JP4854102B2 - 抗il−8抗体を有効成分として含有する間接的原因に起因する急性肺損傷治療剤 - Google Patents

抗il−8抗体を有効成分として含有する間接的原因に起因する急性肺損傷治療剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抗インターロイキン−8(IL−8)抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性肺損傷治療剤に関する。さらに詳しくは、本発明は抗IL−8抗体を有効成分として含有する、敗血症症候群等に起因する急性呼吸促迫症候群治療剤および成人呼吸促迫症候群治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
IL−8は、C−X−Cケモカインサブファミリーに属する蛋白質であり、以前は単球由来好中球遊走因子(monocyte-derived neutrophil chemotactic factor)、好中球活性化蛋白−1(neutrophil attractant/activation protein-1)、好中球活性化因子(neutrophil activating factor)等と呼称されていた。IL−8は、好中球の活性化・遊走を誘導する因子であり、IL−1βやTNF−α等の炎症性サイトカイン(Koch, A. E. et al., J.Investig. Med. (1995) 43, 28-38 ;Larsen, C. G. et al., Immunology (1989) 68, 31-36 )やPMA 、LPS 等のマイトゲン(Yoshimura, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1987) 84, 9233-9237)、さらにはカドミウム等の重金属(Horiguchi, H. et al., Lymphokine Cytokine Res. (1993) 12, 421-428 )等の刺激によって様々な細胞から産生される。また、低酸素状態に置かれたヒト臍帯静脈内皮細胞がIL−8を発現することも知られている(Karakurum, M. et al., J. Clin. Invest. (1994) 93, 1564-1570 )。
【0003】
IL−8がその生物活性を発現するには、IL−8がIL−8レセプターに結合して、IL−8レセプターを発現している細胞を刺激する必要がある。IL−8が結合して細胞内にシグナルを伝達するIL−8レセプターは既にクローニングされ、そのアミノ酸配列も明らかにされている。ヒトIL−8レセプターには、IL−8レセプターA(CXCR1,αあるいは2)と呼称されるレセプターと、IL−8レセプターB(CXCR2,βあるいは1)と呼称されるレセプターが存在する(Murphy, P. M. and Tiffany, H. L., Science (1991) 253, 1280-1283 ;Holmes, W. E. et al., Science (1991) 253, 1278-1280 )。両者は共に細胞膜を7回貫通する構造をしていることが想定されており、両者共に細胞質内ドメインでGTP結合蛋白に会合し(Horuk, R., Trends Pharmacol. Sci. (1994) 15, 159-165)、細胞内にIL−8のシグナルを伝達している。従って、IL−8とIL−8レセプターとの結合を阻害することにより、IL−8の生物活性を阻害することが可能になる。
【0004】
急性肺損傷(Acute Lung Injury )は、1992年に開催された米国胸部疾患学会(American Thoracic Society)と欧州集中治療医学会(European Society of Intensive Care Medicine)の欧米合意委員会によって1994年に提唱された定義である( Bernard, G. R. et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1994) 149, 818-824)。臨床像として、急性発症の経過をたどり、低酸素血症、胸部X線写真において両側びまん性の浸潤陰影が認められ、かつ、これらの臨床所見が左房または肺毛細管高血圧に起因していない場合に診断される疾患である。
【0005】
急性肺損傷は、低酸素血症の具体的な程度として、呼吸機能の指標であるPaO2/FIO2値が300mmHg以下で定義される。急性肺損傷のうち、低酸素血症の程度がより重篤なもの、具体的にはPaO2/FIO2値が200mmHg以下のものは急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome )と診断され、従来の成人呼吸促迫症候群(Adult Respiratory Distress Syndrome )とほぼ同一の病態を示す。成人呼吸促迫症候群の病態が成人のみならず小児にも見られるため、成人呼吸促迫症候群の名称を急性呼吸促迫症候群に戻すことが提唱されている。
【0006】
急性呼吸促迫症候群あるいは成人呼吸促迫症候群の病態は肺微小血管内皮の傷害に基づく透過性亢進による肺水腫であり、重篤な呼吸不全で死亡率は60%前後と高率である(Matthay, M. A., Clin. Chest Med. (1990) 11, 575-580 )。また、14日以内の死亡例が多い。急性呼吸促迫症候群あるいは成人呼吸促迫症候を誘導する原因には肺自体に発生して肺を直接的に傷害する直接的原因と全身性に生じて間接的に肺を傷害する間接的原因に大別される( Bernard, G. R. et al, Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1994) 149, 818-824 )。
【0007】
直接的原因としては誤嚥、びまん性の呼吸器感染症、溺水、刺激性ガス吸入、肺挫傷が分類される。間接的原因としては、敗血症症候群、胸郭外の重症な外傷、救急蘇生時の過剰輸液ならびに人工心肺バイパス術後が分類される。これらの原因のうち、急性肺損傷の原因として頻度が高く予後不良なのが敗血症症候群である(Montgomery, A. B. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1985) 132, 485-489 、Knaus, W. A. et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1994) 150, 311-317 )。敗血症症候群の定義は、1992年の欧米合意委員会では明確には議論されなかったが、Bone, R. C.(Ann. Intern. Med. (1991) 114, 332-333)によって一般的に定義されている。また、1991年に開催された米国胸部疾患学会(American College of Chest Physicians: ACCP)と米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine: SCCM)の合意委員会による提唱では、敗血症の定義が定められ、必ずしも感染症としての臨床所見は得られなくとも良い(Bone, R. C. et al., Chest (1992) 101, 1644-1655: Crit. Care Med. (1992) 20, 864-874)。これらの疾患概念を比較すると、敗血症症候群は、ACCP/SCCMが定めた敗血症に含まれる。
【0008】
本発明の治療の対象となる間接的原因に起因する急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群および成人呼吸促迫症候群の間接的原因としては、敗血症あるいは敗血症症候群のどちらであってもよい。急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群および成人呼吸促迫症候群は、胸部エックス線撮影における両側びまん性の浸潤陰影像と300mmHg以下のPaO2/FIO2値を臨床所見として同時に得られる点において、敗血症あるいは敗血症症候群とは区別される。
【0009】
急性呼吸促迫症候群あるいは成人呼吸促迫症候は種々の原因疾患に続発するため、発症機序の解明は未だ確立されておらず、様々な局面からの解明が行なわれている。種々の原因疾患に基づいた何らかの刺激によりある攻撃因子が活性化され、肺の損傷過程が開始されると想定されている。
