JP4835465B2 - 無線通信システムおよび端末 - Google Patents

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Description

本発明は、無線通信において、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を採用する無線通信方式であって、セルラ通信を実現する方式に関わる。
無線通信の高速化、大容量化を目的として、OFDMを採用する無線通信方式の研究開発が進んでいる。OFDMは、伝送するデータを周波数領域で生成し、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)により時間領域の信号に変換して無線信号として送信する。受信側では、FFT(Fast Fourier Transform)により、時間領域から周波数領域の信号に変換して元の情報を取り出す。
通信を行う際には、基地局の受ける干渉電力を制御するため、端末が基地局に信号を送信するための上り回線における端末の送信電力制御が必要となる。
標準化団体であるIEEE802.20では、OFDMをベースとした無線通信方式が提案されており、非特許文献1では、上記無線通信方式の上り送信電力制御方法が定義されている。
標準化団体である3GPPでは、LTE(Long Term Evolution)として、OFDMをベースとした無線通信方式が提案されており、非特許文献2では、上記無線通信方式の上り送信電力制御方法が定義されている。
標準化団体である3GPP2では、UMB(Ultra Mobile Broadband)として、OFDMをベースとした無線通信方式が提案されており、非特許文献3では、上記無線通信方式の上り送信電力制御方法が定義されている。
IEEE802.20やUMBにおける端末の上り送信電力制御では、特定の制御信号を送信するためのチャネル(複数の種類が存在する)に対しては、所定の受信電力が得られるように、基地局が送信電力を決定して端末に指示を行う。一方、ユーザデータや音声など、上記特定の制御信号に属さない情報を送信するためのOFDMデータチャネルに対しては、各セクタの干渉状況を示す指標OSI(Other Sector Interference)に応じて、端末がT2P(Traffic‐to‐Pilot)ゲインを増減することで、OFDM信号の送信電力を調整する。ここで、セクタとは、ビームによる基地局の論理的な分割単位であり、端末は直接的にはセクタと通信を行う。また、T2Pゲインとは、パイロット送信電力に対するOFDMデータチャネル送信電力の大きさを示し、OFDMのサブキャリア当りの送信電力、すなわち電力スペクトル密度で定義される。
まず各セクタが、干渉電力および熱雑音電力を計測し、これらを用いてIoT(Interference over Thermal)を計算する。ここで、IoTとは、各セクタが受信する、自セクタをRLSS(Reverse Link Serving Sector)としない端末からの干渉電力と、雑音電力の比である。RLSSとは、端末が上り回線でデータを送信しようとするセクタである。
各セクタは、計算したIoTから、干渉状況を0、1、2の3状態に判定し、これをOSIとして端末に通知する。ここで、OSI=0は干渉が小さい、OSI=1は干渉が大きい、OSI=2は干渉が非常に大きい状況を示す。
また、OSIは、F‐OSICH(Forward OSI Channel)やF‐FOSICH(Forward Fast OSI Channel)などを通じて、セクタから端末に通知される。
端末は、OSIMonitorSetで規定されるセクタから送信されるOSIを検出し、OSIが0ならばT2Pゲインを増加し、OSIが1もしくは2ならばT2Pゲインを減少する方針で動作する。ここで、OSIMonitorSetとは、端末が予め定めた、RLSSを除く近隣セクタからなる集合である。
詳細には、端末は、OSIの値が0であれば、電力を上げる確率を求め、その確率に従って、電力を上げるか、変化させないかのいずれかを決定する。OSIが1の場合には、電力を下げる確率を求め、その確率に従って、電力を下げるか、変化させないかのいずれかを決定する。これらの電力の増減の確率は、端末の現在の送信電力、および基地局における干渉への寄与の大きさを反映して計算される。OSIが2の場合には、常に電力を下げるという決定を下す。電力増加、減少、増減なしの決定には、予め定められた3つの判定値がそれぞれ対応している。
