JP4876325B2 - ドライアイスペレットの製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライアイスペレットの製造装置に関するものであり、詳しくは、一層高密度のドライアイスペレットをより効率的に製造できるドライアイスペレットの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドライアイスペレット(ペレット状のドライアイス)は、直径が6mm程度、長さが5〜50mm程度のチョーク状のドライアイスであり、0.3〜25kgと言った塊で使用される薄板状またはブロック状の塊状ドライアイスに比べて質量に対する表面積が大きいため、食品などの被冷却物をある程度急速に冷却できる。勿論、ドライアイスペレットは、塊状ドライアイスに比べると速く昇華するが、粉体状ドライアイスに比べると昇華時間が長いため、さほど長時間でない限り、蓄冷材として保管や輸送にも適している。
【0003】
ドライアイスペレットの製造技術に関し、特開昭46−1162号および特開昭51−111499号の各公報には、周面に多数の押出し用小孔が設けられたリング状の押出ダイと、押出ダイの内側に粉体状ドライアイスを堆積させるスノー生成機構と、押出ダイの内周に歯合する回転押出器としての歯車とを備え、堆積させた粉体状ドライアイスを歯車の駆動によって順次圧縮して押出ダイの小孔から押し出すことによりドライアイスペレットに成形する「ドライアイスペレット製造機」が記載されている。
【0004】
また、特開昭49−59059号公報には、押出通路を有するダイス装置と、押出通路の入口部分に粉体状ドライアイスを供給するスノーの噴射装置と、押出通路に粉体状ドライアイスを押し詰めて押出通路の出口まで突出する棒状押出器とを備えた「固形二酸化炭素の成形ペレットを製造する装置」、および、粉体状ドライアイスを生成した後、これを押出通路から棒状の成形品として押し出す「固形二酸化炭素の成形ペレットを製造する方法」が記載されている。
【0005】
上記の各公報に記載されている様に、ドライアイスペレットは、適当なオリフィス径のノズルから液化炭酸ガスを噴射、断熱膨張させることにより、一旦、粉体状ドライアイスを製造した後、粉体状ドライアイスをチョーク状に圧縮成形して製造される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、塊状ドライアイスは、約1.5〜1.6g/cm3の密度(嵩密度)を有しているのに対し、従来の製造装置や製造方法によって得られるドライアイスペレットの密度(嵩密度)は1.4g/cm3程度である。すなわち、ドライアイスペレットは、上記の様に粉体状ドライアイスを直接圧縮成形した小さな塊であり、塊状ドライアイスに比べて密度が小さく且つ硬度が低いため、昇華によるロスが多く、また、取扱い中に砕け易いと言う問題がある。
【0007】
また、ドライアイスペレットは、上記の様な装置によって製造されるため、製造効率が低く且つ製造コストが高くなる。すなわち、ドライアイスペレットの製造においては、粉体状ドライアイスの生成とその圧縮成形と言う一連の2つの工程を必要とするため、製造速度が遅く、しかも、高圧の液化炭酸ガスを貯蔵・供給するための設備が大掛かりで且つ装置構成が複雑となるため、維持管理や操作が煩雑となり、製造コストが高くなる。その結果、ドライアイスペレットは、塊状ドライアイスに比べて普及し難いと言う実情がある。
【0008】
更に、従来のドライアイスペレットの製造装置においては、ドライアイスとの接触部分が氷結し、作動不良を惹起し易く、また、運転時に炭酸ガスによって酸性化した水分が金属部品に付着して腐食し易いと言う問題がある。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一層高密度のドライアイスペレットをより簡便に且つより効率的に製造でき、しかも、一層均質なドライアイスペレットを製造できる新規なドライアイスペレットの製造装置を提供することにある。