JP4868657B2 - 遮水土の製造方法およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は遮水土の製造方法およびその施工方法に係り、特に最終処分場やフィルダムのコア材その他の遮水性を要求される遮水層を形成するための低コストで遮水土を製造し施工することのできる遮水土の製造方法およびその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般廃棄物および産業廃棄物が投棄される廃棄物処分場1の例では、例えば、図7(a)、(b)に示すように、廃棄物埋立用凹陥地2の底面部の基盤21上に、順次、遮水土層22と、遮水シート23と、不織布24と、および保護土層25とが重ねられて複合遮水構造に施工されている。この廃棄物処分場1の遮水土層22は、例えば、施工現場の凹陥地2の掘削によって生じたいわゆる現地発生土と、粘土鉱物のベントナイトとを混合して製造した遮水土からなっている。また、遮水シート23は、合成ゴム製や合成樹脂製、またはアスファルトを不織布に全層含浸あるいは積層したシートで形成されている。更に、遮水シート23の上には、遮水シートが廃棄物9によって破損することを防止するため不織布24を敷設し、最後に最上部の層として、同じく遮水シート23が廃棄物9によって破損防止するために保護土層25とを設けて施工されている。
【0003】
上記施工により、廃棄物9から漏出した有害物質を含む汚水が、遮水シート23の破損部を通過して遮水シート23の下に浸出しても、遮水土層22における透水性の非常に低いベントナイトの作用によって有害物質をこの層に滞留させることができる。これに伴い、有害物質が基盤21の下方に浸透して地下水に混入することを防止できる。この廃棄物処分場1の施工時には、遮水土層22の総重量に対して、ベントナイト2〜20重量%の割合で混合している。この混合は、施工現場の土に合わせてベントナイトを混入する使用量の管理がおこなわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
遮水性の高い土質材料としては、一般に遮水土として良質、すなわち細粒分の含有量が多く、目標とする透水係数を満足する粘性土を使用するが、しかし、一般に良質土の確保が難しいことが多いため、上述したようなベントナイトおよびセメントの添加材を混合して遮水性の向上を図るようにしたものが多い。セメントにおいては土粒子同士を固結させることにより、ベントナイトにおいては水分に接触すると膨潤する性質を利用して遮水性を高めている。
【0005】
しかしながら、一般にセメントやベントナイト等の添加材の単価が高いため遮水土の製造コストに占める割合が大きいという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点に着目し、遮水土の製造コストを低減させることができる製造方法および施工方法を提供することを目的とする。また、本発明は従来廃棄していた材料を有効活用することにより、廃棄物の有用物への転換を行って遮水土を製造し施工することのできる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る遮水土の製造方法は、脱水ケーキを遮水層に使用する土のサンプルに混合し、遮水層として要求される設定透水係数以下となる最小の脱水ケーキ混合率を求めて、当該混合率となるように前記遮水層に使用する土に対する脱水ケーキの供給量の調整を行って遮水土を製造することを特徴としている。この場合において、前記脱水ケーキは砕石プラントもしくは建設現場から発生した濁水沈殿物から脱水して得られたものが望ましい。
【0007】
本発明に係る遮水土の施工方法は、現地発生土のサンプルに脱水ケーキを混合するとともに前記脱水ケーキの混合率を変化させ、当該脱水ケーキの混合率の変化に伴う透水係数との関係を求めておき、遮水土層施工領域に遮水層として要求される設定透水係数以下となる最小の脱水ケーキ混合率を求めて、当該混合率となるように現地発生土に混合する前記脱水ケーキの供給量の調整をなして遮水土を製造し、これを施工領域に敷設、転圧して遮水土層を施工することを特徴としている。