JP4854400B2 - 溶媒組成物 - Google Patents

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本発明は、内燃機関等に使用される潤滑剤や、燃料電池等に使用される冷媒として使用できる溶媒組成物に関する。
従来、自動車等の内燃機関や、自動変速機、緩衝器、パワーステアリング等の駆動系機器や、ギア等にはその作動を円滑にするために潤滑油が用いられている。また、ブレーキ装置等にはブレーキフルードが充填されている。また、燃料電池を搭載した車両においては、燃料電池を冷却するための溶液状の冷媒が用いられることも考えられる。また、冷却装置であるラジエーターにはロングライフクーラント(LLC)等のクーラントが充填されている。
このように、自動車等の内燃機関においては、様々な構成部品に溶媒組成物が用いられている。これら潤滑剤やフルード類に代表される溶媒組成物の劣化を防止するために、従来、酸化防止のフェノール系やアミン系等の添加剤を添加することが知られている(特許文献1参照)。すなわち、これら添加剤は、溶媒組成物中に生じる劣化物と反応することでその酸化を防止している。また、添加剤と劣化物との反応産物を溶媒組成物中に分散させるため、従来、清浄剤や分散剤を添加している。
より具体的に、溶媒組成物中に生じる酸素ラジカルによって潤滑油基油等が酸化されることで不溶解性のスラッジが生成し、これが大きな障害をもたらすことが指摘されていた。特許文献1には、スラッジの発生量を低減するように、酸化防止剤としてフェノール系やアミン系等の添加剤を使用していた。しかしながら、特許文献1に開示された技術であっても、酸化防止剤は反応と共に減少し、いずれは酸化防止効果が喪失してしまう。また、特許文献1に開示された技術であっても、スラッジの発生を完全に抑えることはできず、スラッジによる機能低下は避けられない。従って、従来の技術においては、潤滑油等の溶媒組成物の機能劣化を長期間にわたって抑制する有効な手段は知られていなかった。
特開平5−179275号公報
そこで、本発明は、機能を長期に安定して維持することができる溶媒組成物を提供することを目的とする。
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
すなわち、本発明にかかる溶媒組成物は、酸素ラジカルによる酸化的変質を受けうる物質と、酸素ラジカル除去能を有する耐熱性スーパーオキシドディスムターゼを含んでいる。本発明にかかる溶媒組成物においては、耐熱性スーパーオキシドディスムターゼによって酸素ラジカルを除去することができ、酸化的変質を受けうる物質が酸化することを防止することができる。
特に、本発明にかかる溶媒組成物においては、耐熱性分子シャペロンを更に含むことが好ましい。耐熱性分子シャペロンは、耐熱性スーパーオキシドディスムターゼを安定化することができ、酸素ラジカルを除去するといった耐熱性スーパーオキシドディスムターゼ活性を高温状態で長期間維持することができる。
本発明において、上記酸化的変質を受けうる物質としては潤滑剤成分や冷媒成分を挙げることができる。換言すると、本発明にかかる溶媒組成物は潤滑剤や冷媒として使用することができる。
本発明により、酸化的変質を受けうる物質を含有する溶媒組成物において、当該物質の酸化的変質を長期間防止することが可能となる。これにより、本発明にかかる溶媒組成物は、その機能を低減することなく、例えば高温条件下で長期間にわたって使用することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、酸素ラジカルによる酸化的変質を受けうる物質を含み、特定の用途に使用される溶媒組成物に広く適用される。ここで、酸素ラジカルによる酸化的変質を受けうる物質としては、例えば、鉱油等の潤滑油基油成分、マイクロエマルジョン等の水系潤滑剤成分、エチレングリコール等の冷媒成分、等を挙げることができる。また、これら物質以外にも、リン酸エステル、シリコーン油、水-グリコール混合物といった物質を挙げることができる。これら各物質は、酸素ラジカルによる酸化的変質を受けることによって、潤滑油基油としての機能、水系潤滑剤としての機能、冷媒成分としての機能が毀損されることとなる。
また、本発明にかかる溶媒組成物の用途は、上述した物質が有する機能に依存することとなる。すなわち、上記物質として鉱油等の潤滑油基油成分を使用する場合には潤滑油として使用され、上記物質としてエチレングリコール等の冷媒成分を使用する場合には冷媒として使用され、上記物質としてマイクロエマルジョン等の水系潤滑剤を使用する場合には水系潤滑剤として使用される。
