JP4867314B2 - コンセプト設計支援装置,コンセプト設計支援プログラム及びコンセプト設計支援方法 - Google Patents

コンセプト設計支援装置,コンセプト設計支援プログラム及びコンセプト設計支援方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数の変数と、この複数の変数に対するあるシステムの応答との関係を表す情報から、新しいコンセプトを導くコンセプト設計支援技術に関する。
コンセプト設計段階では、製品の基本的構造を決定することが求められる。そのため、構造が決まっていない段階で、構造とその構造が示す現象との物理的因果関係を把握する必要がある。設計支援を行う技術としては、構造を決定した上で各種パラメータの最適化を行うCAE技術(Computer Aided Engineering)が知られている。既存のCAE技術では、構造が決まらないと、解析の基準となるモデルが決まらないため、新たなコンセプトを導出することとは異なるフェーズで使用されるものである。また、CAE技術は、入力に対する出力、つまりゲインを把握するだけで、構造とその構造が示す現象との物理的因果関係を把握することができない。よって、コンセプト設計段階にCAE技術を適用することができない。
そこで、特許文献1に記載の技術では、具体的構造が決まらなくとも、性能解析できる技術として、構造を構成する個々の部品を、梁要素やパネル要素といった構成要素を用いて材料力学的な理論に基づいて表現し、製品形状が確定していない段階でも、定性的に性能解析する技術を提案している。
特開2002−117084号公報。
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、具体的構造の代わりに、単純化した構成要素を組み合わせてモデル化するため、そのモデルに限定された解空間しか得ることができず、新しいコンセプトを導くことが難しいという問題があった。言い換えると、単純化した構成要素(すなわち既存のコンセプト)を越えるコンセプトを導出することは不可能であった。
本発明は、上記課題に基づいて成されたものであり、既存の構造体の情報から、新しいコンセプトを導く技術を提案する。
上記目的を達成するため、本発明のコンセプト設計支援装置では、複数の制限要素に対応する特性を有するシステムがあるとき、該システムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるサンプリング発生手段と、前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする階層的クラスタリング手段と、前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較する比較手段と、前記比較手段で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出する抽出手段と、を備えたことを特徴とする。

よって、システムを階層的に概念化するとともに、各概念を規定する制限要素もしくは、各概念の違いを規定する制限要素を把握することが可能となる。すなわち、コンセプトを決定する上で必要な制限要素や、新たなコンセプトを決定する上で必要な制限要素を認識することが可能となり、容易に新たなコンセプトを設計することができる。
以下、本発明の情報処理方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
〔実施例1の技術コンセプト〕
まず、「システム」という言葉を定義する。システムとは、ある特定の入力があるときに、ある特定の結果をもたらす入力結果間に存在する処理系あるいは秩序である。ある固有のシステムを、ある値に規定することによって、特定の事象(現象)が実現される(複数の制限要素によって規定されるシステムに相当)。そして、固有のシステムは、あらゆるものの処理、或いは、あらゆるものに秩序を与えるものではなく、数、範囲、性質といった限定された中で機能する。従って、事象の種類が同じものであっても、これら限定が互いに異なる様々なものが存在する場合、それぞれに対応したシステムが存在する。さらに、事象の種類に応じて、これらを統一的に取り扱う上位システムが存在する。
このような特定の事象に関わる層状のシステム構造は、経済、文化、設計、生物などほとんど全ての事象に適用でき、直感的ではあるが何らかの共通性をもとに分類し、最も容易に体系を捕らえやすい分類方法として受け入れられている。
例えば、自動車のサスペンションにおいては、抽象システムはサスペンション、個別システムはマルチリンクやトーションビームなど、具象システムは個別システムが取る具体的なジオメトリの値やブッシュ剛性値などによって決まった特定のマルチリンクやトーションビーム等である。
しかしながらこの分類は、同じ階層のシステム同士や上下のシステムを具体的に理解することは目的としていない。最下層システムが示す事象の解析(理解)が進む(成熟する)に従い、新しい取り組みや発見を行うためには、システム間の関係や全体システムを規定している共通性を正確に理解した上で利用しなければならない。ここで、最上層システムを「抽象システム」、中層システムを「形式システム」、最下位システムを「具象システム」と呼ぶことにする。
本実施例では、全体システムの理解を可能とするために、抽象システムと形式システムの間、具象システムと形式システムの間に、傾向あるいは範囲という限定を加えたシステムとして「傾向システム」を導入することにすること(Clusterによって分類されたシステムのこと)により、全体システムの理解、システム間の特徴の理解、事象のさらなる理解、新しいシステムを作る可能性などを考慮することを可能とした。図1にこれらの関係を示す。
3層のシステム構造では、何らかの共通性をもとに分類されていることを述べた。複雑な事象(現象)は、いくつかの事象(現象)の組み合わせの結果実現されていると考える場合、複雑な事象(現象)の特徴は、構成しているある事象(現象)の特徴、あるいは組み合わせの特徴が影響していると考えられる。このような特徴は、先の共通性にかかわるものであり、現象の実現のためのシステムの「共通概念」と定義することができる。
ある形式システムにおいて、ある具象システムのパラメータを様々に変化させた結果として生じる様々な現象は、その形式システムに特有の共通概念によって支配されており、この概念によって様々な現象の傾向を実現していると考えられる。そして、具象システムが示す現象それぞれの特有な傾向は、共通概念をベースとし、そこから派生する特有の形態を取ることによって実現されている。
ここで、共通概念とは、様々な複雑現象の傾向を最もよく説明できる特定のパラメータの値、特定のパラメータの組合せ、特定のパラメータ間の関係、特定のパラメータの傾向、特定のパラメータの値の範囲のいずれか、或いは、これらの内のいくつかの組合せである。一方、共通概念をベースとしつつ、共通概念以外の特定のパラメータの値、特定のパラメータの組合せ、特定のパラメータ間の関係、特定のパラメータの傾向、特定のパラメータの値の範囲のいずれか、或いは、これらの内のいくつかの組合せは特有な形態と定義できる。
尚、共通概念は、ある一つの現象を実現するために存在する異なるシステム間に存在するものであっても構わない。すなわち、形式システム階層に存在する様々なシステムは、ある特定の現象を実現するために存在しているため、形式システムの上位には、(すなわち抽象システムにおける)共通概念が存在し、これによって全ての現象の傾向を実現している。そして現象特有の傾向は、形式システムあるいは具象システムの特有の形態を共通概念に加えることで実現している。
本実施例1では、複雑な現象を理解するため、以上のようなコンセプトに基づいて構成されている。図2に実施例の共通概念抽出コンセプトを示す。図2中、共通概念0は全ての現象を規定する概念であり、共通概念1はハッチング部分の領域のみの現象を規定する概念であり、共通概念2はハッチング部分の領域のみの現象を規定する概念である。共通概念0には共通概念1,2が含まれ、各共通概念に他の共通概念を重ねると、更に領域を規定することとなる。
尚、抽象システムや形式システムは、あらゆる階層間で上限関係のみ注意しつつ適宜設定すればよい。よって、抽象システムは再上層等に限定されない。また、適宜設定された抽象システム,形式システム及び具象システムの間を繋ぐ秩序が傾向システムとして定義される。
図3に実施例1の新システム作成コンセプトを示す。例えば、階層化によって各階層のシステム(形式システム,傾向システム,具象システム等)に分類した後、例えば既存の傾向システムに存在する共通概念を用いて新たな形式システムを提案し、この形式システムから具象システムを作成することで、新たなコンセプトを提供することが実施例1の主な目的である。
〔新システム作成手順フロー〕
