JP4897265B2 - 新規な非天然アミノ酸のタンパク質への導入法 - Google Patents

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Description

本発明は、蛍光物質等の標識化合物で標識した標識化アミノ酸等の非天然アミノ酸をタンパク質の生合成過程でタンパク質に導入し標識化タンパク質を製造する方法に関する。
非天然型アミノ酸をタンパク質へ導入することは、タンパク質の構造・機能の解析のみならず、何らかの機能を人工的に付加した人工的なタンパク質の作製を可能にする。例えば、非天然型アミノ酸として、蛍光物質等の種々の標識物をアミノ酸骨格に結合させたものを用いることで、該標識物を取り込んだ標識化タンパク質が得られる。それぞれの標識物に応じた方法を用いて、該標識化タンパク質を直接的に、または標識物が酵素基質または抗原性物質である場合などは酵素化学的手法または酵素免疫化学的手法などの間接的手法により、検出および/または精製することができ、様々な医学、薬学、高分子化学、生化学等に関連する技術分野において様々な用途への利用が期待される。
機能性基をタンパク質表面に導入する場合、一般に用いられるのがタンパク質の特定残基への化学修飾である。この化学修飾は簡単であり、一度に多数の特定の残基を修飾できるというメリットがある反面、修飾部位および/または修飾数の制御の再現性という点では優れた結果が得られ難いという課題もある。
一方、近年の遺伝子工学の発展により、タンパク質中のアミノ酸残基の置換が可能となり、タンパク質合成系を改変することで、アミノ骨格を有する所望の非天然型アミノ酸をタンパク質中に導入することが可能となり、機能性基を担持するタンパク質を再現性よく合成することが可能となった。
タンパク質合成においてアミノ酸はまずtRNAの3’末端に結合し、次にタンパク質合成の場であるリボソームヘ運ばれる。リボソームではコドンからアミノ酸への翻訳が行われる。非天然型アミノ酸を結合させたtRNAを用いることによって非天然型アミノ酸をタンパク質に組み込むことができる。
P.G.Schu1tzら及びA.R.Chamberlinらは終止コドンUAGを非天然型アミノ酸に割り当てることによって非天然型アミノ酸をタンパク質に組み込む終止コドン法を報告している(非特許文献1および非特許文献2等を参照)。宍戸らは、コドンを4塩基に拡張する4塩基コドン法を開発した。4塩基コドン塩基法においては、mRNAの非天然型アミノ酸を導入したい部位に4塩基コドンを組み込み、tRNAのアンチコドン部位を対応する4塩基に置換し、さらに非天然型アミノ酸を結合させておく。これらを用いてタンパク質合成を行うと、4塩基コドンに置換した部分ではリボソームの中で4塩基のコドン・アンチコドンペアが形成され、tRNAに結合させた非天然型アミノ酸は伸長中のペプチド鎖に組み込まれる。一方、その他の部分は通常通り3塩基ずつ翻訳されるので、最終的に得られるタンパク質には4塩基コドンで指定した部分にのみ非天然型アミノ酸が導入されていることになる(非特許文献3および4等を参照)。
さらに、平尾らは、人工塩基対によるタンパク質の合成系(人工塩基コドン法)を開発している(非特許文献5等を参照)。
これらの方法において、非天然型アミノ酸をtRNAに結合させるための方法として、tRNAの3’末端のジヌクレオチドを欠落させ、代わりに非天然型アミノ酸を結合させたジヌクレオチドをRNA連結酵素によって結合させる化学的アミノアシル化法を用いることで、非天然型アミノ酸をtRNAに結合させることができる。さらに4塩基コドン法および人工塩基コドン法では、複数の非天然型アミノ酸をタンパク質へ同時に導入することもできる。
しかしながら、tRNAに結合さえすれば、いかなる非天然型アミノ酸もタンパク質へ導入できるわけではない。天然のタンパク質合成系は20種類の天然アミノ酸ならばどれでも区別なくポリペプチド鎖に組み込む寛容性を持っており、非天然型アミノ酸についてもある程度の許容性をもっていると考えられるが、かさ高い分子構造を有する側鎖を持つアミノ酸をタンパク質に導入することは、天然のタンパク質合成系では不可能である。天然のタンパク質合成系では、リボソームには2つのtRNA取り込み部位があり、その1つにはポリペプチドが結合したtRNAが、他の1つには未反応のアミノ酸を担持しているtRNAが取り込まれるが、かさ高いアミノ酸が結合しているtRNAはリボソームに取り込まれることができず、タンパク質に導入できないと推測されている。
標識化合物のうち、特に、蛍光物質は、タンパク質の標識物として非常に有用性の高い物質である。さらに、可視光域における発光物質は、広く一般に普及している検出機器によって検出できる。また、種々の高感度な検出機器が既に開発され、普及している。さらに、細胞標識等においても細胞内の蛍光発光による干渉作用を受けないので、標識化合物として非常に有用性が高い。しかしながら、これらの蛍光物質はその分子量が大きく、非天然型アミノ酸の標識化合物として使用した場合、タンパク質合成系を用いた方法ではそのタンパク質への導入が困難である。例えば、化学構造中に4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンを基本骨格として含む化合物(BODIPY化合物(登録商標))等の分子量の小さい標識化合物を結合させたアミノ酸はタンパク質合成系に許容されタンパク質へ導入することは容易であったが(特許文献1等参照)、Fluorescein等の分子量の大きい標識化合物を結合させたアミノ酸はタンパク質合成系に許容されずタンパク質へ導入することはできなかった。さらに、蛍光性、発光性の他にも、酵素反応性、抗原性、タンパク質結合性および分子間相互作用性など様々な機能を有する化合物が標識化合物として有用であるが、標識化合物の分子量によってタンパク質合成系を用いた方法によりタンパク質への導入の可能性が制限されるという問題があった。
WO2004/009709国際公開パンフレット Science,244,p.182.1989 J.Am.Chem.Soc.,111,p.8013,1989 Hohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 118, 9778-9779, 1996 Hohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 121, 34-40, 1999 Hirao, I., et al., Nature Biotech., 20, 177-182, 2002
本発明は、従来の非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法である4塩基コドン法、終止コドン法および人工コドン法では、導入が困難であった非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来の非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法である4塩基コドン法、終止コドン法および人工コドン法では、タンパク質への導入が困難であった、分子量の大きい非天然アミノ酸等の非天然アミノ酸をタンパク質へ導入する方法について鋭意検討を行った。本発明者等は、従来法の一つである4塩基コドン法で分子量の大きい非天然アミノ酸等を導入しようとした場合、N末端領域にならば非天然アミノ酸が導入され得ることを見出した。そこで、本発明者等は非天然アミノ酸の導入効率の高いN末端領域を特定し、本発明を完成させた。
さらに、本発明者等はN末端領域に非天然アミノ酸を導入する場合、4塩基コドン中の3塩基コドンだけが読まれてしまうフレームシフトが起こる結果、非天然アミノ酸が導入されていないタンパク質が合成されることがあり、タンパク質合成の正確性に欠けることを見出した。非天然アミノ酸が導入されていないタンパク質が合成された場合、タンパク質調製物中に非天然アミノ酸が導入されたタンパク質と導入されないタンパク質が混在することになる。非天然アミノ酸が導入されたタンパク質と導入されないタンパク質を分離することは困難であり、結局タンパク質調製物中には不要タンパク質が多く、実用上の不利を有していた。
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討の結果、フレームシフトが生じ、リーディングフレームがずれた場合に、終止コドンが読まれるように、終止コドンをフレームをずらしてDNAまたはmRNA中に挿入しておくことにより、フレームシフトが生じると終止コドンが読まれタンパク質の合成が停止し、意図しないタンパク質の合成を避けることができることを見出した。本発明者らは4塩基コドンの下流に+2フレームでフレームをずらしストップコドンを挿入し、さらに4塩基コドンの上流に+1フレームでフレームをずらしてストップコドンを挿入するようにDNAを設計し、フレームシフトが生じた場合にタンパク質合成を停止させることに成功した。
本発明者らは、さらにタンパク質合成の生産性および正確性を向上させることについて鋭意検討を行った。その結果、4塩基コドンの直前および/または直後に特定の配列を有するコドンを挿入することにより、タンパク質合成の生産性および正確性が向上することを見出した。本発明者等は、4塩基コドン、4塩基コドンの上流および/または下流のストップコドン、ならびに4塩基コドンの直前および/または直後の特定の配列を有する3塩基コドンを組合せた4塩基タグを設計し、従来法では不可能であった、分子量の大きさ等により導入することができなかった非天然アミノ酸をタンパク質に導入することを可能にし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
[1] タンパク質合成時に非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法であって、無細胞タンパク質合成系を用いて非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法であって、非天然アミノ酸の導入位置がタンパク質のアミノ酸配列のN末端から33番までの任意な位置であり、タンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンの直下から33番目までのコドンの任意な位置に4つ以上の連続した塩基からなる4塩基コドン、終止コドン、および非天然塩基からなる人工コドンからなる群から選択されるコドンであって、非天然アミノ酸に割り当てられたコドンを挿入し、これらのコドンを認識するtRNAであって非天然アミノ酸を結合したtRNAを介して該タンパク質の翻訳を行うことによりタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[2] 無細胞系タンパク質合成系を用いる、[1]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[3] 非天然アミノ酸の導入位置がタンパク質のアミノ酸配列のN末端から数えて7番目から11番目までの任意な位置であり、タンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンから数えて7番目のコドンから11番目のコドンの任意な位置に4つ以上の連続した塩基からなる4塩基コドン、終止コドン、および非天然塩基からなる人工コドンからなる群から選択されるコドンであって、非天然アミノ酸に割り当てられたコドンを挿入する、[1]または[2]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[4] 非天然アミノ酸が蛍光性アミノ酸である[1]〜[3]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[5] 非天然アミノ酸が蛍光標識されたアミノフェニルアラニンである[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[6] 非天然アミノ酸がRhodamine、Cy、Coumarine、およびEvoBlueおよびからなる群もしくは、それらの誘導体からなる群から選択される骨格を有する蛍光物質で標識されている[1]〜[5]のいずれかのタンパク質。