本発明にかかる溶媒組成物は、耐熱性スーパーオキシドディスムターゼ(以下、耐熱性SODと略称する)を含み、当該耐熱性SODによって酸素ラジカルの蓄積が防止されている。耐熱性SODとは、高温条件下で酸素ラジカルを過酸化水素に変化させる活性を有する酵素を意味する。ここで高温条件下とは、例えば60℃、好ましくは80℃、より好ましくは100℃を意味する。したがって、耐熱性SODとは、例えば60℃、好ましくは80℃、より好ましくは100℃の条件下で上記活性を有する酵素を意味する。
耐熱性SODは、公知の耐熱性微生物から単離・精製することができるし、当該耐熱性微生物から耐熱性SODをコードする遺伝子(耐熱性SOD遺伝子と称する)を単離し、単離した耐熱性SOD遺伝子を用いて生成することもできる。例えば、耐熱性微生物として、Bacillus属及びThermus thermophilis、Aeropyrum pernixを挙げることができる。より具体的には、Thermus thermophilis HD8株を使用して耐熱性SOD及び耐熱性SOD遺伝子を単離することができる。
Thermus thermophilus HB8由来の耐熱性SODは、85℃、50分の熱処理ではほぼ100%、また90℃、50分の熱処理でも活性を90%以上維持することができる。このように、Thermus thermophilus HB8由来の耐熱性SODは、熱安定性に大変優れているため、高温条件化においても酸素ラジカルを効率的に除去することができる。また、Thermus thermophilus HB8由来の耐熱性SODは、分子構造が安定であることから有機溶媒にも耐性であり、一般的に酵素が失活しやすい有機溶媒中あるいは有機溶媒水溶液中においも使用することができる。
一例として、本発明にかかる溶媒組成物に使用できる耐熱性SODとして、Thermus thermophilis HD8株由来の耐熱性SODのアミノ酸配列を配列番号2に示す。また、配列番号2に示す耐熱性SODをコードする耐熱性SOD遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。なお、本発明にかかる溶媒組成物は、Thermus thermophilis HD8株由来の耐熱性SODに限定されず、他の耐熱性微生物由来の耐熱性SODを使用することもできる。例えば、Aeropyrum pernix由来の耐熱性SODやBacillus属由来の耐熱性SODを挙げることができる。Aeropyrum pernix由来の耐熱性SODをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号3に示し、当該耐熱性SODのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
このように、本発明にかかる溶媒組成物において使用可能な耐熱性SODのアミノ酸配列を具体的に示したが、これらのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、高温条件下で酸素ラジカルを過酸化水素に変化させる活性を有するタンパク質であれば耐熱性SODとして使用可能である。ここで、数個のアミノ酸残基としては、2〜50残基、好ましくは2〜20残基、より好ましくは2〜10残基を意味する。特に、欠失、置換、付加又は挿入することができるアミノ酸残基としては、耐熱性を付与する立体構造を規定する領域及び酸素ラジカルを過酸化水素に変化させる活性に関与する領域を除く領域を構成するアミノ酸残基を挙げることができる。
1又は数個のアミノ酸残基を欠失、置換、付加又は挿入する手法としては、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Joseph Sambrook 及びDavid W. Russell (著))等に記載された方法を適宜改変して使用することができる。
上述した耐熱性SODは、溶液中に限らず、樹脂、金属又はプラスチック素材からなる担体へ固定化されてもよい。耐熱性SODを固定化する方法としては、特に限定されないが、例えば、「J. Biochem. Biophys. Methods 55, 67-70, 2003(M. Wilchek及びT. Miron(著))」、「Biotechnolgy and Bioengineering, 82, 86-92, 2003(S. Piletsky、E. Piletska、A. Bossi、N. Turner及びA. Turner(著))及び「Biomaterials, 26, 4944-4947, 2005(T. Haruyama、T. Sakai及びK. Matsuno(著))」に挙げられた方法を採用することができる。固定化された耐熱性SOD(固定化耐熱性SODと称する)を使用する場合、酸素ラジカルにより酸化的変質を受けうる物質を含む溶液を固定化耐熱性SODに接触させることで、当該溶液に含まれる酸素ラジカルを除去することができる。
