JP4909816B2 - 電子スピン共鳴測定装置および電子スピン共鳴測定方法 - Google Patents

電子スピン共鳴測定装置および電子スピン共鳴測定方法 Download PDF

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Description

本発明は電子スピン共鳴測定装置および電子スピン共鳴測定方法に関し、特に、複数の周波数成分を有する光を照射することで電子スピン共鳴を起こさせる方法に適用して好適なものである。
不対電子を有する物質において、磁場を印加することでエネルギー準位が分裂(ゼーマン分裂)し、その分裂に共鳴する振動磁場が吸収される現象は、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)として知られている。
そして、この電子スピン共鳴を測定すれば、試料を分解することなく、物質の特性を高感度に検出することができるため、磁性体の他、半導体や有機物など様々の物質の分析に頻繁に利用されている。
この電子スピン共鳴を測定するために、従来の電子スピン共鳴測定装置では、電磁波の吸収を測定するための空洞共振器が設けられている。そして、この空洞共振器内に試料を配置し、静磁場を印加することで試料内のエネルギー準位をゼーマン分裂させ、この試料に電磁波を印加することで不対電子を共鳴させ、その共鳴時の吸収エネルギーを測定することで、物質の特性を高感度に検出することができる。
すなわち、ゼーマン分裂が発生した試料に電磁波を印加し、不対電子が共鳴状態になると、電磁波の吸収が発生し、空洞共振器のQ値が変化することから、試料に印加される電磁波の周波数を固定し、試料に印加される静磁場の強度を掃引することにより、共鳴条件を満たす磁場強度を観測することができる。
ここで、試料に印加される電磁波の周波数は、10GHz帯(磁場の強度は0.3テスラ程度以下)が一般的に使用されているが、より高い分解能が得られるようにするために、Wバンド(95GHz帯)の他、さらに高い周波数の電磁波が利用され始めている。なお、Xバンドの9GHzの電磁波を用いる場合は、波長は数cmである。
また、例えば、非特許文献1には、電子スピン共鳴を測定するために、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)の原理を取り入れ、電子スピン共鳴による磁気トルクの変化によるカンチレバーの撓み量を検出する方法が開示されている。
http://www.kobe−u.biz/seeds/ppdoc/rigakubu/bunya2/ootahitishisensei/slide0003.htm
しかしながら、従来の電子スピン共鳴測定装置では、空間分解能を高めるために、試料に印加される電磁波の周波数を低くすると、空洞共振器のサイズを小さくする必要があり、それに伴って試料のサイズも小さくなることから、電子スピン共鳴時に得られる信号の強度が弱くなり、カーボンナノチューブや量子ドットなどの微細な構造に特有の物性の分析が困難であるという問題があった。
また、従来の電子スピン共鳴測定装置では、電極構造を表面に有する半導体素子などでは、電磁波の表皮効果によって電磁波が試料内部まで入り込まないため、試料内部の分析が困難であるという問題があった。
また、非特許文献1に開示された方法では、電子スピン共鳴を高感度に測定するためには、パルス状の強力な磁場を印加する必要があり、装置の構成が複雑化するという問題があった。
一方、同様な動作原理でありながら、様々の物質の分析に用いられている核磁気共鳴では、電子に比べて核の重さが約2000倍も重いため、MHzオーダの比較的低い周波数の電磁波を用いた場合においても、高精度の分析が可能である。電子スピン共鳴においても、電磁波の周波数を高くすることができれば、より高精度の分析が可能となることから、高周波化の制限となる空洞共振器を用いることなく、電子スピン共鳴を測定できる方法の開発が望まれている。
そこで、本発明の目的は、空洞共振器を用いることなく、電子スピン共鳴を測定することが可能な電子スピン共鳴測定装置および電子スピン共鳴測定方法を提供することである。
上述した課題を解決するために、本発明の電子スピン共鳴測定装置によれば、電子スピン系に磁場を印加することで電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるエネルギー準位分裂手段と、レーザ光を発生する光源とレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子とを有する実効振動磁場発生用光源からなり、前記電子スピン系に少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を照射する第1の光照射手段により、前記分裂幅または前記分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させる実効振動磁場発生手段と、前記共鳴に伴う物理現象の変化を検出する電子スピン検出手段とを備えることを特徴とする。
また、前記電子スピン検出手段は、電子スピンの偏極度を計測するための光または熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を照射する第2の光照射手段を備えることを特徴とする。
また、前記電子スピン検出手段は、前記電子スピン系を持つ試料から放射される光もしくは前記試料を透過または反射する光を検出する光検出手段を備えることを特徴とする。
また、前記電子スピン検出手段は、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測する電気特性計測手段を備えることを特徴とする。
また、前記電子スピン検出手段は、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を照射する励起光源を有するとともに、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測する電気特性計測手段を備えることを特徴とする。