OSIMonitorSetに属するそれぞれのセクタについて、上記の判定値を求めると、端末は、距離が近いセクタの寄与が大きくなるよう、判定値を各セクタから端末までの伝搬減衰で重み付けした平均を求める。
この値をDwとしたとき、Dwがある閾値以下なら、端末はT2Pゲインを一定量減少させる。また、Dwが別のある閾値以上なら、端末はT2Pゲインを一定量増加させる。Dwがどちらの条件も満たさない場合は、端末はT2Pゲインを変化させない。上記のような動作を行うことで、セル中心に近い端末のサブキャリア当りの送信電力が高く、セル中心から離れた端末のサブキャリア当りの送信電力が低くなるように、端末の送信電力を制御することができる。
IEEE C802.20−06/04 3GPP TR 25.814 V7.0.0 (2006‐06) 3GPP2 C30−20060731−040R4
OFDMをベースとした無線通信方式における代表的な上り電力制御方式の第1の課題として、電力の増減の方針が、確率に基づいて、電力増加、減少、変化なしの3通りのいずれかに決定されるため、必ずしも所望の動作を行わないことが挙げられる。
例えば、ある端末のOSIMonitorSetに含まれるセクタが3つあり、そのうちの2つのセクタでOSI=1、残りの1つのセクタでOSI=0であったとする。この場合、端末は2つのセクタに干渉している可能性があるため、電力を下げることが望ましい。
しかし、確率を用いると、OSI=1である2つのセクタでともに、基地局からの電力減少の要求を無視する形で、電力を変化させないという決定が下され、一方でOSI=0であるセクタで電力を上げるという決定が下される可能性がある。
これらの重み付け平均が閾値を超えると、本来は電力を下げるのが望ましいにも関わらず、端末は電力を上げてしまう。
セクタ当りの端末の数が多い状況では、少数の端末で上記の動作があったとしても、統計効果によってセクタ全体としては干渉が抑制される方向に動作することができる。
しかし、セクタ当りの端末の数が少ない場合には、統計効果が働かないため、上記の動作によって干渉状況が悪化する。
また、OFDMをベースとした無線通信方式における代表的な上り電力制御方式の第2の課題として、電力の変動が大きくなることが挙げられる。例えば、ある端末のOSIMonitorSetのセクタの干渉電力が、OSI=0とOSI=1の閾値付近にあっても、OSI=0であれば、端末は決められた量だけT2Pゲインを増加させる可能性がある。
このような状況で仮に端末が送信電力を増加させると、閾値を大きく上回る干渉が発生して、再度送信電力を下げる必要が生じ、結果的に送信電力が大きく変動することになる。
上述の目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムでは、複数の基地局と複数の端末とを備え、上記基地局は、受信した干渉電力の強度を上記端末に通知する手段を有し、上記端末は、上記基地局のうちデータ送信先でない基地局から通知される干渉電力の強度(OSI)を参照して、上記基地局のうちデータ送信先である基地局にデータを送信するための送信電力を制御する手段を有し、上記送信電力を制御する手段は、端末の現在の送信電力と、端末及びデータ送信先でない基地局の間の伝搬減衰とに応じて可変な、送信電力の増減の判定値を算出し、送信電力の増減量を、上記送信電力の増減の判定値に応じて可変に制御することを特徴とする。
また、上記端末は、データ送信先でない基地局との間の伝搬減衰を測定する手段と、上記干渉電力の強度が小さい場合には、現在の送信電力と上記伝搬減衰に応じて可変な電力の増加を指示する判定値を出力し、上記干渉電力の強度が大きい場合には、現在の送信電力と上記伝搬減衰に応じて可変な電力の減少を指示する判定値を出力する手段と、を備えることを特徴とする。
また、上記端末は、上記送信電力の増減の方針の強度判定値に応じて可変な、1回の送信電力の調整における電力の増減量を出力する手段を有することを特徴とする。
また、上記端末は、セクタiにおける電力増減の判定値(Decision_i)として、干渉電力の強度が小さい場合には、Decision_iを、予め定められた値であるUpDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力し、干渉電力の強度が大きい場合には、Decision_iを、予め定められた値である−DnDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力する手段を備えることを特徴とする。