また、本発明にかかる溶媒組成物は、耐熱性分子シャペロンを含むことが望ましい。耐熱性分子シャペロンとは、高温条件下において他のタンパク質の高次構造形成を助力する機能を有する一群のタンパク質を意味する。本発明にかかる溶媒組成物においては、特に、耐熱性分子シャペロンの中でも、高温条件下でタンパク質のフォールディングを補助する耐熱性シャペロニンを使用することが望ましい。ここで高温条件下とは、例えば60℃、好ましくは80℃、より好ましくは100℃を意味する。したがって、耐熱性分子シャペロンとは、例えば60℃、好ましくは80℃、より好ましくは100℃の条件下で上記機能を有するタンパク質を意味する。
本発明にかかる溶媒組成物において耐熱性分子シャペロンを含ませることによって、上述した耐熱性SODの耐熱性をより向上させることができる。すなわち、上述した耐熱性SODの熱安定性を向上させることができる。耐熱性分子シャペロンは、公知の耐熱性微生物から単離・精製することができるし、当該耐熱性微生物から耐熱性分子シャペロンをコードする遺伝子(耐熱性分子シャペロン遺伝子と称する)を単離し、単離した耐熱性分子シャペロン遺伝子を用いて生成することもできる。例えば、耐熱性微生物として好熱性細菌を使用することができる。好熱性細菌としては、例えば、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、Methanococcus jannaschii及びThermoplasma acidophilumを挙げることができる。より具体的には、Pyrococcus furiosusを使用して耐熱性分子シャペロン及び耐熱性分子シャペロン遺伝子を単離することができる。
一例として、本発明にかかる溶媒組成物に使用できる耐熱性分子シャペロンとして、Pyrococcus furiosus由来の耐熱性分子シャペロンであるシャペロニンのアミノ酸配列を配列番号6に示す。また、配列番号6に示すシャペロニンをコードする耐熱性分子シャペロニン遺伝子の塩基配列を配列番号5に示す。Pyrococcus furiosus由来のシャペロニンは、Bacillus属由来の耐熱性SODと共存した溶液中で80℃、50分間の処理を行っても、当該耐熱性SODの活性を最大40%安定化するといった効果を示す。さらに、Thermus属由来のリンゴ酸脱水素酵素と共存した15〜25%エチレングリコール中で80℃、60分間の処理を行っても、当該リンゴ酸脱水素酵素の活性を15〜30%安定化するといった効果を示す。
なお、本発明にかかる溶媒組成物は、Pyrococcus furiosus由来の耐熱性シャペロニンに限定されず、他の耐熱性微生物由来の耐熱性シャペロニンを使用することもできる。例えば、Pyrococcus horikoshii及びMethanococcus jannaschii、Thermoplasma acidophilum由来の耐熱性シャペロニンを挙げることができる(以下の文献を参照:K. Hongo, H. Hirai, C. Uemura, S. Ono, J. Tsunemi, T. Higurashi, T. Mizobata, Y. Kawata, FEBS Letters, 580, 34-40, 2006)。Pyrococcus horikoshii由来の耐熱性分子シャペロンをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号7に示し、当該耐熱性分子シャペロンのアミノ酸配列を配列番号8に示す。Methanococcus jannaschii由来の耐熱性分子シャペロンをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号9に示し、当該耐熱性分子シャペロンのアミノ酸配列を配列番号10に示す。
このように、本発明にかかる溶媒組成物において使用可能な耐熱性分子シャペロンのアミノ酸配列を具体的に示したが、これらのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、高温条件下で分子シャペロンとして機能するタンパク質であれば耐熱性分子シャペロンとして使用可能である。ここで、数個のアミノ酸残基としては、2〜50残基、好ましくは2〜20残基、より好ましくは2〜10残基を意味する。特に、欠失、置換、付加又は挿入することができるアミノ酸残基としては、耐熱性を付与する立体構造を規定する領域及び分子シャペロン活性に関与する領域を除く領域を構成するアミノ酸残基を挙げることができる。1又は数個のアミノ酸残基を欠失、置換、付加又は挿入する手法としては、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Joseph Sambrook 及びDavid W. Russell (著))等に記載された方法を適宜改変して使用することができる。