また、本発明の目的は、氷結による作動不良がなく、しかも、耐蝕性に優れたドライアイスペレットの製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係るドライアイスペレットの製造装置は、塊状ドライアイスからドライアイスペレットを製造する装置であって、塊状ドライアイスを収容するケーシングと、当該ケーシングの一端側に配置され且つプレス板によって塊状ドライアイスを他端側に向けて加圧するシリンダー装置と、前記ケーシングの他端側に配置され且つ多数のノズルを備えた押出ダイとから構成され、前記ケーシングの内表面には、フッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層が設けられ、当該被覆層が、前記ケーシングの内表面に貼設された金属板の表面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、上記ドライアイスペレットの製造装置において、シリンダー装置は、予め高い密度に圧縮成形されたケーシング内の塊状ドライアイスをプレス板によって更に圧縮することにより、塊状ドライアイスに対して2段目の圧縮を行ない、また、ケーシングの他端側の押出ダイは、圧縮変形される塊状ドライアイスをチョーク状のペレットドライアイスに成形する。また、ケーシング内表面の特定の被覆層は、熱伝導率が低く且つ撥水性を有しているためにケーシング内における塊状ドライアイスの氷結を防止し、かつ、酸性化した水分に対して優れた耐蝕性能を発揮する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、本発明に係るドライアイスペレットの製造装置およびドライアイスペレット製造の各操作工程を破断して示す側面図であり、図4は、本発明に係るドライアイスペレットの製造装置およびメンテナンス操作を破断して示す側面図である。また、図5〜図8は、各々、押出ダイのノズルの形状例を示す断面図である。以下、実施形態の説明においては、ドライアイスペレットを「ペレット」と略記する。
【0013】
本発明に係るペレットの製造装置は、図1に示す様に、塊状ドライアイス(70)(図2参照)からペレット(71)(図3参照)を製造する装置であり、斯かる装置は、塊状ドライアイス(70)を収容するケーシング(2)と、ケーシング(2)の一端側に配置され且つプレス板(41)によって塊状ドライアイス(70)を他端側に向けて加圧するシリンダー装置(4)と、ケーシング(2)の他端側に配置され且つ多数のノズル(30)を備えた押出ダイ(3)とから主として構成される。
【0014】
本発明において、ペレットとは、ペレット状ドライアイス、ペレットドライアイス、チョーク状ドライアイス又は粒状ドライアイスとも言われる従来公知の形態のドライアイスを指す。また、塊状ドライアイスとは、従来から固形ドライアイスと称するドライアイスであって、例えば10〜30kgのブロック状、0.2〜5kg程度の薄板状あるいは30〜100g程度の小片として一般的に使用されるドライアイスを言う。塊状ドライアイス(70)は、液化炭酸ガスの断熱膨張によって得られた粉体状ドライアイスを加圧成形することにより、予め塊状に製造されたドライアイスである。
【0015】
具体的には、上記の塊状ドライアイス(70)は、ドライアイス製造工場などにおいて、通常、気密可能なコンテナ中に約−20℃、2×106Paの液化炭酸ガスを供給した後、コンテナ内を大気圧に減圧することにより、液化炭酸ガスを断熱膨張させて粉体状ドライアイスに相変化させ、次いで、コンテナ内で粉体状ドライアイスを約4×106〜10×106Pa圧力でプレス成形したものである。また、塊状ドライアイス(70)は、比較的小型のコンテナ内にノズルから直接液化炭酸ガスを噴射、断熱膨張させ、粉体状ドライアイスを生成した後、コンテナ内で粉体状ドライアイスを上記と同様にプレス成形して製造される場合もある。
【0016】
上記の様に製造される塊状ドライアイス(70)は、物流上の都合などにより10〜25kgのブロックに成形され、また、用途によっては、更に0.2〜5kg程度に分割される。塊状ドライアイス(70)の形態としては、ブロック状、薄板状、あるいはその欠片の何れでもよいが、より高い密度のペレット(71)を得るためには、塊状ドライアイス(70)の密度(嵩密度)は、1.45〜1.65g/cm3であるのが好ましい。
【0017】
