JP4833919B2 - 眼球運動計測によるゴルフ技量評価方法 - Google Patents
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Description
一方で、ゴルフにおいて眼球運動の特性が熟達度により異なることは、様々なデータにより示されている。近年の研究においては、プロゴルファーなどの熟練ゴルファーはストローク前半にはボールの右(右利きの場合)に視線を置き、ストロークの後半にはボールの左(同前)に視線を置いており、一方で中級者は、ボールに視線を置いていることが報告されている。以上のことはゴルフの技量(スイングの技量ではないことに注意)を判別、評価するに当たって、眼球運動に基づくパラメーターを使用することの妥当性が非常に高いことを示している。また、特開2004−321621号に開示されている「戸惑いの検出」からも分かるように、眼球運動測定の特性としては、生体情報の計測の中でもとりわけ被測定者への負担が少なく、実用性が高いうえ、パッティングなどにおいて重要である人間の内的状態(精神状態)の評価にもつながると考えられる。
そのために引き起こされる問題としては、
1.プレーヤー本人が自分の技量を見極めることが出来ない、
2.ゴルフ指導において、指導を受けるプレーヤーの技量を見極めることが出来ず、適切な指導を行えるとは限らない、
などが挙げられる。
一般に、「スキルには異なる要求をするいろいろなフェーズがあり、フェーズごとに分析することは重要である」とされる。パッティングストロークはクラブヘッドの動く方向が180度切り替わる点や、ボールがヒットされ移動する点で、すべてのデータが共通の意味を提示しているわけではない。これまでの研究ではパッティングを、グリーンを読み、足の位置を決め、ターゲットに対する方向を調節し、ボールや目標に対する頭部やクラブの位置をきめる一つ目のフェーズと、ストローク中の二つ目のフェーズに分類することが多い。一方で、ゴルフのショットにおけるスイング動作はテイクバック(take away)、ダウンスイング前半(forward swing)、ダウンスイング後半(acceleration)、フォロースルー前半(early follow through)、フォロースルー後半(late follow through)に分けられている。これまで行われてきたスイング分析では、多くはこの分類に基づいている。そこで、本発明では動作の特徴から以下の五つの時間フェーズに区分けした。
フェーズ 1:プレショット(ストローク始動前における約165msの間)
フェーズ 2:バックスイング(クラブヘッドが目標方向と逆方向に移動している間)
フェーズ 3:ダウンスイング(クラブヘッドが目標方向と同方向に移動し、かつボールに接触する寸前までの間)
フェーズ 4:インパクト(クラブヘッドがボールに接触する瞬間)
フェーズ 5:フォロースルー(インパクト後の約330msの間)
部位カテゴリー
視線位置に該当する各部位カテゴリーは以下のように分類した。ただし、フェーズ5に関しては、ボールがすでにヒットされ、移動してしまっているために再分類した。
フェーズ1〜4、
1)パッティングライン(ボールとカップを結んだライン)上、
2)ボール上、
3)クラブヘッド、
4)瞬きおよびその他分類できない部位。
フェーズ5
1)インパクト時(フェーズ4)において視線が配置されていた位置のまま停留、
2)転がっているボールを追従、
3)転がっているボールを追うために視線を動かしている途中、
4)クラブヘッド、
5)瞬き、及びその他分類できない部位。
頭部の安定の指標となる頭部移動距離、
始動直後及びインパクト直前を除くスイング乃至ストローク中における視線移動の範囲である視線移動距離、
スイング初期乃至ストローク初期におけるボールの左右方向に対する視線の配置割合、
視角1度以上の視線移動を伴う視線移動の発生頻度、
インパクト後において、視線がインパクト時と同じ位置に保たれる時間を示すインパクト後の視線停留時間、
の5個のパラメーターの中から選ばれる少なくとも1個または2個以上から成る。
輻輳角
輻輳角などの眼球運動については、例えば前記のデータプロセスユニット(システム1としてのナックイメージテクノロジー社製、EMR−dFactory)によりデータを算出することができる。輻輳角は左右の視線の交点における角度を示す。輻輳角に関して平均値を算出する。
頭部移動距離
ゴルフにおける頭部運動には、前後左右の位置的な変化のほか、回旋運動による変化が加わる。よって、それらすべての変化を統合するべく、顔の向きとボールの関係に着目し、「ボールに対する頭部運動」を定義する。ストローク動作中であるフェーズ2とフェーズ3について、ストロークの開始時点の視野カメラ上のボール位置をその試行における基準点とし、NTSC方式における1フレームごとのボール位置の変位をボールに対する頭部運動とし、そのフェーズにおける平均値を算出し分析を行う。ボール位置の変位の算出には、本発明におけるもう一つの所定システム(システム2)として、例えば2次元/3次元ビデオ動作解析システム(ディケイエイチ社製、Frame−DiasII)を用いることができる。
視線移動距離
