JP4876288B2 - 膨張化炭素繊維およびその製造方法並びに太陽電池 - Google Patents
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Description
よって、この膨張化炭素繊維を光電変換層に用いた本発明の太陽電池では、従来の太陽電池に比して高いエネルギー変換効率を得ることが可能になる。
(A)原料炭素繊維から層間化合物を調製する工程
(B)層間化合物を加熱処理することにより、膨張化炭素繊維を調製する工程
(C)膨張化炭素繊維の表面酸化処理を行うことにより、膨張化炭素繊維の表面の全酸性官能基に対するカルボキシル基の割合を増加させる工程
以下、各工程について具体的に説明する。
(原料炭素繊維)
炭素繊維には、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、気相成長炭素繊維などがあるが、本工程で用いる原料炭素繊維としては、いずれも特に制限無く用いることができる。但し、膨張化炭素繊維が得られ易いことから、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維およびPAN系炭素繊維が好適である。また、ピッチ系炭素繊維の中でも、特に黒鉛化され易く、膨張化炭素繊維が得られ易いことから、光学的異方性相を含むピッチ系炭素繊維、即ちメソフェーズピッチ系炭素繊維が好適に用いられる。
炭素繊維は、複数のグラファイト構造が長さ方向に重なり絡み合った構造を有し、グラファイト構造の結晶性は高く非常に堅固である一方で、層同士はファンデルワールス力で結合されているに過ぎない。よって層間には様々な低分子化合物、金属化合物、イオンなどが容易にインターカレートする。その結果得られる化合物が層間化合物である。
層間化合物は、加熱処理を施すことにより膨張化炭素繊維となる。加熱温度は適宜調整すればよいが、通常は200℃以上、2000℃以下とし、より好ましくは500℃以上、1500℃以下。加熱時間は比較的短くてもよく、通常は5秒間以上、5分間以下程度とすればよい。加熱装置は通常用いられるものでよく、例えば電気炉や管状炉などを用いることができる。
以上のとおり原料炭素繊維が酸性溶液中で電気分解され且つ空気中で熱処理されていることから、膨張化炭素繊維には、その表面にカルボキシル基を含めて酸性官能基が導入されている。しかし、膨張化炭素繊維の活性は必ずしも十分でなく、全酸性官能基に対するカルボキシル基の割合を増加させることが望ましい。このようなことから本実施の形態では、更に、表面酸化処理を実施することにより、膨張化炭素繊維の表面の酸性官能基を増加させると共に、全酸性官能基に対するカルボキシル基の割合を増加させるものである。この表面酸化処理により、本実施の形態では、カルボキシル基の全酸性官能基に対する割合を、例えば55%以上とすることができる。そのためには、以下のように、まず膨張化炭素繊維を粉末化することが望ましい。
好適には膨張化炭素繊維を粉砕する。膨張化炭素繊維の表面積を大きくし、表面に形成されるカルボキシル基の量をより一層増大せしめるためである。
表面酸化処理することにより膨張化炭素繊維にカルボキシル基を形成する手段は、特に制限されないが、例えば、酸、オゾンまたは過酸化物を用いる手段を適用することができる。このとき、原料炭素繊維から層間化合物または膨張化炭素繊維を得る際に、熱処理過程を経ていることから、表面には様々な酸性官能基が形成されており、表面酸化処理により容易にカルボキシル基を増加させることができる。また、上述したとおり膨張化炭素繊維の表面にはエッジ面が存在し、その部分の活性は高くなっている。そのため、表面酸化処理により酸性官能基が形成され易く、延いてはカルボキシル基が形成され易い。
上述した表面酸化処理によって、膨張化炭素繊維の表面、特にエッジ面には、新たに酸性官能基が形成され、また、カルボキシル基以外の酸性官能基が酸化されてカルボキシル基が生成する。
色素増感型酸化チタン(TiO2)太陽電池では,担持されている増感材(色素)による可視光の吸収に引き続いてTiO2の伝導帯へ電子が移動する。その電子を電極へと引き渡し、色素に残ったホール(正孔)は、電解質溶液内のイオンを酸化し、電極から対極に回った電子は、ホール(正孔)にて酸化されたイオンを再び還元して両電極間を電子がサイクルすることによって電池となる。
これに対して、本実施の形態のカルボキシル基を含む膨張化炭素繊維では、光が照射されると、炭素自身から電子を放出する(光誘起電荷分離)。すなわちこの膨張化炭素繊維では色素無しで光誘起電荷分離効果を発揮するものであり、太陽電池の光電変換層として好適に用いることができる。
表面酸化処理された膨張化炭素繊維から太陽電池の光電変換層を形成する方法としては、常法を用いることができる。例えば、表面酸化処理された膨張化炭素繊維を2枚の透明電極で挟み、これら透明電極間に電解質溶液を流し込み、電解質溶液が漏出しないように封止すればよい。
[実施例]
(1)層間化合物の導入