また、上記端末は、上記基地局のうちデータ送信先でない基地局に属するセクタについてDecision_iを求め、上記複数Decision_iを伝搬減衰で重み付けして平均値Dwを算出し、Dwが正の値の場合、送信電力を増加させ、Dwが負の値をとる場合、送信電力を減少させることを特徴とする。
また、上記端末は、上記Dwが正の値の場合には、送信電力の増加量を、予め定められた値であるRDCHGainUpとDwの積として算出される値とし、Dwが負の値の場合には、送信電力の減少量を、予め定められた値であるRDCHGainDnとDwの積として算出される値とすることを特徴とする。
そして、本発明に係る端末は、データ送信先でない基地局から通知される干渉電力の強度(OSI)を参照し、データ送信先である基地局にデータを送信するための送信電力を、現在の送信電力と、データ送信先でない)基地局の間の伝搬減衰とに応じて可変な、送信電力の増減の判定値を算出し、送信電力の増減量を、上記送信電力の増減の判定値に応じて可変に制御することを特徴とする。
本発明によれば、あるセクタからの要求を無視することなく、全ての近隣セクタのOSIおよび干渉への影響を考慮して電力の増減を決定するので、端末が干渉状況を悪化させる方向に電力制御を行うといった問題を、解決することができる。
また、本発明によれば、電力の増減量を、現在の送信電力や近隣セクタにおける干渉への影響に応じて変化させることができる。このため、端末の送信電力が収束し、近隣セクタの干渉の強度が許容限界付近にある場合に、端末の送信電力の変動を抑制することができる。
さらに、上記の2つの効果により、端末の送信電力のOSIに対する追従性が向上する。
以下、本発明を適用した第1の実施例について、図1から図9を用いて説明する。
OFDMセルラ無線通信システムは、一般には、図1に示すように、複数の基地局装置と複数の端末装置から構成される。基地局装置101および102は、有線回線によってネットワーク103に接続する。端末装置104は無線回線によって基地局装置101に接続し、ネットワーク103との通信が可能な仕組みになっている。
OFDMセルラ基地局における各セクタは、自セクタに宛てて通信を行っている端末からの受信信号や、他のセクタに宛てて通信を行っている端末からの干渉信号、および熱雑音を受信している。
各セクタの基地局装置は、干渉電力と熱雑音電力を測定しており、これらの比をとることで、各セクタにおけるIoTを得る。
各セクタは、計算したIoTから、自らの受信する干渉の強さを、OSIとして0、1、2の3段階で判定する。OSI=0は干渉電力が小さい状況を示し、各セクタにおける干渉源となる端末が送信T2Pゲインを増加させてもよいと通知することを目的とする数値である。
OSI=1およびOSI=2は干渉電力が大きい状況を示し、各セクタにおける干渉源となる端末に送信T2Pゲインを減少するように求めることを目的とする数値である。
特に、OSI=2は干渉が非常に大きい状況を示しており、各セクタにおける干渉源となる端末に対して、送信T2Pゲインを強制的に下げさせることを意図している。各セクタは、F‐OSICHを通じてOSIを端末に通知する。
F−OSICHは、プリアンブルの中に含まれている。プリアンブルとは、端末が基地局を捕捉できるよう、基地局から定期的に送信される信号である。具体的には、図2に示すように、プリアンブルの第6および第7OFDMシンボルが用いられ、OSIの値が変調の位相に対応している。
端末は、F‐OSICHを通じて、複数のセクタからのOSIを受信している。しかし、ある端末からの送信信号は、その端末から遠いセクタほど、無線区間における伝搬減衰が大きくなるため、干渉電力への寄与が小さくなる。
そこで、端末は、伝搬減衰がある閾値より小さい近隣セクタ群を、OSIMonitorSetとして予め定めておき、これに属するセクタからのOSIのみを監視する。
図1においては、基地局装置101が端末装置104のRLSSである。また、基地局装置102が端末装置104のOSIMonitorSetの一つとなっているものとする。
図5は、基地局装置101および102の構成図であり、いずれも、アンテナ501、RF処理部502、通信処理部503、ネットワークインタフェース504およびMPU505からなる。
図6は、端末装置104の構成図であり、アンテナ601、RF処理部602、通信処理部603、アプリケーションインタフェース604およびMPU605からなる。
図7は、本発明の第1の実施例における通信手順を示したシーケンス図である。
基地局装置102は、定期的にOSIを決定し(手順701)、プリアンブルにより端末に通知する(手順702)。
