JP4907753B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遅い応答速度を補償する方法にかかり、特に液晶表示装置における応答速度の遅さに起因するフリッカを抑止する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ(PC)やテレビ等の画像表示用及び各種モニター用のディスプレイデバイスとして、近年、CRTの他、液晶表示装置(LCD)が広く採用されるに至っている。このLCDは、CRTに比べて大幅に小型、軽量化を図ることが可能である。また、表示性能の点でも幾何学的歪みが少ないなどの他、著しく高画質化が進んでおり、今後の映像機器における表示装置の本命として大きく注目されている。
【0003】
しかしながら、液晶自体の応答特性の悪さから、LCDには応答速度が遅いといった潜在的問題が存在している。即ち、業界で標準的に使用されているディスプレイでは、画面が1秒間当たり60フレームの割合、即ち、(1÷60=)16.7ms毎に書き換わる。一方で、現在のLCDに利用されている液晶の反応の速さ(応答速度)は、10〜50msを用いて黒から白になるものが多く、平均的なもので20ms〜30msである。即ち、ディスプレイでの1フレームの時間は、たいていの液晶の応答時間よりも短く、結果として、LCDの応答速度の遅れを起因として、動画表示の際の残像や、速く動く画像に対応することができない等、の問題が顕在化されていた。
尚、業界で「応答速度」といった場合には、▲1▼液晶セルに電圧を印加して色を反転させるのに要する時間、▲2▼印加した電圧を除去して元の色に戻るのに要する時間、の合計を指すことが多い。また、業界で「フレーム」と言った場合には、1画面を構成するべき画像(絵素)の全てがディスプレイ上に走査されることを示している。
【0004】
このようなLCDにおける応答速度の遅さを解決するものとして、例えば、特開平2−153687号公報や、特開平4−365094号公報、特開平6−62355号公報、特開平7−56532号公報等がある。
この特開平2−153687号公報では、動きの少ない静止画領域と動きの多い動画領域とを判別し、動画領域にのみ、時間方向の画像変化を強調する信号処理を施すように構成し、必要な画像領域にのみ応答速度を向上させて、残像及びノイズの発生が少ないLCDを提供している。
また、特開平4−365094号公報では、画像データが変化した場合に、その変化の方向と度合いに応じて、予め格納してある最適な画像データが読み出されてLCDが駆動されるように構成し、急激に変化する画像に対しても迅速に追従できるようにLCDを提供している。
更に、特開平6−62355号公報には、フィールドまたはフレーム間で映像信号が変化した場合に、フィールドまたはフレーム間の差成分を映像信号に重畳したパルスステップ駆動を行うことで、LCDにおける表示素子の応答性を改善する技術が開示されている。
また更に、特開平7−56532号公報では、液晶パネルの階調変化による応答変化を向上させるために、画像増減値データのテーブルを記憶したテーブルメモリを備え、加減算して液晶パネル(液晶セル)を駆動する技術について開示されている。但し、加減算する量については「最適な」の文言に留まり、その具体的な内容までは全く開示されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、LCDにおける、CRTディスプレイでは起きないような画面品質上の問題として、LCD上に発生するフリッカの問題がある。これは、例えば、CADにおいてワイヤーフレームモデルをLCD上に表示させ、オペレータ(ユーザ)が概ね1秒間に数十ピクセル程度といった、比較的低速に連続移動させたとき、ワイヤーフレームモデル全体が数Hzから十数Hz程度の周期で明滅して見える現象である。この現象は、CRTディスプレイでは発生しないが、その一方で、現存するLCDの殆どの機種にて発生しており、実際のお客様からも早期改善を求める声が多数、寄せられている問題である。尚、ここでのフリッカの問題は、CRTディスプレイでの画面リフレッシュによるフリッカとは症状も原因も異なるものである。
【0006】
