JP4837183B2 - フッ素徐放性審美性歯科用組成物 - Google Patents

フッ素徐放性審美性歯科用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はフッ素徐放性フィラーに関する。特に歯科の分野における歯科用組成物に用いられ、歯科用充填材料、修復材料、歯冠材料に好適に用いられる歯科用組成物に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
歯科治療においてう食の予防もしくは抑制にフッ素イオンを放出する材料は良く知られている。フッ素は、歯質に取り込まれた際、耐酸性層を形成することも良く知られている。また、カルシウムイオン、リン酸イオンの共存により象牙細管封鎖、石灰化、軟化象牙質の再石灰化等による歯髄保護等が期待できる。
従来歯科の領域において、う触予防および二次う触の抑制を目的として、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化亜鉛、フッ化第一錫、希土類元素のフッ化物等のフッ素イオン放出性化合物、フッ素の4級アンモニウム塩が用いられており、これらを含有した歯科用組成物も知られている。
【0003】
近年、レジン強化型グラスアイオノマーとよばれるコンポマーという材料が開発されるようになった。これは歯科用コンポジットレジンにアルミノフルオロシリケートガラスと酸性の不飽和二重結合を有するモノマーを配合したものであるが、フッ素徐放量が低いために上記のフッ化物を配合している。しかし、これでも長期的には高いフッ素徐放量を維持することは困難であり、臨床的に満足のいく材料が開発されていないのが現状である。また、フッ化物を配合することによりこれも審美的に問題を残していた。
【0004】
PCT/JP94/00620にはプレフォームドグラスアイオノマーフィラーが開示されているが、崩壊性のないフッ素リリースを生むものの、フッ素リリース量はグラスアイオノマーセメントと比べると不十分であった。さらに、フッ素放出量を増やすために、プレフォームドグラスアイオノマーフィラーと併用して、フッ素化合物をレジンに配合することは可能であるが、この方法ではフッ素化合物とラジカル重合性モノマーとの間に屈折率の差が生ずることが多く、審美的な歯科用充填材料を得ることはできなかった。
【0005】
金属フッ化物をポリシロキサンで被覆することによって得られるフッ化物をラジカル重合性モノマー及び重合開始剤に配合する方法は、特開平10−36116に開示されている。
金属フッ化物を含有するデュアルキュア型の歯科用接着性組成物は特開平11−209213に開示されている。しかし、この方法でも、金属フッ化物とラジカル重合性モノマーとの間に屈折率差が生ずるため、透明性を要求されない接着重合性組成物や合着用組成物に応用することは可能であるが、充填修復材料に用いた場合、審美性を損なうという問題があった。また、高屈折率のフッ化カルシウムやフッ化ストロンチウムは水への溶解度が低いため高い徐放性がえられないという問題点があった。
【0006】
金属フッ化物以外にフッ化物をラジカル重合性モノマーに配合する例としてはEP−A−0449399号ではガラス粉末にYbFを含むことによりX線不透過性を有することを開示しているが、これも水に不溶性であり、高い徐放性が得られない上に不透明になるという問題があった。
【0007】
【発明が解決すべき課題】
本発明は崩壊性のない安定なプレフォームドグラスアイオノマーフィラーのフッ素徐放量を更に向上させ、かつ審美的な歯科用組成物を創製することを課題とする。
【0008】
さらに、本発明は長期的に高いフッ素徐放量を維持し、臨床的に満足の材料を開発する。また、審美的に問題を残さずに長期的に高いフッ素徐放量を維持することも課題である。
また更に、金属フッ化物やフッ素化合物とラジカル重合性モノマーとの間に屈折率の差が生じさせず、審美的な歯科用組成物を発明した。歯科用組成物に用いた場合、審美性を損なうことのない材料を提供することを目的とする。
これらを歯科用充填材料に用いる様に、調整することも課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
これらの課題について、本発明者らは鋭意研究の結果、酸反応性ガラスとポリアルケン酸を水溶液中で反応させるプレフォームドグラスアイオノマーフィラーにおいて、酸反応性ガラスとポリアルケン酸を反応させる水溶液中にフッ素化合物存在下で反応させることを特徴とするフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを発明し、フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを含むことを特徴とする歯科用組成物は審美性を維持しつつ飛躍的にフッ素徐放量を向上することを発明した。
【0010】
フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの酸反応性ガラスが、アルミノフルオロシリケートガラスであることを特徴とする歯科用組成物は更に好ましい。
アルミノフルオロシリケートガラスのフッ素量が5〜50mol%である歯科用組成物は更に好ましい。
フッ素化合物の屈折率が1.30〜1.42である歯科用組成物は更に好ましい。
【0011】
本発明のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーについて具体的に説明する。フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーとは、酸反応性ガラスとポリアルケン酸をフッ素化合物中で反応させ、乾燥したものである。これを粉砕したものがフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーである。