ここで、手順701を、図8を用いてより詳細に説明する。基地局装置102は、RF処理部502において、熱雑音電力および端末装置からの干渉電力を測定する。
熱雑音電力の測定は、一定周期で設けられた、端末から基地局への信号送信を禁止する期間に行う方法が、3GPP2 C30−20061030−073により提案されている。あるいは、熱雑音を運用中にRF処理部502で測定する代わりに、事前の試験にて測定した熱雑音の値をメモリに保管し、運用中はそれを参照する形にしても良い。
次いで、通信処理部503において、測定した熱雑音電力および干渉電力からIoTを計算し、その値を0、1、2の3段階で評価してOSIとする。OSIの値は、プリアンブルの第6、第7OFDMシンボルの位相に変換され、その位相がRF処理部502の変調処理部に設定される。
端末装置104では、RLSSおよびOSIMonitorSetに含まれる各セクタから、プリアンブルを受信すると、上りデータ送信用のチャネルであるR−ODCH(Reverse OFDM Data Channel)のT2Pゲインを更新する(手順703)。
ここで、手順703を、図9を用いてより詳細に説明する。端末装置104は、RF処理部602において、RLSSおよびOSIMonitorSetに含まれる各セクタから受信したF−ACQCH(Forward Acquisition Channel)の受信電力を測定する。ここで、F−ACQCHは、図2に示すプリアンブルの第5OFDMシンボルに含まれる。一方で、端末装置104は、RF処理部602および通信処理部603において、OSIMonitorSetに含まれる各セクタから受信したプリアンブルから、OSIを取得する。
通信処理部603では、上記により得られたF−ACQCHの受信電力、OSIおよび現在の送信電力を用いて、T2Pゲインを算出する。得られたT2Pゲインは、RF処理部のパワーアンプ(PA)部に設定される。
ここで、T2Pゲインの算出について、図3および図4を用いて説明する。図3および図4は、端末において、受信したOSIからT2Pゲインを決定する処理を説明するためのフロー図である。
端末は、まず、現在のT2PゲインRDCHGainから、以下の計算式により変数aを計算する(手順301)。
a=(min(RDCHGain,RDCHGainMax)−RDCHGainMin)/(RDCHGainMax−RDCHGainMin)
ここで、RDCHGainMax,RDCHGainMinは、RDCHGainが取り得る最大値、最小値であり、いずれも予め定められた値である。aは0から1までの値をとり、RDCHGainが大きくなるに従って大きくなる。
次に、端末は、OSIMonitorSetに属するあるセクタ(以下、セクタiとする)におけるOSIを検出し、OSI=0またはOSI=1であれば、セクタiの伝搬減衰とRLSSの伝搬減衰との比ChanDiff_iを求める(手順302)。
ここで、伝搬減衰は、対象となるセクタから受信したF−ACQCHの受信電力と送信電力の比として求められる。ChanDiff_iが大きいほど、セクタiの伝搬減衰が大きくなり、端末がセクタiに及ぼす影響が小さくなる。
次に、求めたChanDiff_iから、以下の計算式により変数bを計算する(手順303)。
b=(min(ChanDiff_i,ChanDiffMax)−ChanDiffMin)/(ChanDiffMax−ChanDiffMin))
ここで、ChanDiffMax,ChanDiffMinは、ChanDiff_iが取り得る最大値、最小値であり、いずれも予め定められた値である。bは0から1までの値をとり、ChanDiffが大きくなるに従って大きくなる。なお、OSI=2であれば、上記のChanDiff_iおよびbの計算は不要である。
次に、端末は、電力の増減の確率であるDecisionThreshold_iを求める。OSI=0であれば、DecisionThreshold_iは以下の計算式を用いて計算される(手順304)。
DecisionThreshold_i=max(UpDecisionThresholdMin,(1−a)*b)
ここで、UpDecisionThresholdMinは、OSI=0のときのDecisionThreshold_iの最小値であり、予め定められた値である。このとき、DecisionThreshold_iは、0から1までの値をとり、現在の端末の送信電力が大きくなるに従って小さくなり、またセル境界に近づくに従って小さくなる性質を有する。
OSI=1であれば、DecisionThreshold_iは以下の計算式を用いて計算される(手順305)。