このCADにおけるワイヤーフレームモデルの画面では、通常、黒のバックに白やその他の色の多数からなる細線でモデルが表示されている。例として白色(R(レッド)/G(グリーン)/B(ブルー)ともにON)を仮定すると、ワイヤーフレームモデルが画面上で静止していれば、数フレームで正しい輝度に到達することから問題は生じない。しかしながら、オペレータがモデルを画面上で移動させる操作を行った場合、輝度が完全に出なくなってしまう。即ち、前述のように、LCD自体の応答時間が遅いことから、ある画素が1フレームだけ点灯したとしても、その画素は規定の輝度に達しない場合がある。この状態を、以下に図面を用いて説明する。
【0007】
図9は、このワイヤーフレームモデルを画面上で動かした場合におけるスクリーン上での線の動きを示す図である。また、図10は、このときのライン(i)上におけるフレーム毎の画素のON/OFFを示す図である。更に、図11は、ピクセル(j)における輝度の変化を示す図である。
ここで、図9に示すように、ある画素に着目した場合、フレーム(n−1)201、フレーム(n)202、フレーム(n+1)203の画素の上をワイヤーフレーム200の線が順に動き、通過するものとする。即ち、画素上を線が通過した1フレーム分の時間だけ点灯し、直ぐに消灯する。このとき、破線で示すライン(i)205に着目し、微視的に特定の画素であるピクセルに着目して見ると、図10に示すように、各フレームは、ピクセル(j)206の動きによってオフ(Off)からオン(On)へ駆動され、1フレーム後にまたオフ(Off)に戻る。ところが、前述のように、通常の液晶の応答速度が16.7msよりも長いことから、ピクセル(j)206は、黒から完全に白に戻る前に元の黒に戻ってしまう。即ち、図11に示すように、フレーム(n−1)201ではオフであったピクセル(j)206は、フレーム(n)202でオンになった後にフレーム(n+1)203でオフになるが、フレーム(n)202だけ100%の輝度となるように点灯したとしても、そのピクセル(j)206は目標とする輝度に到達していない。その結果、移動中の線画の輝度は低い状態となる。CADでワイヤーフレームモデルを画面上で連続移動させるといっても、実際には数フレーム毎に移動と静止を繰り返しており、この移動中と静止時とによる表示輝度の差によりワイヤーフレームモデルが明滅し、この差が所謂フリッカの原因となることを発明者らは発見するに至った。
【0008】
尚、現在、LCDのフリッカ対策として、液晶そのものの素材を改良したり、ガラス間のギャップを狭くすることで、液晶パネルの応答速度を改善する方法に各社が積極的に取り組んできている。また、現在の製品レベルとして、立ち上がり+立ち下がりで25ms程度まで速くなったものが市場に出てきている。また、学会などでは、数msの応答速度のものも発表されている。しかしながら、これらの液晶そのものへの対策では、信頼性などの面で量産品として対応することが難しく、実用レベルとしては未だ多くの課題が残されている。
【0009】
本発明は、このような技術的課題に基づいて、LCDを駆動するパネル駆動回路側で、見た目上においてこのフリッカ現象を抑止することを主たる目的とする。
また、他の目的は、モデルが移動しているのか静止しているのかを大局的に判断することなく、移動中のモデルに対してオフセットを施して駆動することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の液晶表示装置は、ホスト側からビデオ信号を入力する入力手段と、この入力手段により入力されたビデオ信号における直前の輝度レベルを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された直前の輝度レベルと入力手段に入力される次のビデオ信号における次の輝度レベルとに基づき、この次の輝度レベルに対して、輝度変化の時間積分量を静止時である理想的な光量とほぼ同程度にするための出力輝度レベルを決定する決定手段と、この決定手段により決定された出力輝度レベルに基づいて、画像を表示する液晶セルを駆動する駆動手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
