JP4846919B2 - 模擬運転装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用者の模擬車両の操縦操作に基づいてディスプレイ装置上に走行情景を映像として表示し、走行状態を疑似体験させる模擬運転装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、使用者が各種操作可能な模擬二輪車と、この模擬二輪車の走行状態に係る走行路を含む所望の映像を表示するCRT等を利用したディスプレイ装置とを組み合わせた模擬運転装置が、遊技用として、あるいは二輪車の運転教育用として使用に供されている。
【0003】
これらの模擬運転装置は、使用者に対して表示する映像にポリゴン(多角形)を組み合わせて用いられている。このポリゴンを制御する方法は種々提案されており、例えば裏ポリゴンを描画しないようなハードウェア等を有効利用できるポリゴンデータ変換装置及び3次元シミュレータ装置が、特開平8−645号公報に開示されている。また、複数のラスタエンジンの中、ある一つのラスタエンジンに2次元ポリゴン情報処理の負荷が集中することなく均等に処理負荷の分配をし、処理リソースの有効利用を可能とする、画像発生装置の処理負荷の分配方式が、特開平8−335273号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、模擬運転装置において、例えば自車両(例えば主観視の場合は視点、客観視の場合は自車両の画像)が坂道などを登降する表現を行う場合、地形を構成するポリゴンの高さや傾きを逐次参照し、視点や自車両の高さ、姿勢を求めて表示するようにしている。この場合、地形がポリゴンを組み合わせた多面体で定義されるため、隣接するポリゴンに乗り移る際に、地形の角度や高さが不連続になり、視点や自車両の高さ、姿勢は滑らかな動きにならない。
【0005】
つまり、視点座標が隣接するポリゴン間の不連続部分に影響を受けてスクリーン表示が揺れ、あるいは自車両の座標が前記不連続部分に影響を受け、自車両が不要に振動する表示となってしまうという問題がある。
【0006】
これらの動きは、ポリゴンを細かく分割し、角度や高さの変化を小さくする方法や、タイヤやサスペンションなどの運動方程式を解く方法を用いることで、滑らかに動く映像を得ることができるが、いずれも計算の負荷が増大する。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分があっても、表示上、視点の揺れや仮想車両の不要な振動を引き起こすことなく、滑らかな走行状態の映像を得ることができる模擬運転装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分に影響されずに、滑らかな走行状態の映像を得ることができる表示を、計算上の負荷を重くすることなく、低コストで実現させることができる模擬運転装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る模擬運転装置は、入力装置に対する使用者の操作に基づいた入力情報と、仮想車両の模擬空間内の位置情報と、模擬的な背景情報をもとに、前記使用者に対して、ポリゴンによる模擬視界を表示する手段を備える模擬運転装置において、地形表示ポリゴンと前記仮想車両の第1の情報から、一次遅れの式を用いて計算された情報を求める平滑化計算手段と、前記平滑化計算手段による情報から前記仮想車両の映像を生成する手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、仮想車両の映像としては、主観視では仮想車両の中に設定された視点から見た映像であり、客観視では仮想車両の後方に設定された視点から見た映像である。
【0011】
これにより、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分が滑らかな曲線に変換され、仮想車両(視点を含む)はこの曲線に沿って移動することになる。従って、表示上、視点の揺れや仮想車両の不要な振動を引き起こすことなく、滑らかな走行状態の映像を得ることができる。
【0012】
また、一次遅れの式という、計算上、負荷の軽い処理を行うことから、リアルタイムによる3次元画像の動作表示に影響を及ぼすことなく、仮想車両の動きを滑らかにすることができる。これは、ソフトウエア開発にかかるコストの低廉化にも有利になる。
【0013】
ところで、自動車等のサスペンションに使われているばねと減衰器とにより、振動特性が変化する。減衰が弱いと、段差を降りたときに減衰していく正弦波の運動になるが、減衰力を調整することにより、サスペンションの臨界減衰に近い運動を得ることができる。
