JP4852697B2 - 自然免疫阻害剤 - Google Patents
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Description
本発明は、シクロペンタンジオール誘導体を有効成分とする自然免疫阻害剤、特に、抗昆虫剤に関する。
農作物の病気が拡散する理由の一つとして、媒介昆虫の存在が挙げられる。農作物の病気に対して免疫を持つ昆虫を媒介とし、病因であるウイルス等が周囲の農作物に急速に伝播し、病気による農作物の被害が拡大するのである。
これまで農薬としては、害虫を防除する殺虫剤をはじめ殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤、誘引剤、展着剤、天敵、微生物剤などが用いられてきた(非特許文献1参照)。
しかしながら、農作物の病気が一度発生した後にその拡散を有効に防止しうる薬剤又は方法はこれまでに知られていなかった。
また、免疫系は病原体(細菌やウィルスなど)の侵入を察知し、排除する生体防御システムである。その中で自然免疫系は、基本的に生物がもつ異物や病原体に対する非特異的な防御システムであり、獲得免疫系を持たない昆虫にとっては唯一の防御機構である。
本発明者は、上記課題を解決するため、農作物の病気を媒介する昆虫としショウジョウバエに着目し、遺伝子組み換えにより創出したショウジョウバエを使って自然免疫経路を阻害する物質のスクリーニング方法を開発し(特許文献1)、その探索を行った。その結果、ある特定のシクロペンタンジオール誘導体が、ショウジョウバエの自然免疫経路による内因性抗菌物質の発現を顕著に抑制することを見出し、このような昆虫の自然免疫系の阻害作用に起因する抗昆虫剤について、その一部を報告している。
本発明の目的は、昆虫の自然免疫経路を阻害し、農作物の病気を媒介する昆虫を駆除して昆虫による農作物の病気の拡散を防止することが出来る、より強力な化合物、及び該化合物を有効成分として含有する抗昆虫剤等を提供することである。
本発明により、昆虫の自然免疫経路を阻害し、農作物の病気を媒介する昆虫を駆除して昆虫による農作物の病気の拡散を防止するために有効な抗昆虫剤を提供することが可能となる。
構造式(I)で示される本発明の化合物は、シクロペンタンジオール誘導体物質である。式中、アルキル基としては、低級アルキル基、例えば、炭素数1〜6個の直鎖または分枝アルキル基が好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びナフチル基等を挙げることが出来る。Nをヘテロ原子として含む複素環としては、6員環、5員環等を挙げることが出来る。特に、構造式(I)において、XがNH2、又は、NHMeである化合物が好適である。
本発明化合物は、実施例に示すように、当業者に公知の任意の方法で合成することができる。
本発明における塩としては、硫酸、塩酸、燐酸などの鉱酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマール酸、マレイン酸、メタンスルホン酸などの有機酸との塩、トリメチルアミン、メチルアミンなどのアミンとの塩、またはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどの金属イオンとの塩などの、当業者に公知の任意の塩を挙げることが出来る。
本発明化合物をショウジョウバエ等の昆虫の内因性抗菌物質発現作用に基づく自然免疫阻害剤又は抗昆虫剤として用いる場合には、その使用目的、対象昆虫の種類、化合物の種類・量等の諸条件を考慮して、形態としては、例えば、水和剤、穎粒水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、水中懸濁剤・水中乳化剤等のフロアブル剤、カプセル剤、粉剤、粒剤、エアゾール剤等の当業者に公知の任意の形態をとることが出来る。
尚、このような各種剤に含まれる本発明化合物の量についても、その使用目的、駆除対象昆虫の種類、化合物の種類・量、形態等の諸条件を考慮して、当業者が適宜選択することが出来る。例えば、一例として、0.1mg〜100gの濃度範囲とすることができよう。
上記の各剤は当業者に公知の任意の方法で使用することが出来る。即ち、本発明の病害昆虫又は媒介昆虫の駆除方法は、駆除対象昆虫の種類や発生量、対象とする農作物・樹木等の種類や栽培形態・生育状態により異なるが、例えば、前記水和剤・穎粒水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、水中懸濁剤・水中乳化剤等のフロアブル剤、カプセル剤では、これらを水で希釈し、農作物、樹木等に散布することによって実施される。また、粉剤、粒剤、エアゾール剤では、製剤の状態で散布等することも可能である。
本発明化合物を含有する抗昆虫剤を予め農作物に散布しておくと、農作物の病気が発生しても免疫機能の低下した昆虫は病気に感染し、健康な農作物に病原菌等を伝播することなく死滅し、被害の発生を最小限に抑えることができる。また、農作物に被害を与える病害昆虫は免疫機能が低下しているため通常よりも少量の殺虫剤によって容易に駆除できる。
本発明方法において、各種剤の散布量・間隔、時期等の諸条件は、農作物の種類や栽培形態・生育状態、駆除対象である昆虫の種類、化合物の種類・量、形態等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。
以下の試験例1に示されたショウジョウバエの内因性抗菌物質ディプテリシン発現阻害活性試験は、特許文献1に記載された方法であって、Imd経路と呼ばれる、哺乳類等の高等生物まで共通する自然免疫系に特異的なスクリーニング方法である。従って、本発明化合物又は本発明方法による駆除の態様となり得る病害昆虫又は媒介昆虫としては、例えば、イネを食害するウンカ、野菜・果樹等に被害を与えるアブラムシ等の当業者に公知の農作物に被害を与える任意の病害昆虫が含まれるものである。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1:本発明化合物の製造(1)