攻撃因子は液性因子と細胞性成分に大別され、液性因子としてはIL-1(Suter, P. M. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1992) 145, 1016-1022)、IL-6(Meduri, G. U. et al., Chest (1995) 108, 1315-1325 )、IL-8(Miller, E. J. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1992) 146, 427-432 )、TNF-α(Marks, J. D. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1990) 141, 94-97)等のサイトカイン、補体(Hammerschmidt, D. E. et al., Lancet (1980) 1(8175), 947-949 )、蛋白分解酵素(Farjanel, J. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1993)147, 1091-1099 )、アラキドン酸代謝産物(Stephenson, A. H. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1988) 138, 714-719 )、PAF (Matsumoto, K. et al., Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. (1992) 19, 509-515 )、活性酸素(Leff, J. A. et al., Am. Rev. Respir. Dis.(1992) 146, 985-989)等の多くの因子が、細胞性成分としては好中球(Weiland, J. E.et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1986) 133, 218-225 )や肺胞マクロファージ(Tran Van Nhieu, J. et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1993) 147, 1585-1589)が、患者の気管支肺胞洗浄液あるいは末梢血等より検出されることから攻撃因子として想定されている。
【0010】
これらの攻撃因子が相互に関連して複雑なネットワークを形成していると推測され、このことがこれらの疾患の病態を複雑にし、治療を困難にさせている理由と考えられている。一方で、これらの攻撃因子の中には生体にとって防御的、すなわち損傷を軽減したりもしくは修復機転として作用する因子も存在する。従って、どの攻撃因子を標的に治療方法を確立するべきなのか未だ明確にはなっていない。
【0011】
原因疾患の中で頻度が高く注目されているのは、間接的原因のひとつであるグラム陰性菌による敗血症で、この場合の刺激物質としてはエンドトキシンがよく知られている。直接的原因の一つである誤嚥を、塩酸吸入により再現した肺傷害モデルにおいては、抗IL−8抗体が有効であることが示されていた(Folkesson, H.G. et al., J. Clin. Invest. (1995), 107-116)。しかしながら、敗血症症候群等のように全身性に生じて間接的に肺を傷害する間接的原因による急性肺損傷に対して、抗IL−8抗体が治療効果を有することは何ら知られていなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これら間接的原因に起因する疾患を治療することにより、患者の生命予後の改善を期待できる。現在のところこれらの疾患に対する治療方法は、生命維持の為の対症療法に依存し、肺損傷自体を阻止しまたは修復を進める治療ではない。また、これらの対症療法の効果はほとんどの場合一過性であり、成人呼吸促迫症候群の死亡率は現在でも60%前後と高率である(Matthay, M. A. et al., Clin. Chest Med. (1990) 11, 575-580)。
【0013】
従って、急性肺損傷に対する治療剤として、新しい薬剤を開発することが望まれている。期待されていたステロイドも成人呼吸促迫症候群の発症予防にも、また、発症後の成人呼吸促迫症候群に対しても効果がないと考えられている(金沢
実ら、救急医学(1991)15、753-760 )。
従って、本発明の目的は、前記の課題を解決した新しい治療剤を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる治療剤を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、抗IL−8抗体により、所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は抗IL−8抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0015】
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する成人呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、敗血症症候群に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0016】
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、敗血症症候群に起因する急性呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、敗血症症候群に起因する成人呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、胸郭外の重症な外傷に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0017】
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、胸郭外の重症な外傷に起因する急性呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、胸郭外の重症な外傷に起因する成人呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、救急蘇生時の過剰輸液に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0018】
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、救急蘇生時の過剰輸液に起因する急性呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、救急蘇生時の過剰輸液に起因する成人呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、人工心肺バイパス術に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0019】
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、人工心肺バイパス術に起因する急性呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、人工心肺バイパス術に起因する成人呼吸促迫症候群の治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL−8モノクローナル抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0020】
本発明はまた、哺乳類のIL−8に対する抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
本発明はまた、ヒトIL−8に対する抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
本発明はまた、WS−4抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0021】