[7] 非天然アミノ酸の分子量が500以上である、[1]〜[6]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[8] タンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法が4塩基のコドン・アンチコドンペアを利用して4塩基コドンに非天然アミノ酸を割り当てる4塩基コドン法であり、タンパク質の翻訳過程においてフレームシフトが生じたときにタンパク質の翻訳が停止するように、4塩基コドンおよび4塩基コドンの上流に+1フレームでストップコドンに対応する配列を含み、および/または4塩基コドンの下流に+2フレームでストップコドンに対応する配列を含み、4塩基コドンの上流+1フレームのストップコドンに対応する配列と4塩基コドンの間、および下流+2フレームのストップコドンに対応する配列と4塩基コドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入されている、[1]〜[7]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[9] タンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法が4塩基のコドン・アンチコドンペアを利用して4塩基コドンに非天然アミノ酸を割り当てる4塩基コドン法であり、4塩基コドンおよび4塩基コドンの上流に+1フレームでストップコドンに対応する配列を含み、および/または4塩基コドンの下流に+2フレームでストップコドンに対応する配列を含む構造を有する4塩基タグであって、4塩基コドンの上流+1フレームのストップコドンに対応する配列と4塩基コドンの間および下流+2フレームのストップコドンに対応する配列と4塩基コドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入された4塩基タグを含むDNAまたはmRNAであって、前記4塩基タグの下流に目的タンパク質をコードする遺伝子がインフレームとなるように連結されたDNAまたはmRNAを用いる[1]〜[8]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[10] 4塩基タグが、nストップコドンnr4塩基コドンnp、np4塩基コドンnqストップコドンnまたはnストップコドンnr4塩基コドンnqストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、p、qおよびrは塩基の数を示し、pは3×N個でrおよびqは独立に2+3×N個(Nは0または任意の整数である)であり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGである[9]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[11] 4塩基タグが、nTA Ann4塩基コドンnnT AAnで表されるDNAまたはnUA Ann4塩基コドンnnU AAnで表されるmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUである、[10]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[12] n4塩基コドンn1n2ストップコドンn、nストップコドンn3n44塩基コドンnまたはnストップコドンn3n44塩基コドンn1n2ストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、n、n1、n2、n3およびn4は塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはTGUまたはTAGもしくはUAGである4塩基タグにおいて、n3n4で表される配列がTCもしくはUC、TAもしくはUA、TGもしくはUG、CTもしくはCU、CC、CA、AC、GTもしくはGU、GC、GAおよびGGからなる群から選択され、n1n2で表される配列がTTもしくはUU、TCもしくはUC、TAもしくはUA、CTもしくはCU、CC、CA、CG、ATもしくはAU、AC、AA、AG、GTもしくはGUおよびGCからなる群から選択される、[8]〜[11]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[13] n3n4で表される配列がACまたはGTもしくはGUであり、n1n2で表される配列がTCもしくはUCである、[12]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[14] 4塩基タグがnTAAAC4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAAC4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、[13]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[15] 4塩基タグがnTAAGT4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAGU4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、[13]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[16] 4塩基コドンがCGGGである[1]〜[15]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[17] 4塩基タグを、4塩基コドンがタンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンの直下から33番目までのコドンの任意な位置にインフレームとなるように挿入し、その下流に目的遺伝子がインフレームとなるように連結する[9]〜[16]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[18] 4塩基タグを、4塩基コドンがタンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンから数えて7番目のコドンから11番目までのコドンの任意な位置にインフレームとなるように挿入し、その下流に非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質をコードする遺伝子がインフレームとなるように連結する[9]〜[16]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[19] 4塩基コドンから始まるタンパク質の翻訳が起こり、非天然アミノ酸が非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質のN末端に導入されることを特徴とする[1]〜[18]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[20] 4塩基タグの上流に任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAのATGまたはAUG開始コドンを含む部分塩基配列を含み、4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質がインフレームとなるように連結している、[9]〜[19]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[21] 4塩基タグの上流の任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAがチオレドキシンをコードするDNAまたはmRNAである[20]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
[22] nストップコドンnr4塩基コドンnp、np4塩基コドンnqストップコドンnまたはnストップコドンnr4塩基コドンnqストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、p、qおよびrは塩基の数を示し、pは3×N個でrおよびqは独立に2+3×N個(Nは0または任意の整数である)であり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGであるDNAまたはmRNAからなる4塩基タグ。
[23] nTA Ann4塩基コドンnnT AAnで表されるDNAまたはnUA Ann4塩基コドンnnU AAnで表されるmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUである塩基配列からなる[22]の4塩基タグ。
[24] n4塩基コドンn1n2ストップコドンn、nストップコドンn3n44塩基コドンnまたはnストップコドンn3n44塩基コドンn1n2ストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、n、n1、n2、n3およびn4は塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGである4塩基タグにおいて、n3n4で表される配列がTCもしくはUC、TAもしくはUA、TGもしくはUG、CTもしくはCU、CC、CA、AC、GTもしくはGU、GC、GAおよびGGからなる群から選択され、n1n2で表される配列がTTもしくはUU、TCもしくはUC、TAもしくはUA、CTもしくはCU、CC、CAA、CG、ATもしくはAU、AC、AA、AGもしくはAG、GTもしくはGUおよびGCからなる群から選択される配列からなる4塩基タグ。
[25] n3n4で表される配列がACまたはGTもしくはGUであり、n1n2で表される配列がTCもしくはUCである、[24]の4塩基タグ。
[26] nTAAAC4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAAC4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、[25]の4塩基タグ。
[27] nTAAGT4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAGU4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、[25]の4塩基タグ。
[28] 4塩基コドンがCGGGである[22]〜[27]のいずれかの4塩基タグ。
[29] 少なくとも[22]〜[28]のいずれかの4塩基タグおよび4塩基タグの上流にATGまたはAUG開始コドンを含む遺伝子コンストラクト。
[30] [22]〜[28]のいずれかの4塩基タグを含み、4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質をコードするDNAを連結させることができる、タンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[31] 4塩基タグの上流にATGまたはAUG開始コドンおよびプロモーターを含み、開始コドンの直下から33番目までのコドンの任意な位置に4塩基タグ中の4塩基コドンが位置する、[30]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[32] 開始コドンから数えて7番目のコドンから11番目のコドンの任意な位置に4塩基タグ中の4塩基コドンが位置する、[31]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[33] 4塩基タグの上流に任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAのATGまたはAUG開始コドンを含む部分塩基配列を含む、[31]または[32]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[34] 4塩基タグの上流の任意のタンパク質をコードするDNAがチオレドキシンをコードするDNAである[33]のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[35] 下記の制限酵素地図を有し、4塩基タグとしてTAAGTCGGGTCTAAT(配列番号75)で表される配列を有する[30]〜[34]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
Figure 0004897265
[36] 下記の制限酵素地図を有し、4塩基タグとしてTAAACCGGGTCTAAT(配列番号76)で表される配列を有する[30]〜[34]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
Figure 0004897265
[37] 配列番号77で表される塩基配列を有する[30]〜[35]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
[38] 配列番号78で表される塩基配列を有する[30]〜[34]および[36]のいずれかのタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法である、4塩基コドン法、終止コドン法および人工コドン法において、導入が困難であった非天然アミノ酸、例えば分子量の大きいアミノ酸をタンパク質のN末端領域に導入することにより、効率的に非天然アミノ酸導入タンパク質を作製することができる。