また、本発明の電子スピン共鳴測定方法によれば、電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、レーザ光を発生する光源とレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子とを有する実効振動磁場発生用光源からなり、前記電子スピン系に少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を照射する第1の光照射手段により、前記分裂幅または前記分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、前記共鳴に伴う物理現象の変化を検出するステップとを備えることを特徴とする。
また、電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射することで、前記分列幅または前記分列幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射しながら、前記電子スピン系を持つ試料から放射される光もしくは前記試料を透過または反射する光を検出するステップとを備えることを特徴とする。
また、電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射することで、前記分列幅または前記分列幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射しながら、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測するステップとを備えることを特徴とする。
前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射する場合、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を同時に照射することを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、電子スピン系に光を照射することで、ゼーマン分裂幅に相当するエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させ、その時の試料の光学特性変化または電気特性変化を検出することで、空洞共振器を設けることなく、電子スピン共鳴を測定することができる。このため、光の照射領域を絞り込むことで、測定領域の微小化を図ることが可能となるとともに、空洞共振器のサイズの微小化に伴う感度の劣化を防止することができ、空間分解能を上げつつ、電子スピン共鳴を高感度で測定することが可能となることから、カーボンナノチューブや量子ドットなどの微細な構造に特有の物性を精度よく分析することができる。
以下、本発明の実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光励起電子スピン共鳴における実効振動磁場の発生方法を概念的に示す図である。
図1において、電子スピン系のエネルギー準位の分裂幅またはその分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させる方法として、スピン依存ACシュタルク効果の原理を応用することができる。このスピン依存ACシュタルク効果は、共鳴励起エネルギーよりも小さなエネルギーを持った円偏光状態を有するレーザ光を電子スピン系に照射すると、電子スピンの向きに応じてエネルギー準位が分裂する現象である。なお、スピン依存ACシュタルク効果については、例えば、“J.A.Gupta,R.Knobel,N.Samarth,D.D.Awschalom「Ultrafast Manipulation Electron Spin Coherence」29 June 2001 VOL292 SCIENCE”に開示されている。
すなわち、上向きスピンおよび下向きスピンを持つ伝導帯電子のエネルギー準位1に対し、共鳴励起エネルギーよりも小さなエネルギーを持った円偏光状態を有するレーザ光が照射されると、下向きスピンを持つ伝導帯電子のエネルギー準位2と、上向きスピンを持つ伝導帯電子のエネルギー準位3に分裂する。
ここで、複数の周波数成分を持つレーザ光を重ね合わせると、それらの周波数の差分に対応したビートが発生する。そして、上向きスピンおよび下向きスピンを持つ伝導帯電子のエネルギー準位2、3に対し、共鳴励起エネルギーよりも小さなエネルギーを持ったビートを有する円偏光が照射されると、エネルギー分裂がビート周波数で振動することにより、その周波数に対応した実効的な振動磁場5が発生する。そして、この実効的な振動磁場5を従来の電子スピン共鳴で用いられる振動磁場の代わり用い、その時の試料の光学特性変化または電気特性変化を検出することで、空洞共振器を設けることなく、電子スピン共鳴を測定することができる。
これにより、光の照射領域を絞り込むことで、測定領域の微小化を図ることが可能となるとともに、空洞共振器のサイズの微小化に伴う感度の劣化を防止することができる。このため、空間分解能を上げつつ、電子スピン共鳴を高感度で測定することが可能となり、カーボンナノチューブや量子ドットなどの微細な構造に特有の物性を精度よく分析することができる。
図2は、本発明の第1実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2において、電子スピン共鳴測定装置には、電子スピン系に磁場を印加することで、電子スピン系のエネルギー準位を分裂させる磁場発生部8、エネルギー準位が分裂された電子スピン系に光を照射することで、その分裂幅またはその分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させる実効振動磁場発生光源部6およびエネルギー準位の分裂幅またはその分裂幅の近傍のエネルギーへの共鳴に伴う物理現象の変化を検出する電子スピン検出部7が設けられている。