【0012】
酸反応性ガラスとは、酸性水溶液中で反応し、中性に近づくものであればよいが歯科用グラスアイオノマーセメントに使用するフルオロアルミノシリケートガラスであることが好ましい。
しかし、フルオロアルミノシリケートガラス中に配合できるフッ素量は限定されている。フルオロアルミノシリケートガラスの酸反応性成分は、Ca、Sr、Baに代表されるアルカリ土類金属類、Alに代表される中間酸化物類、及びNaに代表されるアルカリ金属類である。しかし、これらの元素を含有するガラスを溶融する際にフッ素はアルカリ成分のモル数に依存されるため多くのフッ素を含有することはできない。これはガラスに結晶が析出しないように溶解するにはガラス化範囲の中でしかフッ素量を入れることができず、過剰に加えても溶解時に揮発したり、失透するためである。
【0013】
フルオロアルミノシリケートガラス組成の好ましい例としては
MO 5〜40モル%(MはCa、Sr、Ba)
SiO 15〜70モル%
Al 10〜50モル%
NaO 0〜7モル%
0〜7モル%
F 5〜50モル%
必要に応じて、上記のMの一部をランタン、ガドリニウム、イッテリビウムに代表されるランタノイド金属で置換しても良い。
【0014】
次に、ポリアルケン酸について説明する。
ポリアルケン酸とはすなわち側鎖にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の繰り返しユニットを有する不飽和モノ−、ジ−およびトリカルボン酸のホモポリマー類及びコポリマー類のことを指す。
具体的にはアクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、3−ブテン−1、2、3トリカルボン酸、トリカルバリル酸、トリカルバリル酸、イタコン酸から誘導される繰り返しユニットを含有するポリマー類またはコポリマー類が例示される。光硬化型グラスアイオノマーセメントに用いられる公知の不飽和基を有するポリアルケン酸類も好適に用いられる。
【0015】
本発明に用いるポリアルケン酸の分子量としては1500〜150000、好ましくは3000〜70000、より好ましくは3000〜30000である。分子量が大きくなりすぎると酸反応性ガラスとの反応を十分に行えない可能性がある。
【0016】
また、本発明に用いられるフッ素化合物としては、水溶液中でフッ素イオンを放出する化合物であればよいが、水溶液中で溶解し、沈殿しないことが好ましい。具体的にはフッ化ナトリウム、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属フッ化物、またはフルオロケイ酸塩が挙げられる。本発明に用いるフッ化物の好ましい屈折率の範囲は1.30〜1.42である。
【0017】
フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを作製する過程で、過剰にフッ素化合物を加えると、それを乾燥する際にその化合物がそのまま結晶として析出し、不均質なものとなり、歯科用組成物に用いたときに不透明になる。
歯科用組成物に添加したときに不透明にならない程度に、過剰にフッ素化合物を加えることは好ましい。
好ましいフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーを作製するときに用いるフッ素化合物はポリアルケン酸のカルボキシル基100molに対して10mol〜300molであることが好ましい。より好ましくは20〜100molである。
【0018】
このフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを歯科組成物に用いる場合、まず、コンポジットレジン分野、ボンディング材、シーラント材、硬質レジンなど幅広く利用することができる。これらに適用する場合、このフィラーとともに用いるレジン材料としては(a)ラジカル重合性モノマー及び(b)硬化剤からなる樹脂組成物が挙げられる。
【0019】
このラジカル重合性モノマーとしては広く歯科および化学工業の分野で用いられ、生体安全性の高い不飽和二重結合基を含有する化合物から選択される。
特に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基及びビニル基等の不飽和二重結合基を1以上有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーが好適に用いられる。
「(メタ)アクリレート」の語はアクリレート類とメタクリレート類の両方を意味する。
【0020】
具体的に例えば不飽和二重結合基の他に炭化水素基、フェニル基、水酸基、酸性基、酸アミド基、アミノ基、チオール基、ジスルフィド基、環式基、複素環式基、ハロゲン基、シラノール基、ピロリドン基、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、アルキレングリコール基等を1以上若しくは複数有する化合物が挙げられる。特に好適なラジカル重合性モノマーは上記の官能基や結合を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体である。
ラジカル重合性モノマーは適度な粘性を維持するため架橋性モノマーと希釈モノマーを組み合わせることが好ましい。また、フッ素イオンの徐放を促進するため親水性の重合性モノマーを併用しても良い。
【0021】
架橋性モノマーには、ウレタンジ−、トリ−、テトラ(メタ)アクリレート類を含むウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
