JP4866539B2 - 制癌剤 - Google Patents

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Description

本発明は、制癌剤に関する。より詳細には、本発明は、スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する制癌剤に関する。
スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体は、D−グルコースの6位の炭素(以下、糖のn位の炭素をそれぞれ「Cn炭素」ともいう)の水酸基がスルホ基に、C1炭素の水酸基がグリセロールに置換した6−デオキシ−6−スルホ−D−グリコピラノシルグリセロールを基本骨格とし、そのグリセロール部位の水酸基が脂肪酸とエステル結合した構造を有するものである。スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体には、グリセロールとエステル結合する脂肪酸の種類等により、多くの誘導体がある。これらのスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体のなかには、医薬への適用が期待される生理活性を有するものが知られている。
例えば、太田らの非特許文献1には、紅藻スギノリから得られる特定のスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体が、高等生物DNA合成酵素αおよびβの阻害活性並びにHIV由来逆転写酵素阻害活性を示すことが記載されている。しかしながら、太田らの非特許文献1には、制癌作用についての記載はない。
また、水品らの非特許文献2には、シダ植物から得られる特定のスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体が、子牛DNA合成酵素α型およびラットDNA合成酵素β型への阻害活性を示すが、HIV由来逆転写酵素阻害活性には影響を及ぼさないことが記載されている。しかしながら、水品らの非特許文献2にも制癌作用についての記載はない。
一方、佐原らの非特許文献3には、ウニ体内成分から得られるスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体が、イン・ビボおよびイン・ビトロで制癌作用を示すことが記載されている。しかしながら、佐原らが制癌作用を見出したスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体は、グリセロールとエステル結合する脂肪酸のアシル残基が互いに異なる複数種のスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体の混合物であり、各誘導体の単独の作用は明らかにされていない。
Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 46(4), (1998) Biochemical Pharmacology, 55, 537-541, (1998) British Journal of Cancer, 75(3), 324-332, (1997)
このように、スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体には医薬への適用が期待される生理活性を有するものが知られているが、未だ、単独で有意な制癌活性を示すものは見出されていない。
そこで、本発明は、スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体のなかから制癌活性を有する化合物を見出し、制癌剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、次の一般式(1):
Figure 0004866539
(式中、R101は、飽和高級脂肪酸のアシル残基を表し、R102は、水素原子を表す。)により表される化合物には制癌活性があることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明は、上記一般式(1)により表される化合物およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、大腸癌もしくは胃癌のための制癌剤(以下、「本発明の制癌剤」ともいう。)を提供する。
一般式(1)により表されるスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体は有意な制癌活性を有している。このようなスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する本発明の制癌剤は、医薬品としての利用が大いに期待されるものである。
本発明の制癌剤において有効成分として用いる一般式(1)により表されるスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体は、DNA合成酵素α型に対する阻害作用を有している(下記アッセイ1)。DNA合成酵素には、このα型の他にβ型、γ型、δ型およびε型のものがあることが知られている。これらのDNA合成酵素のうち、δ型およびε型は、α型のものと生化学的類型にあると考えられている。ここで、生化学的類型とは、次のような酵素機能としての共通性を有することを指す。(i)特定の化合物に対する感受性の有無…例えばこれら3種のDNA合成酵素は共に、N−エチルマレイミドおよびブチルフェニル−dGTPに対する感受性を持つが、ジデオキシTTP(ddTTP)に対する感受性を持たない。(ii)忠実度(fidelity)…鋳型DNAに対するDNA合成の高い正確さを持つ。(iii)反応の場…これら3種のDNA合成酵素は共に細胞分裂と連動するDNA複製に直接的に関与している。
DNA合成酵素α型(δ型およびε型も生化学的類型として含む)は、一般に細胞周期に応じてDNA合成を司ると考えられている。従って、DNA合成酵素α型(δ型およびε型も生化学的類型として含む)に対する阻害活性を有する本発明の一般式(1)により表される化合物は、連続的かつ急激に細胞増殖を生じている癌細胞に対する増殖抑制能を有し得るものと考えることができる。本発明者らは、本発明の一般式(1)により表される化合物は、α型のDNA合成酵素の他に、δ型およびε型のDNA合成酵素に対する阻害活性も有すると考えている。
以下、本発明の制癌剤について詳細に説明する。
本発明の制癌剤は、次の一般式(1):
Figure 0004866539
(式中、R101は、飽和高級脂肪酸のアシル残基を表し、R102は、水素原子を表す。)により表される化合物およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
一般式(1)において、R101は、飽和高級脂肪酸のアシル残基を表す。R101により表される飽和高級脂肪酸のアシル残基を提供する脂肪酸には、直鎖状又は分岐状の、飽和高級脂肪酸が含まれる。R101は、特に大腸癌および胃癌に対する制癌活性の観点から、好ましくは、直鎖状飽和高級脂肪酸のアシル残基であり、さらに好ましくはCH3(CH2nCO−(nは、12〜24の整数(好ましくは、12〜24の偶数)である。)により表される基である。
一般式(1)において、R102は、水素原子又は飽和高級脂肪酸のアシル残基を表す。飽和高級脂肪酸のアシル残基を提供する脂肪酸には直鎖状又は分岐状の、飽和高級脂肪酸が含まれる。特に大腸癌および胃癌に対する制癌活性の観点から、R102は水素原子であることが好ましいが、特にR101がCH3(CH212CO−であるときには、R102はCH3(CH212CO−であっても例外的に制癌活性を有する。
本発明の制癌剤において、一般式(1)により表される化合物のスルホ置換のグルコースとグリセリドとの結合は、α結合であってもβ結合であってもよいが、特に大腸癌および胃癌に対する制癌活性の観点から、α結合であることが好ましい。
本発明の制癌剤において用いる一般式(1)により表される化合物のうち、特に大腸癌および胃癌に対する制癌活性の観点から好ましいものを次の表1にまとめた。
Figure 0004866539
上記化合物SQAG1〜SQAG14のうち、胃癌又は大腸癌に対する制癌活性の観点からSQAG1、SQAG2、SQAG4、SQAG6、SQAG8、SQAG11、SQAG12、SQAG13およびSQAG14が好ましい。
本発明の制癌剤は、上述したように、一般式(1)により表される化合物およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
本発明の制癌剤において用い得る薬学的に許容される塩には、例えば、ナトリウムおよびカリウムのような一価の陽イオンの塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。以下、一般式(1)の化合物およびその薬学的に許容される塩からなる群の化合物を「本発明の制癌活性物質」ともいう。
本発明の制癌活性物質は、例えば、経口投与、非経口投与することができる。本発明の制癌活性物質は、これらの投与経路に応じて、適切な薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤等と組み合わせることにより薬学的製剤にすることができる。
