JP4840375B2 - 液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子および信号検出方法 - Google Patents

液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子および信号検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子および信号検出方法に関する。
光や電気信号を検出するセンサは、あらゆる分野の産業機器に広く利用されている。従来から一般的に利用されているこれらのセンサは、1画素を構成する検出素子をマトリックス状に多数配列し、個々の検出素子ごとに入力した光や電気刺激を電気信号に変換する機能を有する。検出素子を一次元に配列すればラインセンサが形成され、二次元に配列すれば二次元の信号センサが形成されることになる。現在、商業的に利用されている光センサのほとんどは、半導体基板上に光伝導性を有する固体素子を配置したものであり、特に、CCDをはじめとする固体撮像素子の需要は益々増大する傾向にある。
一方、最近になって、液晶のもつ光伝導性が注目を集めている。液晶は、その光学的な異方性というあまりにも顕著な性質により、専らディスプレイの分野で利用される材料との認識が長い間なされてきたが、1993年に、トリフェニレン系ディスコティック液晶において、10−3cm/Vsにも達する高い電子移動度が報告されて以来、あらためて液晶のもつ光伝導性の応用技術が議論されるようになってきた。たとえば、日本液晶学会刊行の論文誌「液晶」第1巻第1号(1997)第33頁には、「光伝導性液晶材料〜新しい有機電子材料の可能性〜」と題して、液晶の光伝導性に着目した応用技術が述べられている。また、下記の特許文献1には、液晶性電荷輸送材料を用いた表示素子、EL素子、光変調素子などが開示されている。
特開平10−312711号公報
上述したように、現在利用されているセンサのほとんどは、検出素子をマトリックス状に配置したものであり、配置する検出素子の密度を高めれば高めるほど、解像度の高い検出結果を得ることができる。現在では、半導体集積回路における集積技術を利用して、かなり高解像度のセンサを量産することができるようになってきている。しかしながら、このような固体素子を用いたセンサは、同一仕様の製品を量産するには適しているが、多品種小ロットのセンサを生産する場合には、膨大なコストがかかることになる。また、半導体基板上に固体素子を配置する構造を採るため、ある程度画一的な形態にならざるを得ず、任意の形態をもったセンサを実現することが困難である。
そこで本発明は、小ロット生産を行う場合であってもコストを低く抑えることができ、しかも形態の自由度が高いセンサを実現することが可能な信号検出素子および信号検出方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、信号検出素子において、
第1の基板と、これに対向するように配置された第2の基板と、両基板間に充填されたスメクチック相の液晶性電荷輸送材料と、第1の基板上に形成された複数K個の局在電極と、第2の基板上のほぼ全面に形成された共通電極と、K個の局在電極にそれぞれ接続されたK個の入力端子と、これらK個の入力端子に与えられたパルス状の電圧信号に基づいて共通電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、この電流測定手段によって測定された電流のピーク持続時間を認識するピーク持続時間認識手段と、を設け、第1の基板のK個の局在電極が形成された個々の部分ごとに、それぞれ第2の基板に対する距離が異なるように構成し、ピーク持続時間認識手段は、パルス状の電圧信号が与えられた時点から、共通電極に流れるほぼ一定のピーク値をもった電流の値が急峻な立ち下がりを示すショルダーに至るまでの時間をピーク持続時間として認識し、認識したピーク持続時間に基づいて、K個の入力端子のうちのいずれの入力端子に電圧信号が与えられたかを認識することができるようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る信号検出素子において、
第1の基板および第2の基板の少なくとも一方に、複数の段差構造を有する基板を用いるようにし、この段差構造の段差に基づいて、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1の態様に係る信号検出素子において、
第1の基板および第2の基板の少なくとも一方に、表面が曲面をなす基板を用いるようにし、この基板の曲面構造に基づいて、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1の態様に係る信号検出素子において、
第1の基板および第2の基板をくさび型に配置することにより、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る信号検出素子において、
ピーク持続時間認識手段が、複数の入力端子に電圧信号が与えられた場合に、複数通りのピーク持続時間を認識することにより、電圧信号が与えられた複数の入力端子を認識するようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る信号検出素子において、
L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L,M,Nはそれぞれ0〜4の整数を表し、L+M+N=1〜4とする)を含むコアを有し、スメクチック液晶相を呈する液晶を、液晶性電荷輸送材料として用いるようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、信号検出方法において、
