以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の内燃機関およびその制御装置を模式的に示す概略構成図である。まず、構成について説明する。
エンジン11は、複数の気筒12を有しており、各気筒12は、ピストン13を往復動可能に収容している。ピストン13は、コネクティングロッド14を介して図示していないクランクシャフトと接続されており、ピストン13の往復動がコネクティングロッド14により回転運動に変換され、出力軸としてのクランクシャフトに伝達されるようになっている。
各気筒12に形成された燃焼室16は、吸気通路20及び排気通路26と連通されている。吸気通路20は、燃焼室16に吸入される吸入空気量を検出するエアフローメータ22が配置される。エアフローメータ22の上流側には、エアクリーナ21が連通される。また、エアフローメータ22は、吸入空気量に比例したアナログ電圧の出力信号を発生し、発生した出力信号は、エンジンECU80のA/D変換器81に出力される。
吸気通路20は、スロットルバルブ25、サージタンク29及び吸気マニホルド19を有しており、エンジン11の外部の空気は、スロットルバルブ25、サージタンク29及び吸気マニホルド19を介して燃焼室16に供給されるようになっている。
スロットルバルブ25は、吸気通路20に回動可能に設置されており、アクセルペダル23の踏込み量に応じて回動するようになっている。スロットルバルブ25の回動状態に応じて、吸入空気量が調整される。
排気通路26は、排気マニホルド24と、排気ガス中の有害成分を浄化するための三元触媒により構成される排気浄化触媒76と、を有しており、燃焼室16から排出された排気は、排気マニホルド24、排気浄化触媒76を介してエンジン11の外部に排出される。なお、本実施の形態に係る排気通路は、本発明に係る排気経路を構成する。
本実施の形態においては、排気浄化触媒76を三元触媒としたが、他の排気浄化触媒が適用されてもよい。三元触媒は、排気ガスの空燃比が理論空燃比の近傍内にあるときに排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NOx)を高い浄化率にて同時に浄化することができる。
排気浄化触媒76の上流側の排気通路26には、空燃比センサ77が設置されている。この空燃比センサ77は、検出対象となる排気中の酸素濃度及び燃料の未燃成分の濃度に応じた電圧Vafを検出し、後述するエンジンECU80に電圧Vafを出力するようになっている。
また、排気浄化触媒76の下流側の排気通路26には、O2センサ78が設置されている。このO2センサ78は、検出対象となる排気中の酸素濃度に応じた電圧Vo2を検出し、後述するエンジンECU80に電圧Vo2を出力するようになっている。
ここで、本実施の形態に係る空燃比センサ77は、本発明に係る上流側排気ガスセンサを構成し、本実施の形態に係るO2センサ78は、本発明に係る下流側排気ガスセンサを構成する。
さらに、エンジン11は、吸気通路20と燃焼室16とが連通される開口部を開閉するための吸気バルブ27と、排気通路26と燃焼室16とが連通される開口部を開閉するための排気バルブ28と、を備えている。
エンジン11には、点火ディストリビュータ41が取り付けられる。点火ディストリビュータ41には、2つのクランク角センサ42および43が取り付けられる。これらクランク角センサ42および43から出力されるパルス信号に基づいてエンジン回転数が算出される。例えば、クランク角センサ42は、クランク角に換算して720°毎に基準位置検出用パルス信号を発生し、クランク角センサ43は、クランク角に換算して30°毎に基準位置検出用パルス信号を発生するようになっている。
エンジン11は、さらに電磁式の燃料噴射弁34を有しており、燃料噴射弁34は、各気筒12にそれぞれ取付けられている。燃料噴射弁34は、燃料供給通路31を介して燃料タンク33に接続されている。燃料供給通路31には、噴射量可変の燃料ポンプ32が配置される。燃料噴射弁34は、後述するエンジンECU80により通電されると開弁し、燃焼室16に高圧燃料を噴射するようになっている。噴射された高圧燃料は、燃焼室16内において吸入された空気と混ざり合った混合気を構成する。
燃焼室16内の混合気は、点火プラグ35からの放電によって着火されたときに燃焼する。この燃焼によりピストン13が往復動させられ、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15が回転させられ、結果としてエンジン11の駆動力が得られるようになっている。
エンジン11のシリンダブロック周囲には、冷却水を収容するウォータジャケット17があって、ウォータジャケット17には、冷却水の温度を検出するための水温センサ18が設けられている。
エンジンECU80は、例えばマイクロコンピュータとして構成され、A/D変換器81、入出力インターフェース82、CPU83の他に、ROM84、RAM85等を有している。
入出力インターフェース82には、クランク角センサ42および43から出力されるパルス信号が入力され、例えば、クランク角センサ43から出力されるパルス信号は、CPU83の割り込みに使用される。
エアフローメータ22は、吸入空気量に比例したアナログ電圧の電気信号をA/D変換器81に出力し、A/D変換器81には、エアフローメータ22からの電気信号が入力される。また、水温センサ18は、冷却水の温度に応じたアナログ電圧の電気信号をA/D変換器81に出力し、A/D変換器81には、水温センサ18からの電気信号が入力される。
空燃比センサ77、O2センサ78は、上述したようにそれぞれ検出した電圧の電気信号をA/D変換器81に出力し、A/D変換器81には、空燃比センサ77、O2センサ78からの電気信号がそれぞれ入力される。