本発明のペレットの製造装置は、図1に示す様に、2つの支持フレーム(13,14)が立設された架台(1)を利用して組み立てられており、2つの支持フレーム(13,14)は、それぞれに枠組構造を有し且つ対向配置されている。ケーシング(2)は、適宜の形状に構成し得るが、例えば、凡そ四角筒状または円筒状に形成され且つその中心線が水平となる状態に支持フレーム(13)及び(14)の間に架設される。
【0018】
より具体的には、ケーシング(2)は、後述する様なメンテナンス作業を行なうため、支持フレーム(13)と(14)の間で前後に移動可能に配置される。すなわち、ケーシング(2)は、基台(15)の上に搭載されており、基台(15)は、支持フレーム(13)及び(14)の間に架設された案内レールに係合している。そして、基台(15)は、支持フレーム(14)に取り付けられたシリンダー装置(5)によって所定距離だけ進退する様に構成されており、ケーシング(2)の前端と押出ダイ(3)とは、シリンダー装置(5)の後退動作により離間可能になされている(図4参照)。
【0019】
ケーシング(2)の内部は、塊状ドライアイス(70)を圧縮するための加圧室(23)として構成される。加圧室(23)において実質的に加圧操作に使用される部位(図1におけるケーシング(2)の略右半分の部位)の容積は、例えば、約0.003〜0.03m3とされる。また、ケーシング(2)の上部には、塊状ドライアイス(70)を供給するための投入口(21)が設けられ、斯かる投入口(21)には、運転中の安全を確保するため、スライドレールに沿って水平方向に移動して投入口(21)を開閉する蓋(22)が付設される。
【0020】
本発明のペレットの製造装置においては、ケーシング(2)の加圧室(23)の断熱性能、耐蝕性能を高め、かつ、加圧室(23)での氷結を防止してシリンダー装置(4)のプレス板(41)を円滑に作動させるため、ケーシング(2)の内表面には、フッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層(図示省略)が形成されていることが重要である。上記のフッ素樹脂としては、4フッ化エチレン(PTFE)、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、3フッ化エチレン−塩化エチレン(CTFE)等が挙げられる。
【0021】
フッ素樹脂から成る被覆層は、フッ素樹脂のシートを加圧室(23)の内側に直接貼り付ける所謂ライニング処理によっても設けることができるが、加圧による変形などの問題を考慮すると、通常はコーティング処理によって形成される。周知の通り、フッ素樹脂のコーティング処理は、金属表面に所要の表面処理やプライマー加工を施した後、フッ素樹脂を塗布して焼成することにより、フッ素樹脂の被膜を形成する処理であり、斯かる処理によって形成される被覆層は、撥水性に優れ、氷結防止機能に優れているので好ましい。
【0022】
これに対し、フッ素樹脂を含有する被覆層は次の様な被膜処理によって形成される。すなわち、被膜処理の一例としては、アルバックテクノ社の商品名「ニダックス」として公知の処理が挙げられる。斯かる処理は、無電解ニッケルをベースとした樹脂複合メッキであり、粒子状に析出させたNi−Pの多孔性表面構造の表層にフッ素樹脂を含浸させた後、更に加熱処理を施すことにより、無電解ニッケルとフッ素樹脂が強固に密着した被膜を形成する処理である。
【0023】
また、被膜処理の他の例としては、同様にアルバックテクノ社の商品名「ニフグリップ」として公知の処理が挙げられる。斯かる処理は、無電解ニッケルとフッ素樹脂を処理液中で共析させ、次いで、斯かる処理液を金属表面に塗布することにより、フッ素樹脂が10〜30Vol%含まれる塗布膜を形成した後、更に加熱処理することにより無電解ニッケルとフッ素樹脂が強固に密着した被膜を形成する処理である。上記の様な被膜処理によって形成される被覆層は、より高い硬度が得られ、優れた耐摩耗性を発揮できるので好ましい。
【0024】
上記の被膜層は、ケーシング(2)の内表面に直接設けられてもよいし、他の表面材を介して設けられてもよい。すなわち、本発明のペレットの製造装置における好ましい一の態様としては、ケーシング(2)の内表面に被覆層が直接形成された態様が挙げられる。また、本発明のペレットの製造装置における好ましい他の態様としては、ケーシング(2)の内表面(加圧室(23)の内側)に金属板が貼設され、そして、当該金属板の表面に被覆層が形成された態様が挙げられる。