第1の基板と第2の基板との間に液晶性電荷輸送材料を充填し、第1の基板上に複数K個の局在電極を配置し、第2の基板上のほぼ全面に共通電極を配置し、第1の基板のK個の局在電極が形成された個々の部分ごとに、それぞれ第2の基板に対する距離が異なるように構成し、K個の局在電極のいずれかにパルス状の電圧信号が与えられたときに共通電極を流れる電流を測定し、パルス状の電圧信号が与えられた時点から、共通電極に流れるほぼ一定のピーク値をもった電流の値が急峻な立ち下がりを示すショルダーに至るまでの時間をピーク持続時間として認識し、認識したピーク持続時間に基づいて、K個の局在電極のうちのいずれに電圧信号が与えられたかを検出するようにしたものである。
本発明に係る液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子および信号検出方法によれば、小ロット生産を行う場合であってもコストを低く抑えることができ、しかも形態の自由度が高いセンサを実現することが可能な信号検出素子を提供することができる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<<§1.液晶性電荷輸送材料を用いた素子における基本的現象>>>
ここでは、本発明に係る信号検出素子の動作原理を説明する前に、図1(側断面図および回路図)に示すような液晶性電荷輸送材料を用いた素子における基本現象を述べておく。この素子は、透明な一対の電極板間に液晶性電荷輸送材料(光伝導性を有する液晶材料、以下、単に液晶材料という)を充填することにより構成される。具体的には、ITOなどの透明な導電性材料層を有する第1の電極板10および第2の電極板20を、所定間隔d(以下、セル間隔という)をおいて対向させ、両電極板間に液晶材料30を充填することにより、この素子が構成されている。なお、実際には、両電極板間から材料30が漏れ出さないように、図示されている構成要素の他にも何らかのシーリング要素が必要になるが、ここでは、そのようなシーリング要素についての説明は省略する。
両電極板10,20の間には、電圧印加手段40によって所定の電圧Eが印加されており、液晶材料30内には、この印加電圧Eに基づく電界が生成されることになる。また、この電圧Eを印加するための導電路上には、電流測定手段50が設けられており、この導電路上を流れる電流値を測定することができる。
いま、図示のように、第1の電極板10の所定位置に対して、何らかの刺激光hν(この例では、窒素レーザ光)を照射したとする。第1の電極板10はITO層を有する透明電極であるから、この刺激光hνは液晶材料30にまで到達する。ここで、液晶材料30が、光伝導性を有する液晶性電荷輸送材料であったとすると、刺激光hνの照射により発生したキャリア(電子またはホール)が、印加電圧Eに基づいて移動し、電流測定手段50によって光電流が測定されることになる。たとえば、刺激光hνの照射によって第1の電極板10側に発生した電子は、液晶材料30内を通って第2の電極板20側へと移動することになる。このようなキャリアの移動現象は、光電流として電流測定手段50によって測定されることになる。
ここでは、図2に示すような化学式で示される「8PNPO12」なる液晶材料(正式名:2-(4'-Octylphenyl)-6-dodecyloxynaphthalene)を液晶材料30として用いており、かつ、温度を80〜120度Cとし、この液晶材料がスメクチック相を維持するような条件で用いるようにしている。一般に、液晶はスメクチック相において高い電荷輸送特性(電荷移動度)を示すことが知られており、また、スメクチック相では、イオン伝導に比べて電子伝導が支配的になり、移動度が温度によらず一定となるメリットが得られる。このため、本発明では、できるだけ高いキャリア移動度を有する液晶材料をスメクチック相で用いるのが好ましい。ここでは、「8PNPO12」なる液晶材料を用いているが、一般に、L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L,M,Nはそれぞれ0〜4の整数を表し、L+M+N=1〜4とする)を含むコアを有する液晶材料は比較的高い移動度を示す。したがって、本発明を実施する上では、このような液晶材料をスメクチック相で用いるのが好ましい。
なお、上述した液晶材料の多くは、紫外域に吸収スペクトルを有しているため、刺激光hνとしては紫外光(たとえば、窒素レーザ光)を用いるのが好ましいが、可視光を刺激光として用いる必要がある場合には、可視波長領域に吸収スペクトルを有する色素を増感材として添加するとよい。
ところで、刺激光hνとして、パルス状の刺激光を用いた場合、電流測定手段50によって測定される光電流の波形は、図3のグラフに示すような形態をとる。このグラフの時間軸の原点0は、刺激光hνの照射時点を示しており、刺激光hνの照射直後から時間tpに至るまでのしばらくの期間にわたって、ほぼ一定のピーク値Pをもった光電流が継続して観測され、やがて時間tpが経過すると、ショルダーSを経て光電流は急激に減衰する現象がみられる。このような現象は、パルス状の刺激光hνの照射によって発生したキャリアがセル間隔dの距離を所定の移動度で移動するために生じるものと考えられる。光伝導性を有する液晶材料中におけるキャリア移動のメカニズムについては、現在のところ十分な解析はなされていないが、いわゆるバンド理論に基づく半導体バルク中でのキャリア移動メカニズムではなく、個々の分子をホッピングサイトとするホッピング伝導モデルによる移動メカニズムに近いものではないか、と本願発明者は考えている。
このような観点から図3のグラフに示された現象を説明すると、時間tpは、第1の電極板10側で発生したキャリアが、セル間隔dをもった液晶材料30中の分子間をホッピング伝導し、第2の電極板20側に到達するまでの時間とみることができ、この時間tp中は光電流のピーク値Pが維持されることになる。以下、この時間tpをピーク持続時間と呼ぶことにする。なお、ピーク持続時間tpの経過後もある程度の光電流が観測される理由は、刺激光hνが有限のパルス幅を有しており、また、移動中のキャリアが空間的にある程度分散する性質を有しているためと考えられる。