また、エンジンECU80のCPU83は、A/D変換器81や入出力インターフェース82から入力した信号に基づいて、排気浄化触媒76における排気浄化性能が高まるように、エンジン11の空燃比が理論空燃比に近づくようスロットルバルブ25、燃料噴射弁34、および点火プラグ35を制御するようになっている。
また、エンジンECU80は、空燃比センサ77から出力された電圧信号Vaf、O2センサ78から出力された電圧信号Vo2、その他の電圧信号を、例えば数ミリ秒のような所定時間毎に、または、クランク角センサ43から割り込みに応じてRAM85の所定領域に保存するようになっている。また、RAM85の所定領域に格納するこれらのデータは、最新ものだけではなく、過去のデータも保存されている。
エンジンECU80は、RAM85に保存されている空燃比センサ77の検出データに基づいて、燃料噴射弁34が噴射する燃料の噴射量を補正するメインフィードバック制御を実行するとともに、RAM85に保存されているO2センサ78の検出データに基づいて、空燃比センサ77からエンジンECU80に出力された検出データを補正することにより、メインフィードバック制御を補正するサブフィードバック制御を実行するようになっている。本実施の形態においては、サブフィードバック制御をPID制御により実現する例について説明する。
なお、エンジンECU80は、後述するように、本発明に係る排気系異常検出装置、補正量算出手段、空燃比制御手段、異常検出手段、触媒異常確認手段、上流側排気ガスセンサ異常確認手段、および下流側排気ガスセンサ異常確認手段を構成する。
以下、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するエンジンECUの特徴的な構成について、図1を参照して説明する。
エンジン11の制御装置を構成するエンジンECU80は、O2センサ78が出力した電圧値と基準出力値との偏差(P)、偏差を積分した積分値(I)、偏差の変化量を表す微分値(D)に基づいて、空燃比センサ77が出力した電圧値の補正量を算出するようになっている。したがって、エンジンECU80は、補正量算出手段を構成している。なお、基準出力値は、理論空燃比に基づいた電圧値である。
また、エンジンECU80は、O2センサ78から得られたPIDの情報で空燃比センサ77に係る補正量を算出し、算出した補正量で空燃比センサ77の電圧値を補正し、補正した電圧値に基づいて燃料の噴射量を調整することで、エンジン11の空燃比を制御するようになっている。したがって、エンジンECU80は、空燃比制御手段を構成している。
エンジンECU80は、空燃比センサ77およびO2センサ78から出力された最新の検出データ(P、I、D)および過去の検出データ(P、I、D)から、排気浄化触媒76、空燃比センサ77、O2センサ78の排気系の異常を検出するようになっている。したがって、エンジンECU80は、異常検出手段を構成しており、さらに、空燃比センサ77、O2センサ78、および排気浄化触媒76の異常を精度良く検出するため、上流側排気ガスセンサ異常確認手段、下流側排気ガスセンサ異常確認手段、および触媒異常確認手段を構成している。
次に、動作について説明する。以下、本実施形態の内燃機関の排気系異常検出装置による空燃比制御方法について説明する。図2は、本実施形態の空燃比制御方法を示すフローチャートである。
なお、以下の処理は、エンジンECU80を構成するCPUによって所定の時間間隔で実行されるとともに、CPUによって処理可能なプログラムを実現する。ここで、所定の時間間隔とは、例えば数ミリ秒毎の間隔を意味する。
エンジンECU80は、まず、フィードバック制御の実行条件が成立しているか否かを判断する(ステップS11)。具体的には、エンジンECU80は、エンジン負荷の変化率が所定値以内であること、エンジン始動後にO2センサ78の出力値が少なくともリーン出力からリッチ出力、またはその逆の変化をしたこと、エンジン始動後に暖機増量、および触媒過熱防止のための燃料増量が実行中でなく、これらの増量が終了してから所定時間が経過したこと等であり、これらの条件が全部成立したときにのみ、フィードバック制御の実行条件が成立していると判断する。
エンジンECU80は、フィードバック制御の実行条件が成立していると判断した場合には(ステップS11でYES)、ステップS12に移行する。
ステップS12において、エンジンECU80は、O2センサ78の電圧信号Vo2を取得し、O2センサ78の基準電圧Vrefとの差である出力電圧偏差ΔVo2(以下、補正量Pともいう)を算出する。
次に、エンジンECU80は、PID制御における積分項に対応する出力電圧偏差ΔVo2の積分値SUM(以下、補正量Iともいう)と、なまし積分値ASUMと、を算出する(ステップS13)。具体的には、エンジンECU80は、前回算出されたRAMに記憶されている積分値SUMに、今回算出された出力電圧偏差ΔVo2を加算して新たな積分値SUMを算出する。また、RAMに記憶されている積分値SUMを、算出された積分値SUMによって更新する。
また、エンジンECU80は、積分値SUMの加重平均値を算出し、なまし積分値ASUMとしてRAMに記憶する。具体的には、エンジンECU80は、なまし積分値ASUMを式(1)のように算出する。
ASUM ← ((n−1)・ASUM + SUM)/n (1)
ここで、nは1以上の値である。また、右辺におけるSUM及びASUMは、それぞれ前回算出された積分値及びなまし積分値である。
次に、エンジンECU80は、PID制御における微分項に対応する出力電圧偏差ΔVo2の変化量dΔVo2(以下、補正量Dともいう)を算出する(ステップS14)。具体的には、エンジンECU80は、前回算出された出力電圧偏差ΔVo2と、今回算出された出力電圧偏差ΔVo2との差を変化量dΔVo2として算出する。
