JP4911218B2 - 指紋データ合成装置 - Google Patents
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Description
本人確認に利用できる生体情報の一つに指紋がある。指紋は、「万人不同」,「終生不変」という二大特徴を持つと言われ、本人確認の有力な手段と考えられている。近年では、指紋を用いた個人照合システムに関して多くの研究開発が行なわれている。
上述のように不明瞭な部分を含む指紋画像から個人固有の特徴を正確に抽出することは難しく、そのような指紋画像から特徴点を抽出して登録指紋データを作成しても、照合性能の低下を免れられない。
一方、該複数の指紋データにおける各特徴点が正しい特徴点である程度を表す信頼度を該特徴点の特徴点データに基づいて算出し、抽出された特徴点が誤特徴点であると判断される特徴点データの類型と合致するほど該信頼度を小さくする特徴点信頼度算出部をそなえ、該信頼度が所定値以上の特徴点のみを用いて、該共通特徴点探索部が共通特徴点を探索し、該指紋データ合成部が合成指紋データを作成してもよい。このとき、該指紋データ合成部が、該共通特徴点探索部により共通特徴点として対応づけられた特徴点のうち一つを選択し、該共通特徴点探索部により共通特徴点として対応づけられなかった特徴点を選択し、選択された特徴点で合成指紋データを構成してもよい。
さらに、該指紋データ合成部が、共通特徴点として対応づけられた特徴点の特徴点関係データについて該照合部により照合した結果を参照し、発生頻度が高い特徴点関係データを該合成指紋データにおける該特徴点の特徴点関係データとしてもよい。
また、採取領域の異なる複数の指紋画像から、広範囲の特徴点を正確に抽出して指紋データを作成することができるので、上記システムにおいて安定した照合性能を実現することができる。
また、採取領域の異なる複数の生体情報から、広範囲の特徴要素を正確に抽出して生体特徴データを作成することができるので、上記システムにおいて安定した照合性能を実現することができる。
〔1〕第1実施形態の説明
図1は本発明の第1実施形態としての指紋データ合成装置の機能構成を示すブロック図であり、この図1に示す第1実施形態の指紋データ合成装置1は、指紋データ抽出部10,指紋データ記憶部20,共通特徴点探索部30,指紋データ合成部40および検証部50を有して構成されている。
つまり、RAMやROMが指紋データ記憶部20としての機能を果たすほか、RAMには、指紋データ抽出部10,共通特徴点探索部30,指紋データ合成部40および検証部50を実現するためのアプリケーションプログラムが格納されている。
なお、指紋スキャナ2は、指を特殊な光学系に接触させて得られる像をCCDカメラで撮影したり、静電容量センサで皮膚の隆起部分のみを検出したりして、指紋紋様(指紋隆線)を指紋画像として採取するものである。
共通特徴点探索部30は、指紋データ記憶部20に格納された複数の指紋データを参照し、これらの指紋データの相互間で特徴点の対応関係を調査することにより、2以上の指紋データに共通に含まれる同一の特徴点を共通特徴点として探索するものである。
ここで、検証部50は、最終的な合成指紋データについて、例えば、以下の4項目のうちの少なくとも一つを確認することにより、その最終的な合成指紋データの妥当性を検証する。
(a2)合成指紋データにおける特徴点の存在の偏りの妥当性
(a3)合成指紋データにおける特徴点どうしの関係情報の妥当性
(a4)合成指紋データにおける特徴点の個数(多過ぎ,少な過ぎ)の妥当性
なお、これらの妥当性(a1)〜(a4)に基づく検証部50による具体的な検証手法については、図6〜図9を参照しながら後述する。
まず、指紋スキャナ2により同じ指について採取された複数の指紋画像は、それぞれ、指紋データ抽出部10に入力され、この指紋データ抽出部10により、各指紋画像から、特徴点(端点,分岐点),指紋隆線方向,特徴点間距離,特徴点間隆線長や、指紋特徴点間の隆線本数を含む関係情報などが抽出されて、指紋データが作成される(ステップS1)。指紋画像毎に作成された指紋データは、指紋データ記憶部20に格納される。
なお、共通特徴点探索部30による特徴点の対応関係の調査は、同一の指に対し行なわれることが初めから分かっているので、指紋照合のように厳密なものではなく、複数の指紋データにおける共通の所定基準位置(例えば指紋中心など)に対して同一もしくはほぼ同一の位置に存在する特徴点があるか否かに基づいて行なわれ、位置的な条件のみによって特徴点の対応関係が判断される。
