JP4887498B2 - 骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体 - Google Patents

骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体 Download PDF

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Description

本発明は、歩行装置を用いて、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索を行うためのシステムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体に関する。
現在、日本国内では約1000万人以上の骨粗鬆症患者が存在するといわれている。骨粗鬆症患者は、歩行等の運動機能の低下ならびに運動機能の低下が原因による骨折に起因する寝たきりが社会問題となっている。したがって、骨粗鬆症の治療薬の開発が急務である。
また、癌患者の生存率の上昇に伴い、骨転移癌の症例が増加している。骨転移癌の症例の主な特徴は、(i)骨破壊とそれに伴う骨折と寝たきり、(ii)免疫作用や造血作用の低下と易感染症の拡大、(iii)激しい疼痛、である。
骨転移癌は癌疾患の中でも難治性であり、根治的な治療が難しいといわれている。骨転移癌の治療は、外科的除去、放射線療法、および化学療法による治療に大別されるが、このうち最も侵襲性が低い化学療法による治療が汎用されている。しかしながら、現在までに、副作用が少なくかつ治療効果が高い治療薬の開発には至っていない。
骨粗鬆症の病態観察は一般に、骨粗鬆症モデルマウスのX線像や骨密度の測定により行われている。同様に、骨転移癌においても、病態観察は一般に骨転移癌モデルマウスを用いて行われている(特開2003−21631号公報)。しかしながら、この方法では、骨の状態の観察や骨密度の測定を行なうことができるが、痛み、安全性、運動機能、健康状態および病理状態などを定量的に数値化することができない。
すなわち、現状は、骨粗鬆症や骨転移癌等の骨系統疾患のための定量的な病態評価方法や骨系統疾患治療薬のための有効な薬効評価方法が存在しない。このため、前臨床試験で用いることができる骨系統疾患のための有効な病態評価方法および骨系統疾患治療薬の探索のための有効な薬効評価方法が求められている。
特開2003−21631号公報
本発明の目的は、定量的な病態評価および/または薬効評価を行なうことができる、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体を提供することである。
本発明の一態様に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムは、
候補物質が投与された被験動物の走行を下方より撮影するための動画カメラと、モータで駆動され任意の速度に調整可能である透明な歩行板とを含む歩行装置と、
前記動画カメラにより撮影され、前記歩行板から前記被験動物の肢が離地するタイミングを含む、該被験動物の肢の動きに関する動画像を取得する動画像取得部と、
前記動画像を静止画像に変換する静止画像作成部と、
前記静止画像を解析して解析結果を得る静止画像解析部と、
前記解析結果に基づいて骨系統疾患の病態および/または候補物質の薬効を評価する評価部と、
を含む。
上記システムにおいて、前記静止画像作成部は、前記被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、前記離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ前記静止画像を取得し、前記静止画像解析部は、前記複数のセットのセット毎に、前記静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部と、前記STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示す離地時間指数(STI)を作成するSTI算出部と、前記所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、前記ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部と、を含むことができる。
この場合、前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物のSTI頻度の最大値と、疾患群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
また、この場合、前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物の線形パターンの面積と、疾患群の線形パターンの面積とを比較し、前記被験動物の線形パターンの面積が疾患群の線形パターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
さらに、この場合、前記評価部は、前記被験動物のSTI頻度の最大値と、正常群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
あるいは、この場合、前記評価部は、前記被験動物の線形パターンの面積と、正常群の線形パターンの面積とを比較し、前記被験動物の線形パターンの面積が正常群の線形パターンの面積より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記システムにおいて、前記静止画像解析部は、候補物質が投与された前記被験動物の所定時間における歩数を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩数と疾患群の歩数とを比較し、前記被験動物の歩数が疾患群の歩数より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
上記システムにおいて、前記静止画像解析部は、候補物質が投与された前記被験動物の所定時間における歩幅平均を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩幅平均と疾患群の歩幅平均とを比較し、前記被験動物の歩幅平均が疾患群の歩幅平均より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
上記システムにおいて、前記静止画像解析部は、所定時間における前記被験動物の歩数を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩数と正常群の歩数とを比較し、前記被験動物の歩数が正常群の歩数より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記システムにおいて、前記静止画像解析部は、所定時間における前記被験動物の歩幅平均を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩幅平均と正常群の歩幅平均とを比較し、前記被験動物の歩幅平均が正常群の歩幅平均より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記システムにおいて、前記骨系統疾患が骨粗鬆症または骨転移癌であることができる。
本発明の一態様に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラムは、
候補物質が投与された被験動物が歩行板から肢を離地するタイミングを含む、前記被験動物の肢の動きに関する動画像を取得する動画像取得部と、
前記動画像を静止画像に変換する静止画像作成部と、
前記静止画像を解析して解析結果を得る静止画像解析部と、
前記解析結果に基づいて骨系統疾患の病態および/または候補物質の薬効を評価する評価部と、
を含む。
上記プログラムにおいて、前記静止画像作成部は、前記被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、前記離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ前記静止画像を取得し、前記静止画像解析部は、前記複数のセットのセット毎に、前記静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部と、前記STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示す離地時間指数(STI)を作成するSTI算出部と、前記所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、前記ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部と、を含むことができる。