実施例1は、複雑な現象を規定する共通概念の抽出を行った後、共通概念を構成するパラメータとそれ以外のパラメータを様々に変化させ、設計者が求める現象に当てはまる構造を抽出する。この共通概念の抽出には、現象(以下、特性)とそれを実現するあるシステムのとるパラメータ(以下、制限要素)の組合せ(以下、サンプリング)をいくつか準備しておく必要がある。そして、これらの特性をいくつかに分類し、制限要素を比較することによって、全ての現象を最もよく説明できる共通概念を抽出する。
次に、共通概念を構成する制限要素の変更は、共通概念が持つ制限要素同士の傾向を踏襲した上で行う。また、共通概念以外の制限要素の変更は、共通概念を構成する制限要素の変更を行った後、変更された共通概念を基準とし、その他の制限要素を変更する。ここで、求める特性あるいは特性の持つ範囲を予め設計者が決定しておき、該決定された条件に応答が当てはまるか否かを判断する。
ここから、ある特定の特性を実現する構造、あるいはある範囲の間の応答を実現する構造を抽出する。更に、既存構造でない新しい構造を見つけたい場合、既存構造と同一な構造を消去し、新たな構造が見つかるまで構造の制限要素変更とシステムの応答を求めることを繰り返す。
以上から、実施例1では、図4に示すように、
ステップ〔1〕 サンプリングを準備する部位
ステップ〔2〕 特性を分類する部位
ステップ〔3〕 制限要素を比較し共通概念を抽出する部位
ステップ〔4〕 特性の値あるいは範囲を設定する部位
ステップ〔5〕 共通概念を構成する制限要素の変更と共通概念以外の制限要素の変更及びこれらシステム応答の抽出部位
ステップ〔6〕 構造の可否を判断する部位
の6つのステップで構成されている。このように、共通概念を用いて全く新しい構造を探索することができるため、効率的で抜け漏れが無く新しい構造であっても、その結果どのような応答になるのかを予測することが可能である。
(サンプリングの準備)
ステップ〔1〕のサンプリングの準備の段階では、現在までに把握している対象とする現象のサンプリングを用意すればよい。しかしながら、比較の対象となるサンプリングに偏りがある場合、その結果抽出される共通概念は、ある特性に偏ったものとなるため、全ての現象を説明できるとは言えない場合が多い。従って、特性に偏りが生じていないサンプリングを準備する必要がある。これからサンプリングを準備しようとする場合、サンプリングに偏りが生じないように、全通りの制限要素の組合せについて、あるいは直行表などを用いた制限要素の組合せを準備し、これに対する特性の応答を調査すればよい。
ここで、直行表の例を図4に示す。直行表とは、割り付けられたある制限要素の特定水準に着目した場合、他の制限要素の水準が全て、しかも均等に組み合わされるよう作成された表のことである。従って、制限要素を構成する個々の制限要素の最大値と最小値を設定しておき、選択した直行表の水準数に応じて最大値と最小値間をいくつかに分割、直行表に割り付ければよい。
尚、複数の制限要素によって規定されるシステムをシミュレーションし、入力と出力の関係を表す特性を再現するシミュレーターを備えている場合には、そのシミュレータとリンクさせて、効率よく作業を行うようにすることが望ましい。シミュレータは同一の演算装置内にあってもよいし、他の装置とケーブル等で接続するようにしてもよい。
(特性の分類)
ステップ〔2〕の特性を分類する部位では、階層的クラスタリングを利用する。クラスタリングとは、異なる性質のもの同士が混ざり合っている集団の中から、効率的に意味のある体系に組織立てるために、互いに似たものを集めて集落(以下、クラスター)を作るという、対象を分類する方法の総称である。このうち、階層的クラスタリングは、グループが入れ子を構成するように階層を生成していく方法である。本実施例1では、「似たもの」として、「特性の傾向の類似度」を基準にクラスタリングした。
本実施例1において階層的クラスタリングを採用したのは、〔実施例1の技術コンセプト〕で述べたように、もともと我々の対象とするシステムが階層的な分類を基にしていること(すなわち最も理解可能な体系であること)、各階層のシステムの関係を理解するための傾向システムには、予めいくつの階層及びクラスターが存在するかは予め分からないこと、のためである。例えば、非階層的なクラスタリングを行う場合には、予め閾値等を設定し、この閾値以内のものをクラスタリングするといった作業を行うことになり、この閾値は既成概念の導入につながる虞がある。既成概念が導入されると、この既成概念に縛られた結果しか得られず、システムの分類を正確に行えないからである。階層的クラスタリングの方法を以下に述べる。
階層的クラスタリングにおいて、クラスターの生成は、類似度あるいは非類似度を基準として個体を一組づつ結合し、小さなクラスターから次第に大きなクラスターにしていく。従って、クラスター生成の手続きは、類似度(非類似度)の定義とクラスター生成の二つの段階に分けられる。ここで、個体xi(1≦i≦n)で構成される個体全体の集合X={x1,x2,x3,・・・,xn},個体xi,xj間の類似度d(xi,xj)〔1≦xi,xj≦n,xi≠xj,xi,xj∈X〕を定義する。また個体xiをクラスターGiとするとき,全てのクラスターを含むクラスターgをg={G1,G2,・・・,Gn}とする。このとき、階層的クラスタリングのアルゴリズム(Agglomerative Hierarchal Clustering :以下、AHCと記載する)は以下になる。
(I)初期設定n個のクラスター(個体)について以下を定義する。
(3.2)
Figure 0004867314
(II)類似度最大(あるいは類似度最小)のクラスター対を結合する。
(3.3)
Figure 0004867314
ここでGqとGrをgから取り除き、G'=Gq∪Grをgに追加する。この際、クラスター数を一つ減らす。
(III)すべてのGi∈g,Gi≠G'についてクラスター間の類似度d(G',Gi)を再計算する。
(IV)以後(II),(III)をクラスター数が1になるまで繰り返す。
上記AHCの(II)で取り上げる類似度(非類似度)は様々なものが提案されているが、ここでは、Ward法(Ward's Method)を取り上げる。この方法はユークリッド空間の距離(Euclid Distance)による類似度を前提としている。すなわち、個体xiを構成するp個の要素のうちk番目の要素の値をxikとすると、個体xi−xj間のWard距離は、式(3.4)で表される。ここで要素とは、個体xiに含まれる値である。
(3.4)
Figure 0004867314
このときクラスターGに対する重心M(G)を式(3.5)のようにおくと、その各構成要素は式(3.6)で表される。
(3.5)
Figure 0004867314
(3.6)
Figure 0004867314
ここで、クラスターGにおける重心と各個体との距離の差の二乗和E(G)を式(3.7)のように定義すると、異なる2つのクラスターGi,Gj間の距離の差は式(3.8)のように表せる。従って、AHCの(II)のクラスターの結合則は式(3.9)で表されるように、ΔEが最小となるGq,Grを選択することになる。
(3.7)
Figure 0004867314
(3.8)
Figure 0004867314
(3.9)
Figure 0004867314
一方、AHC(III)の類似度d(G',Gi)の再計算は、結合する前のd(Gq,Gi),d(Gr,Gi)を用いて表せる。d(Gi,Gj)=ΔE(Gi,Gj)と定義すると、初期クラスターGi={xi}に対して、式(3.10)のように表せる。
(3.10)
Figure 0004867314
ここで、G'=Gq∈Grのとき
(3.11)
Figure 0004867314
以上のように,AHCの(III)の再計算は、個体間の類似度を参照することなく、クラスター間の類似度のみを用いて再計算がなされる。図6に以上のアルゴリズムに基づくクラスターの生成方法を、図7に階層的クラスタリングの例を示す。
ここで、上記クラスターの生成方法を図6に基づいてまとめると、以下のようになる。
(A)サンプリングをクラスター化し、クラスターp,q.r・・・を生成する。図6中、小さな円に相当するものである。
(B)各クラスタの重心を計算する。
(C)類似度の小さい(距離の近い)クラスターを結合する。図5中、クラスターpとクラスターqを結合し、新たなクラスターtを生成する。
(D)結合したクラスターtの重心を計算する。
(E)類似度の小さい(距離の近い)クラスターを結合する。
(F)上記(C)〜(E)をクラスターが1つになるまで繰り返す。
尚、上記(A)のステップでは、クラスターでなくとも、クラスタリングする前の点情報でもよく特に限定しない。
〔共通概念の抽出〕