ここで、理想的な光量とは、各画素がフレーム毎に駆動される表示素子においては、フレームがオンされた時点で目的とする輝度レベルに達し、フレームがオフされた時点で輝度レベルがゼロとなるような応答特性に基づく光量が、その一例に該当する。また、輝度レベルは、目的とする輝度の値として、階調として表現することも可能であり、人間の明るさに対する視覚の特性を表現できるものとして把握することができる。更に、輝度変化は、液晶セル(液晶パネル)の種類によって異なる応答特性と考えることができる。尚、光量は、輝度変化の時間積分量として把握でき、輝度が一定であれば輝度×時間として把えることができる。また更に、ほぼ同程度とは、完全に一致していないがほぼ同等と認められるレベルであり、対策を施さないものに比べて理想的な光量に近似するレベルを含むものである。
【0012】
また、この決定手段は、直前の輝度レベルと次の輝度レベルとの対応にて液晶セルの特性により求められる輝度レベルを記憶するテーブルを備えると共に、このテーブルから読み出した輝度レベルに基づいて次の輝度レベルを修正して出力輝度レベルを決定することを特徴とすることができる。このように構成すれば、モデルが移動しているか静止しているかを大局的に判断する必要がなく、移動中における光量の変化によるフリッカを抑制することが可能となる。また、いわゆる中間階調における補正を簡単に行うことができ、特に中間階調で顕著である輝度レベルの低下に対して適切に対応することが可能となる。
【0013】
更に、この入力手段により入力されるビデオ信号は、複数の色信号で構成され、この決定手段におけるテーブルは、色信号毎に設けられていることを特徴とすれば、人間の視覚におけるフリッカ感度に対して各色の輝度レベルの補正を加えることが可能となり、輝度差を小さくしてユーザに対して見易い液晶表示装置を提供することができる点で好ましい。この色信号としては、例えば、ディスプレイ表示に用いられるR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の色信号が挙げられるが、他の表示系を採用することも可能である。
【0014】
また、本発明の液晶表示装置を他の観点から把握すると、画像を表示する液晶セルに対してこの画像を構成する各画素をフレームごとに駆動する駆動手段と、このフレームの中の特定フレームに書き換わる際にオフからオンへ変化し、この特定フレームが書き換わった後にオフに戻る移動時ビデオ信号を入力する入力手段と、この移動時ビデオ信号をこの特定フレームに対して連続してオンした場合である静止時の光量に近似させるためのオフセット量を設定する設定手段と、入力手段により入力された移動時ビデオ信号に対して、この設定手段により設定されるオフセット量を施し、出力ビデオ信号を生成する生成手段と、この生成手段により生成された出力ビデオ信号を駆動手段に対して出力する出力手段とを備えたことを特徴とすることができる。このように構成すれば、フリッカの原因として最も大きいと判断できる静止時と移動時の輝度差を小さくすることが可能となり、視認されるフリッカを抑止することが可能となる。
【0015】
この設定手段により設定されるオフセット量は、移動時ビデオ信号における輝度変化を時間で積分した時間積分量と、静止時の光量とに基づいて決定されることを特徴とすれば、人間の視覚の特性を考慮して、輝度差を減らすことが可能となり、フリッカの抑止を適切に図ることができる点で好ましい。
【0016】
また、この入力手段により入力される移動時ビデオ信号は、複数の色信号で構成され、この設定手段により設定されるオフセット量は各色信号ごとに決定され、更に、この生成手段は、各色信号ごとに決定されるこのオフセット量に基づいて、各色信号ごとに出力ビデオ信号を生成することを特徴とすれば、色信号毎に移動時と静止時との輝度差を補正することができ、カラー画像表示におけるフリッカを防止することが可能となる。
【0017】
更に、本発明は、入力されたワイヤーフレームモデルを液晶セルにて表示する際に、輝度差によって生じるフリッカを防止するための機能を含む液晶制御回路であって、所定の階調を有するワイヤーフレームモデルが特定画素に対して数フレームに亘って表示されることにより出力される静止時の輝度に対応して、この所定の階調を有するワイヤーフレームモデルがこの特定画素に対してフレーム毎に変化する移動時の輝度におけるオフセット量を記憶する記憶部と、この入力されたワイヤーフレームモデルが移動時にある場合には、この記憶部に記憶されたオフセット量をワイヤーフレームモデルが有する階調に対して施す修正部とを備えることを特徴とすることができる。
【0018】
