JP4851714B2 - Pbx依存性遺伝子調節を阻害するペプチド - Google Patents

Pbx依存性遺伝子調節を阻害するペプチド Download PDF

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Description

本発明は、PBX依存性転写調節を阻害する分子、特にHOXのPBXへの結合に影響するペプチド、及び例えば特定の癌を治療し、例えば培養増殖中の幹細胞の多分化能を維持するような、幹細胞の多分化能を維持するための、異常な細胞分割の低減を含む、いくつかの用途におけるそれらの使用に関する。
様々な転写因子が、胚形成及び成人幹細胞成熟中のタンパク質の発現の調節に関与している。ホメオボックス(HOX)遺伝子は、約60個のアミノ酸のホメオドメインをコード化する約180bpの高度保存ヌクレオチド配列を含有する。ホメオドメインは、DNA結合タンパク質ドメインであり、他の遺伝子中の標的配列に結合して、発生中にその発現を調節することができる。クラスター化Hox遺伝子は、重要な発生レギュレータであり、進化の過程において高度に保存される。これらがコード化するホメオティックHOXタンパク質は、60個のアミノ酸のホメオドメインを共有し、従属する下流遺伝子、例えば発生遺伝子の転写を調節することによって、体軸パターン形成を制御する転写因子として機能する。ショウジョウバエ及び他の昆虫では、2個の遺伝子複合体にてコード化される8個の異なるHox遺伝子があり、これに対して脊椎動物では、4個の複合体にて構成される39個の遺伝子がある。4個の遺伝子複合体は、文字A〜Dが割当てられている。遺伝子は、配列類似性に基づいて、13個の「パラログ」グループに分類できる。染色体上のパラログの順序は、4個の複合体に保存される。遺伝子名は、遺伝子複合体の文字名称をグループ番号と連結して得た、例えばHOXA1、HOXB4などである。
プレB細胞変換関連遺伝子(PBX)も、標的DNAに結合するためにHOXと協調的に相互作用することによって、発生中の遺伝子発現を制御する重要な調節タンパク質である(非特許文献1)。「エングレイルド」タンパク質もPBXに結合できる。PBX及びHOXは、HOX分子のペプタ−又はヘキサ−ペプチド領域を介して相互作用することが既知であり、高度に保存されている(非特許文献2,3)。ヘキサペプチドは、ホモドメインのN末端からリンカー領域によって分離される。一旦PBX及びHOXが相互に結合すると、これらは細胞の核に入り、標的DNAに結合して、その標的遺伝子の転写を抑制又は活性化する。
これらのタンパク質は胚形成に関与することが既知であるが、その正確な役割は解明されていない。HOXタンパク質の過剰発現又は過少発現は、分化プロセスの制御へのこれらのタンパク質の関与を示す、試験管内での各種の結果を引き起こす。しかしながら、PBXと、それと結合する補助因子との相互作用を摂動させる結果は、調査されていない。さらに、PBX:HOX結合アンタゴニストは、むしろ、関与するタンパク質結合パートナーの特異形に対して特異的であることが見出されている(非特許文献4)。その上、ホメオボックスとヘキサペプチドとの間のリンカー領域は、PBXとHOXとの間の協同的結合に必要であると考えられる(非特許文献3,4)。
Mann et al. , 1996, Trends Genet. , 12(7), p258-262 Phelan et al., 1995, Mol. Cell.BioI., 15(8), p3989-3997 Neuteboom et al.,1995, PNAS, 92, p9166-9170 Peltenburg & Murre, 1996, EMBO Journal, 15(13), p3385-3393
本発明者らは、今回、PBXが結合するHOXの領域を模倣し、その結合のアンタゴニストとして作用するペプチドを開発した。このペプチドは、HOXB−4のヘキサペプチド領域に基づいているが、交差反応を有することが見出されており(実施例2参照)、すべてのHOXタンパク質へのPBXの結合を低減させる。本発明は、このような包括的なPBX:HOX効果を有するペプチドの最初の報告である。その上、他のHOX相互作用ペプチドとは異なり、本発明のペプチドはリンカー領域を含有しない。
その結合パートナーへのPBXの結合を阻害することが、幹細胞に対する顕著及び有用な効果を有し、その効果がこれらの細胞の多分化能を維持されるようにすることも見出されている。逆の効果として、異常な細胞増殖が減少して、このような細胞増殖が発生する障害又は病状を防止又は治療することも見出されている。これらの発見は、有害な細胞の増殖は防止するが、所望の細胞は保護し、あるいは増殖させるという、重要な臨床用途を提供する。
したがって本発明は、アミノ酸配列
WMX
(式中、配列X〜Xは、少なくとも9個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここに記載の9個のアミノ酸位置のうちの1又はそれ以上の間に1個又は2個のアミノ酸残基が任意に割り込んでいてもよく;
はW、T、PE、KQI、VV、PQT、H、RI及び非存在から選択されるものであり;
は芳香族側鎖を有するアミノ酸であり;
はP又はDであり;
は塩基性側鎖を有するアミノ酸であり;
は帯電側鎖を有するアミノ酸であり;
は帯電側鎖を有するアミノ酸であり;
は塩基性側鎖を有するアミノ酸又はセリンである。)
を含むペプチドの、異常な細胞分割が発生する障害を治療又は防止するための医薬品の製造における使用を提供する。
1つの実施形態においては、ペプチドは細胞浸透部分をさらに含む。特に好ましいペプチドは、
WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWK、
WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWKK、及び
WYPWMKKHHR
である。
治療される障害は癌であることが好ましい。治療される細胞は、好ましくは、1又はそれ以上のHox遺伝子を発現する。
また本発明は、下記のものも提供する。
異常な細胞分割が発生する障害の治療又は防止において同時、連続又は分割使用するための医薬品の製造における、本発明のペプチド及び細胞毒性薬又は化学療法剤の使用。
細胞毒性薬又は化学療法剤の副作用を低減するための医薬品の製造における、本発明のペプチドの使用。
生体内での幹細胞個体数を維持又は増殖させるための医薬品の製造における、本発明のペプチドの使用。
ヒト又は動物における異常な細胞分割が発生する障害を治療する方法であって、前記ヒト又は動物に、治療上有効な量の本発明のペプチドを投与することを含む、前記方法。
生体外で幹細胞を維持又は増殖させる方法であって、前記幹細胞に本発明のペプチドを接触させることを含む、前記方法。このような方法はさらに、前記ペプチドの非存在下で前記細胞を培養するステップ、及び/又は前記幹細胞をそれらを必要とする患者に投与するステップを含んでいてもよい。このような方法によって維持又は増殖された幹細胞も、本発明の一態様を形成する。
幹細胞のレベル低下を引き起こす病状の治療又は防止のための医薬品の製造における、本発明の幹細胞の使用。
本発明のペプチド及び薬学的に許容し得る担体を含む薬学的組成物。
本発明は、HOXヘキサペプチド領域の分子ミミックに関する。今回、例えばPBXとその補助因子との間の相互作用を妨げることによってPBX依存性転写調節(例えば活性化又は阻止)を阻害する分子、好ましくはHOX、及びその標的DNA、例えばHOX及びPBXタンパク質の結合に影響する分子が、多大な利点、例えば異常な細胞分割の防止又は低減及び幹細胞の多分化能維持を提供できる下流効果を有することが示されている。
好ましいPBX調節剤はペプチドである。本明細書で言及する「ペプチド」は、100個未満のアミノ酸残基を有する分子であるが、好ましくは例えば50個未満、例えば長さ30個未満の残基、好ましくは長さ8〜25個の残基を有する分子である。
本発明の好ましいペプチドは、一般式(I)(配列番号:1):
−X−X−X−W−M−X−X−X−X−Y (I)
(式中、
配列X〜Xは、少なくとも9個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここに記載の9個のアミノ酸位置のうちの1又はそれ以上の間に1個又はそれ以上(好ましくは1個又は2個)のアミノ酸残基が任意に割り込んでいてもよく;
は、存在していても非存在でもよい、X(又は、Xが非存在のときはX)に結合した部分であり、好ましくは、X(又はX)の側鎖を介する場合を除き、X(又はX)の利用可能なアミノ基を介して結合しており、ここでYは、好ましくは任意に置換されている50個又はそれ以下のアミノ酸のペプチドであり;
は、存在していても非存在でもよい、Xに結合された部分であり、好ましくは、Xの側鎖を介する場合を除き、Xのカルボキシル基を介して結合しており、ここでYは、好ましくは任意に置換されている50個又はそれ以下のアミノ酸のペプチドであり;
は、存在していても非存在でもよい、1又はそれ以上のアミノ酸であり、好ましくはW、T、PE、KQI、VV、PQT、H又はRIであり;
は、芳香族側鎖を有するアミノ酸、好ましくはY、F又はWであり;
は、アミノ酸P又はDであり;
は、塩基性側鎖を有するアミノ酸、好ましくはK、R又はHであり;
は、帯電側鎖、好ましくは側鎖を有するアミノ酸、特に好ましくはK、R、E、H、D、N又はQであり;
は、帯電側鎖、好ましくは側鎖を有するアミノ酸、特に好ましくはK、R、E、H、D、N又はQであり;
は、塩基性側鎖を有するアミノ酸又はセリンであり、特に好ましくはH、S、R又はKである。)
又はその機能的に同等な誘導体、変異体若しくは断片を有するものである。
上述のように、Y及び/又はYはさらなる部分によって置換できる。このような部分は、ペプチドの機能、そのターゲティング若しくはその合成、捕捉若しくは識別、例えばラベル(例えばビオチン)、又は脂質分子を補助するために添加できる。
したがって、1つの実施形態においては、Y及び/又はYは非存在であるか、さらなるアミノ酸配列である。すなわち本発明のペプチドは、一般式(配列番号:2):
−X−X−W−M−X−X−X−X
を含むものであり、式中、X〜Xは上で定義したとおりである。
上の配列において、X〜Xはヘキサペプチド配列を形成する。
式Iの好ましいペプチドは、式Ia(配列番号:3):
を有するものであり、式中、Y、X及びYは本明細書において先に定義したとおりである。
特に好ましい式Iaは、配列(Ib)(配列番号:4):
特に好ましくは
WYPWMKKHHY(配列番号:5)
を有するものであり、式中、Y、X及びYは本明細書において先に定義したとおりである。
特に好ましいペプチドは、アミノ酸配列
WYPWMKKHH(配列番号:6)、若しくは
WYPWMKKHHR(配列番号:7)。
を有するものであるか、又は含むものである。
本発明のペプチドは細胞浸透部分を含み、ここで前記部分は、例えば標識又は結合部分によって、任意で置換されていてもよいペプチドであることが好ましい。
本明細書で使用される「細胞浸透部分」とは、それが結合された分子の細胞内への進入を促進する分子、構造又は分子の集合を指す。各種のこのような部分は当業界で周知であり、ペプチド、例えばペネトラチン、tat−由来タンパク質、細胞進入を可能にするペプチドシグナル配列、このようなペプチドシグナルを含むペプチドはもちろんのこと、合成及び/又はキメラ細胞浸透ペプチド、例えばトランスポルタン又はモデル両親媒性ペプチドを含む(Lindgren et al., 2000, TiPS,21, p99-103 and Derossi et al., 1998, Trends C. Biol., 8, p84-87)。細胞に進入できる非ペプチド分子又は物質も使用される。前記細胞浸透部分は、好ましくは、受容体とは独立した機構で作用する。本発明のペプチド等の分子が細胞に進入するのを可能にする、又は補助する物質が使用できる。この部分は、各種細胞タイプに進入することのできる一般的な作用物質であってもよいし、あるいは処理される特定の細胞タイプに対して特異的であるか又は標的化されているものであってもよい。
好ましい実施形態において、このような細胞浸透部分は、配列番号:1〜7のいずれかで定義されたようなペプチドのカルボキシ末端に見出されるであろう。細胞浸透部分は、このようなペプチドのカルボキシ末端に直接結合できる。式(I)、(Ia)又は(Ib)のペプチドにおいて、Yは細胞浸透部分であるか、又は細胞浸透部分を含む。細胞浸透部分はまた、一般式(I)のペプチドと会合することができ、例えばリポフェクション用リポソーム又はポリカチオン又はカチオン性脂質を使用することにより、前記ペプチドとの複合体を例えばカプセル化又は形成することができる。本明細書で使用される「会合する」とは、前記部分が、ある方法で、前記ペプチドに結合又は連結されていることを言う。
好ましい特徴において、前記細胞浸透部分は、ペネトラチン配列に基づくペプチドであり、以下の一般式II(配列番号:8):
QIKIWFQNRRMKWKK (II)
(式中、Xはアミノ酸R又はQである。)
を有するものであるか、又はその機能的に同等の誘導体、変異体若しくは断片である。
好ましくは、式II配列の変異体は、式II配列中の前記K残基の1個又はそれ以上がR残基によって置換され、式II配列中の前記R残基の1個又はそれ以上がK残基によって置換され、及び/又は式II配列中の前記I残基の1個又はそれ以上がL残基によって置換されたペプチドである。
すなわち、本発明の細胞浸透部分は、一般式:
QX1011WFQNX1213MX14WX1516(配列番号:9)
(式中、XはR又はQ又は非存在であり;
、X11はそれぞれ独立してI又はLであり;
10、X12、X13、X14、X15及びX16はそれぞれ独立してK又はRである。)
によって定義されるものであってもよい。
特に好ましくは、前記変異体は:
QIRIWFQNRRMKWKK(配列番号:10);
QIKIWFQNKRMKWKK(配列番号:11);
QIKIWFQNKKMKWKK(配列番号:12);
QIRIWFQNRKMKWKK(配列番号:13);
QIRIWFQNRRMRWKK(配列番号:14);
QIRIWFQNRRMKWRK(配列番号:15);
QIRIWFQNRRMKWKR(配列番号:16);
QIRIWFQNRRMKWRR(配列番号:17);
QIRIWFQNRRMKWKK(配列番号:18);
QIKIWFQNRRMKWRK(配列番号:19);
QIRIWFQNKRMKWRK(配列番号:20);
QIKLWFQNRRMKWKK(配列番号:21)、
QLKLWFQNRRMKWKK(配列番号:22);又は
QLRIWFQNRRMKWKK(配列番号:23)。
の形式を有するものである。
式IIのペプチドは、好ましくは、式I又はIaのペプチドのY2基を形成する。
本発明は特に、以下の配列:
WYPWMKKHHR(配列番号:7)
を有するペプチド、又はその機能的に同等の誘導体、変異体若しくは断片を有する。
本ペプチドは、配列番号:9で上に定義されたような細胞浸透部分にさらに結合できる。
特に好ましいペプチドは配列
WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号:24)、
又はその機能的に同等の誘導体、変異体若しくは断片を有する。
それらの「機能的に同等の」誘導体、変異体又は断片は、配列番号:7又は24のアミノ酸配列に関連する、又はそれに由来するペプチドを指し、ここでアミノ酸配列は、例えば修飾アミノ酸の使用によって、又は単数又は複数のアミノ酸(例えば1〜10個の、例えば1〜5個の、好ましくは1又は2個の残基)の置換、付加及び/又は欠失によって修飾されているが、それにもかかわらず、HOXミミックスとして作用し、それゆえHOXタンパク質及びPBXタンパク質(好ましくはPBX1又はPBX2)の間の相互作用に拮抗する限り、以下に述べるアッセイによって機能活性を保持している(実施例2を参照、ここでは、HOX:PBX結合を示す大型分子の架橋が観察されていない)。
配列番号:7及び24のペプチドの好ましい機能的に同等の誘導体、変異体又は断片は、配列番号:1の配列、又は配列番号:1においてYが配列番号:9であるか若しくは配列番号:9を含むものの配列、の範囲内に留まるかあるいはこれら配列を含むものである。
「付加」変異体の意味においては、ペプチド配列に融合された追加のタンパク質又はポリペプチドを含むアミノ及び/又はカルボキシル末端融合タンパク質又はポリペプチドが含まれる。
「置換」変異体は、好ましくは、1個又はそれ以上のアミノ酸の、同じ数のアミノ酸による置換及び保存置換を行うことを含む。
好ましい「誘導体」又は「変異体」は、天然型アミノ酸の代わりに、配列内に出現するアミノ酸がその構造類似体である誘導体又は変異体である。ペプチドの機能が著しく悪影響を受けないという条件で、配列内で使用されるアミノ酸を誘導体化又は修飾、例えば標識化することもできる。
上述の誘導体及び変異体は、ペプチドの合成時に、又は生成後修飾によって調製することができ、あるいはペプチドが、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、又は酵素開裂及び/又は核酸の連結の既知技法を用いた組換え形である場合に調製できる。
本発明による機能的に同等の「断片」は、切断によって、例えばN及び/又はC末端からのペプチドの除去によって調製できる。このような断片は、配列番号:1の配列(任意で配列番号:9と共に)に由来するか、又は上述の機能的に同等のペプチドに由来する。好ましくはこのような断片は長さが、6〜30残基、例えば6〜25残基又は10〜15残基である。
本発明による機能変異体は、好ましくは、配列番号:7又は24に対して70%を超える、例えば75又は80%の、好ましくは85%を超える、例えば90又は95%の相同性を持つアミノ酸配列を有するものである(以下で述べる試験により)。
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」は、以下のパラメータを用いてClustalW(Thompson et al., 1994, 上掲)を使用して評価した場合に提示された値を有する配列を指す:
ペアワイズアラインメントパラメータ法:accurate、マトリクス:PAM、ギャップ挿入時のペナルティ:10.00、ギャップ伸長時のペナルティ:0.10;
マルチプルアラインメントパラメータマトリクス:PAM、ギャップ挿入時のペナルティ:10.00、遅延の%同一性:30、ペナルティ付与ギャップエンド:オン、ギャップ分離距離:0、ネガティブマトリクス:なし、ギャップ伸長時のペナルティ:0.20、残基特異性ギャップペナルティ:オン、親水性ギャップペナルティ:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、単に誘導体化された同一の残基を含むものとする。
本発明のペプチドは、本明細書で定義されるように、化学的に修飾、例えば翻訳後修飾できる。例えばそれらはグリコシル化されるか、修飾アミノ酸残基を含む。それらは、アミド、及びポリペプチドとの結合物を含む、様々なポリペプチド誘導体の形で存在し得る。
化学修飾ペプチドは、官能性側基の反応によって化学的に誘導体化された1又はそれ以上の残基を有するペプチドも含む。このような誘導体化側基は、アミンヒドロクロライド、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基及びホルミル基を形成するために誘導体化されているものを含む。遊離カルボキシル基は、塩、メチル及びエチルエステル又は他の種類のエステル又はヒドラジドを形成するために誘導体化できる。遊離ヒドロキシル基は、O−アシル又はO−アルキル誘導体を形成するために誘導体化できる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N−im−ベンジルヒスチジンを形成するために誘導体化できる。
化学修飾ペプチドとして、20個の標準アミノ酸の天然型アミノ酸誘導体の1個又はそれ以上を含有するペプチドも含まれる。例えば4−ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換でき、ホモセリンはセリンと置換できる。
本発明のペプチドは、明確化する標識化を行うことができる。好適な標識は、放射性同位体、例えば125I、32P又は35S、蛍光標識、酵素標識、又は他のタンパク質標識、例えばビオチンを含む。
本発明に従って使用するための上述されるようなペプチドは、遺伝的又は化学的手段を含む、従来の合成方式によって調製できる。合成技法、例えば固相メリフィールド型合成は、純度、抗原特異性、望ましくない副生成物がないこと及び生成の容易さのために好ましい。固相ペプチド合成の好適な技法は、当業者に周知である(例えばMerrifield et al.,1969, Adv. Enzymol 32,221-96及びFields et al., 1990, Int. J. Peptide Protein Res, 35,161-214を参照)。化学合成は、末端アミノ酸の官能基の選択的脱保護及び選択的に保護されたアミノ酸残基のカップリング、最後にそれに続く官能基すべての完了した保護の循環反応セットを含む、当業界で周知の方法で実施できる。
合成は、溶液中で、又は固体支持材上で、当業界で既知の好適な固相を使用して実施できる。
代わりの実施形態において、本発明のペプチドは、それをコード化する、そしてそれを発現可能であるポリヌクレオチドの形から生成し、又は当該形で送達できる。このようなポリヌクレオチドは例えば、Sambrookら(1989, Molecular Cloning-a laboratory manual;Cold Spring Harbor Press)で述べられているような、当業界で周知の方法に従って合成できる。このようなポリヌクレオチドは、本発明のペプチドの生成において試験管内又は生体内で使用できる。したがって、このようなポリヌクレオチドは、癌又は本明細書で述べる別の疾患又は病状の治療のために、投与することができ、又は医薬品の製造において使用できる。
本発明は、このようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターも含む。このような発現ベクターは分子生物学界で規定どおりに構築され、例えばプラスミドDNA及び好適な開始剤、プロモータ、エンハンサ及び本発明のペプチドの発現を可能にするために、必要であり、正しい向きで配置される他の要素、例えばポリアデニル化シグナルを包含する。他の好適なベクターは、当業者にとっては明らかである。この点のさらなる例として、Sambrookらを参照する。
すなわち、ペプチドは、このようなベクターを細胞に送達し、ベクターからの転写が起こるようにすることによって供給できる。好ましくは本発明の、又はベクター内で本発明において使用するためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード化配列の発現を規定できる制御配列に作動的に結合され、すなわちこのベクターは発現ベクターである。「作動的に結合された」という用語は、述べられた成分がこれらにその意図した方法で機能できるようにする関係にある、近位を指す。制御配列、例えばコード化配列に「作動的に結合された」プロモータは、コード化配列の発現が制御配列と適合する条件下で実現されるような方法で配置される。
ベクターは、例えば、複製起点、任意で前記ポリヌクレオチドの発現のプロモータ及び任意でプロモータのレギュレータを備えたプラスミド、ウィルス又はファージベクターである。ベクターは、1個又はそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば細菌性プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子又は真菌性ベクターには耐性遺伝子を含有する。ベクターは試験管内で、例えばDNA又はRNAの生成に使用できるか、あるいは宿主細胞、例えば哺乳類宿主細胞を形質導入又は形質転換するために使用できる。ベクターは、例えばポリペプチドの生体内発現を可能にするために生体内で使用するのにも適している。
プロモータ及び他の発現調節シグナルは、発現が設計される宿主細胞と適合するように選択できる。例えば酵母プロモータは、S.cerevisiae GAL4及びADHプロモータ、S.pombe nmt1及びadhプロモータを含む。哺乳類プロモータ、例えばb−アクチンプロモータが使用できる。組織特異性プロモータが特に好ましい。哺乳類プロモータは、重金属、例えばカドミウムに反応して誘起できるメタロチオネインプロモータを含む。ウィルス性プロモータ、例えばSV40ラージT抗原プロモータ、アデノウィルスプロモータ、モロニーマウス白血病ウィルス長末端反復(MMLV LTR)、ラウス肉腫ウィルス(RSV) LTRプロモータ、SV40プロモータ、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)IEプロモータ、アデノウィルス、HSVプロモータ(例えばHSV IEプロモータ)、又はHPVプロモータ、特にHPV上流制御領域(URR)も使用できる。これらのプロモータはすべて、当業界で容易に入手できる。
本発明は、本発明のペプチドを発現するように修飾された細胞も含む。このような細胞は、過渡的な、又は好ましくは安定なより高等の真核細胞系、例えば哺乳類細胞又は昆虫細胞、より下等な真核細胞、例えば酵母又は原核細胞、例えば細菌細胞を含む。本発明のペプチドをコード化するベクターの挿入によって修飾できる細胞の詳細な例は、哺乳類HEK293T、CHO、HeLa及びCOS細胞を含む。好ましくは、選択された細胞系は、安定であるだけでなく、成熟グリコシル化及びポリペプチドの細胞表面発現も可能にする細胞系である。発現は、形質転換された卵母細胞において実現できる。好適なペプチドは、トランスジェニック非ヒト動物、好ましくはマウスの細胞にて発現される。本発明のペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明のペプチドは、アフリカツメガエル卵母細胞又はメラノフォアでも発現される。
本発明は、上で定義されたようなペプチドに向けられた、すなわちペプチド上に存在するエピトープに結合し、それゆえこのようなペプチドに選択的及び特異的に結合して、本発明の方法で使用できる抗体(モノクローナル又はポリクローナル)及びその抗原結合断片(例えばF(ab)2、Fab及びFv断片、すなわち抗原結合部位を含む、抗体の「可変」領域の断片)にまで及ぶ。
本発明のペプチドは上述のように、PBXとHOXとの間の相互作用を特異的に遮断することができる。実施例で示すように本発明のペプチドは、広範囲にわたる癌細胞タイプの増殖を遮断するか、又は一部の状況においてはこれらを完全に除去することが見出されている。いくつかの既知のHOX標的のダウンレギュレーションは、これらの変化を伴って観測される。したがって、以下でさらに詳細に述べるように、本発明のペプチドは、HOX遺伝子が発現される癌の治療において、他の癌治療中又は細胞培養物の生体外保護における細胞保護剤として、治療上の用途を有する。
上述のペプチドは、PBXとその結合パートナー、例えばHOXとの相互作用を遮断し、それによって好ましくはHOXのその標的DNAへの結合を防止するために使用できる。それゆえさらなる態様において、本発明は、PBXの結合パートナー、好ましくはHOXへの結合を低減又は阻害するための上述のペプチドの使用、あるいはHOXのその標的DNAへの結合を低減又は阻害するためのこのようなペプチドの使用を提供する。