この場合、前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物のSTI頻度の最大値と、疾患群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
また、この場合、前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物のSTRパターンの面積と、疾患群のSTRパターンの面積とを比較し、前記被験動物のSTRパターンの面積が疾患群のSTRパターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
さらに、この場合、前記評価部は、前記被験動物のSTI頻度の最大値と、正常群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
あるいは、この場合、前記評価部は、前記被験動物のSTRパターンの面積と、正常群のSTRパターンの面積とを比較し、前記被験動物のSTRパターンの面積が正常群のSTRパターンの面積より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記プログラムにおいて、前記静止画像解析部は、候補物質が投与された前記被験動物の所定時間における歩数を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩数と疾患群の歩数とを比較し、前記被験動物の歩数が疾患群の歩数より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
上記プログラムにおいて、前記静止画像解析部は、候補物質が投与された前記被験動物の所定時間における歩幅平均を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩幅平均と疾患群の歩幅平均とを比較し、前記被験動物の歩幅平均が疾患群の歩幅平均より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
上記プログラムにおいて、前記静止画像解析部は、前記被験動物の所定時間における歩数を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩数と正常群の歩数とを比較し、前記被験動物の歩数が正常群の歩数より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記プログラムにおいて、前記静止画像解析部は、前記被験動物の所定時間における歩幅平均を取得し、前記評価部は、前記所定時間における前記被験動物の歩幅平均と正常群の歩幅平均とを比較し、前記被験動物の歩幅平均が正常群の歩幅平均より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断することができる。
上記プログラムにおいて、前記骨系統疾患が骨粗鬆症または骨転移癌であることができる。
本発明の一態様に係るコンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体は、上記プログラムを記憶する。すなわち、上記情報記憶媒体には、コンピュータを機能させるための上記プログラムが記憶される。
本発明において、情報記憶媒体とは、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、ハードディスク、メモリカード、メモリーカセット、磁気ディスク、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。
上記骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体を用いて、被験動物の歩行パターンを解析することにより、定量的な病態評価および/または薬効評価を行なうことができる。したがって、上記システム、プログラム、ならびに情報記憶媒体を用いることにより、例えば前臨床試験において候補物質の薬効を有効に評価することができる。これにより、次世代の臨床試験における開発中止に関わる莫大な開発リスクを軽減することができる。
また、上記骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体を用いて、骨粗鬆症や骨転移癌等の骨系統疾患における痛み、安全性、運動機能、健康状態および病理状態の定量的評価を行なうことができる。
以下、本発明の一実施形態に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体について詳細に説明する。
1.骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体
1.1.システムの構成
図1は、本発明の一実施形態に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム(以下、単に「システム」ともいう。)の構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態に係るシステムは、骨系統疾患(例えば、骨粗鬆症、骨転移癌、リウマチ、変形性関節炎、ページェット病、多発性骨髄腫)の治療薬の探索に用いることができ、特に、骨粗鬆症、骨転移癌の治療薬の探索に好適である。なお、候補物質の種類および投与方法は特に限定されない。
本実施形態に係るシステムは例えば、図1に示すように、歩行装置1と、処理部100と、各種のデータを記録保持する記憶部170と、入力部190と、出力部192と、情報記憶媒体180とを含む。
歩行装置1は、下方より被験動物の走行を撮影するための動画カメラ5と、モータで駆動され任意の速度に調整可能である透明な歩行板とを含む。歩行板としては、例えば、後述するランニングホイールやトレッドミルが挙げられる。すなわち、歩行装置1で撮影された動画像は、処理部100へと送られ、処理部100にて該動画像が解析され、かつ、被験動物の肢の動きに基づく病態評価および/または薬効評価が得られる。
処理部100は例えば、パーソナルコンピュータ、エンジニアリングワークステーション、大型計算機、モバイルコンピュータである。記憶部170は、処理部100のワーク領域となるもので、例えば、ハードディスク装置、揮発性メモリ、不揮発性メモリである。
入力部190としては、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、タッチペン等の公知の入力装置が挙げられ、出力部192としては、例えばディスプレイ、プリンタ等の出力装置が挙げられる。
記憶部170は例えば、動画像記憶部170、静止画像記憶部172、STR(離地時間比:swing time ratio)・STI(離地時間指数:swing time index)173、歩数記憶部174、歩幅平均記憶部175、走行時間記憶部176、ヒストグラム記憶部177、線形パターン記憶部178、パターン面積記憶部179a、STI頻度最大値記憶部179b、およびデータベース160を含むことができる。
処理部100は、CPU、ROM、RAMを中心に構成され、ROM内に格納されている制御プログラムを実行することにより、以下に述べる各部101〜111として機能する。すなわち、処理部100は、ROM内に格納されている制御プログラムを実行することにより、動画像取得部101、静止画像作成部102、静止画像解析部103、評価部110、および動画カメラ制御部111として機能することができる。
動画像取得部101は、歩行装置1の動画カメラ5により撮影され、被験動物が歩行板から肢を離地するタイミングを含む、被験動物の肢の動きに関する動画像を取得する。静止画像作成部102は、動画像を静止画像に変換する。評価部110は、解析結果に基づいて骨系統疾患の病態および/または候補物質の薬効を評価する。
病態評価および/または候補物質の薬効を評価するための解析結果としては、例えば、(i)所定時間内での被験動物の左右の肢の離地時間の比、(ii)歩数、および(iii)歩幅平均が挙げられる。それぞれについて以下に説明する。また、