本発明はまた、ヒト抗体定常領域を有する抗IL−8抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
本発明はまた、ヒト型化抗IL−8抗体またはキメラ抗IL−8抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
本発明はまた、ヒト型化WS−4抗体を有効成分として含有する上記間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤を提供する。
【0022】
本発明はさらに、抗IL−8抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性肺損傷における低酸素血症の治療剤を提供する。
本発明では、間接的原因に起因する急性肺損傷が治療の対象となる。急性肺損傷とは、急性発症の経過をたどり、低酸素血症、胸部X線写真において両側びまん性の浸潤陰影を認め、これらの臨床所見が左房または肺毛細管高血圧に起因していないと考えられる疾患である。この疾患は、肺自体に発生する直接的原因と全身性に生ずる間接的原因に起因するものがあるが、それらはその発症機序において大きく異なっている。
【0023】
直接的原因に起因する急性肺損傷は、体外に通ずる側からの侵襲により発症が誘導される。直接的原因に分類される誤燕を例に挙げると、胃内容物を嘔吐し、何らかの原因で嘔吐物が気道に混入した場合、胃酸が直接的に気道粘膜、気道上皮細胞および肺胞上皮細胞等を傷害し、急性肺損傷を誘導する。一方、間接的原因に起因する急性肺損傷は、血管内からの攻撃により発症が誘導される。間接的原因に分類される敗血症を例に挙げると、エンドトキシンあるいはリポポリサッカライド(LPS)等が損傷を誘導する刺激因子となる。エンドトキシン等は血液中で炎症反応を惹起し、補体、凝固線溶系の活性化、サイトカイン産生等を誘導する。これらの二次的な反応が加わって、発症が誘導される。
【0024】
【発明の実施の形態】
1. 抗IL−8抗体
本発明で使用される抗IL−8抗体は、敗血症症候群、胸郭外の重症な外傷、救急蘇生時の過剰輸液、人工心肺バイパス術などの間接的原因に起因する急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群の治療効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。
【0025】
本発明で使用される抗IL−8抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL−8抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生される抗体、および、抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生される組換え型抗体がある。本発明で使用される抗IL−8抗体はIL−8と結合することにより、好中球等に発現されているIL−8レセプターへの結合を阻害してIL−8のシグナル伝達を遮断し、IL−8の生物学的活性を阻害する抗体である。
【0026】
このような抗体としては、WS−4抗体(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods (1992) 149, 227-235)やDM/C7抗体(Mulligan, M. S. et al., J. Immunol. (1993) 150, 5585-5595)、Pep−1抗体およびPep−3抗体(国際特許出願公開番号WO 92/04372 )または6G4.2.5抗体およびA5.12.14抗体(国際特許出願公開番号WO 95/23865 ;Boylan, A.M. et al., J. Clin. Invest. (1992) 89, 1257-1267)等が挙げられる。これらのうちで、特に好ましい抗体としてWS−4抗体が挙げられる。
【0027】
なお、WS−4抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、Mouse hybridoma WS-4として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、1996年4月17日に、FERM BP−5507としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
2. ハイブリドーマに産生される抗体
モノクローナル抗体は、基本的には公知技術を使用し、以下のようにしてハイブリドーマを作製して得ることができる。すなわち、IL−8を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0028】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるIL−8は、ヒトIL−8については、Matsushima, K. et al., J. Exp. Med. (1988) 167, 1883-1893 に、ウサギIL−8についてはHarada, A. et al., Int. Immunol. (1993) 5, 681-690に、イヌIL−8についてはIshikawa, J. et al., Gene (1993) 131, 305-306 に、ヒツジIL−8についてはSeow, H.F. et al., Immunol. Cell Biol. (1994) 72, 398-405 に、サルIL−8についてはVillinger, F. et al., J. Immunol. (1995) 155, 3946-3954 に、モルモットIL−8については Yoshimura, T. and Johnson, D. G., J. Immunol . (1993) 151, 6225-6236に、ブタIL−8についてはGoodman, R.B. et al., Biochemistry (1992) 31, 10483-10490 に開示された、それぞれのIL−8遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0029】
ヒトIL−8は、種々の細胞で産生され、N末端において異なるプロセシングを受けることが報告されている(Leonard, E. J. et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. (1990) 2, 479-486)。これまでに、79,77,72,71,70および69のアミノ酸残基数を有するヒトIL−8が知られているが、本発明で使用される抗IL−8抗体取得のための抗原として使用され得る限りそのアミノ酸残基数を問わない。
【0030】
IL−8の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または、培養上清中から目的のIL−8蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL−8蛋白質を感作抗原として用いればよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えば、サルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
【0031】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
【0032】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認した後に、哺乳動物からリンパ節細胞または脾細胞等の免疫細胞が取り出され、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞としては、既に公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney, J. F. et al., J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550 )、P3x63Ag8U.1 (Yelton, D. E. et al., Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7)、NS-1(Kohler, G. and Milstein, C., Eur. J. Immunol. (1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies, D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. and Scheidegger, D., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S., J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323 )、R210(Galfre, G.et al., Nature (1979) 277, 131-133)等が好適に使用される。
