JP4886654B2 - ヒト成長ホルモンの効率化された製造方法 - Google Patents

ヒト成長ホルモンの効率化された製造方法 Download PDF

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Description

本発明は,原核細胞,特に大腸菌に真核性ポリペプチドを生産させる効率的方法及び産生されたポリペプチドの効率的精製方法に関し,特に,大腸菌を宿主としてヒト成長ホルモンを生産させる効率的方法及び産生されたポリペプチドの効率的精製方法に関する。
大腸菌(Escherichia coli)を用いて成長ホルモンを製造する方法は,遺伝子工学の先駆けを成す技術であり1980年前後に確立された。特に,非耐熱性(温度感受性)リプレッサーCIを含有する適切な宿主大腸菌を,λバクテリオファージ由来のプロモーター・オペレターPLLを含む発現ベクターで形質転換することより,真核性ポリペプチドを高い効率で産生できることが広く知られている(特許文献1)。例えば,この種の発現ベクター(温度感受性リプレッサーとしてλcI857を利用)を用いることにより,ウシ成長ホルモンの場合には,形質転換した大腸菌の高密度培養法により,3〜6g/Lの産生効率が達成できることが報告されている(特許文献2)。
しかしながら,同様の発現ベクターを用いて大腸菌にヒト成長ホルモンを産生させる方法では,今日まで,上記ウシの場合のような高い産生効率を達成できておらず,ヒト成長ホルモンの産生効率は1g/L程度に止まっている。従って,下垂体小人症等の治療に医薬品として使用されているヒト成長ホルモンにおいても,ウシのそれに匹敵するほどの高い産生効率を実現にして,医薬品としての製造効率の向上とコストの低減を可能にする方法に対する,潜在的な需要がある。
一般に,大腸菌を宿主としこれに異種生物のタンパク質をコードする外因性DNAを導入して当該タンパク質を産生させるに際し,当該DNAのコード領域が宿主大腸菌にとって稀なコドンを含む場合には,それらが宿主中における遺伝子発現の妨げになることが知られている。この他にも,GC含量や内部SD様配列,RNA2次構造など大腸菌での発現に負に働くことが分かっている要因を除去した方が,発現効率が高まる。しかしながら他にも様々な負の因子が考えられ,それらを統合して遺伝子配列を設計することは容易でない。
また,ヒト成長ホルモンの製造には,大腸菌における産生効率が高くないことに加えて,産生されたタンパク質からの活性なヒト成長ホルモンの回収率が低いという別の問題もある。すなわち,大腸菌中で産生されたヒト成長ホルモンその他の外因性の組換えタンパク質は,一般に,菌体内に不溶化された状態で封入体として集積される。その場合,目的とする活性なタンパク質の回収は,菌体を破壊し,封入体(遠心により沈殿する)を単離して,これを可溶化するプロセスを経て行われる。封入体の可溶化には高濃度の尿素,イソチオシアン酸グアニジン,又はグアニジン塩酸塩を用いる方法,或いは,それらの可溶化剤の代わりにカチオン性界面活性剤のみを用いて可溶化させる方法,又は封入体を水酸化ナトリウムでpH11.8のアルカリ条件で処理することにより可溶化させる方法等が知られている(特許文献1,特許文献2,特許文献4,特許文献5,特許文献6,特許文献7)。
しなしながら,封入体を形成しているタンパク質は,通常,その固有の生理活性を失っている。従って,封入体から回収された組換えタンパク質を活性型とすることが極めて重要である。多くの場合,タンパク質がその生理活性を備えるためには,そのタンパク質が特有の3次元構造を形成するよう,そのポリペプチド鎖が正しく折りたたまれること(フォールディング)が必要である。従って,活性なタンパク質を回収するためには,不溶化されている封入体タンパク質を単に可溶化するだけでは足りず,その生理活性の発現に必要な正しい3次元構造を形成するよう再度折りたたみが起こる(リフォールディング)ように促す必要がある。可溶化した封入体タンパク質をリフォールディングさせる方法に関しても検討が進められており,最近では,封入体から回収された組換えタンパク質その他の変性タンパク質を,アルギニン,還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンを含有するリフォールディング緩衝液中に滴下することによってリフォールディングさせ再活性化することも試みられている(特許文献8)。また,還元剤の存在下に,9.0以上のpHでタンパク質を可溶化する方法で0.4Mの尿素,0.4〜4Mの塩酸グアニジン,又は0.4〜4MのL−アルギニンを用いるものが知られている(特許文献9)。しかしながら,この公報には,成長ホルモンの記載はない。これら種々の知見にも関わらず,現在,形質転換大腸菌から単離された封入体からの活性なヒト成長ホルモンの回収率は,30〜40%程度に止まり,残り70〜60%の活性は失われたままである。従ってまた,封入体タンパク質からよりこれより高い回収率で活性なヒト成長ホルモンを回収することを可能にする方法に対する,潜在的な需要も存在する。
