以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の参考例1における光ピックアップの概略構成を示す図である。図1に示す光ピックアップは、3種類の光記録媒体に情報の記録、消去または再生をするものである。以下、この複数の光記録媒体は、透明基板厚さt1の第1の光記録媒体107(BD)、および透明基板厚さt2の第2の光記録媒体117(DVD)と、透明基板厚さt3の第3の光記録媒体127(CD)として説明する。なお、各光記録媒体の透明基板は厚さt1=0.1mm,t2=0.6mm,t3=1.2mmである。
また、光ピックアップは、光源として第1光源である第1の光記録媒体107に用いる青色レーザ(波長λ1=405nm)と、第2光源である第2の光記録媒体117に用いる赤色レーザ(波長λ2=660nm)と、第3光源である第3の光記録媒体127に用いる赤外レーザ(波長λ3=785nm)を有し、λ1<λ2<λ3となっている。これら第1光源(半導体レーザ101a),第2光源(半導体レーザ101b),第3光源(半導体レーザ101c)は、記録、再生する光記録媒体に応じて使用される。また、本実施形態1においては、3つの光源が1つのモジュール(光源101)として構成されている。
略同一箇所から光束が出射するとみなされる程度に近接配置とは、2つの光源の出射中心点間距離を5〜50μm程度に近接して配置することをいう。図2は各光源の配置を示す図である。光源の配置方法は様々であるが、本参考例1では、図2に示すように第1光源と第2光源を略同一の光軸上に置き、第3光源を横にずらす構成とした。第1光源の位置を基準とし、各光源の横方向の位置決め誤差を±10μm以下に抑えている。位置決めとしては、第1光源上に形成されたストライプ目印に、画像認識を利用して行った。また、第2光源と第3光源を1つの基板上に集積した「モノリシック型」の2波長レーザをひっくり返して第1光源の上に接合する構造でも良い。
図1に示す光ピックアップは、第1,第2,第3光源の半導体レーザ101a,101b,101cから出射した光束の発散角を変換するコリメートレンズ102,光軸補正素子601,回折格子109,偏光ビームスプリッタ103,プリズム104,1/4波長板,収差補正素子501,対物レンズ106,検出レンズ108,受光素子110より構成される。対物レンズ106の開口数(NA)は第1光源の光束に対してはNA0.85、第2光源の光束に対してはNA0.65、第3光源の光束に対してはNA0.45とする。
光ピックアップの半導体レーザ101a,101b,101cからの出射光は、それぞれコリメートレンズ102により略平行光にされる。コリメートレンズ102を通過した光束は、光軸補正素子601において光源の位置ずれにより発生する光軸ずれを補正し、回折格子109によりトラック制御するために3つの光束に分割され、偏光ビームスプリッタ103に入射し、プリズム104より偏向される。そして、1/4波長板105,収差補正素子501,対物レンズ106を介して光記録媒体の記録面に集光されることにより、情報の記録,再生が行われる。第1,第2,第3の光記録媒体107,117,127からの反射光は対物レンズ106,1/4波長板105を通過した後、偏光ビームスプリッタ103により入射光と分離して偏向され、検出レンズ108により受光素子110上に導かれ、再生信号、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号が検出される。
本参考例1の光軸補正素子601は、等間隔直線状の格子溝パターンを有する3段の階段形状の回折素子であり、図3に光軸補正素子の断面図を示す。3つの波長(BD,DVD,CD)に対して共通光路中に配置されているため、それぞれの波長に対して所望の回折角度と回折効率を与えるような波長選択性を備えている。
本参考例1に用いた光源は図2に示した通りCDの第3光源(半導体レーザ101c)とBDの第1光源(半導体レーザ101a)との横ずれ量Δが110μmであり、図3に示す光軸補正素子601はCDの光軸のみ補正する構成となり、405nm(BD),660nm(DVD)の波長に対しては透過するのみであり、単なる透明基板として機能する。785nm(CD)に対しては所定の角度で回折光を発生させ光軸を補正する。