そして、磁場発生部8にて発生された磁場を試料9に印加することで、試料9の電子スピン系のエネルギー準位を分裂させる。そして、実効振動磁場発生光源部6にて、複数の周波数成分を持つレーザ光を発生させ、それらのレーザ光を重ね合わせることで、それらの周波数の差分に対応したビートが発生させ、そのビートを有するレーザ光に円偏光成分を持たせてから、試料9に照射する。なお、複数の周波数成分を持つレーザ光を重ね合わせる前に偏光制御を行うようにしてもよい。そして、電子スピン検出部7は、その時の試料9の光学特性変化または電気特性変化を検出することで、電子スピン共鳴を測定する。
ここで、円偏光成分を持たせたビートを有するレーザ光を試料9に照射すると、スピン依存ACシュタルク効果を応用することにより、ビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させることができる。そして、実効的な振動磁場の方向と交差する方向に磁場を試料9に印加し、レーザ光のビート周波数または試料9に印加される磁場の強度を掃引することで、電子スピン共鳴スペクトルを得ることができる。
なお、実効振動磁場発生光源部6には、少なくとも2つの周波数成分を有する光または強度変調された光を試料9に照射する光照射手段を設けることができる。
また、電子スピン検出部7には、試料9から放射される光もしくは試料9を透過または反射する光を検出する光検出手段を設けるようにしてもよいし、試料9における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測する電気特性計測手段を設けるようにしてもよい。また、電子スピン検出部7には、試料9における電子スピンの偏極度を計測するための光または熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための光を照射する光照射手段を設けるようにしてもよい。
この方法では、電子スピン共鳴を起こさせるために、マイクロ波帯の電磁波を用いる必要がなくなることから、空洞共振器やマイクロ波回路が不要となり、光の照射領域に限定して実効的な振動磁場を試料9中に発生させることができる。このため、空間分解能を上げつつ、電子スピン共鳴を高感度で測定することが可能となり、カーボンナノチューブや量子ドットなどの微細な構造に特有の物性を精度よく分析することができる。特に、電子スピン検出部7として高感度光検出器を用いることにより、単一スピンの電子スピン共鳴も検出することができ、様々の物質やナノ構造の分析に適用することができる。
また、実効的な振動磁場を発生させるために光を用いることにより、マイクロ波帯の電磁波や空洞共振器を用いる必要がなくなることから、周波数マッチング特性や試料9の表面の電極金属による表皮効果の影響を排除することができ、半導体素子のように表面に電極が形成されている場合においても、そのままの形態で電子スピン共鳴を検出することができる。
さらに、実効的な振動磁場を発生させる光の周波数を掃引することにより、実効的な振動磁場の周波数を制御することができ、磁場の強度の掃引する必要がなくなることから、装置構成を簡略化することが可能となるとともに、光の周波数差を掃引することにより、テラヘルツ領域にまで共鳴周波数を高めることができ、g因子が微妙に異なる複雑な物質系の同定も精密に行うことができる。
図3は、図2の電子スピン共鳴測定装置に用いられる実効振動磁場発生光源部の構成例を示す図である。
図3(a)において、実効振動磁場発生光源部6には、周波数f1、f2のレーザ光をそれぞれ発生する単一周波数光源10、11およびレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12aを設けることができる。
そして、単一周波数光源10、11からそれぞれ出射された周波数f1、f2のレーザ光は重ね合わされた後、偏光制御素子12aに入射し、偏光制御素子12aにて円偏光成分を付与されてから、図2の試料9に入射することで、周波数f1、f2の差分に対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。
あるいは、図3(b)において、実効振動磁場発生光源部6には、周波数fのレーザ光を発生する単一周波数光源13、レーザ光の周波数fをΔfだけシフトさせる光周波数シフタ14およびレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12aを設けることができる。
そして、単一周波数光源13から出射された周波数fのレーザ光は、光周波数シフタ14に入射し、光周波数シフタ14にて周波数Δfだけシフトされてから、偏光制御素子12aに入射する。そして、周波数fのレーザ光と、偏光制御素子12aにて周波数Δfだけシフトされた周波数f−Δfのレーザ光が重ね合わされた後、偏光制御素子12aに入射し、偏光制御素子12aにて円偏光成分を付与されてから、図2の試料9に入射することで、周波数Δfに対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。
あるいは、図3(c)において、実効振動磁場発生光源部6には、周波数fのレーザ光を発生する単一周波数光源13、レーザ光を変調する光変調素子15およびレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12aを設けることができる。
そして、単一周波数光源13から出射された周波数fのレーザ光は、光変調素子15に入射し、光変調素子15にて変調されてから、偏光制御素子12aに入射する。そして、光変調素子15にて変調された周波数fのレーザ光は、偏光制御素子12aに入射し、偏光制御素子12aにて円偏光成分を付与されてから、図2の試料9に入射することで、変調周波数に対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。
あるいは、図3(d)において、実効振動磁場発生光源部6には、2つの周波数のレーザ光を発生する二周波数モード光源16およびレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12aを設けることができる。