視線移動距離も前記のデータプロセスユニット(ナックイメージテクノロジー社製、EMR−dFactory)によりデータを算出することができる。本発明における視線移動距離は、1フレームにおける視線の移動角度を示す。パッティングストローク中の視線移動には画面上の上下方向の変位はほとんど見られず、左右方向の変位が特徴として現れていたため、視線移動の分類を「左方向」と「右方向」に分類している。
視線配置割合
視線配置割合の算出に当たり、フレームバイフレーム分析を用いて視線配置データを分類することが望ましい。これは、頭部に固定された視野カメラによる外部映像上に、眼球運動測定データとしてのアイマークがスーパーインポーズされたビデオ映像データ(NTSC方式)から、5つの時間フェーズに従い時系列的に区分し、部位カテゴリーに従い空間的に分類するものである。つまり、ビデオ1フレームごとに視線位置を分類していく方法である。この分析方法は、非常に多くの時間を消費し効率の悪いものではあるが、実際にデータの詳細を確認しながらゴルファーの動きに対応できる点や、時系列上でデータを処理できる点で最も有効な方法だといえるからである。これら視線配置データを集計し、各視対象カテゴリーに対する視線配置の割合を算出する。
視線移動発生頻度
前述の視線移動距離が1度以上のフレーム数をカウントする。
視線停留時間
前述の視線配置割合に関して、フェーズ5において「インパクトの視線位置のまま」をカウントする。
手順1
フェーズ2及びフェーズ3の視線配置割合から各技量の要件に分類する。これにより、初心者要件に当てはまる試行は「初心者1」に分類する。これは、視線移動パターンが確立できていないことを意味し、最も熟達度が低いと考えられる。
手順2
次に視線移動距離の試行における平均値から再び各技量の要件に分類する。先ほど熟練者要件に分類された試行では、全技量について分類が行われるが、中級者要件に分類された試行では、熟練者要件に分類されることはなく、熟練者と同様な振る舞いを行っていた場合においても中級者要件に分類される。このルールは第5のパラメーターであるインパクト後の視線停留時間まで適用される。視線移動距離のパラメーターにおいて初心者要件に該当する試行は「初心者2」と分類する。この技量は、視線移動のパターンは確立しているものの安定していないことが示される。
手順3
試行における視線移動の頻度に関しても、前述したルールにより分類を行う。その結果、視線移動の頻度パラメーターにおける初心者要件は「初心者3」「初心者3」に関しても「初心者2」と同様に、視線の移動は安定していないため熟練度が低いと考えられるが、「初心者3」のほうが移動の範囲が狭まることから熟練度は高いと考えられる。
手順4
頭部移動距離の試行ごとの平均値に関しても、前述したルールにより分類を行う。頭部移動距離における初心者要件は「初心者4」とする。「初心者4」は、眼球運動の振る舞いは中級者や熟練者に近いため初心者としては熟練度が高いものの、身体運動に関して頭部の安定を達成できていないことから中級者に分類されず、初心者に該当すると推測される。また、初心者はここまでにすべて含まれており、これ以降は中級者以上の技量に関する分類となる。
手順5
インパクト後の視線停留時間パラメーターにおいては、中級者要件に該当する試行を「中級者1」に分類する。これは、ストロークに関する視覚情報を受容できていない中級者に見られる特徴であるため、中級者の中では熟練度が低いと考えられるためである。
手順6
インパクト後にインパクト時と同じ視線位置のまま停留する時間が熟練者要件に該当しない試行と、該当していても輻輳角が2.7°以上であった試行に関しては「中級者2」に分類される。逆説的には、これまでのすべてのパラメーターが熟練者要件に該当した試行のみが「熟練者」に分類されることになる。
これにより、眼球運動データのみでゴルファーの技量を7段階に判別することが可能となった。技量判別に係わるフローチャートを図9に示す。
図1は、本発明の方法に使用するキャップ型眼球運動測定装置11の着用状態を示しており、12は対象となるプレーヤーが着用しているキャップ本体、13、14はストローク中のプレーヤーの眼球運動を測定するアイカメラのセンサーレンズであり、キャップ本体左右から両眼の斜め下方へ伸びたアームの先端に設けられている近赤外光線照射部15から眼球に向けて発射された赤外LEDを光源とする赤外光線のミラー16、17における反射光線を受光するもので、キャップ本体後部に取り付けられた中継ボックス18にコードにより接続されている。キャップ本体12のヒサシ下には、視野カメラ19が取り付けられており、これらは、上記中継ボックス18を経てコントローラーにコードにより接続されている。
図2は、キャップ型の眼球運動測定装置11を頭部に着用した眼球運動測定の様子を示している。20はゴルフボール、21は3m程度のパッティングを行うためのマットであり、その先端部分には、通常のパッティングの目標になるカップ22が設けられている。本発明において、キャップ型の眼球運動測定装置11は、演算装置(PC)に接続して使用されるが、コード23は無線方式の場合には省略される。なお、この説明全体を通じて、プレーヤーは右利きとしているので、左利きのプレーヤーの場合には、説明と左右を入れ替えて理解することができる。