そこで、第1実施形態の指紋データ合成装置1では、共通特徴点探索部30により、2以上の指紋データに共通に含まれている同一の特徴点を、共通特徴点として調査・抽出した場合、指紋データ合成部40により、共通特徴点探索部30で得られた共通特徴点情報から、特徴点が重複しないように特徴点データをまとめ、一つの合成指紋データが作成される(ステップS3)。
また、指紋の採取状態によっては、ある一つの指紋データだけに含まれ他の指紋データには含まれていない特徴点が存在する場合もある。そのような場合、指紋データ合成部40は、その特徴点が正しい特徴点としての条件を満たしていれば、その特徴点に関する情報を、合成指紋データに含ませる。
通常、人の指紋には特徴点が30〜50個ほど存在し、その分布は人により全て異なる。二つの指紋間でその分布が一致すれば、その指紋は同一の指紋だと判定される。特徴点の分布の照合は、二つの指紋間でそれぞれの特徴点の位置や種類(端点/分岐点)や方向を比較することで行なう。また、特徴点と特徴点との間に存在する隆線本数や、特徴点どうしの隆線による繋がり模様も照合し、照合性能を向上させる場合もある。
既に述べたように、指紋データには、汗や皺,傷,乾燥の影響で、特徴点の抽出に失敗し、誤特徴点が含まれていることが多い。また、指紋スキャナ2に対する指の置く位置が異なることで、同じ指の指紋データでも指紋の採取領域が異なり、相互に重畳しない領域から二つの指紋データが抽出される場合もある。このような二つの指紋データ間では、特徴点データを照合することができない。
従って、誤特徴点が少なく、広範囲の特徴点データを含んでいる登録指紋データを作成することが望まれる。そこで、指紋データ合成部40において複数の指紋データを合成することにより、誤特徴点が少なく、広範囲の特徴点を含んだ指紋データを作成する。
部分的に隆線構造のつぶれた指紋画像の例を図3に示す。例えば、汗のため隆線間に大量の癒着が発生した場合、図3の領域AR1内に示すように、網目状に隆線構造が検出され大量の誤特徴点が発生する。このような誤特徴点を含んだまま登録指紋データを作成すると、明らかに正常な指紋照合が行なえなくなる。
これに対し、本発明では、それぞれの指紋画像を用いて指紋データを作成してから、指紋データを合成することで、誤特徴点データの少ない、広範囲の特徴点データを含んだ合成指紋データを作成している。
ここで、図6(A),図6(B),図7(A),図7(B),図8,図9および図34(A)〜図34(D)を参照しながら、本実施形態での合成指紋データの妥当性の検証手法について説明する。これらの図は、いずれも、合成指紋データに含まれる特徴点の、指紋スキャナ2の指紋入力領域(指を接触させる指紋採取面)100での分布状態を示している。
図6(A)に示すように、全ての特徴点が、指紋入力領域100において、通常、指が押し当てられる領域F内に存在していれば、合成結果は妥当なものであると判断することができる。
前述した通り、指紋合成を行なうことにより、ある程度、広範囲に亘る領域の特徴点を集めて指紋データを作成することが可能になる。しかし、このような場合、合成結果において現実離れした範囲に特徴点が存在していれば、その指紋合成は失敗している確率が高い。
例えば、合成結果に含まれる全ての特徴点の数と、上記領域F内に存在する特徴点の数との比を、評価値として算出すれば、図6(A)に示す合成指紋データの評価値は"8/8=1"となるのに対し、図6(B)に示す合成指紋データの評価値は"9/16=0.5625"となる。従って、検証部50において、前記所定の範囲として例えば0.9以上の範囲を設定した場合、図6(B)に示す合成指紋データの評価値はその範囲外となり、その合成指紋データは、指紋合成に失敗したものと判定される。
図34(A)〜図34(D)に示す例では、Nsは12、Naは(6+9+6)/3=7であり、増加率Ns/Na=12/7≒1.7となる。従って、前記所定値として、例えば1.2を設定しておけば、図34(D)に示す合成指紋データF’は、指紋合成に失敗したものと判定される。
図7(A)に示すように、全ての特徴点が、指紋入力領域100において、指紋中心C0の周りで一つのグループG0として存在していれば、合成結果は妥当なものであると判断することができる。なお、指紋中心C0としては、例えば隆線の中で曲率の最も大きくなる点が選択される。
そこで、上述のような矛盾の発生数が多いほど小さくなるような評価値を定義して算出することにより、関係情報に矛盾を含む、指紋合成に失敗した可能性の高い合成指紋データを排除することが可能になる。