4塩基コドン法を利用して、非天然アミノ酸を導入したタンパク質を合成する際に、4塩基コドンの上流および/または下流にフレームをずらしてストップコドン(上流ストップコドンおよび/または下流ストップコドン)を挿入することにより、タンパク質生合成過程でフレームシフトが生じることによりできる非天然アミノ酸が導入されていないタンパク質の産生を避けることができる。その結果、非天然アミノ酸を導入したタンパク質の合成の生産性および正確性を向上させることができる。
さらに、4塩基コドンの上流および/または下流のストップコドンに加えて4塩基コドンの直前および/または直後に特定の配列からなる3塩基コドン(直前コドンおよび/または直後コドン)を挿入することにより、さらに非天然アミノ酸を導入したタンパク質の合成の生産性および正確性を向上させることができる。
上記の4塩基コドンと上流ストップコドン、下流ストップコドン、直前コドン、直後コドンのいずれかとの組合せを含む塩基配列からなる4塩基タグ、または4塩基タグを含む発現プラスミドを用いることにより、目的のタンパク質に効率的に非天然アミノ酸を導入することができる。
本発明は、効率的なタンパク質の部位特異的標識等に利用することができる。
本発明は非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法である。「非天然アミノ酸」とは、同一分子内にアミノ骨格を有する天然に存在しない人工のあらゆる化合物を指し、種々の標識化合物をアミノ酸骨格に結合させることにより作製することができる。「アミノ酸骨格」はアミノ酸中のカルボキシル基、アミノ基、およびこれらを連結している部分を含有する。
非天然アミノ酸の一例として、標識化合物と結合したアミノ酸である「標識化アミノ酸」が挙げられる。例えば、側鎖にベンゼン環等の芳香環を含むアミノ酸骨格を有するアミノ酸に標識化合物を結合させたアミノ酸がある。また、機能を考慮した場合、光応答性アミノ酸、光スイッチアミノ酸、蛍光プローブアミノ酸、蛍光標識アミノ酸等がある。
本発明において用いる標識化合物は、当業者には公知の色素化合物、蛍光物質、化学/生物発光物質、酵素基質、補酵素、抗原性物質およびタンパク質結合性物質である。本発明において用いる非天然アミノ酸は、従来のタンパク質への非天然アミノ酸の導入法である4塩基コドン法、終始コドン法、人工コドン法等の方法では導入ができなかったか、または導入が困難であった非天然アミノ酸である。
また、標識化合物が蛍光物質である場合、基本骨格としてRhodamine、Cy、Coumarine、EvoBlueを有する蛍光物質が挙げられる。具体的に本発明の非天然アミノ酸に結合させる標識化合物として適したものとして、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy5Q、Cy7Q、EVOblue10、EVOblue30、SFX、RhoX、TexX、TAMX、5TAM等が挙げられる。さらに、これらの蛍光物の誘導体も含まれる。また、naphthalene、biphenyl、anthracene、phenenthrene、pyrene、carbazoleを有する蛍光物質、もしくはその誘導体も含まれる。
また、これ以外の蛍光物質、例えば、分子量が1500以下、1000以下、または500以下の蛍光物質、具体的には、BFL、BFLC5、B493、BR6G、B558、B564、B576、B581、BFL(以下に、商標名および/または一般名を記す)も本発明によれば、従来のタンパク質への非天然アミノ酸の導入法である4塩基コドン法、終止コドン法、人工コドン法等の方法よりも効率的に導入することができる。
BFL : BODIPY FL(商標名),
4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
BFLC5 : BODIPY FL C5(商標名),
4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s- indancene-3-pentanoic acid
B493 : BODIPY 493/503(商標名),
4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-8-propionic acid
BR6G : BODIPY R6G(商標名),
4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
B558 : BODIPY 558/568(商標名),
4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
B564 : BODIPY 564/570(商標名),
4,4-difluoro-5-styryl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
B576 : BODIPY 576/589(商標名),
4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
B581 : BODIPY 581/591(商標名),
4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid
Cy3(商標名)、Cy3B(商標名)、Cy3.5(商標名)、Cy5(商標名)、Cy5.5(商標名)、Cy5Q(商標名)、Cy7Q(商標名)、EvoBlue10(商標名)、EvoBlue30(商標名)
SFX : SFX(商標名)はスクシイミドエステルの結合しているときの商標名であり、FAM-Xがエステルなしの商標名
RhoX : Rhodamine Red-X(商標名)
TexX : Texas Red-X(商標名)
TAMX : 5(6)-TAMRA-X(商標名)
5TAM : 5 TAMRA(商標名)
蛍光標識化合物としては、可視光域内(400〜700nm付近)に励起波長を有し、さらに可視光域内に発光波長を有するものが好ましく、水溶液中での発光強度が強いものが特に好ましい。
ルシフェリン、ルミジェン等の化学もしくは生物発光物質またはその誘導体も標識化合物として本発明に用いることができる。
さらに、補酵素類、抗原性を有する物質および特定のタンパク質に結合することが判っている物質などの中から、対象とするタンパク質に付与したい機能に応じて適宜選んで、それを標識化合物として本発明に用いることができる。例えば、特定の酵素に対する基質(例えば、アルカリホスファターゼまたはβガラクトシダーゼに対する基質等)を導入すれば、その酵素による呈色反応を利用して検出することができる。また、抗原性を有する物質、特定のタンパク質に結合することが判っている物質で標識されたタンパク質は、抗体または結合するタンパク質を用いた間接的検出法に用いることができる、および、精製が簡便であるという利点を有している。例えば、本発明の方法を用いてビオチンで標識した機能性タンパク質は、ビオチンを介してアビジンまたはストレプトアビジンと結合するという機能を有しており、この機能を利用すれば、本発明の方法によりまたは化学的に蛍光化合物等で標識したアビジンもしくはストレプトアビジンとの結合を利用して特定の物質の検出系を確立することが可能である。この他、種々の色素、ならびに、さまざまな生化学的、化学的、免疫化学的な検出方法で検出可能な物質を標識化合物に用いることができることが、当業者には理解できる。
アミノ酸と標識化合物とはスペーサーを介してまたは介さず連結することができる。「スペーサー」という用語は、標識化アミノ酸分子におけるアミノ酸部と標識化合物とを連結している部分を指す。即ち、標識化アミノ酸分子内のアミノ酸側鎖と標識化合物が直接結合しているのではなく、アミノ酸側鎖と標識化合物との間に1つ以上の原子が存在する場合、該標識化アミノ酸のアミノ酸部と標識化合物はスペーサーを介して連結しているという。スペーサーは、その主鎖部分にC、O、NおよびSのうちの少なくとも1種を少なくとも1つ以上含んでいればよい。またスペーサーの主鎖構造は、上記原子が2〜10個、好ましくは3〜8個、さらに好ましくは5、6または7個が直鎖状に結合したものが好ましく、直鎖構造内には、二重結合が1つ以上含まれていてもよい。さらに、スペーサーは、ベンゼン環および/またはシクロヘキシル環などの環状構造を1〜数個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、有していてもよい。また、ベンゼン環やシクロヘキシル環などの環状構造、もしくは環状構造と上記直鎖構造とが組み合わされた構造のものでもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプテン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネートなどが挙げられる。
標識化合物の種類によっては、導入されたタンパク質内においてその機能をより効果的に発揮するために、スペーサーを介してアミノ酸と結合することが有利なものもある。例えば、標識化合物の種類によっては、スペーサーを介して結合している方が、導入されたタンパク質内での該標識化合物への立体障害が軽減されるということが考えられる。
さらに、本発明の標識化アミノ酸は、アミノ酸部の側鎖に芳香環を有し、該芳香環に、スペーサーを介してまたはスペーサーを介さずに、標識化合物が結合しているものが好ましい。
本明細書で用いる「芳香環」とは、一般的に、あらゆる不飽和環状化合物を指す。したがって、5もしくは6員の複素芳香環、または2個以上、好ましくは2〜5個、さらに好ましくは2〜3個の環構造を含む多環性化合物も含む。特に、芳香環はベンゼン環であることが好ましい。天然型アミノ酸のうち、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンはその側鎖に芳香環を含有する天然型芳香族アミノ酸であり、該芳香環に標識化合物が(スペーサーを介してまたはスペーサーを介さずに)結合したものは、本発明の非天然アミノ酸の好ましい例として挙げることができる。
芳香環を有するアミノ酸と標識化合物の結合およびスペーサーを介した芳香環を有するアミノ酸と標識化合物との結合は、適当な官能基どうしの結合を利用すればよい。タンパク質合成の際にペプチド伸長反応に関与しない、天然型あるいは非天然型アミノ酸の、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、アルデヒド基、アリル基、ハロゲン化アルキル基など種々の官能基のいずれかに標識化合物を、スペーサーを介して、または介さずに結合する。アミノ基標識用プローブとしてスクシンイミドエステル、イソチオシアネート、スルホニルクロライド、NBD-ハライド、ジクロロトリアジンなどの化合物が、チオール基標識用プローブとしてアルキルハライド、マレイミド、アジリジンなどの化合物が、カルボキシル基標識用プローブとしてジアゾメタン化合物、脂肪族臭化物、カルボジイミドなどが利用できる。例えば、標識化合物にスペーサーを介して、または介さずに、スクシンイミドエステルを導入し、かつアミノ酸の芳香環にアミノ基を導入しアミド結合により両者を結合させることができる。芳香環にアミノ基を導入したアミノ酸として、例えばアミノフェニルアラニンが挙げられる。この際に用いる官能基は、適宜選択導入できるし、結合方法も適宜選択できる。この際、アミド結合形成反応をpH5程度で行なうことで、他にアミノ基が存在していても、アミノフェニルアラニンの側鎖のアミノ基に選択的に反応させることができる。あるいは、他のアミノ基をBoc化等により保護し、反応後脱Boc化すればよい。この方法は、例えば、「新生化学実験講座1 タンパク質VI 構造機能相関」の記載等を参照すればよい。
アミノ酸骨格を形成する原子に芳香環が直接結合していても、C、O、NおよびSのうちの少なくとも1種の1、2、または3個の原子を介して間接的に結合していてもよい。芳香環はベンゼン環である場合、ベンゼン環上にスペーサーまたは標識化合物が結合する位置は、アミノ酸骨格の位置に対して、パラ位またはメタ位であると、リボゾームへの取り込み効率がより高くなり、より好ましく、特にパラ位であることが好ましい。
前述のように、芳香環の官能基にスペーサーを介してまたは介さずに標識化合物を結合させる。アミノフェニルアラニンの場合、パラアミノフェニルアラニン、メタアミノフェニルアラニンが好ましい。
なお、本発明の標識化アミノ酸を、後述のタンパク質合成に用いて標識化機能性タンパク質を作製するためには、アミノ酸にtRNAと結合させるために必要な特定の基を結合させておく必要がある。例えば、アミノ酸のカルボキシル基にジヌクレオチド(pdCpA)を結合させておけば、3’末端のCAジヌクレオチドを欠落させたtRNA(tRNA(-CA))と結合させ、人工アミノアシルtRNAを作製することができる。人工アミノアシルtRNAの作製は、WO2004/009709国際公開パンフレット等の記載に従って行うことができる。例えば、アミノ酸のαアミノ基をBoc基で、側鎖官能基をBocもしくはOtBocで保護し、Boc-アミノ酸をシアノメチルエステル化した後、pdCpAと反応させるか、縮合剤カルボニルイミダゾール(CDI)を用いてBocアミノ酸とpdCpAを反応させる方法により、アミノアシルpdCpAを作製することができる。tRNA(-CA)との連結はT4 RNAリガーゼを用いればよい。