次に、エンジンECU80は、ステップS12において算出した出力電圧偏差ΔVo2(補正量P)と、ステップS13において算出した積分値SUM(補正量I)と、ステップS14において算出した変化量dΔVo2(補正量D)に基づいて、排気浄化触媒76、空燃比センサ77、O2センサ78の排気系のうち何れかが異常であることを検出する(ステップS15)。ステップS15の詳細な処理については後述する。
エンジンECU80は、排気系のうち何れかが異常であると判断した場合には(ステップS16でYES)、ステップS21に移行する。一方、ステップS16でNOの場合、ステップS17に移行する。
次に、ステップS17で、エンジンECU80は、空燃比センサ77の出力電圧Vafを補正するための補正量dVafを算出する。具体的には、エンジンECU80は、ステップS12において算出した出力電圧偏差ΔVo2と、ステップS13において算出した積分値SUMと、ステップS14において算出した変化量dΔVo2と、に基づいて、補正量dVafを式(2)のように算出する。
dVaf ← KP・ΔVo2 + KI・SUM + KD・dΔVo2 (2)
ここで、KP、KI、KDは、それぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインであり、実験などで予め測定して得られた値であり、ROMなどに記憶されている。
一方、エンジンECU80は、サブフィードバック制御の実行条件が成立していないと判断した場合には(ステップS11でNO)、RAMに記憶されている前回のなまし積分値ASUMを読込み、補正量dVafを式(3)のように算出する(ステップS21)。
dVaf ← KI・ASUM (3)
なお、ここでいう前回のなまし積分値ASUMとは、ステップS11においてサブフィードバック制御の実行条件が最後に成立していたときに算出されたなまし積分値ASUMを意味する。
また、空燃比制御処理の上記のステップS12ないしステップS21においては、出力電圧偏差ΔVo2、積分値SUM、なまし積分値ASUM及び補正量dVafが算出される度に、エンジンECU80は、それぞれのデータをRAMに記憶しており、一定時間分のデータを蓄積している。
エンジンECU80は、空燃比センサ77の出力電圧Vafを、ステップS17で算出されたdVafで式(4)のように補正して制御用電圧値Vafcを算出する(ステップS18)。
Vafc ← Vaf + dVaf (4)
次に、エンジンECU80は、エアフローメータ22から出力された信号(吸気量)及びステップS18で算出した制御用電圧値Vafcに基づいて、燃料噴射量Fijを算出する(ステップS19)。具体的には、エンジンECU80は、制御用電圧値Vafc及び吸気量と燃料噴射量Fijとを対応付けたマップをROMに予め記憶しており、算出されたVafc及び吸気量とこのマップとに基づいて燃料噴射量Fijを取得する。
次に、エンジンECU80は、燃料噴射量Fijの燃料が燃焼室16に噴射されるよう燃料噴射弁34を制御する(ステップS20)。
以下に、本実施の形態に係る排気系の異常検出処理となるステップS15について図面を用いて詳細に説明する。エンジンECU80は、所定の時間間隔で実行した上述したステップS12、ステップS13、ステップS14で得られた所定期間に相当する個数分の比例値、積分値、微分値(P、I、D)、O2センサ78の出力値、および空燃比センサ77の出力値のデータをRAMに保存している。
(本実施の形態に係る排気浄化触媒の異常検出処理)
ここで、排気浄化触媒の劣化の特性について図3を用いて説明する。図3は、O2センサ78の電圧信号、および、ステップS12、ステップS13、ステップS14においてそれぞれ算出した比例値、積分値、微分値の補正量(P、I、D)の正常時の特性を破線で示し、排気浄化触媒の劣化時の特性を実線で示したものである。また、図3では、理想的な値を基準値とし、この基準値を超えた分をリッチ(正の値)、超えない分をリーン(負の値)として縦軸に示し、経過時間を横軸に示している。
図3(A)は、O2センサ78の電圧信号の特性を示しており、正常時の特性は、混合気の燃焼に応じて略周期的にリッチ、リーンを繰り返している。排気浄化触媒の劣化時のO2センサ78の特性は、増加および減少を頻繁に繰り返して不規則になる。
図3(B)は、補正量Pの特性を示している。補正量Pの特性は、O2センサ78の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなり、正常時の特性は、正常時のO2センサ78の電圧信号と基準値で略対称をなすように略周期的にリッチ、リーンを繰り返している。排気浄化触媒の劣化時の補正量Pの特性は、排気浄化触媒の劣化時のO2センサ78の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなり、基準値からリッチ、リーンに大きく変動せず増加および減少を頻繁に繰り返す。
図3(C)は、補正量Iの特性を示している。正常時の特性は、略周期的にリッチ、リーンを繰り返し、補正量Pが増加傾向から減少に急峻に変化する時点の補正量Iが最大値となり、補正量Pが減少傾向から増加に急峻に変化する時点の補正量Iが最小となっている。また、排気浄化触媒の劣化時については、補正量Pの特性が基準値からリッチ、リーンに大きく変動せず、長い期間リッチ、リーン何れかに保つことは無いため、補正量Iの特性も基準値からリッチ、リーンに大きく変動せず増加および減少を頻繁に繰り返す。