(i)被験動物の左右の肢の離地時間の比
評価部110が、被験動物の左右の肢の離地時間の比に基づいて病態評価および/または薬効評価を行なう場合、静止画像作成部102、静止画像解析部103、および評価部110はそれぞれ以下の機能を有することができる。
静止画像作成部102は、被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ前記静止画像を取得する。
静止画像解析部103は、複数のセットのセット毎に、静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(離地時間比:STR)を作成するSTR算出部104と、STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示す離地時間指数(STI)を作成するSTI算出部105と、所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部106と、ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部107とを含む。
この場合、評価部110は、本実施形態に係るシステムにより得られた、候補物質を投与された被験動物のSTI頻度の最大値(線形パターンの最大高さ)と、データベース160に格納された疾患群のSTI頻度の最大値とを比較し、被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値より大きい場合、この候補物質を薬効有りと判断することができ、被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値以下である場合、この候補物質を薬効なしと判断することができる。
また、この場合、評価部110は、本実施形態に係るシステムにより得られた、被験動物のSTI頻度の最大値(線形パターンの最大高さ)と、データベース160に格納された正常群のSTI頻度の最大値とを比較し、被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値より小さい場合、この被験動物を骨系統疾患有りと判断することができ、被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値以上である場合、この被験動物を骨系統疾患なしと判断することができる。
さらに、この場合、評価部110は、本実施形態に係るシステムにより得られた、候補物質を投与された被験動物の線形パターンの面積と、データベース160に格納された疾患群の線形パターンの面積とを比較し、被験動物の線形パターンの面積が疾患群の線形パターンの面積より大きい場合、この候補物質を薬効有りと判断することができ、被験動物の線形パターンの面積が疾患群の線形パターンの面積以下である場合、この候補物質を薬効なしと判断することができる。
加えて、この場合、評価部110は、本実施形態に係るシステムにより得られた、被験動物の線形パターンの面積と、データベース160に格納された正常群の線形パターンの面積とを比較し、被験動物の線形パターンの面積が正常群の線形パターンの面積より小さい場合、この被験動物を骨系統疾患有りと判断することができ、被験動物の線形パターンの面積が正常群の線形パターンの面積以上である場合、この被験動物を骨系統疾患なしと判断することができ、
(ii)被験動物の歩数
評価部110が、候補物質が投与された被験動物の所定時間内における歩数に基づいて薬効評価を行なう場合、静止画像解析部103の歩数取得部は、所定時間における被験動物の歩数を取得し、評価部110は、所定時間における被験動物の歩数と疾患群の歩数とを比較し、被験動物の歩数が疾患群の歩数より大きい場合、候補物質を薬効有りと判断することができ、被験動物の歩数が疾患群の歩数以下である場合、候補物質を薬効なしと判断することができる。
あるいは、評価部110が、被験動物の所定時間内における歩数に基づいて骨系統疾患の病態評価を行なう場合、静止画像解析部103の歩数取得部は、所定時間における被験動物の歩数を取得し、評価部110は、所定時間における被験動物の歩数と正常群の歩数とを比較し、被験動物の歩数が正常群の歩数より小さい場合、被験動物を骨系統疾患有りと判断することができ、被験動物の歩数が正常群の歩数以上である場合、被験動物を骨系統疾患なしと判断することができ、
(iii)被験動物の歩幅平均
評価部110が、候補物質が投与された被験動物の所定時間内における歩幅平均に基づいて薬効評価を行なう場合、静止画像解析部103は、所定時間における被験動物の歩幅平均を取得し、評価部110は、所定時間における被験動物の歩幅平均と疾患群の歩幅平均とを比較し、被験動物の歩幅平均が疾患群の歩幅平均より大きい場合、候補物質を薬効有りと判断することができ、被験動物の歩幅平均が疾患群の歩幅平均以下である場合、候補物質を薬効なしと判断することができる。
あるいは、評価部110が、被験動物の所定時間内における歩幅平均に基づいて骨系統疾患の病態評価を行なう場合、静止画像解析部103は、所定時間における被験動物の歩幅平均を取得し、評価部110は、所定時間における被験動物の歩幅平均と正常群の歩幅平均とを比較し、被験動物の歩幅平均が正常群の歩幅平均より小さい場合、被験動物を骨系統疾患有りと判断することができ、被験動物の歩幅平均が正常群の歩幅平均以上である場合、被験動物を骨系統疾患なしと判断することができる。
動画像および静止画像はそれぞれ、記憶部170の動画像記憶部171および静止画像記憶部172に格納される。また、静止画像の解析により得られたデータ(例えば、STR・STI、歩数、歩幅平均、走行時間、ヒストグラム、線形パターン、線形パターンの面積、STI頻度の最大値)はそれぞれ、記憶部170(STR・STI記憶部173、歩数記憶部174、歩幅平均記憶部175、走行時間記憶部176、ヒストグラム記憶部177、線形パターン記憶部178、パターン面積記憶部179a、STI頻度最大値記憶部179b)に格納される。
また、過去に測定された上記各種データは、記憶部170のデータベース160に格納することができる。例えば、評価部110において、過去に測定された疾患群の各種データと、本実施形態に係るシステムを用いて測定された被験動物の各種データとを比較する場合、データベース160に格納された疾患群の各種データを抽出して、被験動物の各種データと比較することにより、候補物質の薬効を評価することができる。あるいは、評価部110において、過去に測定された正常群の各種データと、本実施形態に係るシステムを用いて測定された被験動物の各種データとを比較する場合、データベース160に格納された正常群の各種データを抽出して、被験動物の各種データと比較することにより、候補物質の薬効を評価することができる。
なお、本実施形態に係るシステムから評価部を除いて、単なる肢動解析システムとして使用することもできる。
1.2.歩行装置
上述したように、歩行装置1は、下方より被験動物の走行を撮影するための動画カメラ5と、モータで駆動され任意の速度に調整可能である透明な歩行板とを含む。歩行装置1としては、GAIT(商品名)(ノベルテック(Noveltec)社により製造され、和光純薬工業(株)により販売されている。)を使用するのが好ましい。
1.2.1.歩行装置の一例(ランニングホイールを使用する例)
図2に歩行装置1の一例を示す。図2に示す歩行装置1には、歩行板として回転かご(ランニングホイール)11が設けられている。図2において、ランニングホイール11は、モータ2でベルト3を介して駆動され、速度制御装置4により任意の速度に調節可能である。また、ランニングホイール11中に投入された被験動物(例えばラット)9を下方から肢の動きを撮影して解析するために、ラングホイール11は透明であることが好ましい。ここで、「透明である」とは、被験動物の肢の動きを解析可能な動画像を撮影できる程度の透明度を有することをいい、いわゆる半透明である場合も含まれる。ランニングホイール11の材質としては、例えば、透明プラスチックまたは透明アクリル製が挙げられる。
ランニングホイール11の構成を図3に示す。ランニングホイール11は、図3に示すように、その中心に回転軸12を貫通させ、ラットを投入してから(図3(A))、側面プレート13を回転軸12のプレートストッパ14まで貫挿して固定する(図3(B))。刺激電極15,15をショックジェネレータ(図示せず)に接続してもよい。図3(C)はランニングホイールの側面断面図を示す。