本発明の非天然アミノ酸の導入は、自然界ではアミノ酸が割り当てられていないコドンに非天然アミノ酸を割り当てコドンを拡張する方法である4塩基コドン法、終止コドン法、人工コドン法のいずれの方法も用いることができる。この中でも4塩基コドン法が好ましい。4塩基コドン法は、Hohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 118, 9778-9779, 1996およびHohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 121, 34-40, 1999の記載に従って実施することができる。また、終止コドン法は、Science,244,p.182.1989およびJ.Am.Chem.Soc., 111,p.8013,1989、人工塩基コドン法は、Hirao, I., et al., Nature Biotech., 20, 177-182, 2002の記載に従って行うことができる。
4塩基コドン法においては、DNAまたはmRNAの非天然型アミノ酸を導入したい部位に4塩基コドンを組み込み、tRNAのアンチコドン部位を対応する4塩基に置換し、さらに非天然型アミノ酸を結合させておく。これらを用いてタンパク質合成を行うと、4塩基コドンに置換した部分ではリボソームの中で4塩基のコドン・アンチコドンペアが形成され、tRNAに結合させた非天然型アミノ酸は伸長中のペプチド鎖に組み込まれる。一方、その他の部分は通常通り3塩基ずつ翻訳されるので、最終的に得られるタンパク質には4塩基コドンで指定した部分にのみ非天然型アミノ酸が導入されていることになる。なお、4塩基コドン法においては、4つの連続した塩基からなるコドンだけではなく、5以上の連続した塩基からなるコドンも用いることができる。例えば、5、6または7つの連続した塩基からなるコドンが挙げられる。5以上の連続した塩基からなるコドンを用いる場合、tRNAのアンチコドン部位を対応する5以上の塩基に置換すればよい。本明細書において、4塩基コドンという場合、4つの連続した塩基からなるコドンを5以上の連続した塩基からなるコドンに変更したものも含む。
本発明の方法によれば、非天然アミノ酸を導入したタンパク質の合成において、タンパク質の生産性および正確性が向上する。タンパク質の生産性とは非天然アミノ酸が導入された目的のタンパク質の合成量が大きいことをいい、合成に用いた溶液中の単位容積当りのタンパク質量を測定することにより生産性の良否を判定することができる。また、タンパク質合成の正確性とは、非天然アミノ酸が導入された目的のタンパク質以外のタンパク質が合成されないか、合成されてもわずかであることをいう。例えば、4塩基コドン、終止コドンまたは人工コドンに対応するアミノアシルtRNAを添加しない場合、本来4塩基コドン部位で合成が停止してしまうため目的のタンパク質は合成されない。しかし、この条件下で非天然アミノ酸が導入されていないタンパク質が合成される場合があり、この場合タンパク質合成の正確性が低いという。
本発明の方法においては、非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質をコードするDNAにおいて、非天然アミノ酸を導入しようとする部位に導入しようとする非天然アミノ酸に割り当てられた4塩基コドン、終止コドンまたは人工コドンを挿入する。4塩基コドンを用いる場合、4塩基コドンを構成する塩基は限定されないが、4塩基コドンとして例えば、CGGG、CTCT(CUCU)、CTCA(CUCA)、CCCT(CCCU)、CGGT(CGGU)、AGGT(AGGU)およびGGGT(GGGU)が好適に用いられる。
タンパク質をコードするDNAまたはmRNA上の4塩基コドン、終止コドンまたは人工コドンの位置は、タンパク質のN末端領域、すなわち開始コドン(ATGまたはAUG)から数えて2〜33番目のコドン位置が好ましく、2〜25番目のコドン位置、2〜11番目のコドン位置または7〜11番目のコドン位置がさらに好ましい。この場合、産生されたタンパク質のアミノ酸配列中、N末端から33番目、N末端から25番目、N末端から11番目、またはN末端から数えて7番目から11番目に非天然アミノ酸が導入される。4塩基コドン、終止コドンまたは人工コドンが上記位置に存在する場合は、非天然アミノ酸の基質選択性が大きくなり、非天然アミノ酸の導入効率が高くなる。また、非天然アミノ酸の分子量が大きい場合は、4塩基コドン、終止コドンまたは人工コドンが上記位置よりC末端側に存在すると導入されなくなる。
ただし、タンパク質生合成過程においてN末端領域のアミノ酸に対する基質特異性が広いため、N末端領域に非天然アミノ酸を導入しようとする場合、4塩基コドン、終止コドンおよび人工コドンに割り当てられた非天然アミノ酸以外のアミノ酸が反応してしまうことがある。解析の結果、導入される非天然アミノ酸のコドン近傍でフレームシフトが起こり、非天然アミノ酸が導入されていないタンパク質が合成されていた。この原因は、天然アミノ酸より大きな非天然アミノ酸がリボソームに取り込まれることによって、ペプチド合成速度の低下、即ち、mRNA上でリボソームの動きが低下し、その結果としてmRNAが+1または−1塩基分リボソームからずれることによって、フレームシフトが起こり、非天然アミノ酸に割り当てたコドンをスキップすると推定した。この場合、非天然アミノ酸が導入されない意図しないタンパク質が合成されてしまう。
そこで、本発明の方法においては、4塩基コドン法を利用する場合において、4塩基コドンの上流に+1フレームで、および/または下流に+2フレームで、ストップコドンに対応する配列(TAAもしくはTUU、TAGもしくはUAG、またはTGAもしくはUGA)を挿入する。
タンパク質の生合成において、リボソームがmRNA上を移動し、通常3塩基ずつのコドンをmRNAの5’側から3’側へと読んで行き、それぞれのコドンに対応したアミノ酸がtRNAにより運搬されアミノ酸が連結される。4塩基コドン法において、4塩基は4塩基として読まれ所望の非天然アミノ酸を結合した4塩基のアンチコドンを有するtRNAにより非天然アミノ酸が運搬されタンパク質中に導入される。しかしながら、4塩基コドン法において、4塩基で非天然アミノ酸に対応しているコドンのうちの最初の3塩基がコドンとして読まれ、フレームシフトが生じることがある。この場合、4塩基で非天然アミノ酸に対応しているコドンが最初の3塩基で読まれ、その後、リーディングフレームが1塩基分ずれ、+1フレームシフトが生じ、非天然アミノ酸が導入されていない意図しないタンパク質が合成されてしまう。
下流に+2フレームでフレームをずらしてストップコドンを挿入すれば、4塩基コドンが3塩基コドンとして読まれフレームシフトが生じた場合、挿入したストップコドンに対応する配列がストップコドンとして読まれタンパク質合成が停止する。このため、意図しないタンパク質の合成を避けることができ、タンパク質合成の正確性が増す。ここで、下流に+2フレームでストップコドンに対応する配列を挿入するとは、通常のリーディングフレームに対して、2塩基分下流にずらしてストップコドンに対応する配列を挿入することをいう。すなわち、4塩基コドン(4塩基コドンの5’側から数えて4番目の塩基)と下流のストップコドンに対応する配列(ストップコドンの5’側から数えて1番目の塩基)の間に2+3×N個の塩基が挿入される。ここで、Nは0または正の整数であり、Nの数に上限はなく、最終的にタンパク質合成が停止すればよい。ただし、フレームシフトが生じたタンパク質の合成を早く停止させる観点から、あまり大きくないほうがよい。好ましくはNは10、9、8、7、6、5、4、3または2以下、あるいは1または0である。ストップコドンはTAAもしくはTUU、TAGもしくはUAG、またはTGAもしくはUGAの3塩基で表され、本来この3塩基がフレームに収まり、ストップコドンとして認識される場合、ストップコドンという。しかしながら、塩基配列中に上記3塩基からなる配列が存在する場合、それらは、フレームがずれた結果ストップコドンとして認識される可能性があるので、本発明においては、現実にストップコドンとして機能していなくても、上記3塩基からなる配列をストップコドンと呼ぶことがある。
また、4塩基コドンの上流で-1塩基分フレームシフトが生じる場合がある。この現象は、タンパク質の生合成において、リボソームがmRNA上を3’側から5’側に逆戻りすることによると推定された。逆戻りが起こると、4塩基コドンの2、3および4番目からなる3塩基がコドンとして読まれ、非天然アミノ酸を導入することなく、以後目的アミノ酸配列を有するタンパク質が翻訳される。このような場合、4塩基コドンの上流に+1フレームでフレームをずらしてストップコドンに対応する配列を挿入すればよい。上流方向に進んだリボソームは、ストップコドンで停止し、タンパク質の翻訳は以後進まなくなる。ここで、+1フレームでストップコドンに対応する配列を挿入するとは、通常のリーディングフレームに対して、1塩基分下流にずらしてストップコドンに対応する配列を挿入することをいう。すなわち、4塩基コドン(4塩基コドンの5’側から数えて1番目の塩基)と上流のストップコドンに対応する配列(ストップコドンの5’側から数えて3番目の塩基)の間に2+3×N個の塩基が挿入される。ここで、Nは0または正の整数であり、Nの数に上限はなく、最終的にタンパク質合成が停止すればよいが、フレームシフトまたはリボソームの逆戻りが生じたタンパク質の合成を早く停止させる観点から、あまり大きくないほうがよい。好ましくはNは10、9、8、7、6、5、4、3または2以下、あるいは1または0である。
以下の説明において、塩基はA、G、CおよびTと、DNAの塩基を用いているが、mRNAの場合は、TをUに置換すればよい。
4塩基コドンの下流にストップコドンに対応する配列が挿入される場合、4塩基コドンに対応する4塩基の周辺のヌクレオチド配列はnp4塩基コドンnqT AAn(または、np4塩基コドンnqT GAn、np4塩基コドンnqT AGn)で表される。ここで、nは塩基A、G、CまたはTであり、pおよびqは塩基の数を示し、pは3×N個であり、qは2+3×N個(Nは0または任意の整数である)である。また、4塩基コドンの上流にストップコドンに対応する配列が挿入される場合、4塩基前後のヌクレオチド配列はnTA Anr4塩基コドンnp(または、nTG Anr4塩基コドンnp、nTA Gnr4塩基コドンnp)で表され、pおよびrは塩基の数を示し、pは3×N個であり、rは2+3×N個(Nは0または任意の整数である)。4塩基コドンの上流および下流にストップコドンに対応する配列が挿入される場合、ヌクレオチド配列はnTA Anr4塩基コドンnqT AAn(4塩基コドンの上流および下流のTAAは、TAGであってもTGAであってもよい)で表される。ここで、nは塩基A、G、CまたはTであり、qおよびrは塩基の数を示し、独立に2+3×N個(Nは0または任意の整数である)である。qおよびrは同じでも異なっていてもよい。例えば、nTA Anr4塩基コドンnqT AAnにおいて、N=0の場合、該配列はnTA Ann4塩基コドンnnT AAnで表される。
本発明において、上記の4塩基コドンの周辺の配列を有するDNAまたはmRNAを4塩基タグという。本発明は、該4塩基タグも含む。
さらに、本発明の方法において、4塩基コドンに対応する4塩基の直後および/または直前の3塩基コドンとして特定の塩基を挿入することにより、タンパク質合成の生産性および/または正確性を向上させることができる。
4塩基コドンの直後の3塩基コドン(直後コドンと称することがある)として、TTT、TCT、TAT、CTT、CCT、CAT、CGT、ATT、ACT、AAT、AGT、GTTおよびGCTが挙げられる。TGT、GATおよびGGTはタンパク質翻訳の正確性が低下するので、適切ではない。このうち、タンパク質の生産性の点からは、TCT、TAT、TGT、CTT、CCT、CAT、CGT、ATT、ACT、AATが好ましい。また、タンパク質翻訳の正確性の点からは、TCT、CAT、ACT、GTTおよびGCTが好ましい。タンパク質の生産性およびタンパク質翻訳の正確性の観点からは、TCTが特に好ましい。
4塩基コドンの直前の3塩基コドン(直前コドンと称することがある)として、ATC、ATA、ATG、ACT、ACC、ACA、AAC、AGT、AGC、AGAおよびAGGが挙げられる。ATT、ACG、AAT、AAAおよびAAGはタンパク質翻訳の正確性が低下するので、適切ではない。このうち、タンパク質の生産性の点からは、ATC、ATG、ACT、AACおよびAGTが好ましい。また、タンパク質翻訳の正確性の点からは、ATC、ATG、ACT、AGT、AGCおよびAGAが好ましい。特にAACおよびAGTが好ましく、前者は特にタンパク質生産性に優れ、後者は特にタンパク質翻訳の正確性に優れている。なお、4塩基コドン上流のストップコドンとして、TAAのみならず、TGAおよびTAGも用いることができるが、ストップコドンとしてTAGを用いた場合、直前コドンの3塩基の1番目のAはGとなる。