【0033】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46 )等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0034】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0035】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000−6000程度のPEG溶液を通常、30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0036】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
【0037】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでIL−8に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、IL−8への結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特公平1-59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるIL−8を免疫して抗IL−8抗体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いてIL−8に対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 92/03918 、WO 93/12227 、WO 94/02602 、WO 94/25585 、WO 96/33735 およびWO 96/34096 参照)。
【0038】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に移植して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0039】
ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いてもよい。
3. 組換え型抗体
モノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体として得ることができる。例えば、組換え型抗体は、抗体遺伝子をハイブリドーマまたは抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明には、この組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
【0040】
具体的には、抗IL−8抗体を産生するハイブリドーマから、抗IL−8抗体の可変領域(V領域)をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia )等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia )を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0041】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。
cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech)およびポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction ;PCR )を用いた5’−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することができる。
【0042】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。
【0043】
目的とする抗IL−8抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体V 領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを既に含む発現ベクターに組み込んでもよい。抗体C領域としては、V領域と同じ動物種由来の抗体C領域を用いてもよいし、V領域と異なる動物種由来の抗体C領域を用いてもよい。
【0044】
本発明で使用される抗IL−8抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主細胞を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523参照)。
【0045】
4. 改変抗体
本発明で使用される組換え型抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として遺伝子工学的手法を用いて作製した改変抗体を使用することができる。改変抗体はヒト抗体C領域を有し、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0046】
キメラ抗体は、前記のようにして得た、ヒト抗体以外の抗体V 領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0047】
なお、キメラWS−4抗体のL鎖またはH鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-chWS4L-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-chWS4H-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、1994年7月12日に、各々FERM BP−4739およびFERM BP−4740としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0048】
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(complementarity determining region;CDR )をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。
【0049】
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部で互いにオーバーラップする部分を有する数本のオリゴヌクレオチドに分割して合成し、PCR法により一本に統合したDNAに合成する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。
【0050】
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、ヒト型化抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように抗体V領域のFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato, K. et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856 )。
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化WS−4抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。ヒト型化WS−4抗体は、マウス由来のWS−4抗体のCDRを、L鎖についてはヒト抗体REIのFRと、H鎖についてはヒト抗体VDH26のFR1−3およびヒト抗体4B4のFR4と連結し、抗原結合活性を有するようにFRのアミノ酸残基を一部置換したものである。