「PBX」は、プレB細胞形質転換関連遺伝子のファミリーを指し、extradenticleホメオプロテインタンパク質及びショウジョウバエextradenticle遺伝子の同族体をコード化する遺伝子、例えば脊椎動物の遺伝子を含む。脊椎動物PBXタンパク質は、ホメオドメインを含有する転写因子である(Mann et al.,1996)。
「HOX」は、アミノ酸約60残基のホメオドメインをコード化する配列及びホメオドメインに対してヘキサペプチド配列N末端をコード化する配列を含有するホメオボックス遺伝子を指す(Morgan et al., 2000, TIG, 16{2}, p66-67及びKrumlauf, 1994, Cell, 78{2}, p191-201)。HOXタンパク質は、初期発生において前−後発生を定義するために作用する転写因子である。このようなPBX又はHOX遺伝子あるいは本明細書で述べるタンパク質は、多細胞動物に存在する同族体を含むが、好ましくは脊椎動物由来のもの、例えば哺乳類、特に好ましくはヒト由来のものである。
本明細書で言う「結合」は、可逆性又は非可逆性反応における少なくとも2個の部分の相互作用又は会合を指し、ここで前記結合は、特異的及び選択的であることが好ましい。
本明細書で使用される「結合パートナー」とは、その結合パートナーを認識し、特異的に(すなわち他の分子への結合に優先して)結合する分子を指す。このような結合対は、共に結合されたときに複合体を形成する。
「結合の低減」は、例えば、結合を実現するのに必要な結合対の1個の濃度上昇によって示されるような、結合の減少を指す。低減は、特異的結合のわずかな減少はもちろんのこと、完全な排除も含む。特異的結合の低減全体は、結合の防止と同等と見なされる。「阻害」は、ペプチドによる結合パートナーの結合の競合的干渉を指し、パートナーの結合を低減させる役割を果たす。低減するPBX依存性転写調節を防止又は低減する薬剤は驚くべきことに、本明細書で述べるような異常な細胞分割に対して有利な効果を持つことが見出されている。このような薬剤は、好ましくは、PBXのその結合パートナーへの結合、特に好ましくはPBXとHOXとの結合を防止、低減又は阻害する薬剤である(例えばHOXとPBXとの結合の相互作用のアンタゴニスト、例えば上述したペプチド)。しかしながら、好適な薬剤は、転写因子のその標的DNAへの結合に影響する、例えばPBX又はその結合パートナー、例えばHOXの標的DNAへの相互作用を遮断する薬剤も含む。特に好ましくは、このような薬剤は、HOX依存性転写調節を防止する。
理論に縛られるわけではないが、HOX:PBX結合の アンタゴニストは、複数の重要なHOX:PBXタンパク質結合パートナー間の相互作用を防止し、それゆえHOXタンパク質が、これらの結合する遺伝子に対して転写因子として作用できないと考えられる。これらの遺伝子の発現を調節できないことは、例えば過剰な細胞分割を低減又は防止するなどの、細胞に対して多くの効果を有する。同様にPBX依存性転写調節を防止また低減する、例えばHOXとその標的DNAとの相互作用を遮断する部分は、いずれも、同様の効果を有することが予想される。
したがって、さらなる態様においては、本発明は異常な細胞分割を低減する方法を提供し、その方法において、前記細胞は、PBX依存性転写調節を防止又は低減する、好ましくはPBXの結合パートナーへの、好ましくはHOX(好ましくはHOXB4、HOXB8又はHOXA9)への結合を防止又は低減する、あるいはHOXのその標的DNA、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、特に好ましくは本明細書で述べる(及び好ましくはHOX依存性転写調節を阻害する)ペプチドとの結合を低減又は防止する薬剤を投与される。
この目的に好適な薬剤は、HOX及び/又はPBXとこれらが結合するDNA標的との相互作用のアンタゴニスト、PBXとその結合パートナー、特にHOXタンパク質とのアンタゴニスト、あるいはHOX/PBX又は標的DNAの結合能力を阻害する、例えば関連部位を遮断する、あるいはHOX/PBX又は標的DNAの関連部位において構造上の変化を引き起こす、あるいは(例えばPBX/HOXの発現/発現生成物を修飾することによって実現できる)結合に利用できる分子の数を低減する薬剤を含む。しかしながら、好ましくは、アンタゴニストが利用される。好ましい薬剤は、上述のような本発明のペプチドである。
本明細書で述べる「異常な細胞分割」は、存在する条件の下で適当と見なされる正常レベルを超えた細胞分割を指す(すなわち異常細胞分割)。異常な細胞分割のマーカーは、当業者に周知であり、特定の細胞に効果が及んだかどうかを判断するために使用できる。例えば異常な細胞分割を受けている細胞は、異型細胞診断、例えば細胞多形態性、核多形態性、核過色素性又は核:細胞質比の上昇を示す。異常な細胞分割を受けている細胞は、細胞分化の失敗を示す。より詳細には、このような異常な細胞分割は、以下で述べるようなある病状又は疾患/障害、例えば癌に存在することがある。
細胞分割の「低減」は、細胞増殖の速度の低減を指す。好ましくは細胞増殖は、対照増殖(薬剤なし)と比較して、同じ期間にわたって0.5未満、特に好ましくは0.25未満、例えば0.1未満まで低減される(ここで対照増殖=1)。好ましい態様において、低減された細胞分割は、細胞増殖の低減に加えて、又は細胞増殖の低減の代わりに発生する、細胞死/生存度の欠如を含む。細胞死が発生したときに、好ましくは50%を超える既存細胞、好ましくは75%を超える細胞が破壊される。
実施例によって示されるように、薬剤の用量を増加させることによって、一部の悪性腫瘍を完全に除去することも可能である。したがって本発明のペプチドは、癌細胞の増殖を遅延させるか、癌細胞を完全に破壊するために使用できる。以下でさらに詳細に説明するように、好適な用量は、いくつかの因子に依存するであろうし、熟練した医師によって決定できる。
本明細書で述べる「PBX依存性転写調節」は、PBXが中枢の役割を果たす、例えば転写調節複合体における補助因子として作用するプロセスによる、遺伝子の転写の活性化又は抑制を指す。防止又は低減は、転写の程度の測定可能な変化を指す。防止は、転写における検出不能なレベルまでの低減と同等である。
「標的DNA」は、PBX、HOX又はこのようなタンパク質を含有する転写調節複合体の任意の数が結合する制御領域を含有する遺伝子を指す。本明細書で言及する「アンタゴニスト」は、結合対の1つの分子への構造上の類似性のために、結合対のもう一方の分子への結合に関してその分子と競合する、分子又は分子の複合体である。本発明で使用されるアンタゴニストは、これらの実体の間の結合を防止又は低減する、HOXとPBXとの相互作用のアンタゴニストを含む。好ましいアンタゴニストは、これらの分子がHOX又はPBXの結合部位に結合する、又はHOX又はPBXの結合部位と競合する、ペプチド、抗体、又は抗イディオタイプである。好ましくはアンタゴニストは、HOXのPBX結合部位を模倣することによって、PBX、例えば上述したようなペプチドに結合することによって競合する。
他のアンタゴニストは、HOXとその標的DNAとの結合を防止又は低減するアンタゴニストを含む。HOXタンパク質は、その標的DNAの6塩基対のコンセンサス配列NNATTAに結合することが既知であり、この結合のアンタゴニスト、例えばその配列に相補的であるオリゴヌクレオチド(例えば上述のコンセンサス配列の変異性に適応するために、2個の塩基での変異性を有するオリゴヌクレオチドのセット)は、上述の目的に好適な薬剤である。
このような方法は、試験管内、生体内又は生体外で実施できる。好適には、このような方法は、異常な細胞分割が発生する病状又は障害、例えば癌性又は非癌性増殖、例えば骨髄異形成症候群(MDS)を治療又は防止するために、生体内で前記薬剤、好ましくは上述したようなアンタゴニストのヒト又は非ヒト動物への投与によって実施される。言い換えれば、本発明は、異常な細胞分割が発生する病状又は障害の治療又は防止のための医薬品の製造における、上述したような薬剤、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、例えば上述したようなペプチドの使用を提供する。
本明細書で言及する「障害」又は「疾患」は、正常な生物と比較して症候性又は無症候性生物における基礎を成す病理的障害を指し、例えば感染あるいは後天性又は先天性遺伝的欠陥から発生する。
「病状」は、疾患、例えば体内での成分の存在、例えば毒素、薬物又は汚染物質によって発生していない、生物の心又は体の状態を指す。
本明細書で定義する「治療」は、治療前の症状と比較して、治療される病状又は障害の1又はそれ以上の症状を低減、緩和又は除去することを指す。治療は、治療される病状又は障害を有する、又はこれらに苦しんでいる患者の病状を改善することを含む。例えば影響を受ける症状は、所与のサンプル中の腫瘍サイズ又は癌細胞の数(あるいは以下で述べるように、幹細胞数の低減)である。
病状又は障害の「防止」は、前記病状又は障害の1又はそれ以上の症状の出現又は程度によって評価されるように、病状又は障害の開始を遅延又は防止すること、あるいはその重症度を低減することを指す。
方法を生体内で実施することの代案として、このような方法は、サンプル中で異常な細胞増殖を受けている細胞の細胞分割を低減する、又は除去するために、生体外で実施できる。適当な培養条件は、以下で述べる本発明の他の方法について述べられたとおりである。
このことは正常及び異常な細胞の両方を含有する細胞サンプルにおいて特に有用であり、異常な細胞は制御/除去され、正常細胞を含有するサンプルは続いての手順で使用される、例えばドナーの体内に戻される。このことは例えば、患者の血液サンプル、例えば白血病細胞から異常な造血性血液細胞を除去するのに有用であり、次に残りの細胞はその患者の体内に戻される。
したがって、なおさらなる態様において、本発明は、サンプルにおける細胞中の異常な細胞分割を低減する(好ましくは増殖を低減する、好ましくは癌細胞の死を含み、それゆえ癌細胞の数を低減させる)方法を提供し、その方法では、上述した薬剤が前記サンプルに投与される。異常な細胞分割を特徴とする障害又は病状に苦しむ患者を治療する(又はそれを防止する)を方法において、前記サンプルは、前記患者から収集され、次に以下で述べるような患者に戻すことができる。この状況においては、「サンプル」は、ヒト又は非ヒト動物の胚性、胎性、未熟及び成人期を含めて、前記動物から得られた物質を指し、それは異常な細胞分割を受けている細胞を含有し、組織及び体液を含む。この場合の「体液」は、特に血液、髄液及びリンパを含み、「組織」は手術又は他の手段によって取得された組織を含む。
異常な細胞分割は、好ましくは、真核生物、例えばヒト、他の哺乳類及び動物、鳥類、昆虫及び魚類である真核生物からの細胞にて発生する。
細胞が由来する、又は本発明の方法が実施される好ましい非ヒト動物は、これに限定されるわけではないが哺乳類、特に霊長類、家畜、肉畜及び実験動物を含む。それゆえ好ましい動物は、マウス、ラット、ニワトリ、カエル、モルモット、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマを含む。細胞は特に好ましくは、ヒトに由来するものであり、ヒトを治療するために、又はヒトでの予防を行うために前記方法が使用される。
異常な細胞分割を受けている細胞は、好ましくは、癌細胞であり、治療又は防止される障害は癌である。この方法で治療できる癌は、HOX遺伝子の発現を包含する癌であり、ここでこのHOX発現は、本発明のペプチドの活性によって低減され、それゆえ癌性細胞の成長を遮断し、増殖を低減し、又は癌性細胞の死に直接導く。以下でさらに詳細に述べるように、さらなる実施形態において、本発明のペプチドは、癌性細胞に作用してこれらを静穏状態から細胞周期に移動させ、それゆえこれらを他の、例えば細胞毒性の、抗癌治療に対してより感受性を高めることができる。
治療(処理)される前記細胞は、好ましくは、1又はそれ以上のHox遺伝子を発現する。例えば前記細胞は、HOXA1、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA7、HOXA9、HOXA11、HOXA13、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB4、HOXB8、HOXB9、HOXB13、HOXC4、HOXC6、HOXC8、HOXC10、HOXD3、HOXD4、HOXD8、HOXD9、HOXD10及びHOXD13の1又はそれ以上を発現できる。細胞中のHox遺伝子発現のレベルを、本発明のペプチドに対する細胞の感受性に直接関連付けることが可能である。本発明のペプチドはしたがって、高レベルのHOX遺伝子発現、例えば周囲組織よりも高いレベルのHOX遺伝子発現又は細胞が癌細胞である場合の他の癌タイプよりも高いレベルのHOX遺伝子発現を示す細胞の治療に、より効果的である。本発明の方法はそれゆえ、治療される細胞がHox遺伝子発現のこのような上昇した、又はより高いレベルを示す場合に特に適切である。
好ましくは前記癌は悪性又は前悪性又は良性腫瘍であり、膀胱、腎臓、膵臓、脳、頭部及び頚部、乳房、腸、前立腺、肺及び卵巣の癌並びに白血病及びリンパ腫を含めて、癌腫、肉腫、グリオーマ、メラノーマ及びリンパ腫を含む。特に好ましいのは、結腸直腸癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、胃癌及び小細胞肺癌である。
それゆえ好ましい態様において、本発明は、ヒト又は非ヒト動物において癌を治療又は予防する方法を提供し、ここで前記動物は薬剤、好ましくは上述したようなアンタゴニストが投与される。