【0014】
この臨界減衰に近い運動の様相が一次遅れの波形に近似していることから、隣接するポリゴンによる段差を自車両が通過するときに、サスペンションの臨界減衰に近い表現を行うことができ、使用者は、実車に乗車しているような臨場感のある雰囲気を得ることができる。
【0015】
この場合、前記第1の情報は、前記模擬空間内における前記仮想車両の高さの情報を有するようにしてもよいし、前記模擬空間内における前記仮想車両の進行方向の傾きの情報を有するようにしてもよい。また、前記第1の情報は、前記模擬空間内における前記仮想車両の進行方向と直角である方向の傾きの情報を有するようにしてもよい。
【0016】
更に、本発明では、一次遅れの式の平滑化数を可変としてもよい。これにより、平滑化処理の結果を変えることが可能となり、種々のサスペンションの硬さを表現することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る模擬運転装置の一実施の形態例について図1〜図18を参照しながら説明する。
【0018】
まず、本実施の形態に係る模擬運転装置2は、図1に示すように、使用者20が乗車され得る形状を有し、かつ、乗車した使用者20の操作に基づく各種情報を出力する模擬車両4と、該模擬車両4からの出力情報に基づいて、使用者20が乗車している模擬車両4に対応する仮想車両7(図10参照:以下、単に自車両7と記す)の模擬空間内での位置情報と、模擬的な背景情報をもとに、前記使用者20に対して、ポリゴンによる模擬視界を表示するディスプレイボックス6と、模擬車両4及びディスプレイボックス6を管理・制御する制御回路22とを有する。
【0019】
前記ディスプレイボックス6には、使用者20に模擬視界を表示するためのディスプレイ24と、模擬車両4からの各種情報に基づいて模擬視界を構成する背景画像や自車両7等のオブジェクトデータを保持し、制御回路22からの情報に基づいて前記ディスプレイ24に模擬視界を表示させるCGI発生装置(Computer Generated Image)26と、操縦操作や他車両などにより発生する音を使用者20に伝えるためのスピーカユニット28が備えられている。
【0020】
模擬車両4には、図2に示すように、実車と同様に、ハンドルトルクセンサ30、アクセル開度センサ32、ブレーキ圧センサ(34、36)などの各種センサ群や、ライティングスイッチ38、ウィンカースイッチ40などの各種スイッチ群や、ピッチモータ42、ステアリングモータ44などの各種モータ群が設置されている。図2に、上述した各種センサ群、スイッチ群及びモータ群等の代表例を図示し、その説明を省略する。
【0021】
一方、前記制御回路22は、各種演算、判断及び制御等を行う中央処理装置としてのCPUと、システムプログラム等が記憶される記憶手段としてのROMと、ワーク用等に使用される記憶手段としてのRAM等を有する。もちろん、各種センサ群やスイッチ群からの情報から、ディスプレイ24に対する表示制御も行うようになっている。
【0022】
制御回路22から伝達される情報とは、基本的には、模擬車両4の操縦操作に係わる現在位置データ、現在速度データ、現在加速度データ等である。
【0023】
CGI発生装置26は、制御回路22からの前記各種データが例えばフレーム単位に入力されるに従って、予め記憶されている風景を含む走行路の映像情報を発生し、これによって、ディスプレイ24には模擬視界が表示されることになる。
【0024】
次に、模擬視界を含む模擬空間について説明する。風景を含む走行路の映像情報は、すべて模擬空間上で表現されており、その模擬空間は、図3に示すように、制御回路22においてx軸、y軸、z軸を有する3次元空間として計算される。また、x−y平面は、図4に示すように、模擬空間内の底面に対応させるので、z座標は模擬空間内において高さに対応することとなる。
【0025】
つまり、模擬空間内に表現される建物や走行路等の映像情報は、多数のポリゴンの情報で構成され、各ポリゴンの情報は、それぞれ頂点データを有する。頂点データは、模擬空間内の3次元座標を含み、例えば模擬車両4からの操作入力に応じて前記3次元座標が逐次計算されて、例えば自車両7が移動するような映像が表示されることになる。これらポリゴンの頂点データは、制御回路22のRAMあるいはCGI発生装置26のRAMなどに保持されている。
【0026】