フェーズ 1:プレショット(ストローク始動前における約165msの間)、
フェーズ 2:バックスイング(クラブヘッドが目標方向と逆方向に移動している間)、
フェーズ 3:ダウンスイング(クラブヘッドが目標方向と同方向に移動し、かつボールに接触する寸前までの間)、
フェーズ 4:インパクト(クラブヘッドがボールに接触する瞬間)、
フェーズ 5:フォロースルー(インパクト後の約330msの間)、
である。
フェーズ1〜4は、1)パッティングライン(ボールとカップを結んだライン)上、2)ボール上、3)クラブヘッド、4)瞬きおよびその他分類できない部位である。図4において、Hはクラブのヘッド、OLはライン上でカップと反対方向、HPはヒットポイント、Bはボール中心、TBはボール目標側、TLはライン上目標方向を示す。
また、フェーズ5に関する図5において、フェーズ5では、ボールがすでにヒットされ、移動してしまっているので、1)インパクト時(フェーズ4)において視線が配置されていた位置のまま停留、2)転がっているボールを追従、3)転がっているボールを追うために視線を動かしている途中、4)クラブヘッド、5)瞬き、及びその他分類できない部位となる。SIはインパクト時と同じ視線位置、Fはフィニッシュ予定位置、Wはボールを追う途中、RBは転がっているボールを示す。
上記ストローク中のプレーヤーの眼球運動を、眼球運動測定装置11を用いて測定し、かつ、ストローク中のプレーヤーの視野映像を視野カメラ19により撮影するとともに、測定により得られたデータと視野映像のデータをスーパーインポーズし、上記スーパーインポーズされたデータを演算装置(PC)に出力した。
上記スーパーインポーズされたデータを、システム1を通じて記憶手段に保存し、保存されたデータから、システム2を通じて輻輳角、頭部移動距離、視線移動距離、視線停留時間、視線移動の発生頻度及びインパクト後の視線停留時間、の6個のパラメーターを算出し、算出された6個のパラメーターに関して、図9に示す手順に従い、表1に示す技量要件を衡量した。
その結果を表2、表3及び表4に示す。
判別にあたっては、試行ごとに前述の7つの技量に分類し、その試行が「初心者1」から「熟練者」までのいずれに該当するかを明らかにする。次に、「初心者1」を1点、「初心者2」を2点、「初心者3」を3点、「初心者4」を4点、「中級者1」を5点、「中級者2」を6点、「熟練者」を7点というように熟練度の低い方から順に得点を付け、10試行の平均値を算出し、その被験者の技量を決定する。これにより、同じような技量の比較に対しても、より詳細な判別が可能になる。10試行の平均値が1.0から5.0が初心者、5.1から6.0が中級者、6.1から7.0が熟練者に分類される。
12 キャップ本体
13、14 アイカメラのセンサーレンズ
15 近赤外光線照射部
16、17 ミラー
18 中継ボックス
19 視野カメラ
20 ゴルフボール
21 マット
22 カップ
23 コード
Claims (3)
- スイング乃至ストローク中の視線に基づいてプレーヤーの技量を評価する方法であって、スイング乃至ストローク中のプレーヤーの眼球運動を、眼球運動測定装置を用いて測定するとともに、測定により得られた眼球運動のデータを演算装置に出力し、
上記測定により得られたデータに基づいて左右の視線の交点における開き度合いを示す輻輳角から成るパラメーターを作成し、
上記輻輳角から成るパラメーターに関して技量評価条件を衡量し、当該プレーヤーの技量を評価することを特徴とする眼球運動計測によるゴルフ技量評価方法。
- スイング乃至ストローク中の視線に基づいてプレーヤーの技量を評価する方法であって、スイング乃至ストローク中のプレーヤーの眼球運動を、眼球運動測定装置を用いて測定するとともに、測定により得られた眼球運動のデータと視野映像のデータをスーパーインポーズし、上記スーパーインポーズされた眼球運動のデータを演算装置に出力し、
上記スーパーインポーズされたデータを、所定のシステムを通じて記憶手段に保存し、保存されたデータから、所定のシステムを通じて複数個の左右の視線の交点における開き度合いを示す輻輳角から成るパラメーターを算出し、算出された輻輳角から成るパラメーターに関して技量評価条件としての輻輳角が2.65度未満であるか2.65度以上であるかを衡量し、当該プレーヤーの技量を評価することを特徴とする眼球運動計測によるゴルフ技量評価方法。
- パラメーターは、輻輳角の他に、
頭部の安定の指標となる頭部移動距離、
始動直後及びインパクト直前を除くスイング乃至ストローク中における視線移動の範囲である視線移動距離、
スイング初期乃至ストローク初期におけるボールの左右方向に対する視線の配置割合、
視角1度以上の視線移動を伴う視線移動の発生頻度、
インパクト後において、視線がインパクト時と同じ位置に保たれる時間を示すインパクト後の視線停留時間、
の5個のパラメーターの中から選ばれる少なくとも1個または2個以上から成る
請求項2記載の眼球運動計測によるゴルフ技量評価方法。
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