また、採取領域の異なる複数の指紋画像から、広範囲の特徴点を正確に抽出して登録指紋データを作成することができるので、上記システムにおいて安定した照合性能を実現することができる。
さて、第1実施形態で説明したように指紋データ合成部40において2以上の指紋データを合成する際には、正しい特徴点と誤った特徴点とを確実に認識できるすることが望まれる。そこで、本発明の第2実施形態や第3実施形態では、指紋データ抽出部10で抽出された各特徴点に対し、それが正しい特徴点である程度(再現性の程度)を示す特徴点信頼度を定義する。この特徴点信頼度を求め、その値に従って特徴点データの合成を行なっていく。
そして、指紋データ合成装置1Aにおける指紋データ合成部40Aおよび特徴点信頼度算出部60としての機能も、上述した第1実施形態の指紋データ抽出部10,共通特徴点探索部30,指紋データ合成部40および検証部50と同様、記録媒体に格納されたアプリケーションプログラムをCPU等で実行することにより実現される。
(b2)各特徴点から近辺の他の特徴点までの隆線長または距離
(b3)各特徴点から近辺の隆線までの距離
(b4)各特徴点と近辺の他の特徴点との位置関係(各特徴点近辺での他の特徴点の発生パターン)
そして、指紋データ合成部40Aは、共通特徴点探索部30で探索された共通特徴点の中の一つを選択する際に、特徴点信頼度算出部60によって特徴点毎に算出された信頼度を参照し、信頼度の最も高いものを優先的に選択・使用して合成指紋データを作成するものである。
まず、指紋スキャナ2により同じ指について採取された複数の指紋画像は、それぞれ、指紋データ抽出部10に入力され、この指紋データ抽出部10により、各指紋画像から、特徴点(端点,分岐点),指紋隆線方向,特徴点間距離,特徴点間隆線長や、指紋特徴点間の隆線本数を含む関係情報などが抽出されて、指紋データが作成される(ステップS11)。指紋画像毎に作成された指紋データは、指紋データ記憶部20に格納される。
また、第1実施形態のステップS2と同様、共通特徴点探索部30により、指紋データ記憶部20に格納されている複数の指紋データの相互間での特徴点の対応関係が調査される(ステップS13)。
そして、最後に、第1実施形態と同様、指紋データ合成部40Aによる合成結果(合成指紋データ)が妥当な指紋データを形成しているか否かが、検証部50により検証される(ステップS15)。
図12(A)〜図12(C)はいずれも本実施形態での特徴点の方向の定義を説明するための図であり、図13は、各特徴点の方向と隆線の方向との差に基づいて特徴点信頼度を算出する手法を説明するための図である。
図12(A)に示すように、2本の隆線L1,L3の間において、特徴点p1を端点とする隆線L2が存在する場合、この特徴点p1の方向は、特徴点p1から隆線L2が発生する方向(つまり矢印d1で示す方向)と定義する。
しかし、例えば、隆線構造の解析に失敗したり隆線構造が網目状に検出されたりして、大量の誤特徴点が発生した場合(図3や図4の領域AR1,AR2内を参照)、特徴点の方向と隆線方向とは一致しなくなる。
なお、図13において、L6〜L8,L71〜L76はいずれも隆線を示すものであるが、これらのうち隆線L71〜L76は、隆線L7と隆線L8との間に分岐によって生じた網目状のものである。
そこで、特徴点信頼度を、例えば下式(1)のごとく、注目特徴点の向き(単位ベクトル)と隆線の流れる向き(単位ベクトル)との差が大きいほど小さい値になるように定義することにより、図13に示すように誤特徴点である可能性の高い特徴点p11〜p13やp21〜p23の信頼度が低く設定され、その特徴点が指紋データ合成部40Aによって選択される順位を低くすることができる。
ここで、|x|はxの絶対値、kは正の比例定数、V1は注目特徴点の方向を示す単位ベクトル、V2は隆線の流れる向き(隆線方向)を示す単位ベクトル、V1・V2は単位ベクトルV1とV2との内積である。このとき、注目特徴点の方向が隆線方向の向きに対して平行になる場合(V1=V2またはV1=−V2)、(1)式によって定義される特徴点信頼度は最大値kとなる。また、注目特徴点の方向と隆線方向とが直交する場合、(1)式によって定義される特徴点信頼度は最小値0となる。
通常の指紋では、特徴点が小領域に大量に発生することはない。他の特徴点との距離が短い特徴点が大量に発生している場合は、その特徴点の信頼度は低く、誤特徴点である可能性が高いものと判断することができる。