特開昭60−91986号公報 特開昭62−65698号公報 特開昭61−93128号公報 特開昭62−223192号公報 特表2002−512808(WO 99/55899) 特表2005−535286号公報(WO 2003/066676) 特開平7−99990号公報 WO 2005/033307 特許第3929777号公報(WO 2001/055174)
上記の背景の下で,本発明の一目的は,大腸菌を用いた組換えヒト成長ホルモンの製造において,大腸菌に,改善された高い効率で当該タンパク質を産生させることのできる方法を提供することにより,大腸菌を用いた組換えヒト成長ホルモンの製造効率を改善することである。
本発明の別の一目的は,大腸菌の菌体内に蓄積された封入体より,改善された高い効率で活性なヒト成長ホルモンを回収する方法を提供することにより,大腸菌を用いた組換えヒト成長ホルモンの製造効率を改善することである。
本発明の更なる別の一目的は,上記2つの方法を併用することにより,大腸菌を用いた組換えヒト成長ホルモンの産生効率と,大腸菌の菌体からの活性なヒト成長ホルモンの回収率との双方を改善することにより,大腸菌を用いた組換えヒト成長ホルモンの製造効率を改善することである。
上記目的に向けた研究において,本発明者は,λバクテリオファージ由来のオペレータープロモーター系を利用した周知のヒト成長ホルモン発現ベクターをベースとして用いた。本発明者は,当該発現ベクター中のヒト成長ホルモンのコード領域の塩基配列を,それがコードするアミノ酸配列に変更が生じないよう各アミノ酸のコードの縮重の範囲内で修正を加えて,大腸菌の菌体内におけるヒト成長ホルモンの発現に最適化させるよう試み,その結果得られた塩基配列を,その上流に付加したSD(Shine-Dalgarno)配列と共に,市販のpCE30ベクター(ATCC37830)に組み込んで発現ベクターを構築した。この発現ベクターを導入して大腸菌を形質転換したところ,従来の3〜4倍の極めて高い効率でヒト成長ホルモンを産生できることを見出した。
更に本発明者は,大腸菌の菌体内から回収された封入体ヒト成長ホルモンを,強アルカリ条件下において還元剤の不存在下にグアニジン塩酸塩と接触させて可溶化することを試みた。その結果,予想外にも,この方法によれば封入体ヒト成長ホルモンを可溶化させ且つ95%以上という非常に高い回収率を以って活性ヒト成長ホルモンが得られることを見出し,これに基づき,大腸菌の封入体からの活性体としてヒト成長ホルモンの回収方法を確立した。
本発明は,これらの発見に基づいて完成されたものである。
すなわち本発明は以下を提供する。
1.配列番号3に示す塩基配列,及び配列番号3に示す塩基配列においてGC%が48〜52%となる範囲において,コードするアミノ酸に変更を生じさせることのないように塩基を置換してなる塩基配列よりなる群より選ばれる何れかの塩基配列を含んでなるDNA。
2.上記1のDNAをコード領域として有するヒト成長ホルモン発現ベクター。
3.該コード領域の塩基配列の上流にSD配列,その上流にλファージのPLプロモーター,更にその直ぐ上流にPRプロモーターを含んでいるものである,上記2のヒト成長ホルモン発現ベクター。
4.温度感受性リプレッサー遺伝子を更に含むものである,上記2又は3のヒト成長ホルモン発現ベクター。
5.該温度感受性リプレッサーが42℃において不活性化されるリプレッサーである,上記4のヒト成長ホルモン発現ベクター。
6.該温度感受性リプレッサーがλcI857である,上記4のヒト成長ホルモン発現ベクター。
7.上記2ないし6のヒト成長ホルモン発現ベクターで形質転換された大腸菌。
8.大腸菌にヒト成長ホルモン発現ベクターを導入し,該大腸菌を培養することを含んでなる成長ホルモンの産生方法であって,該発現ベクターにおけるヒト成長ホルモンのコード領域の塩基配列が,配列番号3に示す塩基配列,及び配列番号3に示す塩基配列においてGC%が48〜52%となる範囲において,コードするアミノ酸に変更を生じさせることのないように塩基を置換してなる塩基配列よりなる群より選ばれる何れかの塩基配列であることを特徴とする,方法。
9.該発現ベクターが,該ヒト成長ホルモンのコード領域の塩基配列の上流にSD配列,その上流にλファージのPLプロモーター,更にその直ぐ上流にPRプロモーターを含んでいるものである,上記8の方法。
10.該発現ベクターが,温度感受性リプレッサー遺伝子を更に含むものである,上記8又は9の方法。
11.該温度感受性リプレッサーが42℃において不活性化されるものである,上記8ないし10の何れかの方法。
12.該温度感受性リプレッサーがλcI857である,上記8ないし10の何れかの方法。
13.上記8ないし12の何れかの方法によって菌体内に産生され,菌体から単離されたヒト成長ホルモン封入体の可溶化方法であって,該単離されたヒト成長ホルモン封入体を,還元剤の不存在下,pH11〜13アルカリ性条件下に水性媒質中で2M以上の濃度のグアニジン塩と混合するステップと,該混合物中の封入体が溶解するまで混合物を撹拌するステップとを含んでなるものである,方法。
