JP4849700B2 - 抗インテグリンα3抗体の複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬および診断薬の分野に属し、抗インテグリンα3抗体を含んで成る複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インテグリンα3は、β1インテグリンファミリーに属する蛋白質であり、細胞−細胞、及び細胞−細胞外基質間の接着分子として機能し(Takada Y. et al., J.Cell.Biochem. 37 : 385-393, 1988 ; Elice M.J. et al., J.Cell.Biol. 112 : 169-181, 1991) 、皮膚(表皮細胞)、腎糸球体、甲状腺、食道、尿路上皮、胸腺、線維芽細胞、活性化リンパ球、多くの腫瘍細胞株等に分布している (Fradet Y. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81 : 224-228, 1984 ; Hemler M.E. et al., Immunology Today 9 : 109-113, 1984) 。
【0003】
この様な腫瘍細胞株の1つとして、ヒト髄芽腫 (Medulloblastoma)由来の細胞株ONS−76(Tamura, K. et al., Cancer Res. 49 : 5380-5384, 1989) が知られている。インテグリンα3は、非還元条件下で約150kDa の分子量を有し(還元条件下で135kDa +25kDa の分子量を示す)、非還元条件下で110kDa の分子量を有する(還元条件下で130kDa の分子量を示す)β1鎖とから成るヘテロ二量体(VLA3)として存在する。
【0004】
抗インテグリンα3抗体としては、ヒト膀胱癌細胞腫T24に対する抗体J143 (Fradet, Y. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81 : 224-228, 1984) 、ヒト線維芽細胞腫HT1080、W138VA13に対する抗体P1B5 (Wayner E.A. et al., J.Cell Biol. 105 : 1873-1884, 1988 ; Elice M.J. et al., J.Cell Biol. 112 : 169-181, 1991) 、ヒト膀胱癌細胞T24に対する抗体SM−S1 (Takeuchi, K. et al., Exp.Cell.Res. 211 : 133-141, 1991) 、ヒト肺癌細胞A549に対する抗体A3−1VA5(Weitzman, J.B. et al., J.Biol.Chem. 268 : 8651-8657, 1993) 、ヒト皮膚細胞に対する抗体VM−3(Morhenn, V.B. et al., J.Clin.Invert. 76 : 1978-1983, 1985) 、抗体M−kid2 (Natali PG. et al., Int.J.Cancer 54 : 68-72, 1993) 、及びFL細胞に対する抗体anti−FRP−2(Ohta, H. et al., EMBO J. 13 : 2044-2055, 1994) 等が知られている。
【0005】
また、前記ヒト髄芽腫由来細胞株ONS−76(Tamura, K. et al., Cancer Res. 49 : 5380-5384, 1989) に対するモノクローナル抗体として、ONS−M21抗体(Moriuchi, S. et al., Br.J.Cancer 68 : 831-837, 1993) が知られており、この抗体をヒト型化した再構成ヒト抗体(国際特許出願公開番号WO95/14041)が知られている。
WO96/15811にはインテグリン結合活性を有する環状ペプチドとDNAとをポリリジンにより連結したタンパク質によるDNAのインターナリゼーションと該DNAの発現について記載されている。
しかしながら、抗インテグリンα3抗体がインターナライズすることは知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、抗インテグリンα3抗体のインターナリゼーションを利用して抗腫瘍剤等を腫瘍細胞に導入し、腫瘍細胞の増殖を阻害するための新規な手段を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、種々研究した結果、インテグリンα3に対する抗体(抗インテグリンα3抗体)がインテグリンα3を発現する細胞にインターナライズ(internalyze) し、その際に該抗体に連結した他の物質を該細胞に導入することができることを発見し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明は、インテグリンα3に対する抗体(抗インテグリンα3抗体)又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤とを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるヒトインテグリンα3に結合する抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、下記の性質を有するインテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
【0009】
(1) SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した分子量が約140kDaである;
(2) アミノ基側末端アミノ酸配列がPhe Asn Leu Asp Thr Arg Phe Leu Val Val Lys Glu Ala Gly Asn Pro Xaa Xaa Leu Phe(Xaa は特定されず)(配列番号:1 )である;
(3) 内部に次のアミノ酸配列を含有する:
▲1▼ Asn Ile Thr Val Lys Asn Asp Pro Gly His His Ile Ile Glu Asp (配列番号:2 )
▲2▼ Asp Asn Leu Arg Asp Lys Leu Arg Pro Ile Ile Ile Ser (配列番号:3 )
▲3▼ Asn Tyr Ser Leu Pro Leu Arg (配列番号:4 )
▲4▼ Val Asn His Arg Leu Gln Ser Phe Phe Gly Gly Thr Val (配列番号:5 )
▲5▼ Lys Thr Val Glu Asp Val Gly Ser Pro Leu Lys Tyr Glu Phe Gln Val Gly Pro (配列番号:6 )。
【0010】
本発明はまた、抗インテグリンα3モノクローナル抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、ONS-M21 抗体(IFO No. 50382 )又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、再構成ヒト抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、再構成ヒトONS-M21 抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又はその抗原結合活性を有するFab 、F(ab')2 、scFvと化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体を提供する。
【0011】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と抗腫瘍剤とを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と、メルファラン(Melphalan )、シスプラチン(Cis-platinum)、カルボプラチン(Carboplatin )、マイトマイシンC (Mitomycin C )、アドリアマイシン(Adriamycin; Doxorubicin )、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin )、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、メトトレキサート(Methotrexate)、5-フルオロウリジン(5-Fluoruridine)、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5-Fuluoro-2'-deoxyuridine )、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside)、アミノプテリン(Aminopterin )、ビンクリスチン(Vincristine )、又はビンデシン(Vindesine )とを連結してなる複合体を提供する。
【0012】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とサイトカインとを連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とインターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロン(IFN )とを連結して成る複合体を提供する。
【0013】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とジフテリアトキンシンA 鎖(Diphtheria toxin A)、シュードモナスエンドトキシン(Pseudomonas endotoxin)、リシンA 鎖(Ricin A chain )、無糖鎖リシンA 鎖(Deglycosylated ricin A chain )、アブリンA 鎖(Abrin A chain )、ゲロニン(Gelonin )、ポークウィード抗ウィルス蛋白(PAP-s ;Pokeweed anti-viral protein from seeds)、ブリオジン(Biriodin)、サポリン(Saporin )、モモルジン(Momordin)、モモルコキン(Momorcochin )、ジアンシン32(Dianthin 32)、ジアンシン30(Dianthin 30)、モデッシン(Modeccin)、ビスカミン(Viscumin)、ボルケシン(Volkesin)、ドデカンドリン(Dodecandrin )、トリチン(Tritin)、ルフィン(Luffin)又はトリコキリン(Trichokirin )とを連結して成る複合体を提供する。
【0014】
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤とをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるヒトインテグリンα3に結合する抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、下記の性質を有するインテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
【0015】
(1) SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した分子量が約140kDaである;
(2) アミノ基側末端アミノ酸配列がPhe Asn Leu Asp Thr Arg Phe Leu Val Val Lys Glu Ala Gly Asn Pro Xaa Xaa Leu Phe(Xaa は特定されず)(配列番号:1 )である;
(3) 内部に次のアミノ酸配列を含有する:
▲1▼ Asn Ile Thr Val Lys Asn Asp Pro Gly His His Ile Ile Glu Asp (配列番号:2 )
▲2▼ Asp Asn Leu Arg Asp Lys Leu Arg Pro Ile Ile Ile Ser (配列番号:3 )
▲3▼ Asn Tyr Ser Leu Pro Leu Arg (配列番号:4 )
▲4▼ Val Asn His Arg Leu Gln Ser Phe Phe Gly Gly Thr Val (配列番号:5 )
▲5▼ Lys Thr Val Glu Asp Val Gly Ser Pro Leu Lys Tyr Glu Phe Gln Val Gly Pro (配列番号:6 )。
【0016】
本発明はまた、抗インテグリンα3モノクローナル抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、ONS-M21 抗体(IFO No. 50382 )又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、再構成ヒト抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
【0017】
本発明はまた、再構成ヒトONS-M21 抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又はその抗原結合活性を有するFab 、F(ab')2 、scFvと化学療法剤またはトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と抗腫瘍剤とをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
【0018】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と、メルファラン(Melphalan )、シスプラチン(Cis-platinum)、カルボプラチン(Carboplatin )、マイトマイシンC (Mitomycin C )、アドリアマイシン(Adriamycin; Doxorubicin )、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin )、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、メトトレキサート(Methotrexate)、5-フルオロウリジン(5-Fluoruridine)、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5-Fuluoro-2'-deoxyuridine )、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside)、アミノプテリン(Aminopterin )、ビンクリスチン(Vincristine )、又はビンデシン(Vindesine )とをリンカーにより連結してなる複合体を提供する。
【0019】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とサイトカインとをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とインターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロン(IFN )とをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
【0020】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とジフテリアトキンシンA 鎖(Diphtheria toxin A)、シュードモナスエンドトキシン(Pseudomonas endotoxin)、リシンA 鎖(Ricin A chain )、無糖鎖リシンA 鎖(Deglycosylated ricin A chain )、アブリンA 鎖(Abrin A chain)、ゲロニン(Gelonin )、ポークウィード抗ウィルス蛋白(PAP-s ;Pokeweed anti-viral protein from seeds)、ブリオジン(Biriodin)、サポリン(Saporin )、モモルジン(Momordin)、モモルコキン(Momorcochin )、ジアンシン32(Dianthin 32)、ジアンシン30(Dianthin 30)、モデッシン(Modeccin)、ビスカミン(Viscumin)、ボルケシン(Volkesin)、ドデカンドリン(Dodecandrin )、トリチン(Tritin)、ルフィン(Luffin)又はトリコキリン(Trichokirin )とをリンカーにより連結して成る複合体を提供する。