また、入力されたこのワイヤーフレームモデルの輝度情報を直前輝度として記憶するフレームバッファを更に備え、記憶部は、このフレームバッファに記憶された直前輝度と次に入力されたワイヤーフレームモデルの有する輝度との対応関係に基づくテーブル情報としてオフセット量が記憶されることを特徴とすれば、移動時と静止時との別個な判断部を有することなく、移動時におけるフリッカを抑止することができる点で優れている。
【0019】
尚、この発明におけるワイヤーフレームモデルは、例えば、CAD等にて白あるいは他の色を用いた多数の細線の集まりからなるモデルが該当し、このワイヤーフレームモデルによるフリッカが特に問題となることから、かかるワイヤーフレームモデルにおける移動時の階調を補正することによるフリッカ抑止効果は大きい。
また、この液晶制御回路としては、例えば、インターフェイスボードとして液晶表示モニタに設けられる態様が考えられる。この液晶表示モニタとしては、いわゆるデスクトップ型のパソコンやCADに用いられるモニタの他、ノートブック型のようにホスト側と一体化されたものも考えられる。
【0020】
本発明をカテゴリを変えて把握すると、本発明は、入力されたワイヤーフレームモデルを液晶セルにて表示する際に、輝度差によって生じるフリッカを防止するためのフリッカ防止方法であって、所定の階調を有するワイヤーフレームモデルが特定画素に対して数フレームに亘って表示されることにより出力される静止時の輝度と、この所定の階調を有するワイヤーフレームモデルがこの特定画素に対してフレーム毎に変化する移動時の輝度との対応関係を記憶し、入力されたこのワイヤーフレームモデルが移動時にある場合には、記憶された対応関係に基づくオフセット量をワイヤーフレームモデルが有する階調に対して施し、このオフセット量が施された階調に基づいて液晶セルを駆動することによりワイヤーフレームモデルを表示することを特徴とすることができる。
【0021】
また、この対応関係が記憶される際に用いられる移動時の輝度は、特定画素の上をワイヤーフレームモデルが通過する際に、この特定画素がオフからオンへ駆動され1フレーム後にまたオフへ戻る際の輝度であることを特徴とすることができる。
また更に、対応関係が記憶される際に用いられる移動時の輝度は、輝度変化を時間で積分した光量であることを特徴とすることができる。
これらのように構成すれば、ワイヤーフレームモデルにおける移動時において、その静止時との輝度差を少なくすることが可能となり、そのままでは顕著に発生していたフリッカを抑制することができる点で好ましい。
【0022】
また、本発明を液晶駆動方法として把らえると、本発明の液晶駆動方法は、入力画素の第1輝度情報をフレームバッファに格納するステップと、次に入力される入力画素の第2輝度情報と、このフレームバッファに格納されている第1輝度情報とに基づいて、輝度変化の時間積分量を静止時である理想的な光量とほぼ同程度にするためのオフセット量を第2輝度情報に施すステップと、このオフセット量が施された第2輝度情報を液晶セルを駆動する駆動回路に出力するステップと、この入力画素の第2輝度情報をフレームバッファに格納するステップとを備えたことを特徴とすることができる。この液晶駆動方法によれば、モデルが移動しているか静止しているかを大局的に判断することなく、簡便な装置を用いてフリッカを抑制することが可能となる。
【0023】
また、この入力画素は複数の色信号からなり、このフレームバッファに格納するステップでは、色信号ごとに第1輝度情報を格納し、このオフセット量を施すステップでは、色信号ごとにオフセット量が施されることを特徴とすれば、複数の色信号からなるカラー画像に対して各色ごとに輝度を補正することが可能となり、より適切にフリッカを抑止することができる。
また、このオフセット量を施すステップは、予め記憶されているオフセット量を第1輝度情報と第2輝度情報との対応関係に基づいて読み出し、読み出したこのオフセット量を第2輝度情報に施すことを特徴とすることができる。
また、この対応関係に基づいて記憶される際に用いられる移動時の輝度情報は、各色信号ごとに輝度変化を時間で積分した光量であることを特徴とすれば、人間の視覚特性に沿った補正をすることが可能となり、人間がフリッカの発生を視認することによる問題点に対し、より適切に対処することができる点で好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における液晶表示装置の全体構成を説明するための説明図である。符号10は液晶表示パネルとしての液晶表示モニタ(LCDモニタ)であり、例えば薄膜トランジスタ(TFT)構造を有する液晶モジュール30と、PCまたはWSシステムからのデジタルインターフェイスまたはアナログインターフェイスと接続され、液晶モジュール30にビデオ信号を供給するインターフェイス(I/F)ボード20とを備えている。ノートブックPCの場合には、この液晶表示モニタ10にシステム部(図示せず)が付加され、また、表示装置がシステム装置から独立したモニタを構成する場合には、液晶表示モニタ10にシステム装置(図示せず)が加わって液晶表示装置を構成している。
