JP4833992B2 - 実質の手術のための時間分解走査パターン - Google Patents

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Description

本発明は、広く、眼の屈折矯正レーザ手術用のスポット・パターンを作るためのシステム及び方法に関するものである。より詳細には、本発明は、先のレーザ焦点におけるレーザ誘起光学的破壊(LIOB)からの、後続のレーザ焦点でのLIOBへの残留効果を最小限に抑えるためのシステム及び方法に関するものである。本発明は、実質(透明物質)内の隣り合う焦点でのLIOBが、所定の空間的及び時間的な離隔に従って行われるシステム及び方法に特に有用であるが、それに限定されない。
角膜の実質組織を切除する眼のレーザ外科手術中に、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)として知られる効果によって切除が行われる。通常、実質内のLIOBは、10kHzの大きさのパルス繰返し数を有することのできるパルス・レーザ・ビームによって実施される。詳細には、連続した個々のLIOB効果が、累積する。しかし、個々のレーザ・パルスは、それぞれ別個と考えることができる。
単独のレーザ・パルスでは、LIOBの間に、切除される組織がいくつかの異なる現象に曝されることが発生する。1つには、切除される組織周辺の組織が、断裂(機械的損傷)及び焼け(熱的損傷)などの不利な副作用を受ける。しかし、これらの特定の不利な副作用は、パルス・エネルギー密度を最小限に抑えると回避できることが知られている。他方、パルス・エネルギー密度は、LIOBを生じさせるために、組織の閾値を上回らなければならない。これらの相反する見地を念頭に置いて、以下の特徴を有するレーザ・パルスが、周辺組織への不利な機械的又は熱的副作用を回避しながら、実質組織内にLIOBを生じさせることができることが確認されてきた。
レーザ・パルス
・ パルス幅(持続時間):1〜1000フェムト秒
・ エネルギー密度:1〜10J/cm
・ フォーカル・スポット・サイズ:直径1〜10μm
・ パルス繰返し数:数(multi)KHz
上記の副作用が、周辺組織には不利だが回避可能であるにもかかわらず、LIOBはなお、少なくとも3つのその他の異なる識別可能な方法で、実質組織に悪影響を与える。それらは、1)プラズマの形成、2)衝撃波の発生、及び3)キャビテーション気泡である。これら3つの現象を、図面の図1に概略的に示す。
ここで図面の図1を参照すると、単一のレーザ・パルスによって生じるLIOBの結果が、空間的な関係で示される。但し、これらの結果がまた、時間的な関係も有することを理解されたい。まず、レーザ・パルスのフォーカル・スポット内に位置する組織から、マイクロ・プラズマが形成される。具体的には、このプラズマは、およそ1〜10μmの範囲の直径「d」(d=1〜10μm)を有する組織体積体12内で、角膜組織10が蒸発した結果として生じる。このプラズマの形成に続き、組織10全体に放射される衝撃波が生じる。通常、衝撃波は、体積体12の中心から、約20μmの半径「r」(r≒20μm)全体に広がる。しかし、衝撃波は、数ナノ秒内に減衰する。しかし、その持続時間が比較的短いとはいえ、LIOBの閾値を大幅には上回らないパルス・エネルギーを用いることによって、衝撃波の影響は可能な限り小さく抑えられるべきである。
おそらく、比較的低いパルス・エネルギーのLIOBによる最も顕著な悪影響は、キャビテーション気泡14が生み出されることである。言い換えれば、比較的低いパルス・エネルギーでは、通常、周辺組織への機械的又は熱的損傷は存在しない。その代わり、上記で述べたパラメータを有するレーザ・パルスは、キャビテーション気泡14(図1参照)を即座にもたらすLIOBを誘起する。気泡14は、直径「d」を有し、それは一般に、組織体積体12の直径「d」の約2倍よりも大きくなる(d≧2d)ことが分かるであろう。キャビテーション気泡14は、図2に概略的に示すように次第に衰退するが、それは考慮されるべき時間依存性を有する(図2は例に過ぎないことに注意)。特に図2は、キャビテーション気泡14の時間的な影響を、2つの衰退期間を通して存続するものと考え得ることを表す。具体的には、気泡14の衰退は、第1の崩壊期間の時間「τ」の間に、毎秒約10μm(10μm/秒)の第1の緩和速度を経験する。「τ」の間、気泡14は、「d」よりも小さいが「d」よりも大きい直径「d」へと衰退する(d<d>d、ここでd>d)。通常、この期間「τ」は約1〜1000μ秒の範囲であり、パルス・エネルギー密度を含むいくつかの因子に依存する。その後、第2の衰退期間中に、気泡14は、毎分ほぼ1/2μm(0.5μm/分)の第2の緩和速度で、約15〜30分のうちに直径「d」から完全に消滅する。