図3(D)は、補正量Dの特性を示している。正常時の特性は、略周期的にリッチ、リーンを繰り返し、補正量Pが減少傾向から増加に急峻に変化するときに補正量Dが増加するが、急峻に変化する時点が突出した値となっており、補正量Pが増加傾向から減少に急峻に変化するときに補正量Dが減少するが、急峻に変化する時点が突出した値となっている。また、排気浄化触媒の劣化時については、補正量Pの特性が基準値からリッチ、リーンに急峻に変動しないため、補正量Dの特性も基準値からリッチ、リーンに大きく変動していない。
図4は、本実施の形態に係る排気系のうち排気浄化触媒の劣化検出処理について説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、図3に示した排気浄化触媒の劣化の特性に基づいた処理である。
まず、排気浄化触媒が劣化している状態では補正量Pが増加および減少を頻繁に繰り返すため、増加から減少にまたは減少から増加に反転する回数である反転回数に着目し、エンジンECU80は、現時点から所定期間分のデータをRAMから取得し、所定期間分の補正量Pの反転回数が所定値以上であると判定した場合には(ステップS31でYES)、ステップS32に移行する。一方、ステップS31でNOの場合、ステップS35に移行する。
排気浄化触媒が劣化している状態では補正量Iが増加および減少を頻繁に繰り返すため、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Iの反転回数が所定値以上であると判定した場合には(ステップS32でYES)、ステップS33に移行する。一方、ステップS32でNOの場合、ステップS35に移行する。
排気浄化触媒が劣化している状態では、補正量Dが正常時のように突出した値にならないため、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Dの最大値(または最小値の絶対値)が所定値よりも小さいと判定した場合には(ステップS33でYES)、ステップS34に移行し、ステップS33でNOの場合、ステップS35に移行する。
次に、エンジンECU80は、排気浄化触媒の最大酸素吸着量Cmaxに所定値を加算して補正する(ステップS34)。一方、ステップS35では、エンジンECU80は、排気浄化触媒の最大酸素吸着量Cmaxに所定値を減算して補正する。
なお、最大酸素吸着量Cmaxは、別の処理で算出されており、RAMなどに記憶されるものである。また、三元触媒の性能を最大に発揮するために、理論空燃比で混合気が燃焼されるようにするが、三元触媒は、排気中の酸素が過剰になると排気中の酸素を吸着したり、排気中の酸素が不足すると酸素を排気したりする酸素ストレージ能力を有している。エンジンECU80は、酸素ストレージ能力を利用して最大酸素吸着量Cmaxを算出するため、排気中の酸素を不足させることで、三元触媒に吸着された酸素を全て放出させた時点から排気中の酸素を過剰にさせてO2センサ78が検知するまでの時間を計測し、計測した時間から最大酸素吸着量Cmaxを推定する。
なお、最大酸素吸着量Cmaxがばらつくこともあるため、ステップS34およびステップS35では、ステップS36で誤検出されないように最大酸素吸着量Cmaxが補正される。最大酸素吸着量Cmaxが補正されるときの所定値は、排気浄化触媒の性能などに応じて決められる。
次に、エンジンECU80は、補正後の最大酸素吸着量Cmaxが触媒異常検出閾値より大きいと判定した場合には(ステップS36でYES)、排気浄化触媒が正常であると判定し(ステップS37)、ステップS36でNOの場合、排気浄化触媒が異常であると判定する(ステップS38)。
また、エンジンECU80は、ステップS34〜S36を省略して、ステップS33でYESの場合、排気浄化触媒が劣化していると判定し、ステップS31〜S33でNOの場合、排気浄化触媒が正常であると判定するようにしてもよい。また、エンジンECU80は、ステップS31〜S33の判定処理に替えて、O2センサ78の出力がリッチからリーン(リーンからリッチ)に切り替わる切替時点での補正量P、I、Dの合計値と、この時点での補正量Dとの比が所定値より小さい場合に排気浄化触媒が劣化していると判定するようにしてもよい。ステップS31およびステップS32では、反転回数が所定値以上か否かが判定されているが、ステップS31では、補正量Pと横軸からなる面積が小さくなるため、この面積が小さいときにステップS32に処理が移行され、ステップS32では、補正量Iと横軸からなる面積が小さくなるため、この面積が小さいときにステップS33に処理が移行されるようにしてもよい。
以上のように、排気浄化触媒の異常検出処理では、補正量P、I、Dの特性に基づいて排気浄化触媒が異常であることを検出するため、補正量P、I、D全てを使用していない従来の異常検出処理と比較すれば、高精度に排気浄化触媒の異常検出を行うことができる。
(本実施の形態に係る上流排気センサの応答性低下検出処理)
ここで、空燃比センサ77(上流排気センサ)の応答性低下の特性について図5を用いて説明する。図5は、空燃比センサ77の電圧信号、空燃比センサ77の電圧信号の補正量、空燃比センサ77の検知位置での実際の空燃比に対応する電圧信号、O2センサ78の電圧信号、および、ステップS12、ステップS13、ステップS14においてそれぞれ算出した比例値、積分値、微分値の補正量(P、I、D)の空燃比センサ77の正常時の特性を破線で示し、空燃比センサ77の応答性低下時の特性を実線で示したものである。また、図5では、理想的な値を基準値とし、この基準値を超えた分をリッチ(正の値)、超えない分をリーン(負の値)として縦軸に示し、経過時間を横軸に示している。