いずれにせよ、電流測定手段50によって光電流を測定すると、図3のグラフに示すような特性をもった波形が得られることになり、この波形からショルダーS(光電流値が急激な減少を示すポイント)を認識すれば、ピーク持続時間tpを決定することができる。具体的には、たとえば、ピーク値Pの値が95%にまで減衰したポイントをショルダーSと認識し、刺激光hνの照射時点からショルダーSに至るまでの時間をピーク持続時間tpと決定すればよい。こうして決定されたピーク持続時間tpは、キャリアがセル間隔dを移動するのに要した時間ということができる。なお、図3に示すグラフでは、時間0〜tpの間、同一のピーク値Pが維持される例が示されているが、厳密に言えば、光電流値は時間0におけるピーク値Pから徐々に減少する。したがって、時間0〜tpの間のグラフは、厳密に言えば、水平にはならず、なだらかな右下がりのグラフになる。ただ、時間tpを越えると光電流値は急俊な立ち下がりを示すので、ショルダーSは明確に認識することができ、時間tpを決定することが可能である。このように、本願における「ピーク持続時間」という文言は、「光電流値が急俊な立ち下がりを示すまでの時間」という意味で用いており、「光電流が最大値Pをそのまま維持する時間」という厳密な意味で用いているわけではない。なお、以下の説明で用いる各グラフにおいても、説明の便宜上、図3に示すグラフと同様に、ショルダーSに至るまでの部分を水平なグラフで示すことにするが、実際には、いずれもやや右下がりのグラフになる。
本願発明者は、図1に示すような素子を、セル間隔dを変えることにより3通り用意し、それぞれに対して同一の刺激光hνを照射した場合の光電流波形を測定する実験を行ってみた。図4は、このような実験結果を示すグラフであり、横軸は対数尺度の時間軸、縦軸は対数尺度の光電流値を示す軸となっている。電圧印加手段40としては、印加電圧E=10Vを供給する直流電源を用いており、刺激光hνとしては、半値幅100ps程度の窒素レーザによるパルス光(光強度30μJ/pulse)を用いている。この図4において、d=9μm,d=15μm,d=25μmと付記されたグラフは、それぞれセル間隔dが、d=9μm,d=15μm,d=25μmの素子について得られた結果を示している。すなわち、セル間隔d=9μmの素子の場合、ピーク値P1をもった光電流がショルダーS1に至るまで流れ続け、光電流はその後に急激に減衰し、セル間隔d=15μmの素子の場合、ピーク値P2をもった光電流がショルダーS2に至るまで流れ続け、光電流はその後に急激に減衰し、セル間隔d=25μmの素子の場合、ピーク値P3をもった光電流がショルダーS3に至るまで流れ続け、光電流はその後に急激に減衰する。ここで、各ショルダーに至るまでのピーク持続時間tpに着目すると、セル間隔dが大きくなるほど長くなっていることがわかる。
図5は、上述した3通りの素子について、それぞれ刺激光hνとして照射するレーザ光強度を変化させた場合の光電流ピーク値を示すグラフである。いずれの場合も、刺激光hνの強度が大きくなればなるほど、観測される光電流のピーク値も大きくなる。これは、強い刺激光hνを照射すれば、生成されるキャリアの数も多くなることから、むしろ当然の結果である。ただ、ここで留意すべき点は、刺激光hνの強度を変えた場合、光電流のピーク値自身は変化するが、ショルダーの位置、すなわち、ピーク持続時間tpには変化はみられないという結果が得られた点である。これは、刺激光hνの強度を変えても、キャリアの移動度には影響がないことを示している。もっとも、実際には、刺激光hνの強度があるしきい値を越えると、ショルダーの位置、すなわち、ピーク持続時間tpに変化が生じた。これは、発生するキャリアの数がある程度以上になると、キャリア移動が空間電荷の制限を受けるようになるためと考えられる。
図6は、スメクチックA相(SmA)を呈する液晶材料と、スメクチックB相(SmB)を呈する液晶材料とを用い、セル間隔dを変えた場合のキャリア移動度の変化を調べる実験を行った結果を示すグラフである。図示のとおり、いずれの液晶相においても、セル間隔dを変えても移動度には変化は生じていない。
そもそも移動度μは、キャリアの移動速度をv、電界強度をUとした場合に、v=μ・Uとして定義されるパラメータである。そして、電荷輸送材料として機能する液晶中での移動度μは、所定のしきい値以内のキャリア密度(別言すれば、キャリアが空間電荷の制限を受けない状態で移動しうる密度)では一定となることがわかった。特に、スメクチック相では、この移動度μの温度依存性も極めて小さい。したがって、キャリアの移動速度vは、ほぼ電界強度Uに比例すると考えてよい。いま、図1に示すように、両電極板10,20の間に所定の電圧Eを印加したとすると、液晶材料中の電界強度Uは、セル間隔dに反比例することになる。すなわち、電極板間に印加する電圧Eが一定である以上、セル間隔dが大きくなればなるほど、電界強度Uは小さくなる。したがって、キャリアの移動速度vは、セル間隔dに反比例することになり、セル間隔dが大きくなればなるほど、キャリアは遅く移動し、ピーク持続時間tpも長くなる。実際には、ピーク持続時間tpは、ほぼセル間隔dの2乗に比例した値となる。これは、「セル間隔dが大きくなればなるほど、キャリアの移動速度vが小さくなる」というファクターと、「セル間隔dが大きくなればなるほど、キャリアの全移動行程が大きくなる」というファクターとの相乗効果により、キャリアがセル間を移動するのに必要な時間が長くかかるようになるためである。
<<<§2.本発明に関連する光刺激検出素子の基本原理>>>
