JP4912890B2 - 染色体を消失させた植物細胞の作出方法 - Google Patents
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Description
すなわち、これらの異数体は、その多くが正常体とは異なる形質を示すため、野菜や花卉等においては、天然に生じ、又は、人為的に作出された異数体が、更なる育種のための材料として利用されたり、それ自身が新品種として利用されたりする。
また、異数体の中でも、染色体が1本だけ消失しているモノソミックでは、その消失した染色体上にある遺伝子座は、自家交雑により得られるF1世代において正常な分離比を示さないので、これを利用し、遺伝子座の位置を決定することができる。この手法はモノソミック分析と呼ばれ、例えば、パン小麦(Chinese Spring)では、21対の全染色体に対応したモノソミックシリーズが作成され、これらのモノソミックと、その自殖F1世代の形質を研究することにより、多くの形質にかかわる遺伝子座の位置が決められた(非特許文献1)。
しかし、異数体の作出は非常に困難である。例えば、上記パン小麦のモノソミックシリーズは、ライ麦をパン小麦に交雑して得られる半数体を利用することで作出されたが、このような手法でモノソミックが得られる生物種は極めて限られる。一方、モノソミック等の異数体は、コルヒチン、EMS(エチルメタンスルフォン酸)等の化学物質や放射線に、当該生物の細胞を暴露することによっても得ることができる(非特許文献2)が、これらの手法は、その利用に高度な技術を必要とする上、消失させるべき染色体以外の染色体にも、予期せぬ障害を与えてしまうことが多い。
シアーズ(Sears)、"ミズーリ大学研究期報(Univ.Missouri Res.Bull.)"(米国)、1954年、第572巻、p1−58 鵜飼保雄、植物育種学、2003年、p259−261
すなわち、本発明は以下の(1)〜(14)に関する。
(1) 以下の過程(A)〜(C)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法(以下、本発明の第一の様態と称す)。
(A)互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列、及び、これら二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配され、該部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子を有するベクターを、植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を培養し、増殖させる過程
(C)(B)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する過程
(2) 上記(1)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(A)において用いるベクターとして、互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に、更に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを使用し、かつ、過程(B)において、その負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で植物細胞の培養を行う、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(3) 以下の過程(A)〜(C)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法(以下、本発明の第二の様態と称す)。
(A)点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列、及び、該部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子を有するベクターを、植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を培養し、増殖させる過程
(C)(B)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する過程
(4) 上記(3)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(A)において用いるベクターとして、更に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを使用し、かつ、過程(B)において、その負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で植物細胞の培養を行う、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(5) 以下の過程(A)〜(D)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法(以下、本発明の第三の様態と称す)。
(A)互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列、又は、点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列を有するベクターを、植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を培養し、上記部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素を、該細胞中で、少なくともその増殖時に、一過的に作用させる過程
(C)(B)で部位特異的組換え酵素を作用させた細胞を培養し、増殖させる過程
(D)(C)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する課程
(6) 上記(5)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(A)において、互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列と、これら二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側もしくは外側に負の選抜マーカー遺伝子とを配したベクター、又は、点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列と負の選抜マーカー遺伝子とを配したベクターを使用し、かつ、過程(C)において、その負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で植物細胞の培養を行う、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(7) 上記(5)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(B)において、部位特異的組換え酵素の一過的作用を、培養されている植物細胞に、この部位特異的組み換え酵素を導入することにより行わせる、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(8) 上記(5)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(B)において、部位特異的組換え酵素の一過的作用を、培養されている植物細胞に、この部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子を導入することにより行わせる、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(9) 部位特異的組換え酵素遺伝子の導入は、部位特異的組換え酵素遺伝子と負の選抜マーカー遺伝子とを配したベクターを植物細胞に導入することにより行う、上記(8)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(10) 部位特異的組換え酵素遺伝子を、これがコードしている部位特異的組換え酵素が認識する、互いに同一方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた状態でベクターに配し、このベクターを植物細胞に導入することにより、該部位特異的組換え酵素遺伝子の導入を行う、上記(8)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(11) 部位特異的組換え酵素遺伝子と共に、負の選抜マーカー遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた状態でベクターに配する、上記(10)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(12) 負の選抜マーカー遺伝子として、致死誘導遺伝子又は形態異常誘導遺伝子を用いる、上記(2)、(4)、(6)、(9)又は(11)に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(13) 上記(1)〜(12)に記載の方法により作出された、1以上の染色体が消失した植物細胞。
(14) 上記(13)に記載の植物細胞を有する植物組織又は植物。
本発明によれば、1以上の染色体を消失させた植物細胞を、その種を問わず、作出することができる。
その作出にあたっては、植物への遺伝子導入技術、植物組織培養技術として、ごく一般的な技術を使用するだけでよい。ここで、遺伝子導入に使用するベクターも、ごく単純な構造のものである。
また、本発明においては、1以上の染色体を消失させた植物細胞から、生殖細胞を経ることなく、植物個体を再生することができる。
従って、本発明によれば、植物であれば、その種を問わずに適用でき、育種学的又は遺伝学的に重要な、モノソミックを始めとする異数体、即ち、異数性の植物細胞又は植物個体を、容易に作出する方法が提供される。
しかも、上記異数体の作出にあたって、消失させる染色体以外の染色体には、予期せぬ傷害が与えられることはない。
図2は、点対称の塩基配列からなる一つの認識配列が染色体上に存在する場合の、染色体消失機構を示す説明図である。
図3は、本発明の第一の様態により、植物細胞の染色体が消失する機構を示す説明図である。
図4は、本発明の第二の様態により、植物細胞の染色体が消失する機構を示す説明図である。
図5は、本発明の第三の様態により、植物細胞の染色体が消失する機構を示す説明図である。
図6は、本発明の第三の様態において、遊離型組換え酵素遺伝子の働きにより、染色体が消失する機構を示す説明図である。
図7は、本発明の第一の様態において、二つの認識配列及び組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを用いた場合に、植物細胞の染色体が消失する機構を示す説明図である。
図8は、本発明の第三の様態において、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとして、組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを用いた場合の、負の選抜マーカー遺伝子の働きを示す説明図である。
図9は、本発明の第三の様態において、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとして、二つの認識配列及び組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを用いた場合の、負の選抜マーカー遺伝子の働きを示す説明図である。
図10は、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNの作成スキムを示す図である。
図11は、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTShygMRS35RRubiptの作成スキムを示す図である。
図12は、本発明の実施例1における染色体消失機構を示す説明図である。