このような回折格子の波長選択性は、回折面に刻まれる格子溝深さや形状、材料の分散特性をコントロールすることで設定することができる。回折光学系では、入射光すべてのエネルギーが出射光に変換されるのではなく、回折効率と呼ばれる効率でしか変換されない。図4の破線に示すような鋸歯形状のキノフォーム形状は、ある波長でブレーズ化されると、その波長での回折効率は薄型近似の場合、理論的には100%である。
本参考例1では図4に示す実線のように階段形状とし、3つの波長のうち、405nm、660nmの第1,第2光源の光束に対しては0次回折光、785nmの第3光源の光束に対しては+1次回折光を使用する。なお、0次回折光とは、入射光の入射する際の進行方向をそのまま保つ透過光のことである。
図4において階段形状の格子溝深さをD、鋸歯形状の格子溝深さをH、階段形状の段数をMとすると、M段の場合の、1段あたりの位相差を示している(表1)のような条件に階段形状の1段の高さを設定すると、所望の回折次数を最も効率よく得ることができる。
所望の回折効率を得るため、本
参考例1は3段の階段形状を設定した。階段形状の設定が3段の場合は(表2)のように、第1,第2光源の波長405nm,660nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数倍になるようにし、0次回折光の効率を最大にする。第3光源の波長785nmに対しては、1段分の位相差が波長の1/3倍と波長の整数倍を足した値になるようにし+1次回折光の効率を最大にする。
また、光軸補正素子601の材料としては、アッベ数νd=30という高分散材料を用いた。d線の屈折率nd=1.6の場合の3段の階段形状の格子溝深さDと各波長の効率の関係を図5に示す。格子溝深さDが8.9μmのとき、λ1=405nm,λ2=660nmの0次回折光に対しては100%、λ3=785nmの+1次回折光に対しては68%の高い効率を得ることができ、実用上十分な性能が得られる。
階段形状の回折格子の回折効率は、段数が多いほど、図4の破線に示すような鋸歯形状のキノフォーム形状に近づくため、回折効率は向上する。しかしながら、段数が多いと一段あたりのピッチが狭くなり、製造が困難になって製造誤差のだれなどによる影響で効率低下が発生する。
また、階段の1段の高さが低い方が回折効率が良く、波長や温度変動による効率低下の影響を受けにくい。そのため、回折構造としては、格子溝深さDが低く、段数Mが多い方が望ましい。
波長660nmは波長405nmに対して1.63倍長い。また、1段分の高さができるだけ低く、波長660nmおよび波長405nmに対しても位相差が波長の整数倍になるよう設定しなければならない。したがって、前記の2点を満足させるためには、高分散材料が必要となる。
高分散材料を用いることで、格子溝深さを低くすることができ、効率の良い光軸補正素子を提供することができる。また、材料としては、紫外線硬化樹脂を含むあらゆる光学樹脂、光学ガラスに適応可能である。
次に、波長785nmの+1次または−1次の回折効率を高くできる段数を設定する。図6は3段の階段形状とした光軸補正素子材料のアッベ数νdと各波長の回折効率を示す。3段でアッベ数νdが30程度と高い材料を用いることで、前述の(表2)に示した条件を満足することができ、3つの波長で高効率の回折効率を得ることができる。図6に示すように、回折効率は、λ1(BD)で90%以上、λ2(DVD)で90%以上、λ3(CD)で60%以上の高い効率が得られるには、アッベ数をνd≦40とすることが望ましい。
前述のように、アッベ数をνd≦40とすると、回折効率は、λ1で100%以上、λ2で90%以上、λ3で60%以上の高い効率が得られるが、アッベ数がνd>40となると、λ2,λ3での回折効率が悪化し望ましくない。
なお、3段の階段形状の格子溝深さD=8.9μmに限定されるものではなく、例えば図7にd線の屈折率nd=1.6の材料において、階段形状が4段で格子溝深さD=13.5μmのとき、BD(405nm)の0次回折光,DVD(660nm)の0次回折光,CD(785nm)の+1次回折光の効率を示す。アッベ数νdが30程度の高分散材料を用いることで、所望の回折次数の効率を高くすることができる。