なお、ヒト型化WS−4抗体のL鎖またはH鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、1994年7月12日に、各々FERM BP−4738およびFERM BP−4741としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0051】
本発明で使用される抗IL−8抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主細胞を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523参照)。
【0052】
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のV領域とヒト抗体由来のC領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のCDRとヒト抗体由来のFRおよびC領域からなり、ヒト以外の哺乳動物に由来するアミノ酸配列が最小限度に減少しているため、ヒト体内における抗原性が低下し、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
【0053】
使用されるヒト抗体C領域としては、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。例えば、抗体のサブクラスをIgG4に選択する場合、IgG4のヒンジ領域の一部のアミノ酸配列Cys-Pro-Ser-Cys-Pro をIgG1のヒンジ領域のアミノ酸配列Cys-Pro-Pro-Cys-Pro に変換する事により、IgG4の構造的不安定性を解消できる(Angal, S. et al., Mol. Immunol. (1993) 30, 105-108)。
【0054】
5. 抗体断片および抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、IL−8に結合し、IL−8の活性を阻害するかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab,F(ab’)2,FvまたはH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976;Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ;Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515;Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663;Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ;Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137 参照)。
【0055】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0056】
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖または、H鎖V領域をコードるDNA、およびL鎖または、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0057】
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体断片も包含される。
【0058】
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗IL−8抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0059】
6. 組換え型抗体、改変抗体、または抗体断片の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現させる抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAを含む発現ベクターにて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
【0060】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
【0061】
例えば、SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulligan, R. C. らの方法(Nature (1979) 277, 108-114)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima, S. らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Ward, E. S. らの方法(Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6 , 2422-2427 )に、またaraBプロモーターを使用する場合、Better, M.らの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
【0062】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al., J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO 96/30394参照)。
【0063】
複製起源としては、SV 40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来の複製起源を用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0064】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができ、抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。
in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0065】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO,COS,ミエローマ、BHK(baby hamster kidney )、HeLa,Vero、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9,sf21,Tn5が知られている。植物細胞としては、例えば、ニコティアナ(Nicotiana )属、詳しくは、ニコティアナ タバカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、(1)酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、詳しくは、サッカロミセス セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは(2)糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、詳しくは、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger )が知られている。
【0066】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、哺乳類細胞用の培養液として、DMEM,MEM,RPMI1640,IMDM等を使用することができる。その際牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移植することにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
【0067】
in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Glaser, V., SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