このようなポリゴンによる建物や走行路の表示において、ポリゴンを粗く設定する(形状の大きなポリゴンで設定する)と、隣接するポリゴン間において、例えば図10及び図11に示すように、傾斜角が90°とされた段差50が生じることになる。このように段差50が生じるポリゴンの配置関係の形態(以下、第1の形態と記す)で自車両7を走行させると、段差50の部分で走行状態が不連続になり、不自然な印象を与える。
【0027】
そこで、本実施の形態では、上述のような第1の形態における段差50の傾斜角を滑らかにすべく、後述する一次遅れの式で補間を行うようにしている。なお、段差としては、上述の図10及び図11に示すほか、図13及び図14に示すように、自車両7の走行方向に対してある角度で傾斜するポリゴンが存在する形態(自車両7の走行方向について隣接する2つのポリゴンがその境界部分において屈曲した形態:以下、第2の形態と記す)や、図16及び図17に示すように、自車両7の進行方向と直角な方向に対してある角度で傾斜するポリゴンが存在する形態(自車両7の走行方向について隣接する2つのポリゴンがねじれの関係となる形態:以下、第3の形態と記す)などがある。
【0028】
次に、本実施の形態に係る模擬運転装置2で使用される一次遅れの式について説明する。
【0029】
まず、一次遅れの式は、以下の(1)式のような漸化式とする。
【0030】
n+1=(kan+b)/(k+1) …(1)
この(1)式において、kは平滑化係数で正の値とし、nは0以上の整数とする。この(1)式から定まる数列{an}はk>−1/2のとき、任意の初項a0に対してbに収束することが分かる。
【0031】
ここで、一次遅れの式の一例について、図5と図6を参照しながら説明する。
図5と図6のグラフの縦軸はanを表し、横軸はnを表す。
【0032】
図5は、初項a0=5、b=0、平滑化係数kを20とした以下の(2)式で表される漸化式から定まるグラフである。
【0033】
n+1=(20an+0)/(20+1)=(20/21)an …(2)
この(2)式より数列{an}は公比20/21の等比数列となり、初項5から単調に減少し、0に収束することが分かる。
【0034】
また、図6は平滑化係数kを小さくして、以下の(3)式のようにk=5とした場合のグラフである。
【0035】
n+1=(5an+0)/(5+1)=(5/6)an …(3)
この(3)式により数列{an}は公比5/6の等比数列となり、(2)式の場合と同様に初項5から単調に減少し、0に収束することが分かる。このように、これら2つの曲線は、初項a0=5で決まる段差のポリゴンを移動する滑らかな軌跡として用いることができる。
【0036】
ところで、自動車等のサスペンションに使われているばねと減衰器とにより、振動特性が変化することが知られている。減衰が弱いと、段差を降りたときに減衰していく正弦波の運動になるが、減衰力を調整することにより、サスペンションの臨界減衰に近い運動を得ることができる。
【0037】
この臨界減衰に近い運動の様相が一次遅れの波形に近似していることから、上述の(1)式等の一次遅れの式を用いることで、自車両7が上述の隣接するポリゴンによる段差を通過するときに、サスペンションの臨界減衰に近い表現を行うことができる。
【0038】
また、図5と図6のグラフからも明らかなように、(3)式は、(2)式より収束が速いことが分かる。つまり、平滑化係数は小さくするほど、数列{an}は急激に収束する。
【0039】
従って、平滑化係数の値を変えることにより、サスペンションの硬さを表現することが可能となることが分かる。軟らかいサスペンションの場合は、図5のように平滑化係数を大きくし、硬いサスペンションの場合は、図6のように平滑化係数を小さくすればよい。
【0040】
次に、上述の数列{an}を計算する共通関数Aのフローチャートを説明する。ここでの関数とは、C言語での使われ方のように、一定の処理を行うプログラムを意味する。数列{an}を計算する関数は、anに相当する値aと、(1)式でのbに相当する値bと、後に説明するスキップ回数rと、平滑化係数kの4つの引数を有し、戻り値として、計算されたan+rに相当する値を返す処理を行う。
【0041】
図7は、前記共通関数Aのフローチャートである。ステップS101で引数a、b、r、kを受け取り、ステップS102でループカウンタnを1に初期化する。ステップS103からステップS105まではループ処理となる。ループの終了条件はn>rまたはa=bとなった場合である。
【0042】
ここで、rは引数aからr番目の値を返すために用いる値である。これは、自車両7の速度が速い場合、表示に用いる高さのデータとして、図8に示す曲線上にプロットした黒丸のように、例えば10番おきの値が必要な場合と、自車両7の速度が遅い場合は、図9に示すように、5番おきの値が必要な場合がある。このスキップ回数の値がrである。