図5(A)は、空燃比センサ77の電圧信号の特性を示している。空燃比センサ77の応答性低下時の特性は、正常時の特性と比較すれば出力電圧の変化が小さくなる。図5(B)は、空燃比センサ77の出力電圧を補正するための補正量の特性を示している。空燃比センサ77の補正量の特性は、空燃比センサ77の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなる。図5(C)は、空燃比センサ77の検知位置での実際の空燃比の特性を示している。応答性低下時には、空燃比センサ77の出力電圧の変化が補正されるため、実際の空燃比の変化が大きく変動する。
図5(D)は、O2センサ78の電圧信号の特性を示している。空燃比センサ77の補正量の特性の変化が小さく、すなわち空燃比センサ77の補正不足であるため、空燃比センサ77の応答性低下時のO2センサ78の電圧信号の特性は、正常時と比較すればリッチリーン共に過剰に変動している。図5(E)は、補正量Pの特性を示している。応答性低下時の補正量Pの特性は、O2センサ78の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなるため、図5(D)と同様に、正常時と比較すれば増加および減少の周期は同じだが過剰に変動している。図5(F)は、補正量Iの特性を示している。補正量Iの特性は、図5(G)は、補正量Dの特性を示しており、それぞれ正常時と比較すれば過剰に変動している。
図6は、本実施の形態に係る排気系のうち上流排気センサの応答性低下検出処理について説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、図5に示した空燃比センサ77(上流排気センサ)の応答性低下の特性に基づいた処理である。
まず、空燃比センサ77の応答性が低下している状態では、補正量Pの増加および減少が過剰になるため、エンジンECU80は、現時点から所定期間分のデータをRAMから取得し、所定期間分の補正量Pの最大値(または最小値の絶対値)が所定値よりも大きいか否か判定する(ステップS41)。ステップS41でYESの場合、ステップS42に移行し、ステップS41でNOの場合、ステップS45に移行する。所定値は、正常時の最大の補正量Pと同等か、またはより大きい値となるのが好ましい。
空燃比センサ77の応答性が低下している状態では、補正量Iの増加および減少が過剰になるため、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Iの最大値(または最小値の絶対値)が所定値よりも大きいか否か判定する(ステップS42)。ステップS42でYESの場合、ステップS43に移行し、ステップS42でNOの場合、ステップS45に移行する。所定値は、正常時の最大の補正量Iと同等か、またはより大きい値となるのが好ましい。
空燃比センサ77の応答性が低下している状態では、補正量Pの増加および減少が過剰になるため、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Dの最大値(または最小値の絶対値)が所定値よりも大きいか否か判定する(ステップS43)。ステップS43でYESの場合、ステップS44に移行し、ステップS43でNOの場合、ステップS45に移行する。所定値は、正常時の最大の補正量Dと同等かまたはより大きい値となるのが好ましい。
次に、エンジンECU80は、空燃比センサ77(上流側排気ガスセンサ)の異常を検出するための閾値である上流センサ異常検出閾値に所定値を減算して補正する(ステップS44)。一方、ステップS45では、エンジンECU80は、上流センサ異常検出閾値に所定値を加算して補正する。ここでの上流センサ異常検出閾値は、空燃比センサ77の応答性低下を検出するのに好ましい値に設定されている。
なお、空燃比センサ77の出力値がばらつくこともあるため、ステップS44およびステップS45では、ステップS46で誤検出されないように上流センサ異常検出閾値が補正される。上流センサ異常検出閾値が補正されるときの所定値は、空燃比センサ77の性能などに応じて決められる。
次に、エンジンECU80は、所定期間分の空燃比センサ77の出力値の中で、最もリーンになっている時点から最もリッチになるまでの期間の中間の時点の出力値が補正後の上流センサ異常検出閾値より大きいと判定した場合には(ステップS46でYES)、空燃比センサ77が正常であると判定し(ステップS47)、ステップS46でNOの場合、空燃比センサ77が異常であると判定する(ステップS48)。なお、ステップS46で示した判定処理に限らず、上流排気センサの応答性低下が判定しやすい処理であればよい。
また、エンジンECU80は、ステップS44〜S46を省略して、ステップS43でYESの場合、空燃比センサ77の応答性が低下していると判定し、ステップS41〜S43でNOの場合、空燃比センサ77が正常であると判定するようにしてもよい。また、エンジンECU80は、ステップS41〜S43の判定処理に替えて、空燃比センサ77の補正量と、補正量P、I、Dの最大値との比が、正常時のものより大きい場合に空燃比センサ77の応答性が低下していると判定するようにしてもよい。
以上のように、空燃比センサ77(上流排気センサ)の応答性低下検出処理では、補正量P、I、Dの特性に基づいて空燃比センサ77の応答性が低下していることを検出するため、補正量P、I、D全てを使用していない従来の異常検出処理と比較すれば、高精度に空燃比センサ77の応答性低下検出を行うことができる。
(本実施の形態に係る上流排気センサのストイキズレ検出処理)