さて、§1では、図1に示すような素子について、パルス状の刺激光hνを照射した場合に観測される光電流波形の特性について述べた。実は、この図1に示す素子は、この光電流波形の特性を説明するために用いた素子であって、本発明に係る信号検出素子そのものではない。本発明に係る信号検出素子は、この図1に示す素子における第1の電極板10もしくは第2の電極板20の形態を若干変更することにより実現することができる。
図7は、本発明に関連した光刺激検出素子の基本構成を示す図であり、上半分には主たる構成要素の側断面図が示されており、下半分には主たる構成要素の回路図が示されている。ここで、第1の電極板11および第2の電極板21が互いに対向するように配置され、両電極板間に液晶性の電荷輸送材料30(たとえば、前掲の「8PNPO12」なる液晶材料のスメクチック相)が充填されている点は、図1に示す素子と同様であり、各電極板11,21がITOなどの透明電極から構成されている点も、図1に示す素子と同様である。更に、両電極板11,21間に所定の電圧Eを印加する電圧印加手段40と、第1の電極板11の所定部分にパルス状の刺激光が照射されたときに生じる光電流を測定する電流測定手段50、が設けられている点も、図1に示す素子と同様である。
しかしながら、図1に示す素子における両電極板10,20が平行平板であったのに対し、図7に示す素子における両電極板11,21は、いずれも複数の段差構造を有する階段状の電極板となっている。このような段差構造の段差に基づいて、第1の電極板11および第2の電極板21は、それぞれが5つの部分に分けられており、対向する各部分ごとに、両電極板11,21間の距離、すなわちセル間隔dは異なっている。電圧印加手段40によって加えられた電界は、図の横方向を向いているため、刺激光hνの照射によって生じたキャリアもほぼ横方向に移動することになる。このため、もし図示の刺激光hν1が照射された場合は、キャリアの全移動行程は短いのに対し、もし図示の刺激光hν5が照射された場合は、キャリアの全移動行程は長くなる。このように、第1の電極板11上への刺激光hνの照射位置によって、キャリアの全移動行程の長さに変化が生じるような構造を採っている点が、本発明に関連した光刺激検出素子の大きな特徴である。
図8は、図7に示す光刺激検出素子に対して、パルス状の刺激光hν1〜hν5のうちのいずれかが照射された場合に、電流測定手段50によって測定される光電流波形を示すグラフであり、グラフG1〜G5は、それぞれパルス状の刺激光hν1〜hν5が照射された場合に得られる光電流波形を示している。たとえば、グラフG1は、刺激光hν1が、図7に示すように、第1の電極板11の最下段位置に照射された場合に、電流測定手段50によって測定される光電流の波形を示しており、ショルダーS1に至るまではピーク値P1が維持され、以後、急速に減衰する特性が示されている。また、グラフG2は、刺激光hν2が第1の電極板11の下から2段目位置に照射された場合の波形を示しており、ショルダーS2に至るまではピーク値P2が維持され、以後、急速に減衰する。以下、グラフG3〜G5についても同様である。
結局、刺激光hν1〜hν5が照射された場合のピーク持続時間は、それぞれ図8の時間軸上に示された時間t1〜t5となる。このように、刺激光の照射位置が上へゆくほど、ピーク持続時間が伸びるのは、照射位置が上になるほど、両電極板11,21間の間隔(セル間隔)が長くなるためである(§1で述べた現象)。このような現象が生じることを逆に利用すれば、光電流のピーク持続時間を認識することにより、照射位置を検出することができるようになる。たとえば、電流測定手段50による測定の結果、図8に示すグラフG4が得られ、ピーク持続時間がt4であると認識された場合、図7に示す刺激光hν4が照射されたものと判断することができ、照射位置は上から2段目であることが検出できる。図7において、電流測定手段50に接続されたピーク持続時間認識手段55は、得られた光信号波形を解析し、ピーク持続時間を認識する処理を行う機能を有する。具体的には、たとえば、光電流のピーク値が95%にまで減衰したポイントをショルダーと認定し、光電流の立上がり時点(刺激光の照射時点に相当)からショルダーまでの時間をピーク持続時間と認識するような処理を行えばよい。
なお、図8に示す5つのグラフG1〜G5は、刺激光hν1〜hν5のうちのいずれか1つが照射された場合に得られる5通りのグラフであるが、実際には、複数の位置に刺激光が照射された場合でも、個々の照射位置を検出することは可能である。たとえば、図7において、2つの刺激光hν2,hν5が同時に照射された場合、電流測定手段50で測定される光電流波形は、図8に示すグラフG2,G5を重畳した波形となり、図9に示すグラフG25のようになる。このグラフG25を解析すれば、2か所にショルダーが存在することが認識できる(ショルダーS2,S5)。これら各ショルダーの位置に基づいて、2通りのピーク持続時間t2,t5を認識することができるので、2つの刺激光hν2,hν5が同時に照射されたと判断することができ、照射位置が、下から2段目と最上段とであることが認識できる。3つ以上の刺激光が同時に照射された場合も同様の手法により、個々の刺激光の照射位置を特定することが可能である。
既に§1で述べたように、照射された刺激光の強度は、測定される光電流の大きさに影響を与えるが、ショルダーの位置(ピーク持続時間)には影響は及ばない。厳密に言えば、キャリアの移動が空間電荷の制限を受ける程度にまでキャリア密度が高まると、ピーク持続時間にも影響が出ることになるが、刺激光の強度を所定のしきい値以下に保つようにして利用する限りは、影響はなしと考えてよい。このため、たとえ種々の強度の刺激光が照射される場合であっても、正しい位置検出が可能である。なお、種々の強度をもった複数の刺激光が同時に照射された場合、電流測定手段50で得られた光電流波形から、複数のピーク持続時間を認識するための信号処理が若干複雑にならざるを得ないが、理論的には、個々のショルダーを認定し、個々のピーク持続時間を認識する処理は可能である。