14.グアニジン塩の濃度が2〜6Mである,上記13の方法。
15.該グアニジン塩がグアニジン塩酸塩である,上記13又は14の方法。
16.上記13ないし15の何れかの方法によって得られたヒト成長ホルモン含有溶液からの,活性なヒト成長ホルモンの製造方法であって,該溶液の塩酸グアニジンを除去し且つ溶液のpHを中性方向へと低下させることにより,ヒト成長ホルモンのリフォールディングを起こさせるステップを含んでなるものである,方法。
17.大腸菌の菌体内に産生され菌体から単離されたヒト成長ホルモン封入体の可溶化方法であって,該単離されたヒト成長ホルモン封入体を,還元剤の不存在下,pH11〜13のアルカリ性条件下に水性媒質中で2M以上の濃度のグアニジン塩と混合するステップと,該混合物中の封入体が溶解するまで混合物を撹拌するステップとを含んでなるものである,方法。
18.グアニジン塩の濃度が2〜6Mである,上記17の方法。
19.該グアニジン塩がグアニジン塩酸塩である,上記17又は18の方法。
20.上記17ないし19の何れかの方法によって得られたヒト成長ホルモン含有溶液からの,活性なヒト成長ホルモンの製造方法であって,該溶液の塩酸グアニジンを除去し且つ溶液のpHを中性方向へと低下させることにより,ヒト成長ホルモンのリフォールディングを起こさせるステップを含んでなるものである,方法。
本発明は,大腸菌の菌体内におけるヒト成長ホルモンの産生率を従来に比して格段に高めることにより,及び/又は大腸菌の菌体内に封入体として産生されたヒト成長ホルモンからの,活性なホルモンの回収率を格段に高めることにより,従来に比して極めて高い製造効率で,大腸菌を用いてヒト成長ホルモンの製造することを可能にする。なお,本発明により得られるヒト成長ホルモンは,形質転換大腸菌を用いて従来製造されているヒト成長ホルモンと同様,N末端にメチオニンが結合したものである。大腸菌より抽出後,従来と同様にアミノペプチダーゼ(例えば,Vibrio proteolyticusのアミノペプチダーゼ)で末端メチオニンを除去することにより,天然型のヒト成長ホルモンを与える。
本発明において,ヒト成長ホルモンをコードするDNAの取り分け好ましい最適化した塩基配列は,従来に比して3〜4倍という,高いヒト成長ホルモン産生効率を達成できる配列番号3の塩基配列である。しかしながら,当該配列に近い塩基配列を有し且つ当該配列と同一のアミノ酸配列をコードするものであるDNAもまた,本発明において好ましく用いることができる。本来のヒト成長ホルモン遺伝子(野生型)のコード領域の塩基配列(配列番号1)は,塩基総数が579個,塩基Gが138個,塩基Cが179個であり,塩基GとCの合計が317個,GC%が54.7%〔317/579×100〕である。これに対し,配列番号3の最適化した塩基配列は,塩基総数は同一であるが,塩基Gが146個,塩基Cが143個,塩基G及びCの合計が289個,GC%が49.9%〔289/579×100〕であるという特徴を有する。改変により生じたこの低いGC%は,宿主大腸菌にヒト成長ホルモンを高い効率で産生させる上での重要な要因である。このことから,野生型のヒト成長ホルモン遺伝子のGC%よりも,配列番号3の塩基配列のGC%の方に近いGC%に収まる範囲内で(例えば,48〜52%のGC%で),且つコードされるアミノ酸を変更しない範囲で(すなわち,各アミノ酸について縮重したコドンの範囲内で),配列番号3のDNAの塩基を置換することにより,天然型のヒト成長ホルモン遺伝子を用いて大腸菌にヒト成長ホルモンを産生させる従来の方法に比して優れた産生効率を達成する改変型ヒト成長ホルモン遺伝子を得ることができる。より具体的には,塩基G及びCの個数の合計が278〜301個の範囲に収まるように,配列番号3の塩基配列において,縮重したコドンの範囲内で,塩基を置換すればよい。本発明は,こうして得られる改変型のヒト成長ホルモン遺伝子であるDNAをも包含する。
本発明において,ヒト成長ホルモンの最適化したコード領域のDNA(配列番号3)は,好ましくはその上流に付加したSD(Shine-Dalgarno)配列と共に,大腸菌内での外因性タンパク質の発現に適したベクターに組み込んで,発現ベクターを構築するのに用いることができる。発現ベクターは,温度感受性リプレッサー遺伝子を有することが好ましく,例えば温度42℃で不活性化されるリプレッサーの遺伝子を有することが好ましい。特に好ましいベクターとしては,市販のpCE30(ATCC37830)を挙げることができ,これはクローニング部位の上流に,順次,λファージのPLプロモーター,これとタンデムに並んだPRプロモーター,更にはその上流の温度感受性リプレッサー遺伝子λcI857の塩基配列を有する。