ここで、空燃比センサ77(上流排気センサ)の特性が正常時の特性からズレが生ずる現象(ストイキズレ)の特性について図7を用いて説明する。図7は、空燃比センサ77の電圧信号、空燃比センサ77の電圧信号の補正量、空燃比センサ77の検知位置での実際の電圧信号、O2センサ78の電圧信号、および、ステップS12、ステップS13、ステップS14においてそれぞれ算出した比例値、積分値、微分値の補正量(P、I、D)の空燃比センサ77の正常時の特性を破線で示し、ストイキズレ発生時の特性を実線で示したものである。また、図7では、理想的な値を基準値とし、この基準値を超えた分をリッチ(正の値)、超えない分をリーン(負の値)として縦軸に示し、経過時間を横軸に示している。ここでのストイキズレ検出処理では、ストイキズレがリーン側にずれた場合の例を示している。
図7(A)は、空燃比センサ77の電圧信号の特性を示している。空燃比センサ77のストイキズレ発生時の特性は、正常時の特性と比較すればリーン側にずれる。図7(B)は、空燃比センサ77の出力電圧を補正するための補正量の特性を示している。空燃比センサ77の補正量の特性は、空燃比センサ77の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなる。図7(C)は、空燃比センサ77の検知位置での実際の空燃比の特性を示している。ストイキズレ発生時には、空燃比センサ77の出力電圧の変化が補正されるため、実際の空燃比の変化がリッチ側にずれる。
図7(D)は、O2センサ78の電圧信号の特性を示している。ストイキズレ発生時のO2センサ78の電圧信号の特性については、正常時と比較すればリッチ側の出力になる時間が長くなる。図7(E)は、補正量Pの特性を示している。O2センサ78の電圧信号と基準値で略対称をなすようなものとなるため、ストイキズレ発生時の補正量Pの特性については、図7(D)と同様に、正常時と比較すればリーン側の出力になる時間が長くなる。図7(F)は、補正量Iの特性を示している。ストイキズレ発生時の補正量Pの特性は、リーン側の出力になる時間が長いため、リッチ側の出力にならなくなる。図7(G)は、補正量Dの特性を示している。ストイキズレ発生時の補正量Dの特性は、正常時と比較すれば急峻に変化するタイミングがずれている。
図8は、本実施の形態に係る排気系のうち上流排気センサのストイキズレ検出処理について説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、図7に示した空燃比センサ77(上流排気センサ)のストイキズレ発生時の特性に基づいた処理である。
まず、空燃比センサ77のストイキズレ発生している状態では、補正量Iだけがリーン側に大きくずれ込むため、エンジンECU80は、現時点から所定期間分のデータをRAMから取得し、所定期間分の補正量Iの最大値が所定値よりも小さいか否か判定する(ステップS51)。エンジンECU80は、ステップS51でYESの場合、ステップS52に移行し、ステップS51でNOの場合、ステップS55に移行する。所定値は、正常時の補正量Iの最大値程度であることが好ましい。なお、ステップS51では、補正量Iの最大値の判定に加えて補正量Iの最小値が所定値よりも小さいか否か判定してもよい。
また、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Pにおいてリッチになっている期間が正常時と比較して短いと判定した場合には(ステップS52でYES)、ステップS53に移行し、リッチになっている期間が短いものでないと判定した場合には、ステップS55に移行する。エンジンECU80は、所定期間分の補正量Dにおいて最もリッチになった時点から最もリーンになった時点までの期間が正常時と比較して短いと判定した場合には(ステップS53でYES)、ステップS54に移行し、ステップS53でNOの場合、ステップS55に移行する。なお、ステップS52およびステップS53は、省略してもよい。
次に、エンジンECU80は、空燃比センサ77(上流側排気ガスセンサ)の異常を検出するための閾値である上流センサ異常検出閾値に所定値を減算して補正する(ステップS54)。一方、ステップS55では、エンジンECU80は、上流センサ異常検出閾値に所定値を加算して補正する。ここでの上流センサ異常検出閾値は、空燃比センサ77のストイキズレを検出するのに好ましい値に設定されている。
なお、空燃比センサ77の出力値がばらつくこともあるため、ステップS54およびステップS55では、ステップS56で誤検出されないように上流センサ異常検出閾値が補正される。上流センサ異常検出閾値が補正されるときの所定値は、空燃比センサ77の性能などに応じて決められる。
次に、エンジンECU80は、所定期間分の空燃比センサ77の出力値の中で、出力値の最大値が補正後の上流センサ異常検出閾値より大きいと判定した場合には(ステップS56でYES)、空燃比センサ77が正常であると判定し(ステップS57)、ステップS56でNOの場合、空燃比センサ77が異常であると判定する(ステップS58)。
また、エンジンECU80は、ステップS52〜S56を省略して、ステップS51でYESの場合、空燃比センサ77のストイキズレが発生していると判定し、ステップS51でNOの場合、空燃比センサ77が正常であると判定するようにしてもよい。また、エンジンECU80は、ステップS51〜S53の判定処理に替えて、O2センサ78の出力の補正量P、I、Dの合計値と、補正量Iとの比が所定値より小さい場合にストイキズレが発生していると判定するようにしてもよい。
以上のように、空燃比センサ77(上流排気センサ)のストイキズレ検出処理では、補正量P、I、Dの特性に基づいて空燃比センサ77がストイキズレであることを検出するため、補正量P、I、D全てを使用していない従来の異常検出処理と比較すれば、高精度に空燃比センサ77のストイキズレ検出を行うことができる。
(本実施の形態に係る下流排気センサの応答性低下検出処理)