ここで、kは比例定数、N1は、注目特徴点から所定の半径以内の領域にある特徴点のうち、隣接する他の特徴点との距離が全て所定の値以下の特徴点の数であり、N2は、注目特徴点から所定の半径以内の領域にある特徴点の総数である。
なお、上述した例では、注目特徴点と他の特徴点との距離に基づいて特徴点の数N1を求めているが、注目特徴点から隆線を介した他の特徴点までの隆線長に基づいて特徴点の数N1を求めてもよい。
指紋画像における隆線画像に、何らかの要因によって細長い亀裂が入ると、誤特徴点が発生する。
例えば図15(A)では、3本の隆線画像L10,L20,L30が図示されているが、これらのうち真ん中の隆線画像L20に、細長い亀裂NL1が入ったために、細長い髭状のラインLn0が生じている。
そこで、特徴点信頼度を、例えば下式(3)のごとく、注目特徴点からその近辺の隆線までの最短距離に比例する値として定義することにより、指紋画像の亀裂等によって発生した特徴点の信頼度が低く設定され、その特徴点がデータ合成部40Aによって選択される順位を低くすることができる。
ここで、kは比例定数、Dは注目特徴点からその近辺の隆線までの最短距離である。
例えば図15(B)において特徴点(端点)Pe1を注目特徴点とした場合、この特徴点Pe1から隆線L21までの最短距離がDとして求められ、特徴点信頼度が算出される。その最短距離Dは、隆線L11,L21,L31の間隔に比べて明らかに小さく、特徴点Pe1についての信頼度は小さくなる。従って、特徴点Pe1がデータ合成部40Aによって選択される順位が低くなる。
指に切り傷等の傷を負うと、指紋の隆線には亀裂が発生する。従って、例えば図16(A)に示すように、隆線画像L10,L20,L30が、亀裂NL2により分断される。
そこで、注目特徴点とその近辺にある他の二つの特徴点を結んだ直線の傾きが等しいもしくはほぼ等しい場合に、その注目特徴点の信頼度が小さくなるように特徴点信頼度を定義する。
〔特徴点信頼度〕=k*|b/a−d/c| (4)
ここで、kは比例定数、図16(C)に示すように、b/aは注目特徴点p20と他の特徴点p30とを結んだ直線の傾きを表し、d/cは注目特徴点p20と他の特徴点p10とを結んだ直線の傾きを表すものである。
なお、特徴点信頼度算出部60は、上述した(1)〜(4)式のうちの一つだけを用いて特徴点信頼度を算出してもよいし、(1)〜(4)式のうちの2以上を用いて特徴点信頼度をそれぞれ算出し、算出された信頼度の合計値を最終的な特徴点信頼度として算出してもよい。
図17は本発明の第3実施形態としての指紋データ合成装置の機能構成を示すブロック図であり、この図17に示す第3実施形態の指紋データ合成装置1Bは、第1実施形態と同様の指紋データ抽出部10,指紋データ記憶部20および検証部50を有するほか、特徴点ラベル割り当て部70,指紋データ照合部80,特徴点信頼度算出部60B,共通特徴点データ記憶部90および指紋データ合成部40Bを有して構成されている。なお、既述の符号と同一の符号は同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
そして、指紋データ合成装置1Bにおける指紋データ合成部40B,特徴点信頼度60B,特徴点ラベル割り当て部70および指紋データ照合部80としての機能も、上述した第1実施形態の指紋データ抽出部10,共通特徴点探索部30,指紋データ合成部40および検証部50と同様、記録媒体に格納されたアプリケーションプログラムをCPU等で実行することにより実現される。また、RAMやROMが、共通特徴点データ記憶部90としての機能を果たす。
(c2)照合対象の二つの特徴点について、各照合対象特徴点と他の特徴点との関係情報を指紋データ照合部80により照合した結果。ここで、関係情報としては、他の特徴点の位置,種類および方向のうちの少なくとも一つを用いてもよいし、各照合対象特徴点から他の特徴点までの隆線の本数を用いてもよいし、各照合対象特徴点から隆線を介した他の特徴点までの接続パターンを用いてもよいし、各照合対象特徴点から他の特徴点までの距離を用いてもよいし、各照合対象特徴点から他の特徴点までの隆線長を用いてもよい。
(c3)各特徴点の照合一致回数をそのまま照合一致評価値として用いる。
また、共通特徴点データ記憶部90は、共通特徴点の特徴点ラベルと、その特徴点ラベルを特徴点ラベル割り当て部70によって割り当てられた特徴点についての信頼度(特徴点信頼度算出部60Bによる算出結果)と、その信頼度を求めたときの指紋データ番号(指紋データを特定する番号)とを対応させて記憶するものである。