ステップ〔3〕に示す、制限要素を比較し共通概念を抽出する部位では、分類された階層ごとに存在する制限要素間の関係と特性との因果関係を抽出した後、全ての階層に共通する因果関係を見つける。ここで見つかった共通する因果関係を共通概念と呼んでいる。
(分類された階層ごとに存在する制限要素間の関係と特性との因果関係の抽出)
分類された現象階層ごとに存在する制限要素と現象の物理的因果関係を抽出する。現象が示す特徴は、様々な制限要素が関係し合いながら実現されるという獏全とした言い方しかできない。しかしながら、このことは、言い換えると、現象は制限要素同士の関係を変えながら、さまざまな関係形態を経て実現されている。これを、現象の実現に至る制限要素のネットワークとするならば、このネットワークこそが因果関係であると考えることができる。ここで、このネットワークを「因果ネットワーク」と呼ぶことにする。
1つの経路を考えたとき、この経路の形成には他の制限要素の影響を受けている場合があり、また、この影響もその他の制限要素の影響を受けている場合があるかもしれない。このような特徴をもつ経路を見つける場合、他の制限要素の影響を廃した上で純粋なつながりから経路を判断するよりは、他の制限要素の影響を持ったままの制限要素の関係による経路を判断したほうがよい。
すなわち、他の制限要素の影響を廃した純粋なつながりから経路を判断する場合、ある制限要素同士の、或いは、ある制限要素と現象との影響度合いの大きさといった数値の大小による判断が行われることとなる。よって、必ずしも切り捨てが正しいかどうかが分からない状態で、切り捨てられた制限要素と経路との物理的な関係が断ち切られ、全体として因果ネットワークを表しているとは言いがたい。これに対し、他の制限要素の影響を持ったままの経路を判断する場合、既成概念に基づく切り捨て等が成されないため、現象そのものを表記している物理的な全てのつながりを説明できる因果ネットワークを形成していると考えられるからである。
但し、煩雑になりやすいので、制限要素間の経路に数値的な指標を設ける必要がある。ここでは、他の制限要素の影響を持ったままの2つの制限要素間のつながりの強さを測る尺度として、ピアソンの積率相関係数を取り上げた。制限要素が現象に至るまでの因果ネットワークを抽出するために、個々の制限要素と現象は同次元に考える。同次元に置いた個々の制限要素と現象を、因果ネットワークを構成する経路の支点と呼ぶことにする。
1つの支点がもつデータの数をn,1つの支点をx,支点xの平均をx-,他の支点をy,支点yの平均をy-とすると、ある2つの支点x,y間のつながりの強さを表す相関係数r(xy)は、式(5.2)で表される。
(5.2)
Figure 0004867314
式(5.2)を全ての支点間に適用させることにより、現象に至るまでの全ての因果ネットワークを、他の制限要素の影響を含んだつながりの強さと共に抽出することができる(図7参照)。これを、全ての階層の現象クラスターに適用させることで、複雑な現象から徐々に簡単な現象に階層化される現象過程を、因果ネットワークの変化と共に把握することが可能となる。
(共通概念の抽出)
複雑な現象は、物理的特徴を基準としながら徐々に単純な現象に分割されていくという階層構造を成している。従って、これに伴い因果ネットワークも階層を追って変化していくと考えられる。ある階層における単体の現象を決定付ける要因と、その複雑さを決定付ける要因とは、階層をたどることによって、それぞれ全ての階層の単体の現象に共通する因果ネットワークと、対象の現象とその上下階層の現象との間に存在する異質な因果ネットワークであると定義できる。
階層的クラスタリングを応用した複雑な現象の特徴分化を伴う階層化の場合、最下層は1つのサンプルで構成されるクラスターである。最下層に行くほど現象の複雑性を強調する階層となるため、共通性は薄れていってしまうという特徴がある。一方、最上層に行くほど多くのサンプルで構成されるクラスターとなるが、階層に含まれるクラスターの数が少なくなるため、ノイズを含んだ多くの共通性が存在するという特徴がある。
従って、この関係から共通概念を抽出する最も適した階層が存在することが考えられる。ここでは、共通概念を抽出できる階層を特定し、ここから共通概念を抽出する方法を述べる。
まず、共通概念の抽出に適当な階層の特定を行う。ここでは、ある経路pの相関係数の感度SとSN比ηを利用する。対象とする階層をi,階層に含まれるクラスターの数をn,階層に含まれるm番目のクラスターの経路pにおける相関係数をripmとすると、重ね合わせた相関係数rip-は式(5.3)のように表される.
(5.3)
Figure 0004867314
この階層の共通な因果ネットワークの1つが経路pだとすると、その相関係数の感度Sは、式(5.3)から式(5.4)のように表せる.
(5.4)
Figure 0004867314
また、階層iに含まれる各クラスターの経路pにおける相関係数の全変動Stは式(5.5)で表せる。
(5.5)
Figure 0004867314
また、この経路pの相関係数の変動Sβは、各クラスターを分割するユークリッド距離dim,平均ユークリド距離をdi-とすると、式(5.6)で表される。
(5.6)
Figure 0004867314
従って、経路pにおける誤差分散Veは式(5.7)で表せる。
(5.7)
Figure 0004867314
従って、階層iに含まれる各クラスターの経路pにおける相関係数のSN比ηは式(5.8)で表せる。
(5.8)
Figure 0004867314
共通概念は全ての現象を説明できる共通の因果ネットワークであるため、全ての共通の経路において式(5.4)で表される感度Sが大きく、かつ式(5.8)で表されるSN比ηが大きい階層が共通概念の抽出に適した階層となる。ただし、共通概念抽出の階層は、樹形図の最上層から下層に向けて探索したとき、分岐を起こす最大ユークリッド距離以下で構成される階層で検討を行わなければならない。
以上のようにして得られた共通概念抽出に適した階層において、共通概念となる共通の因果ネットワークは、式(5.4)で表される相関係数の感度が大きい経路pがそれに該当する。図8に共通概念の抽出のイメージを示す。図9にネットワークの表示方法の一例を、図10にこれらネットワークに共通する共通概念の表示方法に一例を示す。
尚、制限要素の表記方法は、ここで示したように、各制限要素を円周上に配置し、制限要素間を直線で結ぶことで表記したが、円周上以外の配置でもよい。また、線種を変更する方法の他に、線に色をつける方法や、線の太さなどで表記する方法などが考えられる。図10の共通概念、すなわち共通のネットワークは、当然図9の個々のクラスターのネットワーク中に必ず含まれている。
(特性の値或いは範囲の設定)
ステップ〔4〕に示す特性の値あるいは範囲の設定では、共通概念を用いて導出される構造が満たすべき特性の値、あるいは満たすべき特性の範囲を設計者が予め決定しておく。ここで、特性は1つ以上であってもよい。この場合、設定された特性に最適な構造の抽出となる。後者の場合、特性の範囲あるいはその組み合わせに対して、個々の制限要素がある範囲を持った形で構造が抽出される。この場合、構造が存在する設計空間の抽出となるが、この後、特性が最適になる構造を導き出す最適化を行うことも可能である。ここでは、目的に応じて特性を設定する。
(共通概念を構成する制限要素の変更と共通概念以外の制限要素の変更及びこれらシステムの特性抽出)
ステップ〔5〕に示す共通概念を構成する制限要素の変更と共通概念以外の制限要素の変更及びこれらシステムの特性抽出では、共通概念に基づく構造のサンプリングを求める部位である。まず、共通概念を構成する制限要素の変更を行う。ここでは、抽出された共通概念の持つ制限要素の値、あるいは範囲、制限要素同士の関係の傾向など、共通概念の因果関係を踏襲した上で、制限要素の変更を行う。これにより、結果として得られるシステムの特性の性質(傾向)が補償される。
次に、共通概念以外の制限要素の変更を行う。ここでは、共通概念以外の制限要素にあらゆる変更を加えてよい。ここで得られた共通概念及びそれ以外の制限要素の組み合わせに基づき計算を行い、この構造の特性を求める。すなわち、サンプリングを行う。ここでは、変更された制限要素の基準とした距離モデルによる生成が効率的である。また、共通概念以外の制限要素の変更は、直交表あるいは乱数等、一般的なモデル生成方法でよい。尚、上述したように、共通概念以外の制限要素は、その制限要素の数自体を増減させることで、新たな制限要素の導出を試みてもよい。
(距離モデル生成方法)
抽出された共通概念は、特性に対する因果関係を表す制限要素の値の組み合わせ、或いは範囲の組み合わせ、制限要素同士の関係の傾向、及びこれらの組み合わせなどで表されている。共通概念が制限要素の値のみによる組み合わせの場合、これを変更することはできない。また、共通概念が制限要素の範囲で表現されている場合、この範囲内で例えば直交表や乱数を用いてモデル生成を行えばよい。