氷浴下、3-Cyclopentene-1-carboxylic acid (17.2 g) をアセトニトリル (160 mL) に溶かし、1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (25.5 mL) および 1-bromobutane (18.2 mL) を加えて撹拌した。4時間後、反応液を1M 塩酸 (400 mL) に注ぎ、酢酸エチル (500 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、飽和重曹水 (300 mL),飽和食塩水 (300 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、ヘキサン-酢酸エチル (49:1) で溶出した画分より、butyl 3-cyclopentene-1-carboxylate (12.7 g) を得た。
氷浴下、3-Cyclopentene-1-carboxylic acid (17.2 g) をアセトニトリル (160 mL) に溶かし、1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (25.5 mL) および 1-bromobutane (18.2 mL) を加えて撹拌した。4時間後、反応液を1M 塩酸 (400 mL) に注ぎ、酢酸エチル (500 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、飽和重曹水 (300 mL),飽和食塩水 (300 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、ヘキサン-酢酸エチル (49:1) で溶出した画分より、butyl 3-cyclopentene-1-carboxylate (12.7 g) を得た。
氷浴下、butyl 3-cyclopentene-1-carboxylate (7.49 g) を 水-アセトニトリル-アセトン (1:1:1) の混合溶媒に溶かし、四酸化オスミウム(4%溶液) (1.4 mL)、 4-methylmorpholine N-oxide (7.83 g) を加えて撹拌した。1時間後、反応液を亜硫酸ナトリウム水溶液 (50 mL) に注ぎ、酢酸エチル (50 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、飽和重曹水 (30 mL)及び飽和食塩水 (30 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。その残渣を 2,2-dimethoxypropane (73 mL) に溶かし、p-トルエンスルホン酸 (12.5 g) を加え、室温で撹拌した。1時間後、反応液を飽和重曹水 (50 mL) に注ぎ、酢酸エチル (50 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、飽和重曹水 (30 mL)、飽和食塩水 (30 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、ヘキサン-酢酸エチル (4:1) で溶出した画分より、butyl c-3,c-4-(dimethylmethylenedioxy)-r-1-cyclopentanecalboxylate (2.48 g) を得た。
氷浴下、butyl c-3,c-4-(dimethylmethylenedioxy)-r-1-cyclopentanecalboxylate (2.67 g) を塩化メチレン (33 mL) に溶かし、水素化ジイソブチルアルミニウム(1.0 Mトルエン溶液)(23.2 mL) を加えて撹拌した。1時間後、反応液にアセトン (1 mL) を加え、酒石酸カリウムナトリウム飽和溶液 (30 mL) に注ぎ、ジエチルエーテル (30 mL) で3回抽出した。エーテル層を全て合わせて、水 (30 mL)及び飽和食塩水 (30 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、ヘキサン-酢酸エチル (1:1) で溶出した画分より、c-3,c-4-(dimethylmethylenedioxy)-r-1-cyclopentanylmethanol (1.60 g) を得た。
c-3,c-4-(dimethylmethylenedioxy)-r-1-cyclopentanylmethanol (395 mg) を塩化メチレン (10 mL) に溶かし、ピリジニウムクロロクロメート (1.49 g) を加えて撹拌した。2時間後、反応液をジエチルエーテル (50 mL) に注ぎ、固形物を濾別した後、濾液を飽和重曹水 (30 mL)及び飽和食塩水 (30 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をトルエン (10 mL) に溶かし、tert-butyl diethylphosphonoacetate (0.65 mL)、水素化ナトリウム(60% 鉱物油ペースト)(140 mg) を加えて撹拌した。1時間後、反応液を 1M 塩酸 (50 mL) に注ぎ、ジエチルエーテル (50 mL) で3回抽出した。エーテル層を全て合わせて、飽和食塩水 (30 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、ヘキサン-酢酸エチル (19:1) で溶出した画分より、tert-butyl (E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoate (397mg) を得た。