【0021】
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤とを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるヒトインテグリンα3に結合する抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、下記の性質を有するインテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
【0022】
(1) SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した分子量が約140kDaである;
(2) アミノ基側末端アミノ酸配列がPhe Asn Leu Asp Thr Arg Phe Leu Val Val Lys Glu Ala Gly Asn Pro Xaa Xaa Leu Phe(Xaa は特定されず)(配列番号:1 )である;
(3) 内部に次のアミノ酸配列を含有する:
▲1▼ Asn Ile Thr Val Lys Asn Asp Pro Gly His His Ile Ile Glu Asp (配列番号:2 )
▲2▼ Asp Asn Leu Arg Asp Lys Leu Arg Pro Ile Ile Ile Ser (配列番号:3 )
▲3▼ Asn Tyr Ser Leu Pro Leu Arg (配列番号:4 )
▲4▼ Val Asn His Arg Leu Gln Ser Phe Phe Gly Gly Thr Val (配列番号:5 )
▲5▼ Lys Thr Val Glu Asp Val Gly Ser Pro Leu Lys Tyr Glu Phe Gln Val Gly Pro (配列番号:6 )。
【0023】
本発明はまた、抗インテグリンα3モノクローナル抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、ONS-M21 抗体(IFO No. 50382 )又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、再構成ヒト抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
【0024】
本発明はまた、再構成ヒトONS-M21 抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、抗インテグリンα3抗体又はその抗原結合活性を有するFab 、F(ab')2 、scFvと化学療法剤またはトキシンとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と抗腫瘍剤とを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
【0025】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片と、メルファラン(Melphalan )、シスプラチン(Cis-platinum)、カルボプラチン(Carboplatin )、マイトマイシンC (Mitomycin C )、アドリアマイシン(Adriamycin; Doxorubicin )、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin )、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、メトトレキサート(Methotrexate)、5-フルオロウリジン(5-Fluoruridine)、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5-Fuluoro-2'-deoxyuridine )、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside)、アミノプテリン(Aminopterin )、ビンクリスチン(Vincristine )、又はビンデシン(Vindesine )とを中間支持体により連結してなる複合体を提供する。
【0026】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とサイトカインとを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とインターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロン(IFN )とを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
【0027】
本発明はまた、インテグリンα3に対する抗体又は抗原結合能を有するその断片とジフテリアトキンシンA 鎖(Diphtheria toxin A)、シュードモナスエンドトキシン(Pseudomonas endotoxin)、リシンA 鎖(Ricin A chain )、無糖鎖リシンA 鎖(Deglycosylated ricin A chain )、アブリンA 鎖(Abrin A chain)、ゲロニン(Gelonin )、ポークウィード抗ウィルス蛋白(PAP-s ;Pokeweed anti-viral protein from seeds)、ブリオジン(Biriodin)、サポリン(Saporin )、モモルジン(Momordin)、モモルコキン(Momorcochin )、ジアンシン32(Dianthin 32)、ジアンシン30(Dianthin 30)、モデッシン(Modeccin)、ビスカミン(Viscumin)、ボルケシン(Volkesin)、ドデカンドリン(Dodecandrin )、トリチン(Tritin)、ルフィン(Luffin)又はトリコキリン(Trichokirin )とを中間支持体により連結して成る複合体を提供する。
【0028】
本発明はまた、上記に記載した複合体を含んで成る医薬組成物を提供する。
本発明はまた、上記に記載した複合体を含んで成る抗腫瘍作用を有する医薬組成物を提供する。
本発明はさらに、上記に記載した複合体を含んで成る診断用組成物を提供する。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明において、イムノトキシンとは抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシンとを連結して成る複合体を意味する。また、化学療法剤イムノコンジュゲートとは抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤とを連結して成る複合体を意味する。これらの複合体において、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤とは、それら自体が有する連結基、リンカー、中間支持体又はそれらの組み合わせにより連結される。
【0030】
リンカーとは、抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを各々相互に連結させる際に用いられる連結分子を意味する。リンカーにより抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結させる際に、一分子のリンカーを用いるだけではなく、複数の同種または異種のリンカーを使用してもよい。
【0031】
中間支持体とは、抗体又は抗原結合能を有するその断片と複数の化学療法剤または複数のトキシンとを一度に結合して担持しうるリンカーまたはリンカー以外の分子を意味する。中間支持体により抗体又は抗原結合能を有するその断片と複数の化学療法剤または複数のトキシンとを連結させる際に、リンカーを使用してもよい。
本発明において使用される抗インテグリンα3抗体に対する抗原は、前記のごとくすでに知られている。本発明者らは、ヒト髄芽腫由来の細胞株ONS−76に対するマウスモノクローナル抗体(ONS−M21抗体)の抗原を特定すべく検討した結果、該抗原は次の性質を有することを見出した。
【0032】
(1)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した分子量が約140kDa である;
(2)アミノ末端アミノ酸配列がPhe Asn Leu Asp Thr Arg Phe Leu Val Val Lys Glu Ala Gly Asn Pro Xaa Xaa Leu Phe (Xaaは特定されず)(配列番号:1)である;
(3)内部に次のアミノ酸配列を含有する:
▲1▼ Asn Ile Thr Val Lys Asn Asp Pro Gly His His Ile Ile Glu Asp (配列番号:2)
▲2▼ Asp Asn Leu Arg Asp Lys Leu Arg Pro Ile Ile Ile Ser (配列番号:3)
▲3▼ Asn Tyr Ser Leu Pro Leu Arg (配列番号:4)
▲4▼ Val Asn His Arg Leu Gln Ser Phe Phe Gly Gly Thr Val (配列番号:5)
▲5▼ Lys Thr Val Glu Asp Val Gly Ser Pro Leu Lys Tyr Glu Phe Gln Val Gly Pro (配列番号:6);
を有する。
【0033】
実験の詳細は実験例1に記載する。部分アミノ酸配列についての情報を含めて、上記の性質から、ONS−M21抗体の抗原がインテグリンα3であることが推定された。
本発明に使用される抗インテグリンα3抗体を得るための抗原としては、インテグリンα3を発現している細胞でもよく、また、そのような細胞から精製又は半精製インテグリンα3蛋白質でもよい。この様な細胞としては、例えば従来技術の項に前記した種々の細胞株を使用することができる。本発明においてはヒト髄芽腫由来細胞ONS−76株、及びこれに対して生成した抗体ONS−M21について具体的に記載する。
【0034】
本発明に使用される抗体は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でもよいが、特にモノクローナル抗体が好ましい。
モノクローナル抗体は、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作成できる。すなわちインテグリンα3もしくはインテグリンα3発現細胞、例えばヒト髄芽腫由来細胞ONS−76株を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作成できる。
【0035】
また、インテグリンα3ポリペプチドを感作抗原として用いる場合、ヒトインテグリンα3ポリペプチドが好ましい。ヒトインテグリンα3ポリペプチドのアミノ酸配列及び塩基配列を配列番号7に示す。ヒトインテグリンα3ポリペプチドのアミノ酸配列において、N 末端のMet よりN 末端から32番目のAla まではシグナルペプチドであり、ヒトインテグリンα3が成熟ポリペプチドとして産生される際に切断される。
感作抗原として使用されるインテグリンα3ポリぺプチドは、その目的を達する限り1または複数個のアミノ酸残基の変異、置換、欠失、挿入又は付加があってよい。複数個とは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8又は9の中から選ぶことができる。
【0036】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に作用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはマウス、ラット、ハムスター、ウサギ等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物に腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline) や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
【0037】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. 123 : 1548, 1978) , p3−U1(Current Topics in Micro-biology and Immunology 81 : 1-7, 1978) , NS−1(Eur.J. Immunol. 6 : 511-519, 1976) , NPC−11(Cell, 8 : 405-415, 1976) , SP2/0(Nature, 276 : 269-270, 1978) , FO (J. Immunol.Meth. 35 : 1-21, 1980) , S194( J.Exp.Med. 148 : 313-323, 1978) ,R210(Nature, 277 : 131-133, 1979) 等が好適に使用される。
【0038】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法 (Milsteinら、Methods Enzymol. 73 : 3-46, 1981) 等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0039】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000−6000程度のPEG溶液を通常、30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0040】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
【0041】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質または抗原発現細胞で感作し、感作B リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、特定の抗原または抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原または抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93-12227 、WO 92-03918 、WO 94-02602 、WO 94-25585 、WO 96-34096 、WO 96-33735 、米国特許番号US 5545806参照)。
【0042】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0043】
なお、マウスONS-M21 抗体産生ハイブリドーマは、IFO 50382として(財)発酵研究所(大阪府大阪市淀川区十三本町2-17-85 )に寄託されている。このONS-M21 抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウス(日本クレア製)の腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からONS-M21 抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば1 0 %ウシ胎児血清、5 %BM-Condimed H1(Boehringer Mannheim 製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM 培地(GIBCO-BRL 製)、PFHM-II 培地(GIBCO-BRL 製)等で培養し、その培養上清からmONS-M21抗体を精製する方法で行うことができる。
【0044】
ハイブリドーマを作製して抗体を産生させる他に、所望の抗体を産生する免疫細胞、例えば感作リンパ球等を癌遺伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いて抗体を得てもよい。
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子を抗体産生細胞、例えばハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