また、本発明にかかる溶媒組成物は、有機溶媒系、有機溶媒水溶液系、水系のいずれの態様でもよい。さらに、本発明にかかる溶媒組成物は、用途に応じて種々の添加物を含むことができる。例えば、本発明にかかる溶媒組成物は、基油、防錆剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤、及びその他の添加剤(例えば、極圧添加剤、防食剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄分散剤、着色剤、香料等)を適宜配合して使用できる。上記基油としては、鉱油、例えば、マシン油、タービン油、スピンドル油、シリンダー油等を挙げることができる。
一方、本発明にかかる溶媒組成物において耐熱性SODは、0.002%(重量比)、好ましくは0.1%(重量比)添加することが望ましい。また、本発明にかかる溶媒組成物において耐熱性分子シャペロンは、使用する耐熱性SOD酵素のサブユニットモル数と同量、好ましくは数倍量、より好ましくは数十倍量(例えば40倍)添加することが望ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.耐熱性SOD酵素のクローニング
Thermus thermophilus HB8株のゲノムDNAを以下のようにして調製した。
培養したThermus thermophilus HB8菌体およそ0.1 gを0.1 M NaCl及び1 mM EDTAを含む10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)、3 mlに懸濁し、終濃度が0.3 mg/mlになるようにリゾチームを加えて37℃で60分間反応させた。その後、終濃度1%になるようにSDSを加え、さらに60℃で10分間インキュベートした。次に、終濃度50μg/mlのRNaseAとプロテイナーゼKを加え、37℃で一晩インキュベートした後、フェノール抽出を2回、イソアミル-クロルフォルム抽出を1回行った。その後、エタノール沈殿を行い、回収されたゲノムDNAを1 mM EDTAを含む10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)に溶解させ、-30℃で保存した。
次にThermus thermophilus HB8株のゲノムDNAを鋳型として、5’上流側プライマーにAGGTGACATATGCCGTACCCGTTCAA(T-HB8Nde+)(配列番号11)を、3’下流側プライマーにCTGAATTCTATGGGGATCAGGCCTTC(T-HB8EcoRI-)(配列番号12)を用いたPCR法によって、耐熱性SOD遺伝子を含むDNA断片を増幅した。耐熱性SODを含むDNA断片を発現プラスミドpET23a(+)のNdeI-EcoRIサイトに導入することで、耐熱性SOD遺伝子をクローニングした。得られた発現プラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODを大量に発現する系を確立した。
2.大量培養と酵素精製
上記1.で調製した大量発現系である大腸菌をそれぞれ37℃、12時間LB培地で振とう培養した。その結果、菌体は約3g/L得られ、各系において耐熱性SODは良好に発現したことを確認した。各系において発現した耐熱性SODは、共に以下の方法によって精製した。
すなわち、先ず、菌体を破砕緩衝液(10 mM Tris-HCl(pH 7.5)、10 mM 2-メルカプトエタノール及び0.1 mM EDTAからなる組成)に懸濁し、その後、超音波破砕を行った。次に、遠心後、上澄み溶液(粗抽出液)を80℃、20分間熱処理し、熱に弱い大腸菌由来のタンパク質を失活・沈殿化した。耐熱性SODは熱に安定であるので、この操作によって非常に効率よく精製された。最終的には、熱処理後の上澄み液をQセファロース陰イオン交換カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にかけ、0 - 1 M NaClで溶出させて完全精製することができた。本酵素は活性部位にMnを結合して活性を示すMn-SODであるので、精製後の酵素を0.5 mM 塩化マンガンを含む50 mM HEPES-KOH緩衝液(pH 7.5)に1 mg/ml SODとなるように調製した後、70℃、30分間熱処理することで活性化を行った。
3.活性測定