300mL容のビーカーに、電極として白金板(長さ50mm×幅10mm×厚さ0.2mm)を備え付け、陽極側の白金板の下端に、5cmの長さに切り揃えたピッチ系炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製,製品名「YS−95」,繊維径:5μm)をテフロン(登録商標)テープで固定した。参照電極として、陽極の横に銀/塩化銀電極を取り付けた。炭素繊維が十分に浸漬されるように、電解質として13mol/dm3硝酸(100mL)を加え、炭素繊維への付与電荷量が3600Cになるまで0.5Aの定電流を通電した。当該炭素繊維を十分量の水で繰り返し水洗した後、24時間風乾した。得られた炭素繊維につきX線回折測定したところ、電気化学的処理前における層間距離が0.35nmであるのに対して、電気化学的処理後の層間距離が0.8nmであることから、層間化合物が得られていることを確認することができた。
次に、上記炭素繊維を電気炉内に挿入し、空気中において、1000℃で5秒間の加熱処理を施すことにより、膨張化炭素繊維を得た。得られた膨張化炭素繊維を走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、熱処理前の炭素繊維に比べて、層間が約10倍、繊維径が約60倍以上に膨張していた(以上、実施例1)。
(粉末化)
超音波粉砕機により上記膨張化炭素繊維を粉砕した。粉砕した膨張化炭素繊維をSEMにより観察したところ、その径は数10〜800nm程度、長さは50nm〜5μm程度であった。
上記のように酸性溶液中で電気分解され、かつ空気中で熱処理されていることから,膨張化された炭素繊維上には表面官能基が付与されているが、更に、この表面官能基を増加させるために、粉砕した膨張化炭素繊維(0.5g)を13mol/dm3硝酸(150mL)に添加し分散させた。次いで、当該混合物を80℃の温度で12時間攪拌することにより、膨張化炭素繊維の表面を酸化処理した。表面酸化処理した膨張化炭素繊維を濾別した後、洗浄液のpHが7になるまで超純水で十分に洗浄した。洗浄後、当該膨張化炭素繊維を120℃で5時間乾燥させた(実施例2)。
オゾンによる表面酸化処理においては、オゾン発生器を用いて3〜5L/分程度の流量にて、膨張化炭素繊維をそれぞれ2.3分および26分間曝露した(実施例3,4)。
加熱処理としては、膨張化炭素繊維を電気炉に挿入し、空気中において、それぞれ800℃で20秒間、600℃で25秒間の加熱処理をした(実施例5,6)。
電気化学的処理としては、膨張化炭素繊維を白金板と白金メッシュ中に挟み込み、これを陽極として13molの硝酸水溶液中、1または5A/gの定電流条件下で電気分解を行った(実施例7)。
3.5mL容のガラス栓付き石英ガラスセル(10mm×10mm×45mm)の内部を窒素ガスで置換した後、上記実施例1,2,4〜7で調製した膨張化炭素繊維(0.5mg)を加えた。別途、アクセプター色素であるメチルビオロゲンとドナーである1−ベンジル−1,4−ジヒドロニコチンアミドを蒸留水に溶解して、各濃度が0.5×10-3mol/dm3および3.0×10-3mol/dm3である水溶液を調製した。当該水溶液へ窒素ガスを30分間吹き込んで、空気を除去した。窒素で置換したグローブパッグ内で当該水溶液を上記石英ガラスセルに入れ、ガラス栓をしてからパラフィルムでシールし、蛍光退色試験機に移した。
Claims (8)
- 表面に、酸性官能基を含む共に、全酸性官能基に対する割合が55%以上83%以下のカルボキシル基を含み、光照射により光誘起電荷分離効果を示すことを特徴とする膨張化炭素繊維。
- 直径が5nm〜1μm及び/又は長さが10nm〜2μmである、請求項1に記載の膨張化炭素繊維。
- 原料炭素繊維から層間化合物を調製する工程と、
前記層間化合物を加熱処理することにより、膨張化炭素繊維を調製する工程と、
前記膨張化炭素繊維の表面酸化処理を行うことにより、前記膨張化炭素繊維の表面の全酸性官能基に対するカルボキシル基の割合を増加させる工程とを含むことを特徴とする膨張化炭素繊維の製造方法。 - 前記カルボキシル基の全酸性官能基に対する割合が55%以上83%以下の範囲である請求項3に記載の膨張化炭素繊維の製造方法。
- 前記原料炭素繊維としてピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維およびPAN系炭素繊維の少なくとも1種を用いる、請求項3に記載の膨張化炭素繊維の製造方法。
- 膨張化炭素繊維の表面にカルボキシル基を形成させるための試薬として、酸、オゾンおよび過酸化物のうちの少なくとも1種を用いる、請求項3に記載の膨張化炭素繊維の製造方法。
- 前記膨張化炭素繊維への酸化処理として、電気化学的酸化処理、化学的酸化処理およびオゾン酸化処理のうちの少なくとも1つの処理を行う、請求項3に記載の膨張化炭素繊維の製造方法。
- 光電変換層を有し、前記光電変換層の材料として請求項1から請求項2のうちいずれか1つに記載の膨張化炭素繊維を含むことを特徴とする太陽電池。
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