【0025】
上記の被覆層をどの様な形態で設けるかは、製造コスト、被覆層の耐久性、メンテナンスの容易性などを勘案して決定されるが、ケーシング(2)の内表面に被覆層を直接形成した構造は、ケーシング(2)の構成が簡単であり、装置の組立工程を簡素化できる点において優れている。また、被覆層が表面に形成された金属板をケーシング(2)の内表面に貼設した構造は、被覆層が劣化した場合に金属板の交換によって簡単に補修できる点において優れている。
【0026】
本発明のペレットの製造装置において、シリンダー装置(4)は、ケーシング(2)の一端側に位置する支持フレーム(14)に取り付けられる。シリンダー装置(4)のロッド先端に設けられたプレス板(41)は、ケーシング(2)の一端側から加圧室(23)の内部に挿入されており、加圧室(23)に供給された塊状ドライアイス(70)を他端側、すなわち、押出ダイ(3)側に向けて加圧する様になされている。
【0027】
上記シリンダー装置(4)としては、塊状ドライアイス(70)をより高密度に圧縮するため、プレス板(41)において15×106〜35×106Paの圧力で加圧可能なシリンダー装置、一般的には油圧方式のシリンダー装置が使用される。換言すれば、シリンダー装置(4)の総出力としては、プレス板(41)の面積に上記の圧力を乗じた値に相当する出力が必要とされる。
【0028】
プレス板(41)における加圧力を上記の様に規定する理由は次の通りである。すなわち、塊状ドライアイス(70)は、前述した様に、粉体状ドライアイスをプレス成形したものであり、例えば1.5〜1.6g/cm3の密度を有しているが、塊状ドライアイス(70)をプレス成形する際の加圧力は、凡そ4×106〜10×106Paである。斯かる塊状ドライアイス(70)を更に圧縮し且つ形状変化させるには、15×106Pa以上の圧力が必要である。他方、35×106Paよりも大きな圧力で加圧した場合は、ペレット(71)において得られる圧縮率に比べ、極めて高い装置強度を必要とし、しかも、成形効率がさほど向上できないため、製造コストの観点から不利である。
【0029】
また、本発明のペレットの製造装置においては、断熱性能、耐蝕性能を高め、かつ、加圧室(23)での氷結を防止してプレス板(41)を円滑に作動させるため、ケーシング(2)の内表面と同様に、シリンダー装置(4)のプレス板(41)の少なくとも先端面には、前述の様なPTFE,PFA,FEP,ETFE,CTFE等のフッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層(図示省略)が設けられているのが好ましい。
【0030】
前述のケーシング(2)の加圧室(23)におけるのと同様に、通常、フッ素樹脂から成る被覆層はコーティング処理によって形成することが出来る。また、フッ素樹脂を含有する被覆層は前述の様な被膜処理によって形成することが出来る。そして、プレス板(41)の被覆層は、ケーシング(2)の内表面におけるのと同様に、プレス板(41)の表面に直接設けられてもよいし、他の表面材を介して設けられてもよい。更に、プレス板(41)の先端面だけに上記の被覆層を設ける場合には、フッ素樹脂のシートを直接貼り付けるライニング処理でもよい。
【0031】
すなわち、本発明のペレットの製造装置における好ましい一の態様としては、プレス板(41)の少なくとも先端面に被覆層が直接形成された態様が挙げられる。また、本発明のペレットの製造装置における好ましい他の態様としては、プレス板(41)の少なくとも先端面に金属板が貼設され、そして、当該金属板の表面に被覆層が形成された態様が挙げられる。上記の被覆層をどの様な形態で設けるかは、ケーシング(2)の被覆層の場合と同様に、製造コスト、メンテナンスの容易性などを勘案して決定される。
【0032】
押出ダイ(3)は、ケーシング(2)の他端側に位置する支持フレーム(13)に取り付けられる。押出ダイ(3)は、ケーシング(2)が運転位置にある場合、ケーシング(2)の他端に密着する様になされている(図1〜図3参照)。そして、多数のノズル(30)は、ケーシング(2)の中心線に直交する断面に対して略均等な配置となる様に押出ダイ(3)に設けられる(図示省略)。
【0033】