【0068】
また、昆虫としては、カイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム チューメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens )のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばニコティアナ タバカム(Nicotiana tabacum )に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Ma, J. K. et al., Eur.J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
【0069】
これらの動物または植物に上記のように抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。
上述のようにin vitroまたはin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体H鎖またはL鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよい。あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523参照)。
【0070】
7. 抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインG カラムが挙げられる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D 、POROS 、Sepharose F.F.(Pharmacia )等が挙げられる。アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。更に、これらのクロマトグラフィーはHPLC,FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0071】
8. 抗体の濃度測定
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay ;ELISA )等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBSで適当に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、種およびサブクラスにより吸光係数は異なるが、ヒト抗体の場合1mg/mlを1.4ODとして算出する。また、ELISAによる場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体100μl を96穴プレート(Nunc)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは濃度標準品として既知の濃度のヒトIgG100μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG抗体100μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad )を用いて405nmでの吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を濃度標準ヒトIgGの吸光度より算出する。
【0072】
また、抗体の濃度測定には、BIAcore (Pharmacia)を使用することができる。
9. 抗体の活性の確認
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada, A. et al., Int. Immunol. (1993) 5, 681-690)の測定には公知の手段を使用することができる。
【0073】
本発明で使用される抗IL−8抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA,EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。
例えば、ELISAを用いる場合、IL−8に対するポリクローナル抗体を固相化した96穴プレートにIL−8を添加し、次いで目的の抗IL−8抗体を含む試料、例えば、抗IL−8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した、目的の抗IL−8抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
【0074】
本発明で使用される抗IL−8抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常のCell ELISA、あるいは、リガンドレセプター結合アッセイを用いることができる。
例えば、Cell ELISA法の場合、IL−8レセプターを発現する血液細胞あるいは癌細胞、例えば、好中球を96穴プレートで培養して接着させ、パラホルムアルデヒドなどで固定化する。あるいは、IL−8レセプターを発現する細胞の膜分画を調製して固相化した96穴プレートを作製する。これに、目的の抗IL−8抗体を含む試料、例えば、抗IL−8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体と、放射性同位元素、例えば、125I等で標識したIL−8を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、放射活性を測定することでIL−8レセプターに結合したIL−8量を測定でき、抗IL−8抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を評価することができる。
【0075】
例えば、細胞上のIL−8レセプターに対するIL−8の結合阻害アッセイには、IL−8レセプターを発現する血液細胞あるいは癌細胞、例えば好中球を遠心分離等の手段で分離した後、細胞懸濁液として調製する。放射性同位元素、例えば、 125I等で標識したIL−8の溶液、あるいは非標識のIL−8と標識IL−8の混合溶液と、濃度調製した抗IL−8抗体を含む溶液を細胞懸濁液に添加する。一定時間の後、細胞を分離し、細胞上に結合した標識IL−8の放射活性を測定すればよい。
【0076】
また、本発明で使用される抗IL−8抗体の好中球遊走(ケモタキシス;chemotaxis)に対する阻害能を測定する方法として、公知の通常知られている方法、例えば、Grob, P.M. らの方法(J. Biol. Chem. (1990) 265, 8311-8316)を用いることができる。
具体的には、市販されているケモタキシスチャンバーを用い、抗IL−8抗体を培養液、例えば、RPMI1640,DMEM,MEM,IMDM等で希釈した後、IL−8を加え、これをフィルターで仕切られたチャンバー下層に分注する。次いで、調製した細胞懸濁液、例えば好中球懸濁液をチャンバー上層に添加し、一定時間放置する。遊走する細胞はチャンバーに装着されたフィルター下面に付着するので、その細胞の数を染色液あるいは蛍光抗体等を用いた方法で測定すればよい。また、顕微鏡下での肉眼による判定や計測器を用いた自動測定も可能である。
【0077】
10. 投与方法および製剤
本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は、非経口的に、例えば、点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、気管内投与、ネブライザーによる吸入等により全身あるいは局部的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は、病気に既に悩まされる患者に、病気およびその合併症の症状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。
【0078】