一方、これ以外の表現による共通概念の場合、共通概念を踏襲した制限要素の変更が必要になる。ここでは、効率的に共通概念を踏襲したモデルを生成するために、距離モデル生成法を提案する。
距離モデル生成法は、共通概念を構成する制限要素に似たモデルを新しく生成する方法である。この方法では、クラスタリングのグループ化のアルゴリズムに用いられている個体間の尺度を利用している。クラスタリングのグループ化のアルゴリズムにおいて、個体間の距離とは個体間の類似度(非類似度)を図る尺度として用いられている。このような尺度は、様々なものが提案されているが、ここでは個体間の類似度の想像が容易で、取り扱いやすいユークリッド距離を取り上げた。
ユークリッド距離は、個体xiを構成するp個の要素のうちk番目の要素の値をxikとすると、個体(xi−xj)間の距離dを式(4.1)のように定義する。ここで要素とは、個体xiに含まれる値である。
(4.1)
Figure 0004867314
モデルの生成は一様乱数を用いて行う。従って、一様乱数によって生成したモデルをdrand、共通概念を構成する制限要素で表現されたモデルをxc、閾値を満たさないモデルをxoとすると、新しく生成したモデルとこれらの距離は式(4.2)で表される。
(4.2)
Figure 0004867314
次に、共通概念を構成する制限要素のモデルxcに極端に似たモデルを採用しない制限則を適用させる。例えば、ユークリッド距離が0.01以下のとき、2つの個体はほぼ同一であるという認識をさせたい場合、共通概念モデルxc対し、新しく生成されたモデルxrandは式(4.3)の制限則に従うものを採用する。ここで採用する新しいモデルは、式(4.3)を満たす最小距離のモデルを1つ採用する。尚、制限則の値を変更することで、モデルの生成を大きく変更することができるため、目的に応じて設計者が決定することができる。また、共通概念モデルがいくつかある場合、同じモデルの生成を防ぐために、その他の共通概念モデルと生成されたモデルを用い、式(4.3)を計算し、適合しない場合は採用しない。
(4.3)
Figure 0004867314
以下に、モデル生成のアルゴリズムを説明する。また、モデル生成のイメージ図を図11に示す。
(i)共通概念を構成する制限要素のモデルを用意する。
(ii)乱数を用いてモデルを生成させ、式(4.2)で距離を計算し、式(4.3)を満たすモデルを選択する。またこのとき生成されたモデルと共通概念モデルとの距離を記憶しておく。
(iii)再度、共通概念を基準に乱数を用いてモデル生成させ、式(4.2)で距離を計算する。式(4.3)の制限則とする最小距離を(ii)の距離に置き換え、これを満たすモデルを選択する。ここで、選択されたモデルと共通概念モデルとの距離を記憶しておく。
(iv)以後、上記(i)〜(iii)を繰り返す。
(構造の可否判断)
ステップ〔6〕に示す構造の可否判断では、ステップ〔4〕で設定した特性の値に一致しているかどうか、あるいは設定した特性の範囲内に属しているかどうかの判断と既存構造との比較を行い、同じ構造ではないか否かを判断する。ここで、一致していない、あるいは範囲に入っていない場合は、その構造を採用し、既存構造と同じであるという場合は、その構造を採用しない。この処理を通して最後に残った構造が、所望の応答を満たす新構造である。
(具体例)
以下、上記実施例1に基づいて、具体的な態様に適用した例を示す。ここでは、自動車のサスペンションの一形式であるマルチリンクサスペンションを取り上げる。図12にマルチリンクサスペンションの構造を示す。ここで、取り扱う特性とは、タイヤがストロークしたときのキャンバー角度の変化であり、制限要素とは、マルチリンクサスペンションの各リンクの取り付け点(以下、ジオメトリ)である(図12のM1〜M5参照)。
マルチリンクサスペンションは、制限要素の違いによって、それが示す特性に図13のような大きな違いが生じる。実際のサスペンション設計においては、予め特性の設計目標値を設定し、これに一致あるいは目標を超える制限要素を探す作業を行う。従って、機構的な関係を無視したパラメトリックな作業を行うことが多く、どのような理由で最適構造が決まったのか理解することができない。
また、サスペンションの機構的理解が伴っていないため、別のマルチリンクサスペンションの設計を行う場合、同じようなパラメトリックな最適化作業を行うことになり、作業が非効率であり、新しいサスペンション構造の創出にまでつながらない。ここでは、マルチリンクサスペンションの特性の1つであるキャンバー角度とジオメトリ間の共通概念の抽出を行い、この共通概念を用いた新構造探索を行った例を示す。
(サンプリングの準備)
図12に示したマルチリンクサスペンションのジオメトリを、図14のジオメトリ範囲内で直行表L81に従って振り、振られた各ジオメトリ値に従って機構計算を行い、キャンバー角度を算出し、サンプリングを用意する。ここで得られる全てのサンプリングのキャンバー角度を図15に示す。
(特性の分類)
上記(サンプリングの準備)において用意したサンプリングを特性すなわちキャンバー角度で分類する。図16に、分類の結果得られる特性の樹形図を示す。また、図17に、分類されたある階層におけるグループ(以下、クラスター)の特性を示す。
(共通概念の抽出)
上記(特性の分類)で得られた分類結果から、上述の共通概念の抽出の方法に従い、共通概念を抽出する階層を特定する。特定された階層に存在するそれぞれのクラスターの制限要素同士の因果ネットワークを上述の共通概念の抽出の方法に従い抽出する。この結果得られた制限要素同士の因果ネットワークを、制限要素表記手段を用い表記する。
図18に制限要素同士の因果ネットワークのいくつかの例を示す。この表記方法では、そのクラスターが示す特性の特徴を実現するのに非常に影響力の高い制限要素同士のつながりが実線で示してあり、点線は、次に影響力の高い制限要素同士のつながりを示している。ここで、共通概念はすべてのクラスターに存在する共通の制限要素同士の因果ネットワークである。従って、共通概念の抽出とは、ここで得られたクラスターの制限要素の表記を比較し、共通する因果ネットワークを見つけることが、それにあたる。図19に得られた共通概念の表記を示す。
ここで得られた共通概念は、マルチリンクサスペンションにおけるキャンバー角度を制御するために必要なジオメトリの関係である。すなわち、所望のキャンバー角度を実現するためには、共通概念となるジオメトリ同士の関係(傾向)を重視し設計することで、最低限保障できる。例えば、図20に示すような特性の傾向を実現させたい場合、共通概念となる制限要素の関係を図21のような傾向で設計すればよく、図22に示すような特性の傾向を実現させたい場合、共通概念となる制限要素の関係を図23のような傾向で設計すればよい。
(特性の値の設定)
目指すキャンバー角度の値の変化を図24に示すように設定した。上記共通概念の抽出で説明したように、図24に示す特性は図20に示す特性と類似した範囲となる。よって、図24に示す特性の傾向を達成するための共通概念を構成する制限要素の関係は、図21に示すように、横に細長い三角形を構成するようなジオメトリの関係を踏襲すればよいこととなる。
(共通概念とそれ以外の制限要素の変更とそのシステム特性の抽出)
図25に共通概念を基準とした距離モデルの一例を示す。ここでは、実線が共通概念であるジオメトリの関係を示し、点線が距離モデル生成方法を用いて生成された距離モデルである。尚、ジオメトリの自由度、すなわちサスペンションリンクの取り付け点の数は任意に設定した。
これは、取り上げているマルチリンクサスペンションと別のサスペンション構造を導出するためである。言い換えると、仮に取り付け点が現在のマルチリンクサスペンションよりも多数存在した場合、どのような特性が得られるかをサンプリングを発生させて検証するものである。ここで生成されたジオメトリのモデル、すなわち、距離モデル+乱数モデルの1つに従い、実際の計算モデル生成を行い、構造解析を実施し、応答であるキャンバー角度を求める。
(構造の可否判断)
上記距離モデルに、条件としてトー剛性が高く、上記特性の値の設定において設定した図24のキャンバー角度の値の変化に一致し、かつ、取り合げたマルチリンクサスペンションと同一構造でないサスペンション構造を抽出した。抽出した構造を図26に示す。図26のサスペンションは、マルチリンクサスペンションよりも車体側の取り付け点の自由度が1つ多い構造である。これにより、既存のサスペンションシステムよりもトー剛性が高く、かつ、所望のキャンバー角度特性を満たす新しいサスペンション構造を抽出することができる。尚、抽出した新しいサスペンション構造は、少なくともキャンバー角度について成立するものであり、実車適用を行う場合には、取り上げる特性の種類は更に多くなることは言うまでもない。