ランニングホイール11は例えば、透明なアクリルなどの変形しにくい材質で形成することができ、被験動物9の歩行を促すため、ポリ塩化ビニルなどからなる弾力性を有する透明材質のマットを走行面に貼り付けてもよい。また、ランニングホイール11の幅は被験動物9が反転できないように、そして、走行姿勢に影響を与えないように設定するのが好ましい。なお、ランニングホイール11の幅は、側面プレート13のプレートストッパ14を移動させることにより調整することができる。
ランニングホイール11の直径は、動物が走行しやすいように設定されるのが好ましい。例えば、被験動物9がラットの場合、ランニングホイール11の直径を40cm以上とする。また、ランニングホイール11の側面プレート13は、被験動物9の糞が転がり出るように、また、被験動物9に脳波・筋電図などの電極ケーブルを繋ぐ場合、電極ケーブルをランニングホイール11から取り出すことができるように、ホイール直径より小さくして間隙を設けるのが好ましい。
側面プレート13をランニングホイール11内に固定することにより、被験動物9が外に出る行動を抑えることができる。電気刺激用電極15,15をショックジェネレータ(図示せず)に接続してもよい。ショックジェネレータは、ランニングホイール11の限定範囲内で被験動物9を走行させることを目的として使用する。
図2に示す歩行装置1においては、一定の速度で回転しているランニングホイール11の中で被験動物9を歩行させ、ランニングホイール11の下方より被験動物9の肢の動きを動画カメラ5で撮影する。例えば、被験動物9の四肢がランニングホイール11に肢をつける(接地する)タイミングと肢を離す(離地する)タイミングとを含む肢の動きを捉えて、動画像データを得る。この動画像データは記憶部170の動画像記憶部171に格納される。
図4を参照しながら、図2に示す歩行装置1を用いた肢移動測定方法を説明する。図4の下部は、ランニングホイール11を下から撮影した画像を示す。また、図4には、この画像に対応するランニングホイール11上の位置が示されている。
図4の下部の画像では、端(XおよびY)に近づくほどランニングホイール11の勾配が急になるため、ランニングホイール11において、AからBへと肢が移動した際、aからbへと肢が移動した画像として捕らえることができるが、ランニングホイール11上における実際のA−B間の距離とは異なる。したがって、肢の移動は角速度を用いて表す。ここで、A’はAからCZ上に引いた垂線の交点であり、B’はBからCZ上に引いた垂線の交点である。
直線上の点aに肢があるとすると、∠ACZを下記式(1)および(2)により求めることができ、同様に、∠BCZを下記式(3)により求めることができる。
sin(∠ACZ)=AA'/r ・・・・・(1)
∠ACZ=sin−1(AA'/r) ・・・・・(2)
∠BCZ=sin−1(BB'/r) ・・・・・(3)
単位時間d[秒]でAからBに肢が移動したとすれば、∠ACBだけ動いたことになる。すなわち、角速度は、下記式(4)により求めることができる。
∠ACB/d=(∠ACZ−∠BCZ)/d ・・・・・(4)
また、角度をラジアンで示せば、A−B間の移動距離およびA−B間の移動速度はそれぞれ、下記式(5)および式(6)により求めることができる。このように、角度をラジアンで示すことにより、肢の移動を正確に把握することができ、距離への換算も可能となる。
(A−B間の移動距離)=r×∠ACB ・・・・・(5)
(A−B間の移動速度)=r×∠ACB/d ・・・・・(6)
1.2.2.歩行装置の他の一例(トレッドミルを使用する例)
図5に歩行装置1の他の一例を示す。図5に示す歩行装置1には、歩行板としてトレッドミル6が設けられている。図5において、トレッドミル6は、被験動物9がその上を歩行させるベルト7を四隅の回転ローラ8で支持して、モータ(図示なし)を介してエンドレスに駆動するように構成されている。ベルト7の速度は、速度制御装置4により任意に調節することができる。
トレッドミル6中に投入された被験動物9の肢の動きを歩行板(トレッドミル6)の下方から撮影するために、ベルト7は透明な素材からなる。一定の速度で回転しているトレッドミル6の中で被験動物9を歩行させ、被験動物9の肢の動きをベルト7の下方に配置された動画カメラ5で撮影し、被験動物9の四肢がベルト7に肢をつける(接地する)タイミングと肢を離す(離地する)タイミングを含む肢の動きを捉えた動画像データを得る。
図5に示す歩行装置1は、被験動物9の走行面が平面であるため、図2に示すランニングホイール11を用いた歩行装置1のように、角度で移動を表わすことなく、画像上の座標および距離を直接的に解析に利用することができる。
1.3.処理手順
次に、本実施形態に係るシステムにおいて、処理部100の静止画像解析部103による静止画像の解析および評価部110による病態評価および/または薬効評価の手順について説明する。
1.3.1.解析対象データ
静止画像解析部103の解析対象となるデータとしては、例えば、(i)左右前肢および左右後肢それぞれの接地および離地の順番、(ii)それぞれの肢が接地している時間、(iii)ある肢を基準とした場合、その肢と他肢の接地(または離地)までの時間、(iv)四肢のうち2肢以上が接地している場合、その肢の特定およびそれらの肢が同時に接地している時間、(v)四肢の軌跡および体の定点と四肢の位置関係、(vi)肢裏の色(虚血の程度の評価)、ならびに(vii)尾の軌跡等が挙げられる。
図6は、ランニングホイール11の下方から撮影された、被験動物(ラット)の歩行様態を四肢の接地パターンとして示している。被験動物の歩行様態には、通常歩行、早肢(トロット)、駆け肢(ギャロップ)などがあり、これらの歩行様態すべてについて正常歩行のパターンを把握する。なお、歩行パターンは、後述する解析方法などを用いて解析することができる。
図6において、塗りつぶした楕円は接地、白抜きの楕円はホイールから肢が離れていることを意味する。一番左の図ではラットが右前肢(向かって左)を浮かせて前に移動している状態を示し、この時、左前肢、左右後肢は接地している。
図6に示す四肢の接地パターンの解析では、四肢の接地・離地のタイミングを経時的に観察する。また、前肢のストライド(左前肢が前の場合(図6のA)および右前肢が前の場合(図6のB)、および後肢のストライド(右前肢が前の場合(図6のC)および左前肢が前の場合(図6のD)、前後肢それぞれにおいて、つま先から引いた平行線の距離(図6のEおよびF)を観察する。また、歩行の左右対称性も解析する。
1.3.2.解析手順
次に、歩行装置1の動画カメラ5により撮影された動画像データの基本的な解析手順を、図1および図7を参照して説明する。
まず、歩行装置1の歩行板上で被験動物を歩行させ、歩行板の下方から被験動物の肢の動きを動画カメラ(デジタルビデオカメラ)5により撮影して、動画像データを得る(図7のステップS1)。
次に、得られた動画像データを連続した静止画像データに変換し(図7のステップS2)、該静止画像データを記憶部170の静止画像記憶部172に格納する(図7のステップS3)。
次いで、(A)静止画像間隔(1秒間あたりのコマ数)、(B)四肢の位置座標、(C)各肢が設置しているか否か、(D)定点の位置座標、(E)動物の輪郭、(F)肢底部の色等を示す数値データを該静止画像データから抽出する(図7のステップS4)。次いで、得られた数値データを静止画像解析部103で解析し(図7のステップS5)、その解析結果に基づいて評価部110で病態評価および/または薬効評価を行なう(図7のステップS6)。
1.3.3.評価手順
次に、評価部110による病態評価および/または薬効評価の基本的な解析手順を、図1および図8を参照して説明する。
記憶部170のデータベース160には、本実施形態に係るシステムを用いて得られた、骨系統疾患群の被験動物の各種処理データおよび正常群の被験動物の各種処理データもしくはそのいずれか一方が格納されている。この各種処理データは、上述の解析手順にしたがって、被験動物の動画像データを処理部100にて演算処理することにより得られる(図8のステップS11、S13〜S15)。
次に、本実施形態に係るシステムを用いて得られた被験動物の動画像データについて、上述の解析手順にしたがって処理部100にて処理し、処理データを得る(図8のステップS12、S13、S16)。
次いで、処理部100の評価部108において、データベース160に格納されている処理データと、被験動物の動画像から得られた処理データとを比較して、病態評価および/または薬効評価を行なう(図8のステップS17,S18)。
1.4.具体例1
次に、本実施形態に係るシステムを用いた一具体例について、図9〜図13を参照して説明する。