前記脱水ケーキの上限混合率は使用機械によって施工可能な混合土のトラフィカビリティーの最低値を確保できるコーン指数となる混合率として設定すればよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る遮水土の製造方法およびその施工方法の具体的実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は実施形態に係る遮水土の製造方法を実施する製造プラントと、および遮水土層の施工方法を実施する施工現場の簡略説明図である。遮水土の製造プラントは、例えば現場で採取した土である現地発生土などを利用するものとし、その供給手段である土ホッパ10を備えている。また、この使用土の粒土分布が細粒分に富む遮水性を持つように粒度調整を行うために脱水ケーキを供給するが、この脱水ケーキ供給のためのホッパ11を備えている。これらはそれぞれ供給量を調整する調整装置10a、11aを具備しているのである。ホッパ10,11から土と脱水ケーキによる細粒分が必要な遮水性を持つように設定された混合量となるように供給量が調整されてベルトコンベア12上に落下供給する。必要量の土と脱水ケーキとが連続的に搬送され、ミキサー13に導入されて攪拌することにより、混合土14が製造されるのである。
【0009】
ここで、現地発生土は、最終処分場や建設工事から発生する土で、礫質土、砂質土、粘性土、火山灰質粘性土である。ただし、最大粒径150mm以上の大塊を含む土質材料は定量供給が困難であり、混合割合を一定にすることが難しい。したがって、一次破砕、分級除去の事前処理が必要となる。
【0010】
また、脱水ケーキとしては、砕石場、建設現場の場内や砕石の製造過程において、特に砕石プラントで原石を破砕、分級、洗浄するときに発生する大量の濁水から得る。すなわち、脱水ケーキは、濁水を処理設備で上澄水と沈殿物(スラッジ)に分け、更にスラッジを脱水機で圧縮して含水比を低下させたものである。このような砕石プラントもしくはダム、トンネル、造成の建設現場から発生した濁水沈殿物から脱水して得られたケーキを使用するのは品質が一定であり、重金属などの有害物質が混入していないからである。もちろん、湖沼あるいは下水道の汚泥から得られる脱水ケーキも使用することはできるが、有害物質を含有していないことが必要である。このような脱水ケーキはほとんどが細粒分であり、これが90%以上占めている。図2は出願人が調査した脱水ケーキの性状の例を示している。この図2(1)は各種ケーキの分析結果であり、同図(2)は粒径加積曲線を示し、同図(3)は粒度組成を示している。これらから理解できるように、リサイクルプラントの例を除き、シルト分と粘土分でほぼ90%を占めていることが解る。
【0011】
現地発生土と脱水ケーキとを混合するが、この混合機械としてのミキサー13には例えばチェーン回転式破砕・混合機、移動式混合機械などを用いることができる。混合するのは、土質材料に遮水機能を持たせるためであるが、土質材料の遮水性は細粒分の量による影響が大きいことが判明している。図3の「締固めた礫混じり土の工学的性質に関する実験的研究 建設省土木研究所資料」(pp.16,1986.2)によれば、細粒分の含有量割合を40%以上とすることにより、締固め度を95%とした場合には、透水係数を1.0×10-6cm/sec以下とすることができることが示されている。したがって、細粒分の含有量が多い脱水ケーキを現地発生土に混合し、混合土が必要透水係数となるように細粒分含有量を増加して粒度分布を調整することができ、遮水性の向上を図ることができることが解る。
【0012】
現地発生土や脱水ケーキの性状は採取地域で異なる。また、数値で表れないわずかな性状の差でも遮水性が異なる場合もあるため、予め現地発生土に使用する脱水ケーキを混合し、混合量に応じて透水係数がどのように変化するかを特性図として得ておく必要がある。すなわち、現地発生土に脱水ケーキの混合率を徐々に増す毎にどのように透水係数が変化するかを予め実験的に求めておく。そして、遮水土層が敷設される領域では設計上予め透水係数が設定されるので、当該設定透水係数を満足するような脱水ケーキの混合率を特性図から求めることができる。特性図は図3の場合と同様な形態で求められるが、通常は締固め度を100%あるいは土の自然状態における含水比時の締固め度として、要求透水係数より低くなる混合率を求める。細粒分が増加すると徐々に透水係数が低下傾向となるが、脱水ケーキの混合率がある程度以上に増加すると逆に透水係数が上昇し、要求透水係数を上回ってしまう。