経口投与に適した剤型としては、固体、半固体、液体又は気体等の状態のものが含まれ、具体的には、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の制癌活性物質を錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤等に製剤化するためには、それ自体は既知の方法を用いて、本発明の制癌活性物質をバインダー、錠剤崩壊剤、潤滑剤等と混合し、さらに、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、浸潤剤、保存剤、フレーバー剤等と混合することにより行うことができる。一例を挙げると、上記バインダーには、結晶セルロース、セルロース誘導体、コーンスターチ、ゼラチン等が、錠剤崩壊剤には、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が、潤滑剤には、タルク、ステアリン酸マグネシウム等が含まれ、さらには、ラクトース、マンニトール等のような従来用いられている添加剤等を用いることができる。
また、本発明の制癌活性物質は、液体、微細粉末の形態のものを、気体又は液体の噴霧剤と共に、又は必要に応じて浸潤性付与剤のような既知の助剤と共に、エアロゾル容器、ネブライザーのような非加圧容器に充填し、エアロゾル剤又は吸入剤の形態で投与することもできる。噴霧剤としては、ジクロロフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧ガスを用いることができる。
本発明の制癌剤を非経口投与する場合、例えば、直腸投与および注射等により投与することができる。
直腸投与には、例えば、坐薬として投与することができる。坐薬は、それ自体は既知の方法により、本発明の制癌活性物質を、体温で融解するが室温では固化しているカカオバター、カーボンワックス、ポリエチレングリコールのような賦形剤と混合し、成形することにより製剤化することができる。
注射による投与としては、皮下、皮内、静脈内、筋肉内等に投与することができる。これらの注射用製剤は、それ自体は既知の方法により、本発明の制癌活性物質を、植物性油、合成樹脂酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、プロピレングリコールのような水性又は非水性の溶媒中に溶解、懸濁又は乳化し、さらに、所望により、可溶化剤、浸透圧調節剤、乳化剤、安定剤および保存料のような従来用いられている添加剤と共に製剤化することができる。
本発明の制癌活性物質を溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル等の形態にするためには、注射用滅菌水や規定生理食塩水のような薬学的に許容される溶媒を用いることができる。
本発明の制癌活性物質は、薬学的に許容される他の活性を有する化合物と併用して薬学的製剤とすることもできる。
本発明の制癌剤の投与量は、投与形態、投与経路、対象とする疾病の程度や段階等に応じて適宜設定、調節することができる。一例を挙げると、経口投与する場合は、制癌活性物質として、1〜10mg/kg体重/日、注射剤として投与する場合は、制癌活性物質として、1〜5mg/kg体重/日、直腸投与する場合は、制癌活性物質として、1〜5mg/kg体重/日に設定することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の制癌剤において用いる一般式(1)により表される化合物は、下記一般式(A)および一般式(B)により表されるピラノシドをそれぞれ中間体として用いることにより効率的に製造することができる。これらの一般式(A)および一般式(B)により表されるピラノシドは、新規な化合物である。
一般式(A)により表されるピラノシド(1−O−(2−プロペニル)−6−O−スルホニルピラノシド)について以下詳細に説明する。
一般式(A):
Figure 0004866539
により表されるピラノシドを構成する糖骨格であるピラノースには、α−D−グルコース、β−D−グルコースが含まれる。これらの糖骨格は、舟形、いす型のいずれの配置をもとり得る。しかしながら、いす型のもののほうが、安定性の観点から好ましい。
一般式(A)において、C1炭素に結合する2−プロペニル基は、α結合であってもβ結合であってもよい。
一般式(A)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、アルキル基又は置換シリル基を表す。R1、R2およびR3は、互いに同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、これら3つの置換基は、互いに同じであることが製造上の容易性の観点から好ましい。
1、R2およびR3により表されるアルキル基は、非置換又は置換のアルキル基、すなわち、炭素数1〜2の非置換アルキル基(メチル基、エチル基)、アルキル部分の炭素数が1〜2であり、かつ炭素数1〜2のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基)で置換された置換アルキル基、またはアルキル部分の炭素数が1〜2であり、かつフェニル基もしくはp−メトキシフェニル基で置換された置換アルキル基である。
本明細書において、置換基の「炭素数」とは、当該置換基が非置換である場合の炭素原子の数をいう。従って、例えば、R1により表される基が置換アルキル基である場合、その炭素数とは、当該アルキル基に置換する置換基の炭素原子を含まない、アルキル基の骨格部分の炭素原子の数をいう。置換基がアルキル基以外の場合についても同様である。
1、R2およびR3により表されるアルキル基としては、具体的には、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基等が含まれる。
一般式(A)において、R1、R2およびR3により表される置換シリル基の置換基は、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、または炭素数6のアリール基(例えば、フェニル基)である。
1、R2およびR3により表される置換シリル基としては、好ましくは3置換のシリル基であり、より好ましくはt−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が含まれる。
1、R2およびR3により表される基は、一般式(A)により表される化合物をスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体の中間体として用いることを考慮すると、ベンジル基であるものが、保護基としての安定性の観点から好ましい。また、R1、R2およびR3がp−メトキシベンジル基又はt−ブチルジメチルシリル基もしくはトリエチルシリル基であるものは、不飽和脂肪酸が結合したスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体を合成するためのさらなる反応において脱保護する際の反応性の観点から好ましい。
一般式(A)において、R4は、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。
アルキルスルホニル基のアルキル部分は、炭素数1〜2のアルキル基(メチル基、エチル基)である。アルキルスルホニル基は、具体的には、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基である。
アリールスルホニル基のアリール部分は、非置換又は置換のアリール基、すなわち、フェニル基、またはp−メチル基もしくはp−メトキシ基で置換された置換フェニル基である。アリールスルホニル基には、具体的には、p−トルエンスルホニル基(トシル基)、p−メトキシベンゼンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等が含まれる。これらのアリールスルホニル基のうち、トシル基が反応の安定性の観点から好ましい。
次に、一般式(B)により表されるピラノシド(1−O−(2−プロペニル)−6−デオキシ−6−カルボニルチオピラノシド)について詳細に説明する。
一般式(B):
Figure 0004866539
により表されるピラノシドの糖骨格を構成するピラノースは、上述した一般式(A)により表されるピラノシドのそれと同義である。
一般式(B)において、C1炭素に結合する2−プロペニル基も一般式(A)の場合と同様に、α結合であってもβ結合であってもよい。
一般式(B)において、R1、R2およびR3も、上述した一般式(A)のR1、R2およびR3とそれぞれ同義である。
一般式(B)において、R5は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
5により表されるアルキル基は、炭素数1〜2のアルキル基(メチル基、エチル基)である。
5により表されるアリール基は、炭素数6のアリール基(例えば、フェニル基)が含まれる。
一般式(B)により表される化合物において、R5により表される基としては、メチル基が、反応の安定性の観点から好ましい。