一部の癌、例えば一部の形のヒトプレB細胞白血病において、PBXは癌遺伝子として作用できる。このような癌におけるPBXの効果は、PBXが癌遺伝子でない他の癌タイプとは異なるであろう。したがって本発明のペプチドミミックの効果も異なるであろう。したがって1つの実施形態において、本発明のペプチドの効果が、発明者らが解明したPBX:HOX効果に対する異なる機構によるものであるため、本発明はこのような癌に適用されない。したがって本実施形態において、本発明のペプチドは、異常な細胞分割が発生し、1又はそれ以上のHox遺伝子を発現し、PBXが癌遺伝子として作用しない癌又は他の障害の治療又は防止に使用できる。例えば本発明の方法による治療に好適な癌は、ヒトプレB細胞白血病以外の白血病である。
一部の癌、例えば急性骨髄性白血病(AML)において、本発明のペプチドは癌性細胞の増殖を遮断することが示されているが、刺激されるとGO/G1静穏状態を離れて細胞周期にも入る。これらの2つの効果は、同じ条件下の同じ細胞で見られる。ペプチドによってGO/G1を離れるように(すなわち細胞周期に入るように)誘発されているが、次に分割できず、代わりに分化するか、アポトーシスを受けている細胞によると思われる。実施例で示すように、AML細胞における本発明のペプチドの効果は、細胞系が停止される発生の段階に依存しない。したがって本発明のペプチドは原発性AML及び成熟骨髄性白血病の両方の治療に使用できる。このことは、急性骨髄性及びリンパ性白血病での本発明のペプチドの特異的な有用性を示唆する。したがって本発明のペプチドを使用したこれらの細胞におけるPBX/HOX相互作用の遮断は、生体内での白血病細胞増殖を防止するための効果的治療を成す。加えて、細胞周期に入る白血病細胞の割合を向上させるために、本発明のペプチドは、他の癌治療、例えば化学療法に対するその感受性を上昇させることもできる。
PBX依存性転写調節を防止又は低減する薬剤は、幹細胞に有益な効果を有することも見出されている。
本明細書で言及する「幹細胞」は、各種の細胞、例えば各種の血液細胞タイプに分化できる未分化細胞であり、造血性(例えば骨髄で見られる)並びに神経及び肝幹細胞、胚幹細胞及び胚性生殖幹細胞を含み、多能性及び全能性細胞を含む。胚細胞は、胚盤胞の内細胞塊に由来する細胞と見なされ、胚性生殖幹細胞は、5〜10週齢胎児の生殖堤の始原生殖細胞から単離される。好ましくは前記細胞は、前に述べたように真核生物に由来している。
本明細書の実施例で述べたように、PBX仲介転写調節の防止が、低減されたが、継続した細胞分割及び分化の分子マーカーの出現を引き起こすことが今や見出されている(例えばCD38)。しかしながら転写調節を遮断する薬剤の除去時に、細胞は分子マーカーの出現(例えばHOXB4、HOXB8、HOXA9、AC133)によって評価されるように幹細胞に戻り、細胞の多分化能を反映している。理論に縛られるわけではないが、分化/成熟のマーカーの出現にかかわらず、薬剤の投与中には、分化を示す表現形の変化は発生せず、細胞は代わりに細胞周期の速度を著しく低下させたと考えられる。薬剤の除去時に細胞は幹細胞に戻る。
本発明のペプチドによる多能性造血性幹細胞及び前駆細胞(HSPC)の治療がその増殖を遮断し、細胞周期のGO−G1期にある細胞の割合を上昇させることも今や示されている。培養物の寿命が、推定幹細胞の効果はもちろんのこと、さらに分化した前駆体個体群を確証している。これらの遺伝子標的に対する本発明のペプチドのこの阻害効果の特異性は、ペプチドの除去時の細胞転写及び細胞増殖再開と共に、その可逆性によって強調される。
これらの結果は、例えば前記細胞の一時的な保管のための、その保管期間中に考えられる増殖を伴う(例えば培養物中での)幹細胞の維持及び増殖を含む、いくつかの用途を有する。そしてこのような細胞は例えば、例えば年齢、疾患(例えば癌又は自己免疫疾患)、先天的因子、環境による影響又は汚染物質及び/又は投与された化学物質によって、例えば幹細胞の数が減少した、及び/又はある分化細胞タイプを生成する能力が低下した患者への幹細胞の添加が望ましい臨床用途において使用される。特に幹細胞は、化学療法又は放射線療法の前に患者から収集して、維持及び/又は増殖させて、化学療法又は放射線療法の後に患者に戻すことができる。
代わりの例として、幹細胞は、特定の分化細胞が形成される細胞、例えば神経細胞を、特に好適な幹細胞が欠如しているか、又はごく低レベルで存在しているような成人のレシピエントに提供するために使用できる。幹細胞のレシピエントは、好ましくは、ドナーでもあるが、異なる個体でもよい。したがって本発明のペプチドは、試験管内又は生体外での培養中に幹細胞を含有する外移植組織(例えば骨髄細胞)を保護するために使用できる。
細胞は、通常、その生存度に影響を及ぼす処理中に、例えば化学療法又は放射線療法の間に生存度を維持するために、生体外又は生体内でも維持できる。本明細書で述べる薬剤、例えば本発明のペプチドを用いて、幹細胞の細胞周期を一時的に停止又は遅延することによって、このような処理による損傷に対する幹細胞の感受性を低減することができる。例えば本発明のペプチドを用いて、他の癌治療、例えば多くの化学療法計画に関連する細胞毒性ショックによって引き起こされる副作用を低減することができる。本発明のペプチドの幹細胞に対する生体内での細胞保護効果は、生じる副作用の低減により、より高いレベル又は用量のこのような癌治療を使用できるようにもする。例えばより高い用量の化学療法又は放射線療法が可能である。
それゆえさらなる態様において、本発明は幹細胞を維持又は増殖させる方法を提供し、前記方法は、前記細胞に上述したような薬剤、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、例えば上述したようなペプチドを接触させるステップを少なくとも含む。この方法は、幹細胞の多能性又は全能性を維持するために使用できる。
好ましくは本方法は、試験管内又は生体外で培養して実施され、その場合、方法はドナーから幹細胞を収集する最初のステップを含有することがある。しかしながら、前記方法は、特に幹細胞損傷を引き起こす薬剤又は治療への暴露の間に個体中の幹細胞の数を維持又は改善するために、生体内でも使用できる。このような状況において、本発明は患者の幹細胞を維持又は増殖させる方法を提供し、前記患者は上述したような薬剤、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、例えば上述したようなペプチドを投与される。
細胞を「維持すること」は、治療(処理)過程又は培養期間の間に開始、例えば収集された細胞の大部分の生存度を最小限の細胞分割によって維持することを指す。
細胞を「膨張させること(expanding)」は、治療(処理)過程、又は培養の間に、細胞の数を増加させるための、少なくとも多少の細胞分割、好ましくはかなりの数の細胞分割を指す。
本明細書で言及する「培養」は、管理された人工環境、例えば生体外における細胞の増殖又は維持を指す。細胞培養の標準技術は、周知である。細胞は、好ましくは、標準培地中、湿潤環境下で、37℃、5%COにて培養する。好ましくは前記培養は少なくとも2時間、好ましくは24時間を超え;例えば24時間〜8週間の間で実施する。
本明細書で使用される「接触させること」とは、例えば培地への塗布によって、薬剤をサンプル中の細胞に接近させ、それゆえ細胞への結合を可能にする好適な技術を指す。
細胞が維持又は膨張された後に、多能性又は全能性を回復するために薬剤を除去できる。前記方法が生体内で実施される場合、このことは投与を中止して、生体に薬剤を除去させることにより実現できる。薬剤は試験管内又は生体外で、洗浄及び新しい培地との交換によって、培地から除去される。あるいは、薬剤は自然に分解されるようにして除去することができる。
それゆえ本発明は、培養物、好ましくは幹細胞の増殖個体群において、幹細胞を維持又は増殖させる、及び/又は多能性又は全能性幹細胞を獲得する方法を提供し、前記方法は少なくとも:
a)培養物中の前記細胞に、上述したようなPBX依存性転写調節を低減又は防止する薬剤、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、例えば上述したようなペプチドを接触させるステップと;
b)前記細胞を前記薬剤の非存在下で培養するステップと;を含む。ペプチドは培養中に数日以内に分解されるようになり、それゆえ活性ペプチドが消耗されることに注意すべきである。それゆえステップb)は、分解が発生するのに十分な時間が経過している場合は事前の洗浄を行わずに実施できる。前述したように、好適な培養時間は少なくとも2時間、好ましくは24時間を超え、例えば24時間〜8週間の間である。
前記方法は、ドナーから幹細胞を収集する初期ステップを含有する。本発明のこの方法又は他の方法によって得た細胞は、医薬品としてのその用途と同様に、本発明のさらなる態様を含む。
上述の試験管内又は生体外での方法により調製された細胞は次に、このような幹細胞が必要な個体に投与される。任意で、細胞は、移植前に、例えば培養過程中に又は移植前に、例えば遺伝子修飾によって、例えば遺伝子導入のために、あるいは例えば欠失した因子、例えばアデノシンデアミナーゼ(ADA)を供給することによって、遺伝的欠陥を補う目的で前記細胞中に以前に存在しなかった機能を導入するために、修飾できる。
それゆえ、なおさらなる態様において、本発明は幹細胞が必要な個体を治療する方法を提供し、そこでは上述の方法によって調製された幹細胞が前記個体に投与される。
好ましくは、前記幹細胞が必要な前記個体は、正常又は望ましいレベルより低いこのような細胞を有し(又は有するであろう)、このような状態は、例えば年齢によって、又は例えば化学療法又は放射線療法による外部因子の結果として通常存在する。前記幹細胞は特に好ましくは、レシピエントの個体に由来するものである。
それゆえ、好ましい特徴において、本発明はレシピエントの個体中の幹細胞の数を改善する方法を提供し、前記方法は少なくとも:
a)ドナーから幹細胞を収集するステップと;
b)上述した方法に従って前記幹細胞を培養するステップと;
c)前記培養幹細胞を前記レシピエントの個体に投与するステップと
を含む。
好ましくは、前記方法は、化学療法又は放射線療法を受ける患者の幹細胞の数を改善する方法であって、前記方法は少なくとも:
a)化学療法又は放射線療法の前に、前記患者から幹細胞を収集するステップと;
b)上述した方法に従って前記幹細胞を培養するステップと;
c)化学療法又は放射線療法の完了後に、前記培養幹細胞を前記患者に投与するステップと
を含む。
代わりに述べられるように、上の方法の収集ステップa)が存在せず、ステップb)が上述した方法に従ってドナーから収集した幹細胞を培養することを含むことができる。前記細胞は、細胞、組織又は体液のサンプルを前記ドナーから取得すること、そして任意でそこから細胞を抽出することによって収集できる。
本明細書で使用される「サンプル」は、幹細胞を含有する、ヒト又は非ヒト動物の胚性、胎性、未熟及び成人期を含めて、前記動物から取得された物質を指し、組織及び体液を含む。「体液」は、血液及び髄液を含む。「組織サンプル」は、外科的介入によって(例えば骨髄又は肝臓)又は他の手段、例えば胎盤及び臍帯によって、入手できる組織を含む。細胞が由来する、又は方法が利用される動物は、好ましくは、異常な細胞分割を低減する方法に関連して上述したとおりである。
本明細書で使用される「幹細胞の数を改良する」という言及は、投与が行われる時点で個体中に存在する数と比較して、添加される幹細胞の数(好ましくは添加される特定の種類、例えば造血性幹細胞の)を増加させることを指す。それゆえ化学療法又は放射線療法を受ける患者の場合、観察された改良点は、化学療法後又は放射線療法後の患者における幹細胞の数にある。改良点は、以前に非存在であったか、非常に少数が存在したある幹細胞、例えば神経幹細胞の添加から成ることもある。
代わりに明示されるように、本発明は、幹細胞の必要性を特徴とする病状又は障害の治療又は防止のための医薬品の調製における、好ましくは例えば化学療法又は放射線療法によって幹細胞の数が正常よりも低い病状又は障害の治療又は防止における、あるいは幹細胞の供給が、関心のある部位に非存在であるか又は異常に少ない数で存在する、あるいは所望するよりも少ない数で存在する、1又はそれ以上の特定の分化細胞の生成を可能にする病状における、薬剤(好ましくは上述したようなアンタゴニスト)の使用を提供する。
幹細胞の数が正常よりも少ない病状又は障害は、自己免疫障害、放射線療法、化学療法及びあるウィルス感染症を含む。移植による幹細胞の使用が、非存在であるか又は異常に少ない数で存在する、あるいは所望するよりも少ない数で存在する、適当な分化細胞を提供する病状は、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び他の加齢性障害又は病状(美容整形術を含む)、多発性硬化症、脊髄損傷、糖尿病、慢性心臓疾患、末期腎臓疾患、肝臓障害を含み、そこでは幹細胞は、破壊又は機能不全細胞と置換するために使用される。このような病状又は障害の防止は、上述したような薬剤の使用によって、幹細胞を保護状態に維持することによって実現できる。
本発明は、上述のように、幹細胞の必要性を特徴とする病状又は障害を治療するための医薬品の調製における、上述の方法によって調製された細胞の使用をさらに提供する。
異常な細胞分割に対する上述の薬剤の効果により、そのように異常な細胞を含有する幹細胞のサンプルさえ使用でき、異常な分割を低減しながら幹細胞を増殖させる二重効果が実現できることに注意すべきである。それゆえ上述の薬剤は、正常な幹/前駆細胞を保護しながら異常な細胞増殖を受けている細胞を除去するために、試験管内、生体外又は生体内で使用できる。これは特に、例えば白血病/リンパ腫を治療する場合に、造血性細胞に利用できる。
それゆえ、さらに好ましい態様において、本発明は、ヒト又は非ヒト動物において、異常な細胞分割が発生する病状又は障害、例えば癌を治療又は防止する方法を提供し、前記方法は薬剤、好ましくは上述したようなアンタゴニストを投与することを含み、前記薬剤は、前記異常な細胞分割を低減することと、前記動物の幹細胞を維持又は増殖させることの両方が可能である。