氷浴下,tert-Butyl (E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoate (520 mg) を塩化メチレン (5 mL) およびトリフルオロ酢酸 (5 mL) に溶かし撹拌した。1時間後溶媒を留去し、得られた残渣を2,2-dimethoxypropane (2.5 mL) に溶かし、p-トルエンスルホン酸 (40 mg) を加え、室温で撹拌した。1時間後、反応液をそのままカラムクロマトグラフィに付し、クロロホルム-メタノール (24:1) で溶出した画分より、(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoic acid (185 mg) を得た。
氷浴下,(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoic acid (98 mg) をテトラヒドロフラン (2.5 mL) に溶かし、N-メチルモルホリン (60 μL), クロロギ酸イソブチル (70 μL) を順次加え撹拌した。30分後、28% アンモニア水 (90 μL) を加え、室温で撹拌した。3時間後、反応液を水 (5 mL) に注ぎ酢酸エチル (10 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、0.5M 塩酸 (5 mL)、水 (5 mL)、飽和食塩水 (5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、クロロホルム-メタノール (97:3) で溶出した画分より、(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenamide (69 mg) を得た。
氷浴下,(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenamide (43 mg) を 10% 塩化水素-メタノール溶液 (1 mL) に溶かし撹拌した。1時間後,溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、クロロホルム-メタノール (4:1) で溶出した画分より、以下の表1に示した本発明化合物であるTPS-17 (32 mg) を得た。TPS-17 は (E)-3-(c-3',c-4'-dihydroxy-r-1'-cyclopentanyl)propenamide である。この化合物 TPS-17 のスペクトルデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ6.80 (1H, dd, J = 15.4, 8.5 Hz), 5.88 (1H, dd, J = 15.4, 1.1 Hz), 3.97 (2H, m), 2.63 (1H, m), 2.11 (2H, ddd, J = 14.6, 8.5, 6.0 Hz), 1.57 (2H, ddd, J = 14.6, 8.5, 6.0 Hz); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 172.1, 154.0, 120.5, 74.3 (2C), 38.2, 37.8 (2C); HREIMS m/z 153.0788 [M-H2O]+ (153.0789 calculated for C8H11NO2)。
実施例1:本発明化合物の製造(2)
氷浴下、(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoic acid (61 mg) をテトラヒドロフラン (2 mL) に溶かし、N-メチルモルホリン (35 μL)、 クロロギ酸イソブチル (40 μL) を順次加え撹拌した。30分後、40% メチルアミン水溶液 (35 μL) を加え,室温で撹拌した。3時間後、反応液を水 (5 mL) に注ぎ酢酸エチル (10 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、0.5M 塩酸 (5 mL)、水 (5 mL)、飽和食塩水 (5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し,クロロホルム-メタノール (99:1) で溶出した画分より、(E)-N-methyl-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenamide (62 mg) を得た。
氷浴下、(E)-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenoic acid (61 mg) をテトラヒドロフラン (2 mL) に溶かし、N-メチルモルホリン (35 μL)、 クロロギ酸イソブチル (40 μL) を順次加え撹拌した。30分後、40% メチルアミン水溶液 (35 μL) を加え,室温で撹拌した。3時間後、反応液を水 (5 mL) に注ぎ酢酸エチル (10 mL) で3回抽出した。酢酸エチル層を全て合わせて、0.5M 塩酸 (5 mL)、水 (5 mL)、飽和食塩水 (5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し,クロロホルム-メタノール (99:1) で溶出した画分より、(E)-N-methyl-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenamide (62 mg) を得た。