図13は、本発明の実施例1で用いたプライマーと、pTSspsRScodNが導入された染色体、又は、pTShygMRS35RRubiptが導入された後、二つの認識配列に挟まれた領域が脱離した染色体との関係を示す図である。
図14は、実施例1−VIで得られた発根個体の一部について、PCR分析を行った結果を示す図である。
図15は、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptの作成スキムを示す図である。
図16は、本発明の実施例2で用いたプライマーと、pTL7MRS35RRubipt導入後の植物細胞に存在し得る染色体との関係を示す図である。
図17は、実施例2−IIIで得られた発根個体について、PCR分析を行った結果を示す図である。
図18は、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735R及びpTL7rubipt35Rの作成スキムを示す図である。
図19は、本発明の実施例3及び4で用いたプライマーと、pTL735R又はpTL7rubipt35R導入後の植物細胞に存在し得る染色体との関係を示す図である。
図20は、実施例3−III及び実施例4−IIIで得られた発根個体の一部について、PCR分析を行った結果を示す図である。
本発明の第一の様態では、まず、互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列(以下、単に認識配列とも記載する。)、及び、これら二つの認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配され、該認識配列を認識する部位特異的組換え酵素(以下、単に組換え酵素とも記載する。)をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子(以下、単に組換え酵素遺伝子とも記載する。)を有するベクターを、植物細胞に導入する。
部位特異的組換え酵素認識配列は、所定の塩基配列を有するDNA因子であって、部位特異的組換え系は、この認識配列を部位特異的組換え酵素が認識して作用することで様々に機能する。例えば、DNA分子上に、互いに同一の塩基配列を有しているが、これらの塩基配列が、それぞれ逆向きに並んでいる二つの認識配列(すなわち本発明で言う、互いに逆方向を向いた認識配列。)X−X’に挟まれた領域が2箇所存在する場合には、これら2箇所の領域が同一DNA分子上に存在するか、異なるDNA分子上に分かれて存在するかに関わらず、組換え酵素の作用によって、そのX−X’に挟まれた領域同士で組換えを起こすので、本発明ではかかる機能を利用する。
なお、部位特異的組換え系において、認識配列とこれを認識して作用する組換え酵素との組合せには、例えば、ファージ、細菌(大腸菌等)、酵母等の微生物から分離されたCre/lox系、R/RS系、FLP/FRT系、cer系、fim系等が知られている(総説として、N.L.Craig、Annu.Rev.Genet.、22:17.1988)。高等生物の部位特異的組換え系は、まだその存在を知られていないが、上記微生物から分離された部位特異的組換え系の認識配列と組換え酵素も、その由来する生物種と異なる生物種、即ち、植物や動物に導入された場合でも、そのそもそもの生物内における挙動と同一の挙動をとることが明らかとなっている。
本発明において用いる認識配列及び組換え酵素遺伝子は、こうした認識配列とこれを認識して作用する組換え酵素をコードする遺伝子との組合せより、自由に選択して使用することができる。中でも、Cre/lox系、R/RS系は、動物、植物等で広く用いられており、組換え効率も高いので、本発明において用いる認識配列及び組換え酵素遺伝子の組合せとして好ましい。もっとも、認識配列は、野生型認識配列の塩基配列が人工的に又は天然に一部改変された、変異型を用いても構わない。但し、この場合において変異型認識配列は、これと共に前記ベクター上に存在する、組換え酵素遺伝子のコードする組換え酵素により認識され得るものであることを要する。
さらに本発明は、負の選抜マーカー遺伝子の利用により、染色体が消失した細胞の取得を一層効率の良いものとすることができる。具体的には、前記ベクターの認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に、この負の選抜マーカー遺伝子を配して用いればよい。このとき、組換え酵素遺伝子との位置関係は問わない。すなわち、負の選抜マーカー遺伝子は、組換え酵素遺伝子と共に認識配列の内側又は外側に配してもよいし、組換え酵素遺伝子を内側に、負の選抜マーカー遺伝子を外側に配してもよく,また、その逆にしてもよい。
負の選抜マーカー遺伝子としては、この遺伝子の発現が宿主細胞の正常な増殖・分化を妨げるような遺伝子であれば、何であれ利用することができる。このような遺伝子としては、例えば、致死誘導遺伝子や形態異常誘導遺伝子等を挙げることができる。
致死誘導遺伝子とは、その発現によって、宿主細胞の機能を損ない、死に至らしめる遺伝子全般を意味し、例えば、RNAse、DAMメチラーゼ、シトシンデアミナーゼ(codA)、ジフテリアトキシン、Bax等をコードする遺伝子が一般に知られている。また、形態異常誘導遺伝子とは、その発現によって、宿主細胞の増殖・分化の方向を狂わせて、通常とは異なる形態分化を引起こす遺伝子全般を意味する。植物の形態異常誘導遺伝子としては、宿主植物に矮化、頂芽優勢の崩壊、色素の変化、根頭癌腫、カルス化、毛状根、葉の波打ち等を引起こす、植物ホルモン合成系遺伝子や植物ホルモンシグナルトランスダクション系遺伝子など、植物ホルモン関連遺伝子を使用することができる。
植物ホルモン合成系遺伝子は、植物ホルモンの合成に関与するタンパク等をコードする遺伝子であって、植物病原菌であるアグロバクテリウム等に存在するipt(isopentenyltoransferase)遺伝子(A.C.Smigocki、L.D.Owens、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5131、1988)、iaaM(tryptophan monooxygenase)遺伝子(H.J.Klee et al.、GENES & DEVELOPMENT、1:86、1987)、gene5遺伝子(H.kerber et al.、EMBO Journal、10:3983、1991)、gene6b遺伝子(P.J.J.Hooyaas et al.、Plant Mol.Biol.、11:791、1988)、及びrolA〜Dのrol遺伝子群(F.F.White et al.、J.Bacteriol.、164:33、1985)等を始め、シュードモナス・シリンガエの亜種(Pseudomonas syringae subsp.savastanoi)に存在するiaaL(indoleacetic acid−lysine synthetase)遺伝子(A.Spena et al.、Mol.Gen.Genet.、227:205、1991)、更には、種々の植物のホメオボックス遺伝子やフィトクローム遺伝子等が知られている。
一方、植物ホルモンシグナルトランスダクション系遺伝子は、ジベレリン、エチレン、オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモンの存在を認識するセンサーや、そのセンサーからの情報を伝達していく、一連の情報伝達経路に関わるタンパクをコードする遺伝子であって、エチレン受容体遺伝子であるETR1遺伝子(C.Chang et al.、Science、262:539、1993)、サイトカイニン受容体遺伝子であると考えられているCKI1遺伝子(T.Kakimoto、Science、274:982、1996)とその変異体(ex.CKI2遺伝子)及びGCR1遺伝子(S.Plakidou−Dymock et al.、Current Biology、8:315、1998)の他、IBC6遺伝子及びIBC7遺伝子(I.Brandstatter、J.J.Kieber、The Plant Cell、10:1009、1998)等が知られている。
これらの形態異常誘導遺伝子の中では、特に、頂芽優勢の崩壊を引き起こすipt遺伝子、並びに、毛状根の形成及び毛状根から再生した植物の矮化や葉の波打ち等を引き起こすrol遺伝子群は、特徴的な形態の異常を引き起こし、植物個体の再分化を妨げることから、本発明において使用する形態異常誘導遺伝子として好ましい。
本発明のベクターを植物細胞に導入する方法には直接導入法と間接導入法とがあり、直接導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、融合法、高速バリスティックベネトレーション法等の物理的・化学的手法を使用することができ、また、間接導入法としては、植物に感染するウィルスや細菌を介して行う手法を使用することができる(I.Potrykus、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、42:205、1991)。間接導入法に用いられるウィルスや細菌の中では、ウィルスとしては、カリフラワーモザイクウィルス、ジェミニウィルス、タバコモザイクウィルス、ブロムモザイクウィルス等が、細菌としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(以下、A.ツメファシエンスと略す。)、アグロバクテリウム・リゾジェネス等が代表的である。
ベクター導入後の植物細胞は、その植物細胞に最も適した公知の培養条件及び環境条件にて培養し、増殖させればよい。すると、増殖した細胞の中に、1以上の染色体が消失した細胞が生じるので、増殖後の培養組織を対象として、細胞のDNAを解析すれば、目的とする染色体が消失した細胞や、かかる細胞からなる組織を選抜することができる。このとき、DNAの解析手法としては、例えば、PCR法やサザン解析法等の公知の手法を用いることができる。なお、上記ベクターとして、負の選抜マーカー遺伝子を配したものを用いる場合には、この負の選抜マーカー遺伝子が、これを染色体に有する細胞の正常な増殖・分化を妨げるように機能する条件(本発明においては、このような条件を、負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件という。)下で、ベクター導入後の植物細胞を培養することにより、染色体が消失した細胞の選択的取得が可能となる。
次に、本発明の第二の様態について詳細に説明する。
本発明の第二の様態は、植物細胞に導入するベクターとして、点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列、及び、該部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子を有するベクターを用いる。
ここで、点対称の塩基配列からなる部位特異的組換え酵素認識配列とは、所定の塩基配列が点対称に並んだ、いわゆる回文型の配列を有するDNA因子である。この点対称の塩基配列からなる認識配列は、この認識配列を認識して作用する組換え酵素との組合せで機能する点では、本発明の第一の様態において用いた認識配列と同じであるが、この認識配列は、単に、DNA分子上に二つ存在するだけで、それが同一DNA分子上に存在するか、異なるDNA分子上に存在するかに関わらず、組換え酵素の作用によって、DNA分子の組換えが起こる点が異なっている。かかる点対称の塩基配列からなる認識配列としては、Cre/lox系の組換え酵素との組合せで機能する認識配列LoxPsymが知られている(Ronald H.Hoess et al.、Nucleic Acid Res.、11:14(5):2287−2300、1986)。
なお、本発明においても、本発明の第一の様態と同様に、負の選抜マーカー遺伝子を利用し、染色体が消失した細胞の取得を一層効率の良いものとすることができる。この場合は、前記ベクターに、上記点対称の塩基配列からなる認識配列及び組換え酵素遺伝子と共に、この負の選抜マーカー遺伝子を配して用いればよい。このとき、認識配列や組換え酵素遺伝子との位置関係は問わない。また、負の選抜マーカー遺伝子としては、上記本発明の第一の様態で負の選抜マーカー遺伝子として用いられるものであれば、本発明でも同様に用いることができる。
以上、特に記載した以外の事項については、本発明は、本発明の第一の様態と同様に実施することができる。すなわち、本発明のベクターは、本発明の第一の様態のベクターと同様にして、植物細胞に導入することができ、本発明のベクターを導入した植物細胞は、本発明の第一の様態の場合と同様にして培養し、増殖させることで、1以上の染色体が消失した細胞を生じ、この細胞は、本発明の第一の様態の場合と同様にして選抜することができる。
