本発明は、複数の無線メディアから構成される無線基地局、セル無線検出装置および回線接続装置に関する。
近年、様々な無線メディアが開発されている。例えば、広範なサービスエリアを提供する携帯電話では、その技術の進歩とサービスエリアの拡充により、通話に加えてインターネットアクセス等のデータ通信についても、非常に普及してきている。また、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)の無線LANの標準規格「IEEE802.11」(例えば「IEEE802.11g」、「IEEE802.11j」)に準拠のものは、設置の利便性と装置の低廉化により、ノート型パーソナルコンピュータなどに端末装置の内蔵化が進み、家庭やオフィス、さらにはホットスポットと呼ばれる公共の場での利用が可能になってきている。また、標準規格「IEEE802.16e」に準拠の「Mobile WiMAX」と呼ばれる無線アクセス方式は、新たに注目されるものとして、サービス実現に向けた技術検討が行われている。また、MBWA(Mobile Broadband Wireless Access)と呼ばれる無線アクセス方式標準規格「IEEE802.20」の検討も行われている。個々の無線メディアは、それぞれに、端末局との無線通信が可能な通信エリアとなるセルを形成する。
上述したような各種の無線メディアは、一般的に物理層では互換性が全くないが、それら複数の無線メディアをシームレスに統合するための技術が、例えば特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、無線LANと公衆無線ネットワークとを接続する技術が開示されている。これらの従来技術では、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの第3層(ネットワーク層)に統合処理を設けている。また、特許文献3には、RFポートとセル制御装置を組み合わせることで、複数のRFポートを集約する技術が開示されている。また、特許文献4には、複数種類の無線メディア間で垂直方向にローミングする技術が開示されている。
特開2003−87858号公報
特表2005−523613号公報
特開2001−313658号公報
特表2004−517574号公報
しかし、上述した特許文献1、2記載の従来技術では、いずれもネットワーク層での処理となっているために、基地局装置または端末装置上でネットワーク層の処理を行うOS(オペレーティングシステム)に対して機能追加が必要となり、OSの負荷が増大する。さらに、ネットワーク層における通信IDが無線メディアの切り替え時(ハンドオーバ時)に変更されるので、OSに対して、通信IDの変更に伴う処理が要求されるが、この処理負荷は決して小さいものではない。
また、特許文献3、4記載の従来技術では、複数種類の無線メディアが様々な大きさのセルを重複するように形成していると、その重複地域内を移動する端末局はセル間を渡り歩くことになってハンドオーバが頻発し、処理負荷が増大する。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複数種類の無線メディアを用いて様々な大きさのセルが重複するように形成されている場合に、各無線メディアをシームレスに統合すると共に、ハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することのできる無線基地局、セル無線検出装置および回線接続装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線基地局は、複数の無線メディアから構成される無線基地局において、無線端末局および無線基地局のそれぞれに固有の物理アドレスを用いて自局と端末局との間で確立するリンクにより送受するリンクフレームを、各無線メディアの無線リンクの一つ若しくは複数を用いて伝送するデータリンク層を有し、最も広範な通信エリアを提供する第1のセルを形成する第1の無線メディアを一つだけ前記データリンク層に接続し、前記第1のセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供する第2のセルを形成する第2の無線メディアを一つ若しくは複数を通信回線を介して前記データリンク層に接続し、前記データリンク層には、前記第1の無線メディアにより形成される第1のセルが第2のセルにおいて検出された第2の無線メディアが選択的に接続されることを特徴とする。
本発明に係る無線基地局においては、前記データリンク層は、通信ネットワークからの第2の無線メディア接続用の接続点アドレスを有することを特徴とする。
本発明に係る無線基地局においては、前記データリンク層は、前記リンクフレームの前記無線リンクへの分配と、前記無線リンクからの前記リンクフレームの受け渡しを行うスイッチ手段を有し、前記スイッチ手段には、前記第1の無線メディアおよび自データリンク層に接続された前記第2の無線メディアの全てが接続されることを特徴とする。
本発明に係るセル無線検出装置は、複数の無線メディアから構成される無線基地局に係るセル無線検出装置であり、最も広範な通信エリアを提供する第1のセルを形成する第1の無線メディアからの無線信号を受信する受信手段と、該受信信号から第1のセルを検出するセル検出手段と、前記検出された第1のセルに重複し且つ前記第1のセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供する第2のセルを形成する第2の無線メディアを、無線基地局のデータリンク層に通信回線を介して接続する回線接続装置に対して、前記検出された第1のセルを形成する第1の無線メディアの接続先である無線基地局のデータリンク層が有する接続点アドレスに関する情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明に係るセル無線検出装置においては、前記セル検出手段は、最良の無線環境を提供可能な第1のセルを検出することを特徴とする。
本発明に係るセル無線検出装置においては、前記セル検出手段は、無線基地局のデータリンク層が有する接続点アドレスに対応付けられている第1のセルの識別子を検出することを特徴とする。