4塩基コドンの直後に上記の3塩基コドンを挿入する場合、直後コドンの3番目のTは4塩基コドンの下流のストップコドンの1番目の塩基となる。また、4塩基コドンの直前に上記の3塩基コドンを挿入する場合、直前コドンの1番目のAは、4塩基コドンの上流のストップコドンの3番目の塩基となる。
4塩基コドンの直後に上記3塩基コドンが挿入される場合、4塩基コドンの前後のヌクレオチド配列は、np4塩基コドンn1n2T AAn(または、np4塩基コドンn1n2T GAn、np4塩基コドンn1n2T AGn)で表される。ここで、n、n1およびn2は塩基A、G、CまたはTであり、pは塩基の数を示し、3×N個である。また、n1n2Tは上に挙げた4塩基コドンの直後の3塩基コドンから選択される。また、4塩基コドンの直前に上記3塩基コドンが挿入される場合、4塩基コドンの前後のヌクレオチド配列は、nTA An3n44塩基コドンnr(または、nTG An3n44塩基コドンnr、nTA Gn3n44塩基コドンnr)で表される。ここで、n、n3およびn4は塩基A、G、CまたはTであり、rは塩基の数を示し、3×N個である。また、n3n4Tは上に挙げた4塩基コドンの直後の3塩基コドンから選択される。さらに、4塩基コドンの直前および直後に上記3塩基コドンが挿入される場合、4塩基コドン前後のヌクレオチド配列は、nTA An3n44塩基コドンn1n2T AAn(4塩基コドンの上流および下流のTAAは、TAGであってもTGAであってもよい)で表される。ここで、n、n1、n2、n3、n4、npおよびnrの意味は上記の通りである。
上記の非天然アミノ酸に対応した4塩基コドンと4塩基コドン上流のストップコドンに対応する配列(上流ストップコドン)、4塩基コドン下流のストップコドンに対応する配列(下流ストップコドン)、4塩基コドン直前の3塩基コドン(直前コドン)、4塩基コドン直後の3塩基コドン(直後コドン)のいずれか一つ以上との組合せを4塩基タグという。4塩基タグの組合せとしては、以下の表に示す組合せがあり、本発明ではいずれの組合せを利用することもできる。表中、Xはそのコドンが4塩基タグに含まれることを意味する。
上流ストップコドン 直前コドン 4塩基コドン 直後コドン 下流ストップコドン
X X
X X
X X X
X X X
X X X X
X X X
X X X X X
本発明において、上記の4塩基の周辺の配列を有するDNAまたはmRNAを4塩基タグという。本発明は、該4塩基タグも含む。
本発明の方法で目的のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する場合、4塩基タグの下流に非天然タンパク質を導入しようとする目的のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAをインフレームで連結すればよい(目的のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAは開始コドンは含まない)。この際、4塩基タグの上流に開始コドンを連結し、さらにプロモーターを機能し得るように連結させてもよい。さらに、下流にターミネーターを機能し得るように連結させてもよい。タンパク質をコードするDNAまたはmRNA上の4塩基コドンの位置は、開始コドン(ATGまたはAUG)から数えて2〜33番目のコドン位置であり、好ましくは2〜25番目のコドン位置、2〜11番目のコドン位置または7〜11番目のコドン位置である。
また、この際、上記4塩基タグを目的のタンパク質以外のタンパク質の全部または一部をコードするDNAまたはmRNAの開始コドンの下流にインフレームで連結し、さらに4塩基コドンの下流にインフレームで連結してもよい。この場合も、プロモーターを機能し得るように連結させてもよい。さらに、下流にターミネーターを機能し得るように連結させてもよい。また、タンパク質をコードするDNAまたはmRNA上の4塩基コドンの位置は、開始コドン(ATGまたはAUG)から数えて2〜33番目のコドン位置であり、好ましくは2〜25番目のコドン位置、2〜11番目のコドン位置または7〜11番目のコドン位置である。目的タンパク質以外のタンパク質を用いる場合、該タンパク質はN末端から4塩基コドンを連結する前のコドンに対応する部分が翻訳される。該タンパク質は限定されないが、例えばチオレドキシン等が用いられる。すなわち、開始コドンの下流に、チオレドキシン等をコードするDNAまたはmRNAの開始コドンから2〜33番目のコドン、好ましくは、2〜25番目のコドン、2〜11番目のコドンまたは7〜11番目のコドン位置に対応するコドンまでを含むDNAまたはmRNAを連結し、その下流に4塩基タグを連結し、さらにその下流に非天然アミノ酸を導入しようとする目的のタンパク質のDNAまたはmRNAを連結すればよい。この場合、最終的な翻訳産物は、開始コドンに連結させた目的のタンパク質以外のタンパク質の全部または一部と非天然アミノ酸を導入した目的のタンパク質の融合タンパク質である。
本発明は、上記4塩基タグに非天然アミノ酸を導入しようとする目的のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAを連結した遺伝子構築物をも包含する。該構築物は、開始コドン、プロモーター、ターミネーター等を含んでいてもよい。プロモーターおよび開始コドンは4塩基タグの上流に含まれ、ターミネーターは4塩基タグの下流に含まれる。
なお、本発明の方法によれば、4塩基コドンに対応する非天然アミノ酸をN末端とする非天然アミノ酸導入タンパク質も合成される。これは、リボソームがmRNA上の4塩基コドン部位で一旦停止するか、あるいは移動速度が小さくなり、その際に既に合成されたポリペプチドがリボソームから分離し、非天然アミノ酸からタンパク質の合成が再開されるためであると考えられる。本発明は、このようにして合成される非天然アミノ酸をN末端に有するタンパク質の生産方法、タンパク質のN末端に非天然アミノ酸を導入する方法も包含する。
なお、本発明の方法において、タンパク質調製物中に、合成が停止したアミノ酸残基数の少ないポリペプチドや、4塩基コドンに対応する非天然アミノ酸の直前で切断されたアミノ酸をC末端とするポリペプチドができてくるが、これらは目的のタンパク質とは分子量が異なり、公知のタンパク質精製法により目的のタンパク質と容易に分離することができる。
上の説明は、主にDNAについての説明であり、DNAからmRNAを転写し、mRNAから目的のタンパク質を合成することもできるが、直接上記のようなコドン構成を有する4塩基タグを有するmRNAを合成し、該mRNAから目的のタンパク質を合成することもできる。
本発明の非天然アミノ酸のタンパク質への導入法においては、生細胞を用いた合成系および無細胞タンパク質合成系を利用することができるが、無細胞タンパク質合成系を利用することが好ましい。
生細胞によるタンパク質合成系により非天然型アミノ酸を導入したタンパク質を得るには、アミノアシルtRNA及びmRNAを細胞内へマイクロインジェクションにより注入する方法が知られており(Science, 268, p.439, 1995)、この手法により生細胞に本発明のタンパク質を発現させることができる。
無細胞翻訳系による合成は、発現させようとする遺伝子を含む発現ベクターを宿主細胞に導入することなく、in vitro で必要な試薬と混合し遺伝子を発現させることにより行うことができる(Spirin, A.S. et al, (1988)“A continuous cell-free translation system capable of production polypeptides in high yield” Science 242, 1162; Kim, D.M., et al., (1996)“A highly efficient cell-free protein synthesis system from E.coli” Eur.J.Biochem. 239, 881-886)。無細胞タンパク質合成系は、mRNAの有する遺伝情報を読み取ってリボソーム上でタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみをさす場合もあるし、DNAをテンプレートとしてRNAを合成する無細胞転写系と前記無細胞翻訳系の両方を包含するものをさす場合もある。無細胞翻訳系においては、生物抽出液が用いられる。生物抽出液とは、リボソーム、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、メチオニル-tRNAトランスフォルミラーゼ、3種類の翻訳開始因子(translation initiation factor;IF1、IF2、IF3)、3種類の翻訳伸長因子(translation elongation factor;EF-G、EF-Tu、EF-Ts)、3種類の翻訳終結因子(translation termination factor;RF1、RF2、RF3)、リボソームリサイクリング因子(RRF)、RNAポリメラーゼ等のタンパク質合成に必要な成分を含む生物の抽出液をいう。ここに挙げた以外のタンパク質を効率的な翻訳のために添加してもよく、当業者ならばより効率的な添加のために如何なるタンパク質を添加すればよいか決定できる。生物抽出液は、大腸菌由来のもの、コムギ胚芽由来のもの、ウサギ網状赤血球由来のもの、動物細胞や昆虫細胞由来のものいずれを用いてもよい。生物抽出液はフレンチプレスによる破砕またはグラスビーズを用いた破砕等によって得ることができる。大腸菌由来微生物抽出液としてはS30エクストラクトがあり、例えばPrattらの方法により得ることができる(Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford., 179-209 [1984])。S30エクストラクトは、リボソーム、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、メチオニル-tRNAトランスフォルミラーゼ、3種類の翻訳開始因子(translation initiation factor;IF1、IF2、IF3)、3種類の翻訳伸長因子(translation elongation factor;EF-G、EF-Tu、EF-Ts)、3種類の翻訳終結因子(translation termination factor;RF1、RF2、RF3)、リボソームリサイクリング因子(RRF)等を含む。無細胞タンパク質合成系は、上記生物抽出液の他、ATP再生系、プロモーターおよび発現させようとするタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドまたは発現させようとするタンパク質をコードするmRNA、tRNA、RNAポリメラーゼ、RNAアーゼ阻害剤、ATP、GTP、CTP、UTP等のエネルギー源、緩衝剤、アミノ酸、塩類、抗菌剤等を含んでいてもよく、それぞれの濃度は適宜決定すればよい。
ATP再生系は限定されず、公知のリン酸ドナーおよびキナーゼの組合せを用いることができる。この組合せとして例えば、ホスホエノールピルビン酸(PEP)-ピルビン酸キナーゼ(PK)の組合せ、クレアチンリン酸(CP)-クレアチンキナーゼ(CK)の組合せ、アセチルリン酸(AP)-アセテートキナーゼ(AK)の組合せ等が挙げられ、これらの組合せでATP再生系を無細胞タンパク質合成系に加えればよい。
無細胞タンパク質合成系には製造しようとするタンパク質をコードするmRNAも必要である。該mRNAは無細胞タンパク質合成系に核酸を転写する系、すなわち該タンパク質をコードするmRNAを産生する系を包含させてもよい。この場合は、DNAを添加する。また、別途mRNAを転写等により合成し、得られたmRNAを本発明の無細胞タンパク質合成系に含ませてもよい。mRNAの産生は、適当なプロモーターおよび該プロモーターの下流に位置する製造しようとするタンパク質をコードするDNAを含むプラスミドならびに該プロモーターに作用するRNAポリメラーゼにより達成できる。ここで、用いるプラスミドは限定されず、公知のものが用いられ、公知の遺伝子工学的手法により、適当なプロモーターやリボソーム結合部位等を導入して用いることができる。当業者ならば、本発明で用いるプラスミドを適宜選択し、また自ら設計して構築することができる。プロモーターは無細胞タンパク質合成系で用いる微生物が有する内在性のプロモーターを用いてもよいし、外来性のプロモーターを用いてもよい。プロモーターとしては、上記Trcプロモーター、T7プロモーターやTacプロモーターが効率の面で優れており好適に用いられる。
市販の無細胞発現キットを用いてタンパク質を発現させることができる。このようなキットとして例えば、Rapid Translation System (RTS) (Roche)やExpressway In Vitro Protein Synthesis System (Invitrogen)等がある。この際、用いる発現ベクターは限定されないが、それぞれの無細胞翻訳系に適したベクターがあるのでそれを使用すればよい。前者のキット用発現ベクターとして、pIVEX2.2bNdeが挙げられ、後者のキット用発現ベクターとして、pEXP1やpEXP2が挙げられる。