以上説明したように、上記実施例1にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)複数の制限要素に対応する特性を有するシステムと、該システムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるサンプリングを準備する部位(サンプリング発生手段)と、前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする特性を分類する部位(階層的クラスタリング手段)と、前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較し(比較手段)、比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出した。
よって、システムを階層的に概念化するとともに、各概念を規定する制限要素もしくは、各概念の違いを規定する制限要素を把握することが可能となる。すなわち、コンセプトを決定する上で必要な制限要素や、新たなコンセプトを決定する上で必要な制限要素を認識することが可能となり、容易に新たなコンセプトを設計することができる。
(2)抽出された共通する制限要素以外の制限要素の値及び/又は数を任意に変更し、新たなシステムを探索することとした。具体的には、距離モデル生成によって新たなシステムを探索することとした。
よって、既存のシステムを規定するコンセプトに基づいて、新たなシステムを創造することができる。
(3)新システムを探索する際、共通する制限要素を共通範囲内で変更することとした。これにより、新たなシステムの持つ傾向や特性は、既存のシステムの持つ傾向や特性を踏襲することが可能となり、新たなシステムでありながら、既存の特性を補償することができる。尚、新システムを探索する際、共通する制限要素の傾向を維持して変更するようにしても、同様の作用効果を得ることができる。
尚、上記した作用は、全て演算装置が読み込み可能なプログラム等に記載した状態で提供してもよい。具体的には、複数の制限要素に対応する特性を有するシステムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させる指令を出力するサンプリング発生指令部と、前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする指令を出力する階層的クラスタリング指令部と、前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較する指令を出力する比較指令部と、前記比較手段で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出する抽出部と、を備えたコンセプト設計支援プログラムが記録された媒体とすることで、頒布性の向上を図ることができる。
また、上記コンセプト設計支援を実行する際には、設計者に対する表示手段として、複数の制限要素に対応する特性を有するシステムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングした結果を表示する階層的クラスタリング表示手段と、前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較可能に表示する比較表示手段と、前記比較表示手段で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出した結果を表示する抽出結果表示手段と、を備えたコンセプト設計支援表示装置を提供することで、設計者の設計容易性を更に向上することができる。
以下、上記実施例から把握しうる技術的思想について列挙する。
(4)複数の制限要素によって規定されるシステムに対し、入力と出力の関係を表す特性の集合があるとき、前記集合を特性の傾向に基づいて分類し、分類された特性に対応する制限要素を表記し、表記されたある分類に対する制限要素を、表記された他の分類に対する制限要素と比較することとした。すなわち、傾向に基づいて分類された特性を、この特性を規定する制限要素間で比較することで、傾向を規定する制限要素を把握することが可能となり、分類の技術的意味を把握することができる。
(5)各分類間で共通する制限要素に基づいて共通概念を抽出することとした。よって、複雑現象から共通概念を抽出することができる。
(6)傾向に基づいて階層的にクラスタリングする階層的クラスタリング手法を用いた。すなわち、もともと我々の対象とするシステムが階層的な分類を基にしていることを考慮すると、階層的にクラスタリングすることで最も理解可能な体系を得ることができる。また、システムには予めいくつの階層が存在するかは予め分からないことを考慮すると、予め閾値等を設定する必要が無く、既成概念に縛られない結果を得ることができる。
(7)各階層の間で共通する制限要素に基づいて共通概念を抽出することとした。よって、階層間を規定する共通概念を抽出することができる。
(8)ある階層のみに共通する制限要素に基づいて共通概念を抽出することとした。よって、ある階層を規定する共通概念を抽出することができる。
(9)システムのサンプリングを行う際、制限要素の組み合わせに偏り無くサンプリングすることとした。よって、特性に偏りを生じることなく制限要素を比較することができる。また、特性に偏りを生じることなく共通概念を抽出することができる。
(10)サンプリングを行う際、直交表を用いることとした。よって、割り付けられたある制限要素の特定水準に着目した場合、他の制限要素の水準が全て、しかも均等に組み合わされるよう作成されるため、特性に偏りを生じることなく制限要素を比較することができる。また、特性に偏りを生じることなく共通概念を抽出することができる。
(11)特性をユークリッド空間の距離による類似度に基づいて分類することとした。よって、多次元の制限要素を類似度に基づいて直交座標系に表現することが可能となり、人間が理解可能な形で容易に比較することができる。
(12)ある分類の重心と各特性との距離による類似度に基づいて分類することとした。よって、複雑現象を距離という尺度で観察することが可能となり、より人間が理解可能な形で比較することができる。
(13)制限要素表記手段は、制限要素を2次元平面上に配置することとした。よって、より人間が理解可能な形で容易に比較することができる。
(14)制限要素表記手段は、各制限要素を多角形上に配置することとした。よって、制限要素間を因果ネットワークで接続する際、直線で接続することが可能となり、因果ネットワークを容易に理解することができる。
(15)制限要素表記手段は、全ての制限要素を表記することとした。よって、既成概念に基づく切り捨て等が成されないため、現象そのものを表記している物理的つながりを正確に説明することができる。
(16)制限要素表記手段は、制限要素と特性とを同次元に配置し、制限要素と特性とのつながりを表す因果ネットワークを構成することとした。よって、制限要素と特性との物理的つながりを人間が理解可能な形で表現することができる。
(17)因果ネットワーク上の制限要素及び特性を支点と定義したとき、各支点間のつながりの強さを表す相関係数を全ての支点間で算出し、この相関係数の大きな因果ネットワークを抽出することとした。よって、複雑な現象から徐々に簡単な現象に階層化される現象過程を、因果ネットワークの変化と共に把握することができる。
(18)因果ネットワークの分散領域の大きさを表す誤差分散を算出し、相関係数が大きく、かつ、誤差分散が小さい階層において共通概念を抽出することとした。よって、制限要素間の経路に数値的な指標を設けることが可能となり、全ての制限要素を比較したとしても、煩雑になることなく容易に因果ネットワークを形成することができる。
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、ある1つのシステム(具体例ではマルチリンクサスペンション)から共通概念を抽出し、この共通概念を用いて新たなシステムを創出した。これに対し、実施例2では、複数のシステムから複数のシステムに共通する抽象概念を抽出し、この抽象概念を用いて新たなシステムを創出する点が異なる。
図27は実施例2のコンセプトを表す概念図である。実施例2では、異なる2つの形式システム(例えば、マルチリンクサスペンションシステムとダブルウィッシュボーンサスペンションシステム)の個々の共通概念の抽出を行った後、2つの形式システムに共通する共通概念(以下、抽象概念と記載する)を抽出し(すなわち2つの形式システムで構成される抽象システムの共通概念を抽出し)、抽象概念を構成するパラメータと抽象概念以外のパラメータを、様々に変化させ、2つの形式システムを合わせた構造を探索する。