例えば、有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.01mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり5−2000mgの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗IL−8抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、投与時期としては、敗血症症候群、胸郭外の重症な外傷、救急蘇生時の過剰輸液、人工心肺バイパス術などの間接的原因に起因する急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群が生じてから投与してもよいし、あるいは、敗血症症候群、胸郭外の重症な外傷、救急蘇生時の過剰輸液、人工心肺バイパス術により急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群の発症が予測される時に予防的に投与してもよい。
【0079】
また、投与期間は患者の年齢、症状により適宜選択することができる。
本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, 米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0080】
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
【0081】
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。
例えば、注射用剤として使用する場合、精製された抗IL−8抗体を溶剤、例えば、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、それに、吸着防止剤、例えば、Tween 80,Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。または、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【0082】
本発明では、間接的原因に起因する急性肺損傷が治療の対象となる。急性肺損傷とは、急性発症の経過をたどり、低酸素血症、胸部X線写真において両側びまん性の浸潤陰影が認められ、これらの臨床所見が左房または肺毛細管高血圧に起因していないと考えられる疾患である。低酸素血症の具体的な程度としては、呼吸機能の指標であるPaO2/FIO2値が300mmHg以下で定義されるが、低酸素血症の程度がより重篤でPaO2/FIO2値が200mmHg以下の急性肺損傷は急性呼吸促迫症候群あるいは成人呼吸促迫症候群と診断される。
【0083】
これらの疾患を誘導する原因には肺自体に発生して肺を直接的に傷害する直接的原因と全身性に生じて間接的に肺を傷害する間接的原因に大別され、それらはその発症機序において大きく異なっている。直接的原因としては誤嚥、びまん性の呼吸器感染症、溺水、刺激性ガス吸入、肺挫傷が分類される。間接的原因としては、敗血症症候群、胸郭外の重症な外傷、救急蘇生時の過剰輸液ならびに人工心肺バイパス術後が分類される。
【0084】
原因疾患の中で頻度が多く注目されているのは、間接的原因のひとつであるグラム陰性菌による敗血症で、菌体およびエンドトキシンが刺激物質として作用することが想定されている。菌体およびエンドトキシンは血液中で炎症反応を惹起し、二次的な反応が加わって、発症が誘導される。
後述の実施例に示したように上記疾患の実験系として、死菌体であるOK−432とエンドトキシンにより急性肺損傷を惹起して、低酸素血症と肺組織での血管透過性を亢進させた。本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は、動脈血酸素分圧の低下、肺組織での血管透過性亢進を抑制し、また生存率を向上させた。
【0085】
したがって、本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は間接的原因に起因する急性肺損傷治療剤として有用である。また、本発明の抗IL−8抗体を有効成分として含有する治療剤は、間接的原因に起因する急性肺損傷における低酸素血症に有用である。
【0086】
【実施例】
以下、実施例、参考例および実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1. ヒトIL−8に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
ヒトIL−8を常法によりBALB/cマウスに免疫し、免疫が成立したマウスより脾細胞を採取した。ポリエチレングリコールを使用する常法によりこの脾細胞をマウス骨髄腫細胞P3X63Ag8.653と融合させ、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製した。ヒトIL−8に対する結合活性を指標としてスクリーニングを行った結果、ハイブリドーマ細胞株WS−4を得た。また、ハイブリドーマWS−4が産生する抗体は、ヒトIL−8の好中球への結合を阻害し中和活性を有していた。(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods (1992) 149, 227-235 )。
【0087】
ハイブリドーマWS−4が産生する抗体のH鎖およびL鎖のアイソタイプを、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを用いて調べた。その結果、ハイブリドーマWS−4が産生する抗体は、マウスκ型L鎖およびマウスγ1型H鎖を有することが明らかになった。
なお、ハイブリドーマ細胞株WS−4は、Mouse hybridoma WS-4として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成8年4月17日に、FERM BP−5507としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0088】
参考例2. ヒトIL−8に対するヒト型化抗体の作製
ヒト型化WS−4抗体を国際特許出願公開番号WO96/02576に記載の方法により作製した。
参考例1で作製されたハイブリドーマWS−4から、常法により全RNAを調製し、これより一本鎖cDNAを合成した。PCR法により、マウスWS−4抗体のH鎖ならびにL鎖のV領域をコードするDNAを増幅した。PCR法に使用したプライマーは、Jones, S. T. and Bendig, M. M., Bio/Technology (1991) 9, 88-89に記載されているプライマーを用いた。PCR法で増幅したDNA断片を精製し、マウスWS−4抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含むDNA断片およびマウスWS−4抗体H鎖V領域をコードする遺伝子を含むDNA断片を単離した。これらのDNA断片を各々プラスミドpUC系クローニングベクターに連結し、大腸菌コンピテント細胞に導入して大腸菌形質転換体を得た。
【0089】
この形質転換体を常法により培養し、得られた菌体から上記DNA断片を含むプラスミドを精製した。プラスミド中のV領域をコードするDNAの塩基配列を常法に従って決定し、そのアミノ酸配列から各々のV領域のCDRを特定した。
キメラWS−4抗体を発現するベクターを作製するため、マウスWS−4抗体のL鎖およびH鎖のV領域をコードするc DNAを、予めヒトC領域をコードするDNAを連結してあるHEFベクターにそれぞれ別に挿入した。
【0090】
ヒト型化WS−4抗体を作製するために、CDR移植法による遺伝子工学的手法を用いてマウスWS−4抗体のV領域CDRをヒト抗体へ移植した。適切な抗原結合部位を形成させるため、CDRを移植した抗体のV領域のFRのアミノ酸を一部置換する為のDNA配列の置換をおこなった。
このようにして作製したヒト型化WS−4抗体のL鎖およびH鎖のV領域を、抗体として哺乳類細胞で発現させるために、各々をコードするDNAをHEFベクターに別々に挿入し、ヒト型化WS−4抗体のL鎖またはH鎖を発現するベクターを作製した。
【0091】
これら二つの発現ベクターをCOS細胞に同時に挿入することにより、ヒト型化WS−4抗体を産生する細胞株を樹立した。この細胞株を培養して得られたヒト型化WS−4抗体のIL−8への結合能およびIL−8中和能を、各々ELISAおよびIL−8/好中球結合阻害試験にて調べた。その結果、ヒト型化WS−4抗体は、マウスWS−4抗体と同程度に、ヒトIL−8に結合してIL−8の好中球への結合を阻害することが判明した。