本発明は、さらに目的のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するために用いられるプラスミドを包含する。該プラスミドは、上記の4塩基タグを含み、4塩基タグの下流に目的のタンパク質をコードするDNAをインフレームで連結することができる。目的のタンパク質をコードするDNAを連結するためには、プラスミド中に適当な制限酵素が認識する配列を挿入すればよい。4塩基タグの上流には、開始コドンが存在し、また上記のように、チオレドキシン等の目的のタンパク質以外のタンパク質をコードするDNAを含んでいてもよい。この場合、タンパク質をコードするDNAまたはmRNA上の4塩基コドンの位置は、開始コドン(ATGまたはAUG)から数えて2〜33番目のコドン位置であり、好ましくは2〜25番目のコドン位置、2〜11番目のコドン位置または7〜11番目のコドン位置である。また、プロモーター、ターミネーター等を含んでいてもよい。該プラスミドを用いることにより、目的のタンパク質に非天然アミノ酸を導入することができる。本発明のプラスミドの例として、4塩基タグとしてTAAGTcgggTCTAAT(配列番号75)を含む3600bpの発現プラスミドpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)、4塩基タグとしてTAAACcgggTCTAAT(配列番号76)を含む3600bpの発現プラスミドpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)が挙げられる。図13にpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)の制限酵素地図を、図14にpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)の制限酵素地図を示す。さらに、配列番号77にpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)の全長塩基配列を、配列番号78にpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)の全長塩基配列を示す。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1.ストレプトアビジンのTyr83部位へのBODIPY FL標識化アミノフェニルアラニンまたはTAMRA-X標識化アミノフェニルアラニンの導入
N末端にT7TagおよびC末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであって、Tyr83部分のコドンを標識化アミノ酸をコードするCGGGに置換したもの(T7-SA83CGGG-His、配列番号63)をPCR法にて作製し50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、BODIPY-FL-X-アミノフェニルアラニン(Baf)でアミノアシル化されたtRNACCCG(Baf-tRNACCCG)溶液を1μL混合し、37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。翻訳反応液1μLに、水9μLと2×サンプルバッファー10μLを加え、95℃、5分間加熱した。このうちの5μLを15% SDS-PAGEに流し、終了後、蛍光スキャナー(日立ソフトエンジニアリング社製FMBIOIII、励起光488nm、蛍光フィルター555/530)で観察した。同じゲルについて、抗T7tag抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。Baf-tRNACCCGを加えて翻訳反応を行なった場合、ウエスタンブロット分析において野生型ストレプトアビジンと同じ位置にバンドが見られること、及び、そのバンドが蛍光を発することから、Baf がストレプトアビジンへ導入されたことが確認された。
TAMRA-X-アミノフェニルアラニン(Taf)でアミノアシル化されたtRNACCCG(Taf-tRNACCCG)を加えて転写・翻訳反応行った場合、蛍光スキャナーで目的位置にバンドが検出されず、Bafに比べて、ウェスタンブロッティングで検出される蛋白質量が非常に低かった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図1に示す。
2.チオレドキシンの開始メチオニン直下へのTAMRA-X-アミノフェニルアラニンの導入
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、C末端にHisTagを付加したチオレドキシンのDNAであって、開始ATGの直下にCGGGを挿入したもの(TrX-2CGGG-His、配列番号64)をPCR法にて作製し50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、Taf-tRNACCCG溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。Taf-tRNACCCGを加えて反応を行なった場合、目的位置に蛍光バンドが検出され、Tafの導入が確認できた。但し、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析においてTaf-tRNACCCGを添加しない場合でも、Taf-tRNACCCGを添加した場合と同程度の目的サイズのチオレドキシンが検出された。この結果から、Taf-tRNACCCGを添加した場合に生産されているチオレドキシンの大部分が蛍光標識されていないことが予想された。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図2Aに示す。
上記同様に、ストレプトアビジンの開始メチオニン直下にCGGGを挿入したもの(SA-2CGGG-His、配列番号65)をPCR法にて作製し、種々蛍光物質のFluorescein, Cy3, Cy5などの導入を試みた。それぞれの蛍光物質に対応するAF-tRNACCCGを作製し、導入試験に供した結果、分子量が異なる何れの蛍光物質ともストレプトアビジンの開始メチオニン直下へ効率よく導入できることが判った(図2B)。
実施例1、2よりタンパク質のN末端領域は非天然アミノ酸の基質選択性が広く、分子量が大きく導入されにくい蛍光物質もN末端領域には効率よく導入されることを明らかとした。しかし、N末端領域は基質特異性が広いことが原因となり、この領域でフレームシフトが起こり目的とする蛍光色素が導入されないタンパク質も合成されることが分った。
図3A〜3Fにそれぞれの蛍光物質の構造、それぞれの蛍光物質をアミノフェニルアラニンに結合させた場合の分子量(FL-AF)、蛍光物質の分子量(FL)、開始コドンから83番目のアミノ酸位置への導入の可否、および開始コドン直下への導入の可否(○は導入が容易であったこと、△は導入が困難であったことを示す)を示す。
3.チオレドキシンの開始メチオニン直下へのTAMRA標識化アミノフェニルアラニンの導入(4塩基コドン下流の+2フレームにストップコドン導入)
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、C末端にHisTagを付加したチオレドキシンのDNAであって、開始ATGの直下にCGGGとその2塩基下流にTAAを挿入したもの(Trx-2CGGG-TAA-His、配列番号66)をPCR法にて作製し50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、TAMRA標識アミノアシル-tRNAアミノアシル-tRNA溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図4に示す。
Taf-tRNACCCGを加えて反応を行なった場合、目的位置に蛍光バンドが検出され、Tafの導入が確認できた。但し、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析において蛍光標識アミノアシルtRNAを添加しない場合でも、蛍光標識アミノアシルtRNAを添加した場合と同程度の目的サイズのチオレドキシンが検出されたが、そのシグナルの強度は、図2に比べ低くなっていることから、4塩基コドン下流の+2フレームのTAAの効果が出ているものと推測された。
4.チオレドキシンのN末から7番目へのTAMRA標識化アミノフェニルアラニンの導入(4塩基コドン下流の+2フレームにストップコドン導入)
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、C末端にHisTagを付加したチオレドキシンのDNAであって、開始ATGの下流7コドン目にCGGGとその2塩基下流にTAAを挿入したもの(Trx-7CGGG-TAA-His、配列番号67)をPCR法にて作製し50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、Taf-tRNACCCG溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図4に示す。
Taf-tRNACCCGを加えて反応を行なった場合、目的位置に蛍光バンドが検出され、Tafの導入が確認できた。抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析においてTaf-tRNACCCGを添加しない場合では、殆どシグナルが検出されないことから、チオレドキシンのN末から7番目にCGGGを、またその下流+2フレームをTAAとすることにより、正確性が飛躍的に上昇した。
5.4塩基の上流+1と下流+2にストップコドンの導入
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、N末端にチオレドキシンのN末端配列(5コドン)、C末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであって、チオレドキシンのN末端配列の直下にAAC CGGG AGT AAT GAG(配列番号56)を挿入したもの((Trx5)-AAC-CGGG-AGT-AAT-GAG)、また、チオレドキシンのN末端配列の直下にGTA AAC CGGG AGT AAT GAG(配列番号57)を挿入したもの((Trx5)-GTAAAC-CGGG-AGT-AAT-GAG)をPCR法にて作製した。
作製したDNAを50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、Taf-tRNACCCG溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。4塩基コドンの上流に+1フレームフレームでストップコドン(TAA)の挿入がないもの(配列番号68)とあるもの(配列番号69)、いずれの場合も目的位置に蛍光バンドが検出された。但し、配列番号68の配列を用いたときは、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析においてTaf-tRNACCCGを添加しない場合でも、目的サイズのストレプトアビジンが検出された。しかし、配列番号69の配列を用いたときは、Taf-tRNACCCGを添加しない場合では、目的サイズのストレプトアビジンの検出量は大きく減少した。この結果から、4塩基コドン上流に+1フレームでストップコドンを挿入することで、蛍光標識されないストレプトアビジンの翻訳を抑制することができ、生産される蛍光標識蛋白質の正確性を向上させることができる。これは4塩基コドンの上流で自発的に+1フレームシフトが生じた場合、挿入された+1フレームフレームのストップコドンが翻訳を停止させるためだと考えられる。
また、配列番号68の配列と配列番号69の配列では、もともと4塩基コドンの6コドン上流の+1フレームフレームにストップコドンがあるために、Taf-tRNACCCGを加えない場合の目的サイズのストレプトアビジンの検出量は少なかった。しかし、4塩基コドンの2コドン上流の+1フレームフレームにストップコドンを挿入した配列番号69の配列では、さらにその検出量が低下していた。この結果より、4塩基コドン直前の+1フレームフレームにストップコドンを挿入することで、生産される蛍光標識蛋白質の正確性をさらに向上させることができる。
ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図5に示す。