また、トラフィカビリティも悪くなるため、設定透水係数以下となる最小の脱水ケーキ混合率を求めて、当該混合率となるようにホッパ10,11からの供給量を調整する。例えば、現地発生土に脱水ケーキの混合率を変えて混合した場合の透水係数を求めた結果が図4のようになった場合、設定透水係数が1.0×10-7cm/sec以下であれば、現地発生土に混合する脱水ケーキを55〜90%の割合で混合することにより所望の透水係数をもった混合土が得られる。したがって、脱水ケーキを混合することにより細粒分の混合割合を増して粒度分布を調整し、これによって所望の透水係数に設定することができる。
【0013】
脱水ケーキ混合率の上限は、脱水ケーキを使用するという観点から、混合土のトラフィカビリティーを確保できるコーン指数を上限として設定すればよい。土のトラフィカビリティーとは、車両の走行に耐えうる土の能力であると定義されるが、これは逆円錐状の治具をもったコーンペネトロメータを土中に貫入させた場合の抵抗値として得られるコーン指数を指標に設定すればよい。一般に、脱水ケーキのコーン指数は低く、脱水ケーキを過剰に混合するとトラフィカビリティーが得られず施工できないため、施工可能なトラフィカビリティーが得られるコーン指数となる混合割合に設定すればよいのである。
【0014】
また、実施形態では、本格的な製造開始以前に混合土14を実施に使用する機械を用いて、試験ヤードで撒出し、敷き均し、転圧し、設定透水係数以下となっているか、トラフィカビリティは良いかをチェックする。これは所定の混合率となるように設定された1ケースのヤード寸法がたて3m×よこ3m×高さ0.5m程度の試験ヤードの転圧された混合土からサンプルを採取し、透水係数を求めて、設定透水係数以下であるかどうかを判定するようにしている。すなわち、転圧機械の種類、転圧回数、撒出し厚の異なる条件を組み合わせて試験ヤードで施工を行い、透水係数を測定し、予め定められている敷設領域の透水係数の設計値との比較がなされる。この結果、透水係数が設定値より大である場合には、脱水ケーキの混合率を調整する。また、トラフィカビリティが得られない場合には施工機械を変える。この調整作業を必要に応じて繰り返すことにより透水係数が管理値に収まるようになるので、脱水ケーキの混合率が決定される。以後は製造する混合土を遮水領域に運搬し、敷設作業を行なわさせるのである。
【0015】
遮水土層の敷設作業は、遮水土製造プラントによって製造された遮水土(現地発生土と脱水ケーキの混合土)を敷設領域に運搬、まき出し、敷き均し、転圧を行って締固めることによって行われる。これを複数の層にわたって行うのである。
図5は実施形態に係る遮水土の製造から施工までの概略のフローチャートを示している。すなわち、予め遮水土層の敷設領域に必要な透水係数が設定される(ステップ100)。敷設すべき処理場などで必要とされる遮水土量と工期から、プラントにおける時間当たりの生産遮水土量が決まり、現地発生土の時間当たりの単位供給量が設定される(ステップ102)、同時にこの使用土へ混合すべき脱水ケーキの時間当たりの単位供給量が設定される(ステップ104)。プラントの各ホッパ10、11から順次供給される現地発生土と脱水ケーキはミキサー13で混合され、施工機械、転圧回数等を変えた組み合わせ3〜4ケースで試験ヤードで施工する(ステップ106)。その後に転圧された混合土の透水係数が計測される(ステップ108)。ステップ100で定められている透水係数(設定値)と混合土の透水係数(計測値)が比較され(ステップ110)、計測値が設定値以下となったか否かが判定され、設定値以下とならない場合は、組み合わせを変えて繰り返される。設定値以下となった場合の現地発生土に対する脱水ケーキの混合率が確認されるので、現地発生土の設定供給量(ステップ102)に見合った脱水ケーキの供給量が決定する(ステップ114)。これによってホッパ10、11からの連続的な供給量の設定が行われ、ミキサー13で混合された土は細粒分が多く必要透水係数をもった混合土となる(ステップ118)。
【0016】
その後、混合土は、継続して製造され、これを敷設領域まで運搬する(ステップ120)。そして、混合土のまき出し、敷き均しなどの敷設作業を行って(ステップ122)、転圧を行って1層目を施工する(ステップ124)。遮水層は複数層に亘っておこなうので、規定層に達したか否かが判定され(ステップ126)、規定層まで繰り返された後、次の施工範囲に移動し同様の作業を行って完成終了する(ステップ128、130)。