【0092】
なお、ヒト型化WS−4抗体のL鎖およびH鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成6年7月12日に、各々FERM BP−4738およびFERM BP−4741としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0093】
実施例1.
一群N=8の日本白色種ウサギ(雌、体重約2.5kg、購入先:三共ラボサービス)に1羽あたりケタラール150mgを筋肉内注射し、並びにネンブタール40mgを耳静脈より注射して麻酔した。麻酔下でウサギを仰臥位に固定し、ウサギの気管内にサーフロー留置針20G(テルモ)を経皮的に穿刺して外筒を留置した。このサーフロー留置針の外筒にボルヒール調整器セット(二液混合セット3.5ml、ニプロ医工)のフォークコネクターの噴出孔を接続した。
【0094】
フォークコネクターの2入口のうちの1口をエクステンションチューブにてMERA HFOベンチレーター(泉工医科工業株式会社)の出口に接続した。フォークコネクターの別の入口には、生理的食塩水にて濃度2.5KE/mlに懸濁したOK−432懸濁液(中外製薬)を1羽あたり2mlの量で2.5mlシンリンジに取り接続した。MERA HFOベンチレーターを圧力1.0 kgt/cm2 、Frequency 12Hzに調節して圧縮空気を噴出しつつ、OK−432懸濁液をウサギの気道内に注入した。この操作によりOK−432懸濁液は霧状になり、かつ圧力を伴って肺内に比較的均等に注入される。
【0095】
このOK−432投与の20分前にヒトIL−8に対するマウスWS−4抗体2.5mgあるいはコントロール抗体としてWS−4抗体と同一のサブタイプのマウス抗酵母グルタチオン還元酵素抗体2.5mgを4mlの生理的食塩水にて希釈し、それぞれの抗体を耳静脈より注射した。
OK−432投与36時間後に、大腸菌O55B5由来のリポポリサッカライド(LPS)をリン酸緩衝液(PBS) に濃度3mg/mlに溶解し、投与量1mg/kg体重で耳静脈より注射した。このLPS投与の20分前にマウスWS−4抗体あるいはマウスコントロール抗体それぞれ2.5mgをOK−432投与時の抗体と同一の抗体を耳静脈より注射した。
【0096】
LPS投与後、大腿動脈から経時的に1mlの血液をヘパリン採血した。この血液を用いて動脈血酸素分圧(PaO2)ならびに動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)をRadiometer Copenhagenn(型式名:ABL3、ACID BASE LABORATORY)にて測定した。
1)間接的原因に起因する急性肺損傷モデルに対するWS−4抗体の延命効果
LPS投与30分後から、WS−4抗体投与群ならびにコントロール抗体投与群の各群とも死亡し始めたが、5時間後の生存率はWS−4抗体投与群で62.5%、コントロール抗体投与群では37.5%であり、コントロール抗体投与群に比較してWS−4抗体投与群の方が統計学的に有意に延命効果を示した。生存曲線を図1に示す。
2)間接的原因に起因する急性肺損傷モデルにおける動脈血液ガス分析値に対するWS−4抗体の効果
コントロール抗体投与群の死亡例(N=5)とWS−4抗体投与群の生存例(N=5)の血液ガス分析の結果を図2に示す。コントロール抗体投与群の死亡例のPaO2はLPS投与15分後から低下し、低下したまま死亡した。一方、WS−4抗体投与群の生存例のPaO2は正常値を維持して生存した。すなわち、今回用いたこの実験系は、エンドトキシン(LPS)を静脈内に注射したのち低酸素血漿に至った場合は死亡するというような、敗血症症候群に起因する急性肺損傷と同様の経過をたどった。
3)肺の湿潤/乾燥重量比
肺を切除して肺以外の余分な組織を除去し、湿重量を秤量した。その後、その肺を60℃にて24時間乾燥し、乾燥重量を測定した。そして、湿重量を乾燥重量で割って湿/乾燥重量比を算出した(図3)。
【0097】
その結果、コントロール抗体投与群の湿/乾燥重量比は5.67±0.72であったが、WS−4抗体投与群の湿/乾燥重量比は4.57±0.29であった。このことは、肺の乾燥重量は両群に差がないことから、WS−4抗体が肺の湿重量を抑制しており、肺における血管透過性亢進によって生じる肺水腫を抑制したことを示す。
4)気管支肺胞洗浄液中の蛋白質濃度
肺を切除後、10mlの生理食塩水にて3回洗浄して洗浄液を回収し、1500xgにて15分間遠心した。遠心上清を回収して、ウシ血清アルブミンを標準に測定キット(PIERCE社)にて蛋白質濃度を測定した(図4)。
【0098】
その結果、コントロール抗体投与群の蛋白質濃度は1670±551μg /mlであったが、WS−4抗体投与群の蛋白質濃度は1010±284μg /mlであった。このことは、WS−4抗体が、肺における血管透過性亢進によって生じる蛋白質漏出を抑制したことを示す。
以上のことから、WS−4抗体はエンドトキシン誘導の急性肺損傷モデルにおいて延命効果ならびに肺における血管透過性に対する抑制効果を示したことにより、WS−4抗体が敗血症症候群等の間接的原因に起因する急性肺損傷に有効な治療薬であることが示された。
【0099】
【発明の効果】
抗IL−8抗体の投与によりエンドトキシン誘導の急性肺損傷が抑制された。この事実は、抗IL−8抗体が間接的原因に起因する急性肺損傷の治療剤として、および間接的原因に起因する急性肺損傷における低酸素血症治療剤として有用であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は間接的原因に起因する急性肺損傷モデルに対するWS−4抗体の延命効果をコントロール抗体と比較した生存曲線を示すグラフである。
【図2】図2は間接的原因に起因する急性肺損傷モデルにおける、WS−4抗体投与群の生存例(N=5)とコントロール抗体投与群の死亡例(N=5)の動脈血液ガス分析値の経時的変化の比較を示すグラフである。
【図3】図3は、間接的原因に起因する急性肺損傷モデルにおける、肺の湿/乾燥重量比に対するWS−4抗体の効果をコントロール抗体と比較して示すグラフである。
【図4】図4は、間接的原因に起因する急性肺損傷モデルにおける、気管支肺胞洗浄液中の蛋白濃度に対するWS−4抗体の効果をコントロール抗体と比較して示すグラフである。

Claims (12)

  1. ヒトIL-8モノクローナル抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性肺損傷治療剤。
  2. 急性肺損傷が急性呼吸促迫症候群であることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
  3. 急性肺損傷が成人呼吸促迫症候群であることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
  4. 間接的原因が敗血症症候群であることを特徴とする請求項1、2および3のいずれか1項に記載の治療剤。
  5. 間接的原因が胸郭外の重症な外傷であることを特徴とする請求項1、2および3のいずれか1項に記載の治療剤。
  6. 間接的原因が救急蘇生時の過剰輸液であることを特徴とする請求項1、2および3のいずれか1項に記載の治療剤。
  7. 間接的原因が人工心肺バイパス術であることを特徴とする請求項1,2および3のいずれか1項に記載の治療剤。
  8. ヒトIL-8モノクローナル抗体がWS-4抗体であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の治療剤。
  9. 抗IL−8抗体がヒト抗体定常領域を有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の治療剤。
  10. 抗IL−8抗体がヒト型化またはキメラ化された抗体であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の治療剤。
  11. 抗IL-8抗体がヒト型化WS-4抗体であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の治療剤。
  12. 抗IL-8抗体を有効成分として含有する、間接的原因に起因する急性肺損傷における低酸素血症治療剤。
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