上述のように、PBX依存性転写調節を低減又は防止する薬剤、特にHOX:PBXアンタゴニスト及び特に上述したペプチドは、各種の臨床用途を有し、それゆえ本発明のさらなる態様は、このような薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。これらの薬剤の医薬品としての使用は、本発明のさらなる態様を成す。
それゆえ、さらなる態様において、本発明は、上述したようなPBX依存性転写調節を低減又は防止する薬剤、好ましくはアンタゴニスト、特に好ましくはHOXとPBXとの相互作用のアンタゴニスト、例えば本明細書で述べるようなペプチド、あるいはこのようなペプチドを発現できるポリヌクレオチド又はベクター、及び薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤又は担体を含む薬学的組成物を提供する。
本明細書で述べる、医薬品として使用するための、好ましくは異常な細胞分割を特徴とする障害又は病状、あるいは幹細胞の必要性を特徴とする障害又は病状、例えば本明細書で述べた病状の治療又は防止に使用するための薬学的組成物、並びにこのような組成物を使用する治療又は予防の方法並びにこのような障害又は病状を治療又は防止する医薬品の調製のための前記薬剤の使用は、本発明のさらなる態様を成す。
本明細書で言及する「薬学的に許容し得る」とは、組成物の他の成分と適合することはもちろんのこと、レシピエントに生理的に許容し得る成分を指す。
本発明による薬学的組成物は、容易に入手できる成分を使用して従来の方法で調合できる。それゆえ、従来の生薬調製物、例えば錠剤、丸薬、粉剤、口内錠、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル、懸濁物、エマルジョン、溶液、シロップ、エアゾール(固体として、又は液体溶媒中)、軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、座薬、滅菌注射用溶液、滅菌包装粉剤などを生産するために、活性成分(例えばペプチド)は、任意で他の活性物質と共に、1又はそれ以上の従来の担体、希釈剤及び/又は賦形剤と共に含めることができる。
組成物はさらに、薬剤の作用を補助又は増強する分子、好ましくは上述のようなペプチド、例えば細胞毒性薬、例えばアンチメタボライト、アルキル化剤、細胞毒性抗生剤、トポイソメラーゼI及び/又はIIインヒビター、ビンカアルカロイド及びモノクローナル抗体を含む。
組成物は、必要に応じ、活性成分に結合した標的部分、例えば特定の細胞タイプ又は位置へのターゲティング、例えばリンパ球、単球、マクロファージ、内皮細胞、上皮細胞、血液細胞、赤血球、血小板、好酸球、好中球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、脳細胞、心臓細胞、肺細胞、島細胞、腎臓細胞、癌細胞、ホルモン腺細胞、皮膚、骨、関節、骨髄、胃粘膜、リンパ節、パイエル板、網及び他の適当な組織へのターゲティングを可能にする内因性レセプターに特異的及び選択的に結合するリガンドも含有する。
好適な担体、賦形剤、及び希釈剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、カルシウムシリケート、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、水、水/エタノール、水/グリコール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート、鉱油又は脂肪物質、例えば硬質脂肪又はその好適な混合物である。組成物は加えて、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、甘味料、香料などを含む。本発明の組成物は、当業界で周知の手順を使用して、患者への投与後に活性成分の迅速な、持続した、又は遅延した放出を提供するために調合できる。
薬学的担体又は希釈剤は、例えば等張溶液である。例えば固体経口形は、活性化合物と共に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ又はジャガイモデンプン;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、マグネシウム又はカルシウムステアレート、及び/又はポリエチレングリコール;結合剤;例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はナトリウムデンプングリコラート;発泡性混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェート;及び一般に、薬学的調合物に使用される非毒性及び薬理学的に不活性な物質を含有する。このような薬学的調製物は、既知の方法、例えば混合、粒状化、錠剤化、糖コーティング、又はフィルムコーティングプロセスによって製造される。
経口投与用液体分散物は、シロップ、エマルジョン又は懸濁物である。シロップは、担体として、例えばサッカロース、又はグリセリン及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールと共にサッカロースを含有する。
懸濁物及びエマルジョンは、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含有する。筋肉内注射用の懸濁物又は溶液は、活性化合物と共に、薬学的に許容し得る担体、例えば滅菌水、オリーブ油、エチルオレアート、グリコール、例えばプロピレングリコール、そして必要に応じ、好適な量のリドカインヒドロクロライドを含有する。
静脈内投与用又は輸液用溶液は、担体、例えば滅菌水を含有するか、好ましくはこれらは滅菌、水性、等張食塩水の形である。
組成物は、例えばエマルジョンとしての、又はリポソーム、ニオソーム、マイクロスフィア、ナノ粒子などの中の、適当な投薬形である。
本発明の薬剤又は組成物の投与は、従来の経路のいずれかによって、例えば経口的に、直腸により又は非経口的に、例えば筋肉内、皮下、腹腔内又は静脈内注射、輸液、吸入又は局所投与によって、体内表面又は体外表面などの両方に、治療又は防止される病状又は障害に応じて、任意の間隔、例えば3〜5日間隔で3回以上の利用で行う。従来の静脈内注射が使用される。
本発明の組成物中の活性成分は、調合物の約0.01%〜約99重量%、好ましくは約0.1〜約50重量%、例えば10重量%を構成する。組成物は、好ましくは、単位投薬形で調合され、例えば各投薬量は活性成分を約0.01mg〜約1g、例えば0.05mg〜0.5g、ヒト用には例えば1〜100mg含有する。
投与される活性化合物の正確な投薬量及び治療過程の長さは、もちろん、例えば患者の年齢及び体重、使用される薬剤、治療の目的、治療又は防止が必要な具体的な病状及びその重症度、並びに投与経路を含む、いくつかの因子に依存する。
しかしながら一般に、有効用量は、約1μg/kg〜約10mg/kgの範囲にあり、例えば治療される動物及び1回用量として摂取される投薬形によって、1日当たり薬剤約1mg〜0.2gである。それゆえ例えば、成人の適当な1日用量は、1日当たり0.5mg〜0.5g、例えば1日たりポリペプチド1〜100mgである。より小型の動物では、濃度範囲は異なり、それに従って調節できる。
試験管内又は生体外使用では、薬剤、例えば上述したようなペプチドには1μg/ml〜10mg/mlの濃度範囲が適切である。
本発明のペプチドは、例えば治療中の幹細胞の保護によって従来の治療に使用される薬剤、例えば細胞毒性薬の作用を補助又は増強し、その副作用を低減するために使用できる。
1つの実施形態において、本発明のペプチドは、1又はそれ以上の他の治療活性剤と同時に投与される。例えば本発明のペプチドは、コンビナトリアル化学療法剤として使用できる。実施例に示すように、本発明のペプチドは、一部の癌細胞、例えばAML細胞を細胞周期に入れさせる。したがってこのようにして刺激された細胞は、従来の抗癌剤に対してより感受性となる。したがって本発明のペプチドは、癌、例えば白血病、さらに好ましくは上で説明した急性骨髄性白血病(AML)を標的化するために、他の抗癌剤、例えば細胞毒性薬と組合せて使用できる。
本発明のペプチドは、内因性幹細胞個体群を保護するために、他の抗癌療法と組合せて使用することもできる。本発明者らは、本発明のペプチドが正常な幹/前駆細胞をGO/G1静穏状態に維持できることを発見した。この細胞保護能力はそれゆえ、このような幹細胞を抗癌治療の効果から保護できる。これは、分割細胞を標的とする細胞毒性薬と組合せて使用される場合に特に有用である。患者の正常な幹細胞をこのような治療の間に静穏状態に維持することによって、内因性幹細胞個体群に対する抗癌治療の効果を最小限にすることができる。潜在的副作用のこのような低減は、そうでなければ可能又は安全である、より高い用量又はレベルの従来治療も患者に使用できるようにする。
本発明のペプチドが1又はそれ以上の他の治療剤、例えば抗癌剤、例えば細胞毒性薬と組合せて使用される又は併用される場合、薬剤は、同時、連続又は分割投与用に調合できる。薬剤は、一緒に調合して単一の薬学的組成物にできる。薬剤は個別に調合して、その後、治療過程の間に、同時に若しくは連続して、又は分割して、一緒に投与できる。
以下の実施例で、本発明を説明する:
試験管内での増殖、細胞周期及び生存度に対するHXPペプチドの効果
本実施例において、HOXタンパク質の保存領域、特にHOXB−4のヘキサペプチド領域を模倣するように産生されたペプチドであるHXPペプチドを試験管内アッセイで使用して、種々の正常及び異常細胞系又は一次細胞培養物の細胞増殖、細胞周期及び細胞死に対するその効果を判定する。
方法
1.HXPペプチド
PBXタンパク質とHOXタンパク質との相互作用を防止できる試薬を設計するために、このプロセスに影響を与えることが既知である(Morgan et al., 2000)高度に保存されたHOXヘキサペプチド配列WYPWMKKHH(配列番号:6)を、細胞膜でのタンパク質の効率的な移動に影響を与えることが以前から知られている(Derossi et al., 1998)ショウジョウバエAntennapediaタンパク質に基づく、第二のペプチド('ペネトラチン')に結合させた。このペプチドは、HXPペプチド又はHXP4と呼ばれる。
HXPペプチドは以下の配列:
(N末端) WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWK (C末端)
を有し、ルーチンの化学合成によって調製された。
2.血液幹細胞培養
2.1.臍帯血収集及び単核細胞単離
臍帯血(UCB)試料は病院倫理規則に従って、選択帝王切開が予定された満期産から収集した。
サンプルは、クエン酸塩ベース抗凝血剤(0.6% ACD−A,Baxter、フランス)及びウシ血清アルブミン(0.5%画分V,Sigma Aldrich、英国)を添加したpH=7.4の、「ACD−A緩衝液」と呼ばれるPBS中で1:4に希釈した。希釈UCBは、遠心分離(400g、30分、22℃)の前に、研究グレードのFicoll−Paque溶液(d:1.077g/cm、Pharmacia Biotech、スウェーデン)上に1:4の比で注意深く重ねた。単核細胞(MNC)層を抽出し、ACD−A緩衝液で2回洗浄し、ペレット化(400g、10分)してから、ACD−A緩衝液に再懸濁させ、等分した細胞の一部をトリパンブルー(Sigma Aldrich)を用いた細胞生存度/細胞数計測のために採取した。
2.2.XC133+細胞免疫磁気選択
AC133+細胞は、AC133 mini−MACS選択キット(Miltenyi Biotec、ドイツ)を用いた免疫磁気分離後にMNCより得た:Fcレセプター遮断試薬(100μl、インキュベーション5分、4℃)を含有するACD−A緩衝液中で体積500μl/10細胞に標識してから、モノクローナルマウス抗ヒトAC133/1抗体(100μl IgGIアイソタイプ、インキュベーション25分、4℃)に結合したコロイド状超常磁性MACSマイクロビーズを添加した。次に細胞を洗浄してから(5ml ACD−A緩衝液、400g、10分、4℃)、500μlのACD−A緩衝液中の再懸濁細胞を磁石上の冷却MACSポジティブ選択カラム(MS+/RS+)に加えた。カラムを冷ACD−A緩衝液(4×500μl)ですすぎ、AC133細胞個体群を4℃にて保持した。磁石除去後、AC133+細胞を1mlの冷ACD−A緩衝液で溶出させた。細胞数計測及び生存性アッセイの前に、AC133+細胞画分を新たなカラムに再度加えた。
2.3.HXPペプチドを用いた短期生体外AC133+細胞増殖培養物
AC133+細胞は、液体培養系に2〜4×10細胞/mlで2通り播種した。液体培養系(全体で1.5ml)は、胎仔ウシ血清(10%、Sigma Aldrich)及びゲンタマイシン(50μg/ml Life Technologies)を添加したIscoveダルベッコ変法培地(Life Technologies、英国)より構成されていた。培養系は、成長因子「TPOFLK」(トロンボポイエチン 10ng/ml、Flt−3リガンド 50ng/ml)及びHXPペプチド(20μg/ml)を添加した。AC133+細胞もTPOFLK及び対照ペプチド(WAPWEDDHHRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号:25)、HXPと同じ濃度)を用いて培養した。7日ごとに培地を交換し、必要に応じ:(i)HXPペプチドを添加した(濃度は維持)又は(ii)回収した、(iii)HoxB4タンパク質(20μg/ml、組換え全長アフリカツメガエル配列)を添加した。細胞は37℃、5%CO、湿潤雰囲気下で最大18日間培養した。培養細胞は次に、上述のトリパンブルー排除法を用いて各種の時点でカウントした。
3.白血病細胞系培養
KG1a、KG1、HL60及びU937細胞系をATCCから入手した(カタログ番号はそれぞれCCL−246.1、CCL−246、CCL−240及びCRL−1593.2)。