DecisionThreshold_i=max(DnDecisionThresholdMin,a*(1−b))
ここで、DnDecisionThresholdMinは、OSI=1のときのDecisionThreshold_iの最小値であり、予め定められた値である。このとき、DecisionThreshold_iは、0から1までの値をとり、現在の端末の送信電力が大きくなるに従って大きくなり、またセル境界に近づくに従って大きくなる性質を有する。
OSI=2であれば、DecisionThreshold_i=1とする(手順306)。
次に、セクタiにおける電力増減の判定値であるDecision_iを求める。具体的には、OSI=0であれば、Decision_iをUpDecisionValueとDecisionThreshold_iの積とし(手順307)、OSI=1またはOSI=2であれば、Decision_iを−DnDecisionValueとDecisionThreshold_iの積とする(手順308)。
ここで、UpDecisionValue、DnDecisionValueは予め定められた値であり、それぞれT2Pゲインの増加、減少を要求することを意味する。これにDecisionThreshold_iを乗ずることにより、現在の端末の送信電力ならびに近隣セクタへの影響を反映した、セクタiにおける電力の増減の要求の強さを表すことができる。
端末は、OSIMonitorSetに属する全てのセクタについてのDecision_iを求めると、それらをChanDiff_iで重み付けして平均を取る(手順401)。
この値をDwとするとき、端末は、Dwの値に応じて、T2Pゲインの増減量を求める。端末は、Dwが正の値をとる場合には、RDCHGainUpとDwの積で求められる量だけT2Pゲインを増加させ(手順402)、Dwが負の値をとる場合には、RDCHGainDnとDwの積で求められる量だけT2Pゲインを減少させる(手順403)。
ここで、RDCHGainUpおよびRDCHGainDnはそれぞれ予め定められたT2Pゲインの増減量の基準値である。これにDwを乗ずることにより、OSIMonitorSetに属するセクタ全体としての電力増減の要求の強さに応じて、電力の増減量を調整することが可能になる。
端末は、決定したT2Pゲインや、制御チャネルを送信するためのCDMA信号のパイロット電力などに基づいて、OFDMサブキャリアの送信電力を決定する。
本発明では、上述のように、近隣セクタの干渉電力の強度に応じて、電力の増減の容易さを計算し、その容易さに比例する判定値を設定し、判定値の加重平均を求めている。そして、T2Pゲインの増減幅が判定値の加重平均に比例する関係となる。このため、電力の増減の方針を確率に基づいて行う場合では達成し得ない送信電力を上げてよい状況において確実に電力を上げるという効果、および、端末の送信電力がある水準の値に収束した状態での電力変動を抑制するという効果、が得られる。
端末装置104は、R−ODCHを使用する上りトラフィックが発生すると、R−REQCH(Reverse Request Channel)を用いて、上記トラフィックのための周波数・時間リソースの割り当てをRLSSの基地局装置101に要求する(手順704)。
R−REQCHは、端末の送信データのバッファ量などの情報を含んでいる。なお、R−REQCHは制御信号を送信するチャネルであるため、その送信電力は、手順703にて決定した値ではなく、別途基地局により決定された値が用いられる。
端末からR−REQCHを受信した基地局装置101は、端末装置104に対して割り当てる周波数・時間リソースを決定し、これをもとに、リソース割り当て情報メッセージRLAM(Reverse Link Assignment Message)を作成する。
RLAMは、端末が上り回線で使用するサブキャリア情報やパケットフォーマット情報を基地局から端末に通知するメッセージであり、F−SCCH(Forward Shared Control Channel)を用いて基地局装置101から端末装置104に送信される(手順705)。
端末装置104では、手順703にて設定された送信T2Pゲインに従って送信電力が設定され、RLAMで通知されたリソースを用いて基地局装置101に上記上りトラフィックのパケットを送信する(手順706)。
本実施例1の効果を、シミュレーションによる実験結果により示す。シミュレーションでは、図14に示す条件の下で、非特許文献3に記載の方式、および本発明の方式の2種類の上り送信電力制御を適用し、R−ODCHを用いる上りトラフィックのパケットをランダムに送信した。