ノズル(30)の数は、適宜に設定出来るが、圧縮力を保持し且つ製造効率を高める観点から、ケーシング(2)の上記の断面に対する全ノズル(30)の開口率、すなわち、ケーシング(2)の断面積に対する総開口面積の割合は、通常、55〜70%に設定される。
【0034】
ノズル(30)の直径(図5〜図8に示す最小径(d0))は、ペレット(71)の使用態様を考慮し、3〜20mmの範囲とされる。すなわち、ノズル(30)は、ペレット(71)が急速冷却に使用される場合は被冷却物との接触面積を大きくするため、小さな直径のペレット(71)を形成し得るノズルがよく、また、ペレット(71)が蓄冷材として使用される場合は出来る限り昇華速度を遅くするため、大きな直径のペレット(71)を形成し得るノズルがよい。
【0035】
ノズル(30)の形状は、単に直管状、テーパー状であってもよいが、塊状ドライアイス(70)を所定の直径のチョーク状に成形し且つ一層円滑に排出するため、例えば、図5〜図8に示す様に、押出方向に沿ったノズル(30)の断面形状は、直管とテーパーを組み合わせた形状が好ましい。図5〜図8中の矢印は押出方向を示し、各図において左側の口がノズルの入口であり、右側の口がノズルの出口である。すなわち、押出ダイ(3)のノズル(30)は、図5〜図8に示す様に、基本的には、入口側または途中に形成された絞り部としての直管部(30s)と、出口側に形成され且つ出口に向かうに従い漸次拡径されたテーパー部(30t)とを備えている。
【0036】
通常、上記ノズル(30)の長さ(L)、すなわち、押出ダイ(3)の厚さは、30〜80mm程度とされ、そして、ノズル(30)の最小径(d0)(直管部(30s)の直径)に対する出口側最大径(d1)(テーパー部(30t)の最大直径)の比(d1/d0)は100.5〜115に設定される。また、ノズル(30)の最小径(d0)と出口側最大径(d1)の比率は、テーパー部(30t)の傾斜度によって一層正確に規定でき、斯かるテーパー部(30t)の傾斜度は、1/50〜1/120、好ましくは1/80〜1/100に設定される。ノズル(30)における上記の様な最小径(d0)と出口側最大径(d1)の比率または傾斜度の設定により、成形されたペレット(71)をより円滑に排出できる。
【0037】
また、原料としての塊状ドライアイス(70)の加圧時の変化ならびに成形されるペレット(71)の性状について種々解析を重ねた結果、押出ダイ(3)の外周部に位置するノズルほど少ない抵抗で押し出されることが確認された。そして、各ノズル(30)の形状を同一に形成した場合、押出ダイ(3)の外周部のノズルから押し出されるペレットは、中央部から押し出されるペレットに比べて硬度が低く、崩壊し易いと言う傾向が見出された。そこで、押出ダイ(3)においては、各ノズル(30)の押出抵抗(圧縮率)が略一定となる様に、図5〜図8に示す各種のノズル(30)を組み合わせて配置されてもよい。
【0038】
図5に示すノズル(30)は、押出抵抗の最も低い構造のノズルであり、入口側に形成された直管部(30s)と、出口側に形成された上記テーパー部(30t)とから成る。図6〜図8に示す各ノズル(30)は、入口側に形成され且つ出口側に向かうに従い漸次縮径された逆テーパー部(30r)と、当該逆テーパー部の下流側に形成された直管部(30s)と、出口側に形成された上記テーパー部(30t)とから成る。図6〜図8に示すノズル(30)は、入口側の逆テーパー部(30r)の長さがそれぞれに相違し、斯かる長さ相違により押出抵抗がそれぞれに異なる。すなわち、図番の順に、逆テーパー部(30r)の長さが長いほど押出抵抗が高くなる。
【0039】
また、前述のテーパー部(30t)と同様に、ノズル(30)に設けられた逆テーパー部(30r)において円滑に且つ効果的に塊状ドライアイス(70)を圧縮変形させるため、ノズル(30)の最小径(d0)に対する入口側最大径(d2)(逆テーパー部(30r)の最大直径)の比(d2/d0)は100.5〜115に設定される。また、ノズル(30)の最小径(d0)と入口側最大径(d2)の比率は、逆テーパー部(30r)の傾斜度によって一層正確に規定でき、斯かる逆テーパー部(30r)の傾斜度は、1/50〜1/120、好ましくは1/80〜1/100に設定される。ノズル(30)における上記の様な最小径(d0)と入口側最大径(d2)の比率または傾斜度の設定により、塊状ドライアイス(70)をより円滑にノズルへ導入でき且つ効率的に圧縮できる。