上記の観点から、本発明の目的は、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)を実質的に透明の物質(即ち眼の角膜)内で実施するためのシステム及び方法であって、所定の期間「τ」が、スポット・パターンの隣接するレーザ・フォーカル・スポット同士の間に置かれるシステム及び方法の提供である。本発明の別の目的は、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)を実質的に透明の物質(即ち眼の角膜)内で実施するためのシステム及び方法であって、連続的なフォーカル・スポットのパターンが、互いに空間的及び時間的に離隔されるシステム及び方法の提供である。本発明のさらに別の目的は、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)を実質的に透明の物質(即ち眼の角膜)内で実施するためのシステム及び方法であって、LIOBが、先のLIOBの残留する影響が効果的に回避される位置に誘起されるシステム及び方法の提供である。本発明のさらに別の目的は、使用が容易であり、製造が相対的に単純であり、比較的コスト効果の高い、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)を実質的に透明の物質(即ち眼の角膜)内で実施するためのシステム及び方法を提供することである。
本発明によれば、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)を、眼の角膜などの実質的に透明の物質内で実施するためのシステム及び方法が提供される。具体的には、本方法は、物質内の一連のレーザ・フォーカル・スポットのパターンを計算する、第1のステップを有する。このパターンを用いて、直径「d」を有する物質の体積体内でLIOBをパターンの各フォーカル・スポットに生じさせる外科的処置が実行される。本質的に、各フォーカル・スポットでのLIOBは、結果として、最大直径「d」まで拡張するキャビテーション気泡を生じさせる。しかし、この過程で、一時的なキャビテーション気泡の直径「d」は、フォーカル・スポットの直径「d」の少なくとも2倍まで増大する。次いで、これは、減衰時間「τ」内に、フォーカル・スポットの体積体に向かって再びつぶれ、実質的に定常の直径「d」となる。ここで、d≦d≦dである。
上記のことを考慮して、LIOBのパターンが決定されると、第1のフォーカル・スポットにLIOBを誘起することによって、実際の処理が始まる。次いでこの処理は、期間「τ」内に複数の中間フォーカル・スポットにLIOBを誘起することによって続行される。各中間スポットが、期間「τ」内に作られるその他すべての中間フォーカル・スポットから「d」よりも大きく離れた距離に配置されることが重要である。期間「τ」の最後に、パターン内の第2のフォーカル・スポットを、第1のフォーカル・スポットから距離「d」離れて作ることができる。次いで、第2のフォーカル・スポットを第1のフォーカル・スポットとして、このプロセスが続行される。次いで別の複数の中間フォーカル・スポットが、別の期間「τ」内に形成される。各フォーカル・スポットがパターン内に形成される際、それが、直前の期間「τ」内に発生された他のすべてのフォーカル・スポットから少なくとも距離「d」離れていなければならないことが重要である。
本発明で意図されるところでは、距離「d」は、約1〜10μmの範囲であり、距離「d」は、2dとほぼ等しい(d≒2d)。さらに、期間「τ」は通常、約2マイクロ秒未満である(τ≒2μs)。また、本発明で意図されるところでは、LIOBは、1〜1000fsの範囲の持続時間、1〜10J/cmの範囲のエネルギー密度、及び約1〜10μmのフォーカル・スポット直径を有する、レーザ・パルスによって誘起される。
本発明の新規な特徴および発明自体は、その構造及びその動作の両方について、同様の符号が同様の部分を示す添付の図面および以下の説明を併せて読むことにより最もよく理解されるであろう。
図3を参照すると、本発明の環境が示されている。そこでは、レーザ・ビーム18の焦点を、眼の実質などの透明物質20に合わせるためにレーザ・システム16が使用される。図示の通り、レーザ・ビーム18の焦点は、透明物質20内の一連のフォーカル・スポット22に合わせられる。そのフォーカル・スポット22a〜cは単なる例示に過ぎない。さらに、同様に図3に示すとおり、一連のフォーカル・スポット22は、物質20内にパターン24を作るように動かされる。本発明の目的のために、パターン24は、直線、曲線、又は螺旋などの関連業界でよく知られたいかなる形又は模様とすることもできる。