【0043】
ループのもう一つの終了条件であるa=bは、a=bになると(1)式の性質から、これ以降、何度計算しても求まる値はbのまま変わらないためである。これはbが(1)式における極限値であるためであり、本来、理論的に(1)式の数列{an}は、初項がbである以外、a=bとなることはあり得ないが、コンピュータによる演算のため、誤差が丸められ、極限値であるbと一致する可能性がある。
【0044】
図7のフローチャートの説明に戻り、ステップS103は(1)式に準じた計算を行い、ステップS104でループカウンタを増分し、ループ内の処理が終了する。この処理をステップS105で判定する終了条件が発生するまで行い、ループが完了した次の処理であるステップS106でaの値を返すことにより、共通関数Aの処理は終了する。このように、共通関数Aは一次遅れの式の計算を行なう処理であるが、サスペンションなどの運動方程式の計算等と比較して、負荷が軽い処理であることが分かる。
【0045】
次に、上述の第1〜第3の形態に対して、上述の一次遅れの式を用いることにより、滑らかな自車両7の動きを実現させる手法について図10〜図18を参照しながら説明する。
【0046】
まず、上述した共通関数Aを用いて、第1の形態に対する平滑化処理について図10〜図12を参照しながら説明する。
【0047】
図10は、第1の形態における段差50を通過する自車両7を示す説明図であり、図11は、図10の自車両7の側面を段差50と共に拡大した説明図である。図11から分かるように、自車両7が乗っているポリゴン60の高さはhであり、乗り移るポリゴン62の高さはjである。
【0048】
ここで、図12のフローチャートについて説明する。処理の概要は、(1)式において初項にhを代入し、bにjを代入し、求まった値を順次自車両7の高さとする処理である。
【0049】
ステップS201で現在の自車両7の高さhを求める。ここで自車両7の高さとは、ポリゴン60を乗り移る瞬間の、乗り移る車輪の最下部の座標からx−y平面に垂線を下ろした場合の垂線の長さ、即ち、最下部のz座標の値である。次のステップS202において、乗り移るポリゴン62の高さjを求める。この高さは車輪が乗り移るポリゴン62のz座標の値である。
【0050】
ステップS201とステップS202で求まったh、jを、ステップS203で、引数となる変数aにhを代入し、引数となる変数bにjを代入する。次のステップS204からステップS207はループ処理であり、継続条件は一次遅れの式を用いて自車両7の高さを制御している期間である。
【0051】
ステップS204で、所望の平滑化係数と自車両7の速さに応じたスキップ回数rとa、bを引数として共通関数Aでの処理に入る。この共通関数Aでの処理は、上述したのでここではその重複説明を省略する。
【0052】
次のステップS205において、共通関数Aからの戻り値をあらためてaに代入し、ステップS206でaを自車両7の高さに反映させる。そして、このループ処理が繰り返されることで、自車両7は、図11において象徴的に示す平滑化された曲線64に沿ったかたちで移動することとなり、ステップS207の継続条件が満たされなった段階で、この第1の形態に対する処理は終了する。
【0053】
次に、上述した共通関数Aを用いて、第2の形態に対する平滑化処理について図13〜図15を参照しながら説明する。
【0054】
まず、前記第2の形態、即ち、自車両7の走行方向に対してある角度で傾斜するポリゴン68が存在する形態における自車両7の進行方向の傾きとは、自車両7の上下方向の傾き(ピッチ)であり、例えばポリゴン66から隣接するポリゴン68に乗り移る瞬間の自車両7の進行方向の方向ベクトルを(a、b、c)とおいたとき、c/√(a2+b2)と定めてもよい。
【0055】
また、自車両7が前記ポリゴン68上のベクトル12の方向に移動した場合に、このベクトル12を(s、t、u)とおいたとき、このポリゴン68の傾きをu/√(s2+t2)と定めてもよい。
【0056】
ここで、図15のフローチャートについて説明する。このフローチャートにおいて、自車両7の進行方向の傾きをmとし、乗り移るポリゴン68の傾きをpとする。処理の概要は、(1)式において初項にmを代入し、bにpを代入し、求まった値を順次自車両7の傾きとする処理である。
【0057】
ステップS301で現在の自車両7の進行方向の傾きmを求め、次のステップS302で乗り移るポリゴン68の傾きpを求める。
【0058】
ステップS301とステップS302で求まったm、pを、ステップS303で、引数となる変数aにmを代入し、引数となる変数bにpを代入する。ステップS304からステップS307はループ処理であり、継続条件は一次遅れの式を用いて自車両7の進行方向の傾きを制御している期間である。