氷浴下,(E)-N-methyl-3-[c-3',c-4'-(dimethylmethylenedioxy)-r-1'-cyclopentanyl]propenamide (41 mg) を 10% 塩化水素-メタノール溶液 (1 mL) に溶かし撹拌した。1時間後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、クロロホルム-メタノール (9:1) で溶出した画分より、以下の表1に示した本発明化合物であるTPS-19 (30 mg) を得た。TPS-19 は (E)-N-methyl-3-(c-3',c-4'-dihydroxy-r-1'-cyclopentanyl)propenamide である。この化合物 TPS-19 のスペクトルデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 6.66 (1H, dd, J = 15.4, 8.3 Hz), 5.73 (1H, d, J = 15.4 Hz), 3.87 (2H, m), 2.67 (3H, s), 2.52 (1H, m), 2.00 (2H, ddd, J = 14.2, 8.3, 5.7 Hz), 1.46 (2H, ddd, J = 14.2, 8.3, 5.7 Hz); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ169.9, 151.0, 121.6, 74.4 (2C), 38.4, 37.7 (2C), 26.7; HREIMS m/z 185.1042 [M]+ (185.1051 calculated for C9H15NO3)。
以上、本発明の代表的化合物の合成例を示したが、そのほかの化合物も同様な方法で合成することが出来る。
試験例1 ショウジョウバエの内因性抗菌物質ディプテリシン発現阻害活性(「Dpt-lacZ」)
(試験動物)
特許文献1に記載の方法でショウジョウバエの内因性抗菌物質(Diptericin)の転写制御領域にレポーター遺伝子lacZをつないだ遺伝子を導入したショウジョウバエを18℃あるいは25℃で飼育し、実験時に雌の3齢幼虫を選別して用いた。
(試験動物)
特許文献1に記載の方法でショウジョウバエの内因性抗菌物質(Diptericin)の転写制御領域にレポーター遺伝子lacZをつないだ遺伝子を導入したショウジョウバエを18℃あるいは25℃で飼育し、実験時に雌の3齢幼虫を選別して用いた。
(試験方法)
ショウジョウバエの幼虫を解剖することで内因性抗菌物質産生器官である脂肪体を露出させ、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)antibioticantimycotic(SIGMA社製)を含んだSchneider'sDrosophila培地中、25℃で12時間培養した。化合物を目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。陽対照として自然免疫活性化能を有するリポポリサッカライド(LPS)を精製水に溶解させ、最終濃度10mg/mLになるように培養培地に添加した。各試料につき6匹の幼虫を用いた。
ショウジョウバエの幼虫を解剖することで内因性抗菌物質産生器官である脂肪体を露出させ、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)antibioticantimycotic(SIGMA社製)を含んだSchneider'sDrosophila培地中、25℃で12時間培養した。化合物を目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。陽対照として自然免疫活性化能を有するリポポリサッカライド(LPS)を精製水に溶解させ、最終濃度10mg/mLになるように培養培地に添加した。各試料につき6匹の幼虫を用いた。
ディプテリシン遺伝子発現量の指標として、レポータータンパク質であるβ−ガラクトシダーゼをそれぞれの幼虫について定量し、その平均値を求めた。試料を全く添加していない時の平均値をO、陽対照の平均値を100とし、各濃度の本発明化合物を添加したときの自然免疫抑制作用を求めた。その結果を表1にIC50 (μg)の値で示す。
試験例2 ショウジョウバエ由来S2細胞を用いた毒性試験(S2 cell assay)
(試験方法)
ショウジョウバエ由来S2細胞を、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)Antibiotics-Antimycotic(GIBCO社製)を含んだSchneider's Drosophila medium中、25℃、24時間培養した。化合物は目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。その後MTT様試薬(生細胞数測定試薬 SF:nacalai tesque)を加え、直後の吸光度(0H)および25℃、3時間培養後の吸光度(3H)を測定した。各化合物につき6wellずつ実施した。3Hから0Hを差し引いた吸光度を細胞生存数とし、その平均値を求めた。細胞を蒔かずに培養培地のみの平均値を0、化合物を全く添加していない時の平均値100とし、各濃度の本発明化合物を添加したときの細胞生存率を求めた。その結果を表1にIC50 (μg)の値で示す。
(試験方法)