上記のヒト成長ホルモン発現ベクターで形質転換した大腸菌は,従来周知の方法に準じ,酸素濃度を高めた培地中で,溶存酸素濃度が平均で例えば20〜60%飽和となるようにしつつ培養し,培地温度を42℃まで高めることにより,温度感受性リプレッサーを不活性化させてヒト成長ホルモンを産生させることができる。その間培地は,十分に撹拌しつつpHを約7(例えば,7.0±0.05)に維持するのが好ましい。pHを常時モニターしつつ,pHの調節には,アルカリとしてアンモニア水を,酸として塩酸を用いることが好ましい。培養は,培養液の吸光度(OD600)がほぼプラトーに達してから2時間程度は続けるのが好ましい。
培養後は,遠心して菌体を回収し,菌体の細胞壁の破壊と封入体の分離及び精製を行う。細胞壁の破壊は,超音波処理等の機械的破砕によってもよく,界面活性剤を主体とした細胞壁を破壊してタンパク質を抽出するための市販の試薬(例えば,BugBusterTMProtein Extraction Reagent,タカラバイオ(株))を用いて行ってもよい。核酸の分解には,細胞壁の破壊又はその後のタンパク質抽出に際して,細胞を含んだ溶液にエンドヌクレアーゼを加えておけばよい。細胞壁の破壊と核酸の分解の後は,遠心にして封入体を沈殿として回収し,例えば,水洗及び遠心による回収のプロセスを複数回行って夾雑タンパク質を除去ずることにより,封入体を精製することができる。
精製した封入体の可溶化は,還元剤を含まないpH11〜13のグアニジン塩溶液中に封入体を分散させて(例えば,3mg/mL),低温(例えば4℃)で撹拌することにより行うことができる。他の可溶化剤,例えば尿素等を加える必要はない。グアニジン塩としては,例えばグアニジン塩酸塩を用いることができる。グアニジン塩(例えばグアニジン塩酸塩)の濃度は,2M以上であることが好ましい。グアニジン塩酸塩の濃度に明確な上限はないが,4M又は6Mで封入体が完全に可溶化する上,余分に加えても除去に手間を要するのみであることを考慮すれば,6Mまでとするのが便利である。従って,グアニジン塩の濃度は,2〜6Mの範囲とすればよい。グアニジン塩溶液には,必須ではないが緩衝剤を含有させておくことができる。緩衝剤としては特に限定はないが,可溶化後pHを下げてヒト成長ホルモンのリフォールデングを起こさせる際に,溶液のpHを8付近で比較的安定させるのに役立つものが挙げられる。一例は,Tris〔トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン〕である。封入体の可溶化は,約1〜18時間にわたって封入体の懸濁液を撹拌することにより完了する。
上記可溶化処理により得られたヒト成長ホルモン溶液(強アルカリ性)は,次いでグアニジン塩を除去すると共に溶液のpHを中性方向へと低下させることによりリフォールディングさせることができる。ここに,「中性方向への」とは,pH7付近へ向けて低下させることをいうが,必ずしもpH7にまで低下させることを要しない。活性測定もアルカリ側で行うことができ(例えば,pH7.35〜7.65。実施例の部を参照),これよりアルカリ側のpH,例えばpH9やpH8でもリフォールディングは起こるからである。従って,例えば,pH9又はpH8付近へとpHを低下させればで十分である。
またここに,「グアニジン塩の除去」というときは,必ずしも完全に除去すること意味せず,グアニジン塩の濃度を500mM程度又はそれ以下にすることを含む。その程度の除去でリフォールディングが起こるからである。従って,「グアニジン塩の除去」は,例えばグアニジン塩の濃度を,500mM,400mM,300mM,200mM,100mM又は0mMにすることを含む。
グアニジン塩を除去し且つpHを中性方向へと低下させるには,可溶化処理完了直後のヒト成長ホルモン溶液を,例えば,中性付近(例えばpH8)の緩衝液で単に希釈するか,又は同様の緩衝液を添加して限外濾過を行うか,同様の緩衝液に対して透析を行う等,適宜な手段を用いることができる。こうしてグアニジン塩を除去しpHを中性方向へと低下させることにより,正しくリフォールディングしたヒト成長ホルモンが溶液中に得られる。このプロセス中に沈殿が生じた場合,沈殿中には,ヒト成長ホルモンは殆ど含まれないため,遠心等により除去すればよい。
その後,こうしてリフォールディングされたヒト成長ホルモンを更に精製するには,例えば,イオン交換クロマトグラフィーその他,タンパク質の精製の分野で当業者に周知の手段を適宜選んで用いればよい。なお,上記でリフォールディングして得られたヒト成長ホルモンは,従来方法で大腸菌に産生させ抽出して得られているヒト成長ホルモンと同様,N末端にメチオニンが付加したものであり,この形でもヒト成長ホルモンとしての活性を十分に有する。天然型のヒト成長ホルモンを得るには,これまで大腸菌を用いたヒト成長ホルモン製剤の製造で行われてきた周知方法と同様にして,N末端のメチオニンをアミノペプチダーゼで除去すればよい。
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
1.GH発現ベクターの作製