【0045】
具体的には、目的とする抗体を産生するハイブリドーマや抗体を産生する免疫細胞、例えば感作リンパ球等を癌遺伝子(oncogene)等により不死化させた細胞から、抗体の可変領域(V 領域)をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. ら、Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chmczynski, P.ら、(1987) 162, 156-159 )等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia 製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia 製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0046】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit 等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびPCR を用いた5'-RACE 法(Frohman, M. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998-9002 ;Belyavsky, A. ら、Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することができる。得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
【0047】
目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー/プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0048】
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94 /11523 参照)。
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0049】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 95 /14041 参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region )をヒト抗体のCDR へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO
95 /14041 参照)。
【0050】
具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(FR; framework region)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 95 /14041 参照)。
CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、CDR が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDR が適切な抗原結合部位を形成するように抗体のV 領域のFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
【0051】
例えば、再構成ヒトONS-M21 抗体の再構成ヒトL 鎖をコードする遺伝子を含むプラスミドHEF-RVL-M21P-gk により形質転換された大腸菌Escherichia coli DH 5 α( HEF-RVL-M21P-gk)はFERM BP-4472として、そして再構成ヒトONS-M21 抗体の再構成ヒトH 鎖をコードする遺伝子を含むプラスミドHEF-RVH-M21-g γ1 により形質転換された大腸菌Escherichia coli DH 5 α(HEF-RVH-M21-g γ1 )はFERM BP-4471として、1993年11月18日に工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1番3 号)にブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0052】
キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用される。好ましいヒト抗体C 領域としては、C γが挙げられ、例えば、C γ1 、C γ2 、C γ3 およびC γ4 を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のV 領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のCDR とヒト抗体由来のFRおよびC 領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
【0053】
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、再構成ヒトONS-M21 抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 95-14041 参照)。
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab 、F(ab')2 、FvまたはシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。scFvは H鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させた構造を有する。また、抗体を構成するアミノ酸配列の一つまたは複数個のアミノ酸残基が変異、置換、欠失または挿入を受けた抗体も本発明において抗体として使用されうる。
【0054】
これらの抗体断片を得るためには、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc. 、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc. 、Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663 、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137 参照)。
【0055】
scFvは、抗体のH 鎖V 領域とL 鎖V 領域を連結することにより得られる(国際特許出願公開番号WO 88-09344 、WO 95-14041 参照)。このscFvにおいて、H 鎖V 領域とL 鎖V 領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH 鎖V 領域およびL 鎖V 領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V 領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19 残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる(米国特許US 5525491参照)。
【0056】
scFvをコードするDNA は、前記抗体のH 鎖または、H 鎖V 領域をコードするDNA 、およびL 鎖または、L 鎖V 領域をコードするDNA を鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA 部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR 法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA およびその両端を各々H 鎖、L 鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0057】
また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体断片は、前述のようにその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体断片も包含される。
これらの抗体断片は、抗体分子に比べて分子量が小さいため、生体において組織移行性が優れており、抗体を同様の機能を有する分子として有用である。
【0058】
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。抗体になされる修飾とは、化学的結合を導入することによる修飾であってもよいし、抗体のアミノ酸配列になされる修飾であってもよい。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0059】
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、抗体を取得することができる。哺乳類細胞を使用する場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。 また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
【0060】
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
【0061】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO96-30394、日本特許出願公告特公平7-93879 を参照)。
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0062】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。
【0063】
動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えばCHO (J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2) 両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340 )、あるいは(3) 昆虫細胞、例えばsf9 、sf21、Tn5 が知られている。CHO 細胞としては、特にDHFR遺伝子を欠損したCHO 細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220 )やCHO K-1 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。
【0064】
植物細胞としては、Nicotiana tabacum 由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギウス属(Aspergillus )属、例えばアスペルギウス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
【0065】
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivo にて抗体を産生してもよい。
一方、in vivo の産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。
【0066】
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。
【0067】
抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
【0068】
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594 )。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24,
131-138)。
【0069】
上述のようにin vitroまたはin vivo の産生系にて抗体を産生する場合、抗体のH 鎖またはL 鎖をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。
宿主への発現ベクターの導入方法としては、公知の方法、例えばリン酸カルシウム法(Virology (1973) 52, 456-467 )やエレクトロポレーション法(EMBO J. (1982) 1, 841-845 )等が用いられる。
【0070】
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0071】
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えばプロテインA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。プロテインA カラムに用いる担体として、例えばHyper D 、POROS 、Sepharose F.F. (Pharmacia)等が挙げられる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。
【0072】
これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
得られた抗体の濃度測定は、吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBS で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定する。例えば、ヒト抗体の場合、1 mg/ml を1.35 OD として算出すればよい。
【0073】
また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/ml に希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 μlを96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベートし、抗体を固層化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは濃度標準品として既知の濃度のヒトIgG (CAPPEL製)100 μlを添加し、室温にて1時間インキュベートする。
【0074】
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100 μlを加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベートの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
また、抗体の濃度測定には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
本発明で使用される抗体の抗原結合活性の評価は、通常知られた方法、例えばELISA 、EIA (酵素免疫測定法)、RIA (放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0075】
例えば、ELISA を用いる場合、 ONS-M21抗体のインテグリンα3への結合を阻害しないインテグリンα3に対する抗体を固相化した96穴プレートにインテグリンα3を添加する。あるいは、直接インテグリンα3を固相化した96穴プレートを用いてもよく、また、例えばONS-76細胞のようなインテグリンα3を細胞表面に発現している細胞を固相化した96穴プレートを用いてもよい。次いで例えば一定量のビオチン化したONS-M21 抗体と目的のONS-M21 抗体を含む試料、例えばONS-M21 抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を同時に加える。
【0076】
アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識したアビジンまたはストレプトアビジンを添加し、プレートをインキュベートおよび洗浄した後、p- ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を加えて吸光度を測定することにより抗原結合活性を評価することができる。
ヒト型化抗体の抗原結合活性を評価する場合には抗原を直接あるいは間接的に固相化した96穴プレートにヒト型化抗体とマウス抗体を同時に加えて、マウス抗体またはヒト抗体のどちらかを認識し、かつアルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートおよび洗浄した後、p- ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を加えて吸光度を測定することにより抗原結合活性を評価することができる。
上記抗体の活性評価には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
【0077】
本発明において、「トキシン」とは、微生物、動物又は植物由来の細胞毒性を示す種々の蛋白質やポリペプチド等を意味する。例えば既知のトキシンとして、次のものを挙げることができる。
ジフテリアトキシンA鎖 (Diphtheria toxin A Chain)(Langone J.J., et al., Methods in Enzymology, 93, 307-308, 1983) 、
シュードモナスエンドトキシン (Pseudomonas Exotoxin)(Nature Medicine, 2, 350-353, 1996)、
【0078】
リシン鎖 (Ricin A Chain) (Fulton R.J., et al., J.Biol.Chem., 261, 5314-5319, 1986 ; Sivam G., et al., Cancer Res., 47, 3169-3173, 1987 ; Cumber A.J. et al., J.Immunol.Methods, 135, 15-24, 1990 ; Wawrzynczak E.J., et al., Cancer Res., 50, 7519-7562, 1990 ; Gheeite V., et al.,J.Immunol.Methods, 142, 223-230, 1991) ;
無糖鎖リシンA鎖 (Deglicosylated Ricin A Chain) (Thorpe P.E., et al., Cancer Res., 47, 5924-5931, 1987) ;
【0079】
アブリンA鎖 (Abrin A Chain) (Wawrzynczak E.J., et al., Br.J.Cancer, 66, 361-366, 1992 ; Wawrzynczak E.J., et al., Cancer Res., 50, 7519-7562, 1990 ; Sivam G., et al., Cancer Res., 47, 3169-3173, 1987 ; Thorpe P.E., et al., Cancer Res., 47, 5924-5931, 1987) ;
ゲロニン (Gelonin) (Sivam G., et al., Cancer Res., 47, 3169-3173, 1987 ; Cumber A.J. et al., J.Immunol.Methods, 135, 15-24, 1990 ; Wawrzynczak E.J., et al., Cancer Res., 50, 7519-7562, 1990 ; Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
ポークウイード抗ウィルス蛋白(PAP-s ; Pokeweed anti-viral protein from seeds) (Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
ブリオジン (Briodin) (Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
【0080】
サポリン (Saporin) (Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
モモルジン (Momordin) (Cumber A.J., et al., J.Immunol.Methods, 135, 15-24, 1990 ; Wawrzynczak E.J., et al., Cancer Res., 50, 7519-7562, 1990 ; Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
モモルコキン(Momorcochin) (Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) ;
ジアンシン32 (Dianthin 32) (Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol.,
89, 341-346, 1992) ;
ジアンシン30 (Dianthin 30) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
モデッシン (Modeccin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
ビスカミン (Viscumin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
【0081】
ボルケシン (Volkesin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
ドデカンドリン (Dodecandrin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
トリチン (Tritin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
ルフィン (Luffin) (Stirpe F., Barbieri L., FEBS letter 195, 1-8, 1986) ;
トリコキリン(Trichokirin) (Casellas P., et al., Eur.J.Biochem. 176, 581-588, 1988 ; Bolognesi A., et al., Clin.exp.Immunol., 89, 341-346, 1992) 。
【0082】
本発明において、「化学療法剤」とは、上記のトキシン以外の、抗腫瘍作用を有する物質を意味し、抗腫瘍剤、サイトカイン、酵素等が含まれる。
ここで抗腫瘍剤は、抗腫瘍作用を有する低分子化合物を意味する。
抗腫瘍剤としては、
メルファラン(Melphalan) (Rowland G.F., et al., Nature 255, 487-488, 1975) ;
シスプラチン (Cis-platinum) (Hurwitz E. and Haimovich J., Method In Enzymology 178, 369-375, 1986 ; Schechter B., et al., Int.J.Cancer 48, 167-172, 1991) ;
カルボプラチン (Carboplatin) (Ota, Y., et al., Asia-Oceania J.Obstet.Gynaecol. 19, 449-457, 1993) ;
マイトマイシンC (Mitomycin C) (Noguchi, A., et al., Bioconjugate Chem. 3, 132-137, 1992) ;
【0083】
アドリアマイシン (Adriamycin (Doxorubicin)) (Shih, L.B., et al., Cancer Res. 51 4192-4198, 1991 ; Zhu, Z., et al., Cancer Immunol.Immumother 40, 257-267, 1995 ; Trail, P.A., et al., Science 261, 212-215, 1993 ; Zhu, Z., et al., Cancer Immunol.Immumother 40, 257-267, 1995 ; Kondo, Y., et al., Jpn. J.Cancer Res. 86 1072-1079, 1995 ; Zhu, Z., et al., Cancer Immunol.Immumother 40, 257-267, 1995 ; Zhu, Z., et al., Cancer Immunol.Immumother 40, 257-267, 1995) ;
ダウノルビシン (Daunorubicin) (Dillman, R.O., et al., Cancer Res. 48, 6097-6102, 1988 ; Hudecz, F., et al., Bioconjugate Chem. 1, 197-204, 1990 ; Tukada Y. et al., J.Natl. Cancer Inst. 75, 721-729, 1984) ;
ブレオマイシン (Bleomycin) (Manabe, Y., et al., Biochem.Biophys.Res.Commun. 115, 1009-1014, 1983) ;
【0084】
ネオカルチノスタチン (Neocarzinostatin) (Kitamura K., et al., Cancer Immunol.Immumother 36, 177-184, 1993 ; Yamaguchi T., et al., Jpn. J.Cancer Res. 85, 167-171, 1994) ;
メトトレキセート (Methotrexate) (Kralovec,J., et al., Cancer Immunol.Immumother 29, 293-302, 1989 ; Kulkarni, P.N., et al., Cancer Res. 41, 2700-2706, 1981 ; Shin, L.B., et al., Int.J.Cancer 41, 832-839, 1988 ; Gamett M.C., et al., Int.J.Cancer 31, 661-670, 1983) ;
5−フルオロウリジン (5-Fluorouridine) (Shin, L.B., Int.J.Cancer 46, 1101-1106, 1990) ;
5−フルオロ−2′−デオキシウリジン (5-Fluoro-2'-deoxyuridine) (Goerlach A., et al., Bioconjugate Chem. 2, 96-101, 1991) ;
【0085】
シトシンアラビノシド (Cytosine arabinoside) (Hurwitz E., et al., J.Med.Chem. 28, 137-140, 1985) ;
アミノプテリン (Aminopterin) (Kanellos J., et al.,Immunol.Cell.Biol. 65, 483-493, 1987) ;
ビンクリスチン (Vincristine) (Johnson J.R., et al., Br.J.Cancer 42, 17, 1980) ;
ビンデシン (Vindesine) (Johnson J.R., et al., Br.J.Cancer 44, 472-475, 1981) ;
などが挙げられる。
【0086】
サイトカインとしては、抗腫瘍作用を有するサイトカインが挙げられる。抗腫瘍作用を有するサイトカインとしては、例えばインターロイキン2(IL−2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロン(INF)などが好ましい。
酵素としては、抗腫瘍作用を有する酵素が挙げられる。抗腫瘍作用を有する酵素としては、例えばカルボキシペプチダーゼ (Carboxypeptidase) 、アルカリフォスファターゼ (Alkaline Phosphatase) 、ベータラクタマーゼ (β-lactamase) 、シチジンデアミナーゼ (Cytidine deaminase) などが好ましい。
【0087】
インテグリンα3抗体又はその結合能を有する断片と化学療法剤又はトキシンを連結する手段はすでに公知であり、常用されている。インテグリンα3抗体又はその結合能を有する断片と化学療法剤又はトキシンは、それら自身が有する連結基を介して直接連結されてもよい。また、抗インテグリンα3抗体又はその結合能を有する断片と化学療法剤またはトキシンは、リンカーにより連結されてもよく、中間支持体により連結されてもよい。または、抗インテグリンα3抗体又はその結合能を有する断片と化学療法剤またはトキシンは、それら自体が有する連結基、リンカー又は中間支持体の組み合わせにより連結されてもよい。
【0088】
インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えばSH基を用いたジスルフィド結合が挙げられる。具体的には抗体のFc領域の分子内ジスルフィド結合を還元剤、例えばジチオトレイトール等にて還元し、トキシン又は化学療法剤のジスルフィド結合を同様に還元して、両者をジスルフィド結合にて連結する。連結前に活性化促進剤、例えばエルマン試薬(Ellman's reagent)にて抗体かトキシン又は化学療法剤のいずれか一方を活性化させ両者のジスルフィド結合形成を促進してもよい。 この方法により直接連結される化学療法剤としては、例えばネオカルチノスタンが挙げられる。
【0089】
また、インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えばシッフ塩基を用いることができる。シッフ塩基は、例えばグルタールアルデヒド反応により形成させることができる。この方法により直接連結される化学療法剤としては、例えばダウノルビシン(Hurwitz, E. et al., Cancer Res. 35,1175-1181, 1975)、アドリアマイシン(ドキソルビシン; Mohamed, G. et al., Pro. A. A. C. R. 27, 317, 1986 )が挙げられる。
【0090】
また、インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えばカルボジイミド法により形成される。カルボジイミド法には、例えば水溶性カルボジイミド(1-ethyl-3-(3'-dimethylaminopropyl) carbodiimide(ECDI) )を使用することができる。
カルボジイミド法により連結される化学療法剤としては、例えばメトトレキサート(MTX )( Kulkarni, P. N. et al., Cancer Res. 41, 2700-2706, 1981)が挙げられる。
【0091】
また、インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えば活性エステル法(N-hydroxysucccinimide 法)により形成される。活性エステル法により連結される化学療法剤としては、例えばメトトレキサート(MTX )( Kulkarni, P. N. et al., Cancer Res. 41, 2700-2706, 1981)が挙げられる。
【0092】
また、インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えばMixed anhydride により形成される。 Mixed anhydrideにより連結される化学療法剤としては、例えばメトトレキサート(MTX )( Burnstein, S. et al., J. MED. Chem. 20, 950-952, 1977)が挙げられる。また、インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤が、それら自身が有する連結基を介して直接結合される場合の連結基は、例えばジアゾ反応により形成される。ジアゾ反応により連結される化学療法剤としては、例えばメトトレキサート(MTX )(De Carvalho, S. et al., Nature(London) 202, 255-258, 1964 )が挙げられる。
【0093】
