JP4870295B2 - 根巻き柱脚構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管柱を用いたコンクリート埋込み式の柱脚構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
根巻きなどによるコンクリート埋込み式の柱脚構造において、柱として円形鋼管や角形鋼管などの鋼管柱を用いる場合、図5(イ)(ロ)に示すように、鋼管柱51の管壁に、埋込み用コンクリート52の天面52aよりも上に位置するように孔53が明けられ、この孔53を通じて鋼管柱51内にコンクリート54を打ち込んで充填し、この充填コンクリート54で鋼管柱51をその内部から支えて、柱脚部における鋼管柱51の局部座屈の発生を防ぐようにすることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の充填コンクリート54は、柱脚部における鋼管柱51の局部座屈の発生を防止するだけのものであり、鋼管柱51の耐力を高め得るのに寄与するものではなかった。
【0004】
また、鋼管柱51の管壁に対しコンクリート54を充填のための孔53を明ける手間を要するし、また、その孔53の補強55も必要であるし、コンクリート54の充填のための加工に手間を要するという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、柱脚部において鋼管柱内へのコンクリートの充填を排除し、それでいて、柱脚部における鋼管柱の局部座屈の発生を防止することができ、しかも、鋼管柱の耐力も高めることができる、鋼管柱を用いたコンクリート埋込み式の柱脚構造を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、鋼管柱の管壁の肉厚が、埋込み用コンクリートの天面高さ位置の少なくとも上下両側にわたる領域において、それより上方の管部の管壁の肉厚よりも増厚されており、鋼管内は埋込み用コンクリート部分においてコンクリートの充填されていない中空部に形成されていることを特徴とする鋼管柱を用いたコンクリート埋込み式の柱脚構造によって解決される。
【0007】
この構造では、鋼管柱の管壁の肉厚が、少なくとも最も局部座屈を起こしやすい埋込み用コンクリートの天面高さ位置の上下両側にわたる領域において、それより上方の管部の管壁の肉厚よりも増厚されているので、柱脚部における鋼管柱の局部座屈の発生を効果的に防ぐことができる。
【0008】
しかも、上記領域において管壁の肉厚を大きくしていることにより、鋼管柱の耐力も効果的に高めることができる。
【0009】
もちろん、この領域よりも上方の領域は増厚されていないので、無駄に大きな耐力を持たせることもなく、経済的な耐力構造を実現することができる。
【0010】
そして、鋼管内は埋込み用コンクリート部分においてコンクリートの充填されていない中空部に形成されているから、柱脚部の鋼管内にコンクリートを充填する必要はないし、従ってまた、鋼管にコンクリート充填用の孔をあけたり、その孔を補強したりする必要もなく、コンクリートの充填のために行っていたこれらの厄介な加工を排除することができて、上記のような局部座屈の発生を手間少なく防いでいくことができる。
【0011】
前記増厚管部が鋼管柱に一体成形されたものからなる場合は、そのような加工を、鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を高周波誘導加熱などで加熱して増厚する増厚加工法などで容易に行うことができ、そのような増厚管部を備えた鋼管柱材を容易に製作することができる。
【0012】
前記増厚管部が鋼管柱の下端まで延びている場合は、柱脚部における鋼管柱の局部座屈の発生をより確実に防止することができる。このような増厚管部は、上記のような圧縮と加熱とで管壁を増厚する増厚加工法などによって容易に成形することができる。
【0013】
また、前記増厚管部が鋼管柱に一体成形されて備えられたものからなり、この一体成形でこの増厚管部の外周面は鋼管柱の外周面から外方に張り出しており、かつ、鋼管柱には、埋込み用コンクリートの天面高さ位置よりも下方の埋込み用コンクリート中において、前記増厚管部と上下方向に間隔をおいて1つ又は2つ以上の同じ一体成形による外方張出し増厚管部が備えられているのもよい。
【0014】
この構造では、埋込み用コンクリートの天面より下方に完全な埋込み状態にされた外方張出し増厚管部がシアコネクターの役割を果たし、埋込みコンクリートと鋼管柱とを強固に一体化することができで、埋込み用コンクリートに対する鋼管柱の固定度を高いものにすることができる。
【0015】