本具体例では、被験動物として骨粗鬆症モデルマウス(ddy mouse)を選択し、骨粗鬆症モデルマウスについて本実施形態に係るシステムを用いて歩行試験を行なった結果を示す。骨粗鬆症モデルマウスのうち雌性は卵巣摘出法によるエストロゲン欠乏により得られ、雄性は精巣摘出法によるアンドロゲン欠乏状態の誘起によって得られた(Miyaura C, Onoe Y, Inada M, Maki K, Ikuta K, Ito M, Suda T. Increased B-lymphopoiesis by interleukin 7 induces bone loss in mice with intact ovarian function: similarity to estrogen deficiency. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 94:9360-9365.)。
本具体例では、正常群および疾患群(骨粗鬆症群)各5〜20匹程度についてそれぞれ、本実施形態に係るシステムを用いて歩行試験を行なった。本歩行試験では、歩行装置としてGAIT(商品名)を使用した。GAITでは、歩行板として図2に示すランニングホイールを用いている。このランニングホイールを分速0.2〜2mで移動させて歩行試験を行なった。この範囲でランニングホイールを移動させることにより、マウス(ddy mouse)を精度良く歩行させることができ、安定した試験結果を得ることができる。
本具体例においては、正常群および骨粗鬆症群にそれぞれについて、静止画像解析部103により得られた所定時間内における線形パターンの面積、STI頻度の最大値(線形パターンの最大高さ)、歩数、および歩幅平均について比較を行なった。その方法についてそれぞれ以下に説明する。
1.4.1.線形パターンの面積およびSTI頻度の最大値の作成
1.4.1−1.STRおよびSTIの作成
本具体例では、線形パターンの面積およびSTI頻度の最大値を得るために、まず、処理部100のSTR算出部104およびSTI算出部105において、STRおよびSTIの作成を行なった。
本具体例では、図1に示す処理部100の静止画像作成部102において、被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ静止画像を取得した。
図9は、被験動物の左肢および右肢の連続する各2歩(計4歩)の接地パターンの一例を示す。図9において、黒い楕円は左肢の設置パターンを示し、白い楕円は右肢の接地パターンを示す。
図9に示されるように、連続する左肢および右肢の各2歩(計4歩)の接地パターンを1セットとする。図9において、いずれの肢もかかとから着地して、つま先から離地していると仮定すると、「DL」は、1セットにおける左肢の離地時間内に移動した距離を示し、「DR」は、1セットにおける左肢の離地時間内に移動した距離を示す。言い換えれば、図9は、1セットにおける左肢の離地時間に左肢が距離DL移動し、1セットにおける右肢の離地時間に右肢が距離DR移動している。
さらに、図1に示す処理部100の静止画像解析部103は、複数のセットについてそれぞれ、静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部104と、STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示すSTIを作成するSTI算出部105と、所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部106と、ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部107とを含む。これにより、正常群および骨粗鬆症群の各個体について、線形パターンおよびSTI頻度を得ることができる。ヒストグラムから線形パターンへの線形変換は公知の方法を使用することができる。
以下、線形パターンおよびSTI頻度の取得手順について、図10を参照して説明する。図10は、図1に示すシステムにおいて、静止画像解析部103がSTIを作成する際の具体的な処理を説明するフローチャートである。
まず、動画像から得られた静止画像に基づいて、所定時間あたりのセット数(頻度)Nおよび各セットにおける左後肢の離地時間ST(L)および右後肢の離地時間ST(R)を取得する(図10のステップS21)。より具体的には、離地時間は、肢が離地している間の静止画像の数(フレーム数)に、フレーム間隔(単位:時間)を乗じて得られる時間である。なお、左後肢および右後肢の離地時間のかわりに、左前肢および右前肢の離地時間を取得してもよい。
上述したように、左後肢の離地時間ST(L)および右後肢の離地時間ST(R)はそれぞれ、左後肢および右後肢がそれぞれ図9に示すDLおよびDR進むのに要する時間である。
次に、下記式(7)に基づいて、1セット目(n=1)におけるSTR(離地時間比:swing time ratio)を算出する(図10のステップS22,S23)。すなわち、STRは1セットにおける左後肢の離地時間ST(L)と右後肢の離地時間ST(R)との比である。
STR(離地時間比)=ST(R)/SR(L) ・・・・・(7)
ここで、上記式(7)で得られたSTRが1以下である場合、すなわち、左後肢の離地時間ST(L)が右後肢の離地時間ST(R)より大きい場合、−(1/STR−1)をSTI(離地時間指数:swing time index)とし、n+1を新たなnとする(この場合n=2となる。)(図10のステップS24,S25)。例えば、ST(R)=10、ST(L)=15の場合、STR=2/3(STRは1以下)であるため、STI=−(3/2−1)=−0.5となる。
一方、上記式(7)で得られたSTRが1より大きい場合、すなわち、右後肢の離地時間ST(R)が左後肢の離地時間ST(L)より大きい場合、STRの値に1を加えた数をSTI(離地時間指数:swing time index)とし、n+1を新たなnとする(この場合n=2となる。)(図10のステップS24,S26)。例えば、ST(R)=15、ST(L)=10の場合、STR=1.5(STRは1より大きい)であるため、STI=1.5−1=0.5となる。
次いで、nがセット数Nより小さい場合、図10のステップS23〜S26を繰り返して行なう(図10のステップS27)。以上の手順により、nセット目(n=1,2,…N)におけるSTIを算出する。
STIはSTRの分布を示す指数である。より具体的には、STIは、右肢の離地時間ST(R)と左肢の離地時間ST(L)とが等しい場合を基準とする場合において、該基準からの分布を示す指数であり、STIの値が大きいほど基準から離れていることを示す。
なお、上記手順にて得られた各セットにおけるSTIは、記憶部170のSTR・STI記憶部173に格納される。
1.4.1−2.線形パターンの作成
次に、本具体例では、図10に示す処理によって得られたN個のセットそれぞれに関するSTIの値に基づいて、処理部100のヒストグラム作成部106においてヒストグラムが作成された後、線形パターン作成部107において、ヒストグラムに基づいて線形パターンが作成される。
ヒストグラム作成部106は、所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成する。線形パターン作成部107は、ヒストグラム作成部106にて作成されたヒストグラムを線形変換して、線形パターンを作成する。
より具体的には、ヒストグラム作成部106において、所定時間内での各セットにおけるSTI値を縦軸に示し、該STI値に対応するSTI頻度(セット数)を縦軸に示すヒストグラムを作成する(図示せず)。すなわち、縦軸のSTI頻度の総和がセット数Nである。
次いで、線形パターン作成部107において、得られたヒストグラムを線形変換して、線形パターンを作成する。
図11において、(A)は、被験動物がそれぞれ正常群および骨粗鬆症群である場合において、本実施形態に係るシステムにより得られた線形パターンを示す図であり、実線は正常群を示し、点線は骨粗鬆症群を示す。図11の(A)において、横軸は所定時間(20秒間)内の各セットにおけるSTI値を示し、縦軸は各STI値を有するSTIの数(STI頻度)を示している。
図11の(A)においては、正常群および骨粗鬆症群の各群について、横軸を−1〜+1(0.1間隔)に設定し、各0.1の区間に該当するSTIの頻度(すなわち歩数)を縦軸として表示するヒストグラムを作成し、各群のヒストグラムを線形に変換して線形パターンを作成し、各線形パターンの面積および高さの最大値を比較することで歩行様式の違いを検出した。