ヒト成長ホルモンをコードするDNAのコード領域の塩基配列を,大腸菌発現系に好適となるよう修正し最適化した合成DNAを用いて,ヒト成長ホルモンの発現ベクターを構築した。ヒト成長ホルモン遺伝子のコード領域の本来の(すなわち野生型の)塩基配列及びそれによりコードされるアミノ酸配列を配列番号1及び配列番号2に,大腸菌内での発現用に最適化したコード領域の塩基配列及びそれによりコードされるアミノ酸配列を配列番号3及び4に,それぞれ示す。配列番号2及び配列番号4により表された配列は,同一である。配列番号3の塩基配列中,配列番号1との相違箇所の塩基に下線を付して,図1に示す。配列番号1のDNAのGC%〔(塩基Gの数+塩基Cの数)/全塩基数×100〕が,54.7%〔(138+179)/579×100〕であるのに対して,配列番号1の最適化DNAのGC%は,49.9%〔(146+143)/579×100〕である。また配列番号3の全塩基579個中,139個が,それぞれ,コードされるアミノ酸を変更しない範囲で(すなわち,各アミノ酸に対して縮重したコドンの範囲内で)他の塩基に置換されている。
発現ベクターの構築手順は次の通りである。すなわち,配列番号3の塩基配列を有するDNAを挿入して構築したプラスミドDNA(#055563)を鋳型に,KOD-plusを用いPCR反応を行った。反応系を半量に変更した以外は製品に添付のマニュアルに従ってPCR増幅を行った。順方向プライマーとしてOpt_hGH_FW 〔5’-CGGGATCCTAAGGAGGTTATCATATGTTTCCGACCATTCCGC-3’(配列番号5),塩基3〜8のGGATCCはBamHI部位,塩基9〜17のTAAGGAGGTはSD配列,塩基24以降がヒト成長ホルモンの最適化したコード領域である。〕を,逆方向プライマーとしてOpt_hGH_RV〔5’-CGGAATTC GCGGCCGCTTAAAAGCCGC-3’(配列番号6),塩基3〜8のGAATTCはEcoRI部位,塩基9〜16のGCGGCCGCはNotI部位である。〕を用いた。反応条件は「94℃/2分,(94℃/20秒,53℃/30秒,68℃/45秒)×30サイクル,4℃/∞」とした。アガロースゲル電気泳動で増幅を確認後,残りをQIAquick PCR精製キットで精製した。この精製したPCR産物及びpCE30(ATCC37830。ATCCより購入)を,それぞれBamHIとEcoRIで消化し,アガロースゲル電気泳動後に切り出してQIAquickゲル抽出キット若しくはMinEluteゲル抽出キットで精製した。両断片をLigation-Convenience キットを用いて連結し,Competent high HB101に導入して当該大腸菌を形質転換した。翌日,任意の10クローンLB+Amp培地で一晩培養し,さらにその翌日,QIAprep Spin Miniprep Kitでプラスミドを精製した。制限酵素処理解析でインサートが確認されたクローンのヒト成長ホルモン遺伝子配列をBigDye Terminator v1.1 Cycle sequencing Kit及びABI PRISM 3100-Avant genetic Analyzerを用いて解析し,配列(配列番号3)に誤りがないことを確認した。構築したヒト成長ホルモン発現ベクターを「pRL-hGH」と命名した。図2にそのベクターマップを示す。この発現ベクターは,pCE30が有するλファージのPRプロモーター及びPLプロモーターが,最適化ヒト成長ホルモン遺伝子の直ぐ上流にタンデムに並んでおり,これを強力に転写する。また同一ベクター内にpCE30が有するcI857遺伝子があり,どのような大腸菌でもこの発現ベクターで形質転換するだけで,温度を上昇させる(42℃)ことによる厳密な発現誘導が可能である。
2.コンピテントセル(BL21)の作製
一般的な塩化カルシウム法を用いて行った。1mLのLB培地にATCCより購入したBL21を植菌し,37℃で一晩培養した。この培養液0.25mLに12.5mLのLB培地を加えて更に37℃で2時間培養した。氷上で20分置いた後,3000rpm/4℃で10分遠心後に上清を除去して氷冷した0.1M塩化カルシウムを5mL加えた。更に氷上で20分置いた後,3000rpm/4℃で10分遠心後に上清を除去して氷冷した0.1M塩化カルシウムを0.25mL加えた。これを更に氷上で3時間置いたものをコンピテントセルとして形質転換に用いた。
3.ヒト成長ホルモン生産株の構築
上記1で構築した「pRL-hGH」1μLを,上記2で作製したコンピテントBL21の20μLに加え,氷上で30分置いた。37℃の浴槽で1分温めた後,200μLのSOC培地を加え,LB+Ampプレートに播種し37℃で培養した。翌日10個のクローンをLB培地に植菌し,下記4及び5の方法で発現を確認した。発現の確認できた10個のクローンのうちの1つでグリセロールストック(−80℃)を作成し,ヒト成長ホルモン生産株とした。このクローンを,以後のジャーファーメンター実験に用いた。
4.小スケール(試験管)での発現誘導
目的のクローンを1mLのLB+Amp培地に植菌して30℃で一晩培養した。50μLの培養液に950μL の2×YT培地を加えて更に3〜5時間,32℃で培養した。培養温度を42℃へ上げて発現を誘導し,更に3時間培養した。
5.SDS−PAGEによる発現確認