合成指紋データ作成部41は、図19を参照しながら後述するごとく、指紋データ記憶部20に保存される指紋データと共通特徴点データ記憶部90に保存される共通特徴点データとに基づいて、合成すべき特徴点を選択し、合成指紋データを作成するものである。
つまり、指紋データ合成部40Bにおいて合成指紋データを作成する際には、位置合わせ用特徴点探索部42が、作成中の合成指紋データに含まれる特徴点の中から適当な特徴点を選択し、その特徴点を基準にして、合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なっている〔図32(A)および図32(B)参照〕。
また、指紋データ合成部40Bは、図29(A)〜図29(D)を参照しながら後述するごとく、指紋データ照合部80による各特徴点と他の特徴点との関係情報の照合結果を参照し、信頼度の高い関係情報を収集して合成関係情報を作成し、その合成関係情報を、合成指紋データを成す特徴点の関係情報として、その合成指紋データに含ませる機能も有している。
まず、指紋スキャナ2により同じ指について採取された複数の指紋画像は、それぞれ、指紋データ抽出部10に入力され、この指紋データ抽出部10により、各指紋画像から、特徴点(端点,分岐点),指紋隆線方向,特徴点間距離,特徴点間隆線長や、各照合対象特徴点から隆線を介した他の特徴点までの接続パターンや、指紋特徴点間の隆線本数を含む関係情報などが抽出されて、指紋データが作成される(ステップS21)。指紋画像毎に作成された指紋データは、指紋データ記憶部20に格納される。
そして、指紋データ照合部80は、指紋データFiの組(Fp,Fq)を作りながら(ステップS24)、全ての指紋データの組合わせについて(ステップS33でYES判定となるまで)、指紋照合処理を実行する。ただし、p,qはいずれも1以上n以下の自然数で、p≠qである。
さらに、特徴点信頼度算出部60Bは、上述した項目(c1)〜(c3)のうちの少なくとも一つのデータを照合結果から得て、そのデータに基づいて、特徴点信頼度としての照合一致評価値を算出する。その算出手法の詳細については、図20(A)〜図27を参照しながら後述する。
合成指紋データ記憶部43に、合成指紋データRを格納するための空領域を確保しておいてから(ステップS34)、合成指紋データ作成部41は、共通特徴点データ記憶部90から共通特徴点の特徴点ラベル,その共通特徴点の信頼度および指紋データ番号を受信する。
そして、最後に、第1実施形態と同様、指紋データ合成部40Bによる合成結果(合成指紋データR)が妥当な指紋データを形成しているか否かが、検証部50により検証される(ステップS43)。
なお、図20(A)〜図26(C)はいずれも本実施形態での特徴点信頼度(照合一致評価値)の算出手法を説明するための図、図27は本実施形態での特徴点信頼度の修正手法を説明するための図、図28は本実施形態での指紋データの合成結果の例を説明するための図、図29(A)〜図29(D)はいずれも本実施形態での特徴点の合成関係情報の作成手法を説明するための図、図30(A)〜図32(B)はいずれも本実施形態での特徴点の位置合わせ手法を説明するための図、図33は本実施形態での指紋データ照合手法の変形例を説明するためのフローチャートである。
先に述べたように、特徴点データには、特徴点の位置,種類,方向を含む特徴点基本データと他の特徴点との関係を表した特徴点関係データとの二つがある。特徴点データの照合とは、これら二つのデータの照合を行なうことを指す。
例えば、特徴点関係データが、注目特徴点から他の特徴点までの隆線の本数で表されている場合の特徴点照合を考える。
・特徴点Xから特徴点Tまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点Toまでの隆線本数とは一致。
・特徴点Xから特徴点Sまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点Soまでの隆線本数とは不一致。
・特徴点Xから特徴点Qまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点Qoまでの隆線本数とは一致。
・特徴点Xから特徴点Pまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点Poまでの隆線本数とは一致。
ここでは、照合した二つの指紋データは、予め同じ指から得られたものであることが分かっているので、本来はこれらの特徴点関係データの全てが一致しなければならない。