【0040】
また、押出ダイ(3)においては、一層円滑にペレット(71)を押し出すため、各ノズル(30)の内面は、平滑化処理されているのが好ましく、斯かる平滑化処理は、通常、機械研磨によって施される。研磨加工の方法としては、一般的な穴開け加工によって図の形状に形成したノズル(30)に対し、円筒内面研摩用の砥石、例えば、ユーコー社製の「フレックスホーン(商品名)」等を挿通して研摩する方法が挙げられる。上記の円筒内面研摩用の砥石は、特定の球状砥石が軸上に多数配列された可撓性を有する回転ブラシ状の研磨用ホーン(ホーニング材)であり、多数の球状砥石は、砥粒を低温焼結して成り且つその表面にナイロン製のファイバーフィラメントを付着させたものである。上記の研磨用ホーンに関する技術は、特開平6−226646号公報に開示されている。
【0041】
次に、上記の製造装置の運転方法と共に、ペレットの製造方法について説明する。ペレットの製造においては、先ず、図1に示す様に、シリンダー装置(4)のプレス板(41)を基端位置に待機させた状態において、蓋(22)をスライドさせることにより、ケーシング(2)の投入口(21)を開口する。そして、図2に示す様に、ケーシング(2)の加圧室(23)に塊状ドライアイス(70)を収容する。図2は、ブロック状のドライアイスを投入した状態を例示したものであるが、薄板状のドライアイスや欠片を仕様する場合は、運転効率を高めるため、加圧室(23)に収容し得る多くの量を投入するのが好ましい。
【0042】
次いで、図3に示す様に、投入口(21)の蓋(22)を閉止した後、シリンダー装置(4)を作動させることにより、加圧室(23)においてプレス板(41)を前進させる。すなわち、ケーシング(2)の一端側から他端側へ向けてプレス板(41)によって加圧室(23)内の塊状ドライアイス(70)を加圧する。その際、前述したシリンダー装置(4)の構成により、プレス板(41)において15×106〜35×106Paの圧力で加圧する。そして、ケーシング(2)の他端側に配置された押出ダイ(3)のノズル(30)から塊状ドライアイス(70)をチョーク状に押し出す。
【0043】
すなわち、上記の製造装置において、シリンダー装置(4)は、ケーシング(2)内の予め高い密度に圧縮成形された塊状ドライアイス(70)をプレス板(41)によって更に圧縮することにより、塊状ドライアイス(70)に対して実質的に2段圧縮を行ない(塊状ドライアイス(70)を製造する際の加圧成形操作が1段目の圧縮操作に相当し、プレス板(41)による加圧操作が2段目の圧縮操作に相当する)、また、ケーシング(2)の他端側のノズル(30)は、圧縮変形される塊状ドライアイス(70)をチョーク状に成形する。
【0044】
換言すれば、上記の製造装置においては、予め高い密度に圧縮成形された塊状ドライアイス(70)をケーシング(2)内で更に圧縮しつつノズル(30)から押し出すことによる2段圧縮効果と圧縮成形効果により、塊状ドライアイス(70)を一層高密度のペレット(71)に直接成形することが出来る。そして、本発明においては、密度(嵩密度)が1.50〜2.20g/cm3のペレット(71)を得ることが出来る。なお、ペレット(71)は、衝撃を与えることによって適宜な長さに分割できる。
【0045】
また、本発明の製造装置においては、図4に示す様に、加圧室(23)や押出ダイ(3)の保守管理を行う場合、シリンダー装置(5)の作動によって基台(15)を後退させることにより、ケーシング(2)の前端と押出ダイ(3)を離間させることが出来る。斯かる操作により、例えば、運転終了後に氷結した塊状ドライアイス(70)の残片を簡単に排除できる。
【0046】
ケーシング(2)内における上記の様な簡単な加圧操作により、塊状ドライアイス(70)を圧縮して高密度のペレット(71)に成形できる理由は、次の様に考えられる。すなわち、従来の塊状ドライアイス(70)を製造する工程においては、粉体状ドライアイスをコンテナ内で押し固めた場合、粉体状ドライアイスの昇華に伴う内部圧力の発生により、プレス機による大きなプレス圧力にも拘わらず、得られる塊状ドライアイス(70)の密度は1.5〜1.6g/cm3程度となる。これに対し、本発明においては、予め圧縮成形された塊状ドライアイス(70)を更に圧縮するため、昇華による内部圧力の発生を見ることなく、意外にも塊状ドライアイス(70)を流動的に変形させることが出来、より高い密度で成形できる。