図15は、ある端末におけるT2Pゲインの変動を示したグラフである。これによれば、本発明の方式は、非特許文献3の方式と比較して、送信電力の変動が抑制されている。また、1000フレーム目から6000フレーム目までの平均送信電力は、非特許文献3の方式では2.709dB、本発明の方式では2.648dBと、両者でほぼ同じ値であるが、同じ区間の分散(真値)は、非特許文献3の方式では0.12720であるのに対し、本発明の方式では0.0469と、大幅に小さな値となっている。このことからも、本発明方式が送信電力の変動を抑制する効果を有することが示されている。
上述のように、本実施例1では、端末が、OSIMonitorSetの全てのセクタについて、電力の増減の容易さを計算し、送信電力を決定しているため、近隣セクタの干渉状況に適した電力での上りデータ送信が可能になるという作用効果が生じている。
本発明を適用した第2の実施例について、図10から図13を用いて説明する。
第2の実施例は、第1の実施例と比較して、基地局装置101、基地局装置102および端末装置104の装置構成は同じであるが、内部で動作するプログラムが異なっている。
図10は、本発明の第2の実施例における通信手順を示したシーケンス図である。
基地局装置102は、定期的にOSIを決定し(手順1001)、プリアンブルにより端末に通知する(手順1002)。ここで、手順1001の詳細は、第1の実施例における手順701と同一である。
端末装置104では、RLSSおよびOSIMonitorSetに含まれる各セクタから、プリアンブルを受信すると、T2Pゲインの基準値を更新し(手順1003)、R−ODCHによりRLSSの基地局装置101に通知する(手順1004)。
ここで、手順1003を、図11を用いてより詳細に説明する。端末装置104は、RF処理部602において、RLSSおよびOSIMonitorSetに含まれる各セクタから受信したF−ACQCHの受信電力を測定する。一方で、端末装置104は、RF処理部602および通信処理部603において、OSIMonitorSetに含まれる各セクタから受信したプリアンブルから、OSIを取得する。
通信処理部603では、上記により得られたF−ACQCHの受信電力、OSIおよび現在の送信電力を用いて、図3および図4に示した手順に従い、T2Pゲインの基準値を算出する。得られたT2Pゲインの基準値は、データパケットのMACヘッダに設定される。
基地局装置101は、手順1004にてT2Pゲインの基準値が通知されると、その内部に保持されている基準値を、通知された値に更新する(手順1005)。
ここで、手順1005について、図12を用いてより詳細に説明する。基地局装置101は、手順1004にて受信したR−ODCHを、RF処理部502にて復調した後、通信処理部503にて復号処理を行い、MACヘッダに含まれるT2Pゲインの基準値を取り出す。得られた基準値は、通信処理部内のメモリに格納される。
端末装置104は、R−ODCHを使用する上りトラフィックが発生すると、R−REQCHを用いて、上記トラフィックのための周波数・時間リソースの割り当てをRLSSの基地局装置101に要求する(手順1006)。
基地局装置101は、リソース割り当て、および所要CIRを表すpCoT(pilot Carrier over Thermal information)の決定を行い(手順1007)、その結果をRLAMを用いて端末装置104に通知する(手順1008)。
ここで、手順1007を、図12を用いてより詳細に説明する。基地局装置101は、手順1006にて受信したR−REQCHを、RF処理部502にて復調した後、通信処理部503にて復号処理を行い、端末が要求するリソース量を取り出す。
次いで、基地局装置101は、得られたリソース要求量と、手順1005にて保持していたT2Pゲインの基準値を用いて、リソースの割り当ておよびスケジューリングを行うとともに、pCoTを算出する。
端末装置104は、手順1008にて基地局からpCoTを通知されると、送信T2Pゲインを設定し(手順1009)、基地局に上記上りトラフィックのパケットを送信する(手順1010)。
ここで、手順1009を、図13を用いてより詳細に説明する。端末装置104は、手順1008にて受信したRLAM、F−IOTCHおよびF−PQICHに対し、それぞれRF処理部502にて復調した後、通信処理部503にて復号処理を行い、pCoTおよびその他必要なパラメータを取り出す。
次いで、通信処理部503にて、得られたパラメータを用いて、送信T2Pゲインを計算し、その値をRF処理部502のPAに設定する。