しかも、シアコネクターの役割を果たすこの外方張出し増厚管部は、局部座屈の発生を防ぐ上方の増厚管部と同じ一体成形によって形成されたものであり、このシアコネクターの役割を果たすこの外方張出し増厚管部は、鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を所定の間隔おきに高周波誘導加熱などで加熱していくことなどによって、局部座屈の発生を防ぐ上方の増厚管部とともに容易に成形していくことができ、そのような外方張出し増厚管部を備えた鋼管柱材を容易に製作することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1及び図2に示す第1実施形態の柱脚構造において、1は鋼管柱で、角形鋼管からなっており、この角形鋼管柱1の柱脚部は、根巻き鉄筋コンクリートによる埋込み用コンクリート2中に埋込み状態にされている。3は、鋼管柱の下端に取り付けられたベースプレートであり、4はアンカーボルトである。
【0018】
この柱脚構造において、角形鋼管柱1は、その管壁の肉厚が、埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置の上下両側にわたる領域1aにおいて、それより上方の管部1bの管壁の肉厚よりも増厚されており、なおかつ、本実施形態では、この増厚管部1aが角形鋼管柱1の下端まで延ばされている。即ち、本実施形態では、角形鋼管柱1は、埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置よりも上の位置から埋込み用コンクリート2中に埋め込まれる下端までが増厚管部1aで形成され、この増厚管部1aよりも上方の管部1bの肉厚より増厚されている。
【0019】
本実施形態では、この増厚管部1aは、角形鋼管柱1に一体成形で備えられたものからなっていて、角形鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を高周波誘導加熱などで加熱して増厚することによって形成されている。
【0020】
そして、この柱脚部において、角形鋼管柱1の内部5は、コンクリートの充填されていない中空のままにされており、コンクリートを柱脚部の鋼管1内に打ち込んで充填するための孔は設けられていないし、そのような孔の補強もなされていない。
【0021】
上記の柱脚構造では、鋼管柱1が最も局部座屈を起こしやすい埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置の上下両側にわたる領域の鋼管部分1aの管壁の肉厚が、それよりも上の鋼管部分1bの管壁の肉厚より増厚されているから、この増厚管部1aによって柱脚部における鋼管柱1の局部座屈の発生を効果的に防ぐことができ、鋼管柱1の耐力も高めることができる。
【0022】
しかも、本実施形態では、この増厚管部1aが鋼管柱1の下端まで延ばされているので、柱脚部における鋼管柱1の局部座屈の発生をより確実に防止することができ、耐力を高めることができる。その一方で、この増厚管部1aより上の管部1bは増厚されていないので、この管部1bに無駄に大きな耐力を持たせてしまうこともなく、経済的な耐力構造を実現することができる。
【0023】
そして、柱脚部において、鋼管柱1の内部5は、コンクリートの充填されていない中空のままにされていて、柱脚部における鋼管柱1の局部座屈は増厚管部1aで防ぐ構成となされているから、柱脚部の鋼管1の中空部5にコンクリートを充填する必要はないし、従ってまた、鋼管1にコンクリート充填用の孔をあけたり、その孔を補強したりする必要もなく、コンクリートの充填のために行っていたこれらの厄介な加工を排除することができる。
【0024】
更に、上記の増厚管部1aは、角形鋼管柱1に一体成形されたものからなり、そのような一体成形は、管壁を加熱と軸線方向の圧縮とで増厚する増厚加工法によって容易に行うことができるので、このような増厚管部1aを備えた鋼管柱1を容易に製作することができる。
【0025】
図3(イ)に示す第2実施形態の柱脚部構造では、角形鋼管柱1は、その管壁の肉厚が、埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置の上下両側にわたる領域1aにおいてのみ、それより上方の管部1bの管壁の肉厚よりも増厚されており、この増厚管部1aより下から角形鋼管柱1の下端までの管部1cは、増厚管部1aより上の管部1bと同じく、管壁の肉厚が増厚されていない管部で構成されている。
【0026】
本実施形態の増厚管部1aも上記実施形態の増厚管部1aと同様に、角形鋼管柱1に一体成形で備えられたものからなっていて、角形鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を高周波誘導加熱などで加熱して増厚することより形成されている。
【0027】
本実施形態の柱脚構造では、鋼管柱1が最も局部座屈を起こしやすい埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置の上下両側にわたる領域の鋼管部分1aのみが増厚されているから、柱脚部における鋼管柱1の局部座屈の発生を少ない増厚加工で効果的に防ぐことができる。
【0028】