まず、現象とそれを実現するあるシステムのとる制限要素の組み合わせであるサンプリングをいくつか準備しておく。そして、これらの応答をいくつかに分類し、制限要素を比較することによって、各システムにおける全ての現象を最もよく説明できる共通概念を抽出する。一方、設計者は閾値を設定し、2つの異なるシステムが持つサンプリングの応答から、閾値を満たすサンプリングを選別し、異なる2つのシステムを合わせたサンプリングの応答を用いて分類を行う。分類された集団(以下、クラスター)から、求めたい応答を実現するクラスターを選択し、クラスターを構成する制限要素を抽出する。次に、先に抽出した抽象概念と抽象概念以外を構成するパラメータを様々に変化させ、新しい構造を探索する。
ここで、抽象概念を構成する制限要素の変更は、抽象概念が持つ制限要素同士の傾向及び選択したクラスターを構成する制限要素の傾向の両方を踏襲した上で行う。また、抽象概念以外の制限要素の変更は、選択した制限要素の傾向を踏襲した上で行う。尚、各制限要素の変更では、傾向を踏襲すればよく、自由度(例えば、制限要素の数)は任意でよい。
以上のようにして制限要素を変更し、システムの応答を求める。ここで、求める応答あるいは応答の持つ範囲を予め設計者が決定しておき、当条件に応答が当てはまるか否かを判断する。ここから、2つの異なるシステムを合わせた特定の応答を実現する構造を探索できる。これを、自由度等制限要素の変更を行いながらシステムの応答を求めることを繰り返す。
以上から、実施例2では、図28に示すように、
ステップ〔1〕 各システムにおいてサンプリングを準備する部位
ステップ〔2〕 各システムにおいて特性を分類する部位
ステップ〔3〕 各システムにおいて制限要素を比較し共通概念を抽出する部位
ステップ〔4〕 各システムに共通する抽象概念を抽出する部位
ステップ〔5〕 閾値を設定する部位
ステップ〔6〕 抽象概念を構成する制限要素の変更と抽象概念以外の制限要素の変更及びこれらシステム応答の抽出部位
ステップ〔7〕 ステップ〔6〕を満たすサンプリングを抽出する部位
ステップ〔8〕 構造の可否を判断する部位
の8つのステップで構成されている。上記各ステップのうち、ステップ〔1〕〜〔3〕及びステップ〔6〕及びステップ〔8〕は、2つのシステムで実行する点は異なるものの、各システムにおいて実行する内容自体は実施例1で説明した内容と基本的に同じ作業を繰り返すことになるため説明を省略する。
(抽象概念の抽出)
ステップ〔4〕では抽象概念を抽出する。この処理は、ステップ〔3〕において抽出した2つのシステムにおける共通概念を比較することによって抽出する。具体的には、2つの共通概念に共通する強い因果ネットワークを抽象概念としている。図29は2つの共通概念を比較して、この2つに共通する抽象概念を抽出する例を表す概略図である。
(閾値の設定)
ステップ〔5〕では閾値を設定する。この閾値の設定では、抽象概念を用いて導出される構造が確実に実用可能であるために、応答の値、あるいは示す応答の範囲が取るべき値を予め設定者が設定しておくものである。
(抽象概念を構成する制限要素の変更と抽象概念以外の制限要素の変更及びこれらシステム応答抽出)
ステップ〔6〕では抽象概念に基づく構造のサンプリングを求める。まず、抽象概念を構成する制限要素の変更を行う。ここでは、抽象概念の因果関係を踏襲すると共に、後述するステップ〔8〕で選択して得られた制限要素の値、或いは範囲、制限要素同士の関係の傾向などを踏襲し変更を行う。これにより、結果として得られるシステムの応答の性質(傾向)が補償される。尚、抽象概念を構成する制限要素の自由度の変更も、因果関係及びステップ〔8〕の関係を維持できるのであれば可能である。次に、抽象概念以外の制限要素の変更を行う。ここでは、ステップ〔8〕で選択して得られた抽象概念以外の制限要素の値、あるいは範囲、制限要素同士の関係の傾向などを踏襲し、変更を加える。
尚、制限要素の自由度の変更も、ステップ〔8〕の関係を維持できるのであれば可能である。ここで得られた共通概念、及びそれ以外の制限要素の組み合わせに基づき計算を行い、この構造の応答を求める。すなわち、サンプリングを行う。ここでは、変更された制限要素の組み合わせの分だけ計算を行い、応答を求める。尚、制限要素の変更は、制限要素を基準とした距離モデルによる生成が効率的である。尚、距離モデルの生成については、実施例1において説明したため省略する。
(閾値を満たすサンプリングの干渉チェック)
ステップ〔7〕では、ステップ〔5〕で設定された閾値を満たすサンプリングの干渉チェック処理を実行する。この干渉チェック処理とは、物理的にあり得ない構造は計算自体が不可能であるため、こういったノイズを予め省いておくことで、計算の効率を向上させるものである。
(構造の可否判断)
ステップ〔8〕では、閾値を満たすか否かを判断し、かつ、基準となる2つのシステムのいずれとも同一構造でないか否かを判断する。閾値を満たしつつ、同一構造でない構造が抽出されたときは、本制御フローを終了する。
(具体例)
次に、実施例2のコンセプトを具体的に適用した具体例を説明する。自動車のサスペンション形式であるマルチリンクサスペンションとダブルウィッシュボーンサスペンションを取り上げる。図12にマルチリンクサスペンションの構造を示す。また、図30にダブルウィッシュボーンサスペンションの構造を示す。ここで取り扱う特性は、タイヤがストロークしたときのキャンバー角度の変化であり、制限要素とは、マルチリンクサスペンション及びダブルウィッシュボーンサスペンションの各リンクの取り付け点(ジオメトリ)である。
マルチリンクサスペンション及びダブルウィッシュボーンサスペンションは、制限要素の違いによって、特性がそれぞれ図13(マルチリンクサスペンション)及び図31(ダブルウィッシュボーンサスペンション)のように大きな違いが生じる。実際のサスペンション設計においては、予め特性の設計目標値を設定し、これに一致するあるいは目標を超える制限要素を探す作業を行う。従って、機構的な関係を無視したパラメトリックな作業を行うことが多く、どのような理由で最適構造が決まったのか理解することができない。また、サスペンションの機構的理解が伴っていないため、形式は同じでジオメトリなどが違うサスペンションの設計を行う場合、同じようなパラメトリックな最適化作業を行うこととなり、作業が非効率的であり、新しいサスペンション構造の創出までつながらない。ここでは、マルチリンクサスペンション及びダブルウィッシュボーンサスペンションの応答の1つであるキャンバー角度変化とジオメトリ間の共通概念の抽出を行い、これら共通概念に共通する抽象概念を用いた新構造探索を行った例を示す。
(サンプリングの準備)
図12(マルチリンクサスペンション)及び図30(ダブルウィッシュボーンサスペンション)に示すサスペンションのジオメトリを、それぞれ図14(マルチリンクサスペンション),図32(ダブルウィッシュボーンサスペンション)のジオメトリ範囲内で直交表L81に従って振り、振られた各ジオメトリ値に従って機構計算を行い、キャンバー角度変化を算出し、サンプリングを用意する。ここで得られる全てのサンプリングのキャンバー角度をそれぞれ図15(マルチリンクサスペンション),図33(ダブルウィッシュボーンサスペンション)に示す。
(特性の分類)
用意されたサンプリングを特性すなわちキャンバー角度変化で分類(階層的クラスタリング)する。それぞれ図16(マルチリンクサスペンション),図34(ダブルウィッシュボーンサスペンション)に分類の結果得られる特性の樹形図を示す。また、図17(マルチリンクサスペンション),図35(ダブルウィッシュボーンサスペンション)に、分類されたある階層におけるグループ(以下、クラスター)の特性を示す。尚、ある階層とは、共通概念抽出に適した階層において、共通概念となる共通の因果ネットワークは、式(5.4)で表される相関係数の感度が大きい経路pがそれに該当する。このことから、共通概念を抽出した例である。
(共通概念の抽出)
上記特性の分類によって得られた分類結果から、上記ステップ〔3〕で説明した方法に従い共通概念を抽出する階層を特定し、特定された階層に存在するそれぞれのクラスターの制限要素同士の因果ネットワークを抽出する。この結果得られた制限要素同士の因果ネットワークを、制限要素表記手段を用いて表記する。それぞれ図18(マルチリンクサスペンション)及び図36(ダブルウィッシュボーンサスペンション)に制限要素同士の因果ネットワークのいくつかの例を示す。この表記方法では、そのクラスターが示す特性の特徴を実現するのに非常に影響力の高い制限要素同士の繋がりが実線で示してあり、次に影響力の高い制限要素同士の繋がりを点線で示してある。したがって、共通概念の抽出とは、ここで得られた同じ形式のクラスターの制限要素の表記を比較し、共通する因果ネットワークを見つけることが、それにあたる。図19(マルチリンクサスペンション)及び図37(ダブルウィッシュボーンサスペンション)は、抽出された共通概念の因果ネットワークを表す図である。