これらの一般式(A)および一般式(B)で表される化合物をそれぞれ中間体として用いることにより、一般式(1)の化合物を効率的に製造することができる。即ち、一般式(1)の化合物は、次の(工程A)〜(工程J)を経て製造することができる。
(工程A)一般式(1)で表される化合物の糖部分を提供するD−グルコースのC1炭素に結合する水酸基を2−プロペニル化する。(工程B)グルコースのC6炭素の水酸基を保護する。(工程C)C2、C3およびC4炭素に結合する水酸基を保護する。(工程D)先に保護したC6炭素の保護基を脱保護する。(工程E)C6炭素に結合する水酸基をカルボニルチオ基に変換し得る基(例えば、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基)に置換する。(工程F)C6炭素をカルボニルチオ化する。(工程G)C1に結合する2−プロペニル基をジオール化する。(工程H)得られたジオールの少なくとも一方を所望の直鎖高級脂肪酸によりエステル化する。(工程I)C6炭素のカルボニルチオ基をスルホン酸塩化する。(工程J)得られたスルホン酸塩のC2、C3およびC4炭素の保護基を脱保護することにより、塩の形態にある、一般式(1)の化合物を製造することができる。このようにして得られた塩は、塩酸等の酸による滴定に供することにより、一般式(1)により表される化合物にすることができる。
まず、一般式(A)により表される化合物の製造方法(上記工程A〜E)、および一般式(B)により表される化合物の製造方法(上記工程F)を詳細に説明する。
一般式(A)により表されるピラノシドは、対応するピラノースから、次の5工程(工程A〜E)を経て製造することができる。
このようにして得られた一般式(A)のピラノシドは、さらに工程Fを経ることにより一般式(B)のピラノシドにすることができる。
Figure 0004866539
上記工程A〜Eを経て一般式(A)のピラノシドを製造する方法において、まず、工程Aにより、対応する無置換のピラノース(化合物1)のC1炭素に結合する水酸基を2−プロペニル化し、化合物2を得る。
次いで、工程Bにより、化合物2のC6炭素の水酸基を保護し、化合物3を得る。
次いで、工程Cにより、化合物3のC2、C3およびC4炭素に結合する水酸基を保護し、化合物4を得る。
次いで、工程Dにより、化合物4のC6炭素に結合する保護基を脱保護し、化合物5を得る。
最後に、工程Eにより、化合物5のC6炭素に、酸素原子を離脱させるための脱離基を結合させることにより、一般式(A)の化合物(化合物6)が得られる。
このようにして得られた一般式(A)のピラノシドは、さらに工程Fを経て、一般式(B)のピラノシドにすることができる。
上記工程A〜Fをさらに詳細に説明する。
工程Aの2−プロペニル化は、対応するピラノースとアリルアルコールをトリフルオロメタンスルホン酸等の強酸の存在下に、通常、室温から100℃、好ましくは80℃〜90℃の温度で反応させることにより行うことができる。
工程Bにおいては、C6炭素に結合する水酸基を保護し、C6炭素に−OR6を結合させる(ここで、R6は、アルキル基又は置換シリル基を表す。)。
6により表されるアルキル基には、かさ高い非置換又は置換のアルキル基であって、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、t−ブチル基、トリチル基)が含まれる。R6により表されるアルキル基は、トリチル基が反応の容易性の観点から好ましい。
6により表される置換シリル基の置換基には、低級アルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、およびアリール基、好ましくは炭素数6のアリール基(例えば、フェニル基)等が含まれる。R6により表される置換シリル基は、好ましくは3置換のシリル基であり、より好ましくはt−ブチルジフェニルシリル基等が含まれる。
工程Bにおける水酸基の保護は、乾燥ピリジン等の有機溶媒に溶解した化合物2の溶液に、トリチルクロリド等の水酸基を保護し得る化合物を添加し、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の触媒の存在下に室温で反応させることにより行うことができる。
水酸基を保護し得る化合物としてトリチルクロリドを用いると、R6がトリチル基である化合物3が得られる。トリチルクロリドは、製造コストの観点から好ましく用いることができる。また、水酸基を保護し得る化合物としてt−ブチルジフェニルシリルクロリドを用い、イミダゾール等の触媒の存在下に室温で反応させることもできる。この場合、R6がt−ブチルジフェニルシリル基である化合物3が得られる。
工程Cにおいては、C2、C3およびC4炭素に結合する水酸基を保護し、それぞれ−OR1、−OR2および−OR3(ここで、R1〜R3は、一般式(A)について上述したものとそれぞれ同義である。)にする。これらの水酸基の保護は、ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解した化合物3の、C2、C3およびC4炭素に結合する水酸基を水素化ナトリウム等により活性化し、ベンジルブロミド等の水酸基を保護し得る化合物を室温で反応させることにより行うことができる。
水酸基を保護し得る化合物としてベンジルブロミドを用いると、R1、R2およびR3がいずれもベンジル基である化合物4が得られる。ベンジルブロミドは、保護基の安定性の観点から好ましく用いることができる。また、水酸基を保護し得る化合物としてp−メトキシベンジルブロミド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド等を用いることもでき、R1、R2およびR3のすべてが、それぞれp−メトキシベンジル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基である化合物4が得られる。これらの水酸基を保護し得る化合物を用いる場合の反応は、それぞれの保護基に適した反応条件により行うことができる。
工程DにおけるC6炭素に結合する保護基の脱保護は、メタノール等の有機溶媒に溶解した化合物4の溶液を、トルエンスルホン酸等の触媒の存在下に室温で反応させることにより行うことができる。
工程Eにおいては、化合物5のC6炭素に、酸素原子を離脱させるための脱離基(−OR4、(ここで、一般式(A)において規定したものと同義。))を結合させる。
脱離基(−OR4)は、有機溶媒に溶解した化合物5の溶液に、酸素原子を離脱し得る化合物を添加し、反応させることによりC6炭素に導入することができる。
上記の反応において、有機溶媒としては、ピリジン、ジクロロメタン等を用いることができる。
上記の反応は、必要に応じて、DMAP等の触媒の存在下に室温で行うことができる。
酸素原子を離脱し得る化合物としては、アルキルスルホニル基を有する化合物およびアリールスルホニル基を有する化合物等を用いることができる。アルキルスルホニル基を有する化合物のアルキル基としては、好ましくは非置換のアルキル基であって、より好ましくは低級アルキル基、さらにより好ましくは炭素数1〜2のアルキル基(メチル基、エチル基)が含まれる。アルキルスルホニル基を有する化合物の具体例を挙げると、メタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルクロリド等が含まれる。メタンスルホニルクロリドおよびエタンスルホニルクロリドを用いると、R4により表される基が、それぞれメタンスルホニル基およびエタンスルホニル基である化合物6が得られる。
酸素原子を離脱し得る化合物として用いるアリールスルホニル基を有する化合物のアリール基としては、非置換又は置換のアリール基であって、好ましくは炭素数6(例えば、フェニル基)が含まれる。アリール基が置換したものである場合、その置換基としては、p−メチル基、p−メトキシ基等が含まれる。アリールスルホニル基を有する化合物の具体例を挙げると、p−トルエンスルホニルクロリド、p−メトキシベンゼンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド等が含まれる。p−トルエンスルホニルクロリドを用いると、R4により表される基がp−トルエンスルホニル基(トシル基)である化合物6が得られる。p−メトキシベンゼンスルホニルクロリドを用いると、R4により表される基がp−メトキシベンゼンスルホニル基である化合物6が得られる。
これらのアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を有する化合物のうち、トシル基を有するものが反応の容易性の観点から好ましい。
このようにして得られた一般式(A)のピラノシド(化合物6)から、工程Fで示されるように、化合物6のスルホニルオキシ基(−OR4)をカルボニルチオ基(−SC(=O)R5)に置換することにより、一般式(B)のピラノシド(化合物7)を製造することができる。
すなわち、工程Fにおいて、有機溶媒中の一般式(A)のピラノシドに、アルキル又はアリールスルホニルオキシ基をカルボニルチオ基に置換することのできる化合物(以下、「O−置換基→S−置換基化合物」ともいう。)を反応させることにより一般式(B)のピラノシドを製造することができる。