ショウジョウバエ由来S2細胞を、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)Antibiotics-Antimycotic(GIBCO社製)を含んだSchneider's Drosophila medium中、25℃、24時間培養した。化合物は目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。その後MTT様試薬(生細胞数測定試薬 SF:nacalai tesque)を加え、直後の吸光度(0H)および25℃、3時間培養後の吸光度(3H)を測定した。各化合物につき6wellずつ実施した。3Hから0Hを差し引いた吸光度を細胞生存数とし、その平均値を求めた。細胞を蒔かずに培養培地のみの平均値を0、化合物を全く添加していない時の平均値100とし、各濃度の本発明化合物を添加したときの細胞生存率を求めた。その結果を表1にIC50 (μg)の値で示す。
試験例3 熱刺激によるb-galactosidase発現阻害活性(感染防御以外の生体反応:hs-lacZ assay)
(試験動物)
熱刺激により遺伝子の誘導を可能にするheat shock promotor (hs) を利用し、最終的に試験例1Dpt-lacZと同様なb-galactosidaseを発現しうるhs-GAL4 / UAS-lacZ systemのショウジョウバエを用いた。18あるいは25℃で飼育し、実験時には3齢幼虫を選別して用いた。
(試験方法)
ショウジョウバエの幼虫を低温条件下(4℃)で解剖し、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)Antibiotics-Antimycotic(GIBCO社製)を含んだSchneider's Drosophila medium中、37℃、30分の熱刺激を加えた後、25℃で18時間培養した。化合物は目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。各化合物につき6匹の幼虫を用いた。感染防御以外の反応指標として、熱により誘導されたレポータータンパク質であるb-galactosidaseをそれぞれの幼虫について定量し、その平均値を求めた。既知の毒化合物であるT-2 toxin を 100 mM 添加した時の平均値を0、化合物を全く添加していない時の平均値100とし、各濃度の本発明化合物を添加したときのb-galactosidase発現阻害活性を求めた。その結果を表1にIC50 (μg)の値で示す。
(試験動物)
熱刺激により遺伝子の誘導を可能にするheat shock promotor (hs) を利用し、最終的に試験例1Dpt-lacZと同様なb-galactosidaseを発現しうるhs-GAL4 / UAS-lacZ systemのショウジョウバエを用いた。18あるいは25℃で飼育し、実験時には3齢幼虫を選別して用いた。
(試験方法)
ショウジョウバエの幼虫を低温条件下(4℃)で解剖し、20%(v/v)牛胎児血清、1%(v/v)Antibiotics-Antimycotic(GIBCO社製)を含んだSchneider's Drosophila medium中、37℃、30分の熱刺激を加えた後、25℃で18時間培養した。化合物は目的濃度になるようジメチルスルホキシドに溶解させ、培養培地に添加した。各化合物につき6匹の幼虫を用いた。感染防御以外の反応指標として、熱により誘導されたレポータータンパク質であるb-galactosidaseをそれぞれの幼虫について定量し、その平均値を求めた。既知の毒化合物であるT-2 toxin を 100 mM 添加した時の平均値を0、化合物を全く添加していない時の平均値100とし、各濃度の本発明化合物を添加したときのb-galactosidase発現阻害活性を求めた。その結果を表1にIC50 (μg)の値で示す。
以上の結果を各化合物の構造式と併せて表1にまとめて示す(尚、「TPS-14」は本発明の化合物ではない)。これらの結果から、本発明化合物は、ディプテリシン発現阻害活性(「Dpt-lacZ」)で示される昆虫感染防御反応を有意に阻害する(IC50が低い)一方で、ショウジョウバエS2細胞の生存及び感染防御以外の反応(hs-lacZ試験)には、実質的に影響を与えない(IC50: 50μgより大)ことが判明した。特に、TPS-17及びTPS-19で示される本発明化合物は、ディプテリシン発現阻害活性(「Dpt-lacZ」)を、夫々、IC50:3μg及びIC50:1μgで阻害することから、非常に優れた自然免疫阻害作用を有することがわかる。
抗昆虫剤の分野では、自然免疫経路の阻害は新しい作用機作である。本発明化合物は、特異性及び有効性に優れた自然免疫経路阻害物質は、昆虫の自然免疫系を阻害し、農作物の病気を媒介する昆虫を駆除して被害の拡散を防ぐという新しいタイプの抗昆虫剤としての開発が期待される。
Claims (10)
- アルキル基が炭素数1〜6個の直鎖または分枝アルキル基である、請求項1記載の化合物。
- アリール基がフェニル基である、請求項1記載の化合物。
- Nをヘテロ原子として含む複素環が6員環である、請求項1記載の化合物。
- XがNH2である、請求項1記載の化合物。
- XがNHMeである、請求項1記載の化合物。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物、その塩又はその水和物を有効成分として含有する自然免疫阻害剤。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物、その塩又はその水和物を有効成分として含有する抗昆虫剤。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物、その塩又はその水和物を有効成分として含有するショウジョウバエの駆除剤。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物、その塩又はその水和物を用いた病害昆虫又は媒介昆虫の駆除方法。
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