本発明に係るセル無線検出装置においては、前記セル検出手段は、第1のセルを形成する第1の無線メディアの接続先である無線基地局のデータリンク層が有する接続点アドレスを検出することを特徴とする。
本発明に係る回線接続装置は、複数の無線メディアから構成される無線基地局に係る回線接続装置であり、セル無線検出装置によって検出された第1のセルを形成する第1の無線メディアの接続先である無線基地局のデータリンク層に、前記検出された第1のセルに重複し且つ前記第1のセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供する第2のセルを形成する第2の無線メディアを、通信回線を介して接続する通信接続処理手段を備えたことを特徴とする。
本発明に係る回線接続装置においては、セル無線検出装置によって検出された第1のセルの識別子から、当該第1の無線メディアの接続先である無線基地局のデータリンク層が有する接続点アドレスを取得する手段を備え、前記通信接続処理手段は、該接続点アドレスに通信接続することを特徴とする。
本発明に係る回線接続装置においては、前記通信接続処理手段は、セル無線検出装置によって検出された第1のセルに係る接続点アドレスに通信接続することを特徴とする。
本発明に係る回線接続装置は、複数の無線メディアから構成される無線基地局に係る回線接続装置であり、通信ネットワークに接続される中央制御装置に通信接続する通信接続処理手段を備え、前記通信接続処理手段は、セル無線検出装置によって検出された第1のセルを形成する第1の無線メディアの接続先である無線基地局のデータリンク層に通信接続する要求を前記中央制御装置に対して行い、前記中央制御装置によって通信接続された前記データリンク層と、前記検出された第1のセルに重複し且つ前記第1のセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供する第2のセルを形成する第2の無線メディアとを通信接続することを特徴とする。
本発明に係る第1の無線メディアとしては、例えばセルラーシステムが利用可能である。本発明に係る第2の無線メディアとしては、例えば「IEEE802.11」、「IEEE802.16」又は「IEEE802.20」に準拠したものが利用可能である。
本発明によれば、複数種類の無線メディアを用いて様々な大きさのセルが重複するように形成されている場合に、各無線メディアをシームレスに統合すると共にハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することができる。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
[無線基地局の基本構成]
まず、本発明に係る無線基地局の基本構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコグニティブ基地局10の基本構成を示すブロック図である。図1において、コグニティブ基地局10は、コア網側インタフェース11、仮想MAC(Media Access Control)処理部12、スイッチ13、複数の無線メディアの無線モジュール14および無線環境認識部15を備える。ここでの説明においては、複数の無線メディアの無線モジュール14として、IEEE802.11gの無線モジュール14−1,14−2と、IEEE802.11jの無線モジュール14−3,14−4と、IEEE802.16eの無線モジュール14−5とを有する(以下、特に区別しないときは「無線モジュール14」と称する)。
IEEE802.16eの無線モジュール14−5は、最も広範な通信エリアを提供する第1のセルを形成する。IEEE802.11gの無線モジュール14−1,14−2およびIEEE802.11jの無線モジュール14−3,14−4の各々は、該第1のセルに内含され、該第1のセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供する第2のセルを形成する。なお、無線メディアの種類は、ここで扱うものに限定されない。例えば、携帯電話サービスを提供するセルラーシステムの無線モジュールや、IEEE802.20の無線モジュールなどを備えるようにしてもよい。
コグニティブ基地局10は、コア網側インタフェース11を介して、無線通信ネットワークのコアネットワークと接続する。各コグニティブ基地局10は、コアネットワークを介して相互に接続される。また、各コグニティブ基地局10は、コアネットワークを介して、インターネット等の無線通信ネットワークの外部のネットワークに接続することができる。
コア網側インタフェース11は、コアネットワークとの間で、ネットワーク層の通信データとして、ここではIP(Internet Protocol)パケットを送受する。
仮想MAC処理部12は、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立するための処理を行う。仮想MACアドレスは、物理アドレスであり、基地局および端末局の各々に対して、唯一に予め付与される。コグニティブ基地局10の仮想MAC処理部12は、端末局の仮想MAC処理部との間で、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立する。仮想MAC処理部12は、このリンクを用いて伝送するフレームを生成する。このフレームのことを、説明の便宜上、「リンクフレーム」と称する。リンクフレームには、コアネットワークから受信されたIPパケットが格納される。仮想MAC処理部12は、生成したリンクフレームをスイッチ13に出力する。また、仮想MAC処理部12は、スイッチ13からリンクフレームを受け取り、該リンクフレームからIPパケットを取り出してコア網側インタフェース11に出力する。
スイッチ13は、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームを各無線モジュール14へ分配し、又、各無線モジュール14から入力されるリンクフレームを仮想MAC処理部12へ出力する。
無線モジュール14は、自己に固有のMACアドレスを有する。無線モジュール14に固有のMACアドレスのことを、仮想MACアドレスと区別するために、説明の便宜上、「実MACアドレス」と称する。実MACアドレスは、従来、利用されているものである。無線モジュール14は、同じ無線メディアの無線モジュールとの間で、実MACアドレスを用いた無線リンクを確立する。無線リンクは、周波数チャネル単位で確立される。