O−置換基→S−置換基化合物には、チオカルボン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が含まれる。チオカルボン酸には、チオギ酸、並びに低級チオカルボン酸、好ましくは炭素数1〜2の脂肪族が置換したチオカルボン酸(例えば、チオ酢酸、チオプロピオン酸)、および炭素数6の芳香族が置換したチオカルボン酸(例えば、チオ安息香酸)等が含まれる。
これらのチオカルボン酸と塩を形成するアルカリ金属には、カリウム、ナトリウム等が含まれ、アルカリ土類金属には、マグネシウム、カルシウム等が含まれる。
上記O−置換基→S−置換基化合物のうち、チオ酢酸の塩は、反応の安定性の点で、および一般式(B)の化合物をスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体の中間体として用いることを考慮すると、スルホピラノシルアシルグリセロール誘導体を製造するための後の工程においてカルボニル基を離脱しやすい点から好ましく用いることができる。
O−置換基→S−置換基化合物の添加量は、用いる化合物により異なるが、通常、一般式(A)の化合物に対して当量〜2倍量に設定することができる。
反応に用いる有機溶媒には、アルコール、好ましくは低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)等が含まれる。
有機溶媒の使用量は、通常、溶解すべき一般式(A)の化合物が溶解し得る量から、その2〜10倍量程度に設定することができる。
上記反応は、通常、室温ないし用いる溶媒の沸点において、通常、1〜24時間撹拌することにより行うことができる。
なお、出発物質である無置換のピラノースがα−アノマーおよびβ−アノマーの混合物である場合、化合物6および化合物7も、α−およびβ−アノマーの混合物となる。これらの混合物は、必要に応じて工程Aの後にベンジリデン誘導体等にし、それらを結晶化させることにより、また工程A〜Fのいずれかの後にクロマトグラフィーに供すること等により分離することができる。
このようにして製造される一般式(B)により表されるピラノシドを、さらに次の4工程(工程G〜J)の反応に供する方法を用いることにより、塩の形態にある本発明の一般式(1)により表される化合物を製造することができる。
Figure 0004866539
上記工程G〜Jにおいて、まず、工程Gにより、化合物7(一般式(B)により表される化合物)のアリル基をジオール化し、化合物8を得る。
次いで、工程Hにおいて、化合物8のジオールの少なくとも一方をエステル化し、化合物9を得る。化合物9において、R11は水素原子又はアシル基を表す。R12は、アシル基を表す。
次いで、工程Iにおいて、化合物9のカルボニルチオ基をスルホン酸塩化し、化合物10を得る。
最後に、工程Jにおいて、化合物10のC2〜C4炭素に結合する保護基を脱保護し、目的とするスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体の塩(化合物11)が得られる。
上記工程G〜Jを詳細に説明する。
工程Gのジオール化は、t−ブタノールおよび水等の溶媒混液に溶解した化合物7(一般式(B)により表される化合物)の溶液に、四酸化オスミウム等の酸化剤を添加し、トリメチルアミンN−オキシド等の再酸化剤を共存させ、室温で反応させることにより行うことができる。
工程Hのエステル化反応により、所望の脂肪酸がグリセロールとエステル結合したスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体を得ることができる。この反応は、ジクロロメタン等の適当な有機溶媒に溶解した化合物8の溶液に、最終生成物に対応する脂肪酸を添加し、必要に応じて、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDCI)−DMAP系等の適当な触媒の存在下に反応させることにより行うことができる。
工程Hの反応により、化合物9において、R11が水素原子であり、R12が添加した脂肪酸のアシル残基であるモノエステルと、R11およびR12が共に、添加した脂肪酸のアシル残基であるジエステルの混合物が得られる。
添加すべき脂肪酸としては、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の脂肪酸を用いることができる。飽和脂肪酸としては、上述した一般式(1)のR101により表されるアシル基を有する脂肪酸等を用いることができる。脂肪酸は、1種添加することもそれ以上添加することもできる。脂肪酸を2種以上添加した場合、R11が水素原子であり、R12が添加した脂肪酸のいずれか1のアシル残基であるモノエステルと、R11およびR12が共に添加した脂肪酸のいずれか1のアシル残基であるジエステルのとの混合物が得られる。
これらのモノエステルとジエステルの混合物は、必要に応じてクロマトグラフィー等により各々のエステルに単離し、次の工程Iの反応に供することができる。
また、モノエステルについては、所望により、上記工程Hで得られたR12のアシル残基以外のアシル残基を有する脂肪酸を反応させることにより、R11とR12が、異なるアシル残基であるジエステルを得ることもできる。この更なるエステル化の反応条件は、脂肪酸が異なること以外は、工程Hのものと同じ条件に設定することができる。
工程Iのスルホン酸塩化は、氷酢酸および酢酸カリウムを用いて緩衝した有機溶媒中の化合物9の溶液に、OXONE(2KHSO5、KHSO4、K2SO4)、等の酸化剤を添加し、室温で反応させることにより行うことができる。
工程JのC2〜C4炭素に結合する保護基の脱保護は、エタノール等の有機溶媒に溶解した化合物10の溶液を、パラジウム−活性炭(Pd−C)等の触媒の存在下に水素ガス雰囲気下に室温で反応させることにより行うことができる。
一般式(A)において、特に、R1〜R3により表される基が置換シリル基であり、R4により表される基がアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基である化合物は、次の3工程(工程K〜M)を経て製造することもできる。
Figure 0004866539
上記工程K〜Mを詳細に説明する。
工程Kは、上述した工程Aと同じものである。
工程Lにおいて、化合物13のC6炭素に、酸素原子を離脱させるための脱離基(R4)を結合させる。R4はアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。R4は好ましくはアリールスルホニル基である。
工程Lは、上述した工程Eと同じ条件下に行うことができる。
工程Mにおいて、化合物14のC2〜C4炭素に、置換シリル基を導入する。置換シリル基としては、好ましくは3置換シリル基であり、より好ましくはt−ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル等がある。生成物(化合物15)の安定性の点から、t−ブチルジメチルシリルが好ましい。
この反応は、乾燥ジクロロメタン等の有機溶媒に溶解した化合物14の溶液に、t−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート等の水酸基を保護し得る化合物を添加し、2,6−ルチジン等の触媒の存在下に室温で行うことができる。
このようにして工程Mにより得られた一般式(A)により表される化合物から、上述した工程Fを経て、対応の一般式(B)により表される化合物を製造することができる。
また、このようにして工程Fにより得られた一般式(B)により表される化合物から、上述した工程G〜Jを経て、対応のスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体の塩を製造することができる。
さらに、工程Jで得られたスルホン酸塩を、塩酸等の酸による滴定に供することによりスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体を製造することができる。
上述したスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体のうち、スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体のβ−アノマー、すなわち下記一般式(2):
Figure 0004866539
(式中、R101およびR102は一般式(1)と同義である)で表されるスルホキノボシルアシルグリセロールβ誘導体は、新規な化合物である。
このスルホキノボシルアシルグリセロールβ誘導体は、一般式(1)の化合物と同様にして製造することができる。但し、上述した一般式(1)の化合物の製造方法において、出発物質としてD−グルコースのα−およびβ−アノマーの混合物を用い、生成するα体とβ体の混合物からβ体を分離する工程を追加する。分離工程は、一般式(1)の化合物の製造方法の適切な時期に施すことができ、一例を挙げると、工程D又は工程Fの後に行うことができる。分離方法は、それ自体は既知の、例えば、適当な溶媒を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより行うことができる。