【0059】
ステップS304で、所望の平滑化係数と自車両7の速さに応じたスキップ回数rとa、bを引数として共通関数Aでの処理に入る。そして、次のステップS305において、共通関数Aからの戻り値をあらためてaに代入し、ステップS306において、aを自車両7の傾きに反映させる。そして、このループ処理が繰り返されることで、自車両7は、隣接するポリゴン66及び68間における平滑化された曲線(図示せず)に沿ったかたちで移動することとなり、ステップS307の継続条件が満たされなった段階で、この第2の形態に対する処理は終了する。
【0060】
次に、上述した共通関数Aを用いて、第3の形態に対する平滑化処理について図16〜図18を参照しながら説明する。
【0061】
まず、第3の形態、即ち、自車両7の進行方向と直角な方向に対してある角度で傾斜するポリゴン72が存在する形態における自車両7の進行方向の直角方向の傾きとは、自車両7の横方向の傾き(カント)であり、例えば自車両7の後輪の回転軸の方向ベクトルを、(a、b、c)とおいたとき、c/√(a2+b2)と定めてもよい。また、この方向ベクトルの向きを自車両7の右から左方向か、左から右方向かのどちらか一方向に予め定めておく。
【0062】
また、図16に示す隣接するポリゴン70及び72のうち、自車両7が乗り移るポリゴン72上のベクトル16を自車両7の進行方向とし、該進行方向に対して直角であるベクトル18をポリゴン72の傾きとする。このベクトル18を(s、t、u)とおいたとき、このポリゴン72の傾きをu/√(s2+t2)と定めてもよい。
【0063】
ここで、図18のフローチャートについて説明する。このフローチャートにおいて、自車両7の進行方向の垂直方向の傾きはmであり、乗り移るポリゴン72の傾きをpとする。処理の概要は、(1)式において初項にmを代入し、bにpを代入し、求まった値を順次自車両7の進行方向の垂直方向の傾きとする処理である。
【0064】
まず、ステップS401で現在の自車両7の進行方向の傾きmを求め、次のステップS402で乗り移るポリゴン72の傾きpを求める。
【0065】
ステップS401とステップS402で求まった傾きm、pを、ステップS403で、引数となる変数aにmを代入し、引数となる変数bにpを代入する。ステップS404からステップS408はループ処理であり、継続条件は一次遅れの式を用いて自車両7の進行方向の垂直方向の傾きを制御している期間である。
【0066】
ステップS404で、所望の平滑化係数と自車両7の速さに応じたスキップ回数rとa、bを引数として共通関数Aでの処理に入る。そして、次のステップS405において、共通関数Aからの戻り値をあらためてaに代入し、ステップS406でaを自車両7の傾きに反映させる。そして、このループ処理が繰り返されることで、自車両7は、隣接するポリゴン70及び72間における平滑化された曲線(図示せず)に沿ったかたちで移動することとなり、ステップS407の継続条件が満たされなった段階で、この第3の形態に対する処理は終了する。
【0067】
以上説明したように、隣接するポリゴンの第1〜第3の形態に対して一次遅れの式を用いることにより、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分が滑らかな曲線に変換され、自車両7(視点を含む)はこの曲線に沿って移動することになる。従って、表示上、視点の揺れや自車両7の不要な振動を引き起こすことなく、滑らかな走行状態の映像を得ることができる。
【0068】
また、一次遅れの式という、計算上、負荷の軽い処理を行うことから、リアルタイムによる3次元画像の動作表示に影響を及ぼすことなく、自車両7の動きを滑らかにすることができる。これは、ソフトウエア開発にかかるコストの低廉化にも有利になる。
【0069】
自動車のサスペンションの臨界減衰に近い運動の様相が一次遅れの波形に近似していることから、隣接するポリゴンによる段差を自車両7が通過するときに、サスペンションの臨界減衰に近い表現を行うことができ、使用者は、実車に乗車しているような臨場感のある雰囲気を得ることができる。
【0070】
更に、一次遅れの式の平滑化数を可変としたので、平滑化処理の結果を変えることが可能となり、種々のサスペンションの硬さを表現することができる。
【0071】
このように、本実施の形態に係る模擬運転装置においては、隣接するポリゴン間の不連続である角度や高さを平滑化することができ、自車両7を滑らかに動かすことが可能となる。
【0072】
