場を最小にするように磁気処理電流値や胴巻輪線の配置箇所の最適化を図ることができる。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
1 船体
2 係留用ワイヤ
3 ドルフィン
4 胴巻輪線
5 磁気処理用電源
6 磁気センサ
7 測定室
2 係留用ワイヤ
3 ドルフィン
4 胴巻輪線
5 磁気処理用電源
6 磁気センサ
7 測定室
Claims (6)
- 船体に磁場を印加したときの前記船体の永久磁気を推定する、船体の永久磁気推定方法であって、
船体の磁性材を下記式で定義される磁化状態関数m(Ha,Hb)
前記船体の数値計算モデルの各要素について、所定の印加磁場に対応した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)を、前記Ha及び前記Hbの所定範囲で導出する導出ステップと、
取得した前記プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)と、導出した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)とに基づいて、各要素の永久磁気を推定する推定ステップとを有する、船体の永久磁気推定方法。 - 請求項1に記載の方法において、前記プライザッハ分布関数P(Ha,Hb)は、前記船体と同じ磁性材からなる試験片に磁場を印加して取得した前記試験片の複数の磁化特性に基づいて算出したものである、船体の永久磁気推定方法。
- 請求項1又は2に記載の方法において、前記数値計算モデルが積分方程式法用モデルである、船体の永久磁気推定方法。
- 請求項1又は2に記載の方法において、前記数値計算モデルが有限要素法用モデルである、船体の永久磁気推定方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の方法において、前記導出ステップは、印加磁場の極性の正負を変えながら前記印加磁場の大きさを漸減させた場合の各々の印加磁場に対応した前記磁化状態関数m(Ha,Hb)を導出するものである、船体の永久磁気推定方法。
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