また、一般式(2)により表されるスルホキノボシルアシルグリセロールβ誘導体は次のような方法によっても製造することができる。すなわち、糖の全ての炭素に結合する水酸基をアセチル化し、引き続きC1炭素をハロゲン化する。この糖ハロゲン化物とアリルアルコールを反応させることにより、アリルアルコールは選択的にβ結合する。得られたβ体生成物を脱アセチル化することにより、1−O−(2−プロペニル)−β−D−グルコースが得られる。これらの一連の反応は、既知の反応である。一般式(2)により表されるβ誘導体は、上記反応の生成物である1−O−(2−プロペニル)−β−D−グルコースを、上述した工程B〜工程Jに供することにより製造することもできる。
以下、本発明を例を挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物につての生理学的アッセイ
<アッセイ1>
DNA合成酵素α型に対する阻害効果検定を次の方法により行った。
ウシ胸腺から抗体カラムによって単一に精製されたDNA合成酵素α型0.05Uおよび被験化合物(DMSOに溶解した、上記表1に示す化合物SQAG1、SQAG2、SQAG4、SQAG6、SQAG8、SQAG11、SQAG12、SQAG13およびSQAG14)をそれぞれ混合し、更に酵素反応に必要な無機塩類緩衝液、[3H]ラベルされたdTTP、鋳型DNA鎖を含む反応用コンパウンドを加え、37℃で60分間インキュベートした。
酵素反応を止めた後、反応後生成物を専用フィルターに定着させ、液体シンチレーションカウンターにより測定した。酵素合成されたdTTP量を、[3H]放射線量(cpm)として結果を算出した。
得られた結果をIC50として次の表2に示す。
Figure 0004866539
上記表2から明らかなように、試験した化合物はいずれもDNA合成酵素α型に対する有意な阻害活性を有している。
次の2つのアッセイにおいて用いた大腸癌および胃癌細胞は、本発明の制癌剤が効果を奏することのできる癌細胞の一例である。即ち、これらのアッセイは、本発明の制癌剤が効果を奏し得る癌細胞を限定することを意図するものではない。
<アッセイ2>
大腸癌培養細胞に対する制癌テストを次の方法で行った。
大腸癌細胞DLD−1を、RPMI1640培地(10%子ウシ血清含有)で維持、継代した。被験化合物(上記表1に示す化合物SQAG1、SQAG2、SQAG4、SQAG6、SQAG8、SQAG11、SQAG12、SQAG13およびSQAG14)をそれぞれ培地に懸濁、希釈し、3×103個/ウエルの細胞と共に、96穴シャーレで培養した。48時間培養後、MTTアッセイ(Mosmann, T: Journal of immunological method, 65, 55-63(1983))を行い、生存率を比較した。
得られた結果をIC50として次の表3に示す。
Figure 0004866539
上記表3から明らかなように、試験した化合物は、何れも有意な大腸癌細胞に対する制癌活性を有する。
試験した化合物は、各々単独で、本明細書において背景技術の欄で述べた佐原ら(非特許文献3)が開示するスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体の混合物と同レベル又はそれ以上の制癌活性を有するとみられる。
<アッセイ3>
胃癌培養細胞に対する制癌テストを、大腸癌細胞DLD−1の代わりに胃癌細胞NUGC−3を用いた以外はアッセイ1と同じ方法で行った。
得られた結果をIC50として次の表4に示す。
Figure 0004866539
上記表4から明らかなように、試験した化合物は、何れも有意な胃癌細胞に対する制癌活性を有する。
試験した化合物は、各々単独で、本明細書において背景技術の欄で述べた佐原ら(非特許文献3)が開示するスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体混合物と同レベル又はそれ以上の制癌活性を有するとみられる。
合成例
一般式(A)、一般式(B)、一般式(1)および一般式(2)により表される化合物の製造例を次に示す。
次の反応スキーム1は、一般式(A)、一般式(B)および一般式(1)により表される化合物の製造方法の例である。
Figure 0004866539
上記スキーム1では、工程dの後にシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより分離したα−アノマーのみについての合成経路を示しているが、β−アノマーについても同様の反応によりスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体を合成することができる。また、工程hの後に得られるモノエステルとジエステルの混合物は、クロマトグラフィーにより分離し、各々のエステルを工程iに供することができる。
次のスキーム2は、R1〜R3が置換シリル基である一般式(A)および(B)の化合物並びに対応のスルホピラノシルアシルグリセロール誘導体の合成に好適な反応スキームである。このスキーム2の反応において、工程b’およびc’を経ることにより、上記反応スキーム1の工程dの後に行った分離工程を経ることなくα−アノマーのみを選択的に合成することができる。
Figure 0004866539
<例1:一般式(A)により表される化合物の合成(1)>
D−グルコースから2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI)を合成した。
1−1)工程a;1−O−(2−プロペニル)−D−グルコース(II)の合成
Figure 0004866539
D−グルコース(I)100gをアリルアルコール250mLに加え十分に溶解し、その溶液に氷冷下にてトリフルオロメタンスルホン酸0.8mLを徐々に添加した。その後、油浴下80℃で撹拌しながら30時間反応させた。反応が十分進行した段階でトリエチルアミン1mLで中和した後、減圧濃縮した。薄層クロマトグラフィーで約60〜70%の生成率を確認した。
1−2)工程b;1−O−(2−プロペニル)−6−O−トリフェニルメチル−D−グルコース(III)の合成
Figure 0004866539
1−O−(2−プロペニル)−D−グルコース(II)100g(455mmol)を乾燥ピリジン350mLに溶解し、その溶液にトリチルクロリド170g(610mmol)、DMAP1.0g(8.20mmol)を添加し、撹拌しながら室温で36時間反応させた。その後、冷蒸留水800mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(500mL×3回)し、有機層を合わせて希塩酸でpH4まで中和し、飽和食塩水で洗浄(500mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)で精製した。薄層クロマトグラフィーで約80%の生成率を確認した。
1−3)工程c;2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−トリフェニルメチル−D−グルコース(IV)の合成
Figure 0004866539
ミネラルオイル中に拡散されている80%水素化ナトリウム2.0g(83.3mmol)を反応器に取り、乾燥ヘキサン50mLでよく洗浄した後ヘキサンを取り除き、乾燥DMFに溶解した1−O−(2−プロペニル)−6−O−トリフェニルメチル−D−グルコース(III)10.0g(21.6mmol)を氷冷下にて徐々に添加し、15分後室温に戻し、撹拌しながら1時間反応させた。
次に再び氷冷下にてベンジルブロミド12.0g(70.2mmol)を徐々に添加し、15分後室温に戻し、撹拌しながら3時間反応させた。その後、メタノール20mL、冷蒸留水30mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(50mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(100mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製した(収量9.6g(13.8mmol)、収率63.9%)。
1−4)工程d;2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−α−D−グルコース(V)の合成
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−トリフェニルメチル−D−グルコース(IV)9.6g(13.8mmol)をメタノール100mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物3.8g(20.0mmol)を添加し、撹拌しながら16時間反応させた。その後、冷蒸留水100mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(300mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=11:2→4:1→2:1)でα体とβ体を分離精製した(α体の収量2.70g(5.50mmol)、収率39.8%、β体の収量1.52g(3.10mmol)、収率22.5%)。