無線モジュール14は、無線リンクを用いて伝送する無線フレームを生成する。無線フレームには、スイッチ13から受け取ったリンクフレームが格納される。また、無線モジュール14は、無線リンクにより受信した無線フレームからリンクフレームを取り出してスイッチ13に出力する。
無線環境認識部15は、無線環境を認識し、その認識結果に基づき、スイッチ13に対して、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームの分配先を指示する。具体的に説明すれば、まず、無線環境認識部15は、各無線モジュール14から無線情報を取得する。無線情報としては、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)の値、バックグラウンド雑音レベル、変調方式、送信バッファに蓄積されている送信待ちのデータ量、送信失敗を示すNACK信号を相手局から受信した回数、相手局から受信した無線フレームの不良率などが挙げられる。
無線環境認識部15は、その無線情報に基づいて、各無線メディアの通信状況を判断する。例えば、どの無線メディアが良好な通信状態であるのかを判断する。さらには、どの無線メディアのどの周波数チャネルが良好な通信状態であるのかを判断する。また、長期的な統計データや短期的な統計データを用いて、将来的に良好な通信状態が得られるであろう無線メディア、さらにはその周波数チャネルを特定する推定処理を行う。
無線環境認識部15は、各無線メディアの通信状況に基づき、スイッチ13に対して、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームの分配先を指示する。リンクフレームの分配先としては、現時点で良好の通信状態であるもの、もしくは、将来的に良好な通信状態が得られるであろうものであって、一つ若しくは複数の無線モジュール14を指示し、さらにはその無線モジュール14における周波数チャネルを一つ若しくは複数を指示する。また、分配比率についても、各無線メディアの通信状況に基づいて決定し、スイッチ13に指示するようにしてよい。
スイッチ13は、無線環境認識部15から指示された分配先へ、仮想MAC処理部12から受け取ったリンクフレームを順番に出力する。なお、無線環境認識部15から分配比率が指示された場合には、その分配比率に従って、各分配先へリンクフレームを分配し出力する。
図2は、本実施形態に係る通信プロトコル上の階層構造を説明するための説明図である。図2において、無線リンク層P1は、無線モジュール14間で確立される無線リンクに対応する階層であって、OSI参照モデルの第2層(データリンク層)に属する従来からあるものである。これに対して、本実施形態では、無線リンク層P1の上位に、新たにリンク層P2を設ける。リンク層P2は、仮想MAC処理部12間で確立されるリンクに対応する階層である。リンク層P2は、データリンク層に属するものであって、無線リンク層P1の上位階層に位置する。
図2に示されるように、一つのコグニティブ基地局10と一つのコグニティブ端末100の間には、データリンク層において、無線モジュールを意識しない、唯一のリンクがリンク層P2で確立される。そのリンク層P2の一つのリンクにおいては、一つ若しくは複数の無線リンクを用いたリンクフレームの伝送が行われる。但し、リンク層P2においては、そのことを意識しない。つまり、リンクフレームの伝送に、どの無線リンクがいくつ使用されるのかを意識することはない。
なお、図2において、コグニティブ端末100において、OSはネットワーク層の処理を行う。そのネットワーク層の処理では、リンク層P2との間で、コグニティブ基地局10との間で送受信するIPパケットのやり取りを行う。このとき、コグニティブ基地局10との間にはリンク層P2の一リンクのみが確立されているとして、ネットワーク層の処理が行われる。
図3は、本実施形態に係る仮想MACアドレスと実MACアドレスを対応付けるアドレス対応テーブル30の構成例である。図3には、コグニティブ基地局10に具備される場合のものが示されている。図3において、アドレス対応テーブル30は、端末局毎に、仮想MACアドレスと実MACアドレスを対応付けている。図3の例では、端末Aの端末識別情報「端末_A」に関し、端末Aの仮想MACアドレス「仮想MAC_端末A」と、端末Aが有する各無線モジュールの実MACアドレス「実MAC_11g_端末A−1」,「実MAC_11g_端末A−2」,「実MAC_11j_端末A−1」,「実MAC_11j_端末A−2」,「実MAC_16e_端末A−1」との組が記録されている。「実MAC_11g_端末A−1」及び「実MAC_11g_端末A−2」は、IEEE802.11gの無線モジュールの実MACアドレスである。「実MAC_11j_端末A−1」及び「実MAC_11j_端末A−2」は、IEEE802.11jの無線モジュールの実MACアドレスである。「実MAC_16e_端末A−1」は、IEEE802.16eの無線モジュールの実MACアドレスである。
コグニティブ基地局10は、図3に示されるアドレス対応テーブル30から、端末Aの仮想MACアドレスと、端末Aが有する各無線モジュールの実MACアドレスとを取得することができる。アドレス対応テーブル30は、予めコグニティブ基地局10に設定される。若しくは、端末Aとの間で、ある無線モジュールを用いた無線リンクの確立後に、該無線リンクを用いて、仮想MACアドレスおよび実MACアドレスの情報を、直接的に又は関数等で間接的に交換し、アドレス対応テーブル30を作成するようにしてもよい。
図4は、本実施形態に係る通信データの構造を示すフレームフォーマット図である。データ部200は、ネットワーク層の通信データが格納されるものであり、本実施形態ではIPパケットが格納される。リンクフレーム210は、リンク層P2の通信データが格納されるものである。リンクフレーム210には、そのヘッダ部分にリンク層P2における送信元(自局)の仮想MACアドレスと宛先(相手局)の仮想MACアドレスを格納する。そして、リンクフレーム210のペイロード部分にデータ部200を格納する。また、リンク層P2間の制御情報または管理情報をリンクフレーム210のヘッダ部に格納するようにしてもよい。