図11の(A)によれば、疾患群(骨粗鬆症群)は、正常群の線形パターンとは異なる線形パターンを示し、かつ、疾患群(骨粗鬆症群)の線形パターンの面積および最大高さは、正常群の線形パターンの面積および最大高さよりも小さい。図11の(A)によれば、骨粗鬆症の罹患により、歩行リズムの異常および歩行速度の低下が生じたことが理解できる。
図11の(B)は、図11の(A)に示す正常群の線形パターンの面積S1および高さの最大値h1を示す図であり、図11の(C)は、図11の(A)に示す骨粗鬆症群の線形パターンの面積S2および高さの最大値h2を示す図である。
図11の(B)および(C)において、線形パターンの面積S1,S2は、横軸と線形パターンとで囲まれる面積のことをいう(図14における線形パターンの面積S3,S4についても同様である。)。
図11の(B)および(C)に示すように、正常群の線形パターンの面積S1は、疾患群(骨粗鬆症群)の線形パターンの面積S2よりも大きいことが確認された。この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨粗鬆症群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群の線形パターンの面積は、候補物質非投与群の線形パターンの面積よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群の線形パターンの面積が候補物質非投与群の線形パターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
また、図11の(B)および(C)に示すように、正常群のSTI頻度の最大値h1は、疾患群(骨粗鬆症群)のSTI頻度の最大値h2よりも大きいことが確認された。この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨粗鬆症群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群のSTI頻度の最大値は、候補物質非投与群のSTI頻度の最大値よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群のSTI頻度の最大値が候補物質非投与群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
1.4.2.歩数および歩幅平均
また、本具体例では、正常群および骨粗鬆症群それぞれについて、所定時間における被験動物の歩数および歩幅平均を算出した。その結果を図12に示す。
歩数は、処理部100の静止画像解析部103の歩数取得部108により算出されて、記憶部170の歩数記憶部174に格納される。本具体例においては、歩数取得部108において、すべての個体における所定時間(20秒間)あたりの被験動物(マウス)の歩数を積算し、グラフ化した。上述したように、連続する左右両足の1歩ずつ、つまり計2歩分で1完歩とする。その結果を図12の(A)に示す。
また、歩幅平均は、処理部100の静止画像解析部103の歩幅平均取得部109により算出されて、記憶部170の歩幅平均記憶部175に格納される。本具体例においては、歩幅平均取得部109において、1完歩毎に左右の各1歩あたりの歩幅の平均値を算出した後、1個体あたりの1歩の歩幅平均を算出した。さらに、各群毎にすべての個体における所定時間(20秒間)あたりの歩幅平均を積算し、グラフ化した。その結果を図12の(B)に示す。
図12の(A)および(B)によれば、正常群に比較して、疾患群(骨粗鬆症群)では歩数および歩幅平均ともに大幅に減少したのが明らかになった。
この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨粗鬆症群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群の歩数は、候補物質非投与群の歩数よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群の歩数が候補物質非投与群の歩数より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
また、この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨粗鬆症群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群の歩幅平均は、候補物質非投与群の歩幅平均よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群の歩幅平均が候補物質非投与群の歩幅平均より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
1.4.3.X線写真の比較
図13は、本具体例で使用した正常群および骨粗鬆症群のマウスの大腿骨の軟X線写真である((A):正常群,(B):骨粗鬆症群)。図13の(B)に示すように、骨粗鬆症群マウスの大腿骨は、骨粗鬆症により、骨吸収の亢進および骨量の著しい低下が確認された。
以上の結果から、本実施形態に係るシステムを用いて骨粗鬆症治療薬を探索する場合、線形パターンの面積および最大高さ、歩数、および歩幅平均を指標とすることにより、病態評価および/または薬効評価を行なうことができることが明らかになった。
1.5.具体例2
また、本実施形態に係るシステムを用いた別の一具体例について、図14〜図16を参照して説明する。
本具体例では、被験動物として骨転移癌モデルマウス(C57 B16j mouse)を選択し、骨転移癌モデルマウスについて本実施形態に係るシステムを用いて歩行試験を行なった結果を示す。骨転移癌モデルマウスは、骨転移性癌の動脈および静脈への移入による骨転移の成立あるいは発癌誘起物質の塗布によって発癌に至った発癌モデルマウスにおいて、骨転移を示したマウスを解析することによって得られた(Ohshiba T, Miyaura C, Inada M, Ito A., Role of RANKL-induced osteoclast formation and MMP-dependent matrix degradation in bone destruction by breast cancer metastasis. Br J Cancer. 2003 88:1318-1326.)。
本具体例では、正常群および疾患群(骨転移癌群)各5〜20匹についてそれぞれ、本実施形態に係るシステムを用いて歩行試験を行なった。本歩行試験では、歩行装置としてGAIT(商品名)を使用した。GAITでは、歩行板として図2に示すランニングホイールを用いている。このランニングホイールを分速0.2〜2mで移動させて歩行試験を行なった。この範囲でランニングホイールを移動させることにより、マウス(C57 B16j mouse)を精度良く歩行させることができ、安定した試験結果を得ることができる。
本具体例においては、正常群および骨転移癌群にそれぞれについて、上記具体例1と同様の方法にて、静止画像解析部103により得られた所定時間内における線形パターンの面積、STI頻度の最大値、歩数、および歩幅平均について比較を行なった。その結果を図14および図15に示す。
1.5.1.線形パターンの面積およびSTI頻度の最大値
図14において、(A)は、被験動物がそれぞれ正常群および骨転移癌群である場合において、本実施形態に係るシステムにより得られた線形パターンを示す図であり、実線は正常群を示し、点線は骨転移癌群を示す。図14の(A)において、横軸は所定時間(30秒間)内の各セットにおけるSTI値を示し、縦軸は各STI値を有するSTIの数(STI頻度)を示している。
図14の(A)によれば、疾患群(骨転移癌群)は、正常群の線形パターンと異なる線形パターンを示し、かつ、疾患群(骨転移癌群)の線形パターンの面積および最大高さは、正常群の線形パターンの面積および最大高さよりも小さい。これにより、骨転移癌の罹患により、歩行リズムの異常および歩行速度の低下が生じたことが理解できる。
図14の(B)は、図14の(A)に示す正常群の線形パターンの面積S3および高さの最大値h3を示す図であり、図14の(C)は、図14の(A)に示す骨転移癌群の線形パターンの面積S4および高さの最大値h4を示す図である。