さらに、本発明の第三の様態について詳細に説明する。
本発明の第三の様態は、植物細胞に導入するベクターとして、まず最初に、互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列、又は、点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列を有するベクターを用いる(以下、このベクターを、認識配列導入用ベクターとも記載する。)。このベクターには、本発明の第一又は第二の様態のベクターとは異なり、これらの認識配列を認識する組換え酵素をコードする組換え酵素遺伝子は配さない。
一方、このベクターには、本発明の第一又は第二の様態のベクターと同様に、染色体が消失した細胞の取得を一層効率の良いものとするため、これらの認識配列と共に、負の選抜マーカー遺伝子を配することもできる。互いに逆方向を向いた二つの認識配列と共に、この負の選抜マーカー遺伝子を配する場合には、認識配列に挟まれた域の内側又は外側に、これを配することができ、点対称の塩基配列からなる一つの認識配列と共に、この負の選抜マーカー遺伝子を配する場合には、その位置関係に関わりなく、これを配することができる。
本発明においては、上記ベクターを植物細胞に導入した後、このベクターに配した認識配列を認識する組換え酵素を、該細胞中で、少なくともその増殖時に、一過的に作用させる。
増殖時の植物細胞に組換え酵素を少なくとも一過的に作用させるには、例えば、組換え酵素自体もしくはこの組換え酵素をコードしている組換え酵素遺伝子を、増殖中の植物細胞に導入し、及び/又は、これらを植物細胞に導入した後、その植物細胞を増殖させる等により、行うことができる。
上記組換え酵素遺伝子の導入にあたっては、この組換え酵素遺伝子を、単に、適当なベクターに配して、植物細胞に導入するだけで、該細胞中で組換え酵素を一過的に作用させることができる。(以下、認識配列の導入後に、組換え酵素遺伝子を植物細胞に導入するため用いるベクターを、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとも記載する。)植物細胞に導入された組換え酵素遺伝子は、染色体に組込まれないままでも発現し、しかも、かかる遊離型の組換え酵素遺伝子は、ある程度組換え酵素を生産した後、消失し、該細胞中での組換え酵素の生産は停止するので、結果的に、この組換え酵素による作用も一過的なものとなるからである。
しかし、このような組換え酵素による一過的作用を確実なものとするには、組換え酵素遺伝子を、これがコードしている組換え酵素が認識する、互いに同一の塩基配列を有し、これらの塩基配列がそれぞれ同一の向きに並んでいる二つの認識配列(すなわち本発明で言う、互いに同一方向を向いた認識配列。)に挟まれた状態でベクターに配して、植物細胞に導入すればよい。こうして植物細胞に導入された組換え酵素遺伝子は、その植物細胞の染色体に組込まれた場合でも、上記二つの認識配列に挟まれた状態で組込まれ、発現するので、細胞中で組換え酵素をある程度生産した後、自らが生産した組換え酵素の作用により、染色体から脱離して遊離し、その後消失するからである。
なお、組換え酵素遺伝子を植物細胞に導入することにより、組換え酵素を該細胞中で一過的に作用させる場合においては、組換え酵素遺伝子と共に、負の選抜マーカー遺伝子を植物細胞に導入すれば、組換え酵素遺伝子が導入された細胞の中から、確実に、組換え酵素が一過的に作用した細胞を取得することができる。負の選抜マーカー遺伝子としては、上記本発明の第一又は第二の様態で負の選抜マーカー遺伝子として用いられるものであれば、本発明でも同様に用いることができる。
上記の場合において、組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を植物細胞に導入するには、単に、この組換え酵素遺伝子と負の選抜マーカー遺伝子とをベクターに配し、このベクターを植物細胞に導入してやればよい。組換え酵素遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟まれた状態でベクターに配する場合には、負の選抜マーカー遺伝子は、組換え酵素遺伝子と共に、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟んだ状態でベクターに配すればよい。
また、組換え酵素遺伝子を植物細胞に導入することにより、組換え酵素を該細胞中で一過的に作用させる場合においては、更に、組換え酵素遺伝子と共に、選抜マーカー遺伝子を植物細胞に導入することが好ましい。具体的には、上記した負の選抜マーカー遺伝子の場合と同様に、組換え酵素遺伝子と共に、又は、組換え酵素遺伝子及び負の選抜マーカー遺伝子と共に、選抜マーカー遺伝子をベクターに配し、このベクターを植物細胞に導入してやればよい。このとき、選抜マーカー遺伝子の配置、種類及び数等に、特に制限はない。例えば、組換え酵素遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟まれた状態で配する場合には、選抜マーカー遺伝子は、認識配列で挟まれた領域の内側に配しても、外側に配してもよく、また、組換え酵素遺伝子が脱離することで選抜マーカー遺伝子が発現するように、選抜マーカー遺伝子のプロモーター部分と構造遺伝子部分との間に、認識配列で挟まれた領域が障害物として存在するように配してもよい。
選抜マーカー遺伝子としては、カナマイシンに対する耐性を植物に付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子、ハイグロマイシンに対する耐性を植物に付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子や、ビアラホス(bialaphos)に対する耐性を付与するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子等の除草剤耐性遺伝子など、公知のものを1種類以上用いることができる。このようにして、組換え酵素遺伝子と共に選抜マーカー遺伝子を植物細胞に導入することで、組換え酵素遺伝子が導入された細胞を選択的に増殖することができるようになる。
組換え酵素又はこの組換え酵素をコードしている組換え酵素遺伝子を導入し、その増殖時において、この組換え酵素を一過的に作用させた後の植物細胞は、その植物細胞に最も適した公知の培養条件及び環境条件にて培養し、増殖させればよい。すると、増殖した細胞の中に、1以上の染色体が消失した細胞が生じるので、増殖後の培養組織を対象として、細胞のDNAを解析すれば、目的とする染色体が消失した細胞や、かかる細胞からなる組織を選抜することができる。なお、上記認識配列導入用ベクターや、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとして、負の選抜マーカー遺伝子を配したものを用いる場合には、この負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で、組換え酵素遺伝子導入用ベクター導入後の植物細胞を培養することにより、染色体が消失した細胞及び/又は組換え酵素が一過的に作用した細胞の選択的取得が可能となる。
以上、特に記載した以外の事項については、本発明は、本発明の第一又は第二の様態と同様に実施することができる。すなわち、本発明において、互いに逆方向を向いた二つの認識配列又は互いに同一方向を向いた二つの認識配列とこれを認識して作用する組換え酵素をコードする組換え酵素遺伝子は、本発明の第一の様態のベクターで用いる認識配列と組換え酵素遺伝子を用いることができ、点対称の塩基配列からなる認識配列とこれを認識して作用する組換え酵素をコードする組換え酵素遺伝子は、本発明の第二の様態のベクターで用いる認識配列と組換え酵素遺伝子を用いることができる。また、認識配列導入用ベクターや組換え酵素遺伝子導入用ベクターは、本発明の第一の様態のベクターと同様にして植物細胞に導入することができ、認識配列導入用ベクターを導入した植物細胞の培養も、本発明の第一の様態の場合と同様にして行うことができる。
<作用>
互いに逆方向を向いた二つの認識配列が染色体に導入された細胞では、体細胞分裂(有糸分裂)が始まると、この染色体も複製されて倍化する。このとき、組換え酵素が働くと、倍化によって生じた、これら2本の染色体にそれぞれ存在する、二つの認識配列に挟まれた領域同士でDNAの組換えが起こると考えられる。
この組換えが対称的に起こった場合は、組換え後の染色体には、2本とも実質的な変化は生じない。しかし、この組換えが非対称的に起こった場合は、組換え後、点対称に2つの動原体を持つ染色体(二動原体型染色体)と動原体の無い染色体(無動原体型染色体)とが一本づつ生ずることとなる。正常な体細胞分裂においては、倍化後の染色体は、その後生じる紡錘糸の両極に向い、この紡錘糸に沿って各々移動することで分配され、新たに生じる娘細胞の染色体となるが、二動原体型染色体や無動原体型染色体は、紡錘糸に沿って移動することができないため、娘細胞には分配されない。従って、このとき、体細胞分裂後に生じる2つの娘細胞はいずれも、これらに対応する染色体が消失したものとなる(図1)。
また、同様の現象は、点対称の塩基配列からなる一つの認識配列が染色体上に導入された細胞でも起こる。点対称の塩基配列からなる認識配列が染色体上に導入された場合、DNAの組換えは、倍化によって生じる2本の染色体にそれぞれ存在する、認識配列同士で起こるが、この場合でも、非対照的組換えの結果、二動原体型染色体と無動原体型染色体が生ずることに変わりはないからである(図2)。
本発明者らは、鋭意研究の結果、上記知見に到達し、本発明の第一、第二及び第三の様態を完成させた。
すなわち、本発明の第一の様態では、互いに逆方向を向いた二つの認識配列、及び、これら二つの認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配され、該認識配列を認識する組換え酵素をコードしている組換え酵素遺伝子を有するベクターを、植物細胞に導入し、この細胞を培養して増殖させる。
上記ベクターを植物細胞に導入することにより、この植物細胞の染色体に、互いに逆方向を向いた二つの認識配列と、この認識配列を認識する組換え酵素をコードする組換え酵素遺伝子が導入されれば、この植物細胞を増殖させた場合に、体細胞分裂の開始により、同様の構造が導入された2本の染色体が生じる。このとき、その染色体上の組換え酵素遺伝子の発現により生じる組換え酵素の働きにより、これら2本の染色体にそれぞれ存在する、二つの認識配列に挟まれた領域同士でDNAの組換えが起こり、その結果、二動原体型染色体と無動原体型染色体とが生じて、染色体が消失した娘細胞が生じるのである(図3)。
また、本発明の第二の様態では、点対称の塩基配列からなる一つの認識配列、及び、該認識配列を認識する組換え酵素をコードしている組換え酵素遺伝子を有するベクターを、植物細胞に導入し、この細胞を培養して増殖させる。
この場合も、上記本発明の第一の様態の場合と同様にして、染色体が消失した娘細胞が生じる。本発明の第一の様態の場合と異なるのは、DNAの組換えが、倍化した2本の染色体にそれぞれ存在する、一つの認識配列同士で起こる点のみである(図4)。
さらに、本発明の第三の様態では、互いに逆方向を向いた二つの認識配列、又は、点対称の塩基配列からなる一つの認識配列を有するベクターを植物細胞に導入した後に、上記認識配列を認識する組換え酵素を、該細胞の増殖時に、一過的に作用させる。
例えば、互いに逆方向を向いた二つの認識配列を有する認識配列導入用ベクターを植物細胞に導入した後、この植物細胞に、互いに同一方向を向いた認識配列に挟まれた状態で組換え酵素遺伝子が配されている組換え酵素遺伝子導入用ベクターを導入することで、該細胞の増殖時に組換え酵素を一過的に作用させた場合について説明すると(図5)、この本発明の第三の様態では、まず、認識配列導入用ベクターを植物細胞に導入することにより、互いに逆方向を向いた二つの認識配列が導入された染色体が生じ、次いで、この細胞中に、組換え酵素遺伝子導入用ベクターを導入することにより、これに配されている組換え酵素遺伝子が発現して、組換え酵素が生産される。この場合において、該細胞を培養し、増殖させた場合には、体細胞分裂の開始により倍化して生じた、互いに逆方向を向いた二つの認識配列をそれぞれ有する2本の染色体は、組換え酵素の働きにより、二つの認識配列に挟まれた領域同士でDNAの組換えを起こし、その結果、二動原体型染色体と無動原体型染色体とが生じて、染色体が消失した娘細胞が生じる。