リンカーとは、抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを各々相互に連結させる際に用いられる連結分子を意味する。リンカーにより抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結させる際に、一分子のリンカーを用いるだけではなく、複数の同種または異種のリンカーを使用してもよい。
【0094】
また、抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤とを連結するためのリンカーとしては、連結基としてアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等をいずれか1種類または2種類以上の組み合わせで2個以上有する化合物が挙げられ、抗体又は抗原結合能を有するその断片及びトキシン又は酵素が有するカルボキシル基又はアミノ基と、リンカーが提供するカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等との間に形成されるエステル結合、アミド結合、チオエステル結合等により連結される。ここで述べるリンカーは、抗体又は抗原結合能を有するその断片に対し、1分子またはそれ以上のトキシン又は化学療法剤を連結させ得る物質を意味する。
【0095】
抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン及び化学療法剤とを連結するためのリンカーとしては、例えば次の物質が使用される。
N−スクシニミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP:N-Succinimidyl 3-(2-pyridylditio) propinate) (Wawrzynczak E.J., et al., Cancer Res., 50, 7519-7562, 1990 ; Thorpe P.E., et al., Cancer Res., 47, 5924-5931, 1987) ;
スクシニミジル 6−3−〔2−ピリジルジチオ〕プロピオンアミド)ヘキサノエート (LC-SPDP : Succinimidyl 6-3-〔2-pyridylditio〕propinamide) hexanoate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 230-232, 1996) ;
スルホスクシニミジル 6−3−〔2−ピリジルジチオ〕プロピオンアミド)ヘキサノエート (Sulfo-LC-SPDP : Sulfosuccinimidyl 6-3-〔2-pyridylditio〕propinamide) hexanoate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 230-232, 1996) ;
【0096】
N−スクシニミジル 3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート (SPDB:N-Succinimidyl 3-(2-pyridylditio) butyrate) (Wawrzynczak E.J., et al., Br.J.Cancer, 66, 361-366, 1992) ;
スクシニミジロキシカルボニル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン (SMPT:Succinimidyloxycarbonyl-α-(2-pyridylditio) toruene) (Thorpe P.E., et al., Cancer Res., 47, 5924-5931, 1987) ;スクシニミジル 6−(α−メチル)−〔2−ピリジルジチオ〕トルアミド)ヘキサノエート (LC-SMPT : Succinimidyl 6-(α-methyl-〔2-pyridylditio〕toruamide) hexanoate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 232-235, 1996) ;
【0097】
スルホスクシニミジロル 6−(α−メチル−〔2−ピリジルジチオ〕トルアミド)ヘキサノエート(Sulfo-LC-SMPT : Sulfosuccinimidyl 6-(α-methyl-〔2-pyridylditio〕toruamide) hexanoate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 232-235, 1996) ;
スクシニミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート (SMPB:Succinimidyl-4-(p-maleimidophenyl) butyrate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 242-243, 1996) ;
スルホ−スクシニミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート (Sulfo-SMPB : Sulfo-Succinimidyl-4-(p-maleimidophenyl) butyrate) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 242-243, 1996) ;m−マレイミドベンゾイル−N−ハイドロキシスクシニミドエステル (MBS : m-Maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 237-238, 1996) ;
【0098】
m−マレイミドベンゾイル−N−ハイドロキシスルホスクシニミドエステル (Sulfo-MBS : m-Maleimidobenzoyl-N-hydroxysulfosuccinimide ester) (Hermanson G.T., BIOCONJUGATE Techniques, 237-238, 1996) ;S−アセチルメルカプトスクシニックアンヒドライド (SAMSA : S-Acetyl mercaptosuccinic anhydride) (Casellas P., et al., Eur.J. Biochem, 176, 581-588, 1988) ;
ジメチル 3,3−ジチオビスプロリオニミデート (DTBP:Dimethyl 3, 3'-ditiobisprorionimidate) (Casellas P., et al., Eur.J. Biochem, 176, 581-588, 1988) ;
2−イミノチオレーン (2-Iminotiolane) (Thorpe P.E., et al., Cancer Res., 47, 5924-5931, 1987) 。
【0099】
中間支持体とは、抗体又は抗原結合能を有するその断片に対し、2分子以上のトキシン又は化学療法剤を連結させ得る物質を意味する。中間支持体は、抗体又は抗原結合能を有するその断片と複数の化学療法剤または複数のトキシンとを一度に結合して担持しうるリンカーまたはリンカー以外の分子である。中間支持体により抗体又は抗原結合能を有するその断片と複数の化学療法剤または複数のトキシンとを連結させる際に、リンカーを使用してもよい。
抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤とを連結するためのリンカー又は中間支持体としては、ペプチド、例えばポリL−グルタミン酸(PGA)、カルボキシメチルデキストラン、デキストラン、アミノデキストラン、アビジン・ビオチン、シス・アコニット酸、グルタミン酸ジヒドラジド、ヒト血清アルブミン(HSA)等が用いられる。
【0100】
抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤とのリンカー又は中間支持体による連結は、例えばリンカー又は中間支持体により提供されるアミノ基またはカルボキシル基と、抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるアミノ基又はカルボキシル基との間のアミド結合により連結される。このアミド結合は、例えばカルボジイミド反応により形成される。
また、例えば抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるアミノ基又はアルデヒド基とリンカー又は中間支持体により提供されるアミノ基又はアルデヒド基との間のシッフ塩基の形成により連結される。
【0101】
また、例えばトキシン又は化学療法剤により提供されるアルデヒド基とリンカー又は中間支持体により提供されるヒドラジド基との間のヒドラゾンの形成により連結される。
また、抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるヒドロキシル基又はカルボキシル基とリンカー又は中間支持体により提供されるヒドロキシル基又はカルボキシル基との間に形成されるエステル結合により連結される。このエステル結合は、例えば活性エステル化法により形成される。
【0102】
また、抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるSH基とリンカー又は中間支持体により提供されるSH基との間に形成されるジスルフィド結合により連結される。このジスルフィド結合は、例えば抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるSH基とリンカー又は中間支持体により提供される活性化SH基、例えばピリジルジスルフィド基により形成される。
【0103】
このジスルフィド結合はまた、例えば抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供されるカルボニル基( アルデヒド基またはケトン基) とリンカー又は中間支持体により提供されるヒドラジド基より形成されるヒドラゾン結合により形成される。カルボニル基は、例えば、抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシン又は化学療法剤により提供される糖鎖を酸化することにより得られる。
【0104】
抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片は、インテグリンα3抗原を発現している細胞にインターナライズすることができる。従って、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片が有する連結基、リンカー、中間支持体又はそれらの組み合わせにより連結された種々の化学療法剤やトキシンは、抗インテグリンα3抗体のインターナリゼーションと共に細胞に効率よく導入され、細胞内でそれらの薬理効果を発揮する。
【0105】
従って、本発明の抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンを連結して成る複合体は、種々の化学療法剤又はトキシンを細胞に導入するための医薬組成物として有用である。インテグリンα3は腫瘍細胞に広く分布しているから、本発明の医薬組成物は特に抗腫瘍作用のある医薬組成物として有用である。
【0106】
この効果は、例えば抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とトキシンを含んで成る本発明の複合体、例えばイムノトキシンをインテグリンα3を発現しない細胞とインテグリンα3を発現している細胞に添加した場合、後者においてのみ殺細胞効果が生じたこと、本発明のイムノトキシン又は遊離のトキシンをインテグリンα3を発現している細胞に添加した場合、前者において殺細胞効果が高かったことにより証明された。
【0107】
さらに、この効果は例えば抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤を含んで成る本発明の複合体、例えば化学療法剤イムノコンジュゲートをインテグリンα3を発現しない細胞とインテグリンα3を発現している細胞に添加した場合、後者においてのみ殺細胞効果が生じたこと、本発明の化学療法剤イムノコンジュゲート又は遊離の化学療法剤をインテグリンα3を発現している細胞に添加した場合、前者において殺細胞効果が高かったことにより証明された。
【0108】
また、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片は、インテグリンα3抗原を発現している細胞に特異的に結合することができるため、腫瘍の診断薬、診断用組成物としても有用である。診断薬、診断用組成物として使用される複合体として、抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とラジオアイソトープとを連結してなる複合体が挙げられる。
【0109】
「ラジオアイソトープ」とは、放射活性を有する元素を意味する。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と連結されるラジオアイソトープとしては、例えばイットリウム(90-Yttrium)が挙げられる。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とイットリウムとは、例えばキレート化反応により連結される。キレート化反応の際に、例えばDTPA(diethylenetriaminepentaacetic acid)を使用することができる( Griffiths, G. L. et al., Cancer Theraphy with Radiolabeled Antibodies, 47-61, 1995 )。
【0110】
抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と連結されるラジオアイソトープとしては、例えばテクネシウム(99m-Technetium )が挙げられる。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とテクネシウムとは、例えばキレート化反応により連結される。キレート化反応の際に、例えばN2S2を使用することができる(Clin. Pharmacokinet. 28, 126-142, 1995;Griffiths, G. L. et al., Cancer(phila.) 73, 761-768, 1990 )。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と連結されるラジオアイソトープとしては、例えばリューネシウム(186-rhenium 、188-rhenium )が挙げられる( Griffiths, G. L. et al., Cancer(phila.) 73, 761-768, 1990)。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とリューネシウムとは、例えばキレート化反応により連結される。
【0111】
抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と連結されるラジオアイソトープとしては、例えばインジウム(111-Indium)が挙げられる。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片とインジウムとは、例えばキレート化反応により連結される。キレート化反応の際に、例えばDTPA( diethylenetriaminepentaacetic acid )を使用することができる(Griffiths, G. L. et al., Cancer Theraphy with Radiolabeled Antibodies, 47-61, 1995)。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と連結されるラジオアイソトープとしては、例えば沃素(131-Iodine、125-Iodine)が挙げられる。抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と沃素とは、例えばクロラミンT 法、IODOGEN 法、ラクトペルオキシダーゼ酸化法又はBolton-Hunter 法により連結される。
【0112】