【0047】
上記の様に、本発明に係るペレットの製造装置によれば、液化炭酸ガスに比べて流通・貯蔵の極めて容易な塊状ドライアイス(70)から簡単に高密度のペレット(71)を製造でき、しかも、塊状ドライアイス(70)から直ちに押出成形できるために極めて効率的にペレット(71)を製造できる。従って、ペレット(71)の製造コストを一層低減できる。
【0048】
もっとも、塊状ドライアイス(70)が液化炭酸ガスから製造されることからすると、ペレット(71)の液化炭酸ガスからの製造コストは、一見、従来のペレットと同等とも考えられる。しかしながら、一般的に流通している塊状ドライアイス(70)は、大型設備の連続稼働によって量産されており、低コストで製造できる。従って、本発明の製造装置によれば、液化炭酸ガスからペレットを製造する従来装置に比べ、塊状ドライアイス(70)の製造コストを含めても、遥かに低コストでペレット(71)を製造できる。
【0049】
また、本発明に係るペレットの製造装置によれば、従来のペレット製造装置に比べ、粉体状ドライアイスの生成機構がなく、上記の様に加圧成形するだけの極めて簡単な装置構成により、効率的に高密度のペレット(71)を製造できる。更に、従来のペレット製造装置においては、装置内で粉体状ドライアイスを生成するため、運転開始から安定してペレットを製造するまでに多くの予冷時間を必要とし、また、装置が十分に冷却されるまでの間の昇華ロスが大きいが、本発明の製造装置においては、塊状ドライアイス(70)を直ちに成形するため、運転開始と同時にペレット(71)を製造でき、かつ、ケーシング(2)等の予冷による昇華ロスを極めて少なく出来る。斯かる点からもペレット(71)の製造コストを低減できる。
【0050】
更に、上記ペレットの製造装置においては、ケーシング(2)の内表面にフッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層が設けられており、斯かる被覆層は、熱伝導率が低く且つ撥水性を有しているためにケーシング内における塊状ドライアイスの氷結を防止する。従って、本発明に係るペレットの製造装置においては、氷結によるプレス板(41)の作動不良がなく、シリンダー装置(4)の円滑な作動が保証される。しかも、被覆層は、酸性化した水分に対して優れた耐蝕性能を発揮するため、本発明に係るペレットの製造装置は、一層優れた耐久性能を発揮する。
【0051】
また、シリンダー装置(4)のプレス板(41)の少なくとも先端面にフッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層が設けられている場合には、その低い熱伝導率と撥水性によりプレス板(41)における塊状ドライアイスの氷結を防止でき、酸性化した水分に対してプレス板(41)が優れた耐蝕性能を発揮できるため、氷結によるプレス板(41)の作動不良をより確実に防止でき、しかも、より一層優れた耐久性能を発揮できる。
【0052】
本発明に係るペレットの製造装置によって得られるペレット(71)は、従来のペレットと同様にチョーク状の小さなドライアイスであるから、被冷却物との接触効率がよく、被冷却物を急速に冷却できる。しかも、従来のペレット及び塊状ドライアイスよりも更に高い密度を有しているため、昇華時間が長く、昇華によるロスも一層低減出来る。また、密度に比例して硬度も極めて高いため、取扱いによる破損ロスも一層低減出来る。
【0053】