図3(ロ)に示す第3実施形態の柱脚構造では、角形鋼管柱1は、その管壁の肉厚が、埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置の上下両側にわたる領域1aにおいて、それより上方の管部1bの管壁の肉厚よりも増厚されており、かつ、この角形鋼管柱1には、埋込み用コンクリート2の天面2aの高さ位置よりも下方の埋込み用コンクリート2中において、この増厚管部1aと上下方向に間隔をおいて複数の増厚管部1d…が備えられている。これら増厚管部1a,1d…も上記実施形態の増厚管部1aと同様に、角形鋼管柱1に一体成形で備えられたものからなっていて、角形鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を高周波誘導加熱などで加熱して増厚することより形成されており、この増厚加工によって、いずれの増厚管部1a,1d…も、角形鋼管柱1の外周面から外方に張り出すように増厚加工されている。
【0029】
この柱脚構造では、埋込み用コンクリート2の天面2aより下方に完全な埋込み状態なって存在することとなる外方張出し増厚管部1d…がシアコネクターの役割を果たし、埋込み用コンクリート2と鋼管柱1とが強固に一体化され、埋込み用コンクリート2に対する鋼管柱1の固定度を高いものにすることができる。
【0030】
しかも、シアコネクターの役割を果たすこの外方張出し増厚管部1d…は、上方の局部座屈発生防止用増厚管部1aを成形するついでに、同じ要領で、即ち、鋼管を軸線方向に圧縮しながら管壁を所定の間隔おきに高周波誘導加熱などで加熱していくことなどによって容易に形成していくことができ、従って、従来のような、スタッドコネクターなどの部品の厄介な取付けを排除することができて、シアコネクター機能と局部座屈発生防止機能とを備えた鋼管柱材を容易に製作することができる。
【0031】
図4(イ)に示す第4実施形態は、埋込み用コンクリート2が非立ち上がり型の鉄筋コンクリートからなっている。このように、埋込み用コンクリートは鋼管柱1の柱脚部分を埋め込み状態にするものであればよい。なお、角形鋼管柱1は第1実施形態のものが用いられているが、第2実施形態のタイプのものでもよいし、第3実施形態のタイプのものでもよい。
【0032】
図4(ロ)に示す第5実施形態は、鋼管柱1が円形鋼管からなる場合のものである。タイプは第1実施形態のものであるが、第2実施形態のタイプのものであってもよいし、第3実施形態のタイプのものであってもよいことはいうまでもない。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上のとおりのものであるから、柱脚部において鋼管柱内へのコンクリートの充填を排除し、それでいて、柱脚部における鋼管柱の局部座屈の発生を防止することができ、しかも、鋼管柱の耐力も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の柱脚構造を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は図(イ)のI−I線断面図である。
【図2】同断面斜視図である。
【図3】図(イ)は第2実施形態の柱脚構造を示す側面図、図(ロ)は第3実施形態の柱脚構造を示す側面図である。
【図4】図(イ)は第4実施形態の柱脚構造を示す断面側面図、図(ロ)は第5実施形態を示すもので鋼管柱の柱脚部分の断面斜視図である。
【図5】従来の柱脚構造を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は図(イ)のII−II線断面図である。
【符号の説明】
1…鋼管柱
1a…増厚管部
1d…外方張出し増厚管部
2…埋込み用コンクリート
2a…天面
5…中空部
Claims (3)
- 鋼管柱の下端のベースプレートがアンカーボルトで下部の鉄筋コンクリート基礎構造部に連結されると共に、柱脚部が根巻き鉄筋コンクリートで包み込まれた、鋼管柱を用いた根巻き柱脚構造において、
前記鋼管柱の管壁の肉厚が、前記根巻き鉄筋コンクリートの天面高さ位置の少なくとも上下両側にわたる領域において、それより上方の管部の管壁の肉厚よりも増厚されており、該増厚管部は、鋼管の管壁を加熱と軸線方向の圧縮とで増厚する増圧加工法による一体成形で形成されたものからなり、鋼管内は根巻き鉄筋コンクリート部分においてコンクリートの充填されていない中空部に形成されていることを特徴とする鋼管柱を用いた根巻き柱脚構造。 - 前記増厚管部が鋼管柱の下端まで延びている請求項1に記載の鋼管柱を用いた根巻き柱脚構造。
- 前記一体成形で前記増厚管部の外周面は鋼管柱の外周面から外方に張り出しており、かつ、鋼管柱には、根巻き鉄筋コンクリートの天面高さ位置よりも下方の根巻き鉄筋コンクリート中において、前記増厚管部と上下方向に間隔をおいて1つ又は2つ以上の同じ一体成形による外方張出し増厚管部が備えられている請求項1に記載の鋼管柱を用いた根巻き柱脚構造。
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