ところで、図7には、複数の段差構造を有する階段状の電極板11,21を用いた例を示したが、本発明に関連した光刺激検出素子は、必ずしも階段状の電極板を用いる必要はない。要するに、第1の電極板と第2の電極板とを対向させるように配置し、両電極板間に液晶性電荷輸送材料を充填した構造とし、第1の電極板の個々の部分ごとに、それぞれ第2の電極板に対する距離が異なるような構成となっていればよい。このような構成であれば、刺激光の照射によって得られる光電流のピーク持続時間に基づいて刺激光の照射位置を検出することが可能になる。
図10は、本発明に関連した光刺激検出素子の別な例を示す図である。図7に示す例との相違点は、第1の電極板12および第2の電極板22の構成である。これらの電極板はいずれもITOからなる透明な平板電極であるが、その配置がくさび型になるような構造となっているため、やはり刺激光の照射位置によって、セル間隔が異なるようになっている。すなわち、図の下方位置に刺激光hν1が照射された場合は、セル間隔が短いため、ピーク持続時間も短くなるが、図の上方位置に刺激光hν5が照射された場合は、セル間隔が長いため、ピーク持続時間も長くなる。したがって、ピーク持続時間認識手段55によってピーク持続時間を認識することができれば、刺激光の照射位置(図の上下方向に関する位置)を検出することができる。
図7に示す例の場合、セル間隔が階段状に変化するため、照射位置に関する情報は離散的な値としてしか得られないが、図10に示す例の場合、セル間隔が連続的に変化するため、照射位置に関する情報は連続的な値として得ることが可能になる。ただし、複数の刺激光が非常に近接した位置に照射された場合、光電流波形から複数のショルダーを分別することは困難になるため、実用上は、ある有限の分解能の範囲内で照射位置の特定が可能になる。
図11は、本発明に関連する光刺激検出素子の更に別な例を示す側断面図である。図11(a) に示す例は、平板型の第1の電極板10と階段型の第2の電極板21とを組み合わせた例である。また、図11(b) に示す例は、表面が曲面をなす一対の電極板13,23を組み合わせ、これら電極板の曲面構造に基づいて、第1の電極板13の個々の部分ごとに、それぞれ第2の電極板23に対する距離を異ならせるように構成したものである。もちろん、一方を平板型の電極板、他方を曲面型の電極板とすることもできるし、その他、種々の組み合わせが可能である。ここに図示する例は、あくまでも参考構成例として示したものであり、この他にも種々のバリエーションを採ることが可能である。
ここで述べる光刺激検出素子を実用化する際の大きなメリットは、液晶性の電荷輸送材料を用いているために、電極板がどのような形状、構造を有していても、何ら支障が生じない点にある。もちろん、光伝導性にのみ着目すれば、シリコンなどの半導体を用いた固体素子の方が、はるかに効率が高い。しかしながら、電荷輸送材料として固体素子を用いた場合、その形状や構造が大きく制限されることになる。特に、シリコン単結晶基板を用いた素子の場合、その脆弱性が問題となり、ある程度以上の厚い基板を用いることは困難である。これに対して、液晶は、シリコンなどの無機半導体に比べれば、光伝導性効率は落ちるものの、有機材料としては比較的高い光伝導性を有しており、しかも形状や構造上の問題は一切生じることがない。すなわち、液晶は、その流動性によって、一対の電極板がどのような形状、構造のものであっても、両電極板間に充填させることが極めて容易である。このため、本発明を利用すれば、小ロット生産を行う場合であってもコストを低く抑えることができ、しかも形態の自由度が高いセンサを実現することが可能になる。
ここで述べる光刺激検出素子の基本原理は、パルス状の刺激光を照射したときに得られる光電流波形から、ピーク持続時間を認識し、照射位置を検出する点にあるので、第1の電極板側に照射される刺激光は、パルス光であることが前提となる。しかも、ショルダーの認定を容易にするためには、ショルダーとなるポイントを経過した後の電流値の減衰を急峻にする必要があり、そのためには、できるだけパルス幅の短い刺激光を照射するのが好ましい。ただし、ここで述べる光刺激検出素子は、必ずしもパルス光の検出しかできないわけではなく、工夫次第で連続光の検出も可能である。すなわち、連続光の検出を行う場合には、連続光をパルス光に変換するチョッパ装置を更に設け、このチョッパ装置によって変換されたパルス光を第1の電極板に照射するようにすればよい。
もっとも、1回目のパルス光照射に基づく光電流がすべて減衰した後に、2回目のパルス光照射が行われる必要があるので(さもないと、1回目のパルス光照射に基づく光電流に、2回目のパルス光照射に基づく光電流が重畳して観測されるため、ただしい解析を行うことが困難になる)、チョッパ装置によって変換されるパルス光の周期は、ある程度の長さを確保しておく必要がある。具体的には、第1の電極板の個々の部分のうち、第2の電極板に対する距離が最も大きな部分に刺激光が照射された場合に生じる光電流のピーク持続時間よりも長い所定の周期Tをもって、連続光がパルス光に変換されるようなチョッパ装置を用いるようにすればよい。たとえば、図7に示すような構造をもった光刺激検出素子の場合、セル間距離が最も大きくなる刺激光は刺激光hν5であるから、図8において、ピーク持続時間t5よりも長い所定の周期(たとえば、図示のte)をもって、連続光をパルス光に変換するようにすれば、1回目のパルス光照射に基づく光電流に、2回目のパルス光照射に基づく光電流が重畳することはなくなる。
<<<§3.上述した光刺激検出素子を利用したセンサ>>>
さて、上述した§2では、本発明に関連した光刺激検出素子をいくつかの例に基づいて説明したが、ここでは、この光刺激検出素子を利用した種々のセンサを述べることにする。もちろん、§2で述べた光刺激検出素子は、そのままでも光センサとして用いることができるが、ここでは、これをより実用的なセンサとして適用した例をいくつか述べる。