再現性の良い特徴点とは、即ち、照合一致しやすい特徴点なので、第3実施形態の特徴点信頼度算出部60Bは、特徴点データの照合結果に基づいて、以下のようにして特徴点信頼度(照合一致評価値)を導くことができる。
つまり、二つの指紋データを照合し、照合一致した特徴点のみを特徴点信頼度の計算対象とする。この場合、特徴点信頼度を例えば次式(5)のように定義することにより、特徴点の種類が異なる場合には、その特徴点の信頼度は最も低く設定され(−∞)、特徴点の種類が一致している場合には、位置および方向の誤差が小さい程、信頼度が高く設定される。
=−∞(δ=0のとき) (5)
ここで、δは、特徴点の種類が一致した時に1、それ以外の時に0に設定される値である。また、k1,k2は定数、E1は特徴点位置の誤差、E2は特徴点方向の誤差である。従って、注目特徴点の種類,位置,方向の全てが一致した場合、(5)式によって定義される特徴点信頼度は最大値0となる。
特徴点関係データの照合結果を確認することで、注目特徴点と周りに存在する特徴点との関係の再現性を確認することができる。特徴点関係データは、隆線構造を表現したものであるので、特徴点の照合に関して大きな判断材料になる。つまり、特徴点関係データの照合は、隆線構造の照合をしていることになるので、照合条件が特徴点基本データの照合よりも厳しい。従って、特徴点の抽出が不安定であると(即ち特徴点に再現性がないと)、特徴点関係データの照合結果は顕著に悪くなる。特徴点関係データの照合結果を用いれば、特徴点の再現性をよく示した特徴点信頼度を求めることができる。
まず、特徴点関係データを注目特徴点近傍の他の特徴点の位置,種類,方向とし、これらを照合した場合について説明する。ここでは、図20(A)および図20(B)にそれぞれ示す、指紋データにおける特徴点Xと特徴点X'とについて、照合を行なったものとする。
・特徴点Xの近傍特徴点である特徴点Tと同じ位置,種類,方向の特徴点(To)が特徴点X'にもある。
・特徴点Xの近傍特徴点である特徴点Sと同じ位置,種類,方向の特徴点が特徴点X'にはない。
・特徴点Xの近傍特徴点である特徴点Rと同じ位置,種類,方向の特徴点が特徴点X'にはない。
・特徴点Xの近傍特徴点である特徴点Qと同じ位置,種類,方向の特徴点(Qo)が特徴点X'にもある。
・特徴点Xの近傍特徴点である特徴点Pと同じ位置,種類,方向の特徴点(Po)が特徴点X'にもある。
即ち、関係情報の5分の3については照合一致し、残りの5分の2については照合不一致となっている。
〔特徴点信頼度〕=N3/N4 (6)
ここで、N3は、一致した近傍特徴点関係データの数であり、N4は、近傍特徴点関係データの総数である。従って、図20(A)および図20(B)に示す例では、特徴点信頼度は、3/5=0.6となる。
・特徴点Xから特徴点Sまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点S'までの隆線本数とは不一致。
・特徴点Xから特徴点Qまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点Q'までの隆線本数とは一致。
・特徴点Xから特徴点Pまでの隆線本数と特徴点X'から特徴点P'までの隆線本数とは不一致。
即ち、関係情報の半分については照合一致し、残りの半分については照合不一致となっている。
〔特徴点信頼度〕=N5/N6 (7)
ここで、N5は、一致した隆線本数関係データの数であり、N6は、隆線本数関係データの総数である。従って、図21(A)および図21(B)に示す例では、特徴点信頼度は、2/4=0.5となる。
・特徴点Xの左1本隣の隆線上には、特徴点Rがある。特徴点X'の左1本隣の隆線上には、特徴点R'がある。従って、特徴点X,X'の左1本隣の隆線に関する隆線接続関係データは一致する。
・特徴点Xの右1本隣の隆線上には、特徴点Qがある。特徴点X'の右1本隣の隆線上には、特徴点Q'がある。従って、特徴点X,X'の右1本隣の隆線に関する隆線接続関係データは一致する。
即ち、5個ある隆線接続関係データのうち、2個は照合一致し、残りの3個は照合一致しない。
従って、特徴点信頼度を、例えば次式(8)のごとく隆線接続関係データの一致率として定義することにより、一致率が高い程、信頼度が高く設定されることになる。
〔特徴点信頼度〕=N7/N8 (8)
ここで、N7は、照合一致した隆線接続関係データの数であり、N8は、特徴点Xのもっている隆線接続関係データの総数である。従って、図22(A)および図22(B)に示す例では、特徴点信頼度は、2/5=0.4となる。