パターン24内のフォーカル・スポット22は、レーザ・ビーム18によって作られ、レーザ・ビーム18は、マルチKHz領域(即ちおよそ10KHz又はそれ以上)のパルス繰返し数を有するレーザ・パルスの列を含むことが好ましい。さらに、各列の各パルスは、好ましくは、以下の特徴を有する、すなわち、1)1〜1000フェムト秒の範囲のパルス幅(持続時間)、1〜10J/cmのエネルギー密度、及び直径1〜10μmの範囲のフォーカル・スポット・サイズ。上記のとおり、これらのパラメータを有するレーザ・パルスは、直径「d」を有する物質20の組織体積体12内に、LIOBを誘起する。このLIOBに続き、直径「d」を有するキャビテーション気泡14(図1参照)が発生する。ここで、「d」は「d」のサイズの2倍よりも大きい(d≧2d)。上記のとおり、本発明によって想定される処理中に、各キャビテーション気泡14の一時的な影響が、期間「τ」の間続く。期間「τ」は、持続時間が数マイクロ秒となり得る。この期間「τ」の間、気泡14は、つぶれて実質的に定常の直径「d」(d≦d≦d)となる。
本発明の動作は、おそらく図4を参照すると最もよく理解されるであろう。本発明による処理は、物質20内の所定の位置26で時点「τ」(図5参照)から開始されることが分かる。具体的には、処理は、位置26にフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するために、レーザ・ビーム18の焦点を定めることによって始まる。次いで、分割時間「Δτ」(τ+Δτ=τ)の間に、レーザ・ビーム18は、動線28[X(τ)]上を物質20内の位置30まで距離「X」動かされる。ここでもまた、レーザ・ビーム18は、位置30に別のフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するために焦点が合わせられる。これは、時点「τ」(図5参照)に行われる。距離「X」が、位置26に発生したキャビテーション気泡14の直径「d」よりも大きいことが、本発明の重要な観点である。続いて、別の分割時間「Δτ」(τ+2Δτ=τ+Δτ=τ)の間に、レーザ・ビーム18は、動線32[X2(τ)]上を、物質20内の位置34まで距離「X」動かされる。時点「τ」にて、レーザ・ビーム18は、別のフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するために、位置34に焦点が合わせられる。同様に、図4の動線36[X(τ)]は、次のLIOBが位置38で生じることを示し、最後に、動線40[X(τ)]は、期間「τ」の最後に、LIOBが位置42にて生じることを示す。
ここで議論した一連のフォーカル・スポット22では、各距離「X」、「X」、「X」、及び「X」は、必ずしも互いに等しくなくてもよいが、それぞれ距離「d」よりも大きい。さらに、位置30、34、38、及び42は、直前の期間「τ」内に作られた以前のすべてのフォーカル・スポット22から、距離「d」よりも大きく離隔されることに留意されたい。最後に、時点τで位置42でのLIOBが、位置26から距離「d」以内であることに留意されたい。本発明によって意図されるように、位置26及び位置42のそれぞれでのLIOBの誘起が期間「τ」だけ離隔されるので、位置26と位置42の並置が可能である。この例では、5つの異なる位置について議論した。しかし、本発明は、期間「τ」内に、より多くの、又はより少ないそのような位置でのLIOBを想定していることを理解されたい。
概括的に、図4を参照することによって、本発明のいくつかの重要な観点が理解されるであろう。まず、各フォーカル・スポット22は、各期間「τ」内に作られたその他すべてのフォーカル・スポット22から、距離「d」よりも大きく離隔される。第1のフォーカル・スポット22が作られると、期間「τ」の終了後に、第2のフォーカル・スポット22を第1のフォーカル・スポット22からの距離「d」内に配置することができる。最終的に、「n」回の期間「τ」を用いて、フォーカル・スポット22のパターン24を作ことができる。