図12は、§2で述べた光刺激検出素子を、ラインセンサ、すなわち一次元の光センサとして利用する場合の構成例を示す斜視図である。ここでは、説明の便宜上、図示のようなXYZ三次元座標系を定義する。第1の電極板12および第2の電極板22は、いずれも長手方向がほぼY軸方向を向いた細長い平板状の電極板であり、ITOなどの透明な導電性材料層を有する透明基板から構成されている。これら2枚の電極板12,22は、両電極板間の距離がY軸方向に沿って徐々に変化するように、くさび型に配置されており、両電極板間には液晶性電荷輸送材料(図示されていない)が充填されることになる。このような構造を有するラインセンサは、図10に示す光刺激検出素子と同等のものであり、測定された光電流のピーク持続時間に基づいて、照射された刺激光のY軸方向に関する位置を検出することが可能になる。
図13は、このようなラインセンサを、シート状材料の穴あき検査装置として利用した例を示す斜視図である。巻取状態で供給されたシート状材料100は、たとえば、紙やフィルムなどであり、欠陥孔Hが存在していた場合、何らかの措置(たとえば、欠陥孔Hの近傍部分は、製品加工には利用しない、というような措置)を採る必要がある。上述したラインセンサを用いれば、このような欠陥孔Hの有無とともに、その位置を検出することが可能になる。図示の例では、シート状材料100を引き出して矢印Aの方向(X軸方向)に搬送しながら、Y軸方向に伸びる2枚の電極板12,22を、搬送途中のシート状材料100の下面側に設けている。2枚の電極板12,22は、前述したように、互いにくさび型となるように対向配置されており、両電極板の間隔(セル間隔)は、図の手前側ほど小さく、図の奥へゆくほど大きくなっている。
ここで、図の上方から何らかのパルス光(たとえば、ストロボライト)を所定周期で照射(すくなくとも、第1の電極板12の検出有効部分の全面に当たるように照射)すると、欠陥孔Hが第1の電極板12上を通過するときに、この欠陥孔Hを通してパルス光が第1の電極板12の所定位置に照射されることになる。この照射位置(欠陥孔HのY軸方向に関する位置)は、既に述べたとおり、ピーク持続時間認識手段55によって認識されたピーク持続時間に基づいて決定できる。また、欠陥孔HのX軸方向に関する位置は、搬送速度を考慮することにより、光電流が観測されたタイミングに基づいて決定することができる。
このようなシート状材料の穴あき検査装置として利用する上では、一次元方向(図示の例の場合、Y軸方向)の位置検出ができれば十分であるが、二次元方向の位置検出を行う二次元光センサを構成する必要がある場合には、上述したラインセンサを、所定ピッチでX軸方向に配列すればよい。図14は、このようにして構成した二次元光センサの一例を示す上面図である。個々のラインセンサはそれぞれ独立して動作をし、いずれもY軸方向に関する光刺激の位置を検出する機能を有している。最終的に、各ラインセンサからの検出信号を合成すれば、照射された刺激光のX軸方向に関する位置およびY軸方向に関する位置を検出することができる。
もっとも、実用上は、次のような構成をもった二次元光センサの方が、コストパフォーマンスにすぐれている。まず、図15に示すように、絶縁性の第1の基板60を用意し、その上に、複数K個(図示の例では、K=7)の細長い導電層61〜67を形成する。図15(a) は、絶縁性の第1の基板60の上面図、図15(b) はその正面図である。この実施例では、絶縁性の第1の基板60はガラス基板であり、細長い導電層61〜67は、ITOなどの透明な導電性材料層である。各導電層61〜67は、図の上下方向に細長い導電層であり、図の横方向に所定ピッチで配列されている。一方、図16に示すような、第2の基板70を用意する。この実施例では、第2の基板70はガラス基板であり、その上面全面に、ITOなどの透明な導電性材料層71が形成されている。図16(a) は、第2の基板70の上面図、図16(b) はその正面図である。この第2の基板70自身を、何らかの導電性基板で構成してもかまわない。
こうして、2枚の基板60,70が用意できたら、これらを図17に示すように、くさび型に配置する。ここで、図示のようにXYZ三次元座標系を定義すると、第1の基板60はXY平面上に配置されており、その上には、長手方向がY軸方向を向いた複数K個の細長い導電層61〜67が所定ピッチでX軸方向に配列されていることになる。ここで、第2の基板70側の導電性材料層71は接地され、各導電層61〜67には、それぞれ独立した電流測定手段および電圧印加手段が接続されている。両基板60,70は、くさび型に配置されているため、両基板60,70間の距離(セル間隔)は、Y軸方向に沿って徐々に変化するような構成となっている(X軸方向に関してはセル間隔は一定である)。ここで、両基板60,70間に、液晶性電荷輸送材料を充填すれば、このセンサは、図14に示す二次元光センサと同等の機能を果たすことになる。また、光電流波形として得られる出力信号に対して、所定の信号処理を施すようにすれば、この二次元光センサを撮像素子として応用することも可能である。このように§2で述べた光刺激検出素子を用いれば、現在、一般的に利用されているCCDなどの固体撮像素子に比べて、構造が極めて単純な撮像素子を実現することができる。
<<<§4.本発明に係る信号検出素子>>>
以上、本発明に関連した光刺激検出素子を、いくつかの例に基づいて示したが、この光刺激検出素子の基本構造部分の応用範囲は、必ずしも光刺激を検出するセンサに限定されるものではない。本発明の基本原理は、これまで述べてきた光刺激検出素子の基本構造部分を、電気刺激を検出するセンサとして利用することにある。