U937は、骨髄性及びリンパ性系統の両方の小児白血病において、そして二次性白血病を誘発する治療において最も頻繁な遺伝子変化の1つである、11q23転座に位置するHRX遺伝子の染色体再配置を含有する(Butler et al., 1997)。KG1aはKG1細胞に由来し、これらは一次骨髄性前駆体と同様に、CD34 high CD38陰性表現型を示すため、非常に未分化であると見なされる(Koeffler et al., 1980)。KG1a及びHL60は刺激に応じて、顆粒球又は単球細胞に分化することができる(Koeffler and Golde, 1978, Sundstrom and Nilsson, 1976)。
細胞系は、ウシ胎仔血清(10% Sigma Aldrich)及びゲンタマイシン(50μg/ml、Life Technologies)を添加したRPMI−1640培地 (Life Technologies、英国)より成る液体培養系に1〜5×10細胞/mlにて、少なくとも2通り播種した。必要に応じ、HXPペプチドを培地に添加した(20μg/ml)。細胞系は、37℃、5%CO、湿潤雰囲気下で最大7日間培養した。次に培養した細胞を上述のトリパンブルー排除法を用いて各種の時点でカウントした。
4.細胞周期解析
調査する細胞を収集し、PBS中で400gにて10分間洗浄した。次にペレット化細胞を氷冷70%エタノール中で固定した。固定細胞を続いてPBS中で2回洗浄し(600g;10分間)、100μlのリボヌクレアーゼ(100μg/ml;Sigma Aldrich)中で5分間インキュベート(室温)してから、400μlのヨウ化プロピジウム(50μg/ml;Sigma Aldrich)を添加し、30分間インキュベーションした(37℃)。次に細胞を細胞周期ステータスについてFACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson、米国)にて、WinMDI及びCylchredソフトウェアを用いて解析した。
5.RT−PCR
全RNAをRneasyミニキット(Quiagen)をメーカーの説明に従って使用して、培養したヒト細胞から抽出した。3μgのRNAを次の逆転写反応で使用した。RNAはポリT15オリゴと5マイクログラム/mlまで混合し、75℃まで5分間加熱した。氷上で冷却した後、次の追加試薬;dNTPを0.4mMまで、RNase OUT(Promega)を1.6U/μlまで、モロニーマウス白血病ウィルス逆転者酵素(M-MLRvT)RnaseH−ポイントミュータント(Promega)を8U/μlまで、そして適当な緩衝液(メーカーが供給)を×l濃度まで添加した。混合物を37℃にて1時間インキュベートし、70℃まで2分間加熱して、氷で冷却した。
PCR反応はすべて総体積40μlで実施した。それぞれについて、1μlのM−MLRvT反応(上述のとおり)、0.2nmolの各プライマー及び20マイクロリットルのRedimixプレミックスPCR成分(Sigma)を使用した。すべての反応は94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、そして72℃にて60秒間サイクルさせた。23サイクルを使用したベータ−アクチンを除いて、すべてのプライマーセットには30サイクルを使用した。
RT−PCRのプライマー配列
AC133(U):5’CAGTCTGACCAGCGTGAAAA3
AC133(D):5’GGCCATCCAAATCTGTCCTA3
ベータ−アクチン(U):5’ATGTACCCTGGCATTGCCGAC3’
ベータ−アクチン(D):5’’GACTCGTCATACTCCTGCTTG3’
CD34(U):5’TGAAGCCTAGCCTGTCACCT3’
CD34(D):5’CGCACAGCTGGAGGTCTTAT3’
CD38(U):5’GGGTGATACATGGTGGAAGAG3’
CD38(D):5’TGTGCAAGATGAATCCTCAGG3’
HOXA9(U):5’AATAACCCAGCAGCCAACTG3
HOXA9(D):5’ATTTTCATCCTGCGGTTCTG3
HOXB4(U):5’AGCGATTACCTACCCAGCGAC3’
HOXB4(D):5’AGGGTCCCGGCAGGCCGC3’
HOXB8(U):5’TGGAGCTGGAGAAGGAGTTC3’
HOXB8(D):5’CGCTCCAGCTTCTGTTTCTC3’
結果
上述の実験の結果を図1〜5に示す。図1は、各種の細胞の細胞増殖に対するHXPペプチドの効果を示し、ペプチドが未熟血液幹細胞(AC133+細胞)を、これらを静穏状態で維持して、その増殖を遅延することによって保護することを示している。HXPは、白血病細胞系(KG1a、KG1、HL60及びU937)を迅速に(2〜6時間の間)阻害するが、阻害はより長い期間にわたっても現れた(図3)。(白血病細胞系は液体培養系にて自発的に増殖可能であるが、AC133+細胞は、臍帯血からの一次造血性の幹/前駆細胞である。したがってAC133+細胞は、白血病細胞系と比べ増殖におけるより大きな増加に反映される、その増殖に必要である、最適化されたサイトカインカクテルを用いて培養した。)未熟白血病細胞、例えばKG1及びKG1aは、HXPペプチドによって細胞周期内へ推進されるが(図2)、これに対してさらに成熟した白血病細胞(HL60及びU937)の細胞周期は遅延されるように思われる。
幹/前駆細胞(AC133、CD34、HOXB4、HOXB8及びHOXA9)のマーカーは、HXPペプチドによって7日間処理したKG1a細胞中で減少したのに対して、成熟/分化(CD38)のマーカーは上昇した(図4)。
幹細胞を静穏状態で維持する際のHXPペプチドの効果は、可逆性であることが見出された。実施例5より、HXPペプチドの回収がAC133+細胞の増殖の再開(図5)及び幹細胞/前駆体のマーカーの戻りにつながったことに注目する。
HXPペプチドはAC133+の増殖を遅延し、このことはCD38遺伝子発現のアップレギュレーションと一致するが、HOXB4、B8及びA9遺伝子は早くも3日目からダウンレギュレートされた。7日目のHXPペプチドの回収時にAC133+細胞は再度増殖を開始し、HOXB4を用いて同時刺激したときには対照レベル付近まで戻った。増殖のこの増加は、漸進的なCD38遺伝子発現のダウンレギュレーション及びHOXB4、B8及びA9遺伝子のアップレギュレーションと相関があった。
HXPペプチドとすべてのPBXタンパク質との交差反応
方法
HXP及び対照ペプチドは、実施例1で述べたとおりであった。KG1a細胞は実施例1で述べたように増殖させた。KG1a細胞は、処理なしで、又は1μMのHXPペプチドの存在下で、又は対照ペプチドの存在下で24時間培養した。細胞は収集し、溶解させた。等分した細胞の一方を架橋させた。凍結細胞は、標準技法を用いて溶解させ、100JLIの溶解物を室温にて、4mMの1−エチル−3−[3−(ジメチル−アミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)、4mMのスルホ−NHS、20mM HEPES(pH7.5)、5mMのMgCl、及び0.03%(w/v)f3−DM中で30分間インキュベートして、非共有結合タンパク質を架橋させた。反応は、最終濃度50mMまでの酢酸アンモニウムの添加によって停止させた。等分したもう一方は、架橋せずに凍結させた。
タンパク質は標準技法によって、等分した両方の細胞から抽出し、ゲル電気泳動によって分離した。ゲルはウェスタンブロットにより、PBX1、2及び3に対して産生した抗体(sc-888、Santa Cruz Inc. 米国)又は抗ベータアクチン抗体(sc-1615、Santa Cruz Inc. 米国)を用いてプローブした。
結果
図6から、未処理細胞及び対照のペプチド処理細胞からのPBXタンパク質は、他のタンパク質(すなわちHOXタンパク質)と結合されたが、HXPペプチド処理細胞からのPBXアイソフォームはいずれも他のタンパク質と結合されなかったことが示されるであろう。これは、本発明のペプチドがすべてのPBXタンパク質に対して包括的な効果を有し、それゆえすべてのPBX及びHOXタンパク質間の相互作用を防止することが示される。
方法
1.細胞培養
CD133+細胞(AC133+細胞の別名)は、すべて英国のR and D systems Ltd.より入手したIMDM(Life Technologies)、10%FCS(Sigma Aldrich)及びゲンタマイシン(50μg/ml Life Technologies)及び10ng/mlのトロンボポイエチン(TPO)、50ng/mlのFlt3−Ligand(FL)及び20ng/mlのc−KitL(K)中に4×10細胞/mlにて2通り播種した(Forraz et al., 2002)HXPペプチド(N末端:WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWKK:C末端;Eurogentec、ベルギー)及び対照CXPペプチド(N末端:WCCLADRHGRQIKIWFQNRRMKWKK:C末端;Eurogentec、ベルギー)は20μg/mlの濃度で培地に添加した。培養物からペプチドを回収するために、細胞をIMDM又はRPMI中で2回洗浄し、洗浄前細胞密度で再播種した。一次細胞は37℃、5%CO、湿潤雰囲気下にて3週間にわたって培養し、トリパンブルー排除法によって血球計算板を用いて細胞数を計測した。
KG1a、HL60及びU937細胞系は、実施例1で述べたように播種した。
すべての細胞系は、HXPペプチド(20μg/ml)又はCXP(20μg/ml)を用いて増殖させた。細胞系は各種の時点について、37℃、5%CO、湿潤雰囲気下で培養し、各種の時点で細胞数を計測した。
2.PBX及びPBX/HOXダイマーのウェスタンブロッティング
HXP処理又はCXP処理されたCD133+細胞(20μg/ml)からタンパク質を抽出した。3つのヒトPBX遺伝子タンパク質をすべて認識するC−20抗体(sc-888、Santa Cruz Biotechnology Inc., 米国;Monica et al.,1991)。タンパク質架橋は、2mMの1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)(Pierce Biotechnology、米国)を用いて、コンジュゲーション緩衝液(0.1M 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸、pH5)中で1:10に希釈された細胞溶解物中で実施した。室温で15分後、2−メルカプトエタノールを20mMまで添加することによって反応を停止させ、D−Salt Dextran脱塩カラム(Pierce、米国)を使用して過剰な試薬を除去した。
3.RT−PCR分析
全RNAは、液体窒素急速凍結細胞から、RNeasyミニキットプロトコル(Qiagen、Crawley、英国)を使用して単離した。反応当たりRNA 1μgを用いた逆転写反応物50μlは、75℃ cDNAにてオリゴdT 1μgと共に10分間加熱した。サンプルを氷上で冷却し、その結合緩衝液中のM−MLV逆転写酵素(Promega、サウサンプトン、英国)200ユニット、400μMのdNTP(Promega)、及びRNAseout(Invitrogen、ペーズリー、英国)40ユニットと混合した。次にサンプルを37℃にて1時間インキュベートし、最後に75℃にて5分間加熱した。PCR反応(35サイクル、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分)を20μlの反応物中で、JumpStart ReadyMix REDTaq DNAポリメラーゼ(Sigma-Aldrich)を使用して、反応物当たり同量のcDNAをフォワードプライマー及びリバースプライマー 1μMと共に用いて実施した。
結果
1.HOXヘキサペプチド配列の細胞浸透性ペプチドミミックは、PBXが他のタンパク質に結合するのを防止する。
HXPペプチドがHOX/PBX相互作用を防止する能力は、試験管内でCD133+HSPC個体群にそれを添加することによって試験した。これらの細胞は臍帯血に由来し、初期HSPCの既知のマーカーである、表面抗原CD133のその発現のために選択される(Forraz et al., 2002)。CD133+細胞タンパク質は、PBXの3つ異なるアイソフォーム(Monica et al., 1991)について、ウェスタンブロットによって、架橋を用いて又は用いずに分析した(図6)。対照ペプチドCXPではなく、HXPペプチドは、これらの条件下で、PBXの他のタンパク質への結合を防止した。
2.HXPペプチドはCD133+細胞増殖の可逆性阻害を誘起する。
CD133+細胞は液体培養物を添加したサイトカイン中でHXPペプチド又はCXPペプチドを用いて 、初期HSPCにおける細胞増殖に対するHXPペプチドの効果を判断するために、18日間にわたって増殖させた(図7a)。HXPペプチドを用いたCD133+細胞の処理は、CXPペプチド処理細胞と比較した場合に、18日目に平均3.7倍で増殖を阻害した(p<0.001)。7日目の細胞培養物からのHXPペプチドの回収は、18日目のHXPペプチド処理細胞個体群と比較した場合に、細胞増殖の再開を可能にし(p<0.01)、HXPペプチド阻害が可逆性であることを示している。これらの個体群の細胞形態及び完全性は、HXPペプチド又はCXPペプチド添加に反応して明らかな変化を示さなかった(データは示さず)。
3.CD133+細胞のHXPペプチド処理は一次HSPCマーカーのダウンレギュレーションを誘発した。