ここで得られた共通概念は、各サスペンションにおけるキャンバー角度を制御するために必要なジオメトリの関係である。すなわち、所望のキャンバー角度を実現するためには、共通概念となるジオメトリ同士の関係(傾向)を重視し設計することで最低限補償できる。例えば、図38(a)に示すようなストローク量とキャンバー角度の特性に設定したい場合には、マルチリンクサスペンションでは、図38(b)に示すように、共通概念であるオリジナル形状を細長い形状に設計すればよい。また、ダブルウィッシュボーンサスペンションでは、図38(c)に示すように、共通概念であるオリジナル形状を細長い形状に設計すればよい。
同様に、図39(a)に示すようなストローク量とキャンバー角度の特性に設定した場合には、マルチリンクサスペンションでは、図39(b)に示すように、共通概念であるオリジナル形状を幅広形状に設計すればよい。また、ダブルウィッシュボーンサスペンションでは、図39(c)に示すように、共通概念であるオリジナル形状を幅広形状に設計すればよい。
(抽象概念の抽出)
以上の観点から、2つのサスペンションシステムを比較することとした。ここで、2つのサスペンションシステムは自由度が異なるため、自由度が共通になるように、自由度の大きい方を自由度の小さな方に縮退させる。具体的には、ダブルウィッシュボーンサスペンションのUpper_FrontとUpper_Rearを合わせ、マルチリンクサスペンションのUpper_Inner相当に縮退させる。図40はダブルウィッシュボーンサスペンションの因果ネットワークをマルチリンクサスペンションの因果ネットワークに縮退させた関係を表す図である。
尚、縮退させる際には、自由度の属性を考慮して縮退させることが望ましく、単に数を減らすだけでは意味がない。すなわち、属性を考慮するとは、概念として上位と下位の関係にあるか否かを考慮して縮退することと同義である。
上述したように、2つのサスペンションシステムには、共通概念から分かることとして、タイヤ側の3つの接合点で構成される三角形構造が特徴として共通している。すなわち、マルチリンクサスペンションとダブルウィッシュボーンサスペンションの因果ネットワークの考察を考慮すると、抽出された共通概念である三角形構造を基準に、三角形構造とそれに係わるその他の構造という関係から、キャンバー角度との関係をコンセプトとしてまとめることができる。
(閾値の設定)
次に、図41に示すように閾値を設定した。すなわち、ストローク量に対するキャンバー角度特性が図41に示す斜線領域内に収まることとした。
(閾値を満たすサンプリングの抽出)
上記閾値の設定により閾値を満たすサンプリングを、準備されたサンプリングの中から抽出する。
(抽象概念とそれ以外の制限要素の変更とそのシステム応答の抽出)
図42に抽象概念を基準とした距離モデルの一例を示す。ここでは、実線が抽象概念であるジオメトリの関係を示し、点線が距離モデルである。尚、ジオメトリの自由度、すなわちサスペンションリンクの取り付け点の数は任意に設定した。ここで生成された距離モデルに従い実際の計算モデル作成を行い、構造解析を実施し、応答であるキャンバー角度を求める。尚、自由度を任意に設定した場合、意味のない自由度については構造解析が進むに連れて徐々に0に収束するため、任意に設定したとしても特に問題はない。
(構造の可否判断)
このとき、上記距離モデルに、条件としてトー剛性が高く、上記特性の値の設定において設定した図41のキャンバー角度の値の変化に一致し、かつ、取り合げたマルチリンクサスペンション及びダブルウィッシュボーンサスペンションと同一構造でないサスペンション構造を抽出した。抽出した構造を図42に示す。図42のサスペンションは、マルチリンクサスペンションよりも車体側の取り付け点の自由度が1つ多い構造である。尚、基本的な構造は実施例1で抽出した構造と同じであるが、キャンバー角特性が異なるため、ジオメトリ等は実施例1とは異なる値に設定されている。
これにより、既存のサスペンションシステムよりもトー剛性が高く、かつ、所望のキャンバー角度特性を満たす新しいサスペンション構造を抽出することができる。尚、抽出した新しいサスペンション構造は、少なくともキャンバー角度について成立するものであり、実車適用を行う場合には、取り上げる特性の種類は更に多くなることは言うまでもない。
以上説明したように、実施例2のコンセプト設計支援装置では、実施例1の作用効果に比べて下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(19)複数の制限要素に対応する特性を有する複数のシステムと、該複数のシステムの制限要素と特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるサンプリングを準備する部位(サンプリング発生手段)と、前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする特性を分類する部位(階層的クラスタリング手段)と、前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較し(比較手段)、比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出した。
よって、各システムを階層的に概念化するとともに、各システムに共通する抽象概念を規定する制限要素もしくは、各概念の違いを規定する制限要素を把握することが可能となる。すなわち、コンセプトを決定する上で複数のシステムに共通する必要な制限要素や、新たなコンセプトを決定する上で必要な制限要素を認識することが可能となり、容易に新たなコンセプトを設計することができる。
(20)新システムを探索する際、共通する制限要素を共通範囲内で変更することとした。これにより、新たなシステムの持つ傾向や特性は、既存の複数のシステムの持つ傾向や特性を踏襲することが可能となり、新たなシステムでありながら、既存の特性を補償することができる。尚、新システムを探索する際、共通する制限要素の傾向を維持して変更するようにしても、同様の作用効果を得ることができる。このとき、複数のシステムの特徴を併せ持った新システムは、既存のシステムの間の子(あいのこ)のような新たなシステムを提案することができる。
(21)尚、上記した作用は、全て演算装置が読み込み可能なプログラム等に記載した状態で提供してもよい。コンセプト設計支援プログラムが記録された媒体とすることで、頒布性の向上を図ることができる。
(22)また、上記コンセプト設計支援を実行する際には、設計者に対する表示手段を提供することで、設計者の設計容易性を更に向上することができる。
(23)複数のシステムを比較する際、制限要素の数すなわち自由度が共通になるように、自由度の大きい方を自由度の小さな方に縮退させることとした。尚、縮退させる際には、自由度の属性を考慮して縮退させることが望ましく、単に数を減らすだけでは意味がない。すなわち、属性を考慮するとは、概念として上位と下位の関係にあるか否かを考慮して縮退することと同義である。
このように、縮退させて比較することで、異なるシステムをコンセプトとして共通化することが可能となり、具象段階では異なるシステムであっても、容易に比較することができる。
尚、実施例2では、説明として2つのシステムを用いて説明したが、更に複数のシステムを用いてもよいことは言うまでもない。例えば、ストラットサスペンションシステムを更に追加し、新規なサスペンションシステムの創造を行ってもよい。
(他の実施例)
次に、他の実施例について説明する。上記実施例では、因果ネットワークを表記する際、制限要素を多角形上に配置した構成としたが、例えば、平行に配置された属性軸上に配置してもよい。図44は他の実施例を表す概略図である。あるシステムに対して制限要素A,B,C,Dが存在する場合を想定する。このとき、システムに対する入力と出力の関係を表す特性をクラスターAとクラスターBに分類する。次に、2次元平面上に平行に配置された属性軸を設定し、この属性軸上に各クラスターAとクラスターBの制限要素存在領域(分散)を重ね合わせて表記する。図44中、実線で囲まれる範囲がクラスターAの制限要素の存在範囲、点線で囲まれる範囲がクラスターBの制限要素の存在範囲である。このとき、クラスターAとクラスターBとが重なる斜線領域が相関の強い因果ネットワークを表すようにしてもよい。
また、上記実施例1では具体的に示さなかったが、上記論理構成に基づく情報処理技術を、コンピュータ等による処理が可能なようにプログラム媒体としておくことは産業上有効である。このプログラム媒体には、CDや、DVDといった媒体でもよいし、サーバー等にプログラムを保存し、適宜ダウンロードすることで処理する構成としてもよい。また、予めFlashメモリやROMの中に書き込んだ装置を提供するようにしてもよい。