1−5)工程e;2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI)の合成
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−α−D−グルコース(V)10.0g(20.4mmol)を乾燥ピリジン200mLに溶解し、DMAP134mg(1.10mmol)、p−トルエンスルホニルクロリド9.2g(48.3mmol)を添加し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。その後、冷蒸留水300mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて希塩酸でpH4まで中和し、飽和食塩水で洗浄(300mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した(収量12.0g(18.6mmol)、収率91.2%)。融点77〜79℃、[α]D=+51.8°(CHCl3)。
Figure 0004866539
図1および図2にNMRチャートを示す。
図1は、1H NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。内部標準物質として、テトラメチルシランを用いた。
図2は、13C NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。
<例2:一般式(A)により表される化合物の合成(2)>
D−グルコース(I')から、次の工程a’〜e’により、2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI')を合成した。
2−1)工程a';1−O−(2−プロペニル)−D−グルコース(II')の合成
Figure 0004866539
D−グルコース(I')100gをアリルアルコール250mLに加え十分に溶解し、その溶液に氷冷下にてトリフルオロメタンスルホン酸0.8mLを徐々に添加した。その後、油浴下80℃で撹拌しながら30時間反応させた。反応が十分進行した段階でトリエチルアミン1mLで中和した後、減圧濃縮した。薄層クロマトグラフィーで約60〜70%の生成率を確認した。
2−2)工程b';1−O−(2−プロペニル)−4,6−O−ベンジリデン−α−D−グルコース(III')の合成
Figure 0004866539
1−O−(2−プロペニル)−D−グルコース(II')37.5gをベンズアルデヒド210mLに加え十分に溶解し、その溶液に塩化亜鉛98gを添加し、室温にて4時間反応させた。その後、反応液をヘキサン500mLに加え、さらに希炭酸水素ナトリウム溶液100mLを添加し、0℃で、30分間放置し、結晶化させた。結晶を吸引濾過後、エタノール50mLに溶解し、0℃で、30分間放置し、再結晶化させた(収量21g(68.1mmol)、収率40.0%)。
2−3)工程c';1−O−(2−プロペニル)−α−D−グルコース(IV')の合成
Figure 0004866539
1−O−(2−プロペニル)−4,6−O−ベンジリデン−α−D−グルコース(III')10.7g(34.7mmol)を酢酸:水=8:5の溶液260mLに溶解し、100℃で、1時間反応後、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=6:1)で精製した(収量6.3g(28.6mmol)、収率82.4%)。
2−4)工程d';1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(V')の合成
Figure 0004866539
1−O−(2−プロペニル)−α−D−グルコース(IV')6.3g(28.6mmol)を乾燥ピリジン200mLに溶解し、DMAP195mg、p−トルエンスルホニルクロリド7.0gを添加し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。その後、冷蒸留水20mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて1.0Nおよび0.1N塩酸でpH4まで中和し、飽和食塩水で洗浄(200mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)で精製した(収量8.6g(24.0mmol)、収率83.8%)。
2−5)工程e';2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI')の合成
Figure 0004866539
1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(V')11.2g(29.9mmol)を乾燥ジクロロメタン25mLに溶解し、t−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート23.8g、2,6−ルチジン14.4gを添加し、窒素気流下で撹拌しながら16時間反応させた。その後、ジクロロメタン150mLを加えて反応を停止し、飽和食塩水で洗浄(100mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、無色透明の油状物質を得た(収量19.6g(27.4mmol)、収率91.6%)。[α]D=+39.0°(CHCl3)。
Figure 0004866539
図3および図4にNMRチャートを示す。
図3は、1H NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。
図4は、13C NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。
<例3:一般式(B)により表される化合物の合成(1)>
上記例1で得られた2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI)から、工程fにより2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII)を合成した。
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI)11.4g(18.6mmol)を乾燥エタノール250mLに溶解し、チオ酢酸カリウム5.6g(49.0mmol)を添加し、還流条件下で撹拌しながら3時間反応させた。その後、冷蒸留水300mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(300mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製した(収量9.00g(16.4mmol)、収率88.2%)。融点:61〜62.5℃、[α]D=+51.8°(CHCl3)。
Figure 0004866539
図5および図6にNMRチャートを示す。
図5は、1H NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。
図6は、13C NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。
<例4:一般式(B)により表される化合物の合成(2)>
上記例2で得られた2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI')から、工程f'により、2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII')を合成した。
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコース(VI')7.9g(11.0mmol)を乾燥エタノール20mLに溶解し、チオ酢酸カリウム1.8gを添加し、還流条件下で撹拌しながら3時間反応させた。その後、冷蒸留水100mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(200mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、無色透明の油状物質として得た(収量5.6g(9.02mmol)、収率82.0%)、[α]D=+60.9°(CHCl3)。
Figure 0004866539
図7および図8にNMRのチャートを示す。
図7は、1H NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。
図8は、13C NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。
<例5:スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体の合成(1)>
上記例3で得られた2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII)から、工程g〜jによりスルホキノボシルアシルグリセロール誘導体を合成した。
5−1)工程g;3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−グリセロール(VIII)の合成