本発明の抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤またはトキシンとを連結して成る複合体または該複合体を含んで成る医薬組成物および診断薬、診断用組成物は、経口的あるいは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。非経口的投与投与としては、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。
本発明の複合体または該複合体を含んで成る医薬組成物は、腫瘍に既に悩まされる患者に、症状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。
【0113】
また、本発明の複合体または該複合体を含んで成るおよび診断薬、診断用組成物は、腫瘍に既に悩まされる患者の体内の腫瘍の局在をイメージングするために投与される。
例えば、有効投与量は、一回につき体重1 kgあたり0.01 mg から100 mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1-1000 mg 、好ましくは5-50 mg の投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の複合体または該複合体を含んで成る医薬組成物および診断薬、診断用組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、投与期間は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。
本発明の複合体または該複合体を含んで成る医薬組成物および診断薬、診断用組成物は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0114】
このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。
【0115】
使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
本発明はまた、医薬として使用される際に本発明の複合体と他の薬剤、生物学的製剤や合成医薬製剤などとの、同時もしくは逐次的併用投与をも包含する。他の薬剤としては、抗炎症薬や抗アレルギー薬、抗血小板薬、他の抗腫瘍薬の中から選ばれる。
【0116】
【実施例】
次に、実験例及び実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実験例1.ONS抗原の同定
1)抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィー
ONS抗原高発現髄芽腫細胞株(ONS−76、1.2×1010cell) を0.5%Tween20/TBSで可溶化し、その遠心分離上清をTween20の濃度が0.1%になるように、TBSで希釈あるいは、透析膜で交換した。一方、CNBr活性化 Sepharose4B(ファルマシア)とONS−M21抗体により常法でアフィニティークロマトカラムを調整した。
【0117】
前述の溶液をアフィニティーカラムにアプライし、0.1%Tween20/TBSで洗浄し、グリシンバッファー(pH2.5、0.1%Tween20)で溶出した。溶出液は、1M Tris−HCl(pH8.5)で中和した。目的の抗原を含む分画をONS−M21抗体を用いたドットブロットで検索し、陽性の画分を集めて同様のアフィニティーカラムクロマトグラフィーを再度行い、分析用サンプルを調整した。サンプル(7ml)のうち70μlを9%SDS−PAGEにより分離後、銀染色法により分析した(図1)。140kDa 付近にメインバンドを認め、38kDa 付近にサブバンドを観察した。図1において、レーン1,4および5はマーカー、レーン2はONS−76可溶化濃縮液(サンプル)、レーン3はサンプルが入っていたチューブの洗浄液を泳動したものである。
【0118】
2)N末アミノ酸配列の解析
サンプル(500μl)をマイクロコン50(アミコン)により約30倍に濃縮し9%SDS−PAGEで分離後、PVDF膜(Trans-Blot, Bio-Rad) に常法により転写し、ポンソーSで染色後、約140kDa のメインバンドを切り出し、アミノ酸シーケンサー(476A Protein Sequencer,アプライドバイオシステムズ) によりN末アミノ酸配列を分析した。得られた20アミノ酸からなる配列をGENETYX(ver.33, SWISS-PROT Rel.32)によりホモロジー検索を行ったところ、インテグリンα3のN末配列と一致した。この結果を表1に示す。
【0119】
3)内部アミノ酸配列の解析
サンプル(4.5ml)を上記実験2)と同様に、濃縮、SDS−PAGE、PVDF膜への転写を行い、約140kDa のメインバンドを切り出した。バンドを約0.5mm角に切断し、70%ギ酸にサスペンドし、2mgの臭化シアン(和光純薬のものを常法により昇華法により精製)を加え溶解し、室温で18時間反応させた。溶液を回収し、残った膜を70%ギ酸(200μl)で2回洗浄し、回収液と洗浄液を混合し遠心濃縮器(コンセントレーターCC−180、トミー)で減圧乾燥した。
【0120】
0.1%TFA/H2 Oを加え、よく撹拌し、その上清をマイクロポアーHPLC(Model 5SC、ギルソン、カラム:Vydac C18/5μm、2.1×250mm、0.1%TFA、AcCNグラジエント:0.9%/min 、0.2ml/min )で分離し、各ピークを分取した。得られた各ピークについてアミノ酸シーケンサーによりN末配列分析を行った。5つのピークについてアミノ酸配列を読むことができ、それらの配列はインテグリンα3のメチオニン切断フラグメントの配列と一致した。この結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1中で、「N−末端配列」は本発明のONS−76株由来の約140kDa 蛋白質のN−末端のアミノ酸配列を示し、P9,P12,P10,P13及びP12は、いずれもONS−76株由来の約140kDa 蛋白質の断片のアミノ酸配列を示し、ITA3 HUMANは、既知のヒトインテグリンα3のアミノ酸配列の対応部分を示す。
【0123】
実験例2.ONS抗原の異同の確認
1.免疫沈降
ONS抗原高発現ヒト髄芽腫細胞株(ONS−76細胞を0.5%Tween20を含むTBSで可溶化し、その遠心分離上清を調製した。ONS−76可溶化画分より常法に従いマウスONS−M21抗体を用いて免疫沈降を行いONS抗原を単離した。すなわち、マウスONS−M21抗体を10μg/mlとなるように前述の溶液に添加し、4℃にて一夜インキュベートした。次に、Protein G-Sepharose (ファルマシア製)を加え、4℃にて1時間インキュベートした。0.5%Tween20を含むTBSで3回洗浄した後、遠心しONS抗原を沈降させた。
【0124】
2.ウエスタン・ブロッティング
上記により調製した免疫沈降物を3分間煮沸したものを、12%SDS−PAGEにアプライし、ONS抗原を分離した。次に、常法によりニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell製) に転写し、3%スキムミルクを含むTBSによるブロッキングの後、インテグリンα3軽鎖を認識するラビットポリクローナル抗体(CHEMICON INTERNATIONAL INC製)を含む溶液中(1μg/ml)で室温にて2時間インキュベートした。
【0125】
0.05%Tween20を含むTBSにて2回洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ラビットイムノグロブリン抗体(TAGO製) を加え、室温で1時間インキュベートした。0.05%Tween20を含むTBSで3回、TBSで2回洗浄後、アルカリフォスファターゼ基質NBT/BCIP(GIBCO BRL社製) を加え発色させた。
その結果、マウスONS−M21抗体を用いて免疫沈降を行った場合のみ、非還元化で約140kDa (インテグリンα3)のバンドが検出された(図6)。
【0126】
実施例1.mONS−M21抗体のインターナリゼーション
マウスモノクローナル抗体(mONS−M21抗体)の 125I標識は、IODOGEN (PIERCE社) で行った。IODOGEN 5μgをコートしたバイアルに、0.1Mリン酸緩衝液pH7.0に溶解した2mg/mlのmONS−M21抗体100μl及びNa 125I 0.5mCi(Amersham製)を加え、30秒ごとに10秒間撹拌しながら室温で5分間反応した。反応液を500μlの3mM NaIを含むPBSに加え、反応を停止させた。 125I標識mONS−M21抗体の精製は、PBSで平衡化したPD−10(Pharmacia製)カラムで行った。 125I標識mONS−M21抗体の比活性は3.27×106cpm/μgであった。インターナリゼーションの測定に際しては、非標識mONS−M21抗体で5×105cpm/μgとなるよう希釈して使用した。
【0127】
組織培養用12穴平底プレート(CORNING製)に10%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640培地(GIBCO製)(以下培地)に懸濁したONS−76細胞を1穴当たり2.0×105 個播種して、5%CO2 インキュベーター(37℃)で16時間培養した。氷上で冷却しながら培地を除去し、10μg/mlの 125I標識mONS−M21抗体を含む氷冷した培地を加えて90分間反応させた。氷冷Hank's balanced salts solution (以下HBSS, GIBCO製)で3回洗浄した後、培地を1ml加えて5%CO2 インキュベーター(37℃)もしくは氷上で60分間培養した。
【0128】
細胞を氷上に移し、冷却しながら氷冷HBSSで1回洗浄し、1mlの氷冷0.1M酢酸、0.15M NaCl(pH2.8)で10分間の処理を2回行うことにより細胞表面に結合した 125I標識mONS−M21抗体を除去した。氷冷したHBSSで3回洗浄した後、0.1% Triton X−100、0.1N NaOHで細胞を可溶化し、細胞の放射能をガンマカウンターで測定した。
細胞内の放射能は、60分間培養後において、氷上での培養では増加が見られなかったのに対して、37℃では増加が認められた。これは、mONS−M21抗体が受動的に細胞内に浸透するのではなく、能動的にインターナリゼーションすることを示す(図2)。
【0129】
実施例2.mONS−M21抗体とリシンA鎖からなるイムノトキシンの作製
2価性架橋試薬であるN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオプロピオネート)(SPDP)(PIECE製) をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し2mg/mlとした。
mONS−M21抗体6mgを0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTAにて希釈し、抗体溶液1mlあたり10μlのSPDP溶液を撹拌しながら添加した。溶液液中の抗体の終濃度は2mg/mlとした。抗体濃度は1%抗体溶液の280nmの吸光度を13.5として算定した。
【0130】
これを室温(23℃)で1時間反応させ、抗体をピリジルジチオプロピオニル化(PDP化)した。反応液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTAで平衡化した Sephadex G−25カラム(1cm×10cm)(Pharmacia Biotech製) にかけ、未反応のSPDPを除いた。
【0131】
抗体のPDP基導入率を調べるため、PDP化抗体溶液200μlに終濃度2mMとなるように粉末ジチオトレイトール(和光純薬製)を加え、室温で30分間反応させた。反応後、遊離したピリジン−2−チオンの343nmの吸光度を測定し、PDP基のモル濃度を定量した。粉末ジチオトレイトール添加前の抗体溶液の280nmの吸光度より吸光係数13.5として抗体濃度を算定し、ピリジン−2−チオンのモル吸光係数ε343nm=8.08×103 から抗体1分子あたりのPDP基を算出した。その結果、抗体1分子あたり1.6分子のPDP基が導入された。
【0132】
リシンA鎖1.17mg/ml(ホーネンコーポレーション製)1.7mlを0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTAで平衡化した Sephadex G−25カラム(1cm×10cm)にかけ、リシンA鎖の緩衝液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTAに交換した。 Sephadex G−25カラムから溶出したリシンA鎖0.5mg/ml溶液4mlに3mg/mlに濃縮したPDP化抗体溶液1mlを加え、穏やかに撹拌した後に1mlに濃縮し、室温で56時間反応させた。リシンA鎖濃度は1%溶液の280nmの吸光度を7として算定した。
【0133】
反応液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTAで平衡化したSephacryl S200HRカラム(1.6cm×60cm)(Pharmacia Biotech製) にかけ、未反応のリシンA鎖を除き抗体溶出画分をピークトップを境に溶出時間にて2分割(画分A,B)し、先に溶出した画分(画分A)を濃縮した。
【0134】
反応生成物および画分AをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−15%グラジエントゲル)(Pharmacia Biotech製) 後、クマシーブリリアントブルーG250にて染色した。
生成したイムノトキシンは抗体1分子に対してリシンA鎖が1分子またはそれ以上結合した混合物として得られた(図3)。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定したトキシン1分子が結合したイムノトキシンの分子量はおよそ180kDa であった。
なお、一般に抗体分子に対して結合するリシンA鎖数は抗体に導入するPDP基数により調節可能である。
【0135】
実施例3.イムノトキシンのヒト髄芽腫由来ONS−76細胞に対する特異的増殖抑制効果
リシンA鎖は、PBSで平衡化したPD−10カラム(Pharmacia Biotech製) で2−メルカプトエタノールを除去し、セントリコン−10( アミコン製) で濃縮して使用した。イムノトキシンおよびリシンA鎖の定量は、ウシガンマグロブリンをスタンダードとしてBio-Rad Protein Assay (BIO-RAD製) で行った。
組織培養用96穴平底プレート(FALCON製)に、培地に懸濁したONS−76細胞を1穴当たり2.5×103 個播種して、5%CO2 インキュベーター(37℃)で16時間培養した。
【0136】
mONS−M21抗体が結合しない細胞として、ヒト肝癌由来HuH−7細胞(Nakabayashi, H. et al., Cancer Res., 42, 3858-3863, 1982, Nakabayashi, H. et al., Gann, 75, 151-158, 1984) とヒト大腸癌由来SW480細胞(Leibovotz, A. et al., Cancer Res. 36, 4562-4569, 1976) を1穴当たり1.0×104 個(HuH−7)、2.5×104 個(SW480)で播種し、同様に培養した。培地を除去した後、1μg/ml〜33.3pg/mlのイムノトキシンもしくは100μg/ml〜3.3ng/mlのリシンA鎖を含む培地を1穴当たり100μl加えてさらに44時間培養した。
【0137】
50μCi/mlの〔methyl− 3H〕THYMIDINE (Amersham製) を含む培地を1穴当たり10μl加え、5%CO2 インキュベーター(37℃)で4時間培養した。培地を除去し、0.25% Trypsin−EDTAを1穴当たり100μl加えて細胞を浮遊させた後に、ハーベスター(WALLAC製)でガラスフィルター(WALLAC製)に吸収させ、ベータプレートカウンター(WALLAC製)で計数した。コントロール(培地のみで培養)の計数値を100%として、イムノトキシンまたはリシンA鎖の増殖抑制活性を算出した。その結果を図4および図5に示した。
この結果、イムノトキシンは標的細胞のみに特異的な増殖抑制効果を示すことが明らかとなった(表2)。