上記2.で精製された耐熱性SODの酵素活性は、キサンチン-キサンチンオキシダーゼから発生させた酸素ラジカルによる水溶性テトラゾリウム塩(WST)の酸化を指標として測定した。すなわち、酸素ラジカルによる酸化基質にWSTを用い、耐熱性SODの有無でどれだけ水溶性テトラゾリウムフォルマザンの生成が抑えられるかを指標にして測定した(以下の文献を参照:H. Ueda, D. Kawana, S. Maeda, M. Sawamura, Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 485-488,1999)。WSTが酸化されて水溶性テトラゾリウムフォルマザンになると、450 nmに紫外吸収が生じるので、これを測定することで酸素ラジカルによる酸化反応を簡便に測定できる。活性測定緩衝液には0.17 mM キサンチンと0.11 mM EDTAを含む35 mM 炭酸ナトリウム(pH 10.2)を使用した。酸化基質としては0.24 mMのWSTを用いた。耐熱性SODは、0.5 mM 塩化マンガンを含む50 mM HEPES-KOH緩衝液(pH 7.5 各温度で調整済)に1 mg/ml SODになるように溶かして使用した。
この活性測定系では,酸化基質であるWSTが酸素ラジカルで酸化されうる物質、すなわち機能性物質としてのモデル化合物と見なすことができる。この基質WSTの酸化を耐熱性SODが防ぐ働きをする。
4.至適温度と熱安定性の評価
Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODについて、上記3.に記載した活性測定を25℃から85℃までの温度範囲で測定した。結果を図1に示す。図1から判るように、Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODは、75℃以上で最大活性を持ち、55℃でもおよそ最大活性の50%の活性を発揮することが分かった。
また、Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SOD について、0.5 mM 塩化マンガンを含む50 mM HEPES-KOH緩衝液(pH 7.5 )に1 mg/ml SOD酵素になるように調製した標品を90℃と100℃に保って熱失活の程度を調べた。結果を図2に示す。図2から判るように、90℃、50分間処理では95%、100℃、50分間の処理でも70%の活性を保持していた。なお、図2には示していないが、85℃、50分間熱処理ではほぼ100%の活性が保持された。
これら図1及び2に示した結果から、Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODは幅広い温度域で活性を有し、特に高熱に強いことが明らかになった。
5.耐熱性シャペロニンによる耐熱性SODの安定化効果
上記1.で記述した同様な方法を用いて調製したPyrococcus furiosusのゲノムDNAを鋳型として、5’上流側プライマーにGTCTGTACATATGGCCCAGTTAGCAGGCCAA(Pfu-cpnNde+)(配列番号13)を、3’下流側プライマーにGAACGGATCCTTAGTCCAGATCACTGCTGAAGTCCT(Pfu-cpnBam-)(配列番号14)を用いたPCR法によって、耐熱性シャペロニン遺伝子(Pfu-cpn)を含むDNA断片を増幅した。また、得られたDNA断片を発現プラスミドpET23a(+)のNdeI-BamHIサイトに導入し、これを用いて、上記1.と同様にして、大腸菌による大量発現系を確立した。大量発現した耐熱性シャペロニンは、次のようにして精製した。菌体を破砕緩衝液(25 mM HEPES-KOH(pH 7.6)、50 mM KCl及び1 mM フッ化フェニルメタンスルフォニルからなる組成)に懸濁し、その後、氷中で超音波破砕を行った。次に、遠心後、上澄み溶液(粗抽出液)を80℃、30分間熱処理し、熱に弱い大腸菌由来のタンパク質を失活・沈殿化した。最後に、熱処理後の上澄み液をリソースQ陰イオン交換カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にかけ、0 - 0.5 M KClで溶出させて精製することができた(以下の文献を参照:K. Hongo, H. Hirai, C. Uemura, S. Ono, J. Tsunemi, T. Higurashi, T. Mizobata, Y. Kawata, FEBS Letters, 580, 34-40, 2006)。
また、本実験では、得られた耐熱性シャペロニンの中等度(60℃)耐熱性酵素SODの安定化効果を検証するため、Bacillus由来の中等度耐熱性SODを調製した。Bacillus由来の中等度耐熱性SODは和光純薬から凍結乾燥粉末を購入したものをそのまま使用した。
50mM HEPES-KOH緩衝液(pH 7.0)にBacillus由来のSOD を1 mg/mlの濃度に調製し、80℃の熱処理を行い、適時残存活性を調べ、耐熱性シャペロニンの有無による残存活性の相違を検証した。結果を図3に示す。図3に示すように、耐熱性シャペロニンを含まない緩衝液で処理した場合には10分後にはほぼ10%の残存活性に低下した。これに対して、耐熱性シャペロニンを0.5 mM 塩化マンガン存在下でSOD酵素のモル比で80倍等量加えると、10分後で残存活性が60%、50分後でも残存活性が40%観測された。この結果から、耐熱性シャペロニンはSODの熱失活を抑制することが明らかになった。