無線フレーム220は、無線リンク層P1の通信データが格納されるものである。無線フレーム220は、従来、利用されているものである。無線フレーム220には、そのヘッダ部分に無線リンク層P1における送信元(自無線モジュール)の実MACアドレスと宛先(相手無線モジュール)の実MACアドレスを格納する。そして、無線フレーム220のペイロード部分にリンクフレーム210を格納する。
仮想MAC処理部12は、コアネットワークから受信されたIPパケットを送信バッファに格納する。そして、送信バッファからIPパケットを読み出し、該IPパケットを格納するリンクフレーム210を生成する。このとき、仮想MAC処理部12は、アドレス対応テーブル30から相手局の仮想MACアドレスを取得する。仮想MAC処理部12は、生成したリンクフレーム210をスイッチ13に出力する。
また、仮想MAC処理部12は、スイッチ13から受け取ったリンクフレーム210を受信バッファに格納する。そして、受信バッファ中のリンクフレーム210からIPパケットを取り出し、コア網側インタフェース11に出力する。このとき、データリンク層における伝送順序を保証するための処理を行う。つまり、リンク層P2の一つのリンクに対し、複数の無線リンクを使用してリンクフレームの伝送が行われる場合があるので、各無線リンクの伝送途上で、リンク層P2における伝送順序の逆転が生じる可能性がある。このため、その伝送順序の逆転を補正する処理を行う。例えば、リンクフレームのヘッダ中にシーケンス番号を設け、そのシーケンス番号に基づいて、受信バッファ中のリンクフレームを処理するようにすればよい。
本実施形態によれば、図2に示されるようにリンク層P2を設け、コグニティブ基地局10とコグニティブ端末100の間において、リンク層P2でのリンクフレームの伝送が行われる。そのリンクフレームの伝送では、無線リンク層P1において一つ若しくは複数の無線リンクが使用される。その使用される無線リンクの無線メディアは、無線環境に応じて、一つ若しくは複数が選択される。さらには、無線環境に応じて、使用される周波数チャネルが一つ若しくは複数が選択される。
ここで、無線リンク層P1での伝送は、無線リンク層P1内で閉じた処理で実現される。つまり、無線メディアの切り替えや周波数チャネルの切り替えは、無線リンク層P1に閉じた処理、具体的には、図1のスイッチ13と無線環境認識部15によって実現される。従って、仮想MAC処理部12等、リンク層P2以上の上位階層では、リンク層P2の唯一のリンクによってデータリンク層での伝送が行われると認識される。
上述したように本実施形態によれば、無線メディア間および周波数チャネル間の無線リンクの切り替えを無線リンク層P1で閉じた処理によってシームレスに行うことができる。また、無線リンク層P1およびリンク層P2から成るデータリンク層に閉じた処理で、複数の無線メディアをシームレスに統合することが可能になる。これにより、複数の無線メディアをシームレスに統合する際に、ネットワーク層に新たな処理を追加することは不要であり、ネットワーク層における処理負荷の増大を防止することができる。従って、基地局装置または端末装置上でネットワーク層の処理を行うOSに対する機能追加は必要ない。
さらに、無線メディア間の切り替えは、ネットワーク層の通信リンクに対して全く影響を及ぼさない。従って、無線メディア間の切り替え時にネットワーク層の通信IDが変更されることはない。これにより、ネットワーク層の通信IDの変更に伴うOSの処理負荷の増大の問題についても解消される。そして、OSに対する処理負荷の増大が防止されることで、アプリケーション動作の安定性向上に役立つ。
また、無線メディア間の切り替え時にネットワーク層の通信IDが変更されないので、「Mobile IP」等におけるIP上のモビリティの管理コストが低減可能になる。例えば「Mobile IP」においては、「Care of Address」と「Home Address」のバインディングが非常に重要な処理であるが、不安定な無線環境下で、複数の無線メディアを頻繁に切り替えながら使用する場合には、そのバインディングの処理負荷が大変に大きくなる。実際の無線環境はめまぐるしく変化するので、それに対して最適にしかも素早く追随しようとすると、通信のペイロードに費やされるコストに比べて、管理コストになるバインディングの方が負荷が大きいという逆転現象が生じる。しかしながら、本実施形態によれば、そのバインディングが不要となることから、そのような管理コストの問題は生じない。
なお、コグニティブ基地局10には、リンク層P2を有していない従来の無線端末も接続可能である。これは、無線リンク層P1の無線リンクが利用可能なことによる。リンク層P2を有していない従来の無線端末と接続する場合には、リンク層P2をスルーするように設定すればよい。このことは、コグニティブ端末100についても同様である。
また、コグニティブ基地局10とコグニティブ端末100がそれぞれ有する無線メディアの種類は、完全に一致している必要はない。
以上が本発明に係る無線基地局の基本構成の説明である。
次に、本発明に係る無線基地局の特徴的構成を説明する。
図5は、本実施形態に係るコグニティブ基地局10の特徴的構成を説明するための概略構成図である。図5において、コグニティブ基地局10は、コグニティブ基地局主装置10Aと無線モジュール14とに分けて設けられる。コグニティブ基地局主装置(以下、単に「主装置」と称する)10Aは、図1中のコア網側インタフェース11と仮想MAC処理部12とスイッチ13と無線環境認識部15を備える。主装置10Aと各無線モジュール14の間は、通信回線で接続する。各無線モジュール14は、通信回線を介して、図1中のスイッチ13および無線環境認識部15に接続する。
主装置10Aには、各種無線メディアの複数の無線モジュール14を通信回線を介して接続することができるが、最も広範なセルを形成する無線メディアの無線モジュール14については一つだけを主装置10Aに接続する。図5の例では、最も広範なセルを形成する無線メディアの無線モジュール14として、マクロセルを形成するマクロセル無線モジュール14aが用いられている。マクロセル無線モジュール14aは、携帯電話サービスを提供するセルラーシステムなどに利用される。図5において、一つの主装置10Aには、一つのマクロセル無線モジュール14aが通信回線により接続される。マクロセル−1を形成するマクロセル無線モジュール14a−1は、通信回線を介して、主装置10A−1に接続されている。また、マクロセル−2を形成するマクロセル無線モジュール14a−2は、通信回線を介して、主装置10A−2に接続されている。