図14の(B)および(C)に示すように、正常群の線形パターンの面積S3は、疾患群(骨転移癌群)の線形パターンの面積S4よりも大きいことが確認された。この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨転移癌群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群の線形パターンの面積は、候補物質非投与群の線形パターンの面積よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群の線形パターンの面積が候補物質非投与群の線形パターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
また、図14の(B)および(C)に示すように、正常群のSTI頻度の最大値h3は、疾患群(骨転移癌群)のSTI頻度の最大値h4よりも大きいことが確認された。この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨転移癌群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群のSTI頻度の最大値は、候補物質非投与群のSTI頻度の最大値よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群のSTI頻度の最大値が候補物質非投与群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断することができる。
1.5.2.歩数および歩幅平均
本具体例では、また、正常群および骨転移癌群それぞれについて、所定時間における被験動物の歩数および歩幅平均を算出した。その結果を図14に示す。
歩数は、処理部100の静止画像解析部103の歩数取得部108により算出されて、記憶部170の歩数記憶部174に格納される。また、歩幅平均は、処理部100の静止画像解析部103の歩幅平均取得部109により算出されて、記憶部170の歩幅平均記憶部175に格納される。
図15の(A)によれば、疾患群(骨転移癌群)では、正常群と比較して、歩数が大幅に減少したのが明らかになった。一方、図15の(B)によれば、疾患群(骨転移癌群)の歩幅平均は、正常群より多少減少したに留まった。
この場合、正常群を候補物質投与群とみなし、かつ、疾患群(骨転移癌群)を候補物質非投与群とみなせば、候補物質投与群の歩数は、候補物質非投与群の歩数よりも大きいとみなすことができ、評価部110は、候補物質投与群の歩数が候補物質非投与群の歩数より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断できるといえる。
1.5.3.X線写真の比較
図16は、本具体例で使用した正常群および骨転移癌群モデルマウスの大腿骨の軟X線写真である((A):正常群,(B):骨転移癌群)。図16の(B)によれば、骨破壊を伴った骨転移癌(悪性黒色腫,矢印で示す部分)が、骨転移癌群マウスの大腿骨近位部に転移していることが確認された。
以上の結果から、本実施形態に係るシステムを用いて骨転移癌治療薬を探索する場合、線形パターンの面積および最大高さならびに歩数を指標とすることにより、病態評価および/または薬効評価を行なうことができることが明らかになった。
1.6.作用効果
本実施形態に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム、プログラムおよび情報記憶媒体によれば、以下の作用効果を有する。
第1に、本実施形態に係るシステム、プログラムおよび情報記憶媒体を用いて、被験動物の歩行パターンを解析することにより、定量的な病態評価および/または薬効評価を行なうことができるため、例えば前臨床試験において候補物質の薬効を有効に評価することができる。これにより、次世代の臨床試験における開発中止に関わる莫大な開発リスクを軽減することができる。
第2に、本実施形態に係るシステム、プログラムおよび情報記憶媒体によれば、被験動物の肢の動きを画像解析によって測定した結果に基づいて、骨粗鬆症や骨転移癌等の骨系統疾患における痛み、安全性、運動機能、健康状態および病理状態の定量的評価を行なうことができる。また、客観的なパラメータにより病態評価および/または薬効評価を判断するため、異なる研究者が行っても同じ基準で病態評価および/または薬効評価を得ることができる。
第3に、本実施形態に係るシステム、プログラムおよび情報記憶媒体によれば、複数のセットのセット毎に、静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部と、各セットにおけるSTRそれぞれに基づいて、STRの分布を示すSTIを作成するSTI算出部と、所定時間内における、各STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部とを含むことにより、複数の被験動物の試験結果に基づいて線形パターンが作成される。したがって、被験動物の数(サンプル数)が多いほど、被験動物が属する群の特徴をより正確に示す線形パターンが得られる。これにより、正常群および候補物質投与群それぞれについて線形パターンを作成し、その面積や高さを比較することにより、候補物質について有効な薬効評価を得ることができる。
例えば、特開2003−250780号公報においては、正常群および片足に障害を生じる疾患群について、一個体の歩行における左肢と右肢とのずれを検出している。
これに対して、本実施形態に係るシステムを骨粗鬆症や骨転移癌等の全身に起因する骨系統疾患の治療薬の探索に使用することにより、正常群(または候補物質投与群)および疾患群それぞれについて線形パターンを作成し、その面積や高さを比較することにより、群間比較を行なうことができる。これにより、各群の特徴を明確にすることができるため、候補物質について有効な薬効評価を得ることができる。
上述のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるだろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
本発明の骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体を用いて、定量的な病態評価および/または薬効評価を行なうことができる。これにより、上記システムおよびプログラム、ならびに情報記憶媒体は、例えば、骨系統疾患(例えば、骨粗鬆症、骨転移癌、リウマチ、変形性関節炎、ページェット病、多発性骨髄腫)の治療薬の探索に使用することができ、例えば前臨床試験に好適に利用することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システムの構成を示す機能ブロック図である。 図2は、図1に示される歩行装置の一例を示す図である。 図3(A)〜図3(C)は、図2に示す歩行装置の内部構成を示す図である。 図4は、図2に示す歩行装置を用いて被験動物の肢の動きを測定する方法を説明する図である。 図5は、図1に示す歩行装置の他の一例を示す図である。 図6は、図1に示す歩行装置において、被験動物の四肢の接地パターンの一例を示す図である。 図7は、図1に示すシステムにおける、動画像の解析手順の一例を示す図である。 図8は、図1に示すシステムにおける、病態評価および/または薬効評価手順の一例を示す図である。 図9は、被験動物の左肢および右肢の各2歩(1セット)の接地パターンの一例を示す図である。 図10は、図1に示すシステムにおける、静止画像解析部の具体的な処理を説明するフローチャートである。 図11において、(A)は、被験動物として骨粗鬆症モデルマウスを用い、図1に示されるシステムにより得られた線形パターンを示す図であり、(B)は、正常群の線形パターンの面積S1および高さの最大値h1を示す図であり、(C)は、骨粗鬆症群の線形パターンの面積S2および高さの最大値h2を示す図である。 図12は、被験動物として骨粗鬆症モデルマウスを用い、図1に示されるシステムにより測定された、所定時間あたりの歩数および歩幅平均を示す図である((A):正常群,(B):骨粗鬆症群)。 図13は、軟X線により撮影された骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨を示す写真である((A):正常群,(B):骨粗鬆症群)。 図14において、(A)は、被験動物として骨転移癌モデルマウスを用い、図1に示されるシステムにより得られた線形パターンを示す図であり、(B)は、正常群の線形パターンの面積S3および高さの最大値h3を示す図であり、(C)は、骨転移癌群の線形パターンの面積S4および高さの最大値h4を示す図である。 図15は、被験動物として骨転移癌モデルマウスを用い、図1に示すシステムにより測定された、所定時間あたりの歩数および歩幅平均を示す図である((A):正常群,(B):骨転移癌群)。 図16は、軟X線により撮影された骨転移癌モデルマウスの大腿骨を示す写真である((A):正常群,(B):骨転移癌群)。