なお、本発明の製造装置によるペレットの製造においては、塊状ドライアイス(70)を出発原料としているが、本発明は、前述した様な塊状ドライアイス(70)を製造する従来の製造工程にも適用出来る。すなわち、従来の製造設備における既存のコンテナにプレス板(41)及び押出ダイ(3)を併設し、コンテナをケーシング(2)として使用することにより、コンテナ内で得られた塊状ドライアイス(70)を系外に取り出すことなく、更に圧縮して押出成形し、上記の様な高密度のペレット(71)を製造できる。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係るドライアイスペレットの製造装置によれば、従来のドライアイスペレット製造装置に比べ、粉体状ドライアイスの生成機構がなく、加圧成形するだけの極めて簡単な装置構成により、一層高密度で且つ均質なドライアイスペレットを効率的に製造できる。しかも、本発明に係るドライアイスペレットの製造装置によれば、ケーシングの内表面に設けられたフッ素樹脂の被覆層がケーシング内における塊状ドライアイスの氷結を防止し且つ酸性化した水分に対して優れた耐蝕性能を発揮するため、プレス板の作動不良がなく、シリンダー装置の円滑な作動を保証でき、また、一層優れた耐久性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドライアイスペレットの製造装置およびドライアイスペレット製造の操作工程(準備工程)を破断して示す側面図
【図2】ドライアイスペレットの製造装置およびドライアイスペレット製造の操作工程(ドライアイス投入工程)を破断して示す側面図
【図3】ドライアイスペレットの製造装置およびドライアイスペレット製造の操作工程(圧縮成形工程)を破断して示す側面図
【図4】ドライアイスペレットの製造装置およびメンテナンス操作を破断して示す側面図
【図5】押出ダイのノズルの形状例を示す断面図
【図6】押出ダイのノズルの形状例を示す断面図
【図7】押出ダイのノズルの形状例を示す断面図
【図8】押出ダイのノズルの形状例を示す断面図
【符号の説明】
1 :架台
13 :支持フレーム
14 :支持フレーム
2 :ケーシング
3 :押出ダイ
30 :ノズル
30r:逆テーパー部
30s:直管部
30t:テーパー部
4 :シリンダー装置
41 :プレス板
70 :塊状ドライアイス
71 :ドライアイスペレット
d0 :ノズルの最小径
d1 :ノズルの出口側最大径
d2 :ノズルの入口側最大径
Claims (9)
- 塊状ドライアイス(70)からドライアイスペレット(71)を製造する装置であって、塊状ドライアイス(70)を収容するケーシング(2)と、ケーシング(2)の一端側に配置され且つプレス板(41)によって塊状ドライアイス(70)を他端側に向けて加圧するシリンダー装置(4)と、ケーシング(2)の他端側に配置され且つ多数のノズル(30)を備えた押出ダイ(3)とから構成され、ケーシング(2)の内表面には、フッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層が設けられ、当該被覆層が、ケーシング(2)の内表面に貼設された金属板の表面に形成されていることを特徴とするドライアイスペレットの製造装置。
- シリンダー装置(4)のプレス板(41)の少なくとも先端面には、フッ素樹脂から成る被覆層またはフッ素樹脂を含有する被覆層が設けられている請求項1に記載のドライアイスペレットの製造装置。
- プレス板(41)の少なくとも先端面に被覆層が直接形成されている請求項2に記載のドライアイスペレットの製造装置。
- プレス板(41)の少なくとも先端面に金属板が貼設され、そして、当該金属板の表面に被覆層が形成されている請求項2に記載のドライアイスペレットの製造装置。
- シリンダー装置(4)は、プレス板(41)において15×106〜35×106Paの圧力で加圧可能なシリンダー装置である請求項1〜4の何れかに記載のドライアイスペレットの製造装置。
- 押出ダイ(3)の各ノズル(30)は、絞り部としての直管部(30s)と、出口側に形成され且つ出口に向かうに従い漸次拡径されたテーパー部(30t)とを備えている請求項1〜5の何れかに記載のドライアイスペレットの製造装置。
- 塊状ドライアイス(70)が、液化炭酸ガスの断熱膨張によって得られた粉体状ドライアイスを加圧成形することにより予め塊状に製造されたドライアイスである請求項1〜6の何れかに記載のドライアイスペレットの製造装置。
- 塊状ドライアイス(70)の密度が1.45〜1.65g/cm3である請求項1〜7の何れかに記載のドライアイスペレットの製造装置。
- 得られるドライアイスペレット(71)の密度が1.50〜2.20g/cm3である請求項1〜8の何れかに記載のドライアイスペレットの製造装置。
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