菌体を含む培養液を7000rpmで1分遠心して菌体ペレットを分離し,5%の2−メルカプトエタノールを含むLaemmli Sample Bufferで菌体を懸濁した後,95℃で5分加熱してSDS-PAGEに供した。この際,ヒト成長ホルモン標準品(N末端のメチオニン残基が除去されている)も同時にSDS-PAGEに供した。ヒト成長ホルモン標準品と同サイズのバンドの有無で発現確認を行った。それによると,この形質転換大腸菌は,30℃では全くヒト成長ホルモンの発現を示さなかったが(図3レーン2),42℃では,3時間の誘導で約10mg/L/OD600のヒト成長ホルモンを産生した。この形質転換大腸菌の全タンパク質中,ヒト成長ホルモンにおいて最も濃いバンドが見られた(図3レーン3)。
6.ヒト成長ホルモンの定量
ヒト成長ホルモンの定量は,SDS-PAGE,CBB染色,スキャナによる取り込み及びImage J による画像解析の手順により行った。ヒト成長ホルモン標準品の段階希釈液を3点作成し,それで検量線を作成してサンプル中のヒト成長ホルモンを測定した。
7.ジャーファーメンター用培地とFeed液の作製
ジャーファーメンター用の培地及びFeed液の組成は次の通りとした。
<ジャーファーメンター用培地(TK25)(1L量)>
(NH46HPO4・・・・・・・・・・25g
2SO4・・・・・・・・・・・・・・・5g
NaCl・・・・・・・・・・・・・・・・0.75g
MgSO4・7H2O・・・・・・・・・・5g
FeSO4・7H2O・・・・・・・・・・750mg
ZnSO4・7H2O・・・・・・・・・・170mg
CuSO4・5H2O・・・・・・・・・・75mg
MnSO4・4〜5H2O・・・・・・・・38mg
CaCl2・2H2O・・・・・・・・・・150mg
Na247・10H2O ・・・・・・・17mg
(NH46Mo724・・・・・・・・・7.5mg
グルコース・・・・・・・・・・・・・・・20g
酵母エキス・・・・・・・・・・・・・・・5g
<Feed液(P10E10G35)(300mL分)>
70%グルコース水溶液
上記の培地,Feed液共に,含水結晶ぶどう糖と他成分とを分けてオートクレーブ滅菌し,その後混合した。
8.全容3Lジャーファーメンター培養
ヒト成長ホルモン産生株のグリセロールストックの一部を100mLのTK25培地に植菌し,32℃で一晩培養した。この培養液をジャーファーメンターと共にオートクレーブ滅菌した1LのTK25培地へ加えて,32℃で培養を開始した。その他のパラメーターは自動制御でpH7.0±0.05,エアー流量2L/分,DO(溶存酸素濃度)>50%飽和(回転数と酸素供給による2段階制御)に設定した。菌増殖は濁度計で常時モニターした。pH調製用として,アルカリとして28%アンモニア水を,酸方向への調整用には塩酸を用いた。回転数も自動制御で初期は600rpmに設定し,DOの低下に従って600から1000rpmに上がるようにした。1000rpmでもDOの低下が見られたら,回転数を1000rpmに固定し,酸素を自動制御でDO>50%となるようにエアーに混合して供給した。Feed液は培養開始5時間後に添加開始し,段階的にFeed液量を増加させた(培養開始から5〜8時間後: 約25mL/h,8〜10時間:約35mL/h,10〜14時間後:約40mL/h)。培養開始8〜9時間後に培養温度を42℃に上げて,発現を誘導した。培養開始約14時間後に培養を止めて培養液を回収し,10000g/4℃で15分遠心して菌体ペレットを得た。培養途中もサンプリングを行い,氷上もしくは4℃で保存し,培養終了後に全サンプル同時に吸光度(OD600)を測定した。
上記全14時間の培養で,菌の増殖を示す吸光度(OD600)は約100に達し(図4A),その時のヒト成長ホルモン発現量は3〜4g/Lに達した。これはヒト成長ホルモン遺伝子の塩基配列をそのまま用いた従来の方法でのヒト成長ホルモン発現量の3〜4倍である。図4Bに示すように,DOは培養開始後から減少し始め,それに伴って回転数が上昇し,培養3時間後には最大回転数の1000rpmに達した。これ以降は酸素供給を行ってDOの維持に努めた。酸素消費速度はグルコース消費と相関しており,酸素消費速度を観察することでグルコースの枯渇をある程度察知できるため,それに応じて,培養開始から約5時間後にFeed液の供給を開始した。
9.封入体の精製
7.8gの菌体ペレット(湿重量)に,40mLのBugBuster(タンパク質抽出試薬,タカラバイオ(株))及び20μL Benzonase(エンドヌクレアーゼ,Merck KGaA)を加えて混合した。ローテーター(タイテック(株))で混合物を回転撹拌しながら室温で20分間置いた後,16000g/4℃で20分間遠心した。上清を除去し,ヒト成長ホルモン封入体を沈殿として得た。沈殿に洗浄液(20mM Tris,5mM EDTA及び2%デオキシコール酸塩を含有,pH8.0)50mLを加えて混合し,懸濁液とした。この懸濁液を16000g/4℃で15分間遠心後,上清を除去し,沈殿に再度上記の洗浄液50mLを加えて混合して懸濁液とし,16000g/4℃で15分遠心した。上清を除去し,沈殿を50mLの超純水(MilliQ水)に懸濁させ,16000g/4℃で15分間遠心した。この操作を2回行い,沈殿を回収した。これにより,ヒト成長ホルモンを殆どロスすることなしに,多くの夾雑タンパク質が除去された(図5)。得られた沈殿を次の「封入体の可溶化」プロセスに供した。