(上述のように、本実施例2では、端末が、OSIMonitorSetの全てのセクタについて、電力の増減の容易さを計算し、送信電力の基準値を基地局に通知する。そして、基地局が、端末に適用すべき送信電力を決定し、通知している。基地局では、端末から通知された送信電力の基準値を、端末の送信電力の決定に加え、送信レートの決定にも使用する。本実施例2を用いることにより、送信電力と送信レートの両方について、近隣セクタの干渉状況に適した上りデータ送信が可能になるという作用効果が生じている。
本発明によれば、特にOFDMAをベースとするセルラ通信において、上り回線の送信電力制御を最適化して、通信品質の劣化を防止することができる。
OFDMセルラシステムの構成図。 プリアンブルのフォーマット。 本発明における端末のT2Pゲイン決定処理の前半部分を示すフロー図。 本発明における端末のT2Pゲイン決定処理の後半部分を示すフロー図。 基地局装置のブロック図。 端末装置のブロック図。 第1の実施例における各装置間の通信手順を示すシーケンス図。 第1の実施例および第2の実施例におけるRLSSでないセクタの基地局装置の内部の信号の流れを示すブロック図。 第1の実施例における端末装置の内部の信号の流れを示すブロック図。 第2の実施例における各装置間の通信手順を示すシーケンス図。 第2の実施例におけるRLSSの基地局装置の内部の信号の流れを示すブロック図。 第2の実施例における端末装置の、T2Pゲイン基準値決定のときの内部の信号の流れを示すブロック図。 第2の実施例における端末装置の、送信T2Pゲイン決定のときの内部の信号の流れを示すブロック図。 シミュレーションの条件。 ある端末におけるT2Pゲインの変動を示したグラフ。
符号の説明
101…RLSSの基地局装置
102…OSIMonitorSetに属するセクタの基地局装置
103…ネットワーク
104…端末装置
301…変数aを計算するステップ。
302…伝搬減衰比ChanDiff_iを計算するステップ。
303…変数bを計算するステップ。
304…OSI=0のときにDecisionThreshold_iを求めるステップ。
305…OSI=1のときにDecisionThreshold_iを求めるステップ。
306…OSI=2のときにDecisionThreshold_iを求めるステップ。
307…OSI=0のときにDecision_iを求めるステップ。
308…OSI=1またはOSI=2のときにDecision_iを求めるステップ。
401…Dwを計算するステップ。
402…T2Pゲインを増加させるステップ。
403…T2Pゲインを減少させるステップ。
501…基地局のアンテナ。
502…基地局のRF処理部。
503…基地局の通信処理部。
504…基地局のネットワークインタフェース。
505…基地局のMPU。
601…端末のアンテナ。
602…端末のRF処理部。
603…端末の通信処理部。
604…端末のネットワークインタフェース。
605…端末のMPU。
701…OSIMonitorSetに属する基地局がOSIを決定するステップ。
702…OSIMonitorSetに属する基地局が端末にOSIを通知するステップ。
703…端末が送信T2Pゲインを更新するステップ。
704…端末が上りデータ送信のための周波数・時間リソースをRLSSの基地局に要求するステップ。
705…RLSSの基地局が上りデータ送信のための周波数・時間リソースの割当結果をを端末に通知するステップ。
706…端末がRLSSの基地局にデータを送信するステップ。
1001…OSIMonitorSetに属する基地局がOSIを決定するステップ。
1002…OSIMonitorSetに属する基地局が端末にOSIを通知するステップ。
1003…端末がT2Pゲインの基準値を更新するステップ。
1004…端末がT2Pゲインの基準値をRLSSの基地局に通知するステップ。
1005…RLSSの基地局がT2Pゲインの基準値を更新するステップ。
1006…端末が上りデータ送信のための周波数・時間リソースをRLSSの基地局に要求するステップ。
1007…RLSSの基地局がpCoTを決定するステップ。
1008…RLSSの基地局が上りデータ送信のための周波数・時間リソースの割当結果をを端末に通知するステップ。
1009…端末が送信T2Pゲインを決定するステップ。
1010…端末がRLSSの基地局にデータを送信するステップ。

Claims (9)

  1. 無線通信システムであって、
    複数の基地局と複数の端末とを備え、