そして、二周波数モード光源16から出射された2つの周波数のレーザ光は、偏光制御素子12aに入射し、偏光制御素子12aにて円偏光成分を付与されてから、図2の試料9に入射することで、レーザ光の周波数差に対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。
図4は、図2の電子スピン共鳴測定装置に用いられる電子スピン検出部の構成例を示す図である。
図4(a)において、電子スピン検出部7には、電子スピン共鳴に伴って試料9から発生した発光17を検出する光検出器18を設けることができる。そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、試料9から発生した発光17を光検出器18にて検出することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(a)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
あるいは、図4(b)において、電子スピン検出部7には、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を試料9に形成するための励起光源19および電子スピン共鳴に伴って試料9から発生した発光17を検出する光検出器18を設けることができる。
そして、励起光源19から出射された励起光を試料9に照射することにより、発光17に寄与する電子・正孔対を試料9中に生成させ、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を試料9に形成する。そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、試料9から発生した発光17を光検出器18にて検出することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(b)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
あるいは、図4(c)において、電子スピン検出部7には、電子スピンの偏極度を計測するためのプローブ光を発生させるプローブ光源20、レーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12bおよび試料9を透過したプローブ光のファラデー回転角を測定する偏光測定器21を設けることができる。
そして、プローブ光源20から出射されたプローブ光を偏光制御素子12bに入射させ、偏光制御素子12bにて偏光制御させてから、試料9に照射する。そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、試料9を透過したプローブ光のファラデー回転角を測定器21にて測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(c)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
あるいは、図4(d)において、電子スピン検出部7には、電子スピンの偏極度を計測するためのプローブ光を発生させるプローブ光源20、レーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子12bおよび試料9で反射したプローブ光のカー回転角を測定する偏光測定器21を設けることができる。
そして、プローブ光源20から出射されたプローブ光を偏光制御素子12bに入射させ、偏光制御素子12bにて偏光制御させてから、試料9に照射する。そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、試料9で反射したプローブ光のファラデー回転角を測定器21にて測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(d)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
あるいは、図4(e)において、電子スピン検出部7には、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を試料9に形成するための励起光源19、試料9の電気特性を測定する電気特性測定器22および試料9と電気特性測定器22とを接続する電気信号線路23を設けることができる。
そして、励起光源19から出射された励起光を試料9に照射することにより、電子・正孔対を試料9中に生成させ、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を試料9に形成する。そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、その時の試料9の電気特性を電気特性測定器22にて測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(e)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
あるいは、図4(f)において、電子スピン検出部7には、試料9の電気特性を測定する電気特性測定器22および試料9と電気特性測定器22とを接続する電気信号線路23を設けることができる。
そして、図2の実効振動磁場発生光源部6にて発生された光を試料9に照射することで、その光のビート周波数に対応した実効的な振動磁場を試料9中に発生させ、その時の試料9の電気特性を電気特性測定器22にて測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
なお、図4(f)の電子スピン検出部7に組み合わされる実効振動磁場発生光源部6としては、図3(a)から図3(d)のいずれの構成を用いるようにしてもよい。
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。