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII)8.30g(15.1mmol)をt−ブタノール:H2O=4:1溶液に溶解し、トリメチルアミンN−オキシド二水和物2.5g(22.5mmol)、四酸化オスミウム−t−ブタノール溶液(0.04M)20mLを添加し、撹拌しながら室温で30時間反応させた。その後、活性炭15gを加え、撹拌しながら室温で1.5時間放置し、四酸化オスミウムを吸着させた後、吸引濾過した。次に冷蒸留水250mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(300mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製した(収量5.00g(8.59mmol)、収率56.9%)。
5−2)工程h;3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−パルミトイルグリセロール(IX-1)および3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール(IX-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、IX-1: R11=R12=パルミテート; IX-2: R11=H,R12=パルミテート。
3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−グリセロール(VIII)20.3mg(34.3μmol)をジクロロメタン5mLに溶解し、EDCI19.4mg(101μmol)、DMAP5.70mg(46.7μmol)、パルミチン酸14.1mg(54.9μmol)を添加し、撹拌しながら室温にて16時間反応させた。その後、ジクロロメタン20mLを加え反応を停止し、飽和食塩水で洗浄(20mL×2回)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1→3:1)でジエステルおよびモノエステルを分離精製した(収量ジエステル14.7mg(13.9μmol);モノエステル9.10mg(11.1μmol)、収率(双方合わせて)72.9%)。
5−3−1)工程i−1;3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(X-1)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=R12=パルミテート。
3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−パルミトイルグリセロール(IX-1)133mg(125μmol)を氷酢酸7mLに溶解し、酢酸カリウム814mg、OXONE228mgを添加し、撹拌しながら室温にて16時間反応させた。その後、冷蒸留水20mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(20mL×5回)し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和(70mL×5回)後、飽和食塩水で洗浄(60mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製した(収量57.9mg(13.9μmol)、収率43.4%)。
5−3−2)工程i−2;3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(X-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=H,R12=パルミテート。
3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール(IX-2)52.1mg(63.5μmol)を氷酢酸2mLに溶解し、酢酸カリウム102mg、OXONE116mgを添加し、撹拌しながら室温にて16時間反応させた。その後、冷蒸留水15mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(20mL×5回)し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和(70mL×5回)後、飽和食塩水で洗浄(60mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製した(収量35.1mg(42.4μmol)、収率66.8%)。
5−4−1)工程j−1;3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(XI-1)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=R12=パルミテート。
3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(X-1)359mg(330μmol)をエタノール50mLに溶解し、Pd−C1.30gを添加し、フラスコ内をH2で置換し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。その後、吸引濾過し、減圧濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1→ジクロロメタン:メタノール:水=65:25:4)で精製した(収量129mg(168μmol)、収率50.9%)。
5−4−2)工程j−2;3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(XI-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=H,R12=パルミテート。
3−O−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩(X-2)202mg(238μmol)をエタノール25mLに溶解し、Pd−C1.00gを添加し、フラスコ内をH2で置換し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。その後、吸引濾過し、減圧濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1→ジクロロメタン:メタノール:水=65:25:4)で精製した(収量57.2mg(168μmol)、収率43.3%)。
<例6:スルホキノボシルアシルグリセロール誘導体の合成(2)>
上記例4で得られた2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII')から、工程g'〜j'によりスルホキシノボシルアシルグリセロール誘導体を合成した。
6−1)工程g';3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル]−グリセロール(VIII')の合成
Figure 0004866539
2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−チオアセチル−α−D−グルコース(VII')5.6g(9.02mmol)をt−ブタノール:水=4:1溶液に溶解し、トリメチルアミンN−オキシド二水和物1.5g、四酸化オスミウムt−ブタノール溶液(0.04M)15mLを添加し、撹拌しながら室温で22時間反応させた。その後活性炭15gを加え、撹拌しながら室温で1.5時間放置し、四酸化オスミウムを吸着させた後、吸引濾過した。次に冷蒸留水200mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(200mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(300mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1→2:1)で精製した(収量5.2g(7.94mmol)、収率88.0%)。
6−2)工程h';3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル]−1,2−ジ−O−オレオイル−グリセロール(IX'-1)および3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル」−1−O−オレオイル−グリセロール(IX'-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、IX'-1:R11=R12=オレオエート; IX'-2:R11=H,R12=オレオエート。
3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル]−グリセロール(VIII')1.37g(2.09mmol)を乾燥ジクロロメタン20mLに溶解し、EDCI1.46g、DMAP538mg、オレイン酸660mgを添加し、撹拌しながら室温にて16時間反応させた。その後ジクロロメタン200mLを加え反応を停止し、飽和食塩水で洗浄(100mL×2回)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1→10:1→7:1)で精製した(収量ジエステル772mg(652μmol);モノエステル895mg(974μmol)、収率(双方合わせて)78.0%)。