一方、上記組換え酵素遺伝子導入用ベクターに配され、これにより植物細胞に導入された組換え酵素遺伝子は、その植物細胞の染色体に組込まれた場合でも、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟まれた状態で組込まれ、発現するので、組換え酵素をある程度生産した後、自らが生産した組換え酵素の作用により、導入された染色体から脱離して遊離し、その後消失する。従って、その組換え酵素の作用も一過的なものとなる。この本発明の第三の様態に係るベクターでは、こうした機構により、組換え酵素による一過的作用を確実なものとするため、目的とする染色体を消失させた後の細胞において、組換え酵素遺伝子が恒常的に発現することによる、DNAの不安定化等の弊害を防ぐことができる。
しかし、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとしては、単に、この組換え酵素遺伝子が、認識配列なしで配されているものでも用いることができる。前記したように、植物細胞に導入された組換え酵素遺伝子は、染色体に組込まれないままでも発現し、組換え酵素を一過的に作用させる。従って、認識配列なしで組換え酵素遺伝子が配されているベクターであっても、かかる遊離型組換え酵素遺伝子の働きにより、これが導入された植物細胞において、組換え酵素を一過的に作用させることができるからである。こうした機構により、組換え酵素を一過的に作用させた場合には、目的とする染色体が消失し、しかも、認識配列導入用ベクターの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターの痕跡も残らない、つまり、遺伝子操作の痕跡が全く残らない細胞を得ることができる(図6)。
なお、上記本発明の第一もしくは第二の様態において用いるベクター、又は、本発明の第三の様態において用いる認識配列導入用ベクターに、負の選抜マーカー遺伝子を配することで、染色体が消失した細胞の取得を一層効率の良いものとすることができる。
例えば、互いに逆方向を向いた二つの認識配列の外側に、組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を配した、本発明の第一の様態に係るベクターを、植物細胞に導入した場合(図7)、倍化して生じた、互いに逆方向を向いた二つの認識配列をそれぞれ有する二本の染色体が、その二つの認識配列に挟まれた領域同士で対称的組換えを起こして得られる娘細胞には、負の選抜マーカー遺伝子が残存するので、この負の選抜マーカー遺伝子が機能するような条件下で培養すると、正常な増殖や分化が阻害される。従って、非対称的組換えの結果、染色体が消失した娘細胞のみを選択的に取得できるようになる。
また、本発明の第三の様態においては、上記負の選抜マーカー遺伝子を、組換え酵素遺伝子と共に、組換え酵素遺伝子導入用ベクターに配してもよい。
例えば、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとして、組換え酵素遺伝子が認識配列なしで配されているものを用いた場合、このベクターに配されている組換え酵素遺伝子が、認識配列導入用ベクターによって認識配列が導入された染色体とは異なる染色体に導入されてしまうと、目的とする染色体を消失させた後も、組換え酵素遺伝子がその導入された染色体に残存し続けて恒常的に発現し、組換え酵素が生産され続けるため、DNAの不安定化等の弊害を招くこととなる。
しかし、この場合において、組換え酵素遺伝子導入用ベクターとして、組換え酵素遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子を配したベクターを用いれば、組換え酵素遺伝子が、認識配列導入用ベクターによって認識配列が導入された染色体とは異なる染色体に導入され、残存し続けたとしても、負の選抜マーカー遺伝子もまた、この染色体に導入されて残存し続けるので、負の選抜マーカー遺伝子が機能するような条件下で培養することにより、この染色体を有する細胞の正常な増殖や分化は妨げられる。従って、かかる細胞が排除され、組換え酵素が一過的に作用した細胞を確実に取得できるようになる(図8)。
また、組換え酵素遺伝子導入用ベクターに、組換え酵素遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟まれた状態で配する場合は、負の選抜マーカー遺伝子を、組換え酵素遺伝子と共に、これら二つの認識配列に挟んだ状態で配することにより、組換え酵素が一過的に作用した細胞を、より確実に取得できるようになる。
組換え酵素遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの認識配列に挟まれた状態で配した組換え酵素遺伝子導入用ベクターを植物細胞に導入した場合、組換え酵素遺伝子は、その植物細胞の染色体に導入された場合でも、通常は、組換え酵素をある程度生産した後、導入された染色体から脱離して遊離し、その後消失するが(図5)、場合によっては、この組換え酵素遺伝子が、導入された染色体から脱離せずに発現し続け、上記弊害を招くことがある。
しかし、この場合においても、組換え酵素遺伝子導入用ベクターに、負の選抜マーカー遺伝子を上記のように配すれば、この負の選抜マーカー遺伝子は、部位特異的組換えに関し、組換え酵素遺伝子と同じ挙動を取るため、組換え酵素遺伝子が、植物細胞の染色体に導入された後、脱離せずに発現し続けた場合には、負の選抜マーカー遺伝子もまた、細胞の染色体に存在し続けて、この負の選抜マーカー遺伝子が機能するような条件下で培養することにより、細胞の正常な分化や増殖を妨げ、かかる細胞を排除するからである(図9)。
以下、実施例に従って発明の詳細を説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、更に詳細な実験操作は、特に述べる場合を除き、Molecular Cloning(Sambrook et al.、1989)、又は製造業者の取り扱い説明書に従い行った。
ノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーター(Nos−P)及びノパリンシンターゼ遺伝子のポリアデニル化シグナル(以下、ポリアデニル化シグナルは全てノパリンシンターゼ由来のものを用いた。)を連結したNPTII構造遺伝子、並びに、35Sプロモーター(35S−P)及びポリアデニル化シグナルを連結したcodA構造遺伝子が、互いに逆方向を向いた、部位特異的組換え系R/RS由来の認識配列RSに挟まれた構造を有するプラスミド、pCRScodNを構築した。なお、codA構造遺伝子は、大腸菌(DH5α、東洋紡(株)より購入)のゲノムDNAをテンプレートに、配列番号1に示すプライマーα(5’−gctctagagc atgtggaggc taacagtg−3’)と配列番号2に示すプライマーβ(5’−gcgagctctc agtgctctac gtaggccg−3’)とを用いて、PCR法により取得したものである。
pCRScodNの構造を図10Aに示す。図中、四角形の枠で囲まれた黒色の三角形はRS及びその配列の方向を、Tはポリアデニル化シグナルを示している(以下同じ。)。
一方、プラスミドpTS1(WO2004/87910)の制限酵素SmaI部位に、配列番号3に示すオリゴヌクレオチドspsU(5’−tgcagaataa ataaacgcca tggcacccgg gaaagaaata aaatgaaacg caaacacatg acctgcaggc acataagatg atacgcaagc gccgagctct actacgcaat ggcagacgca aaagcaggct acgcatgca)と配列番号4に示すオリゴヌクレオチドspsL(5’−tgcatgcgta gcctgctttt gcgtctgcca ttgcgtagta gagctcggcg cttgcgtatc atcttatgtg cctgcaggtc atgtgtttgc gtttcatttt atttctttcc cgggtgccat ggcgtttatt tattctgca−3’)とをアニーリングしたDNA断片を挿入して、プラスミドpTSspsを構築し(図10B)、このpTSspsの制限酵素Sse838701(以下、SseIと略記する。)部位に、上記pCRScodNから制限酵素SseIにて切出した、逆方向を向いた二つのRS及びこれらに挟まれた領域を挿入して、宿主DNAへの認識配列導入用ベクタープラスミドpTSspsRScodNを構築した(図10C:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成16年12月3日付にて国内寄託済み、寄託番号:FERM P−20312。また、2005年12月8日付にて国際寄託済み。)。
このベクターを植物細胞に導入した場合、図中、小さな黒三角形で示した、T−DNA由来のライトボーダー(RB)とレフトボーダー(LB)との間が、染色体中に導入されることとなる。なお、codA遺伝子は、5−フルオロシトシン(5−FC)を、細胞に毒性を有する5−フルオロウラシルに変換する酵素をコードする遺伝子であり、codA遺伝子が染色体に導入され、発現している植物細胞を、5−FC添加培地で培養すると、その細胞は死滅するので、本実施例においては、下記11において詳述するように、この遺伝子を、染色体が消失した細胞を選択的に取得するための負の選抜マーカー遺伝子として利用する。また、NPTII遺伝子は、このベクターにより、上記RB−LB間の領域が染色体に導入された植物細胞を選抜するための選抜マーカー遺伝子として働く。
II.組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTShygMRS35RRubipt)の構築
Rubiscoプロモーター(Rub−P)を連結したipt遺伝子、並びに、35S−P及びポリアデニル化シグナルを連結した部位特異的組換え酵素(R)構造遺伝子が、互いに同一方向を向いたRSに挟まれた構造を有するプラスミド、128−35Rrubiptを構築した(図11A)。
一方、プラスミドpTS1(WO2004/87910)の制限酵素SmaI部位に、配列番号5に示すオリゴヌクレオチドkpnsseU(5’−ctgcacgcta cctgcagg−3’)と配列番号6に示すオリゴヌクレオチドkpnsseL(5’−cctgcaggta gcgtgcag−3’)とをアニーリングしたDNA断片を挿入して、プラスミドpTSkssを構築し(図11B)、このpTSkssの制限酵素kpnI部位に、35S−P及びポリアデニル化シグナルを連結したハイグロマイシン耐性(Hpt)遺伝子の構造遺伝子を挿入して、プラスミドpTS35Hygを構築した(図11C)。
次いで、128−35Rrubiptから、RS及びこれに挟まれた領域を制限酵素SseIにより切出して、上記pTS35Hygの制限酵素SseI部位に連結することで、組換え酵素遺伝子導入用ベクタープラスミドpTShygMRS35RRubiptを構築した(図11D:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成16年12月3日付にて国内寄託済み、寄託番号:FERM P−20313。また、2005年12月8日付にて国際寄託済み。)。このベクターを植物細胞に導入した場合、pTSspsRScodNと同様に、図中、小さな黒三角形で示した、T−DNA由来のRBとLBとの間が、染色体中に導入されることとなる。
前記認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNを導入した植物細胞に、ここで構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTShygMRS35RRubiptを導入すると、このpTShygMRS35RRubiptに配されているR遺伝子が発現して、組換え酵素が生産される。この場合において、該細胞を培養し、増殖させた場合には、体細胞分裂の開始により倍化して生じた、pTSspsRScodNに由来する互いに逆方向を向いた二つのRSをそれぞれ有する2本の染色体は、組換え酵素の働きにより、上記二つのRSに挟まれた領域同士でDNAの組換えを起こす。