【0138】
【表2】
【0139】
実施例4.抗体とリシン A 鎖からなるイムノトキシンの作製
抗体とリシンA 鎖を2価性架橋試薬を介して結合させたイムノトキシンを以下の方法で作製した。
抗体は、マウスモノクローナル抗体mONS-M21、そのヒト型化抗体hONS-M21、その一本鎖Fv抗体scFvONS-M21 およびmONS-M21の抗原に反応しない陰性コントロール抗体(MOPC31C) を用いた。
まず、抗体に活性化SH基を導入するため、それぞれの抗体0.4mg に対して5 倍モル量の2価性架橋試薬Sulfo-LC-SMPT (スルホスクシニミジル- 6-[(a- メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルアミド] ヘキサノエート(PIERCE 製) を添加し、0.2ml の0.05M リン酸緩衝液(pH 7.4), 0.15M 塩化ナトリウム溶液中、室温にて1時間反応させた。
【0140】
あらかじめ0.05M リン酸緩衝液(pH 7.4), 0.15M 塩化ナトリウムにて平衡化したゲル濾過カラムSephadex G-25 (1cm x 10 cm )(フアルマシア バイオテク製)にて、この反応液から未反応のSulfo-LC-SMPT を除去した。
回収した抗体画分をセントリコン-50(アミコン製) にて遠心限外濾過濃縮した後、この抗体溶液0.15mlを分取して、これに終濃度2mM となるようにジチオトレイトール(和光純薬製)を添加した。室温で1時間反応後に遊離したピリジン-2- チオンの343nm の吸光度(A343)を測定した。抗体濃度はウシガンマグロブリンをスタンダードとしてマイクロBCA プロテインアッセイ試薬(PIERCE 製)にて定量した。ピリジン-2- チオンの343nm のモル吸光係数 e = 8.08 x 103 M −1cm −1 から、[A343 xe (M)/抗体濃度(M)] を計算して、抗体1分子あたりの活性化SH基の導入率を求めた。その結果、各抗体の活性化SH基の導入率は1.0 〜1.8 であった。
【0141】
リシンA 鎖溶液(ホーネンコーポレーション製)から2-メルカプトエタノールを除去するため、あらかじめ0.05M リン酸緩衝液(pH7.4 ), 0.15M 塩化ナトリウム, 0.005M EDTA で平衡化したSephadex G-25 カラム(1cm x 10 cm )(フアルマシア バイオテク製)にてゲル濾過してリシンA 鎖を回収した。
修飾抗体にリシンA 鎖を結合させるため、リシンA 鎖0.1mg ずつを各修飾抗体0.1mg に混合した。これらをそれぞれセントリコン-10(アミコン製) にて約0.1ml に遠心限外濃縮した後、室温で6 日間反応させた。
【0142】
反応液からイムノトキシンを以下の通りに精製した。ゲル濾過カラムはSuperdex 200 HR 10/30 (フアルマシア バイオテク製)を用い、平衡化と溶出にはリン酸緩衝液生理食塩水溶液を用いた。mONS-M21、hONS-M21およびMOPC31C では、反応液をゲル濾過カラムにかけて、未反応のリシンA 鎖を除去し、抗体の溶出ピークトップより先に溶出した画分をイムノトキシン画分として回収した。
【0143】
一方、scFvONS-M21 では、反応液を同様にゲル濾過カラムにかけて、未反応のリシンA 鎖と未反応のscFv抗体を除き、 分子量およそ60,000のイムノトキシン溶出画分を回収した。回収した画分をそれぞれマイクロコン-50(アミコン製) にておよそ100 倍に遠心限外濾過濃縮した。
精製したイムノトキシンについて、4-15%グラジエントゲルのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(フアルマシア バイオテク製)を行い、クマシーブリリアントブルーG250にて染色した。得られたイムノトキシンは抗体1 分子に対してリシンA 鎖が1 分子結合またはそれ以上結合した複合体であった。
【0144】
実施例5 ヒト型化抗体 hONS-M21 イムノトキシンおよび scFv ONS-M21 イムノトキシンのヒト髄芽腫由来 ONS-76 細胞に対する特異的増殖抑制効果
リシンA 鎖は、リン酸緩衝液生理食塩水溶液(PBS) で平衡化したPD-10 カラム(フアルマシア バイオテク製)で2-メルカプトエタノールを除去し、セントリコン-10(アミコン製) で濃縮して使用した。イムノトキシンおよびリシンA 鎖の定量は、ウシガンマグロブリンをスタンダードとしてバイオラドプロテインアッセイ(バイオラド製)で行った。リシンA 鎖は分子量30,000、scFvONS-M21 イムノトキシンは分子量60,000、その他のイムノトキシンは分子量180,000 としてモル濃度を算出した。
【0145】
ONS-76細胞を10% ウシ胎児血清(FCS )含有RPMI1640培地(GIBCO 製)( 以下培地) に懸濁して、組織培養用96穴平底プレート(ファルコン製)に1穴当たり2.5 x 103 個播種した。同様に、 HuH-7 細胞を培地に懸濁して、96 穴平底プレート1穴当たり5.0 x 103 個播種した。これらを37℃にて5%CO2 下で16時間培養した。培地を除去した後、培地にて階段希釈したイムノトキシンもしくはリシンA 鎖を1穴当たり100 μl 加えた。44時間培養した後、50 μCi/ml の[ メチル-3H]チミヂン(アマシャム製)を含む培地を1穴当たり10μl 加え、さらに4時間培養した。
【0146】
培地を除去し、0.25% トリプシン-EDTA を1穴当たり50μl 加えて細胞を浮遊させた。細胞をハーベスター(WALLAC製)でガラスフィルター(WALLAC製)に吸収させ、ベータプレートカウンター(WALLAC製)で細胞に取り込まれた[ メチル-3H]チミヂンの放射活性を計数した。コントロール(培地のみで培養)の計数値を100%として増殖抑制活性を算出した。その結果を図7および図8に示した。その結果、hONS-M21イムノトキシン、scFvONS-M21 イムノトキシンはいずれも抗原陽性細胞選択的な増殖抑制効果を示した。その活性はhONS-M21イムノトキシンではmONS-M21イムノトキシンとほぼ同程度であり、scFvONS-M21 イムノトキシンではmONS-M21イムノトキシンの約1/200 であった。
なお、表3に、ONS-76細胞およびHuH-7 細胞に対するイムノトキシン、リシンA 鎖のIC50値を示した。
【0147】
【表3】
【0148】
実施例6.化学療法剤イムノコンジュゲートの作製
化学療法剤イムノコンジュゲートの1例としてデキストランを中間支持体としたダウノルビシン( 以下DNR)イムノコンジュゲートを作製した。作製法は、Zhenping Zhuら(Immunol Immunother, 40, 257-267, 1995) が報告した抗体- アドリアマイシン複合体の方法に従い、部分的に改変して下述のように行った。
1) デキストランの酸化
平均分子量40,000のデキストラン 2 mg (0.05 mmol, 単糖に換算して11.1 mmol)とNaIO4 0.94 g (4.4 mmol) を精製水400 mlに溶解し、25℃で2 時間撹拌した。反応終了後、限外濾過 ( セントリプレップ-10, アミコン製) により反応液を約20 ml に濃縮した。これを精製水中で透析後、凍結乾燥した。
【0149】
2) デキストラン-(NHNH2)の合成
16 g のadipic dihydrazide (91.84 mmol) を 150 ml の100 mM酢酸緩衝液 (pH 4.5) に溶解した。一方、200 mg の酸化デキストラン (4.76 μmol)を 10 mlの100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 4.5) に溶解した。adipic dihydrazide溶液を室温で撹拌しながら酸化デキストラン溶液を滴下して加え、さらに2 時間撹拌した。この反応液に、NaBH3CN 30 mg を溶解した100 mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 4.5) 10 ml を添加して室温で一晩撹拌した。不溶物を濾過除去した後、限外濾過 (セントリプレップ-10, アミコン製) で約10 ml に濃縮した。
反応溶液は100 mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 4.5) に対して透析後、Sephacryl S200 HR 16/60 カラム (フアルマシア バイオテク製) を用いたゲル濾過法により精製した。
【0150】
3) mONS-M21 の糖鎖の酸化
21.3 mg/mlのmONS-M21 0.5 ml (68.3 nmol) を20 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 5.5) 0.5 mlにて希釈した。これに40 mg/ml NaIO4を0.1 ml (18.7μmol)添加した。反応溶液を室温で90 分遮光下にて撹拌した。80μl のethylene glycol を添加して反応を完結させた後、次の反応に用いる100 mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 4.5) に対して透析した。
【0151】
4) mONS-M21-デキストラン-(NHNH2)合成
2.5 mg/ml の酸化mONS-M21 0.5 ml (8.31 nmol) と9.4 mg/ml のデキストラン-(NHNH2) 1.2 ml (208 nmol)を、7.3 ml の100 mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 4.5) に希釈した(mONS-M21:デキストラン-(NHNH2)=1:25, mol:mol) 。これを4 ℃で一晩撹拌した。次に、結合を安定化させるため、200 mg/ml のNaBH3CN 0.5 ml (1.59 mmol)を添加して、4 ℃で3 時間撹拌した。反応溶液はリン酸緩衝液(pH 7.5)生理食塩水中で透析した。プロテインA カラム キット (Ampure PA, アマシャム製) に抗体を結合させて、抗体に結合しなかったデキストラン-(NHNH2)を素通りさせて回収した後、カラムから抗体を溶出させ、回収した。
【0152】
5) DNRイムノコンジュゲートの合成
mONS-M21- デキストラン-(NHNH2)とDNR 塩酸塩を-NHNH2:DNR=1:10 のモル比で0.1 M PBS (pH 7.8)中で混合し、4 ℃で3 日間穏やかに撹拌した。反応溶液を限外濾過 (セントリプレップ-10, アミコン製) で濃縮後、Sephacryl S200 HR 16/60 カラム (フアルマシア バイオテク製) を用いたゲル濾過法にて精製した。DNR イムノコンジュゲートのSephacryl S200 HR 16/60 カラムクロマトグラフィーの溶出結果(移動層緩衝液:10mMリン酸緩衝液、150mM NaCl (pH7.5);流速:0.8ml/min ; 分画:0.8ml/分画;検出:Ahs 280nm)を図9に示した。
【0153】
その結果、プロテインA 結合画分からmONS-M21- デキストラン-DNR 複合体( 分子量257 kDa )が得られた。一方、プロテインA 通過画分からデキストラン-DNR複合体(60 kDa) を回収した。
mONS-M21- デキストラン-DNR複合体の分子量から250-260 kDa の複合体は、抗体1 分子に2-3 分子のデキストラン-(NHNH2)が結合していると計算された。抗体とDNR の濃度測定からmONS-M21- デキストラン-DNR複合体は、複合体1 分子に対して約10分子のDNR が、デキストラン-DNR複合体はデキストラン1 分子に対して約18分子のDNR が結合していると計算された。
【0154】
実施例7.デキストランを中間支持体とした DNR イムノコンジュゲートのヒト髄芽腫由来 ONS-76 細胞に対する特異的増殖抑制効果
ONS-76細胞を10% ウシ胎児血清(FCS )含有RPMI1640培地(GIBCO 製)( 以下培地) に懸濁して、組織培養用96穴平底プレート(ファルコン製)に1穴当たり5.0 x 103 個播種した。同様にHuH-7 細胞を1穴当たり2.0 x 104 個播種した。これらを37℃にて5%CO2 下で16時間培養した。培地を除去した後、培地にて階段希釈したDNR イムノコンジュゲートもしくはDNR を1穴当たり100 μl 加えて20時間培養した。50μCi/ml の[ メチル-3H]チミジン(アマシャム製)を含む培地を1穴当たり10μl 加え、さらに4時間培養した。
【0155】
培地を除去した後、0.25% トリプシン-EDTA を1穴当たり50μl で加えて細胞を浮遊させた。細胞をハーベスター(WALLAC製)でガラスフィルター(WALLAC製)に吸収させた。ベータプレートカウンター(WALLAC製)で細胞に取り込まれた[ メチル-3H]チミヂンの放射活性を計数した。コントロール(培地のみで培養)の計数値を100%として増殖率を算出した。その結果を図10および図11に示した。
【0156】
DNR イムノコンジュゲート( 図中ではONS-DNR と略称) は抗原陽性ONS-76細胞に対してDNR 単独およびデキストラン-DNR複合体( 図中ではDex-DNR と略称) より強い増殖抑制効果を示し、その強さはDNR 単独の3.3 倍、デキストラン-DNR複合体の約10倍に相当した。一方抗原陰性のHuH-7 細胞に対して、 DNRイムノコンジュゲートはデキストラン-DNR複合体と同程度の増殖抑制効果しか示さなかった。なお、表4にONS-76細胞およびHuH-7 細胞に対するイムノコンジュゲート、DNR のIC50値を示した。
以上のことから、 DNRイムノコンジュゲートもイムノトキシンと同様に抗原陽性細胞に対して選択的な増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
【0157】
【表4】
【0158】
参考例1.mONS−M21抗体産生ハイブリドーマの作成
mONS−M21抗体を産生するハイブリドーマは、ヒト髄芽腫由来細胞株ONS−76で免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞株P3U1をポリエチレングリコールを用いた常法により融合して作成した。ヒト髄芽腫由来細胞株ONS−76と結合する活性を指標としたスクリーニングを行い、mONS−M21抗体産生ハイブリドーマを樹立した(S.Moriuchi et al., Br.J.Cancer (1993) 68, 831-837) 。
【0159】
mONS−M21抗体産生ハイブリドーマをマウス腹腔に移植し、得られた腹水をプロテインアガロースカラムにかけ、精製マウスモノクローナル抗体を得た。得られたマウスモノクローナル抗体mONS−M21のL鎖およびH鎖のタイプを調べるために、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(アマシャムインターナショナル plc製)を用いてタイピングを行った。その結果、mONS−M21抗体はκ型L鎖およびγ1型H鎖を有することが明らかになった。なお、上記のハイブリドーマは、(財)発酵研究所(大阪府大阪市淀川区十三本町2-17-85 )にIFO 50382として寄託された。
【0160】
参考例2.再構成ヒト ONS-M21 抗体の作製
再構成ヒトONS-M21 抗体を国際特許出願公開番号WO 95-14041 に記載の方法により得た。
参考例1 で作製されたマウスONS-M21 抗体(mONS-M21抗体)抗体産生ハイブリドーマから常法により全RNA を調製し、これより二本鎖cDNAを合成した。この二本鎖cDNAを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR )法によりmONS-M21抗体の軽鎖(L 鎖)および重鎖(H 鎖)の可変領域(V 領域)をコードするDNA を増幅した。PCR 法には、Jones, S. T. et al., Bio/Technology (1991) 9, 88-89 に記載されたプライマーを使用した。PCR 法により増幅したDNA 断片を低融点アガロースにより精製し、mONS-M21抗体のk型L 鎖V 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片およびH 鎖V 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片を得た。