6−3−1)工程i'−1;3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル]−1,2−ジ−O−オレオイル−グリセロールナトリウム塩(X'-1)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=R12=オレオエート。
3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル]−1,2−ジ−O−オレオイル−グリセロール(IX'-1)566mg(478μmol)を氷酢酸28mLに溶解し、酢酸カリウム3.2g、OXONE980mgを添加し、撹拌しながら室温にて6時間反応させた。その後冷蒸留水15mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(20mL×5回)し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和(70mL×5回)後、飽和食塩水で洗浄(60mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1→10:1)で精製した(収量152mg(126μmol)、収率26.4%)。
6−3−2)工程i'−2;3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル]−1−O−オレオイル−グリセロール・ナトリウム塩(X'-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=H,R12=オレオエート。
3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−チオアセチル−α−D−グルコピラノシル]−1−O−オレオイル−グリセロール(IX'-2)21.4mg(23.2μmol)を氷酢酸3.5mLに溶解し、酢酸カリウム500mg、OXONE35.4mgを添加し、撹拌しながら室温にて6時間反応させた。その後冷蒸留水15mLを加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出(20mL×5回)し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和(70mL×5回)後、飽和食塩水で洗浄(60mL×2回)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1→20:1)で精製した(収量7.70mg(8.13μmol)、収率34.9%)。
6−4−1)工程j'−1;3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1,2−ジ−O−オレオイル−グリセロール・ナトリウム塩(XI'-1)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=R12=オレオエート。
3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル]−1,2−ジ−O−オレオイル−グリセロールナトリウム塩(X'-1)214mg(176μmol)を酢酸:テトラヒドロフラン:トリフルオロ酢酸:水=3:1:0.4:1の溶液5mLに溶解し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。酢酸エチルで抽出(10mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(20mL×2回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1→ジクロロメタン:メタノール:水=65:25:4)で精製した(収量84.1mg(99.1μmol)、収率56.3%)。
6−4−2)工程j'−2;3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−オレオイル−グリセロール・ナトリウム塩(XI'-2)の合成
Figure 0004866539
ここで、R11=H,R12=オレオエート。
3−O−[2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−6−スルホ−α−D−グルコピラノシル]−1−O−オレオイル−グリセロール・ナトリウム塩(X'-2)358mg(378μmol)を酢酸:テトラヒドロフラン:トリフルオロ酢酸:水=3:1:0.4:1の溶液7mLに溶解し、撹拌しながら室温で16時間反応させた。酢酸エチルで抽出(10mL×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄(20mL×2回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1→ジクロロメタン:メタノール:水=65:25:4)で精製した(収量138mg(237μmol)、収率62.7%)。
<例7:一般式(2)により表される化合物の合成>
3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−β−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩を次のようにして合成した。
即ち、上記例1の工程dの後に分離した2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−β−D−グルコースを用いて、上記例3の工程fおよび例5の工程g、h、i−2およびj−2と同様の方法により、表題の化合物を白色結晶として得た(収量1.52g(3.10mmol)、収率22.5%)。
融点80〜82℃、[α]D=+0.4°(CHCl3)。
図9および図10にNMRチャートを示す。
図9は、1H NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。内部標準物質として、テトラメチルシランを用いた。
図10は、13C NMR(300MHz、CDCl3)のチャートである。
例1で製造された2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコースの1H NMRチャート図。 例1で製造された2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコースの13C NMRチャート図。 例2で製造された2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコースの1H NMRチャート図。 例2で製造された2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−1−O−(2−プロペニル)−6−O−(4−トリルスルホニル)−α−D−グルコースの13C NMRチャート図。 例3で製造された2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−チオアセチル−α−D−グルコースの1H NMRチャート図。 例3で製造された2,3,4−トリ−O−ベンジル−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−チオアセチル−α−D−グルコースの13C NMRチャート図。 例4で製造された2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−(チオアセチル)−α−D−グルコースの1H NMRチャート図。 例4で製造された2,3,4−トリ−O−(t−ブチルジメチルシリル)−6−デオキシ−1−O−(2−プロペニル)−6−(チオアセチル)−α−D−グルコースの13C NMRチャート図。 例7で製造された3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−β−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩の1H NMRチャート図。 例7で製造された3−O−(6−デオキシ−6−スルホ−β−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール・ナトリウム塩の13C NMRチャート図

Claims (1)

  1. 次の一般式(1):
    Figure 0004866539
    (式中、R101は、CH 3 (CH 2 n CO−(nは、12〜24の整数)を表し、R102は、水素原子を表す。)により表される化合物およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする大腸癌または胃癌のための制癌剤。
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