符号の説明
1・・・歩行装置、 2・・・モータ、 3,7・・・ベルト、 4・・・速度制御装置、 5・・・動画カメラ、 6・・・トレッドミル、 8・・・回転ローラ、 9・・・被験動物(ラット)、 11・・・ランニングホイール112・・・回転軸、 13・・・側面プレート、 14・・・プレートストッパ、 15,15・・・電気刺激用電極、 100・・・処理部、 101・・・動画像取得部、 102・・・静止画像作成部、 103・・・静止画像解析部、 104・・・STR算出部、 105・・・STI算出部、 106・・・ヒストグラム作成部、 107・・・線形パターン作成部、 108・・・歩数取得部、 109・・・歩幅平均取得部、 110・・・評価部、 111・・・動画カメラ制御部、 160・・・データベース、 170・・・記憶部、 171・・・動画像記憶部、 172・・・静止画像記憶部、 173・・・STR・STI記憶部、 174・・・歩数記憶部、 175・・・歩幅記憶部、 176・・・走行時間記憶部、 177・・・ヒストグラム記憶部、 178・・・線形パターン部、 179a・・・パターン面積記憶部、 179b・・・STI頻度最大値記憶部、 180・・・情報記憶媒体、 190・・・入力部、 192・・・出力部

Claims (13)

  1. 被験動物の走行を下方より撮影するための動画カメラと、モータで駆動され任意の速度に調整可能である透明な歩行板とを含む歩行装置と、
    前記動画カメラにより撮影され、前記歩行板から前記被験動物の肢が離地するタイミングを含む、該被験動物の肢の動きに関する動画像を取得する動画像取得部と、
    前記動画像を静止画像に変換する静止画像作成部と、
    前記静止画像を解析して解析結果を得る静止画像解析部と、
    前記解析結果に基づいて骨系統疾患の病態および/または候補物質の薬効を評価する評価部と、
    を含み、
    前記静止画像作成部は、前記被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、前記離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ前記静止画像を取得し、
    前記静止画像解析部は、
    前記複数のセットのセット毎に、前記静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部と、
    前記STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示す離地時間指数(STI)を作成するSTI算出部と、
    前記所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、
    前記ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部と、
    を含む、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  2. 請求項において、
    前記被験動物には候補物質が投与されており、
    前記評価部は、前記被験動物のSTI頻度の最大値と、疾患群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  3. 請求項において、
    前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物の線形パターンの面積と、疾患群の線形パターンの面積とを比較し、前記被験動物の線形パターンの面積が疾患群の線形パターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  4. 請求項において、
    前記評価部は、前記被験動物のSTI頻度の最大値と、正常群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  5. 請求項において、
    前記評価部は、前記被験動物の線形パターンの面積と、正常群の線形パターンの面積とを比較し、前記被験動物の線形パターンの面積が正常群の線形パターンの面積より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  6. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記骨系統疾患が骨粗鬆症または骨転移癌である、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索システム。
  7. 被験動物が歩行板から肢を離地するタイミングを含む、前記被験動物の肢の動きに関する動画像を取得する動画像取得部と、
    前記動画像を静止画像に変換する静止画像作成部と、
    前記静止画像を解析して解析結果を得る静止画像解析部と、
    前記解析結果に基づいて骨系統疾患の病態および/または候補物質の薬効を評価する評価部と、
    を含み、
    前記静止画像作成部は、前記被験動物の左肢および右肢が連続して各2歩離地するのを1セットとして、前記離地する各タイミングにおける静止画像を取得し、所定時間内における複数のセットについてそれぞれ前記静止画像を取得し、
    前記静止画像解析部は、
    前記複数のセットのセット毎に、前記静止画像に基づいて、左肢の離地時間と右肢の離地時間との比(STR)を作成するSTR算出部と、
    前記STRそれぞれに基づいて、STRの分布を示す離地時間指数(STI)を作成するSTI算出部と、
    前記所定時間内における、STI値に対するSTI頻度を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、
    前記ヒストグラムを線形変換して線形パターンを作成する線形パターン作成部と、
    を含む、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  8. 請求項において、
    前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物のSTI頻度の最大値と、疾患群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が疾患群のSTI頻度の最大値より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  9. 請求項において、
    前記評価部は、候補物質が投与された前記被験動物のSTRパターンの面積と、疾患群のSTRパターンの面積とを比較し、前記被験動物のSTRパターンの面積が疾患群のSTRパターンの面積より大きい場合、前記候補物質を薬効有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  10. 請求項において、
    前記評価部は、前記被験動物のSTI頻度の最大値と、正常群のSTI頻度の最大値とを比較し、前記被験動物のSTI頻度の最大値が正常群のSTI頻度の最大値より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  11. 請求項において、
    前記評価部は、前記被験動物のSTRパターンの面積と、正常群のSTRパターンの面積とを比較し、前記被験動物のSTRパターンの面積が正常群のSTRパターンの面積より小さい場合、前記被験動物を骨系統疾患有りと判断する、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  12. 請求項ないし11のいずれかにおいて、
    前記骨系統疾患が骨粗鬆症または骨転移癌である、骨系統疾患の病態評価および/または骨系統疾患の治療薬探索プログラム。
  13. 請求項ないし12のいずれかに記載のプログラムを記憶する、コンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体。
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