また、図5の例では、マクロセルよりも小さなセルを形成する無線メディアの無線モジュール14として、ピコセルを形成するピコセル無線モジュール14bが設けられる。ピコセル無線モジュール14bは、自己が形成するピコセルがマクロセルに重複するように配置されている。そのマクロセルとの重複部分は、ピコセルの全てであってもよく、もしくはピコセルの一部であってもよい。ピコセル無線モジュール14bは通信ネットワーク40を介して主装置10Aに接続されるが、その接続先は切替えが可能であるように構成される。つまり、ピコセル無線モジュール14bは、特定の一主装置10Aに固定的に接続されるのではなく、複数の主装置10Aのうちのいずれか一つに選択的に接続される。図5の例では、複数のピコセル無線モジュール14bが設けられているが、各ピコセル無線モジュール14bは、主装置10A−1又は主装置10A−2のいずれか一方に選択的に接続される。
ピコセル無線モジュール14bの接続先には、複数のマクロセルのうち、最適なマクロセルを形成しているマクロセル無線モジュール14aの接続先の主装置10Aを選択するように構成する。例えば図5において、ピコセル圏内にある端末局が当該ピコセル無線モジュール14bを利用して無線通信しているときにピコセル圏外に移動すると、今度は在圏するマクロセルのマクロセル無線モジュール14aを利用して無線通信を継続することになる。このとき、移動前に利用していたピコセル無線モジュール14bと、移動後に利用するマクロセル無線モジュール14aとが同じ主装置10Aに接続されていれば、図2で説明されるリンク層P2内での切替えで済むので、ネットワーク層におけるハンドオーバは発生しない。しかし、移動前に利用していたピコセル無線モジュール14bと、移動後に利用するマクロセル無線モジュール14aとが異なる主装置10Aに接続されているならば、図2で説明されるリンク層P2内での切替えでは済まず、ネットワーク層におけるハンドオーバが発生してしまう。
このようなハンドオーバを防止するためには、ピコセル無線モジュール14bは、自ピコセルが重複するマクロセルを形成しているマクロセル無線モジュール14aの接続先である主装置10Aに接続されていればよい。但し、異なるマクロセルの境界付近に在るピコセル無線モジュール14bについては、自ピコセルが重複するマクロセルが複数あり得るので、接続すべき主装置10Aを一つに絞らなければならない。そこで、ピコセル無線モジュール14bの接続先となる主装置10Aを選択する際に、当該ピコセル無線モジュール14bが形成するピコセルにおいてマクロセルを検出し、その検出結果のマクロセルを形成しているマクロセル無線モジュール14aの接続先である主装置10Aを選択する。複数のマクロセルが検出された場合には、最良の無線環境を提供可能なものを選択する。例えば、受信強度が最大のマクロセルを検出するように構成する。また、無線環境は、様々な要因で変化し得るので、ピコセル無線モジュール14bの接続先は、適宜、再選択することが好ましい。
次に、図5に係るいくつかの実施例を挙げて、本発明に係る無線基地局の特徴的な構成を説明する。
図6は、図5に示すコグニティブ基地局10の実施例1を説明するための全体構成図である。図6では、複数のコグニティブ基地局10の主装置10Aが設けられており、各主装置10Aはバックボーン回線網(コアネットワーク)58に接続されている。バックボーン回線網58との接続はレイヤ3(L3)接続である。L3接続はIPを利用して行うことができる。
主装置10Aには、通信回線51を介して一つのマクロセル無線モジュール14aが接続されている。マクロセル無線モジュール14aはマクロセルを形成する。主装置10Aは、通信ネットワーク40を介して無線モジュール14を接続するための接続点を有する。この接続点は、レイヤ2(L2)接続するためのものであり、L2アドレスを有する。従って、主装置10Aの接続点アドレスが分かれば、通信ネットワーク40を介して、当該主装置10AにL2接続することができる。
通信ネットワーク40には、データベース57が接続されている。データベース57は、マクロセル無線モジュール14a毎に、その接続先である主装置10Aの接続点アドレスを格納する。図6に例示されるように、データベース57には、マクロセル無線モジュール14aが形成するマクロセルの識別子(マクロセルID)と接続点アドレスの組が記録されている。データベース57は、通信ネットワーク40を介したアクセスに応じて、マクロセルIDと接続点アドレスの検索を行い、その検索結果を通信ネットワーク40を介して返信する。
マクロセルIDは、マクロセル無線モジュール14a毎に付与された識別子である。マクロセル無線モジュール14aは、マクロセルIDを無線送信する。これにより、マクロセル圏内において、当該マクロセルのマクロセルIDを無線受信することができる。
マクロセル無線モジュール14aが形成するマクロセル圏内には、ユーザ宅52が在り、該ユーザ宅52内にはピコセルを形成するピコセル無線モジュールである無線LANモジュール14bが設置されている。また、ユーザ宅52内には、通信ネットワーク40に接続するための物理回線55を接続する回線接続装置53aが設けられている。物理回線55としては、例えば、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、光収容回線などが挙げられる。従って、回線接続装置53aとしては、例えば、ADSLモデム、光収容回線用のSTB(セットトップボックス)などが挙げられる。無線LANモジュール14bは回線接続装置53aに接続されている。
物理回線55は中継電話局56に接続されている。回線接続装置53aは、物理回線55および中継電話局56を介して通信ネットワーク40に接続することができる。通信ネットワーク40との接続はレイヤ2(L2)接続である。L2接続は、例えば、PPP(Point to Point Protocol)、L2TP(Layer-2 Tonneling Protocol)又はVLAN(Virtual LAN)参加等により行うことができる。