ここで、下流排気センサ(O2センサ78)の応答性低下の特性について図9を用いて説明する。図9は、O2センサ78の電圧信号、および、ステップS12、ステップS13、ステップS14においてそれぞれ算出した比例値、積分値、微分値の補正量(P、I、D)の下流排気センサの正常時の特性を破線で示し、O2センサ78の応答性低下時の特性を実線で示したものである。また、図9では、理想的な値を基準値とし、この基準値を超えた分をリッチ(正の値)、超えない分をリーン(負の値)として縦軸に示し、経過時間を横軸に示している。
図9(A)は、O2センサ78の電圧信号の特性を示しており、O2センサ78の応答性低下時の特性においては、排気浄化触媒76の下流の酸素濃度の変化に対して応答が低下するため、正常時の変化量が大きい時点で、変化量が小さくなる。図9(B)は、補正量Pの特性を示している。応答性低下時の補正量Pの特性においては、最大値および最小値が正常時のものと比較してあまり変わらない。
図9(C)は、補正量Iの特性を示している。応答性低下時の補正量Iの特性においては、応答性低下時の補正量Iと横軸からなる面積が小さくなるため、補正量Iの最大値および最小値の絶対値が正常時のものと比較すれば小さくなる。図9(D)は、補正量Dの特性を示している。応答性低下時の補正量Dの特性においては、応答性低下時の補正量Pの変化量が小さくなるため、急峻に変化しなくなる。
図10は、本実施の形態に係る排気系のうち下流排気センサの応答性低下検出処理について説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、図9に示した下流排気センサ(O2センサ78)の応答性低下の特性に基づいた処理である。
まず、O2センサ78の応答性が低下している状態では、補正量Iおよび補正量Dの最大値、最小値の絶対値が小さくなるため、エンジンECU80は、現時点から所定期間分のデータをRAMから取得し、所定期間分の補正量Iの最大値(または補正量Iの最小値の絶対値)が所定値よりも小さいか否かを判定する(ステップS61)。ステップS61の場合、ステップS62に移行する。一方、ステップS61でNOの場合、ステップS65に移行する。
次に、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Iの最大値(または補正量Iの最小値の絶対値)が所定値よりも小さいと判定した場合には(ステップS62でYES)、ステップS63に移行し、ステップS62でNOの場合、ステップS65に移行する。エンジンECU80は、所定期間分の補正量Pの中で最もリッチ付近にある補正量Pの個数が正常時と比較して少ないと判定した場合には(ステップS63でYES)、ステップS64に移行し、ステップS63でNOの場合、ステップS65に移行する。なお、ステップS63は、省略してもよい。
次に、エンジンECU80は、O2センサ78(下流側排気ガスセンサ)の異常を検出するための閾値である下流センサ異常検出閾値に所定値を減算して補正する(ステップS64)。一方、ステップS65では、エンジンECU80は、下流センサ異常検出閾値に所定値を加算して補正する。ここでの下流センサ異常検出閾値は、O2センサ78の応答性低下リッチ出力低下を検出するのに好ましい値に設定されている。
なお、O2センサ78の出力値がばらつくこともあるため、ステップS64およびステップS65では、ステップS66で誤検出されないように下流センサ異常検出閾値が補正される。下流センサ異常検出閾値が補正されるときの所定値は、O2センサ78の性能などに応じて決められる。
次に、エンジンECU80は、所定期間分のO2センサ78の出力値の中で、最もリーンになっている時点から最もリッチになるまでの期間の中間の時点の出力値が補正後の下流センサ異常検出閾値より大きいと判定した場合には(ステップS66でYES)、O2センサ78が正常であると判定し(ステップS67)、ステップS66でNOの場合、O2センサ78が異常であると判定する(ステップS68)。なお、ステップS66で示した判定処理に限らず、下流排気センサの応答性低下が判定しやすい処理であればよい。
また、エンジンECU80は、ステップS64〜S66を省略して、ステップS63でYESの場合、O2センサ78の応答性が低下していると判定し、ステップS61〜S63でNOの場合、O2センサ78が正常であると判定するようにしてもよい。また、エンジンECU80は、ステップS61〜S63の判定処理に替えて、O2センサ78の出力の最大時、最小時の時点での補正量P、I、Dの合計値とこの時点での補正量Iとの比が所定値より小さく、上記の合計値とこの時点での補正量Dとの比が所定値より小さい場合にO2センサ78の応答性が低下していると判定するようにしてもよい。ステップS61およびS62では、それぞれの最大値が所定値よりも小さいかが判定されているが、ステップS61では、補正量Iと横軸からなる面積が小さくなるため、この面積が小さいときにステップS62に処理が移行され、ステップS62では、補正量Dと横軸からなる面積が小さくなるため、この面積が小さいときにステップS63に処理が移行されるようにしてもよい。
以上のように、下流排気センサ(O2センサ78)の応答性低下検出処理では、補正量P、I、Dの特性に基づいてO2センサ78の応答性が低下していることを検出するため、補正量P、I、D全てを使用していない従来の異常検出処理と比較すれば、高精度にO2センサ78の応答性低下検出を行うことができる。
(本実施の形態に係る下流排気センサのリッチ出力低下検出処理)