このようなDNAの組換えが起こった細胞のうち、非対称的組換えが起こった細胞では、二動原体型染色体と無動原体型染色体とが生じて、その結果、上記pTSspsRScodNに由来する構造、即ち、互いに逆方向を向いた二つのRS、及び、この二つのRSに挟まれた領域に存在するcodA遺伝子等を有する染色体が消失した娘細胞が生じる。しかし、対称的組換えが起こった細胞では、組換え後の染色体に実質的な変化は生じない。このため、pTSspsRScodNに由来する構造を有する染色体が保持されたままとなる。従って、pTSspsRScodNを導入した植物細胞に、pTShygMRS35RRubiptを導入した後、該細胞を5−FCの存在下で培養すると、対称的組換えが起こった細胞は、その染色体に残存するcodA遺伝子の働きにより死滅し、非対称的組換えによって染色体が消失した細胞のみを選抜できることとなる。
一方、pTShygMRS35RRubiptに配され、これにより植物細胞に導入されたR遺伝子は、その植物細胞の染色体に組込まれた場合でも、互いに同一方向を向いたRSに挟まれた状態で組込まれ、発現するので、組換え酵素をある程度生産した後、自らが生産した組換え酵素の作用により、導入された染色体から、ipt遺伝子と共に脱離して遊離し、その後消失する。従って、その組換え酵素の作用は一過的なものとなる(図12)。
なお、pTShygMRS35RRubiptにおいて、ipt遺伝子は、上記機構によりR遺伝子が染色体から脱離しなかった場合に、その細胞を排除するための負の選抜マーカー遺伝子として働き、また、Hpt遺伝子は、このベクターにより、前記RB−LB間の領域が染色体に導入された植物細胞を選抜するための選抜マーカー遺伝子として働く。
III.アグロバクテリウムへの認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)又は組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTShygMRS35RRubipt)の導入
A.ツメファシエンス4404株を、10mlのYEB液体培地(ビーフエキス5g/l、酵母エキス1g/l、ペプトン1g/l、ショ糖5g/l、2mM MgSO4、22℃でのpH7.2(以下、特に示さない場合、22℃でのpHとする。))に接種し、OD630が0.4から0.6の範囲に至るまで、28℃で培養した。この培養液を、6900×g、4℃、10分間遠心して集菌した後、菌体を20mlの10mM HEPES(pH8.0)に懸濁して、再度6900×g、4℃、10分間遠心して集菌し、得られた菌体を200μlのYEB液体培地に懸濁して、これをプラスミド導入用菌液とした。
次いで、このプラスミド導入用菌液50μlと、I及びIIで作成したpTSspsRScodN及びpTShygMRS35RRubipt各3μlを、0.5mlチューブ内で混合し、エレクトロポレーション(ジーンパルサーIIシステム[BIORAD社])を行うことにより、A.ツメファシエンス4404株に上記ベクターを導入した。エレクトロポレーション後の菌体は、200μlのYEB液体培地を加えて25℃で1時間振とう培養してから、50mg/lカナマイシン添加YEB寒天培地(寒天1.5w/v%、他の組成は上記に同じ。)に播種して28℃で2日間培養した。この培養の結果、菌コロニーを形成した菌について、更にYEB液体培地に移植して培養した後、アルカリ法でプラスミドを抽出し、これを制限酵素EcoRI又はHindIIIで分解してポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、制限酵素分解物の長さを解析することにより、A.ツメファシエンス4404株へのpTSspsRScodN又はpTShygMRS35RRubiptの導入を確認した。pTSspsRScodNの導入が確認された菌をLBA4404(pTSspsRScodN)、pTShygMRS35RRubiptの導入が確認された菌をLBA4404(pTShygMRS35RRubipt)とした。
IV.タバコへの認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)の導入
培養容器内で成育させたタバコ(Nicotiana tabacum SR1、特に記載する場合を除き、以下同じ。)の葉から、中脈を取り除いて約8mm角となるようにカットして得られた葉片36片を、LBA4404(pTSspsRScodN)の菌液(OD630=0.25、YEB液体培地にて一夜培養後、滅菌水で稀釈して菌体濃度を調整。)に約1分間浸してこれに感染させ、滅菌した濾紙の上に置いて余分な菌液を除いてから、アセトシリンゴン50mg/lを添加した植物ホルモンを含まない(ホルモンフリー)MS寒天培地(T.Murashige and F.Skoog、Physiol.Plant.、15:473、1962、但し、寒天0.8w/v%を添加。)に、葉の裏が上になるように置床して、25℃、全明(特に記載されない限り、外植片及び植物組織・植物個体の培養はこの条件で行った。)で3日間培養を行った。
上記培養後の葉片を、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l、カルベニシリン500mg/l及びカナマイシン200mg/lを添加したMS寒天培地に移植して培養を続けたところ、不定芽24個が再分化してきたので、この不定芽を分離し、更にカルベニシリン500mg/l及びカナマイシン200mg/lを含むホルモンフリーMS寒天培地に移植して培養することにより発根させ、12個の不定芽より12個の発根個体を得て、最終的には、これら12個の発根個体にそれぞれ由来するカナマイシン耐性組換え体12系統を得ることができた。
得られたカナマイシン耐性組換え体12系統につき、順化後の発根個体より種子を採取してカナマイシン200mg/lを含むホルモンフリーMS寒天培地に播種し、カナマイシン耐性を示して発芽し、生育した苗を1系統あたり1株づつ選抜した。
V.認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)が導入されたタバコの分析
IVで得られたカナマイシン耐性組換え体12系統の個体12株より、CTAB法を用いて染色体DNAを抽出し、これを制限酵素HindIIIで切断して、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のアガロースゲルは、アルカリ・酸処理の後、電気泳動面をナイロンメンブランに転写し、このナイロンメンブランについて、DIG PCR labeling kit(Boehringer Mannheim社より購入)にて予めラベリングしておいた、codA遺伝子と相同性を有するプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、DIG Wash and Block Buffer(Boehringer Mannheim社より購入)により化学発光検出を行ったところ、上記12系統のうち1系統(CodN−23)において、1コピーのpTSspsRScodNが導入されていることが確認された。
VI.認識配列導入タバコへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTShygMRS35RRubipt)の導入
Vにおいて、1コピーのpTSspsRScodN導入が確認された認識配列導入タバコCodN−23株に対し、IVと同様にしてLBA4404(pTShygMRS35RRubipt)の感染処理を行った。感染処理後、3日間LBA4404(pTShygMRS35RRubipt)と共存培養した64葉片を、ナフタレン酢酸1mg/l、ベンジルアデニン0.1mg/l、カルベニシリン500mg/l、ハイグロマイシン20mg/lを含むMS寒天培地に移植して培養を続けたところ、90個のカルスが得られ、この90個のカルスを同組成の培地に移植して4週間培養を続けることにより、50個の不定芽が得られた。これらの不定芽をホルモンフリーMS寒天培地にて継代培養を続けたところ、24個の発根個体を得ることができた。
VII.認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)及び組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTShygMRS35RRubipt)が導入されたタバコの分析
A.PCR分析
VIにおいて得られた24個の発根個体について、染色体DNAをFast DNA Kit(BIO 101 Inc.)により抽出し、NPTII構造遺伝子に結合する配列番号7に示すプライマーKm1(5’−agaggctatt cggctatgca−3’)及び配列番号8に示すプライマーKm2(5’−ccatgatatt cggcaagcag−3’)、pTSspsRScodNのライトボーダー付近に結合する配列番号9に示すプライマーRBS1(5’−actgatagtt taaactgaag gcggg−3’)及びpTSspsRScodNのspsUに由来する配列に結合する配列番号10に示すプライマーSPR1a(5’−atggcgttta tttattctgc−3’)、pTSspsRScodNのspsLに由来する配列に結合する配列番号11に示すプライマーSPL 1a(5’−acataagatg atacgcaage−3’)及びpTSspsRScodNのレフトボーダー付近に結合する配列番号12に示すプライマーpBSPh02(5’−aagccggcga acgtggcgag aa−3’)、並びに、Hpt遺伝子に結合する配列番号13に示すプライマーHm1(5’−cgtctgtcga gaagtttctg−3’)及び配列番号14に示すプライマーHm2(5’−ctatcggcga gtacttctac−3’)を用いてPCR分析を行った。
PCR反応は、抽出したDNA1μgを、プライマー各0.2μMを含む、10mM Tris−HCl(25℃でのpH8.8)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、1w/v% TritonX−100、0.1mM dNTP、及び1.25ユニットのTaqポリメラーゼ(CETUS社より購入)を混合したPCR緩衝液50μl中に溶解し、この混合液を、94℃で1分30秒間加温した後、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分の加温サイクルを30回繰り返すことにより行った。また、PCR反応後の反応液は、アガロースゲル電気泳動に供することにより、増幅されたDNA断片の検出を行った。
この場合において、PCR分析に供したタバコ個体に、PTSspsRScodNに由来する構造が保持された染色体が存在しているときは、約500bp(Km1−Km2)、約200bp(RBS1−SPR1a)及び約100bp(SPL1a−pBSPh02)のDNA断片が増幅されることとなる(図13A)。一方、pTShygMRS35RRubipt由来の組換え酵素の働きにより、PTSspsRScodNに由来する構造が導入された染色体が消失しているときは、上記DNA断片はいずれも増幅されない。そして、この染色体の消失が、pTShygMRS35RRubiptが染色体に組込まれて起こったときには、約900bp(Hm1−Hm2)のDNA断片のみが増幅される(図12及び図13B)。
PCR分析の結果、電気泳動に供した24個体全てにおいて、約900bpのDNA断片の増幅が検出された。また、約500bp、約200bp及び約100bpのDNA断片の増幅が検出されたのは20個体であり、一方、これら3種類のDNA断片がいずれも増幅されなかったのは4個体(No.30、34、42、53)であった。そこで、この4個体を所定の染色体が消失した個体(以下、単に染色体消失個体とも記載する。)として選抜し、引続き、以下の実験を行った。
なお、図14に、上記PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果の一部を示す。
B.染色体消失個体のフローサイトメトリー分析
Aで選抜した染色体消失個体(No.30、34、42、53)の葉を約5mm角採取して、植物分析用DNA試薬キット(Partec社 06−5−4004)のA液に浸漬し、この液中に浸漬した状態で、カミソリを用いてこれを細断した後、その50μlをCellTricsフィルター(Partec社 06−4−2317)にて濾過し、濾液を得た。染色体DNA量のフローサイトメトリー分析は、この濾液に上記試薬キットのB液(Pactec社06−5−4004)300μlを加えたものを試料とし、プロイディアナライザーPA型(Partec社)を用いて行った。この場合において、染色体DNA量は蛍光強度(fluorescence intensity:FLI)として検出され、染色体DNA量が多いものほど、高い蛍光強度を示すこととなる。