予め同じ指だと分かっている複数の指紋データを互いに照合し、順次、一致した特徴点を記録していく。そして、一致と判定された回数の多さを、特徴点の信頼度として定義する。
まず、指紋データF1と指紋データF2とを照合させ、以下の結果を得る。
・特徴点Aと特徴点aとは同一。
・特徴点Cと特徴点bとは同一。
・特徴点Dと特徴点cとは同一。
・特徴点Eと特徴点dとは同一。
次に、指紋データF1と指紋データF3とを照合し、次の結果を得る。
・特徴点Aと特徴点αとは同一。
・特徴点Bと特徴点βとは同一。
・特徴点Cと特徴点γとは同一。
・特徴点Dと特徴点δとは同一。
さらに、同様に、指紋データF2と指紋データF3とを照合し、ラベリングし直すと、指紋データF1〜F3はそれぞれ図26(A)〜図26(C)に示すようになる。最終的に図26(A)〜図26(C)に示すごとく得られた照合回数が各特徴点の信頼度となる。照合一致した回数を数えるということは、同じ特徴点データの発生頻度を数えていることにほかならない。
例えば図27に示す特徴点Pcは、その方向が隆線の流れている方向に平行であり、他の特徴点Peとの距離が一定以上ある。このような場合、第2実施形態の手法で算出される信頼度は高くなる可能性がある。しかし、特徴点Pcの周りにある特徴点Peはほとんど誤特徴点であり、それを考慮すると自分自身が正特徴点である確率は低い。
〔修正後の特徴点信頼度〕=〔修正前の特徴点信頼度〕*K (9)
ここで、Kは、注目特徴点の周囲に存在する特定の他の特徴点のうち、所定値以上の信頼度をもつものの割合である。なお、「特定の他の特徴点」とは、例えば、特徴点から所定の半径以内の領域にある他の特徴点や、隆線を介してつながっている他の特徴点などである。
まず、それぞれの指紋データに存在する特徴点の一致関係(同一特徴点の関係)を調べる。その一致関係は、互いに二つの指紋データを照合し、各特徴点の照合一致結果に基づいて求められる。具体的な手法は、図23〜図26を参照しながら説明した手法と同様である。
なお、この図33に示す合成手順は、図18および図19において説明した合成手順とは若干異なるもので、本実施形態での指紋データ照合手法の変形例である。
指紋画像に写っている指紋の位置は、指紋画像を採取する度に異なるので、単純に複数の指紋データ間で座標を比較できない。そこで、次に、全指紋データに共通の座標軸を設定する(ステップS52)。その共通の座標軸の原点は、指紋中心を用いたり特定の特徴点を用いたりする。また、全指紋データに共通の座標軸を設定することなく特徴点の位置合わせを行なうこともできる。なお、特徴点の位置合わせ手法(位置合わせ用の基準を決定する手法)の詳細については、図30〜図32を参照しながら後述する。
そして、特徴点ラベル毎に、以下のような指紋合成の処理(ステップS54〜S58)を行なっていく。
未処理の特徴点が存在する場合(ステップS54からNOルート)には、合成処理対象となる未処理の特徴点ラベルAiを一つ選択し(ステップS55)、そのラベルAiを割り当てられた特徴点の中から、最も高い信頼度をもつ特徴点を探索し、その信頼度をAi(max)とする(ステップS56)。
このような処理が、他の指紋データにおける特徴点と照合一致した全ての特徴点について実行されると、指紋合成処理は完了する(ステップS54からYESルート)。
・特徴点Xと特徴点Tとの間にある隆線の本数は、2本のものが4個ある。
・特徴点Xと特徴点Sとの間にある隆線の本数は、1本のものが1個、2本のものが3個ある。
・特徴点Xと特徴点Rとの間にある隆線の本数は、1本のものが1個、0本のものが3個ある。
・特徴点Xと特徴点Qとの間にある隆線の本数は、0本のものが4個ある。
・特徴点Xと特徴点Pとの間にある隆線の本数は、1本のものが1個、2本のものが3個ある。
・特徴点Xと特徴点Sとの間にある隆線の本数は、2本である。
・特徴点Xと特徴点Rとの間にある隆線の本数は、0本である。
・特徴点Xと特徴点Qとの間にある隆線の本数は、0本である。
・特徴点Xと特徴点Pとの間にある隆線の本数は、2本である。
また、図30(A)および図30(B)に示すように、全ての指紋データに共通の基準(原点)として、指紋画像から求められる指紋中心を用いてもよい。その際、指紋中心としては、例えば、隆線の中で曲率の最も大きくなる点L01,L02が算出・選択する。そして、この指紋中心を原点とする座標軸x,yに基づいて、合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なう。