無線端末100aは、図2で説明されるコグニティブ端末であり、マクロセル無線モジュールおよび無線LANモジュールを有する。従って、図6に示されるように、無線端末100aは、マクロセル圏内においてマクロセル無線モジュール14aを利用した無線通信を行うことができると共に、ピコセル圏内において無線LANモジュール14bを利用した無線通信を行うことができる。また、無線端末100aは、マクロセルIDの検出機能を有する。
無線端末100aは、通信インタフェース54を介して回線接続装置53aに接続し、回線接続装置53aとの間でデータを送受することができる。通信インタフェース54は、有線又は無線のいずれであってもよい。
但し、通信インタフェース54は、回線接続装置53aから所定距離の範囲内で通信可能である。その通信可能範囲は、回線接続装置53aに接続される無線LANモジュール14bが形成するピコセル圏内に制限される。これは、無線端末100aで検出されるマクロセルIDを利用可能な回線接続装置53aを制限するためである。マクロセルIDの検出については後述する。
図7は、図6に示す無線端末100aの構成を示すブロック図である。図7において、無線端末100aは、マクロセル無線モジュール14a’および無線LANモジュール14b’、並びに各無線モジュール14a’,14b’と接続される通信処理部61を有する。通信処理部61は、コグニティブ無線端末としての通信制御処理などを行う。通信処理部61には、データを表示する表示部62、データ入力等の操作を行うための操作部63、音声通信等の音声入力用のマイク64および音声通信等の音声出力用のスピーカ65が接続される。
また、無線端末100aは、マクロセルID検出部71および出力部72を有する。マクロセルID検出部71は、マクロセル無線モジュール14a’の受信信号から、マクロセルIDを検出する。マクロセルIDは、マクロセルを形成するマクロセル無線モジュール14aによって無線送信されている。従って、自無線端末100aがマクロセル圏内にあれば、その在圏するマクロセルを形成しているマクロセル無線モジュール14aからの無線信号を受信することができ、該受信信号からマクロセルIDを検出することができる。
なお、マクロセル無線モジュール14a’によって、複数のマクロセル無線モジュール14aからの無線信号が受信されて複数のマクロセルIDが検出された場合には、最大の受信強度が得られるマクロセル無線モジュール14aのマクロセルIDを選択する。又は、所定のセル選択アルゴリズムに従ってマクロセルIDを選択するようにしてもよい。一般に携帯電話機はローミングを行うために自身の位置でのセル選択アルゴリズムを有しており、そのセル選択アルゴリズムを利用することができる。
出力部72は、マクロセルID検出部71により検出されたマクロセルIDを、通信インタフェース54を介して回線接続装置53aに出力する。
図7において、マクロセル無線モジュール14a’とマクロセルID検出部71と出力部72は、マクロセル無線検出装置70aを構成する。
図8は、図6に示す回線接続装置53aの構成を示すブロック図である。図8において、回線接続装置53aは、無線LANモジュール接続部81とL2接続処理部82と物理回線接続部83と入力部84とコグニティブ基地局主装置接続処理部85を有する。
無線LANモジュール接続部81は、無線LANモジュール14bとの接続を行い、無線LANモジュール接続部81との間でデータを送受する。L2接続処理部82は、通信ネットワーク40を介したL2接続を行い、L2接続によるデータの送受を行う。物理回線接続部83は、物理回線55を接続し、物理回線55による信号の送受を行う。
入力部84は、通信インタフェース54を介して、無線端末100aからマクロセルIDを入力する。その入力されたマクロセルIDは、コグニティブ基地局主装置接続処理部85に出力される。
コグニティブ基地局主装置接続処理部85は、入力されたマクロセルIDに基づいて、主装置10Aの接続点アドレスの検索を行う。コグニティブ基地局主装置接続処理部85は、L2接続処理部82によりデータベース57に接続し、入力されたマクロセルIDに対応する接続点アドレスを検索するように要求し、その応答としてデータベース57から検索結果の接続点アドレスを受け取る。
コグニティブ基地局主装置接続処理部85は、その取得した接続点アドレスをL2接続処理部82に出力する。L2接続処理部82は、その接続点アドレスにL2接続する。これにより、該接続点アドレスを有する主装置10Aとの間でL2接続が確立する。
L2接続処理部82は、そのL2接続した主装置10Aと無線LANモジュール14bとを接続する処理を行う。これにより、無線LANモジュール14bは、主装置10Aに接続される。その接続先の主装置10Aは、当該無線LANモジュール14bが形成するピコセルにおいて検出されたマクロセルIDに対応するマクロセル無線モジュール14aが接続されている主装置である。
なお、コグニティブ基地局主装置接続処理部85は、データベース57から、マクロセルIDと接続点アドレスの組から構成される対照表をダウンロードし、該対照表を保持するようにしてもよい。これにより、データベース57へのアクセス回数を減らすことができる。
次に、図9を参照して、実施例1に係るコグニティブ基地局構成手順を説明する。図9は、実施例1に係るマクロセル無線測定処理の流れを示すフローチャートである。図9において、ステップS1では、回線接続装置53aに物理回線55としてのADSL、光ファイバアクセス回線(光収容回線)などを接続する。ステップS2では、回線接続装置53aの無線装置用インタフェース(通信インタフェース54)にマクロセル無線検出装置70a(無線端末100a)を接続する。
ステップS3では、マクロセル無線検出装置70aにより、マクロセルの電波を受信し、マクロセルIDの検出を開始する。ステップS4では、検出されたマクロセルIDが複数ある場合に、最良のマクロセルIDを判定する。ステップS5では、既に主装置10Aに接続済みの場合において、今回検出されたマクロセルIDが現在接続中の主装置10Aに係るマクロセルIDと同じであるか判断する。この判断の結果、同じマクロセルIDならばステップS12に進み、一方、異なるマクロセルIDならばステップS6に進む。