6.有機溶媒含有水溶液中での耐熱性シャペロニンの活性発現
一般的に酵素は有機溶媒中では不安定になることが多い。燃料電池の冷媒として使用されるエチレングリコール(EG)-水系での使用環境を考慮して、有機溶媒中における耐熱性シャペロニン(Pfu-cpn)の酵素の安定化効果を検証した。
本実験では、有機溶媒としてEG濃度が15%、23%或いは25%であるようなEG-水系を調製した。また、本実験では、安定化対象の酵素としてThermus属由来の耐熱性リンゴ酸脱水素酵素を使用した。耐熱性リンゴ酸脱水素酵素は天野製薬から購入し、10 mM 酢酸マグネシウム及び10 mM KClを含む50 mM MOPS-KOH (pH 7.4)の緩衝液に溶解した後、セントリコンC-100(10万分子量カット:アミコン社製)を用いて混入しているデキストランを除去して用いた。このリンゴ酸脱水素酵素は54 kDa(27kDa x 2量体)の質量であるので、この操作で濾過液に濾過され、高分子量であるデキストランと分離することができた。
調製した耐熱性リンゴ酸脱水素酵素(0.2 mg/ml)をEG各濃度の有機溶媒に添加し、80℃の熱処理を行い、適時残存活性を測定し、耐熱性シャペロニンの有無による残存活性の相違を検証した。なお、耐熱性リンゴ酸脱水素酵素の活性は以下のようにして測定した。
2.9 mlの反応緩衝液(100 mM Tris-HCl(pH 7.8)、10 mM 酢酸マグネシウム及び270 μM βNADH、0.5 mMオキサロ酢酸からなる組成)に測定サンプル溶液を0.1 ml加えて、25℃で340 nmの吸光度の減少の度合いによって活性測定を行った。
結果を図4に示す。図4から判るように、EG濃度が15%、23%及び25%と増加するにつれて、80℃での耐熱性リンゴ酸脱水素酵素は不安定化し、残存活性は例えば25%EG中では30分後には25%となった。しかし、耐熱性シャペロニンを40モル倍等量存在させておくと、30分後の残存活性は55%に改善された。この結果は、耐熱性シャペロニンの酵素の安定化効果は、エチレングリコール含有水溶液中でも働くことを示している。
Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODの至適温度を検討した結果を示す特性図である。 Thermus thermophilus HB8株由来の耐熱性SODの熱安定性を検討した結果を示す特性図である。 耐熱性シャペロニンによる酵素保護効果を検討した結果を示す特性図である。 耐熱性シャペロニンによる酵素保護効果をエチレングリコール含有水溶液中で検討した結果を示す特性図である。

Claims (10)

  1. 酸素ラジカルによる酸化的変質を受けうる潤滑剤成分又は冷媒成分と、酸素ラジカル除去能を有する耐熱性スーパーオキシドディスムターゼを含む溶媒組成物。
  2. 耐熱性分子シャペロンを更に含むことを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
  3. 上記耐熱性スーパーオキシドディスムターゼは、Thermus thermophilis(サーマス・サーモフィルス)又はAeropyrum pernix(アエロピュルム・ペルニクス)由来であることを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
  4. 上記耐熱性分子シャペロンは、好熱性細菌由来のものであることを特徴とする請求項2記載の溶媒組成物。
  5. 上記好熱性細菌は、Pyrococcus furiosus(パイロコッカス・フリオサス)、Pyrococcus horikoshii(パイロコッカス・ホリコシイ)、Methanococcus jannaschii(メタノコックス・ヤンナスキイ)又はThermoplasma acidophilum(サーモプラズマ・アシドフィラム)であることを特徴とする請求項4記載の溶媒組成物。
  6. 水系溶媒を含むことを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
  7. 上記水系溶媒は、エチレングリコールを含有することを特徴とする請求項6記載の溶媒組成物。
  8. 潤滑剤として使用されることを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
  9. 冷媒として使用されることを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
  10. 上記耐熱性スーパーオキシドディスムターゼは担体へ固定化されていることを特徴とする請求項1記載の溶媒組成物。
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