【0017】
上記に記載したように本実施形態では、遮水土層を形成する混合土を現地発生土に脱水ケーキを混合して形成し、敷設領域に要求される透水係数以下となることを試験ヤードで確認後、本格的に施工を開始する。このようにして製造された混合土は、高価なベントナイトやセメントを使用することなく遮水機能を持たせることができる。
【0018】
このように、本実施形態によれば、現地発生土と従来廃棄していた脱水ケーキを混合することにより遮水土を形成することができ、遮水土の製造コストが安価になる。脱水ケーキの混合だけで所定の透水係数を満足せず、更に添加材を混合する場合でも、添加材の使用量を減らすことができる。また、従来廃棄していた脱水ケーキを再利用できる。また、細粒分の含有量が少なく、当初は遮水土として不向きとされていた現地発生土を利用することができる。現地発生土の利用可能な範囲を広げることができる。ベントナイトなどの粉状材料を使用しないため、粉塵が発生しない。礫質土、砂質土などのトラフィカビリティの良い土に混合することにより、施工性の向上が図れる。
【0019】
図6に、同じ現地発生土にベントナイトあるいは脱水ケーキを混合した室内試験結果を示す。この結果から、ベントナイトを使用せず、脱水ケーキだけでも目標透水係数1.0×10-7cm/secを満足することがわかる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、脱水ケーキを土に混合し、予め要求されている透水係数となる粒度分布となるよう前記脱水ケーキによる細粒分の混合比率を増加する粒度調整を行って遮水土を製造し、これを処分場などに施工するように構成したので、遮水土の製造コストを低減させることができ、従来廃棄していた材料を遮水土に有効活用することにより、廃棄物の有用物への転換を行うことができる遮水土の製造方法およびその施工方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る遮水土の製造方法を実施する製造プラントと、および遮水土層の施工方法を実施する施工現場の簡略説明図である。
【図2】脱水ケーキの性状と粒径加積曲線、粒土組成を示す図である。
【図3】土の細粒分含有率と透水係数の関係を示す特性図である。
【図4】土と脱水ケーキの混合率と透水係数の関係を示す特性図である。
【図5】実施形態の遮水土の製造方法および施工手順を示すフローチャートである。
【図6】同じ現地発生土を使用した透水係数とベントナイト添加率ならびに脱水ケーキ配合割合の関係を示す図である。
【図7】廃棄物処分場を示す図であり、(a)は全体構成図、および、(b)は一部断面図である。
【符号の説明】
10………土ホッパ、11………脱水ケーキホッパ、13………ミキサー
Claims (4)
- 脱水ケーキを遮水層に使用する土のサンプルに混合し、遮水層として要求される設定透水係数以下となる最小の脱水ケーキ混合率を求めて、当該混合率となるように前記遮水層に使用する土に対する脱水ケーキ供給量の調整を行って遮水土を製造することを特徴とする遮水土の製造方法。
- 前記脱水ケーキは砕石プラントもしくは建設現場から発生した濁水沈殿物から脱水して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の遮水土の製造方法。
- 現地発生土のサンプルに脱水ケーキを混合するとともに前記脱水ケーキの混合率を変化させ、当該脱水ケーキの混合率の変化に伴う透水係数との関係を求めておき、遮水土層施工領域に遮水層として要求される設定透水係数以下となる最小の脱水ケーキ混合率を求めて、当該混合率となるように現地発生土に混合する前記脱水ケーキの供給量の調整をなして遮水土を製造し、これを施工領域に敷設、転圧して遮水土層を施工することを特徴とする遮水土の施工方法。
- 前記脱水ケーキの上限混合率は使用機械によって施工可能な混合土のトラフィカビリティーの最低値を確保できるコーン指数となる混合率として設定されていることを特徴とする請求項3に係る遮水土の施工方法。
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