「ウレタンジ−(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル−モノ−(メタ)アクリレート類の1:2のモル比の反応生成物をいう。「ウレタントリ−(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル−ジ−(メタ)アクリレート類、およびヒドロキシアルキル−モノ−(メタ)アクリレート類との1:1:1のモル比の反応生成物である。ウレタンテトラ−(メタ)アクリレートは適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル−ジ−(メタ)アクリレート類との1:2モル比の反応生成物である。
【0022】
具体的には
ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシペンチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシヘキシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−「(メタ)アクリロキシデシル」トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]イソホロンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシプロピル]イソホロンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシブチル]イソホロンジウレタン、ジ−「(メタ)アクリロキシペンチル」イソホロンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシヘキシル]イソホロンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]ヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4−(2ヒドロキシ−3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4−(2−メチルアクリロイルオキシエトキシ)−フェニル]プロパン、2,2ビス[4−メタクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2ビス[4−(3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4−(2ヒドロキシ−3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4−(2−メチルアクリロイルオキシエトキシ)−フェニル]プロパンが特に好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いても良い。
【0023】
好ましい希釈モノマーの具体的な例としては
モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、1,4−ジ[(メタ)アクリロキシ]ブチレン、1,6−ジ[(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパン−テトラ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよびスチレンを含む。エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いても良い。
【0024】
好ましい親水性モノマーの例は、水酸基あるいはピロリドン基を有する重合性モノマーである。
好ましい例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート 6−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート トリエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、1,2−または1,3−または2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、ビニルピロリドンおよび1−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ナフトキシプロピル(メタ)アクリレートおよびビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートの付加物のごときフェノールのグリシジル(メタ)アクリレート付加物および、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)(メタ)アクリレートおよびビニルピロリドンが特に好ましい。これらの化合物を2またはそれ以上共に用いても良い。
【0025】
本発明に用いる硬化剤としては、ラジカル重合触媒として広く歯科及び化学工業の分野で用いられているラジカル重合の開始剤及び促進剤より選択すればよい。硬化剤を選択することにより本発明の歯科用組成物は光重合、化学重合または光重合と化学重合の両方(デュアルキュア)により硬化させることが出来る。
【0026】
具体的には有機過酸化物、バルビツール酸誘導体、ベンゾイン誘導体、α−ジケトン類、アミン類、スルフィン酸類、有機錫化合物から選択される。ラジカル重合性モノマー及び所望の硬化方法に合わせてこれらの開始剤は1以上選択すればよい。
【0027】
有機過酸化物としては具体的には、
ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、4,4’−ジクロロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシイソブチラート等が挙げられる。
ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッドが特に好ましい。
【0028】
バルビツール酸誘導体としては具体的には
バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、およびチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい)、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウムがある。
1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸が特に好ましい。
【0029】
光重合触媒としては紫外線や可視光線による光重合開始剤が挙げられ、具体的には、
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,10−アントラキノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミド、カンファーキノン、ベンジル、4,4’−ジクロロ−ベンジルである。
カンファーキノンが特に好ましい。
【0030】
アミン類としてはレドックス重合や光重合の促進剤として通常使用される脂肪族および芳香族の第一、第二及び第三アミン類であり具体的には、
エタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−フェニルグリシン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等がある。これらのアミン類は有機過酸化物やスルフィン酸類と反応するため組み合わせて使用する場合は2以上に分割して準備し、使用前に混合して使用する。
【0031】
スルフィン酸類としてはスルフィン酸、スルフィン酸のアルカリ金属塩、スルフィン酸アミド類であり、具体的には
ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸アミド、N,N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸アミド、ベンゼンスルフィン酸モルフォリド、p−トルエンスルフィン酸モルフォリドがある。
【0032】
有機錫化合物は具体的には
ジ−n−ブチル錫マレート、ジ−n−オクチル錫マレート、ジ−n−オクチル錫ラウレート、ジ−n−ブチル錫ラウレートまたはそれらの混合物である。
【0033】
本発明のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーをラジカル重合性モノマー及び硬化剤に配合する際にはフッ素徐放性を損なわないレベルで表面処理してもよい。
【0034】
表面処理剤は具体的には
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニル(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルアkプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシシランがある。
特に好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0035】
本発明のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーをラジカル重合性モノマー及び硬化剤に配合する際の配合割合は、10重量%〜90重量%が好ましい。歯科用充填材料として用いる場合は40重量%〜70重量%が特に好ましい。
また、微粒子ケイ酸、シリカ粒子、顔料を併用してもよい。
【0036】
【本発明の効果】
本発明は、フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーであり、通常のプレフォームドグラスアイオノマーフィラーに比べ、遙かに多くのフッ素を長期間放出することができる。
【0037】
本発明は崩壊性のない安定なプレフォームドグラスアイオノマーフィラーであり、フッ素徐放量を更に向上しており、これを歯科用組成物に応用すると審美的な歯科用組成物を創製することができる。
さらに、本発明は長期的に高いフッ素徐放量を維持するため、臨床的に満足する材料(2次齲蝕が発生しない)である。
【0038】
また更に、本発明はラジカル重合性モノマーとの間に屈折率の差が生じず、審美的な歯科用組成物である。歯科用組成物に用いた場合、審美性を損なうことがない。
歯科用組成物が歯科用充填材料である場合は特にこれらの効果が顕著に現れる。
【0039】
本発明のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを歯科用組成物に配合した場合、曲げ強度が水中浸漬1日後の値(初期強度)に比べて7日後の値において85%以上維持しつつ、フッ素リリースを2倍以上にすることができる。また、フッ化物を独立して樹脂組成物に配合したもに比べて硬化深度の低下、及び透過度の低下が認められない。
【0040】
本発明のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを用いることによりこれを使用した歯科用組成物の歯科用充填材料において、フッ素徐放性を向上させ、審美性すなわち透明性を維持することができる。さらにレジン材料に直接配合した場合、曲げ強度に代表される材料強度が劣化するのに対し、これを維持することができる。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