図18には、本発明の一実施形態に係る信号検出素子の一例が示されている。ここで、第1の基板80および第2の基板90は、ガラスなどの絶縁性の基板であり、両基板は図示のとおりくさび型に配置されており、両基板間には、液晶性電荷輸送材料(図示されていない)が充填されることになる。第1の基板80上には、K個(図示の例では、K=4)の局在電極81〜84が形成されており、第2の基板90上には、全面に共通電極(図では裏側になるため、示されていない)が形成されている。また、各局在電極81〜84には、それぞれ入力端子T1〜T4が接続されており、これらの入力端子T1〜T4には、それぞれパルス状の電圧信号が供給される。一方、第2の基板90側に形成された共通電極には、電流測定手段50が接続されている。
このような構成をもった素子において、入力端子T1〜T4のいずれかにパルス状の電圧信号が供給されると、この電圧信号によって第1の基板80側に生成したキャリアが、液晶性電荷輸送材料中を移動し、第2の基板90側へと向かうことになり、電流測定手段50によって、共通電極に流れる電流が測定される。ところが、セル間隔(キャリアの移動距離)は、個々の局在電極ごとに異なっているため、いずれの入力端子に電圧信号が供給されたかによって、電流測定手段50で測定される電流波形のピーク持続時間が異なってくる。したがって、この電流波形を解析し、ピーク持続時間を認識することにより、いずれの入力端子に電圧信号が供給されたかが特定できる。複数の入力端子に同時に電圧信号が与えられた場合であっても、複数のピーク持続時間を認識することにより、電圧信号が供給された個々の入力端子を特定することができる。
このような信号検出素子の具体的な用途については、現時点では未知数であるが、たとえば、4ビットのデジタル信号を各入力端子T1〜T4に与えれば、このデジタル信号を所定の電流波形というアナログ信号に変換する素子が実現できる。
<<<§5.電荷生成層を付加する変形例>>>
最後に、§2で述べた光刺激検出素子において、電極板の内側に電荷生成層を付加して感度を増強する変形例を述べておく。図19は、このような変形例を示す側断面図および回路図である。この変形例の基本構成は、図10に示す光刺激検出素子の基本構成とほぼ同じであるが、第1の電極板12の内側(液晶性電荷輸送材料側)表面に、光刺激により電荷を生成する機能をもった電荷生成層15が形成されている。第1の電極板12を透明にしておけば、外部からの光刺激が電荷生成層15に与えられ、ここで生成された電荷が、液晶性電荷輸送材料30内を図の右方へと移動することになる。このような電荷生成層15を設けるメリットは、可視波長に対しても感度をもった光刺激検出素子を実現することができる点にある。一般的な液晶性電荷輸送材料は、紫外光の波長域にしか感度をもっていないため、可視波長域の光を直接検出することができない。図19に示す変形例において、電荷生成層15を、可視波長域の光に対して感度を有する材料で形成しておけば、可視波長域の光刺激によって電荷が発生し、光電流が観測されるので、可視波長域の光刺激検出素子を実現できる。
たとえば、図19に示す構成において、第1の電極板12をITO層を有する透明電極板とし、その内側に、セレン(Se)層からなる電荷生成層15を形成し、第2の電極板22をITO層を有する透明電極板(あるいは、こちらは不透明でもよいので、たとえば、アルミニウムの電極板でもよい)で構成すれば、可視波長域の光刺激検出素子を実現できる。セレン層は、可視波長域の光照射によって電荷を生成する機能を有しており、可視波長域の刺激光hν1〜hν5の位置を検出することができるようになる。
なお、これまでの例では、いずれも第1の電極板側から入射した刺激光を検出する例を示したが、第2の電極板側から入射した刺激光を検出するような構成を採ることも可能である。たとえば、図19に示す構成において、第1の電極板12を不透明なアルミニウム電極板とし、その内側に、セレン層からなる電荷生成層15を形成し、第2の電極板22をITO層を有する透明電極板とすれば、第1の電極板12側から入射した刺激光(図示のとおり、左から右へ向けて照射されている刺激光hν1〜hν5)は、不透明なアルミニウム電極板12によって遮断されてしまうが、逆に、第2の電極板22側から入射した刺激光(図とは逆に、右から左へ向けて照射される刺激光)は、透明な第2の電極板22および透明な液晶性電荷輸送材料30を透過して、セレンからなる電荷生成層15にまで到達することになる。その結果、この電荷生成層15において生成された電荷が、第2の電極板22側へと移動し、光電流が観測されることになる。
このように、電荷生成層は特定の波長域の光に対する感度を増強する効果を奏することができ、この電荷生成層として用いる材料を適宜選択することにより、所望の波長域に感度をもった光刺激検出素子を実現できるようになる。
液晶性電荷輸送材料を用いた素子における基本現象を説明するための図である。 本発明に用いる液晶性電荷輸送材料の一例を示す図である。 図1に示す素子に対して、パルス状の刺激光を照射した場合に得られる光電流波形の一般的な形態を示すグラフである。 図1に示す素子を、セル間隔dを変えることにより3通り用意し、それぞれに対して同一の刺激光hνを照射した場合の光電流波形を測定する実験結果を示すグラフである。 セル間隔dの異なる3通りの素子について、それぞれ刺激光hνとして照射するレーザ光強度を変化させた場合の光電流ピーク値を示すグラフである。 スメクチックA相(SmA)を呈する液晶材料と、スメクチックB相(SmB)を呈する液晶材料とを用い、セル間隔dを変えた場合のキャリア移動度の変化を調べる実験を行った結果を示すグラフである。 本発明に関連した光刺激検出素子の基本構成を示す図であり、上半分には主たる構成要素の側断面図が示されており、下半分には主たる構成要素の回路図が示されている。 図7に示す光刺激検出素子に対して、パルス状の刺激光hν1〜hν5のうちのいずれかが照射された場合に、電流測定手段50によって測定される光電流波形を示すグラフである。 図7において、2つの刺激光hν2,hν5が同時に照射された場合に、電流測定手段50で測定される光電流波形を示すグラフである。 本発明に関連した光刺激検出素子の別な例を示す側断面図および回路図である。 本発明に関連した光刺激検出素子の更に別な例を示す側断面図である。 本発明に関連した光刺激検出素子を、ラインセンサとして利用する場合の構成例を示す斜視図である。 図12に示すラインセンサを、シート状材料の穴あき検査装置として利用した例を示す斜視図である。 図12に示すラインセンサを複数配列することにより構成した二次元光センサの一例を示す上面図である。 本発明に関連した二次元光センサの一部を構成する第1の基板の上面図および正面図である。 本発明に関連した二次元光センサの一部を構成する第2の基板の上面図および正面図である。 図15に示す第1の基板および図16に示す第2の基板をくさび型に配置することにより構成される二次元光センサの斜視図である。 本発明に係る信号検出素子の一実施形態の斜視図である。 図10に示す例において、第1の電極板側に電荷生成層を設けるようにした変形例を示す側断面図および回路図である。