    上記基地局は、受信した干渉電力の強度を上記端末に通知する手段を有し、
    上記端末は、データ送信先でない基地局との間の伝搬減衰を測定する手段と、
    上記基地局のうちデータ送信先でない基地局から通知される干渉電力の強度(OSI)を参照して、上記基地局のうちデータ送信先である基地局にデータを送信するための送信電力を制御する手段と、を有し、
    上記送信電力を制御する手段は、
    上記基地局のうちデータ送信先でない基地局に属するセクタについてセクタiにおける電力増減の判定値(Decision_i)を求め、
    干渉電力の強度が小さい場合には、Decision_iを、予め定められた値であるUpDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力し、
    干渉電力の強度が大きい場合には、Decision_iを、予め定められた値である−DnDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力し
    上記複数Decision_iを伝搬減衰で重み付けして平均値Dwを算出し、
    Dwが正の値の場合、送信電力を増加させ、Dwが負の値をとる場合、送信電力を減少させること
    を特徴とする無線通信システム。
  2. OFDMセルラ無線通信システムであることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
  3. 上記端末は、Decision_iに基づいて、1回の送信電力の調整における電力の増減量を出力する手段を有することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
  4. 上記端末は、
    上記Dwが正の値の場合には、送信電力の増加量を、予め定められた値であるRDCHGainUpとDwの積として算出される値とし、
    Dwが負の値の場合には、送信電力の減少量を、予め定められた値であるRDCHGainDnとDwの積として算出される値とすることを特徴とする請求項1記載の無線通信
    システム。
  5. データ送信先でない基地局との間の伝搬減衰を測定し、
    データ送信先でない基地局から通知される干渉電力の強度(OSI)を参照し、
    データ送信先である基地局にデータを送信するための送信電力を、
    データ送信先でない基地局に属するセクタにおける電力増減の判定値(Decision_i)について、
    干渉電力の強度が小さい場合には、Decision_iを、予め定められた値であるUpDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力し、 干渉電力の強度が大きい場合には、Decision_iを、予め定められた値である−DnDecisionValueと電力増減の確率であるDecisionThreshold_iの積として出力し、
    上記複数Decision_iを伝搬減衰で重み付けして平均値Dwを算出し、
    Dwが正の値の場合、送信電力を増加させ、Dwが負の値をとる場合、送信電力を減少させる送信電力制御を行うこと、
    を特徴とする端末。
  6. OFDMセルラ無線通信を行うことを特徴とする請求項5記載の端末。
  7. Decision_iに基づいて、1回の送信電力の調整における電力の増減量を出力する手段を有することを特徴とする請求項6記載の端末。
  8. 上記Dwが正の値の場合には、送信電力の増加量を、予め定められた値であるRDCHGainUpとDwの積として算出される値とし、
    Dwが負の値の場合には、送信電力の減少量を、予め定められた値であるRDCHGainDnとDwの積として算出される値とすることを特徴とする請求項5記載の端末。
  9. 端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信方法であって、
    前記端末のうち第一の端末から前記第一の端末のデータ送信先でない前記基地局である第一の基地局が受信する干渉電力の強度を測定し、
    第一の端末と、前記第一の基地局との間の伝搬路減衰を測定し、
    前記干渉電力の強度と、前記伝搬路減衰と、前記第一の端末がデータ送信先である前記基地局である第二の基地局にデータを送信する送信電力とに基づいて、前記送信電力の増減を制御する、ことを特徴とする無線通信方法。
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