なお、この図5の実施形態では、図2の実効振動磁場発生光源部6として、図3(b)の単一周波数光源13、周波数シフタ14および偏光制御素子12aを設けた構成、図2の電子スピン検出部7として、図4(c)のプローブ光源20および偏光測定器21を設けた構成を示す。また、図2の試料9として、GaAs/AlGaAs多重量子井戸構造34、図2の磁場発生部8として、常伝導マグネット32を用いた。
すなわち、図5において、図3(b)の単一周波数光源13としてチタンサファイアリングレーザ24、周波数シフタ14として音響変調素子25、偏光制御素子12aとして1/4波長板28が設けられている。なお、単一周波数光源13として用いるチタンサファイアリングレーザ24の周波数線幅は、100kHz以下とすることができる。また、その光子エネルギーは、励起子の吸収端付近よりも低い1.651eVとすることができる。
また、図4(c)のプローブ光源20としてチタンサファイアレーザ29、偏光測定器21として、偏光ビームスピリッタ30および光バランス検出器31が設けられている。なお、チタンサファイアレーザ29から出射されるプローブ光は、キャリアを生成させるのが目的ではなく、電子スピン偏極によりもたらされる磁気光学効果を観測するのが目的である。また、プローブ光の光子エネルギーは量子井戸の励起子の吸収端付近の1.680eVに合わせ、偏光は直線偏光とすることができる。
また、試料9は、分子線エピタキシ法にて成長させ、3nmの膜厚のGaAs量子井戸層と15nmの膜厚のAlGaAs障壁層とを100周期分だけGaAs基板上に積層させることができる。そして、成長後には、チタンサファイアレーザ29から出射されたプローブ光が試料9に吸収されるのを防止するため、選択エッチング法にてGaAs基板を除去することができる。
そして、光学窓付きのクライオスタット33内で4.2Kまで試料9を冷却し、常伝導マグネット32にて発生される磁場の方向に対して試料面が傾くように配置する。ここで、常伝導マグネット32にて発生される磁場の方向に対して試料面を傾けることで、磁場によるスピンの量子化軸と円偏光で励起可能なスピンの軸とを異ならせることができ、電子スピンの偏極状態を磁気光学効果により観測することができる。
そして、常伝導マグネット32にて発生された磁場を試料9に印加することで、試料9の電子スピン系のエネルギー準位を分裂させる。そして、チタンサファイアレーザ29から出射されたプローブ光を試料9に照射しながら、チタンサファイアリングレーザ24から周波数fのレーザ光を出射させる。そして、チタンサファイアリングレーザ24から出射された周波数fのレーザ光は、音響変調素子25に入射し、音響変調素子25にて回折される一次回折光は周波数Δfが1.7GHzだけシフトされてから、ミラー26にて反射され、ビームスピリッタ27に入射する。そして、音響変調素子25を通過した周波数fのレーザ光と、音響変調素子25にて回折された周波数f−Δfのレーザ光とがビームスピリッタ27にて重ね合わされることにより、周波数Δf=1.7GHzに対応したビートを有する光が生成される。そして、周波数Δf=1.7GHzに対応したビートを有する光は1/4波長板28に入射し、1/4波長板28にて円偏光に変換されてから、プローブ光の照射領域と重なるように試料9に入射する。
そして、周波数Δf=1.7GHzに対応したビートを有する光が試料9に入射することで、周波数Δf=1.7GHzに対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。そして、周波数Δf=1.7GHzに対応した実効的な振動磁場が試料9に発生すると、電子スピンの偏極率が変化し、試料9を透過したプローブ光のファラデー回転角が変化する。そして、試料9を透過したプローブ光は偏光ビームスピリッタ30にて分波され、光バランス検出器31にてファラデー回転角を測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
ここで、ファラデー回転角は、試料9を透過する前の直線偏光軸に対する試料9を透過した後の直線偏光軸の相対角度を示し、その大きさは、熱平衡状態での電子スピンの偏極率に比例する。
なお、図5の実施形態では、図2の電子スピン検出部7に図4(c)の構成を適用し、プローブ光の透過光を用いたファラデー効果を利用することにより、電子スピン共鳴を測定する方法について説明したが、図2の電子スピン検出部7に図4(d)の構成を適用し、プローブ光の反射光を用いたカー効果を利用することにより、電子スピン共鳴を測定するようにしてもよい。
また、測定データのS/N比を向上させるために、実効的な振動磁場を発生させる光とプローブ光とについて、それぞれ周波数の異なる光強度変調を行い、ヘテロダイン検波にてファラデー回転角を測定するようにしてもよい。
図6は、図5の電子スピン共鳴測定装置による電子スピン共鳴スペクトルの観測結果の一例を示す図である。
図6において、常伝導マグネット32にて発生される磁場を掃引しながら、プローブ光のファラデー回転角を測定すると、磁場の強度が0.27Tの時に、電子スピンの偏極率の減少に伴ってファラデー回転角が変化する様子が観測された。このファラデー回転角の変化量ΔθFのピークは、試料9の電子のg因子の値=0.45から計算されるESRの共鳴条件に一致した。
図7は、本発明の第3実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。
なお、この図7の実施形態では、図2の実効振動磁場発生光源部6として、図3(a)の単一周波数光源10、11および偏光制御素子12aを設けた構成、図2の電子スピン検出部7として、図4(b)の励起光源19および光検出器18を設けた構成を示す。また、図2の試料9として、InAs量子ドット構造42、図2の磁場発生部8として、超伝導マグネット43を用いた。
すなわち、図7において、図3(a)の単一周波数光源10、11としてそれぞれ外部共振器付き波長可変半導体レーザ35、36、偏光制御素子12aとして1/4波長板28が設けられている。なお、単一周波数光源10、11としてそれぞれ用いる外部共振器付き波長可変半導体レーザ35、36の周波数線幅は、300kHz以下とすることができる。また、外部共振器付き波長可変半導体レーザ35の光子エネルギーは、負の荷電励起子の吸収エネルギーよりも低い1.319eV(波長940nm)とすることができる。また、外部共振器付き波長可変半導体レーザ36の光子エネルギーは、外部共振器付き波長可変半導体レーザ35の光子エネルギーから周波数にして200GHzの範囲で可変させることができる。