【0161】
これらのDNA 断片を、5'側末端にSal I 接着末端を有し、3'側末端にXma I 接着末端を有するよう制限酵素で消化した。得られた各々のDNA 断片をpUC19 ベクターに連結し、大腸菌DH5 αのコンピテント細胞に導入して、大腸菌細胞を形質転換した。
形質転換した大腸菌よりアルカリ法によりプラスミドDNA を調製し、プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を常法により決定した。さらに、これらのcDNAに含まれるL 鎖及びのV 領域をコードするDNA の相補性決定領域(complementarity determining region; CDR )を決定した。
【0162】
キメラONS-M21 抗体を発現するベクターを作製するために、各々mONS-M21抗体のk 型L 鎖及びH 鎖のV 領域をコードするcDNAを含むpUC19 ベクターを修飾した。次いで、これらのcDNAを別々のHEF 発現ベクターに挿入した。HEF 発現ベクターをCOS 細胞に同時形質転換し、キメラONS-M21 抗体を発現させた。発現させたキメラONS-M21 抗体の抗原結合活性をCell-ELISAにより調べた結果、キメラONS-M21 抗体は抗原であるヒト髄芽腫細胞株ONS-76と特異的に結合した。したがって、このキメラ抗体がmONS-M21抗体の正しい構造を有することが示された。
【0163】
ヒト型化ONS-M21 抗体をCDR-grafting法により作製した。L 鎖についてはフレームワーク領域(framework region ;FR)のアミノ酸残基を置換することにより、16バージョンを構築した。ヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖及びH 鎖をコードする遺伝子を含むDNA 断片をHEF 発現ベクターに挿入した。これらのHEF 発現ベクターによりCOS 細胞を同時形質転換し、ヒト型化ONS-M21 抗体を発現させた。得られたヒト型化ONS-M21 抗体の抗原結合活性をCell-ELISAにより調べた結果、いくつかのL 鎖バージョンを含むヒト型化ONS-M21 抗体は、抗原であるヒト髄芽腫細胞株ONS-76にキメラONS-M21 抗体と同程度に結合した。したがって、これらのヒト型化ONS-M21 抗体は、良好な抗原結合活性を持つ機能的抗原結合部位を有することが示された。
【0164】
なお、ヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖及びH 鎖をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-RVL-M21p-gk )、Escherichia coli DH5α(HEF-RVH-M21-g γ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成5 年11月18日に、各々FERM BP-4472及びFERM BP-4471としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0165】
参考例3.再構成ヒト ONS-M21 抗体一本鎖 Fv ( scFv )の作製
参考例2で得られたヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域を用いた一本鎖Fv(single chain Fv )を国際特許出願公開番号WO 95-14041 に記載の方法により得たアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号:8)から成る、ヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域を連結するscFvのためのリンカーをコードするDNA を、Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 85, 5879-5883 に記載の方法により作製した。このscFvのためのリンカーをヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖及びH 鎖のV 領域と連結するために、scFvのためのリンカーをコードするDNA の5'側末端にヒト型化ONS-M21 抗体のH 鎖のV 領域カルボキシ基側末端の数アミノ酸残基をコードするDNA を付加した。
【0166】
次いで、 scFv のためのリンカーをコードするDNA の3'側末端にヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖のV 領域アミノ基側末端の数アミノ酸残基をコードするDNA を付加した。さらに、pUC19 ベクターに挿入できるように5'側末端にHind III認識部位を、3'側末端にEco RI認識部位を付加した。
こうして設計したDNA 断片を元にセンス方向及びアンチセンス方向の2 個のオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングした。アニーリングしたDNA を制限酵素Hind III及びEco RIで消化した。得られたDNA 断片をpUC19 ベクターと連結した。
【0167】
このDNA 断片、ヒト型化ONS-M21 抗体のL 鎖V 領域をコードするDNA 及びH 鎖V 領域をコードするDNA をPCR 法により連結した。得られたDNA 断片を、pSCFVT7 発現ベクターにクローニングした。この発現ベクターで大腸菌BL21(DE3 )のコンピテント細胞を形質転換した。
この大腸菌から得られたscFvの抗原結合活性を、mONS-M21抗体の抗原結合に対する阻害活性を指標にCell-ELISAにより調べた。その結果、scFvはヒト型化ONS-M21 抗体より調製したFab 断片と同程度の阻害活性を示した。したがって、scFvはヒト型化ONS-M21 抗体と同程度の抗原結合活性を有することが示された。
【0168】
【配列表】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、培養細胞株ONS−76の0.5%Tween20可溶化画分をONS−M21抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィーで濃縮(2回)後のSDS−PAGE(0.9%、銀染色)にかけた結果を示す電気泳動図であり図面代用写真である。
各レーンの試料は以下のとおりである。
レーン1、マーカー
レーン2、ONS−76可溶化濃縮液(サンプル)
レーン3、サンプルがはいっていたチューブの洗浄液
レーン4、マーカー
レーン5、マーカー
【図2】図2は、細胞内の 125I標識mONS−M21抗体量を示すグラフである。表示は平均値±SDで示してある。
【図3】図3は、反応生成物および画分AをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−15%グラジエントゲル)(Pharmacia Biotech製) 後、クマシーブリリアントブルーG250にて染色したゲルである。各レーンの試料は左から以下の通りである。
レーン1,6;分子量マーカー
レーン2;イムノトキシンゲル濾過画分A
レーン3;イムノトキシンゲル濾過前
レーン4;ONS−M21抗体
レーン5;リシンA鎖
【図4】図4は、ONS−76細胞、HuH−7細胞およびSW480細胞に対するリシンA鎖の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図5】図5は、ONS−76細胞、HuH−7細胞およびSW480細胞に対するイムノトキシンの増殖抑制効果を示すグラフである。
【図6】図6は、ラビット抗インテグリンα3抗体を用いたウエスタン・ブロッティングを示す電気泳動図であり図面代用写真である。
レーン1.分子量マーカー (Prestained SDS-PAGE Standards, High Range ; Bio-Rad)
レーン2.コントロール(マウスONS−M21抗体を含まない条件下での免疫沈降物)
レーン3.マウスONS−M21抗体を用いた免疫沈降物
【図7】図7は、ONS-76細胞に対するイムノトキシンもしくはリシンA 鎖の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図8】図8は、 HuH-7細胞に対するイムノトキシンもしくはリシンA 鎖の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図9】図9は、 DNRイムノコンジュゲートのSephacryl S200 HR 16/60 カラムクロマトグラフィーの溶出結果を示すグラフである。
【図10】図10は、ONS-76細胞に対するイムノコンジュゲートもしくはDNR の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図11】図11は、 HuH-7細胞に対するイムノコンジュゲートもしくはDNR の増殖抑制効果を示すグラフである。
Claims (17)
- インテグリンα3に対する抗体(抗インテグリンα3抗体)又はその抗体断片と化学療法剤とを連結して成る複合体。
- インテグリンα3に対する抗体(抗インテグリンα3抗体)又はその抗体断片とトキシンとをリンカーにより連結して成る複合体。
- 前記インテグリンα3が下記の性質:
(1)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した分子量が約140kDa である;
(2)アミノ末端アミノ酸配列がPhe Asn Leu Asp Thr Arg Phe Leu Val Val Lys Glu Ala Gly Asn Pro Xaa Xaa Leu Phe (Xaaは特定されず)(配列番号:1)である;
(3)内部に次のアミノ酸配列を含有する:
Asn Ile Thr Val Lys Asn Asp Pro Gly His His Ile Ile Glu Asp (配列番号:2)
Asp Asn Leu Arg Asp Lys Leu Arg Pro Ile Ile Ile Ser (配列番号:3)
Asn Tyr Ser Leu Pro Leu Arg (配列番号:4)
Val Asn His Arg Leu Gln Ser Phe Phe Gly Gly Thr Val (配列番号:5)
Lys Thr Val Glu Asp Val Gly Ser Pro Leu Lys Tyr Glu Phe Gln Val Gly Pro (配列番号:6);
を有する請求項1又は2に記載の複合体。 - 前記抗インテグリンα3抗体がモノクローナル抗体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
- 前記抗インテグリンα3抗体がONS-M21抗体(IFO No.50382由来)である、請求項4に記載の複合体。
- 前記抗インテグリンα3抗体が再構成ヒト抗体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
- 前記再構成ヒト抗体が再構成ヒトONS-M21抗体である、請求項6に記載の複合体。
- 前記抗インテグリンα3抗体の抗体断片が、Fab、F(ab')2、又はscFvである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合体。
- 前記化学療法剤が、抗腫瘍剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体。
- 前記抗腫瘍剤がメルファラン(Melphalan) 、シスプラチン (Cis-platinum) 、カルボプラチン (Carboplatin)、マイトマイシンC(Mitomycin C) 、アドリアマイシン (Adriamycin ; Doxorubicin) 、ダウノルビシン (Daunorubicin) 、ブレオマイシン(Bleomycin) 、ネオカルチノスタチン (Neocarzinostatin) 、メトトレキセート (Methotrexate) 、5−フルオロウリジン(5-Fluorouridine) 、5−フルオロ−2′−デオキシウリジン (5-Fluoro-2'-deoxyuridine) 、シトシンアラビノシド (Cytosine arabinoside) 、アミノプテリン(Aminopterin) 、ビンクリスチン(Vincristine) 又はビンデシン(Vindesine) である、請求項9に記載の複合体。
- 前記トキシンが、ジフテリアトキシンA鎖 (Diphtheria toxin A chain) 、シュードモナスエンドトキシン (Pseudomonas endotoxin)、リシンA鎖 (Ricin A chain)、無糖鎖リシンA鎖(Deglycosylated ricin A chain)、アブリンA鎖 (Abrin A chain) 、ゲロニン(Gelonin) 、ポークウイード抗ウィルス蛋白(PAP-s ; Pokeweed anti-viral protein from seeds) 、ブリオジン(Briodin) 、サポリン(Saporin) 、モモルジン (Momordin) 、モモルコキン(Momorcochin) 、ジアンシン32(Dianthin 32) 、ジアンシン30(Dianthin 30) 、モデッシン (Modeccin) 、ビスカミン (Viscumin) 、ボルケシン (Volkesin) 、ドデカンドリン(Dodecandrin) 、トリチン (Tritin) 、ルフィン (Luffin) 又はトリコキリン(Trichokirin) である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体。
- 抗インテグリンα3抗体又は抗原結合能を有するその断片と化学療法剤とをリンカーにより連結して成る請求項1及び3〜10のいずれか1項に記載の複合体。
- 抗インテグリンα3抗体又はその抗体断片とトキシンとをリンカーにより連結して成る請求項2〜8及び11のいずれか1項に記載の複合体。
- 前記リンカーが、N−スクシニミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、スクシニミジル6−3−〔2−ピリジルジチオ〕プロピオンアミド)ヘキサノエート、スルホスクシニミジル6−3−〔2−ピリジルジチオ〕プロピオンアミド)ヘキサノエート、N−スクシニミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート、スクシニミジルオキシカルボニル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スクシニミジル6−(α−メチル−〔2−ピリジルジチオ〕トルアミド)ヘキサノエート、スルホスクシニミジル6−(α−メチル−α−〔2−ピリジルジチオ〕トルアミド)ヘキサノエート、スクシニミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、スルホ−スクシニミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、m−マレイミドベンゾイル−N−ハイドロキシスクシニミドエステル、m−マレイミドベンゾイル−N−ハイドロキシスルホスクシニミドエステル、S−アセチルメルカプトスクシニックアンヒドライド、ジメチル 3,3−ジチオビスプロリオニミデート又は2−イミノチオレーンである、請求項12又は13に記載の複合体。
- 前記リンカーがペプチド、カルボキシメチルデキストラン、アビジン・ビオチン、デキストラン、アミノデキストラン、シス・アコニット酸、グルタミン酸ジヒドラジド、又はヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項12又は13に記載の複合体。
- 請求項1〜15のいずれか1項に記載の複合体を含んで成る医薬組成物。
- 請求項1〜15のいずれか1項に記載の複合体を含んでなる髄芽腫治療剤。
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