HSPC分化及び細胞周期制御と関連付けられたいくつかの遺伝子の発現は、図7aに示した増殖特性を有する細胞から抽出したRNAのRT−PCRによって調査した。18日後、トロンボポイエチン中でのFlt−3リガンド及びc−kitリガンド(TPOFLK)添加培養物中で、対照ペプチド処理CD133+細胞は、CD133、TERT(テロメア逆転写酵素)、HOXB8、HOXA9、及びHOXB4(トロンボポイエチン自体によってアップレギュレートされた)を含む非分化HSPC表現型に関連する一連の遺伝子の発現を維持した(Kirito et al. , 2003)。HSPC分化と関連したCD38遺伝子は発現されなかった。CD133+細胞のHXPペプチド処理は、細胞周期(CDC25(Donzelli and Draetta, 2003)及びCDK2(Siebert et al., 1996))、増殖(N−Ras(Hall et al., 1993;Scheele et al., 2003)、Ras様GTP結合タンパク質(Bos, 1997))、移動(マトリクスメタロプロテイナーゼ−MMP19−及び−MMP1−(Stamenkovic, 2003;Murphy et al., 1999))、成長因子仲介シグナル伝達(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ−MAPK−(Reddy et al., 2003)及びRAB27A(Chen et al., 1997;Seabra et al., 2002))、アポトーシス(Bcl−2同族体−Bak2−及び腫瘍サプレッサ−p53−(Vermeulen et al., 2003))、転写(CCCTC結合因子−CTCF−(Ohlsson et al., 2001)、真核翻訳開始因子4E−EIF4E−(Thornton et al., 2003)、及び一次HSPCマーカー(CD133(Forraz et al., 2002)、CD34(REF)、TERT(Allsopp et al., 2003)、HOX B4、B8及びA9)に関与する一連のHOX-PBX標的遺伝子(図7b)を著しくダウンレギュレートした。CD38遺伝子はアップレギュレートされた。7日目のHXPペプチドの回収は、MAPKを除くこれら遺伝子すべてのアップレギュレーション、及びCD38のダウンレギュレーションを引き起こした。
4.HXPペプチドは細胞周期のGO−G1期におけるCD133+細胞の増殖を維持する。
CD133+細胞の細胞周期ステータスは、HXPを用いて及び用いずにTPOFLK添加培養物中で解析した(図8)。濃縮幹細胞個体群と一致して、細胞の93%が0日目にG0−G1にあった。18日を過ぎると、CXP4処理細胞と比較して、HXPペプチド処理CD133+細胞のより多い個体群が細胞周期のGO−G1期にあった。この相違は、培養の18日目の対照群と比べて、9.9%多い細胞が細胞周期のGO−G1期にあるHXPペプチド処理細胞で徐々に上昇した(p<0.05)(図8)。液体培養物からHXPペプチドを回収したときに、HXPペプチド処理群と比較すると、より低い割合の細胞が細胞周期のGO−G1期のままであった。
5.HXPペプチドはKG1a、HL60及びU937白血病細胞系の増殖を阻害する。
血液悪性腫瘍におけるHOX遺伝子調節不全の役割は、白血病細胞系KG1a(MO French-American-British(FAB)分類)、HL60(M2/M3 FAB分類(Collins et al., 1977))及びU937二表現型細胞(骨髄性組織球増殖症(Sundstrom and Nilsson, 1976))の増殖を調査することによって研究した。U937は骨髄性及びリンパ性系統の両方の小児白血病において、そして二次性白血病を誘発する治療において最も頻繁な遺伝子変化の1つである、11q23転座に位置するHRX遺伝子の染色体再配置を含有する(Butler et al., 1997)。KG1aはKG1細胞に由来し、これらは一次骨髄性前駆体と同様に、CD34 high CD38陰性表現型を示すため、非常に未分化であると見なされる(Koeffler et al., 1980)。KG1a及びHL60は刺激に応じて、顆粒球又は単球細胞に分化することができる(Koeffler and Golde, 1978, Sundstrom and Nilsson, 1976)。HXPペプチドは、3つのすべての細胞系に、2時間以内に明らかとなった強力な細胞増殖阻害を及ぼした(図9a)。これらの個体群の細胞形態及び健全性は、HXPペプチド又はCXP4添加に反応して明らかな変化を示さなかった(データは示さず)。
6.KG1a、HL60及びU937白血病細胞系のHXPペプチド処理は、いくつかのHOX-PBX転写因子標的遺伝子の発現に影響した。
HOX/PBX標的遺伝子に対するHXPペプチドの効果を白血病細胞系において調査した(図9b)。比較的未分化の骨髄細胞であるKG1a細胞系では、HXPペプチド処理は、CD133、CD34、HOXB4、B8及びA9遺伝子発現のダウンレギュレーション、並びにCD38のアップレギュレーションを誘起した。U937及びHL60細胞系は、CD133又はCD34を発現しなかった。しかしながらHOXB4及びA9遺伝子発現のダウンレギュレーションは、HXPペプチド処理時に見られたが、CD38はアップレギュレートされ、HOXB8遺伝子発現は不変であった。
N−RAS癌遺伝子(Hall et al., 1983;Scheele et al., 2003)は、 すべての細胞系においてHXPペプチド処理によって完全にダウンレギュレートされた。HXPペプチド処理は、CDC25(U937細胞においてダウンレギュレートされた(Donzelli and Draetta, 2003))、MMPI(KG1a及びU937細胞においてダウンレギュレートされた(Stamenlcovic, 2003))、及びMMP19(KG1aにおいてダウンレギュレートされた(Murphy et al., 1999))を除いて、調査した他の遺伝子の発現を変化させなかった(図9b)。
7.KG1a、HL60及びU937白血病細胞系のHXPペプチド処理は、細胞周期活性を誘起する。
KG1a、HL60及びU937細胞周期特性をHXPペプチド又は対照ペプチドを用いて、培養物中で48時間に渡って解析した(図10)。非同期細胞に対するHXPペプチドの効果は大きく変化した(データは示さず)。細胞を予備調整してG0−G1に同期させることは、HXPペプチドが、G0−G1期を離れて、細胞周期に入る細胞の著しい高い割合を誘起することを示す。
考察
大半のHOX遺伝子の機能は、保存ヘキサペプチド配列を介したPBX補助因子とのその相互作用に依存している(Chang et al., 1996;Piper et al., 1999;Passner et al. , 1999)。本研究では、HOX/PBX相互作用は、Antennapediaタンパク質に由来する送達モチーフに融合したHOXヘキサペプチドのミミックである、HXPペプチドによって遮断された(Derossi et al., 1998)。
HSPCでのCD133発現は、CD34発現に先行し(Bhatia et al 2001,McGuckin et al 2003b)、高い増殖及び長期再増殖可能性を備えた初期HSPC個体群を定義する(de Wynter et al 1998, Pasino et al 2000)。この多能性HSPC個体群をHXPペプチドによって処理することは、その増殖を遮断し、細胞周期のGO−G1期にある細胞の割合を上昇させた。これは、HOXB4が主要なHSPC増殖のポジティブレギュレータであることを示す以前の研究と一致する(Antonchuk et al., 2002;Kyba et al., 2002)。培養物の寿命は、分化した前駆体個体群はもちろんのこと、推定上の幹細胞に対するその効果を確認する。これらの遺伝子標的に対するHOXヘキサペプチドの阻害効果の特異性は、その可逆性によって強調され、遺伝子転写及び細胞増殖は、HXPペプチド除去時に再開した。GO−G1における多能性HSPCの保護及びその可逆性は、試験管内で長期間に渡って造血性の幹/前駆細胞を維持及び/又は増殖することにおける、HXPペプチドの役割を示唆している。加えて、細胞周期を一時的に停止又は遅延することによって、HXPペプチドは、内因性HSPC個体群を多くの化学療法計画と関連する細胞毒性ショックから保護することができる。
増殖を遮断することに加えて、HXPペプチドは、HOXB4及びHOXB8の迅速なダウンレギュレーションも引き起こした。前者はHOX遺伝子の既知の標的であり、自己調節も受け、そのことはHXPペプチドに対するその感受性を説明する。HOXB8もこの方法で調節できる。HSPCにおけるHOXB4のダウンレギュレーションは、特にHXPペプチドによる細胞増殖の阻害と同じ時間的経過で可逆性であるため、一部はHXPペプチドの増殖阻害効果の原因となっている。
いくつかの他のHOX/PBX標的も本研究で同定された。これらのうち最も顕著なのは、細胞増殖レギュレータN−RAS、及び染色体安定性を維持するために必要なテロメラーゼ活性の成分であるTERTである。これらの標的のどちらもHXPペプチドによってダウンレギュレートされる。標的遺伝子も、DNA結合因子CTCF(Ohlsson et al.,2001)及び翻訳開始因子EIF4E(Thornton et al., 2003)を含めた、遺伝子発現の調節に関与する因子の多様なセットを含む。
HSPC調節に加えて、HOX遺伝子の調節不全が一部の白血病に関係している(Owens and Hawley, 2002)。AMLは、明確なAMLサブタイプを定義する異なる段階での骨髄性分化の遮断を特徴とする、異種白血病である。本発明者らは異なる発生段階で停止された骨髄性白血病細胞系を使用して、標的細胞の発生段階に依存しないことを示してきた。それゆえ原発性AML及び成熟骨髄性白血病の両方において治療上有用であると思われる。加えてHXPペプチドは、細胞周期のG0−G1期の細胞の割合を低減させた。この効果は2時間以内に明らかであり、遺伝子発現の特異的変化を伴った。4つすべての白血病系のHXPペプチド処理は、HSPCと共通して、HOXB4及びHOXB8のダウンレギュレーション、並びに細胞分化のマーカーであるCD38のアップレギュレーションを引き起こした。HSPC個体群においてHXPペプチドによって遮断されたHOX/PBX標的遺伝子の大部分がこれらの白血病由来細胞系で影響を受けないことは注目に値する。これは、これらの遺伝子の調節が細胞タイプ間で異なり、異なる状況において異なる転写因子によって活性化できることを示している。この唯一の例外は、HSPC及び4つすべての白血病細胞系の両方で強力にダウンレギュレートされる、癌遺伝子N−RASであった。N−RAS調節においてHOX/PBX転写因子に対するより完全な依存があり、N−RASは、HOX遺伝子過剰発現と細胞形質転換とを関連付けるものと考えられる。
ここで述べたHXPペプチドの特性は、いくつかの治療用途を有し得ることを示す。本研究は、HOX遺伝子がマウス白血病ウィルスによる細胞の形質転換に必要であることを示す最近の研究(Ayton and Cleary, 2003)一致して、急性骨髄性そしておそらくリンパ性白血病におけるHOX/PBX相互作用の役割も示唆している。そしてHXPペプチドを用いてこれらのHOX/PBX相互作用を遮断することは、白血病細胞増殖を生体内で防止する手段である。加えて細胞周期に入る細胞の割合を上昇させることによって、他の化学療法試薬の対してその感受性を上昇させることもできる。
方法
使用した方法は、別途規定しない限り、先の実施例と同じであった。
1.悪性細胞系培養の特異的条件
固形腫瘍細胞系(Cancer Research UK)は、10%FCS(Sigma Aldrich)及びpenstrep(1% Sigma)を添加した適当な培地(表を参照、Sigma-Aldrich、英国)より成る液体培養系に4×10細胞/mlで播種した。すべての細胞系は、HXPペプチド(実施例3と同様、20μg/ml又は200μg/ml)又は対照ペプチドCXP(20μg/ml又は200μg/ml)を用いて増殖させた。
KG1a、KG1、HL60及びU937細胞系(EACC、英国)は、10%FCS(Sigma Aldrich)及びゲンタマイシン(50μg/ml Life Technologies)を添加したRPMI−1640培地(Life Technologies、英国)より成る液体培養系に5×10細胞/mlで3通り播種した。すべての細胞系は、HXPペプチド(20μg/ml)又は対照ペプチド(20μg/ml)によって増殖させた。
細胞系は37℃、5%CO、湿潤雰囲気下で各種の時点で培養し、各種の時点で細胞数を計測した。
2.ヒトHOX RT−PCR配列
使用したRT−PCRプライマーの配列を以下に示す。各プライマー対について、増幅領域は、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)を通じて入手できる既知の遺伝子配列に関連付けて与える。
結果
1.広範囲に渡る各種の悪性細胞系の増殖を遮断するHXPペプチド
本発明者らは、前に述べたのと同様のアッセイを使用して、いくつかの異なる悪性細胞系の対するHXPペプチドの活性を試験した。以下の癌:結腸直腸癌、膵臓癌、小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮頚癌、卵巣癌及び胃癌(図11)に由来する細胞の増殖を遮断するには、20μg/mlの用量で十分であったが、腎臓癌、乳癌及び非小細胞肺癌に由来する細胞によっては著しい影響は見られなかった。増殖の低減には、遺伝子発現の特異的変化が伴い(図11)、少なくとも2つの異なるHox遺伝子は各ケースで転写的にサイレントであった。Hox遺伝子の別個のセットが各癌細胞系においてダウンレギュレートされ、HOX機能の包括的なインヒビターとしてのHXPペプチド及び癌細胞増殖の対する必然的に幅広いその効果を反映していることは、注目に値する。
2.HXPペプチド濃度の効果