図5及び図6を相互参照すると、LIOBフォーカル・スポットが螺旋パターンを形成する本方法の応用例が示される。具体的には、処理は、時点「τ」(図5参照)に、物質20’内の所定の位置44にて開始される。具体的には、処理は、位置44にフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するように、レーザ・ビーム18(図3参照)の焦点を合わせることによって始まる。次いで、分割時間「Δτ」(τ+Δτ=τ)の間に、レーザ・ビーム18は、軸線46の周りを矢印47の方向に物質20’内の位置48まで回転される。ここでもまた、レーザ・ビーム18の焦点は、位置48にて別のフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するように合わせられる。これは、時点「τ」(図5参照)に行われる。位置44と位置48との間の距離が、位置44に発生されたキャビテーション気泡14の直径「d」よりも大きいことが、本発明の重要な観点である。続いて、別の分割時間「Δτ」(τ+2Δτ=τ+Δτ=τ)の間に、レーザ・ビーム18は、物質20’内の位置50まで回転される。時点「τ」では、レーザ・ビーム18の焦点は、別のフォーカル・スポット22のLIOBを誘起するために、位置50に合わせられる。このプロセスは、位置52及び位置54での連続的なLIOB誘起を続ける。この一連のフォーカル・スポット22では、位置44、48、50、52、及び54間の距離は、必ずしも互いに等しくなくてもよいが、それぞれ距離「d」よりも大きい。さらに、位置44、48、50、52、及び54は、直前の期間「τ」の間に作られた以前のすべてのフォーカル・スポット22の位置から、距離「d」よりも大きく離隔される。時点「τ」又はそれ以降に、図示のとおり位置44から距離「d」以内にある位置56に、LIOBを誘起することができる。本発明によって意図されるように、位置44及び位置56のそれぞれでのLIOBの誘起は、期間「τ」だけ離隔されるので、位置44と位置56との並置が可能である。次いでこのプロセスは、螺旋パターン内の各位置にてLIOBが誘起されるまで続けることができる。
本明細書で詳細に図示及び記載したような、実質手術のための特定の時間分解走査パターンは、完全に上記本明細書内で述べた目的を達成し利点を提供することができるが、これは本発明の現在望ましい実施例の単なる例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲内に示す以外に、本明細書に示す構造又は設計の詳細を限定することは意図されない。
切除される組織、衝撃波、及びLIOBによって生じるキャビテーション気泡の間の空間的な関係を示す図。 典型的なキャビテーション気泡の時間的な衰退を示すグラフ。 本発明で使用される手術用レーザ・ビームを示す概略図。 本発明による、レーザ・ビーム・フォーカル・スポットの空間的及び時間的な離隔のためのパターン順序を示す図。 図4に示す連続パターンの実施のためのタイム・ラインを示す図。 フォーカル・スポットの螺旋パターンを示す概略図。

Claims (3)

  1. レーザ誘起光学的破壊を実質的に透明の物質内で実施する装置において、該装置が、
    レーザ・ビームを連続的なレーザ・フォーカル・スポットのパターンにより前記物質に送るレーザ手段であって、レーザ誘起光学的破壊を、直径「d」を有する物質の体積体内の各フォーカル・スポットに生じさせ、前記レーザ誘起光学的破壊の結果として、「d」よりも大きい最大直径「d」と減衰時間「τ」とを有するキャビテーション気泡を生じさせる、レーザ手段と、
    前記レーザ・ビームを、第1のフォーカル・スポットから始めて、1つのフォーカル・スポットから別のフォーカル・スポットへと前記パターンを通して動かすための光学的手段とを含み、
    各フォーカル・スポットが、時間「τ」内に既に誘起された各フォーカル・スポットから「d」よりも大きく離れた距離にあ
    第1のフォーカル・スポットでのレーザ誘起光学的破壊後に時間「τ」を経過した後は、第1のフォーカル・スポットの中心から「d 」よりも小さい距離「d」だけ離れた中心を有する、第1のフォーカル・スポットに並置された第2のフォーカル・スポットにレーザ誘起光学的破壊を起こすようになっている装置。
  2. 前記キャビテーション気泡が、時間「τ」の間に、つぶれて実質的に定常な直径「d」となり、ここでd≦d≦dであり、さらに、第1のフォーカル・スポットが開始時に誘起され、第2のフォーカル・スポットが、前記第1のフォーカル・スポットでのレーザ誘起光学的破壊後の時点「τ」にて誘起され、前記第2のフォーカル・スポットが、実質的に前記第1のフォーカル・スポットからの距離「d」にある、請求項1に記載された装置。
  3. 前記直径「d」が、1〜10μmの範囲であり、前記最大直径「d」が、2dとほぼ等しく、前記減衰時間「τ」が、約2マイクロ秒未満である、請求項1に記載された装置。
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