また、図4(b)の励起光源19としてアルゴンイオンレーザ37、光検出器18として分光器40およびCCD検出器41が設けられている。なお、アルゴンイオンレーザ37から出射される励起光は、試料9からの発光に寄与する電子・正孔対を生成させることが目的であり、その光子エネルギーは、量子ドットの吸収端エネルギーよりも大きい2.54eVとすることができる。
また、試料9は、有機金属気相成長法にて作製し、5nmの膜厚のInGaAs/GaAsからなる量子井戸内にInAsからなる量子ドットを埋め込むことができる。そして、量子ドットの形成後には、電子ビームリソグラフィとドライエッチングにて200nm角のメサ構造を形成することができる。ここで、メサ構造を形成することで、メサ内に存在する量子ドットの個数を数個に制限することができ、試料9に光を照射した時に放射される発光を分光することで、メサ内の1個の量子ドットから発生する発光のみを識別することができる。
そして、光学窓付きのクライオスタット33内で4.2Kまで試料9を冷却し、超伝導マグネット43にて発生された10Tの磁場を試料9に印加することで、試料9の電子スピン系のエネルギー準位を分裂させる。そして、アルゴンイオンレーザ37から出射された励起光を対物レンズ38にて集光させ、その励起光を試料9の1つのメサ構造に照射する。そして、アルゴンイオンレーザ37から出射された励起光が試料9の1つのメサ構造に照射されると、単一の量子ドットからのフォトルミネッセンス39が発生し、そのフォトルミネッセンス39が分光器40を介してCCD検出器41に入射することで、フォトルミネッセンス39のスペクトルが計測される。
ここで、アルゴンイオンレーザ37から出射された励起光を試料9に照射しながら、外部共振器付き波長可変半導体レーザ35、36から周波数f1、f2のレーザ光をそれぞれ出射させる。そして、外部共振器付き波長可変半導体レーザ35から出射された周波数f1のレーザ光は、ミラー26にて反射され、ビームスピリッタ27に入射する。そして、外部共振器付き波長可変半導体レーザ35から出射された周波数f1のレーザ光と、外部共振器付き波長可変半導体レーザ36から出射された周波数f2のレーザ光とがビームスピリッタ27にて重ね合わされることにより、周波数f1、f2の差分に対応したビートを有する光が生成される。そして、周波数f1、f2の差分に対応したビートを有する光は1/4波長板28に入射し、1/4波長板28にて円偏光に変換されてから、対物レンズ38に入射し、対物レンズ38にて集光されることで、励起光の照射領域と重なるように試料9に入射する。
そして、周波数f1、f2の差分に対応したビートを有する光が試料9に入射することで、周波数f1、f2の差分に対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。そして、周波数f1、f2の差分に対応した実効的な振動磁場が試料9に発生すると、フォトルミネッセンス39のスペクトルが変化する。そして、このフォトルミネッセンス39のスペクトルの変化をCCD検出器41にて検出することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
ここで、電子スピンのゼーマン分裂は、負の荷電励起子からのピーク分裂から読み取ることができる。負の荷電励起子は2個の電子と1個の正孔から構成され、ゼーマン分裂がほぼゼロであることが知られている。この負の荷電励起子が光子を1個だけ吐き出した状態がゼーマン分裂した電子1個の状態となり、その時の発光に電子スピンの情報が反映される。本試料9における量子ドット内の電子のg因子の値=1.1から計算される10Tでのゼーマン分裂の大きさは0.637meVである。熱平衡状態でスピンが偏極した様子は、分裂した荷電励起子のピークのうち、高エネルギー側のピークが強く現れる形で観測することができる。
なお、図7の実施形態では、図2の電子スピン検出部7に図4(b)の構成を適用し、励起光源19から出射された励起光を試料9に照射することにより、試料9からの発光に寄与する電子・正孔対を生成させる方法について説明したが、二光子吸収などで十分な電子・正孔対が生成される場合には、図2の電子スピン検出部7に図4(a)の構成を適用し、励起光を試料9に照射することなく、電子スピン共鳴を測定するようにしてもよい。
図8は、図7の電子スピン共鳴測定装置によるフォトルミネッセンススペクトルの観測結果の一例を示す図である。
図8において、非共鳴状態(ビート周波数Δf=153.90GHz)と、共鳴状態(ビート周波数Δf=153.96GHz)とでは、フォトルミネッセンス39のスペクトルが異なることが判る。すなわち、ESRの共鳴条件が満たされると、ゼーマン分裂した2つのピーク強度が等しい値に近づく方向に変化する様子が観測された。
図9は、本発明の第4実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。
なお、この図9の実施形態では、図2の実効振動磁場発生光源部6として、図3(c)の単一周波数光源13、光変調素子15および偏光制御素子12aを設けた構成、図2の電子スピン検出部7として、図4(e)の励起光源19、電気特性測定器22および電気信号線路23を設けた構成を示す。また、図2の試料9として、GaAs/AlGaAs量子ドットが埋め込まれたn−iショットキーダイオード構造48、図2の磁場発生部8として、超伝導マグネット43を用いた。
すなわち、図9において、図3(c)の単一周波数光源13としてチタンサファイアリングレーザ24、光変調素子15としてEO変調器44、偏光制御素子12aとして液晶リターダ45が設けられている。なお、単一周波数光源13として用いるチタンサファイアリングレーザ24の周波数線幅は、100kHz以下とすることができる。また、その光子エネルギーは、負の荷電励起子の吸収エネルギーよりも低い1.648eV(波長752.4nm)とすることができる。