符号の説明
10,11,12,13:第1の電極板
15:電荷生成層
20,21,22,23:第2の電極板
30:液晶性電荷輸送材料
40:電圧印加手段
50:電流測定手段
55:ピーク持続時間認識手段
60:第1の基板
61〜67:導電層
70:第2の基板
71:共通導電層
80:第1の基板
81〜84:導電層
90:第2の基板
100:シート状材料
A:搬送方向
d:セル間隔
E:印加電圧
G1〜G5,G25:光電流波形を示すグラフ
H:欠陥孔
hν,hν1〜hν5:刺激光
P,P1〜P5,P25:ピーク電流値
S,S1〜S5:ショルダー
T1〜T4:入力端子
t1〜t5,tp:ピーク持続時間
te:パルス光の周期

Claims (7)

  1. 第1の基板と、これに対向するように配置された第2の基板と、前記両基板間に充填されたスメクチック相の液晶性電荷輸送材料と、前記第1の基板上に形成された複数K個の局在電極と、前記第2の基板上のほぼ全面に形成された共通電極と、前記K個の局在電極にそれぞれ接続されたK個の入力端子と、これらK個の入力端子に与えられたパルス状の電圧信号に基づいて前記共通電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段によって測定された電流のピーク持続時間を認識するピーク持続時間認識手段と、を備え、前記第1の基板の前記K個の局在電極が形成された個々の部分ごとに、それぞれ前記第2の基板に対する距離が異なるように構成されており、前記ピーク持続時間認識手段は、前記パルス状の電圧信号が与えられた時点から、前記共通電極に流れるほぼ一定のピーク値をもった電流の値が急峻な立ち下がりを示すショルダーに至るまでの時間をピーク持続時間として認識し、認識したピーク持続時間に基づいて、K個の入力端子のうちのいずれの入力端子に電圧信号が与えられたかを認識することを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  2. 請求項1に記載の信号検出素子において、
    第1の基板および第2の基板の少なくとも一方に、複数の段差構造を有する基板を用いるようにし、前記段差構造の段差に基づいて、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したことを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  3. 請求項1に記載の信号検出素子において、
    第1の基板および第2の基板の少なくとも一方に、表面が曲面をなす基板を用いるようにし、この基板の曲面構造に基づいて、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したことを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  4. 請求項1に記載の信号検出素子において、
    第1の基板および第2の基板をくさび型に配置することにより、第1の基板の局在電極が形成された個々の部分ごとに第2の基板に対する距離が異なるように構成したことを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の信号検出素子において、
    ピーク持続時間認識手段が、複数の入力端子に電圧信号が与えられた場合に、複数通りのピーク持続時間を認識することにより、電圧信号が与えられた複数の入力端子を認識することを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の信号検出素子において、
    L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L,M,Nはそれぞれ0〜4の整数を表し、L+M+N=1〜4とする)を含むコアを有し、スメクチック液晶相を呈する液晶を、液晶性電荷輸送材料として用いることを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出素子。
  7. 第1の基板と第2の基板との間にスメクチック相の液晶性電荷輸送材料を充填し、前記第1の基板上に複数K個の局在電極を配置し、前記第2の基板上のほぼ全面に共通電極を配置し、前記第1の基板の前記K個の局在電極が形成された個々の部分ごとに、それぞれ前記第2の基板に対する距離が異なるように構成し、前記K個の局在電極のいずれかにパルス状の電圧信号が与えられたときに前記共通電極を流れる電流を測定し、前記パルス状の電圧信号が与えられた時点から、前記共通電極に流れるほぼ一定のピーク値をもった電流の値が急峻な立ち下がりを示すショルダーに至るまでの時間をピーク持続時間として認識し、認識したピーク持続時間に基づいて、前記K個の局在電極のうちのいずれに電圧信号が与えられたかを検出することを特徴とする液晶性電荷輸送材料を用いた信号検出方法。
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