実施例1の抽象システムと形式システムの間、具象システムと形式システムの間に、傾向あるいは範囲という限定を加えた傾向システムを導入する概念を表す図である。 実施例1のクラスターと共通概念との関係を表す概念図である。 実施例1の新システムを探索する概念を表す図である。 実施例1の新システム探索フローを表す図である。 実施例1のサンプリングを準備する直行表の例を表す図である。 実施例1のクラスタリングの具体例を表す図である。 実施例1の階層的クラスタリングの具体例を表す図である。 実施例1の因果ネットワークを表す図である。 実施例1の因果ネットワークの表示方法の一例を表す図である。 実施例1の因果ネットワークに共通する共通概念の表示方法に一例を示す。 実施例1の因果ネットワークを利用した拒通概念の距離モデルの表示例を示す。 具体例におけるマルチリンクサスペンションの構造を示す図である。 具体例におけるマルチリンクサスペンションの、制限要素の違いによる特性の違いを表す図である。 具体例におけるマルチリンクサスペンションのジオメトリを直行表に従って作成したサンプリングを表す図である。 具体例における全てのサンプリングのキャンバー角度特性を表す図である。 具体例におけるクラスタリングの結果得られる特性の樹形図を表す図である。 分類されたある階層におけるクラスターの特性を表す図である。 具体例における制限要素同士の因果ネットワークのいくつかの例を表す図である。 具体例における共通する因果ネットワークにおける共通概念と、この共通概念に対応するマルチリンクサスペンション部分を表す図である。 具体例のあるストローク量−キャンバ角度特性を表す図である。 具体例のある特性に対応するマルチリンクサスペンション形状を表す図である。 具体例のあるストローク量−キャンバ角度特性を表す図である。 具体例のある特性に対応するマルチリンクサスペンション形状を表す図である。 具体例の設計者が設定する所望のキャンバー角度特性を表す図である。 具体例の共通概念を基準とした距離モデルを表す図である。 具体例の新サスペンションシステムを表す図である。 実施例2の複数のシステムから新システムを探索する概念を表す図である。 実施例2の新システム探索フローを表す図である。 実施例2の抽象概念を抽出する概念を表す図である。 具体例におけるダブルウィッシュボーンサスペンションの構造を示す図である。 具体例におけるダブルウィッシュボーンサスペンションの、制限要素の違いによる特性の違いを表す図である。 具体例におけるダブルウィッシュボーンサスペンションのジオメトリを直行表に従って作成したサンプリングを表す図である。 具体例における全てのサンプリングのキャンバー角度特性を表す図である。 具体例におけるクラスタリングの結果得られる特性の樹形図を表す図である。 分類されたある階層におけるクラスターの特性を表す図である。 具体例における制限要素同士の因果ネットワークのいくつかの例を表す図である。 具体例における共通する因果ネットワークにおける共通概念と、この共通概念に対応するダブルウィッシュボーンサスペンション部分を表す図である。 具体例のある特性に対応するマルチリンクサスペンション形状とダブルウィッシュボーンサスペンション形状を表す図である。 具体例のある特性に対応するマルチリンクサスペンション形状とダブルウィッシュボーンサスペンション形状を表す図である。 具体例のダブルウィッシュボーンサスペンションの共通概念をマルチリンクサスペンションの因果ネットワークに縮退させた形状を表す図である。 具体例の設計者が設定する所望のキャンバー特性を表す図である。 具体例の抽象概念を基準とした距離モデルを表す図である。 具体例の新サスペンションシステムを表す図である。 他の実施例の因果ネットワークを表す概略説明図である。
符号の説明
p,q,r クラスター
t クラスター(クラスターp+クラスターq)
M1,M2,M3,M4,M5 ジトメトリ(マルチリンクサスペンション)
D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7 ジオメトリ(ダブルウィッシュボーンサスペンション)

Claims (9)

  1. 複数の制限要素に対応する特性を有するシステムがあるとき
    該システムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるサンプリング発生手段と、
    前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする階層的クラスタリング手段と、
    前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較する比較手段と、
    前記比較手段で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出する抽出手段と、
    を備えたことを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  2. 請求項1に記載のコンセプト設計支援装置において、
    前記システムは複数のシステムであることを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  3. 請求項1または2に記載のコンセプト設計支援装置において、
    前記抽出手段により抽出された共通する制限要素以外の制限要素の値及び/又は数を任意に変更し、新たなシステムを探索する新システム探索手段と、
    を備えたことを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  4. 請求項3に記載のコンセプト設計支援装置において、
    前記新システム探索手段は、前記共通する制限要素を共通範囲内で変更することを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  5. 請求項3または4に記載のコンセプト設計支援装置において、
    前記新システム探索手段は、前記共通する制限要素の傾向を維持して変更することを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  6. 請求項2ないし5いずれか1つに記載のコンセプト設計支援装置において、
    前記比較手段は、異なるシステムの間で制限要素を比較するときは、制限要素の多いシステムを、制限要素の小さいシステムに縮退させて比較することを特徴とするコンセプト設計支援装置。
  7. 複数の制限要素に対応する特性を有するシステムがあるとき、
    コンピュータを、
    前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるサンプリング発生部と、
    前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングする階層的クラスタリング部と、
    前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較する比較部と、
    前記比較で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出する抽出部と、
    として機能させることを特徴とするコンセプト設計支援プログラム。
  8. 複数の制限要素に対応する特性を有するシステムの前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングした結果を表示する階層的クラスタリング表示手段と、
    前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較可能に表示する比較表示手段と、
    前記比較表示手段で比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出した結果を表示する抽出結果表示手段と、
    を備えたことを特徴とするコンセプト設計支援表示装置。
  9. 複数の制限要素に対応する特性を有するシステムがあるとき、
    コンピュータが、
    前記制限要素と前記特性との組み合わせであるサンプリングを複数発生させるステップと、
    前記サンプリングを前記特性の類似度に基づいて階層的にクラスタリングするステップと、
    前記クラスタリングされた各クラスターの制限要素を、同じ階層間及び/又は異なる階層間で比較するステップと、
    前記比較するステップで比較した結果から、前記制限要素のうち、各クラスター間で共通する制限要素及び/又は各クラスター間で共通しない制限要素を抽出するステップと、
    を実行することを特徴とするコンセプト設計支援方法。
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