ここで、下流排気センサ(O2センサ78)で感受性の低下や素子割れが発生するなどして、O2センサ78の出力がリッチ側に出にくい現象(リッチ出力低下)の特性について図11を用いて説明する。図11は、O2センサ78の電圧信号、および、ステップS12、ステップS13、ステップS14においてそれぞれ算出した比例値、積分値、微分値の補正量(P、I、D)の下流排気センサの正常時の特性を破線で示し、O2センサ78のリッチ出力低下時の特性を実線で示したものである。また、図11では、理想的な値を基準値とし、この基準値を超えた分をリッチ(正の値)、超えない分をリーン(負の値)として縦軸に示し、経過時間を横軸に示している。
図11(A)は、O2センサ78の電圧信号の特性を示しており、O2センサ78のリッチ出力低下時の特性においては、排気浄化触媒76の下流の酸素濃度がリッチになってもO2センサ78が反応せず、大きくリッチにならないとリッチに出力しなくなり、一旦リッチになると出力が急激に変化する。図11(B)は、補正量Pの特性を示している。リッチ出力低下時の補正量Pの特性においては、最大値および最小値が正常時のものと比較してあまり変わらないがリッチになる期間が正常時のものと比較して長くなり、一旦リーンになると補正量Pが急激に変化する。
図11(C)は、補正量Iの特性を示している。リッチ出力低下時の補正量Iの特性においては、リッチ出力低下時の補正量Pがリッチになる期間が長いため、補正量Iの最大値および最小値の絶対値が正常時のものと比較すれば大きくなる。図11(D)は、補正量Dの特性を示している。リッチ出力低下時の補正量Dの特性においては、リッチ出力低下時の補正量Pがリッチからリーンに変化するタイミングがずれるため、そのタイミングに応じて急峻に変化するタイミングもずれ、リッチ出力低下時の補正量Pがリーンに変化する際に急激に変化するため、変化量も大きくなっている。
図12は、本実施の形態に係る排気系のうち下流排気センサのリッチ出力低下検出処理について説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、図11に示した下流排気センサ(O2センサ78)のリッチ出力低下の特性に基づいた処理である。
まず、O2センサ78のリッチ出力が低下している状態では、補正量Iの最大値、最小値の絶対値が大きくなり、補正量Dの最小値の絶対値が大きくなるため、エンジンECU80は、現時点から所定期間分のデータをRAMから取得し、所定期間分の補正量Iの最大値(または補正量Iの最小値の絶対値)が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS71)。ステップS71でYESの場合、ステップS72に移行する。一方、ステップS71でNOの場合、ステップS75に移行する。
次に、エンジンECU80は、所定期間分の補正量Dの最小値の絶対値が所定値よりも大きいと判定した場合には(ステップS72でYES)、ステップS73に移行し、ステップS72でNOの場合、ステップS75に移行する。エンジンECU80は、所定期間分の補正量Pにおいてリッチになっている期間が正常時と比較して長いと判定した場合には(ステップS73でYES)、ステップS74に移行し、ステップS73でNOの場合、ステップS75に移行する。なお、ステップS73は、省略してもよい。
次に、エンジンECU80は、O2センサ78(下流側排気ガスセンサ)の異常を検出するための閾値である下流センサ異常検出閾値に所定値を加算して補正する(ステップS74)。一方、ステップS75では、エンジンECU80は、下流センサ異常検出閾値に所定値を加算して補正する。ここでの下流センサ異常検出閾値は、O2センサ78のリッチ出力低下を検出するのに好ましい値に設定されている。
なお、O2センサ78の出力値がばらつくこともあるため、ステップS74およびステップS75では、ステップS76で誤検出されないように下流センサ異常検出閾値が補正される。下流センサ異常検出閾値が補正されるときの所定値は、O2センサ78の性能などに応じて決められる。
次に、エンジンECU80は、所定期間分のO2センサ78の出力値の中で、O2センサ78の出力値のリッチになっている期間が補正後の下流センサ異常検出閾値より長いと判定した場合には(ステップS76でYES)、O2センサ78が正常であると判定し(ステップS77)、ステップS76でNOの場合、O2センサ78が異常であると判定する(ステップS78)。
また、エンジンECU80は、ステップS73〜S76を省略して、ステップS72でYESの場合、O2センサ78のリッチ出力が低下していると判定し、ステップS71〜S72でNOの場合、O2センサ78が正常であると判定するようにしてもよい。また、エンジンECU80は、ステップS71〜S73の判定処理に替えて、O2センサ78の出力の最大時の時点での補正量P、I、Dの合計値とこの時点での補正量Iとの比が所定値より大きい場合にO2センサ78のリッチ出力が低下していると判定するようにしてもよい。
以上のように、下流排気センサ(O2センサ78)のリッチ出力検出処理では、補正量P、I、Dの特性に基づいてO2センサ78のリッチ出力が低下していることを検出するため、補正量P、I、D全てを使用していない従来の異常検出処理と比較すれば、高精度にO2センサ78のリッチ出力低下検出を行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述したような排気浄化触媒の劣化、上流排気センサの応答性低下およびストイキズレ、下流排気センサの応答性低下およびリッチ出力低下は、例であってこれらの事象に限定されず、本発明は、排気系の異常についての特性に特徴があるものであれば検出することができる。また、本発明の実施の形態で説明したフローチャートは、例であってこれらのフローチャートに限定されず、異常検出についての特性の特徴を抽出できる処理であればよい。