ステップS6では、マクロセルIDと接続点アドレスの組から構成される対照表が回線接続装置53aに内蔵されているかを判断する。この判断の結果、対照表が回線接続装置53aに内蔵されている場合には、ステップS7で、該対照表を参照し、今回検出されたマクロセルIDに対応する接続点アドレスを検索し取得する。一方、対照表が回線接続装置53aに内蔵されていない場合には、ステップS8でデータベース57にアクセスし、ステップS9で、今回検出されたマクロセルIDに対応する接続点アドレスを検索し取得する。
ステップS10では、ステップS7又はS9で取得された接続点アドレスの採用を決定する。ステップS11では、その接続点アドレスを用いて主装置10Aに接続し、コグニティブ基地局としての動作を開始する。
ステップS12では、本マクロセル無線測定処理を終了する。ステップS13では、無線環境が変わる目安の所定時間が経過するまで待機する。該所定時間が経過したならば、ステップS2に移行し、再び、マクロセル無線測定処理を行う。
上述した実施例1によれば、無線LANモジュール14bは、自ピコセルに在圏中の無線端末100aで検出されたマクロセルIDに対応するマクロセル無線モジュール14aが接続されている主装置10Aに接続される。これにより、無線端末100aの移動等によりピコセルからマクロセルへと無線通信に利用するセルの移行が生じたとしても、移行前後のセルを形成する各無線モジュール14b,14aは共に同じ主装置10Aに接続されているので、図2で説明されるリンク層P2内での切替えで済み、ネットワーク層におけるハンドオーバを回避することができる。これにより、ハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することが可能になる。
図10は、図5に示すコグニティブ基地局10の実施例2を説明するための全体構成図である。この図10において図6の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。実施例2では、図10に示されるように、図7に示したマクロセル無線検出装置70aを独立した一つの装置として設ける。マクロセル無線検出装置70aは、固定的に回線接続装置53aに接続する。これにより、実施例2では、実施例1と同様にハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することができるが、さらには、無線端末の有無によらず、いつでもマクロセル無線測定処理を行うことができる。これにより、例えば定期的にマクロセル無線測定処理を実行することで、無線環境の変化に対して迅速にコグニティブ基地局の最適化を図ることが可能になる。
図11は、図5に示すコグニティブ基地局10の実施例3を説明するための全体構成図である。この図11において図6の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。実施例3では、図11に示されるように、マクロセル無線モジュール14aがビーコンにより、自己が接続している主装置10Aの接続点アドレスを無線送信する。無線端末100bは、ビーコンを受信し、受信したビーコンから接続点アドレスを検出する。回線接続装置53bは、無線端末100bにより検出された接続点アドレスを用いて、主装置10Aへの接続を行う。
図12は、図11に示す無線端末100bの構成を示すブロック図である。図12において、図7の無線端末100aと異なる点はマクロセルID検出部71の代わりに接続点アドレス検出部73を設けた点のみである。接続点アドレス検出部73は、マクロセル無線モジュール14a’で受診されたビーコンから、接続点アドレスを検出する。出力部72は、マクロセルID検出部71により検出された接続点アドレスを、通信インタフェース54を介して回線接続装置53bに出力する。従って、マクロセル無線検出装置70bは、接続点アドレスを検出するものとなる。
図13は、図11に示す回線接続装置53bの構成を示すブロック図である。図13において、図8の回線接続装置53aと異なる点はコグニティブ基地局主装置接続処理部85を具備していない点のみである。図13の回線接続装置53bにおいて、入力部84は、通信インタフェース54を介して、無線端末100bから接続点アドレスを入力する。その入力された接続点アドレスは、L2接続処理部82に出力される。L2接続処理部82は、入力部84から受け取った接続点アドレスにL2接続する。これにより、該接続点アドレスを有する主装置10Aとの間でL2接続が確立する。
上述の実施例3では、実施例1と同様にハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することができるが、さらには、データベース57が不要となるとともに、データベース57へのアクセスに要した通信負荷がなくなる。
図14は、図5に示すコグニティブ基地局10の実施例4を説明するための全体構成図である。この図14において図6の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。実施例4では、図14に示されるように、中央制御装置91を設ける。中央制御装置91はルータ92を介して通信ネットワーク40に接続される。また、中央制御装置91はデータベース57に接続している。回線接続装置53cは、中央制御装置91に常時、L2接続する。
図15は、図14に示す回線接続装置53cの構成を示すブロック図である。図15において、図8の回線接続装置53aと異なる点はコグニティブ基地局主装置接続処理部85の代わりにコグニティブ基地局主装置接続要求部86を設けた点のみである。
図15の回線接続装置53cにおいて、L2接続処理部82は、常時、中央制御装置91にL2接続する。コグニティブ基地局主装置接続要求部86は、その常時接続された中央制御装置91に対して、入力部84から受け取ったマクロセルIDを送信し、マクロセルIDに対応する接続点アドレスへの接続を要求する。
中央制御装置91は、その要求に応じて、受信したマクロセルIDに対応する接続点アドレスをデータベース57から取得する。そして、中央制御装置91は、取得した接続点アドレスへのL2接続を行い、その接続点アドレスへのL2接続のリンクと、回線接続装置53cからのL2接続のリンクとを接続する。これにより、回線接続装置53cと、接続点アドレスを有する主装置10AとがL2接続される。L2接続処理部82は、そのL2接続により主装置10Aと無線LANモジュール14bとを接続する処理を行う。これにより、無線LANモジュール14bは、主装置10Aに接続される。