20μg/mlでのHXPペプチドの使用は、細胞増殖で著しい低減を引き起こし、一部のケースでは増加倍数は1未満であり、すなわち培養物中で7日後に生存している細胞数は、開始個体群未満であることが明らかである。したがって、HXPペプチドの用量増加は開始培養物中のすべての細胞を除去できるということが考えられる。
これは200mg/mlの用量を使用して試験した。用量のこの10倍の増加は、一部の悪性腫瘍の完全な除去を引き起こした(図12)。同じ濃度の対照ペプチドは、増殖の対して著しい影響を持たず、HXPペプチドの観察された細胞殺滅特性がこのペプチドにとって特異的であり、非特異的毒性の結果でないことを示している。
3.HXPペプチドの誘導体
本発明者らは、より小型のペプチドがHXPペプチドを置換できるかどうかについて調査した。1つの可能性は、ヘキサペプチド配列のみに基づくが、以前に特徴付けられた細胞浸透剤によって要求されるものと一致する電荷及び疎水性比を備えたペプチドである。これは、HXP4(10)と呼ばれる10個のアミノ酸のペプチドの設計につながった。これは、元の分子によって使用された細胞浸透性ドメインを欠いた、はるかに小型の分子である。HXP4(10)は、アミノ酸配列WYPWMKKHHR(配列番号:7)を有する。HXPペプチドと同様に、HXP4(10)は、一部の悪性細胞系の増殖を高度に特異的な方法で遮断することもできる(図13)。それはなお、一部の悪性細胞系に対して著しい活性を示す。より小さいサイズのHXP4(10)は、生産コストを著しく(約80%)低減する。
HXP4(10)は、特異的細胞浸透性配列を持たなくても、細胞系に対して効果を及ぼせることに特に注目した。本発明のペプチドにおける細胞浸透性配列の存在は、治療上の有用性には要求されない。細胞浸透性配列の存在なしに、HXP4(10)が細胞に入る能力は、本発明の予期しなかった更なる利点である。
4.HXPペプチド及びHXP4(10)の安定性
HXPペプチド及びHXP4(10)の安定性は、今回、ヒト血清で試験されている(図14)。これは、それぞれが生体内で使用された場合にどれだけ強力であるかの指標を与える。HXPペプチドは1時間の半減期を有し、HXP4(10)は約4時間の半減期を有する。これは、ペプチドに基づく他の薬剤の好適な場合に匹敵している;例えば血液凝固を防止するために通常使用される低分子量ヘパリンは、わずか30分の血清半減期を有する。
未熟血液幹細胞(AC133+細胞)及び白血病細胞系KGla、KG1、HL60及びU937の細胞増殖に対するHXPペプチドの効果を、HXP投与後の時間の関数として示す図である。 HXPペプチドが投与される細胞(AC133+、KGla、KG1、HL60及びU937)の細胞周期に対するHXPペプチドの効果を、HXP投与後の時間の関数として示す図である。 図1と同様の図であり、AC133+KGla、KG1及びU937細胞の細胞増殖に対する、HXPペプチドのより長期間の効果を示す。 HXPペプチドによる処理の7日後の、幹/前駆細胞の各種マーカー、又はKGla細胞における成熟/分化のマーカーを検出するための、RT−PCRの結果を示す図である。 AC133+細胞の細胞増殖に対するHXPペプチドの効果を示す図である。−▲−は、HXPを添加していない対照であり、−■−は、HXPを0日目、7日目及び14日目に添加した細胞を示し、−●−は、HXPペプチドを0日目に添加したが、7日目及び14日目に回収した細胞を示し、−X−は、HXPペプチドを0日目に添加し、7日目にHXPペプチドを回収してHOX B4タンパク質を添加した細胞を示す。 HXPペプチドによるHOXとPBXとの結合の阻害を示す図である。タンパク質のウェスタンブロットはCD133+細胞から抽出して、(a)PBX1、2及び3アイソフォームに対して産生させた抗体、及び(b)抗ベータアクチン抗体によってプローブした。「架橋した」タンパク質は、1−エチル−3−[3−(ジメチル−アミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)中で抽出して、非共有結合タンパク質を架橋させた。1は、未処理細胞;2は、CXP4ペプチド処理(治療)細胞;3は、HXPペプチド処理細胞である。HXPペプチドの存在は、PBXモノマー(52kDa)からのPBX/HOXダイマー(90〜125kDa)の形成を阻害した。 CD133+細胞のHXPペプチド処理の結果を示す図である。生存度及び細胞数は18日間にわたって培養して監視した。 (A)HXPペプチド又はCXP4によって処理した細胞の18日間にわたる平均生存細胞の増加倍数(±S.E.M.)を示す。ひし形は、0日目、7日目及び14日目におけるCXP4ペプチドの添加;正方形は、0日目、7日目及び14日目におけるHXPペプチドの添加;三角形は、0日目におけるHXPペプチドの添加及び7日目における回収の結果を示す。(B)18日目におけるRT−PCRによって分析した一連のPBX/HOX標的遺伝子の発現を示す。(1)は、新たに単離された未処理のCD133+細胞;(2)は、CXP4処理細胞;(3)は、0日目、7日目及び14日目におけるHXPペプチドの添加;(4)は、0日目におけるHXPペプチドの添加及び7日目における回収の結果を示す。 18日目のHXPペプチド処理細胞で検出されなかった転写は、7日目のHXPペプチドの除去によって回復した。ベータアクチン発現は装填(loading)対照として含まれている。レーンは2通り実施した。−は、発現を検出せず;+は、発現を検出;++は、(+)の場合より少なくとも5倍高い発現を表す。3回の実験を代表するデータである。 CD133+細胞周期におけるHXPペプチドの効果を示す図である。培養CD133+細胞を、細胞周期のGO−G1期における細胞のパーセンテージについて分析した。HXPペプチド処理は、細胞周期のGO−G1期において、CXP4処理細胞よりも高い割合の細胞を維持した。HXPペプチドの回収は、より多くのCD133+細胞を細胞周期に入れた。結果は、CXP4(対照ペプチド)処理細胞と比較した変化のパーセンテージとして表現する。黒色バーは、0日目、7日目及び14日目におけるHXPペプチドで処理した細胞である。灰色バーは、0日目のみのHXPペプチドによって処理した細胞である。 白血病細胞系に対するHXPペプチド処理の効果を示す図である。CXP及びHXPペプチドの阻害は、48時間にわたって培養して評価した。A)は、HXP又は対照CXP4ペプチドの存在下での細胞数の比較を示す。4回の実験を代表するデータ(=/−SEM)である。円形は、未処理細胞;ひし形は、CXP4処理細胞;四角は、HXPペプチド処理細胞である。B)は、培養18日目における細胞RT−PCRによって分析されたPBX/HOX標的遺伝子の発現を示す表である。ベータアクチン発現は装填(loading)対照として含まれている。レーンは2通り実施した。Cは、CXP4処理;Hは、HXPペプチド処理である。−は、発現を検出せず;+は、発現を検出;++は、(+)の場合より少なくとも5倍高い発現を表す。 白血病細胞系の細胞周期に対するHXPペプチドの効果を示す図である。HXPペプチド処理での細胞周期のGO−G1期におけるKGla、HL60及びU937細胞の割合をCXP4と比較した。細胞は、細胞周期のGO−G1期において0.5mM L−ミモシンへの暴露によって同調させた。結果は4回の実験の平均パーセンテージとして表す(+/−SE)。 HXPペプチドが各種の悪性細胞系の増殖を阻害することを示す図である。各種の悪性腫瘍を示すいくつかの細胞系を7日間培養し、HXPペプチド又は対照ペプチドCXPを3日目に最終濃度20μg/mlで添加した。バーは、7日にわたる各細胞系の増加倍数を示し;空の点線バーは、CXPペプチド処理細胞を示すのに対して、実線バーは、HXPペプチドの添加を示す。誤差バーは、平均の標準誤差を示し、nは実施した実験の回数である。使用した細胞系は:AML−KGla;膀胱−HT;胸部−SKBR3;子宮頚部−HeLa;結腸−Colo41;胃−MKN−45;大細胞肺癌−MES;メラノーマ−DX3;卵巣−1847;膵臓−Panc-Tul;前立腺−LNCAP;腎臓−HT1376;小細胞肺癌−NCI-h510Aであった。 各細胞系によって示されたHOX遺伝子の発現の変化は、7日間の終わりに細胞から抽出したRNAに対するRT−PCRによって評価した。「不活性化HOX遺伝子」とは、示したHOX遺伝子それぞれの発現レベルがHXPペプチド処理細胞において対照と比較して少なくとも5倍低かったものを意味する。*分析はまだ完了していない。 より高い用量のHXPペプチドが培養中のすべての細胞を除去できることを示す図である。各種の悪性腫瘍を示すいくつかの細胞系を7日間培養し、HXPペプチド又は対照ペプチドCXPを3日目に最終濃度200μg/mlで添加した。バーは、7日にわたる各細胞系の増加倍数を示し;空の点線バーは、CXPペプチド処理細胞を示すのに対して、実線バーは、HXPペプチドの添加を示す。誤差バーは、平均の標準誤差を示し、nは実施した実験の回数である。使用した細胞系は:膀胱−HT;子宮頚部−HeLa;メラノーマ−DX3;膵臓−Panc-Tu1であった。 HXP4(10)がメラノーマ(DX3)細胞系の増殖を阻害することを示す図である。各種の悪性腫瘍を示すいくつかの細胞系を7日間培養し、HXP4(10)又は対照ペプチドCXPペプチドを3日目に最終濃度20μg/mlで添加した。バーは、7日にわたる各細胞系の増加倍数を示し;空の点線バーは、CXPペプチド処理細胞を示すのに対して、実線バーは、HXP4(10)の添加を示す。誤差バーは、平均の標準誤差を示し、nは実施した実験の回数である。 ヒト血清中でのHXPペプチドの安定性を示す図である。HXP(10)又はHXPペプチド30μgを、ヒト血清50μl中で37℃にて、表示した時間にわたってインキュベートした。サンプルは変性PAGEで実験し、銀染色した。矢印は、おそらくHXPペプチドの分解生成物を示す。

Claims (16)

  1. アミノ酸配列
    WMX
    (式中、XWであり;
    はYであり;
    はPであり;
    はK又はRであり;
    K又はRであり;
    H又はKであり;
    H又はKである。)
    を含むアミノ酸残基数が25以下のペプチドの、癌を治療又は防止するための医薬品の製造における使用。
  2. 前記ペプチドX〜Xがアミノ酸配列WYPWMKKHHRを有する、請求項1に記載の使用。
  3. 前記ペプチドが細胞浸透部分をさらに含む、請求項1又は2に記載の使用。
  4. 前記細胞浸透部分がペプチドX〜Xのカルボキシ末端に直接結合されている、請求項3に記載の使用。
  5. 前記細胞浸透部分がアミノ酸配列:
    QIKIWFQNRRMKWKK
    (式中、XはR又はQである。)
    を有する、請求項3又は4に記載の使用。
  6. 前記細胞浸透部分がアミノ酸配列:
    QX1011WFQNX1213MX14WX1516
    (式中、XはR又はQであり、
    、X11はそれぞれ独立してI又はLであり;
    10、X12、X13、X14、X15及びX16はそれぞれ独立してK又はRである。)
    を有する、請求項3又は4に記載の使用。
  7. 前記細胞浸透部分がアミノ酸配列:
    QIRIWFQNRRMKWKK;
    QIKIWFQNKRMKWKK;
    QIKIWFQNKKMKWKK;
    QIRIWFQNRKMKWKK;
    QIRIWFQNRRMRWKK;
    QIRIWFQNRRMKWRK;
    QIRIWFQNRRMKWKR;
    QIRIWFQNRRMKWRR;
    QIRIWFQNRRMKWKK;
    QIKIWFQNRRMKWRK;
    QIRIWFQNKRMKWRK;
    QIKLWFQNRRMKWKK、
    QLKLWFQNRRMKWKK;又は
    QLRIWFQNRRMKWKK
    を有する、請求項3又は4に記載の使用。
  8. 前記ペプチドが配列
    WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWK、又は
    WYPWMKKHHRQIKIWFQNRRMKWKK
    を有する、請求項3に記載の使用。
  9. 前記ペプチドが配列
    WYPWMKKHHR
    を有する、請求項1に記載の使用。
  10. 前記癌細胞が1又はそれ以上のHox遺伝子を発現する、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の使用。
  11. PBXが前記癌細胞において癌遺伝子として作用しない、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の使用。
  12. 生体内で幹細胞個体群を維持又は増殖させるための医薬品の製造における請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のペプチドの使用。
  13. 生体外で幹細胞を維持又は増殖させる方法であって、試験管内で前記幹細胞に請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のペプチドを接触させることを含む、前記方法。
  14. 試験管内で前記細胞を前記ペプチドの非存在下で培養するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  15. 請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のペプチド及び薬学的に許容し得る担体を含む、薬学的組成物。
  16. 細胞毒性薬又は化学療法剤をさらに含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
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