10.封入体の可溶化の検討
予備的実験においてヒト成長ホルモン封入体は,pH8の水溶液中においては全く可溶化せず,強アルカリ性(pH12.5)でも30〜40%しか可溶化されないことが判明した(図6A)。このため,上記で精製した封入体の溶解のための改良方法を求めて検討した。上記で精製した封入体のサンプルをとり,(a)100mM Tris及び2〜8M尿素を含有する水溶液,又は(b)100mM Tris及び0.5〜6Mグアニジン塩酸塩(GnHCl)を含有する水溶液(共に,水酸化ナトリウムによりpH12.5に調整)に,ヒト成長ホルモンとして3mg/mLの濃度となるように加え,ローテーターで混合物を回転攪拌しながら,4℃で1時間以上(1〜18時間)処理した。各混合物を15000rpm/4℃で15分間遠心し,上清中に可溶化されたヒト成長ホルモンを得た。図6Bに示すように,pH12.5における尿素の使用は,濃度4Mまでは可溶化効果がなく,8Mにおいても,封入体の約70%が可溶化されるに止まった。これに対し,pH12.5におけるグアニジン塩酸塩の使用では,2Mで封入体の95%以上が,4M以上で100%が可溶化された(図7)。高濃度の尿素ではタンパク質がカルバミル化される可能性も報告されていることや,可溶化率が極めて優れることから,強アルカリ性におけるグアニジン塩酸塩の使用が極めて好ましい可溶化方法であることが判明した。従ってこの方法で封入体を可溶化し,次の「リフォールディング」のプロセスに供した。
11.リフォールディング及び陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE FF)による簡易精製
100mM Tris及び2M グアニジン塩酸塩(pH12.5)含有の水溶液で可溶化することにより得られたヒト成長ホルモン溶液(3mg/mL)を,これに当量の100mM Tris水溶液(pH8.0)を加え混合することによって,1/2希釈した。同様の1/2希釈操作を更に4回反復することにより,溶液中のグアニジン塩酸塩の濃度を最終的に62.5mMまで低下させた(pH8〜9)。得られた溶液を12000rpm/4℃で1時間遠心し,沈殿を除去した。ヒト成長ホルモンは沈殿中には殆ど含まれず,可溶画分に存在していた(図8)。得られた上清を,次の「陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE FF)による簡易精製」のプロセスに供した。
20mM Tris水溶液(pH8.0)で平衡化済みのDEAE FFカラムに,超純水で10倍希釈し,0.8μmフィルターを通した上記のヒト成長ホルモン希釈溶液を負荷した。これを,20mM Tris水溶液(pH8.0)でカラムを洗浄後,20mM Tris,25/50/100/150mM NaCl,pH8.0で溶出させた。100mM NaClで溶出した画分をAmicon Ultra-4 10,000 MWCO膜で約30倍濃縮し,緩衝液をPBS(−)(塩化ナトリウム0.8%,塩化カリウム0.02%,リン酸一水素ナトリウム(無水)0.115%,リン酸ニ水素カリウム(無水)0.02%,pH7.35〜7.65,タカラバイオ(株))に置換した。溶液の280nmにおける吸光度を測定し,分子吸光係数をE1% 1cm=8.35としてヒト成長ホルモン濃度を算出した。図9に精製の結果を示す〔レーン1;負荷液(リフォーディングした本発明によるヒト成長ホルモン),レーン2;Pass画分,レーン3:PW画分,レーン4〜7;溶出画分(それぞれ,25,50,100,150mM塩化ナトリウム),レーン8;Strip画分(1M塩化ナトリウム),レーン9:ヒト成長ホルモン標準品〕。このうちレーン6のサンプルを次の「in vitroバイオアッセイ」に供した。
13.in vitro バイオアッセイ
成長ホルモン依存性細胞株を用いた。まず,GH培地(RPMI1640+10%FBS+0.4mg/mL,G418+100ng/mL)に,成長ホルモン依存性細胞を1×105個/mLで播種し,37℃/5%CO2にて3日間培養した。4倍量の同培地を加えて,更に一晩37℃/5%CO2で培養した。翌日,PBS(−)で細胞を3回洗浄した後,培地(RPMI1640+10%,ウマ血清0.1mg/mL,G418)に懸濁し,37℃/5%CO2で16時間培養した。細胞数を測定し,3×105個/mLとなるようにRPMI1640+10%ウマ血清にて調整し,96ウェルプレートの各ウェルに100μLずつ分注した。上記簡易精製プロセスにより調製されたヒト成長ホルモンと,ヒト成長ホルモン標準品とを,PBS(−)+0.5%BSAで,60ng/mLの濃度から始めて各3倍希釈して9希釈系列を作成し(60〜0.009ng/mL),各ウェルに加えた(n=3)。ヒト成長ホルモンを加えないウェルをブランクとした。これらのプレートを37℃/5%CO2にて22時間培養後に,CellTiter96 Aqueous細胞増殖試験キット(Promega製)を用いて,増殖した細胞数を比色定量した。その結果,上記で得られたヒト成長ホルモンに生物活性があることが確認された(図10A及びB)。