フローサイトメトリー分析の結果を表1に示す。
すなわち、本実施例においては、組換え酵素遺伝子導入用ベクター導入後の植物個体から、4個体÷64葉片=6.3×10−2の確率で、容易に染色体消失個体を作出でき、しかも、その作出は容易であって、生殖細胞を経ることなく、ごく単純な構造のベクター、並びに、ごく一般的な遺伝子導入技術及び植物組織培養技術を使用するだけで可能であった。
実施例1−IIで構築した128−35Rrubiptから、RS及びこれに挟まれた領域を制限酵素SseIにより切出して、pTL7(H.Ebinuma et al.,Molecular Method of Plant Analysis,22:95,2002)の制限酵素SseI部位に連結することで、組換え酵素遺伝子導入用ベクタープラスミドpTL7MRS35RRubiptを構築した(図15:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成17年5月11日付にて国内寄託済み、寄託番号:FERM P−20533。2005年12月8日付にて国際寄託済み。)。このベクターを植物細胞に導入した場合、実施例1で構築した、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNや組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTShygMRS35RRubiptと同様に、図中、小さな黒三角形で示した、T−DNA由来のRBとLBとの間が、植物細胞中に導入されることとなる。
この組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptを、上記認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNを導入した植物細胞に導入し、該細胞を培養して増殖させると、実施例1と同様に、倍加して生じた、pTSspsRScodNに由来する互いに逆方向を向いた二つのRSをそれぞれ有する2本の染色体の間でDNAの組換えが起こり、非対称的組換えが起こった場合には、このpTSspsRScodNに由来する構造、即ち、互いに逆方向を向いた二つのRS、及び、この二つのRSに挟まれた領域に存在するcodA遺伝子等を有する染色体が消失した娘細胞が生じ、対称的組換えが起こった場合には、これらの構造を有する染色体が保持されたままとなる。従って、本実施例においても、pTSspsRScodNを導入した植物細胞に、pTL7MRS35RRubiptを導入した後、該細胞を5−FCの存在下で培養すると、対称的組換えが起こった細胞は、その染色体に残存するcodA遺伝子の働きにより死滅し、非対称的組換えによって染色体が消失した細胞のみを選抜できることとなる。
なお、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptにおいて、これに配されているR遺伝子及びipt遺伝子も、実施例1と同様に働く。すなわち、R遺伝子は、植物細胞の染色体に組込まれた場合、組換え酵素をある程度生産した後、自らが生産した組換え酵素の作用により、導入された染色体から、ipt遺伝子と共に脱離して遊離し、その後消失する。ipt遺伝子は、上記機構によりR遺伝子が染色体から脱離しなかった場合に、その細胞を排除するための負の選抜マーカー遺伝子として働く。
II.アグロバクテリウムへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7MRS35RRubipt)の導入
上記1にて作成した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptを、実施例1のIIIと同様にしてA.ツメファシエンス4404株に導入し、DNA解析によりこれを確認して、この菌をLBA4404(pTL7MRS35RRubipt)とした。
III.認識配列導入タバコへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7MRS35RRubipt)の導入
上記IIで得られたLBA4404(pTL7MRS35RRubipt)を、実施例1のVにおいて1コピーのpTSspsRScodNの導入が確認された、認識配列導入タバコCodN−23株に感染させることにより、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptを認識配列導入タバコに導入した。感染処理は、実施例1のIVと同様にして行った。
感染処理後、3日間LBA4404(pTL7MRS35RRubipt)と共存培養した32葉片を、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l及びカルベニシリン500mg/lを含むMS寒天培地に移植して1週間培養し、次いで、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l、カルベニシリン500mg/l及び5−FC 0.2mg/lを含むMS寒天培地に移植して培養を続けたところ、24個のカルスが得られ、この24個のカルスを同組成の培地に移植して培養を続けることにより、16個のカルスに由来する16個の不定芽が得られた。これらの不定芽について、ホルモンフリーMS寒天培地にて継代培養を続けたところ、6個の発根個体を得ることができた。
IV.認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)及び組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7MRS35RRubipt)が導入されたタバコの分析
A.PCR分析
IIIにおいて得られた6個の発根個体について、染色体DNAをFast DNA Kit(BIO 101 Inc.)により抽出し、実施例1で用いたプライマーKm1及びKm2、プライマーRBS1及びSPR1a、プライマーSPL1a及びpBSPh02、pTL7MRS35RRubiptのライトボーダー側のT−DNA上に結合する配列番号15に示すプライマーRBS2(5’−aaacgacaat ctgatcatga gcgga−3’)及び配列番号16に示すプライマーLza9(5’−ggctcgtatg ttgtgtggaa ttgt−3’)、pTL7MRS35RRubiptのR遺伝子に結合する配列番号17に示すプライマーRa(5’−ccaaggatac tgaaatttca acaat−3’)及び配列番号18に示すプライマーRc(5’−ttatttgaaa gatatgaagc tgtca−3’)、並びに、タバコゲノムDNA上のO−メチルトランスフェラーゼ(OMT)遺伝子に結合する配列番号19に示すプライマーOMT1(5’−taagacctat atccacttca aaaca−3’)及び配列番号20に示すプライマーOMT3(5’−agctagccct gtggcgtgcc ttcca−3’)を用いて、実施例1と同様の条件でPCR分析を行った。
この場合において、PCR分析に供したタバコ個体に、PTSspsRScodNに由来する構造が保持された染色体が存在しているときは、約500bp(Km1−Km2)、約200bp(RBS1−SPR1a)及び約100bp(SPL1a−pBSPh02)のDNA断片が増幅されることとなる(図13A)。一方、pTL7MRS35RRubipt由来の組換え酵素の働きにより、PTSspsRScodNに由来する構造が導入された染色体が消失しているときは、上記DNA断片はいずれも増幅されない。
そして、この染色体の消失が、pTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれることなく起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)のDNA断片のみが増幅される(図16A)。また、pTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれて起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)及び約400bp(RBS2−Lza9)、又は、約800bp(OMT1−OMT3)、約400bp(RBS2−Lza9)及び約1.0kb(Ra−Rc)のDNA断片が増幅される。つまり、約800bp(OMT1−OMT3)及び約400bp(RBS2−Lza9)のDNA断片が増幅されたときは、いったん染色体に組込まれたpTL7MRS35RRubiptに由来する構造が、その後、組換え酵素の作用により脱離したことを示し(図16C)、約800bp(OMT1−OMT3)、約400bp(RBS2−Lza9)及び約1.0kbのDNA断片が増幅されたときは、染色体に組込まれたpTL7MRS35RRubiptに由来する構造が、その後も脱離せず染色体に保持され続けていることを示している(図16B)。
PCR分析の結果、電気泳動に供した6個体全てにおいて、約800bpのDNA断片の増幅が検出される一方、約500bp、約200bp、約100bp及び約1.0kbpのDNA断片の増幅は、いずれも検出されなかった。また、約400bpのDNA断片の増幅が検出されたのは、この6個体中4個体(No.1、2、4、7、)であり、残り2個体(No.8、12)では、このDNA断片の増幅は検出されなかった。
以上の結果より、これら6個体はすべて染色体消失個体であって、うち2個体(No.8、12)は、その染色体の消失が、pTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれることなく起こった個体、即ち、前記IIIにおいてpTL7MRS35RRubiptを導入した際、これに配されているR遺伝子も染色体に組込まれることなく、遊離型のままで発現し、その結果、染色体の消失が起こった細胞を起源とする個体であり、他の4個体(No.1、2、4、7、)は、染色体の消失が、pTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれて起こった個体、即ち、前記111においてpTL7MRS35RRubiptを導入した際、これに配されているR遺伝子も染色体に組込まれて発現し、その結果、染色体の消失が起こった細胞を起源とする個体であることが示唆された。また、染色体の消失が、pTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれることにより起こった4個体では、いずれも、このpTL7MRS35RRubiptが染色体に組込まれた後、R遺伝子の発現により生産された組換え酵素の作用により、R遺伝子を始めとするpTL7MRS35RRubiptに由来する構造が脱離したものと考えられる。
なお、図17に、上記PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。
B.染色体消失個体のフローサイトメトリー分析
Aにおいて、染色体消失個体であることが確認された上記6個体(No.1、2、4、7、8、12)につき、実施例1のVI−Bと同様にして、フローサイトメトリー分析を行った。
結果を表2に示す。
すなわち、本実施例においては、組換え酵素遺伝子導入用ベクター導入後の植物個体から、6個体÷32葉片=1.9×10−1の確率で、染色体消失個体を作出でき、しかも、組換え酵素遺伝子導入用ベクターの導入にあたって、導入処理後の組織を5−FCの存在下で培養することにより、染色体消失個体のみを発根個体として得ることができた。また、作出された染色体消失個体6個体のうちの2個体(33%)は、その染色体の消失が、組換え酵素遺伝子が染色体に組込まれることなく起こった個体であって、その細胞中に、認識配列導入用ベクターの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターの痕跡も残らない個体、つまり、遺伝子操作の痕跡が全く残らない個体であった。
そして、これら染色体消失個体の作出は容易であって、生殖細胞を経ることなく、ごく単純な構造のベクター、並びに、ごく一般的な遺伝子導入技術及び植物組織培養技術を使用するだけで可能であった。