なお、回線接続装置53c側のL2接続のリンクと、主装置10A側のL2接続のリンクとの接続には、L3接続を用いてもよい。
上述の実施例4では、実施例1と同様にハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することができるが、さらには、回線接続装置から主装置へ直接的にL2接続を行う処理が不要となると共に、データベース57へのアクセスに要した通信負荷がなくなる。
また、中央制御装置91が定期的にマクロセル検出の実施を遠隔操作するようにしてもよい。
なお、上述の実施例において、最も広範な通信エリアを提供するマクロセルを形成するマクロセル無線モジュール14aについては、特定の一主装置10Aに固定的に接続されるので、主装置10Aに具備するようにしてもよい。
また、上述の実施例では、最も広範な通信エリアを提供するセルとしてマクロセルを例に挙げたが、マクロセルよりも小さな通信エリアを提供する無線メディアのセルを最も広範な通信エリアを提供するセルとしてもよい。
また、無線モジュールと主装置間の接続に利用する通信回線は、有線又は無線のいずれであってもよい。
また、無線端末と回線接続装置を接続する通信インタフェース54として、例えば、無線端末の充電端子を利用して通信ケーブルを接続するようにしてもよい。さらには、クレードル型充電器を利用し、無線端末をクレードル型充電器にセットした時に、無線端末と回線接続装置53aとが通信接続されるようにしてもよい。この場合、無線端末がクレードル型充電器にセットされる度に、マクロセルの再検出を実施することができる。
上述したように本実施形態によれば、複数種類の無線メディアを用いて様々な大きさのセルが重複するように形成されている場合に、各無線メディアをシームレスに統合することができる。さらに、ハンドオーバによる処理負荷の増大を防止することができる。
また、本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
(1)コグニティブ基地局において最も広範な基準セル(例えばマクロセル)よりも小さな小セル(例えばピコセル)を形成する無線モジュールが接続されるべき主装置をその時点のその位置での無線環境に応じて適切に判定し、無線モジュールを最適の主装置に自動的に接続することが可能になる。
(2)ADSLモデムや光収容回線用STBなどの回線接続装置に接続される宅内用無線LANモジュール等、各地に点在する無線モジュールを利用することができるので、コグニティブ基地局の構成の自由度が格段に向上する。
(3)複数の基準セルの境界付近にある小セルをどの基準セルのコグニティブ基地局配下にするべきかをシミュレーション等によって事前に判定することは難しいが、本実施形態によれば、実際の無線環境に応じて適切に判定することができる。従って、シミュレーション等による事前のセル配置設計作業が大幅に簡略化される。
(4)小セルの無線モジュールについては自由に設置および撤去を行うことができると共に、その無線モジュール構成の変化に応じてコグニティブ基地局を自動的に再構築させることができる。これにより、例えば、催し物会場や災害場所等での無線通信用として臨時に設置されるピコセル無線モジュールを自由に設置および撤去しながら、コグニティブ基地局を自動的に構築することができ、非常に効率がよい。
(5)コグニティブ基地局の運用中においても、無線環境に応じて小セルの収容先のコグニティブ基地局を変更することができる。
(6)広域のサービスエリアを提供するコグニティブ基地局を実現すると共に適切なセル構成を実現することができ、周波数利用効率の向上、ハンドオーバ発生頻度の縮小、円滑なセル間移動の実現、通信品質の向上など、格別な効果が得られる。
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
本発明の一実施形態に係るコグニティブ基地局10の基本構成を示すブロック図である。
本発明に係る通信プロトコル上の階層構造を説明するための説明図である。
本発明に係るアドレス対応テーブル30の構成例を示す図である。
本発明に係る通信データの構造を示すフレームフォーマット図である。
本発明の一実施形態に係るコグニティブ基地局10の特徴的構成を説明するための概略構成図である。
図5に示すコグニティブ基地局10の実施例1を説明するための全体構成図である。
図6に示す無線端末100aの構成を示すブロック図である。
図6に示す回線接続装置53aの構成を示すブロック図である。
本発明に係るマクロセル無線測定処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すコグニティブ基地局10の実施例2を説明するための全体構成図である。
図5に示すコグニティブ基地局10の実施例3を説明するための全体構成図である。
図11に示す無線端末100bの構成を示すブロック図である。
図11に示す回線接続装置53bの構成を示すブロック図である。
図5に示すコグニティブ基地局10の実施例4を説明するための全体構成図である。
図14に示す回線接続装置53cの構成を示すブロック図である。
符号の説明
10…コグニティブ基地局(無線基地局)、10A…コグニティブ基地局主装置、11…コア網側インタフェース、12…仮想MAC処理部、13…スイッチ、14…無線モジュール、14a…マクロセル無線モジュール、14b…無線LANモジュール(ピコセル無線モジュール)、15…無線環境認識部、30…アドレス対応テーブル、40…通信ネットワーク、53a,53b,53c…回線接続装置、51…通信回線、54…通信インタフェース、55…物理回線、57…データベース、61…通信処理部、70a,70b…マクロセル無線検出装置、71…マクロセルID検出部、72…出力部、73…接続点アドレス検出部、82…L2接続処理部、84…入力部、85…コグニティブ基地局主装置接続処理部、86…コグニティブ基地局主装置接続要求部、91…中央制御装置、100,100a,100b…コグニティブ端末(無線端末)、210…リンクフレーム、220…無線フレーム、P1…無線リンク層、P2…リンク層