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、N末端にFLAGtag、C末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであって、FALG配列の直下にAGT CGGG AGT AAC(配列番号58)を挿入したもの(FLAG-AGT-CGGG-AGT-AAC-SA-His、配列番号70)、また、FLAG配列の直下にGTA AGT CGGG AGT AAC(配列番号59)を挿入したもの(FLAG-GTA-AGT-CGGG-AGT-AAC-SA-His、配列番号71)をPCR法にて作製した。作製したDNAを50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、Taf-tRNACCCG溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図6に示す。
チオレドキシンのN末端配列を用いた結果と同様に、FLAGtagのN末端配列でもTafは効率よく導入でき、4塩基コドンの2コドン上流の+1フレームフレームにストップコドン挿入や、4塩基コドン直前の+1フレームフレームにストップコドンの挿入は正確性を向上することが明らかとなった。このことより、チオレドキシン配列に限らず普遍的にタンパク質のN末端領域に分子量の大きな非天然アミノ酸は効率よく導入されること、およびNTAA(or TAG or TGA)NN 4塩基コドン NNTAA(or TAG or TGA)N (NNは任意の塩基)(配列番号60および61)なる配列は遺伝子からのタンパク質翻訳の正確性を飛躍的に向上することが明らかとなった。
6.4塩基タグの配列の最適化による生産性・正確性向上(1)
5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、N末端にチオレドキシンの上流配列(1〜41コドン(開始ATGコドンを含む))、C末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであって、チオレドキシン配列(配列番号73、配列番号73に示す配列はC末端にヒスチジンタグ配列を含む)の直下にGTA AAC CGGG AGT AAT GAG(配列番号72)を挿入したもの(配列番号14〜53で表される配列の直下にストレプトアビジンの配列(配列番号74、配列番号74に示す配列はC末端にヒスチジンタグ配列を含むを付加したもの)をPCR法にて作製した。作製したDNAを50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を8μL、Taf-tRNACCCG溶液を1μL混合した。37℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図7に示す。
この場合、配列番号14〜35に表される配列を用いた場合においては目的位置に蛍光バンドが検出された。また、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析においてTaf-tRNACCCGを添加しない場合でも、目的サイズのストレプトアビジンが検出されるものもあった。この結果から、Tafは、N末端から25番目程度までのコドン位置に導入可能であること、その中でも配列番号17から21で表される配列では特に正確性、生産性が向上することが確認できる。
一方、配列番号22〜44および51で表される配列を用いた場合には、目的位置よりも分子量の小さな蛍光のバンドが確認され、これはチオレドキシン配列を含まずにTafがN末端に導入されたストレプトアビジンであると考えられる。その中でも配列番号26から37に表される配列では特に発現量が多く、そのようなタイプの蛍光標識タンパク質を生産するために適した、N末端タグ配列として利用できることが判った。
さらに、配列17から21で表される配列については直下にストレプトアビジンのほかにチオレドキシンの配列を付加して同様に検討をおこなった。また、合わせてその結果、ストレプトアビジン、チオレドキシンともに配列番号19で表される配列を持つものの生産性が向上していた。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図8、9および10に示す。
7.4塩基タグの配列の最適化による生産性・正確性向上(2)
4塩基CGGGの直後配列の最適化を試みる目的で、5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、C末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであり、ATG直下に TCT AAA CAA ATC GAA GTA AAC CGGG NNT AAT GAG ACC(NはA,C,G,Tのいずれか)(配列番号63)を挿入した16種類のDNAをPCR法で作製し、50ng/μLに調製したものを1μL、大腸菌抽出液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を3.5μL、Taf-tRNACCCG溶液を0.5μL混合した。30℃で4時間転写・翻訳反応を行なった。反応終了後、上記同様に蛍光スキャナーで観察した。さらに同じゲルについて、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析を行なった。この場合、直後配列においても目的位置に蛍光バンドが検出されたが、特に直後コドンがTCTの場合の蛍光バンド強度が強かった。また、抗His抗体を用いたウエスタンブロット分析においてTaf-tRNACCCGを添加しない場合、直後コドンTCTでは目的サイズのストレプトアビジンは、ほとんど検出されなかった。これらの結果から、4塩基CGGGの直後コドンをTCTとした場合には、正確性、生産性を飛躍的に向上できることが明らかとなった。ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図11に示す。
4塩基CGGGの直前配列の最適化を試みる目的で、5’上流域にT7プロモータ配列、3’下流域にT7ターミネーター配列、C末端にHisTagを付加したストレプトアビジンのDNAであり、ATG直下にCGGGの直後配列をTCTに固定した TCT AAA CAA ATC GAA GTA ANN CGGG TCT AAT GAG ACC(NはA,C,G,Tのいずれか)(配列番号64)(本発明において、NN-cggg配列と呼ぶ)を挿入した16種類のDNAをPCR法で作製し、上記同様に検討を行った。その結果、直前コドンをAACとした場合には、生産性と正確性が良く、直前コドンをAGTとした場合には、AACに比べ生産性が若干低下するが正確性が飛躍的に向上した。
ウエスタンブロットおよび蛍光検出の結果を図12に示す。
8. 発現プラスミドの構築
本発明の4塩基タグを含み、4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質をコードするDNAを連結させることができる、タンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミドを構築した。4塩基タグとしてTAAGTcgggTCTAAT(配列番号75)を含む3600bpの発現プラスミドとしてpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)を構築し、4塩基タグとしてTAAACcgggTCTAAT(配列番号76)を含む3600bpの発現プラスミドとしてpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)を構築した。
プラスミドpIVEX2.3d(ロシュ・ダイアグノスティクス(株))を制限酵素NcoIとSmaIで処理し、得られた3522bpの断片に、CATGTCTAAACAAATCGAAGTAAGTCGGGTCTAATGAGaccatggcacatatgagcggccgcctcgactcgagcgagctccc(配列番号79)と、gggagctcgctcgagtcgaggcggccgctcatatgtgccatggtCTCATTAGACCCGACTTACTTCGATTTGTTTAGA(配列番号80)をアニールさせた後に、T4リガーゼを用いて連結させ、プラスミドpROX-FL91を得た。同様に、プラスミドpIVEX2.3d(ロシュ・ダイアグノスティクス(株))を制限酵素NcoIとSmaIで処理し、得られた3522bpの断片に、CATGTCTAAACAAATCGAAGTAAACCGGGTCTAATGAGaccatggcacatatgagcggccgcctcgactcgagcgagctccc(配列番号81)と、gggagctcgctcgagtcgaggcggccgctcatatgtgccatggtCTCATTAGACCCGGTTTACTTCGATTTGTTTAGA(配列番号82)をアニールさせた後に、T4リガーゼを用いて連結させ、プラスミドpROX-FL92を得た。
図13にpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)の制限酵素地図を、図14にpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)の制限酵素地図を示す。さらに、配列番号77にpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)の全長塩基配列を、配列番号78にpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)の全長塩基配列を示す。
TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、TAMRA標識アミノ酸がストレプトアビジンの83番目のアミノ酸位置に導入されないことを示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、TAMRA標識アミノ酸がストレプトアビジンのN末端部位に導入されるが、導入の正確性が低いことを示す図である。 種々の蛍光物質により標識したアミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その1)である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その2)である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その3)である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その4)である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その5)である。 種々の蛍光物質の構造等を示す図(その6)である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、N末端が4塩基コドンであり4塩基コドンの下流にストップコドンを挿入した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、N末端から7番目のコドンが4塩基コドンであり4塩基コドンの下流にストップコドンを挿入した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、4塩基コドンの上流および下流にストップコドンを挿入した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、4塩基コドンの上流および下流にストップコドンを挿入し、4塩基コドンの位置を変えた場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、チオレドキシンのN末端から7から11番目のコドンを4塩基コドンとし、その下流にストレプトアビジンを連結した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、チオレドキシンのN末端から7から11番目のコドンを4塩基コドンとし、その下流にチオレドキシンを連結した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、チオレドキシンのN末端から7から11番目のコドンを4塩基コドンとし、その下流にストレプトアビジンまたはチオレドキシンを連結した場合の導入タンパク質の蛍光強度を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、4塩基コドンの上流および下流にストップコドンを挿入し、さらに4塩基コドンの下流に種々のコドンを挿入した場合の結果を示す図である。 TAMRA標識アミノ酸の4塩基コドン法によるタンパク質への導入の結果を示す図であり、4塩基コドンの上流および下流にストップコドンを挿入し、さらに4塩基コドンの上流に種々のコドンを挿入した場合の結果を示す図である。 発現プラスミドpROX-FL91(TAAGTcgggTCTAAT)の制限酵素地図を示す図である。 発現プラスミドpROX-FL92(TAAACcgggTCTAAT)の制限酵素地図を示す図である。
配列番号1から62、64から72および75から82:合成

Claims (33)

  1. タンパク質合成時にタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法であって、非天然アミノ酸の分子量は500以上であり、非天然アミノ酸の導入位置がタンパク質のアミノ酸配列のN末端から33番までの任意な位置であり、