35S−P及びポリアデニル化シグナルを連結したR構造遺伝子をpTL7の制限酵素EcoRI部位に連結することで、組換え酵素遺伝子導入用ベクタープラスミドpTL735Rを構築し(図18A)、これを2005年12月8日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)宛に国際寄託に付した(寄託受領番号FERM ABP−10472)。このベクターを植物細胞に導入した場合も、実施例1で構築した、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNや組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTShygMRS35RRubipt、実施例2で構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubiptと同様に、図中、小さな黒三角形で示した、T−DNA由来のRBとLBとの間が、植物細胞中に導入されることとなる。
この組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rを、上記認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNを導入した植物細胞に導入し、該細胞を培養して増殖させると、実施例1及び実施例2と同様に、倍加して生じた、pTSspsRScodNに由来する互いに逆方向を向いた二つのRSをそれぞれ有する2本の染色体の間でDNAの組換えが起こり、非対称的組換えが起こった場合には、このpTSspsRScodNに由来する構造、即ち、互いに逆方向を向いた二つのRS、及び、この二つのRSに挟まれた領域に存在するcodA遺伝子等を有する染色体が消失した娘細胞が生じ、対称的組換えが起こった場合には、これらの構造を有する染色体が保持されたままとなる。従って、本実施例においても、pTSspsRScodNを導入した植物細胞に、pTL735Rを導入した後、該細胞を5−FCの存在下で培養すると、対称的組換えが起こった細胞は、その染色体に残存するcodA遺伝子の働きにより死滅し、非対称的組換えによって染色体が消失した細胞のみを選抜できることとなる。
なお、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rに配されているR遺伝子は、植物細胞に導入された後、該細胞の染色体に組込まれるか否かに関わらず発現するが、染色体に組込まれないまま発現した場合には、その細胞において、組換え酵素が一過的に作用して、上記機構により染色体が消失し、しかも、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rの痕跡も残らない細胞を得ることができるので、本実施例では、かかる遊離型R遺伝子の働きを利用する。
II.アグロバクテリウムへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL735R)の導入
上記Iにて作成した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rを、実施例1のIIIと同様にしてA.ツメファシエンス4404株に導入し、DNA解析によりこれを確認して、この菌をLBA4404(pTL735R)とした。
III.認識配列導入タバコへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL735R)の導入
上記IIで得られたLBA4404(pTL735R)を、実施例1のVにおいて1コピーのpTSspsRScodNの導入が確認された、認識配列導入タバコCodN−23株に感染させることにより、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rを認識配列導入タバコに導入した。感染処理は、実施例1のIVと同様にして行った。
感染処理後、3日間LBA4404(pTL735R)と共存培養した32葉片を、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l及びカルベニシリン500mg/lを含むMS寒天培地に移植して1週間培養し、次いで、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l、カルベニシリン500mg/l及び5−FC 0.2mg/lを含むMS寒天培地に移植して培養を続けたところ、19個のカルスが得られ、この19個のカルスを同組成の培地に移植して培養を続けることにより、14個のカルスに由来する14個の不定芽が得られた。これらの不定芽について、ホルモンフリーMS寒天培地にて継代培養を続けたところ、14個の発根個体を得ることができた。
IV.認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)及び組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL735R)が導入されたタバコの分析
A.PCR分析
IIIにおいて得られた14個の発根個体について、染色体DNAをFast DNA Kit(BIO 101 Inc.)により抽出し、実施例1及び実施例2で用いたプライマーKm1及びKm2、プライマーRBS1及びSPR1a、並びに、プライマーSPL1a及びpBSPh02、実施例2で用いたプライマーRa及びRc、並びに、プライマーOMT1及びOMT3を用いて、実施例1と同様の条件でPCR分析を行った。
この場合において、PCR分析に供したタバコ個体に、PTSspsRScodNに由来する構造が保持された染色体が存在しているときは、約500bp(Km1−Km2)、約200bp(RBS1−SPR1a)及び約100bp(SPL1a−pBSPh02)のDNA断片が増幅されることとなる(図13A)。一方、pTL735R由来の組換え酵素の働きにより、PTSspsRScodNに由来する構造が導入された染色体が消失しているときは、上記DNA断片はいずれも増幅されない。
そして、この染色体の消失が、pTL735Rが染色体に組込まれることなく起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)のDNA断片のみが増幅される(図16A)。また、pTL735Rが染色体に組込まれて起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)及び約1.0kb(Ra−Rc)のDNA断片が増幅される(図19A)。
PCR分析の結果、電気泳動に供した14個体(R−1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15)全てにおいて、約800bpのDNA断片の増幅が検出された。また、そのうち11個体(R−1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、15)においては、約500bp、約200bp及び約100bpのDNA断片の増幅が検出されず、更に、これら11個体のうち、約1.0kbのDNA断片の増幅が検出されたのは6個体(R−3、5、7、9、11、15)、検出されなかったのは5個体(R−1、2、4、6、10)であった。
従って、本実施例においては、11個体の染色体消失個体が得られ、うち5個体(R−1、2、4、6、10)は、その染色体の消失が、pTL735Rが染色体に組込まれることなく起こった個体、即ち、前記IIIにおいてpTL735Rを導入した際、これに配されているR遺伝子も染色体に組込まれることなく、遊離型のままで発現し、その結果、染色体の消失が起こった細胞を起源とする個体であると考えられる。
なお、図20に、上記PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果の一部を示す。
B.染色体消失個体のフローサイトメトリー分析
Aにおいて、染色体消失個体であることが確認された11個体のうち、pTL735Rが染色体に組込まれることなく染色体の消失が起こった上記5個体(R−1、2、4、6、10)につき、実施例1のVI−Bと同様にして、フローサイトメトリー分析を行った。
結果を表3に示す。
すなわち、本実施例においては、組換え酵素遺伝子導入用ベクター導入後の植物個体から、5個体÷32葉片=1.6×10−1の確率で、組換え酵素遺伝子がその染色体に組込まれることなく染色体の消失が起こり、細胞中に、認識配列導入用ベクターの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターの痕跡も残らない個体、つまり、遺伝子操作の痕跡が全く残らない個体を得ることができた。
そして、これら染色体消失個体の作出は容易であって、生殖細胞を経ることなく、ごく単純な構造のベクター、並びに、ごく一般的な遺伝子導入技術及び植物組織培養技術を使用するだけで可能であった。
Rub−Pを連結したipt遺伝子を、実施例3−Iで構築したpTL735Rの制限酵素KpnI部位に連結することで、組換え酵素遺伝子導入用ベクタープラスミドpTL7rubipt35Rを構築し(図18B)、これを2005年12月8日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)宛に国際寄託に付した(寄託受領番号FERM ABP−10473)。このベクターを植物細胞に導入した場合も、実施例1で構築した、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNや組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTShygMRS35RRubipt、実施例2で構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7MRS35RRubipt、実施例3で構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rと同様に、図中、小さな黒三角形で示した、T−DNA由来のRBとLBとの間が、植物細胞中に導入されることとなる。
この組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt35Rを、上記認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNを導入した植物細胞に導入し、該細胞を培養して増殖させると、実施例1、実施例2及び実施例3と同様に、倍加して生じた、pTSspSRScodNに由来する互いに逆方向を向いた二つのRSをそれぞれ有する2本の染色体の間でDNAの組換えが起こり、非対称的組換えが起こった場合には、このpTSspsRScodNに由来する構造、即ち、互いに逆方向を向いた二つのRS、及び、この二つのRSに挟まれた領域に存在するcodA遺伝子等を有する染色体が消失した娘細胞が生じ、対称的組換えが起こった場合には、これらの構造を有する染色体が保持されたままとなる。従って、本実施例においても、pTSspsRScodNを導入した植物細胞に、pTL7rubipt35Rを導入した後、該細胞を5−FCの存在下で培養すると、対称的組換えが起こった細胞は、その染色体に残存するcodA遺伝子の働きにより死滅し、非対称的組換えによって染色体が消失した細胞のみを選抜できることとなる。
なお、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt36Rに配されているR遺伝子は、実施例3において構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL735Rに配されているR遺伝子と同様に、植物細胞に導入された後、該細胞の染色体に組込まれるか否かに関わらず発現し、染色体に組込まれないまま発現した場合には、その細胞において、組換え酵素が一過的に作用して、上記機構により染色体が消失し、しかも、認識配列導入用ベクターpTSspsRScodNの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt35Rの痕跡も残らない細胞を得ることができる。