また、図4(e)の励起光源19としてチタンサファイアレーザ29、電気特性測定器22として直流電圧源46および微小電流測定器47が設けられている。
なお、チタンサファイアレーザ29から出射される励起光は、試料9の光吸収およびそれに伴う光電流に寄与する電子・正孔対を生成させることが目的である。
また、試料9は、分子線エピタキシ法にて成長させ、量子幅が3nmのGaAs/AlGaAsからなる量子井戸の界面に単原子層ゆらぎを導入することで量子ドットが形成されている。そして、この量子ドットが、n型GaAs基板上に作製されたAlGaAsベースのn−iショットキーダイオードの内部に配置されている。また、試料9の表面には、直径250nmのピンホールを有する厚さ100nmのTi/Auのショットキー電極が形成されている。ここで、ピンホールを形成することで、試料9に光を入射させた時にピンホール下にある単一の量子ドットにのみ光を照射することができ、その単一の量子ドットの光吸収のみをフォトカレントとして測定することができる。
そして、光学窓付きのクライオスタット33内で4.2Kまで試料9を冷却し、超伝導マグネット43にて発生された磁場を試料9に印加することで、試料9の電子スピン系のエネルギー準位を分裂させる。また、試料9での負の荷電励起子の生成に伴ってフォトカレントが流れるように直流電圧源46にて素子のバイアスを調整する。
そして、チタンサファイアレーザ29から出射された励起光を対物レンズ38にて集光させ、その励起光を試料9のピンホール下の量子ドットに照射する。そして、チタンサファイアレーザ29から出射された励起光が試料9のピンホール下の量子ドットに照射されると、試料9での負の荷電励起子の生成に伴ってフォトカレントが流れ、そのフォトカレントが微小電流測定器47にて計測されることで、励起スペクトルが計測される。
ここで、チタンサファイアレーザ29から出射された励起光を試料9に照射しながら、チタンサファイアリングレーザ24からレーザ光を出射させる。そして、チタンサファイアリングレーザ24から出射されたレーザ光は、EO変調器44に入射し、EO変調器44にて20GHzで強度変調される。
そして、20GHzで強度変調されたレーザ光は液晶リターダ45に入射し、液晶リターダ45にて円偏光に変換されてから、対物レンズ38に入射し、対物レンズ38にて集光されることで、励起光の照射領域と重なるように試料9に入射する。
そして、20GHzで強度変調されたレーザ光が試料9に入射することで、変調周波数に対応した実効的な振動磁場を発生させることができる。そして、変調周波数に対応した実効的な振動磁場が試料9に発生すると、試料9に流れるフォトカレントが変化する。そして、このフォトカレントの変化に伴う励起スペクトルの変化を微小電流測定器47にて測定することで、電子スピン共鳴を測定することができる。
ここで、負の荷電励起子の基底状態の共鳴励起付近のエネルギー領域でフォトカレント計測による励起スペクトルを取得することにより、単一の電子スピンが磁場中でゼーマン分裂した様子を観測することができる。熱平衡状態でスピンが偏極した様子は、分裂した荷電励起子のピークのうち、高エネルギー側のピークが強く現れる形で観測することができる。
なお、図9の実施形態では、図2の電子スピン検出部7に図4(e)の構成を適用し、励起光源19から出射された励起光を試料9に照射することにより、試料9に電子・正孔対を生成させる方法について説明したが、図2の電子スピン検出部7に図4(f)の構成を適用し、量子ホール系における電気的スピン検出法などを取り入れ、励起光を試料9に照射することなく、電子スピン共鳴を測定するようにしてもよい。
図10は、図9の電子スピン共鳴測定装置による電子スピン共鳴スペクトルの観測結果の一例を示す図である。
図10において、ゼーマン分裂した2つのフォトカレントピークを検出し、試料9に印加される磁場を掃引しながらプロットすると、6.804TになったところでESRの共鳴条件が満たされ、ゼーマン分裂した2つのピーク強度が等しい値に近づく方向に変化する様子が観測された。
なお、上述した実施形態では、光源から試料までの光の経路がフリースペースである例を示したが、光源から試料までの光の経路に光ファイバーを用いるようにしてもよい。また、光の波長以下の高い空間分解能を得るために、走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)の技術を取り入れるようにしてもよい。
本発明の電子スピン共鳴測定装置は、材料などの物質の分析装置の一つとして、化学や生物学などの分野に広く利用することができ、特に、高周波化によって、従来の電子スピン共鳴測定装置よりも物質の同定能力を高くすることができ、高感度化および高空間分解能化によって、微小領域での単一スピンを検出することが可能となることから、生体やナノバイオ技術への利用を図ることができる。
本発明の光励起電子スピン共鳴における実効振動磁場の発生方法を概念的に示す図である。 本発明の第1実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示すブロック図である。 図2の電子スピン共鳴測定装置に用いられる実効振動磁場発生光源部の構成例を示す図である。 図2の電子スピン共鳴測定装置に用いられる電子スピン検出部の構成例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。 図5の電子スピン共鳴測定装置による電子スピン共鳴スペクトルの観測結果の一例を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。 図7の電子スピン共鳴測定装置によるフォトルミネッセンススペクトルの観測結果の一例を示す図である。 本発明の第4実施形態に係る電子スピン共鳴測定装置の概略構成を示す図である。 図9の電子スピン共鳴測定装置による電子スピン共鳴スペクトルの観測結果の一例を示す図である。
符号の説明
1、2、3 エネルギー準位
4 ビートを有するレーザ光
5 実効的な振動磁場