本発明は,大腸菌の菌体内におけるヒト成長ホルモンの産生率を格段に高め,及び/又は大腸菌の菌体内に封入体として産生されたヒト成長ホルモンからの,活性なホルモンの回収率を格段に高めるため,高い製造効率でのヒト成長ホルモンの製造に利用することができる。
最適化したヒト成長ホルモンコード領域の塩基配列。塩基の下線は,本来のコード配列の塩基からの変更箇所を示す。 pRL-hGHのベクターマップ。 SDS-PAGEの結果を示す図面代用写真。レーン1;ヒト成長ホルモン標準品,レーン2;誘導前(30℃),レーン3;誘導3時間後。 14時間培養時のOD600の推移,及びヒト成長ホルモン発現誘導開始から4,5,6時間後におけるヒト成長ホルモンの発現量を示すグラフ。 ジャーファーメンターでの14時間培養における制御パラメーターの推移を示すグラフ。 精製された封入体の精製度合いを示す図面代用写真 弱アルカリ条件下及び強アルカリ条件下(4時間)での,封入体可溶化の程度を示すグラフ。 強アルカリ条件下での8Mまでの尿素による封入体可溶化の程度を示すグラフ。 強アルカリ条件下での6Mまでのグアニジン塩酸塩による封入体の可溶化を示すグラフ。 強アルカリ条件下でのグアニジン塩酸塩による封入体可溶化後のヒト成長ホルモンのリフォールディング効率を示すグラフ。 DEAE FFによる簡易精製の結果を示す図面代用写真。レーン1;負荷液(リフォーディングしたヒト成長ホルモン),レーン2;Pass画分,レーン3:PW画分,レーン4〜7;溶出画分(それぞれ,25,50,100,150mM塩化ナトリウム),レーン8;Strip画分(1M塩化ナトリウム),レーン9:ヒト成長ホルモン標準品。 (A)ヒト成長ホルモン標準品のホルモン活性を示す標準曲線。(B)本発明により得られたヒト成長ホルモン(N末端メチオニン未除去)のホルモン活性を示す標準曲線。

Claims (14)

  1. 配列番号3に示す塩基配列を含んでなるDNAをコード領域として有し,該コード領域の塩基配列の上流にSD配列,その上流にλファージのPLプロモーター,更にその直ぐ上流にPRプロモーターを含んでいるものである,ヒト成長ホルモン発現ベクター。
  2. 温度感受性リプレッサー遺伝子を更に含むものである,請求項のヒト成長ホルモン発現ベクター。
  3. 該温度感受性リプレッサーが42℃において不活性化されるリプレッサーである,請求項のヒト成長ホルモン発現ベクター。
  4. 該温度感受性リプレッサーがλcI857である,請求項のヒト成長ホルモン発現ベクター。
  5. 請求項ないし何れかのヒト成長ホルモン発現ベクターで形質転換された大腸菌。
  6. 大腸菌にヒト成長ホルモン発現ベクターを導入し,該大腸菌を培養することによりヒト成長ホルモンを封入体として産生させることを含んでなる成長ホルモンの産生方法であって,該発現ベクターにおけるヒト成長ホルモンのコード領域の塩基配列が,配列番号3に示す塩基配列であることを特徴とする,方法。
  7. 該発現ベクターが,該ヒト成長ホルモンのコード領域の塩基配列の上流にSD配列,その上流にλファージのPLプロモーター,更にその直ぐ上流にPRプロモーターを含んで
    いるものである,請求項の方法。
  8. 該発現ベクターが,温度感受性リプレッサー遺伝子を更に含むものである,請求項の方法。
  9. 該温度感受性リプレッサーが42℃において不活性化されるものである,請求項の方法。
  10. 該温度感受性リプレッサーがλcI857である,請求項8又は9の方法。
  11. 請求項ないし10の何れかの方法によって菌体内にヒト成長ホルモン封入体を産生させた後,これを単離し,該単離されたヒト成長ホルモン封入体を,還元剤の不存在下,pH11〜13アルカリ性条件下に水性媒質中で2M以上の濃度のグアニジン塩と混合するステップと,該混合物中の封入体が溶解するまで混合物を撹拌して溶液とするステップとを含んでなるものである,可溶化させたヒト成長ホルモンの製造方法。
  12. グアニジン塩の濃度が2〜6Mである,請求項11の方法。
  13. 該グアニジン塩がグアニジン塩酸塩である,請求項11又は12の方法。
  14. 請求項11ないし13の何れかの方法によって可溶化させたヒト成長ホルモンを製造し,該溶液の塩酸グアニジンを除去し且つ溶液のpHを中性方向へと低下させることにより,ヒト成長ホルモンのリフォールディングを起こさせるステップを含んでなるものである,活性なヒト成長ホルモンの製造方法
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