(ガラスの調整)
18.2%の酸化アルミニウム、32.6%のシリカ、34.0%のフッ化ストロンチウム、15.2%のフッ化アルミニウムを共に融解することにより調製した。
得られたガラスを平均粒径5μmに粉砕した。
【0043】
(フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの調製)
適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえた1L容の3ツロフラスコへ、60gの上記粉砕ガラスとNaF5gを524gの脱イオン水を連続的にかきまぜながら懸濁溶液として仕込んだ。100gのポリアクリル酸(PAA)(固形分40重量%程度、重合度約1100)および238gの脱イオン水を500mL容のビーカーに仕込んだ。
【0044】
ガラス粉末が完全に分散されたときにPAA溶液をフラスコへ1時間かけて添加した。このビーカーを238gの脱イオン水で洗浄し、この洗浄液をフラスコへ加えた。反応混合物を40℃で20時間撹拌した。この含水ゲルを凍結乾燥し、これを粉砕して平均粒径を5μmのフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを得た。
【0045】
【比較例1】
(プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの調製)
適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえた1L容の3ツロフラスコへ、60gの上記粉砕ガラスを524gの脱イオン水を連続的にかきまぜながら懸濁溶液として仕込んだ。100gのポリアクリル酸(PAA)(固形分40重量%程度、重合度約1100)および238gの脱イオン水を500mL容のビーカーに仕込んだ。ガラス粉末が完全に分散されたときにPAA溶液をフラスコへ1時間かけて添加した。このビーカーを238gの脱イオン水で洗浄し、この洗浄液をフラスコへ加えた。
反応混合物を40℃で20時間撹拌した。この含水ゲルを凍結乾燥し、これを粉砕して平均粒径を5μmのプレフォームドグラスアイオノマーフィラーを得た。
【0046】
(光重合性組成物の調製)
以下の表に示す組成にて光重合性組成物を調製した。
以下の表に示す組成にて光重合性モノマーを調製した。光硬化触媒は総光重合性モノマーに対し、ジブチル錫ジラウリレート0.3重量%組成物、およびカンファーキノン0.1重量%を配合した。
【0047】
【表1】
Figure 0004837183
【0048】
(フッ素イオン濃度測定用試験体の作製)
実施例1及び比較例1、2の組成物を約15mmφ、厚さ1mmの金型に充填し、松風社製グリップライトで光照射し、すぐに37±1℃、湿度90〜100%の条件下で10分間保存した後、金型から取り出した。
(フッ素イオンリリースの測定)
試験体の大きさを1200#の研磨紙にて表面研磨を行い、15mmφ、厚さ1mmとした。これを15mLの蒸留水中入れ、37℃で1週間保存した。1週間後、試験体を取り出し、溶液のフッ素イオン濃度をフッ素イオン電極にて測定しフッ素リリース量を求めた。試験体数(n)は5とし、この平均値を用いた。
【0049】
(曲げ強度の測定用試験体の作製)
「フッ素イオン濃度測定用試験体の作製」と同様に25×2×2mmの試験片を作製し、直ちに37±2℃水中に浸漬する。
(曲げ強度試験)
上記試験体を、水中浸漬から1日後、7日後に取り出し、万能材料試験機インストロン形式5567を用い、クロスヘッドスピード1mm/min、支店間距離20mmの3点曲げ試験を行う。試験体が破折したときの荷重を測定し、曲げ強度強さMPaに換算する。
【0050】
(硬化深度の測定)
内径4.0mm、外径12mm、高さ10mmのステンレス製金型に気泡が試料に入らないように注意しながら充填し、成形する。この平面に対し垂直に密接させて可視光線照射器(松風グリップライトII)の光照射面を置き、20秒間光照射する。光照射終了から180秒後に金型より硬化試料を取り出し、裏面の未硬化のレジンをエタノールを含浸させたサラシ布で拭き取り、マイクロメータを用いて硬化したレジンの長さを計測し、硬化深度とする。
【0051】
(透明度の測定)
「フッ素イオン濃度測定用試験体の作製」と同様に直径15mm、1mmの試験片を作製した。この硬化試料を紫外線分光光度計(島津製作所(株)製UV−160A)を用いて光線透過度を測定した。
【0052】
【表1】
Figure 0004837183

Claims (5)

  1. 酸反応性ガラスとポリアルケン酸を水溶液中で反応させ、得られた生成物を粉砕して得られるプレフォームドグラスアイオノマーフィラーにおいて、酸反応性ガラスとポリアルケン酸を反応させる水溶液中にフッ素化合物存在下で反応させることを特徴とするフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラー。
  2. 請求項1記載のフッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを含むことを特徴とする歯科用組成物。
  3. フッ素強化プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの酸反応性ガラスが、アルミノフルオロシリケートガラスであることを特徴とする請求項2記載の歯科用組成物。
  4. アルミノフルオロシリケートガラスのフッ素量が5〜50mol%である請求項3記載の歯科用組成物。
  5. フッ素化合物の屈折率が1.30〜1.42である請求項2記載の歯科用組成物。
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