そこで、そのような場合には、指紋特徴点を合成する度に共通の座標軸を設定するようにする。つまり、作成中の合成指紋データに含まれる特徴点の中から選択した特徴点を基準にして、合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なう。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、生体特徴データが指紋データである場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、掌紋,指形,掌形,音声,網膜,虹彩,顔画像,動的署名,血管パターン,キーストローク等の生体情報を用いて個人確認を行なうシステムにおいて生体特徴データを作成する際にも適用され、上述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、採取領域の異なる複数の生体情報から、広範囲の特徴要素を正確に抽出して生体特徴データを作成することができるので、上記システムにおいて安定した照合性能を実現することができる。
2 指紋スキャナ
10 指紋データ抽出部
20 指紋データ記憶部
30 共通特徴点探索部
40,40A,40B 指紋データ合成部
41 合成指紋データ作成部
42 位置合わせ用特徴点探索部
43 合成指紋データ記憶部
50 検証部
60,60B 特徴点信頼度算出部
70 特徴点ラベル割り当て部
80 指紋データ照合部(共通特徴点探索部)
90 共通特徴点データ記憶部
100 指紋入力領域
Claims (6)
- 複数の指紋画像のそれぞれから特徴点を抽出し、抽出された該特徴点に関する情報を特徴点データとし、前記指紋画像毎に該特徴点データを含む指紋データを作成する指紋データ抽出部と、
複数の該指紋データを合成して合成指紋データを作成する指紋データ合成部と、
該合成指紋データが所定の類型に合致する場合に前記指紋データの合成が妥当であると判断する検証を、該合成指紋データの特徴点の個数が所定の範囲内であることと、該合成指紋データの特徴点が所定の領域内に存在することと、該合成指紋データの特徴点が指紋中心付近で1つのグループをなして存在することと、該合成指紋データの特徴点の関係情報が合成指紋データにおける他の特徴点の関係情報と整合がとれていることのいずれかを含む前記所定の類型について行なう検証部とをそなえて構成されたことを特徴とする、指紋データ合成装置。 - 該検証部が、前記妥当性を有する指紋データの類型に該合成指紋データが合致する度合いを表す評価値を該合成指紋データに基づいて算出し、該評価値を該指紋合成データが前記類型に合致しない場合に小さくし、該評価値が所定値以上である場合に、該指紋データ合成部による指紋データの合成を妥当と判断することを特徴とする、請求項1記載の指紋データ合成装置。
- 該検証部が、前記妥当性を有する指紋データの類型のうち2つ以上の類型について該指紋合成データが合致するかを判断する場合に、それぞれの類型との合致度合いに基づいた評価値の合計値が所定の範囲内である場合に該指紋データ合成部による指紋データの合成が妥当であると判断することを特徴とする、請求項2記載の指紋データ合成装置。
- 該指紋データ合成部が該合成指紋データを作成する際、該複数の指紋データに共通に含まれている特徴点を基準にして、該合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なうことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の指紋データ合成装置。
- 該指紋データ合成部が該合成指紋データを作成する際、該指紋画像から求められる指紋中心を基準にして、該合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なうことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の指紋データ合成装置。
- 該指紋データ合成部が該合成指紋データを作成する際、作成中の該合成指紋データに含まれる特徴点の中から選択した特徴点を基準にして、該合成指紋データを成す特徴点相互の位置合わせを行なうことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の指紋データ合成装置。
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