なお、本発明に係る模擬運転装置は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0073】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る模擬運転装置によれば、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分があっても、表示上、視点の揺れや仮想車両の不要な振動を引き起こすことなく、滑らかな走行状態の映像を得ることができる。
【0074】
また、模擬空間内において、隣接するポリゴン間の不連続部分に影響されずに、滑らかな走行状態の映像を得ることができる表示を、計算上の負荷を重くすることなく、低コストで実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る模擬運転装置の側面図である。
【図2】図1に示す模擬運転装置の回路構成ブロック図である。
【図3】模擬空間座標を示す図である。
【図4】模擬空間座標内に背景を描いた図である。
【図5】平滑化係数を20としたときの一次遅れの式のグラフである。
【図6】平滑化係数を5としたときの一次遅れの式のグラフである。
【図7】共通関数Aのフローチャートである。
【図8】一次遅れの式のグラフに10番目ごとに点をプロットしたグラフである。
【図9】一次遅れの式のグラフに5番目ごとに点をプロットしたグラフである。
【図10】段差を通過する車両を示す図である。
【図11】図10の段差部分を拡大した図である。
【図12】第1の形態に対する平滑化処理を示すフローチャートである。
【図13】車両の進行方向の傾きが異なるポリゴンを通過する車両を示す図である。
【図14】車両が乗り移るポリゴン傾きを表す図である。
【図15】第2の形態に対する平滑化処理を示すフローチャートである。
【図16】車両の進行方向の垂直方向の傾きが異なるポリゴンを通過する車両を示す図である。
【図17】車両が乗り移るポリゴン傾きを表す図である。
【図18】第3の形態に対する平滑化処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…模擬運転装置 4…模擬車両
6…ディスプレイボックス 7…自車両
12、16…進行方向ベクトル 18…進行方向の垂直方向のベクトル
20…使用者 50…段差
60、62、66、68、70、72…隣接するポリゴン
64…曲線

Claims (4)

  1. 入力装置(4)に対する使用者の操作に基づいた入力情報と、仮想車両(7)の模擬空間内での位置情報と、模擬的な背景情報をもとに、前記使用者に対して、ポリゴンによる模擬視界を表示する手段(24)を備える模擬運転装置(2)において、
    地形表示ポリゴンと前記仮想車両(7)に関する第1の情報から、下記の一次遅れの式〔1〕を用いて計算された情報を求める平滑化計算手段(22)と、
    前記平滑化計算手段(22)による情報から仮想車両(7)の映像を生成する手段(26)と、
    を備え
    前記一次遅れの式〔1〕の平滑化係数は、可変であり、
    前記平滑化計算手段(22)は、下記の式〔1〕から定まる数列{a n }を計算するプログラムの関数として、a n に相当する値である引数aと、式〔1〕でのbに相当する値である引数bと、スキップ回数として前記引数aからr番目の値を得るために用いる引数rと、平滑化係数である引数kとの4つの引数を有し、計算されたa n+r に相当する値を得る処理を行い、n>rまたはa=bとなった場合に前記処理を終了することを特徴とする模擬運転装置(2)
    n+1 =(ka n +b)/(k+1) …〔1〕
    ここで、kは平滑化係数で正の値とし、nは0以上の整数とする。
  2. 請求項1記載の模擬運転装置(2)において、
    前記第1の情報は、前記模擬空間内における前記仮想車両(7)の高さの情報を有することを特徴とする模擬運転装置(2)
  3. 請求項1又は2記載の模擬運転装置(2)において、
    前記第1の情報は、前記模擬空間内における前記仮想車両(7)の進行方向の傾きの情報を有することを特徴とする模擬運転装置(2)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の模擬運転装置(2)において、
    前記第1の情報は、前記模擬空間内における前記仮想車両(7)の進行方向と直角である方向の傾きの情報を有することを特徴とする模擬運転装置(2)
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