6 実効振動磁場発生光源部
7 電子スピン検出部
8 磁場発生部
9 試料
10、11、13 単一周波数光源
12a、12b 偏光制御素子
14 光周波数シフタ
15 光変調素子
16 二周波数モード光源
17 発光
18 光検出器
19 励起光源
20 プローブ光源
21 偏光測定器
22 電気特性測定器
23 電気信号線路
24 チタンサファイアリングレーザ
25 音響変調素子
26 ミラー
27 ビームスピリッタ
28 1/4波長板
29 チタンサファイアレーザ
30 偏光ビームスピリッタ
31 光バランス検出器
32 常伝導マグネット
33 クライオスタット
34 GaAs/AlGaAs多重量子井戸構造
35、36 波長可変半導体レーザ
37 アルゴンイオンレーザ
38 対物レンズ
39 フォトルミネッセンス
40 分光器
41 CCD検出器
42 InAs量子ドット構造
43 超伝導マグネット
44 EO変調器
45 液晶リターダ
46 直流電圧源
47 微小電流測定器
48 n−iショットキーダイオード構造

Claims (9)

  1. 電子スピン系に磁場を印加することで電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるエネルギー準位分裂手段と、
    レーザ光を発生する光源とレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子とを有する実効振動磁場発生用光源からなり、前記電子スピン系に少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を照射する第1の光照射手段により、前記分裂幅または前記分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させる実効振動磁場発生手段と、
    前記共鳴に伴う物理現象の変化を検出する電子スピン検出手段と
    を備えることを特徴とする電子スピン共鳴測定装置。
  2. 前記電子スピン検出手段は、電子スピンの偏極度を計測するための光または熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を照射する第2の光照射手段を備えることを特徴とする請求項記載の電子スピン共鳴測定装置。
  3. 前記電子スピン検出手段は、前記電子スピン系を持つ試料から放射される光もしくは前記試料を透過または反射する光を検出する光検出手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の電子スピン共鳴測定装置。
  4. 前記電子スピン検出手段は、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測する電気特性計測手段を備えることを特徴とする請求項記載の電子スピン共鳴測定装置。
  5. 前記電子スピン検出手段は、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を照射する励起光源を有するとともに、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測する電気特性計測手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電子スピン共鳴測定装置。
  6. 電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、
    レーザ光を発生する光源とレーザ光の円偏光成分を制御する偏光制御素子とを有する実効振動磁場発生用光源からなり、前記電子スピン系に少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を照射する第1の光照射手段により、前記分裂幅または前記分裂幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、
    前記共鳴に伴う物理現象の変化を検出するステップと
    を備えることを特徴とする電子スピン共鳴測定方法。
  7. 電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、
    少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射することで、前記分列幅または前記分列幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、
    前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射しながら、前記電子スピン系を持つ試料から放射される光もしくは前記試料を透過または反射する光を検出するステップと
    を備えることを特徴とする電子スピン共鳴測定方法。
  8. 電子スピン系に磁場を印加することで、前記電子スピン系のエネルギー準位を分裂させるステップと、
    少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射することで、前記分列幅または前記分列幅の近傍のエネルギーに共鳴する実効的な振動磁場を発生させるステップと、
    前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射しながら、前記電子スピン系における電子スピンの偏極度が反映された電気特性を計測するステップと
    を備えることを特徴とする電子スピン共鳴測定方法。
  9. 前記少なくとも2つの周波数成分を有する円偏光成分を有する光または強度変調された円偏光成分を有する光を前記電子スピン系に照射する場合、熱平衡状態よりも高い偏極度を持つ電子スピン系を形成するための円偏光成分を有する光を同時に照射することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載の電子スピン共鳴測定方法。
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