【0025】
このI/Fボード20は、PC/WSシステム等のホスト側からビデオデータを入力する入力部27、入力ビデオ信号に対して直前の輝度と次の輝度の比較を行う比較ロジック24、また、足し込み修正を実行するための足し込み修正部25等を有する論理回路を搭載したASIC21を備えている。また、入力された入力ビデオ信号を一旦、蓄えるためのフレームバッファ22、ASIC21の動きに必要な各種情報が格納されたROM23を有している。このフレームバッファ22は、直前に入力された入力ビデオ信号の値を格納してASIC21に供給している。また、ROM23には、ASIC21にて足し込み修正される際に必要な、且つR/G/B各入力色信号毎に設定されるグラフベーステーブル26が設けられている。このグラフベーステーブル26には、直前の輝度と次の輝度との対応関係に基づく出力すべき輝度レベルが、後述するような表形式で格納されている。
【0026】
一方、液晶モジュール30は、大きく分けて、液晶セルコントロール回路31と、液晶セル32、バックライト33との3つのブロックから構成されている。この液晶セルコントロール回路31は、パネルドライバとして、LCDコントローラLSI34やソースドライバ(Xドライバ)35、ゲートドライバ(Yドライバ)36のコンポーネントから構成されている。LCDコントローラLSI34は、I/Fボード20からビデオインターフェイスを介して受け取った信号を処理し、ソースドライバ35、ゲートドライバ36の各ICに供給すべき信号を必要なタイミングにて出力するものである。また、液晶セル32は、ソースドライバ35およびゲートドライバ36から電圧を受け、マトリックス上に並んだTFT配列により画像を出力している。また、バックライト33は、蛍光管(図示せず)を備えており、液晶セル32の背面または側面に配置されて背面から光を照射するように構成されている。
【0027】
図2は、本実施の形態に用いられるLCDにおいて、移動中のワイヤーフレームにおける輝度の例を示すグラフである。図2において、横軸は表示させたい輝度[%]を示し、縦軸は実際に表示される輝度[%]を示している。破線で示される符号51の線は、静止時における表示させたい輝度と実際に表示される輝度との関係を示している。また、実線で示される符号50の線は、移動中のR(レッド)信号における表示させたい輝度と実際に表示される輝度との関係を示している。移動中のG(グリーン)信号は2点鎖線で、移動中のB(ブルー)信号は1点鎖線で示されている。これらの移動中の特性は液晶パネル毎に特性が異なっている。
【0028】
まず、この図2の特性を有するLCDにおいて、中間階調である50%輝度のワイヤーフレームを表示させる場合を考える。静止時51においては、50%輝度が出せる電圧にて液晶をドライブすれば、画素も数フレームで50%輝度に到達することから問題はない。一方、移動時においては、R信号における移動中50を参照して明らかなように、50%輝度相当の電圧にて液晶をドライブしても、実際の画面上では21%の輝度しか得ることができない。実際に表示される輝度を50%とするためには、83%輝度相当の電圧にて液晶をドライブする必要がある。即ち、50%輝度相当の入力電圧に対して、更に33%分のオフセットをかけることが必要となるのである。B信号ではこのオフセット量が更に大きくなり、また、G信号では、若干、静止時51に近くなるものの、同様なオフセットをかけることが必要となる。
【0029】
ここで、液晶の応答特性とフリッカとの関係について、更に考察する。