一方、本実施例において構築した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt35Rには、R遺伝子と共に負の選抜マーカー遺伝子としてipt遺伝子も配されているので、このpTL7rubipt35Rを植物細胞に導入することにより、これに配されているR遺伝子が該細胞の染色体に組込まれたとしても、ipt遺伝子もまた、この染色体に組込まれて発現し、この染色体を有する細胞の正常な増殖や分化は妨げられる。従って、かかる細胞が排除され、組換え酵素が一過的に作用した細胞を確実に取得できるようになる。
II.アグロバクテリウムへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7rubipt35R)の導入
上記Iにて作成した組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt35Rを、実施例1のIIIと同様にしてA.ツメファシエンス4404株に導入し、DNA解析によりこれを確認して、この菌をLBA4404(pTL7rubipt35R)とした。
III.認識配列導入タバコへの組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7rubipt35R)の導入
上記IIで得られたLBA4404(pTL7rubipt35R)を、実施例1のVにおいて1コピーのpTSspsRScodNの導入が確認された、認識配列導入タバコCodN−23株に感染させることにより、組換え酵素遺伝子導入用ベクターpTL7rubipt35Rを認識配列導入タバコに導入した。感染処理は、実施例1のIVと同様にして行った。
感染処理後、3日間LBA4404(pTL7rubipt35R)と共存培養した32葉片を、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l及びカルベニシリン500mg/lを含むMS寒天培地に移植して1週間培養し、次いで、6−ベンジルアミノプリン1mg/l、ナフタレン酢酸0.1mg/l、カルベニシリン500mg/l及び5−FC 0.2mg/lを含むMS寒天培地に移植して培養を続けたところ、53個のカルスが得られ、この53個のカルスを同組成の培地に移植して培養を続けることにより、5個のカルスに由来する5個の不定芽が得られた。これらの不定芽について、ホルモンフリーMS寒天培地にて継代培養を続けたところ、5個の発根個体を得ることができた。
IV.認識配列導入用ベクター(pTSspsRScodN)及び組換え酵素遺伝子導入用ベクター(pTL7rubipt35R)が導入されたタバコの分析
A.PCR分析
IIIにおいて得られた5個の発根個体について、実施例3と同様に、染色体DNAをFast DNA Kit(BIO 101 Inc.)により抽出し、実施例1及び実施例2で用いたプライマーKm1及びKm2、プライマーRBS1及びSPR1a、並びに、プライマーSPL1a及びpBSPh02、実施例2で用いたプライマーRa及びRc、並びに、プライマーOMT1及びOMT3を用いて、実施例1と同様の条件でPCR分析を行った。
従って、この場合においても、PCR分析に供したタバコ個体に、PTSspsRScodNに由来する構造が保持された染色体が存在しているときは、約500bp(Km1−Km2)、約200bp(RBS1−SPR1a)及び約100bp(SPL1a−pBSPh02)のDNA断片が増幅されることとなる(図13A)。一方、pTL7rubipt35R由来の組換え酵素の働きにより、PTSspsRScodNに由来する構造が導入された染色体が消失しているときは、上記DNA断片はいずれも増幅されない。
そして、この染色体の消失が、pTL7rubipt35Rが染色体に組込まれることなく起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)のDNA断片のみが増幅される(図16A)。また、pTL7rubipt35Rが染色体に組込まれて起こったときには、約800bp(OMT1−OMT3)及び約1.0kb(Ra−Rc)のDNA断片が増幅される(図19B)。
PCR分析の結果、電気泳動に供した5個体(I−2、4、8、10、11)全てにおいて、約800bpのDNA断片の増幅が検出される一方、約500bp、約200bp、約100bp及び約1.0kbのDNA断片の増幅はいずれも検出されなかった。
従って、本実施例においては5個体(I−2、4、8、10、11)の染色体消失個体が得られ、そのいずれもが、pTL7rubipt35Rが染色体に組込まれることなく、染色体の消失が起こった個体、即ち、前記IIIにおいてpTL7rubipt35Rを導入した際、これに配されているR遺伝子も染色体に組込まれることなく、遊離型のままで発現し、その結果、染色体の消失が起こった細胞を起源とする個体であると考えられる。
なお、図20に、上記PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果の一部を示す。
B.染色体消失個体のフローサイトメトリー分析
Aにおいて、pTL7rubipt35Rが染色体に組込まれることなく染色体の消失が起こったことが確認された上記5個体(I−2、4、8、10、11)につき、実施例1のVI−Bと同様にして、フローサイトメトリー分析を行った。
結果を表3に示す。
表3より明らかなように、上記5個体(I−2、4、8、10、11)は、いずれもそのDNA含量が、野生種のタバコのDNA含量に比較して少なく、これらが染色体消失個体であることを示していた。
すなわち、本実施例においては、組換え酵素遺伝子導入用ベクター導入後の植物個体から、5個体÷32葉片=1.6×10−1の確率で染色体消失個体が得られた。しかも、本実施例においては、組換え酵素遺伝子と共にこのベクターに配した負の選抜マーカー遺伝子(ipt遺伝子)の働きにより、組換え酵素遺伝子が染色体に組込まれた細胞については、発根個体への再分化が妨げられたため、このとき得られた染色体消失個体のいずれもが、組換え酵素遺伝子がその染色体に組込まれることなく染色体の消失が起こり、細胞中に、認識配列導入用ベクターの痕跡はもちろん、組換え酵素遺伝子導入用ベクターの痕跡も残らない個体、つまり、遺伝子操作の痕跡が全く残らない個体であった。
そして、これら染色体消失個体の作出は容易であって、生殖細胞を経ることなく、ごく単純な構造のベクター、並びに、ごく一般的な遺伝子導入技術及び植物組織培養技術を使用するだけで可能であった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年12月8日出願の日本特許出願(特願2004−382394)及び2005年5月18日出願の日本特許出願(特願2005−174225)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。すべての引用される参照は内容として取り込まれる。
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Claims (9)
- 以下の過程(A)〜(C)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(A)互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列、
これら二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配され、該部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子、及び
互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配した負の選抜マーカー遺伝子を有するベクターを、
植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を、該負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で培養し、増殖させる過程
(C)(B)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する過程 - 以下の過程(A)〜(C)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(A)点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列、
該部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子、及び
負の選抜マーカー遺伝子を有するベクターを、
植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を、該負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で培養し、増殖させる過程
(C)(B)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する過程 - 以下の過程(A)〜(D)を経ることを特徴とする、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
(A)互いに逆方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列、及び
該二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた領域の内側又は外側に配した負の選抜マーカー遺伝子を有するベクター、又は、
点対称の塩基配列からなる一つの部位特異的組換え酵素認識配列、及び
負の選抜マーカー遺伝子を有するベクターを、
植物細胞に導入する過程
(B)(A)でベクターが導入された植物細胞を培養し、上記部位特異的組換え酵素認識配列を認識する部位特異的組換え酵素を、該細胞中で、少なくともその増殖時に、一過的に作用させる過程
(C)(B)で部位特異的組換え酵素を作用させた植物細胞を、該負の選抜マーカー遺伝子が機能する条件下で培養し、増殖させる過程
(D)(C)で増殖させた細胞から、所定の染色体が消失した細胞を選抜する課程 - 請求項3に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(B)において、部位特異的組換え酵素の一過的作用を、培養されている植物細胞に、この部位特異的組み換え酵素を導入することにより行わせる、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
- 請求項3に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法であって、前記過程(B)において、部位特異的組換え酵素の一過的作用を、培養されている植物細胞に、この部位特異的組換え酵素をコードしている部位特異的組換え酵素遺伝子を導入することにより行わせる、1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
- 部位特異的組換え酵素遺伝子の導入は、部位特異的組換え酵素遺伝子と負の選抜マーカー遺伝子とを配したベクターを植物細胞に導入することにより行う、請求項5に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
- 部位特異的組換え酵素遺伝子を、これがコードしている部位特異的組換え酵素が認識する、互いに同一方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた状態でベクターに配し、このベクターを植物細胞に導入することにより、該部位特異的組換え酵素遺伝子の導入を行う、請求項5に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
- 部位特異的組換え酵素遺伝子と共に、負の選抜マーカー遺伝子を、互いに同一方向を向いた二つの部位特異的組換え酵素認識配列に挟まれた状態でベクターに配する、請求項7に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
- 負の選抜マーカー遺伝子として、致死誘導遺伝子又は形態異常誘導遺伝子を用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の1以上の染色体を消失させた植物細胞の作出方法。
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