    (i) タンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンの直下から33番目までのコドンの任意な位置に4つ以上の連続した塩基からなる、非天然アミノ酸に割り当てられた4塩基コドンを挿入し、
    (ii) タンパク質の翻訳過程においてフレームシフトが生じたときにタンパク質の翻訳が停止するように、
    (a) 上記4塩基コドンの上流に+1フレームのストップコドンが含まれ、該4塩基コドンとストップコドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入され、
    (b) 上記4塩基コドンの下流に+2フレームのストップコドンが含まれ、該4塩基コドンとストップコドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入されており、
    上記の4塩基コドンを認識するtRNAであって非天然アミノ酸を結合したtRNAを介して該タンパク質の翻訳を行うことを含む、タンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  2. 非天然アミノ酸の導入位置がタンパク質のアミノ酸配列のN末端から数えて7番目から11番目までの任意な位置であり、タンパク質をコードするDNAまたはmRNA塩基配列のATGまたはAUG開始コドンから数えて7番目のコドンから11番目のコドンの任意な位置に4つ以上の連続した塩基からなる、非天然アミノ酸に割り当てられた4塩基コドンを挿入する、請求項記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  3. 無細胞系タンパク質合成系を用いる、請求項1または2に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  4. 非天然アミノ酸が蛍光性アミノ酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  5. 非天然アミノ酸が蛍光標識されたアミノフェニルアラニンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  6. 塩基コドンと4塩基コドンの上流および下流に存在するストップコドンを含む4塩基タグであって、
    (a) 4塩基コドンの上流に+1フレームストップコドンが含まれ、該4塩基コドンとストップコドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入され、
    (b) 上記4塩基コドンの下流に+2フレームのストップコドンが含まれ、該4塩基コドンとストップコドンの間に2+3×N個(Nは0または正の整数)の塩基が挿入された構造を有する4塩基タグを含むDNAまたはmRNAであって、前記4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入する目的タンパク質をコードする遺伝子がインフレームとなるように連結されたDNAまたはmRNAを用いる請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  7. 4塩基タグが、nストップコドンnr4塩基コドンnqストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、p、qおよびrは塩基の数を示し、pは3×N個でrおよびqは独立に2+3×N個(Nは0または任意の整数である)であり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGである請求項記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  8. 4塩基タグが、nTA Ann4塩基コドンnnT AAnで表されるDNAまたはnUA Ann4塩基コドンnnU AAnで表されるmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUである、請求項記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  9. nストップコドンn3n44塩基コドンn1n2ストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、n、n1、n2、n3およびn4は塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGであるDNAまたはmRNAからなる4塩基タグにおいて、n3n4で表される配列がTCもしくはUC、TAもしくはUA、TGもしくはUG、CTもしくはCU、CC、CA、AC、GTもしくはGU、GC、GAおよびGGからなる群から選択され、n1n2で表される配列がTTもしくはUU、TCもしくはUC、TAもしくはUA、CTもしくはCU、CC、CA、CG、ATもしくはAU、AC、AA、AG、GTもしくはGUおよびGCからなる群から選択される、請求項のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  10. n3n4で表される配列がACまたはGTもしくはGUであり、n1n2で表される配列がTCもしくはUCである、請求項記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  11. 4塩基タグがnTAAAC4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAAC4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、請求項10記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  12. 4塩基タグがnTAAGT4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAGU4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、請求項10記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  13. 4塩基コドンがCGGGである請求項1〜12のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  14. 4塩基タグの上流に任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAのATGまたはAUG開始コドンを含む部分塩基配列を含み、4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入しようとする目的タンパク質がインフレームとなるように連結している、請求項13のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  15. 4塩基タグの上流の任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAがチオレドキシンをコードするDNAまたはmRNAである請求項14記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  16. 4塩基コドンから始まるタンパク質の翻訳が起こり、非天然アミノ酸が非天然アミノ酸を導入しようとする目的タンパク質のN末端に導入されることを特徴とする請求項14または15に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入する方法。
  17. nストップコドンnr4塩基コドンnqストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、p、qおよびrは塩基の数を示し、pは3×N個でrおよびqは独立に2+3×N個(Nは0または任意の整数である)であり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGであるDNAまたはmRNAからなる4塩基タグ。
  18. nTA Ann4塩基コドンnnT AAnで表されるDNAまたはnUA Ann4塩基コドンnnU AAnで表されるmRNAであり、nは塩基A、G、CまたはTもしくはUであるDNAまたはmRNAからなる請求項17記載の4塩基タグ。
  19. nストップコドンn3n44塩基コドンn1n2ストップコドンnで表されるDNAまたはmRNAであり、n、n1、n2、n3およびn4は塩基A、G、CまたはTもしくはUであり、ストップコドンがTAAもしくはUAA、TGAもしくはUGAまたはTAGもしくはUAGである4塩基タグにおいて、n3n4で表される配列がTCもしくはUC、TAもしくはUA、TGもしくはUG、CTもしくはCU、CC、CA、AC、GTもしくはGU、GC、GAおよびGGからなる群から選択され、n1n2で表される配列がTTもしくはUU、TCもしくはUC、TAもしくはUA、CTもしくはCU、CC、CA、CG、ATもしくはAU、AC、AA、AG、GTもしくはGUおよびGCからなる群から選択されるDNAまたはmRNAからなる4塩基タグ。
  20. n3n4で表される配列がACまたはGTもしくはGUであり、n1n2で表される配列がTCもしくはUCである、請求項19記載の4塩基タグ。
  21. nTAAAC4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAAC4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、請求項20記載の4塩基タグ。
  22. nTAAGT4塩基コドンTCTAAnまたはnUAAGU4塩基コドンUCUAAnで表され、nはA、G、CまたはTもしくはUである、請求項20記載の4塩基タグ。
  23. 4塩基コドンがCGGGである請求項1722のいずれか1項に記載の4塩基タグ。
  24. 少なくとも請求項1723のいずれか1項に記載の4塩基タグおよび4塩基タグの上流にATGまたはAUG開始コドンを含む遺伝子コンストラクト。
  25. 請求項1723のいずれか1項に記載の4塩基タグを含み、4塩基タグの下流に非天然アミノ酸を導入しようとするタンパク質をコードするDNAを連結させることができる、タンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  26. 4塩基タグの上流にATGまたはAUG開始コドンおよびプロモーターを含み、開始コドンの直下から33番目までのコドンの任意な位置に4塩基タグ中の4塩基コドンが位置する、請求項25記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  27. 開始コドンから数えて7番目のコドンから11番目のコドンの任意な位置に4塩基タグ中の4塩基コドンが位置する、請求項26記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  28. 4塩基タグの上流に任意のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAのATGまたはAUG開始コドンを含む部分塩基配列を含む、請求項26または27に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  29. 4塩基タグの上流の任意のタンパク質をコードするDNAがチオレドキシンをコードするDNAである請求項28記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  30. 下記の制限酵素地図を有し、4塩基タグとしてTAAGTCGGGTCTAAT(配列番号75)で表される配列を有する請求項2529のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
    Figure 0004897265
  31. 下記の制限酵素地図を有し、4塩基タグとしてTAAACCGGGTCTAAT(配列番号76)で表される配列を有する請求項2529のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
    Figure 0004897265
  32. 配列番号77で表される塩基配列を有する請求項2530のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
  33. 配列番号78で表される塩基配列を有する請求項2529および31のいずれか1項に記載のタンパク質に非天然アミノ酸を導入するための発現プラスミド。
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