図3は、最高輝度における液晶の応答速度の測定結果を5機種(機種A〜機種E)について求めた表図である。第1列の機種61において、カッコ書きは最高階調におけるフリッカの度合いを示したものであり、「○」はフリッカが殆ど視認されないことを示している。また、「△」はフリッカがほぼ容認できるレベル、「×」はフリッカが激しく認められるものを示している。第2列は応答時間立ち上がり62の時間を示し、第3列は応答時間立ち下がり63を示している。また、第4列の光量比64は理想的液晶における光量との比を示し、第5列は線画の移動時と静止時との輝度比65を表している。この線画の移動時と静止時との輝度比65は、移動中のワイヤーフレームモデルの輝度が静止時に比べ、どの位暗くなっているかを示すものである。機種Aはほとんど暗くなっておらず(1.0:1)、フリッカが視認される機種B(0.8:1)、機種D(0.7:1)、機種E(0.3:1)では、移動時の輝度が落ちているのが理解できる。
【0030】
この機種Aにおいて、最高階調での応答速度は充分に高速であるか、という点では、機種Aは応答時間立ち上がり62および応答時間立ち下がり63とも機種Bに比べて遅くなっている。しかしながら、実際のCADにおけるワイヤーフレームモデルを表示・移動させてみると、機種Aの方がフリッカは少なくなっている。この理由は、人間の視覚の特性を考慮するとうまく説明できる。即ち、人間の視覚には時間的に積分効果があることが知られている(テレビジョン学会:テレビジョン画像情報工学ハンドブック、第1版pp.39〜40(1990))。画素の人間の目にうつる明暗を論じるには、単に規定輝度への到達時間の速さではなく、光量、即ち輝度変化を時間で積分したもので考える必要がある。
【0031】
図4は、理想的な液晶の応答特性を示した図であり、ある画素を輝度L1でずっと点灯させたままにしておいたときの状態、即ち、静止時の状態を示している。このときの1フレーム分の時間(T)に発する光量Sは、図4の斜線部に示されるようにL1×T(即ち、輝度×時間)となる。
図5(a)、(b)は、図3に示した機種A、機種Bにおいて、画素を1フレームだけ点灯した場合(On→Off)の輝度対時間の応答特性を示した図である。図5(a)に示す機種Aの応答特性は、立ち上がりも緩やかであるが、立ち下がりも緩やかである。その結果、光量SA'としては、図4に示す理想的な液晶と同程度の光量(SA'≒S)を得ることができる。一方、図5(b)に示す機種Bの応答特性は、立ち上がりは速いものの、立ち下がりは更に速くて急峻である。その為に、図3の光量比64に示すように、光量SB'としては図4に示す理想的な液晶の81%程度しかない。従って、図5(a)に示すものより応答速度が速いにもかかわらず、静止時・移動時に光量の差(SB'<SA' )による輝度差があり、ワイヤーフレームモデルを動かしたときのフリッカが発生してしまう。図3に示した機種C〜機種Eの結果を見ても、光量比64が小さいディスプレイほど線画の移動時と静止時との輝度比65も小さく、フリッカが多いことが理解できる。
【0032】
これらの問題点の根本的解決策は、図4に示すような理想的な応答特性を持つ液晶素子を開発することであるが、実用化までにはまだ時間がかかる。そのために、普通の応答速度を有する液晶でもフリッカが抑止できる方策が必要となる。
有効な対策案の一つとして、図2に示した静止時51と移動中50との輝度差の測定を応用する方式が考えられる。即ち、ワイヤーフレームモデルの移動中は、図2に示されるグラフから読み取れる必要なオフセット量を考慮して、相当分の階調にてモデルを描画する方法である。
【0033】
図6は、必要なオフセット量を考慮して輝度を設定した場合の効果を示す図である。表示させたい輝度L1に対して、輝度L1を目標に駆動すると、前述した液晶の応答速度のために、符号71に示す光量(S')しか得られない。この光量(S')71は、図4に示した理想的な応答特性による光量(S)に比べて遥かに小さい。一方、表示させたい輝度L1よりも大きめの輝度L2を目標に駆動すると、符号72に示す光量(S'')が得られる。この輝度L2にオーバードライブすることで、液晶の応答としてはL1に速く到達することとなり、光量(S'')72は理想的な応答特性による光量(S)とほぼ同等の光量を得ることができる(S''≒S)。このときのL1に対する最適なL2は、図2に示したデータから得ることができる。
【0034】
図7は、輝度L1と輝度L2との対応を表の形式にて示した図であり、図1に示したROM23に格納されるグラフベーステーブル26の内容を示している。図7に示すこのグラフベーステーブル26の内容は、図6の効果を考慮して、図2に示した特性を有する液晶セル32に対し、直前の輝度と次の輝度との対応関係が示されている。この直前の輝度は、図1に示したASIC21により入力されたビデオ信号から求められ、フレームバッファ22に格納されている。また、次の輝度は、ASIC21に対して入力された次のビデオ信号から求められる。
尚、このグラフベーステーブル26は、R,G,B各色信号毎に形成されており、また、液晶セル32の特性が異なれば、その内容も異なってくる。
【0035】
図7に示すグラフベーステーブル26の1行目は、直前の輝度が0のときに次の輝度に対して出力される輝度を示しており、図2のグラフに示されるR信号の移動中50における読み取り値と一致している。例えば、次の輝度が10であれば、図2のグラフの縦軸から10%を横に見ていき、移動中50の線との交点から、表示させたい輝度28%が読み取れる。また、特定の中間階調から他の中間階調へ上昇する場合には、オフセット量の差を直前の輝度値に加算すればよい。例えば、直前の輝度が10で次の輝度が20の場合には(48−28)+10=30となり、次の輝度が30の場合には(63−28)+10=45となる。同様に、直前の輝度が20で次の輝度が30の場合には(63−48)+20=35となり、直前の輝度が30で次の輝度が40の場合には(74−63)+30=41となる。尚、本実施の形態では、直前の輝度と次の輝度との差がオフセット量よりも大きな場合には、次の輝度がそのまま出力されるように構成されている。例えば、直前の輝度が10で次の輝度が80の場合には、オフセット量は(96−28=68)であり、直前の輝度の値10を加えても78となる。この場合には、次の輝度を確保するために、次の輝度の値80にて出力される。
【0036】
一方、特定の中間階調から他の中間階調へ下降する場合には、逆にオフセット量だけ減じて出力すれば良い。図7に示す例では、液晶セル32の特性として、図6に示す上昇のとき(Onした時)と下降のとき(Offした時)とが同様な特性となる場合を示している。この例では、直前の輝度が100で次の輝度が10の場合には100−98=2が出力値となる。この“98”は、図7に示す直前の輝度が0で次の輝度が90の場合の値である。同様に、直前の輝度が100で次の輝度が20の場合には100−96=4となる。また、直前の輝度が90で次の輝度が30の場合には100−75=25となる。この“75”は、図7に示す直前の輝度が10で次の輝度が70の場合の値である。同様に直前の輝度が90で次の輝度が40の場合には100−70=30となる。この“70”は、図7に示す直前の輝度が10で次の輝度が60の場合の値である。
尚、図7では理解を容易にするために、直前の輝度および次の輝度を10毎に区切られた図表を用いて説明したが、実際には、図2に示されるような測定結果から読み取れる全ての組み合わせを予め表に記憶させるように構成されている。例えば、輝度1単位毎等に記憶する等であり、その精度は装置の規模等によって任意に決定することができる。また、図7では百分率によって表示していたが、この表のアドレスや格納値は百分率に限らず、その回路で扱い易いように、適当に量子化された値を用いれば良い。
【0037】
図8は、この下降する場合における表示させたい輝度と実際に表示される輝度との関係を示すグラフである。この図8の例では、図2に示すような上昇特性に対して同様な特性にて下降する液晶を例にとっている。その結果、図8に示す移動中80は、図2に示す移動中50の線に対して上下反転させたカーブとなっている。但し、横軸の目盛りも反転している。図8の移動中80の線にて、実際に表示される輝度が50%のときには、表示させたい輝度は17%となっている。これは、図7に示す図の、直前が100で次の輝度が50のときの値と一致しているのが解る。即ち、図8に示される移動中50の線は、図7で直前の輝度が100%から下降する場合をそのまま示している。
尚、本実施の形態では、上昇(OffからOnした時)と下降のとき(OnからOffした時)とが同様な特性を示す例にて説明したが、液晶の種類によってこれらの特性は異なってくる。そのため、本実施の形態では、液晶に合わせて図7の図表の値を変更することで対応できるように構成されている。
【0038】
このように、本実施の形態では、理想的な光量を得られるように、静止時の輝度レベルと移動時の輝度レベルとの関係に基づいて、表形式にてオフセット量を記憶するように構成している。これによって、LCD画面上のディスプレイイメージが移動している場合でも、見かけ上は静止時と同じ輝度で表示することが可能となり、画面上のフリッカを抑止することができる。
また、本実施の形態では、フレームバッファ22に直前の輝度レベル(階調値)を格納し、ASIC21にて次のビデオデータの輝度レベルと直前の輝度レベルとの対応関係に基づいて、グラフベーステーブル26の内容によって足し込み修正するように構成している。この結果、モデルが大局的に移動しているか、静止しているか、を判断する必要がなく、判断される輝度レベルと直前の輝度レベルとの差によって移動時を判断することができる。この結果、簡易な回路構成にてフリッカを抑止することが可能となる。
更に、本実施の形態によれば、光量(輝度×時間)の視覚に対する重要性に着目して液晶パネルの応答速度に起因するフリッカ問題に対処している。その結果、どのような液晶(TN、IPS、MVA等)に対しても、各液晶の特性に合わせて参照テーブルを作ることによって、遅い応答速度を補償することが可能となり、汎用性に富んだ液晶制御回路、液晶表示装置を提供することが可能となる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成にて、ワイヤフレームモデル等で大きな問題となるLCDにおけるフリッカ現象を、ユーザの見た目上、抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態における液晶表示装置の全体構成を説明するための説明図である。
【図2】 本実施の形態に用いられるLCDにおいて、移動中のワイヤーフレームにおける輝度の例を示すグラフである。
【図3】 最高輝度における液晶の応答速度の測定結果を5機種(機種A〜機種E)について求めた図表である。
【図4】 理想的な液晶の応答特性を示した図である。
【図5】 (a)、(b)は、図3に示した機種A、機種Bにおいて、画素を1フレームだけ点灯した場合の輝度対時間の応答特性を示した図である。
【図6】 必要なオフセット量を考慮して輝度を設定した場合の効果を示す図である。
【図7】 輝度L1と輝度L2との対応を表の形式にて示した図である。
【図8】 下降する場合における表示させたい輝度と実際に表示される輝度との関係を示すグラフである。
【図9】 ワイヤーフレームモデルを画面上で動かした場合におけるスクリーン上での線の動きを示す図である。
【図10】 ライン(i)上におけるフレーム毎の画素のON/OFFを示す図である。
【図11】 ピクセル(j)における輝度の変化を示す図である。
【符号の説明】
10…液晶表示モニタ(LCDモニタ)、20…インターフェイス(I/F)ボード、21…ASIC、22…フレームバッファ、23…ROM、24…比較ロジック、25…足し込み修正部、26…グラフベーステーブル、27…入力部、30…液晶モジュール、31…液晶セルコントロール回路、32…液晶セル、33…バックライト、34…LCDコントローラLSI、35…ソースドライバ(Xドライバ)、36…ゲートドライバ(Yドライバ)
Claims (1)
- 画像を表示する液晶セルに対して当該画像を構成する各画素をフレームごとに駆動する駆動手段と、
前記フレームの中の特定フレームに書き換わる際にオフからオンへ変化し、当該特定フレームが書き換わった後にオフに戻る移動時ビデオ信号を入力する入力手段と、
前記移動時ビデオ信号において、前記オンに変化してから前記オフに戻り前記画素の輝度が0に戻るまでの前記画素の輝度変化を時間で積分した時間積分量が前記特定フレームに対して連続してオンした場合である静止時の理想的な光量に近似するように、前記移動時ビデオ信号に対して施すオフセット量を設定する設定手段と、
前記入力手段により入力された、前記特定フレームに書き換わる際の前記移動時ビデオ信号に対して、前記設定手段により設定される前記オフセット量を施し、出力ビデオ信号を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記出力ビデオ信号を前記駆動手段に対して出力する出力手段とを備え、
前記入力手段により入力される前記移動時ビデオ信号は、複数の色信号で構成され、
前記設定手段により設定される前記オフセット量は各色信号ごとに決定され、
前記生成手段は、各色信号ごとに決定される前記オフセット量に基づいて、各色信号ごとに出力ビデオ信号を生成することを特徴とする液晶表示装置。
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