本参考例1の光ピックアップのコリメートレンズ102は、第1光源の波長405nmの光軸に合わせてコリメートレンズ102の光軸を調整する。コリメートレンズ102の焦点距離fCLが10mmの場合、光源の横ずれ量Δ=110μmから第3光源の光軸ずれは、sinθ=Δ/fCLより0.63degとなる。また、光軸補正素子601のピッチΛは、回折角度をθとすると、sinθ=λ3/Λ=Δ/fCLとなるため、約70μmとなる。
また、回折格子109は、光記録媒体上に形成される光スポット位置をサーボ制御するために必要となる3つの光束を生成する。3つの波長に対して共通光路中に配置されているため、それぞれの波長に対して所望の回折角度と回折効率を与えるような波長選択性を備えている。
図8に回折格子の構成例を示す。第1の回折面109aで、第1光源と第3光源の光束において3つの光束を生成し、第2の回折面109bで第2光源の光束において3つの光束を生成する。溝深さDの凹部と凸部が1:1の格子溝であり、0次回折光と±1次回折光の3つの光束に分割する。
第1の回折面109aに形成された凹部もしくは凸部のピッチは150μmであり、第3光源の光束(λ3)に対しては、第3の光記録媒体127のトラックピッチに対して1/4トラック、第1光源の光束(λ1)に対しては、第1の光記録媒体107のトラックピッチに対して1/2トラックずれて0次光と1次回折光が集光している状態となる。
図9に回折格子の光学材料(SF6)を用いた場合の格子溝深さDと回折効率の関係を示す。d=4.15umとした場合、それぞれの波長の0次光と1次回折光の効率は、第1光源の光束(λ1)に対して−1次,0次,+1次光が1:10:1の比率で3分割され、第2光源の光束(λ2)は略100%透過、第3光源の光束(λ3)は、1:6:1の比率で3分割される。
したがって、第1光源の光束に対しては、0次光のプッシュプル信号と±1次回折光のプッシュプル信号の差を演算する差動プッシュプル法を用いてトラッキングエラー信号を検出し、第3光源の光束に対しては、3ビーム法を用いてトラッキングエラー信号を検出することができる。
第2の回折面109bは、第2光源の光束(λ2)のみ3分割する。図10は回折格子に光学材料の例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いた場合の格子溝深さDと透過率の関係を示す。D=1.575μmとした場合、それぞれの波長の0次光と1次回折光の効率は、第1光源の光束(λ1)に対しては、略100%透過、第2光源の光束(λ2)は−1次,0次,+1次光が1:7.5:1の比率で3分割され、第3光源の光束(λ3)は略100%透過である。ここで、ピッチを例えば106μmとすると、第2光源の光束(λ2)は1/2トラックずれて0次光と1次回折光が集光している状態となり、差動プッシュプル法を用いることができる。
本参考例1では第1の回折面109aと第2の回折面109bの格子溝を形成している材料は異なるが、同じ材料を用いて形成しても良い。
したがって、回折格子109を用いれば、第1,第2光源の光束(λ1,λ2)において0次光のプッシュプル信号と±1次回折光のプッシュプル信号の差を演算する差動プッシュプル法を用いて、また第3光源の光束(λ3)においては3ビーム法を用いてトラッキングエラー信号を検出することができる。
このように、波長選択性の回折格子109を通過し、3本に分離された3つの波長の光束は、広帯域の偏光ビームスプリッタ103,プリズム104を経て、広帯域の1/4波長板105,収差補正素子501,対物レンズ106に入射し、それぞれ、第1,第2,第3の光記録媒体107,117,127へ集光される。
また、対物レンズ106は、厚さ0.1mmの光記録媒体を高精度に記録,再生できるように最適に設計されている。設計波長は405nmであり、405nmでは波面収差0.01λrms以下と十分小さくなるよう設計されている。なお、これに限定されるものではなく、例えば情報記録面を2層有する2層Blu-ray Discの光記録媒体では、情報記録面を光束の入射側から0.075mmと0.1mmの位置に有するため、その中間値の厚さ0.0875mmを設計中央値とするように、異なる厚さの基板厚に最適設計されていても良い。最適設計とは、波面収差が最小になるように設計されていることである。
また、収差補正素子501は、第2の光記録媒体117と、第3の光記録媒体127に対して、基板厚さの違いと、波長の違いにより発生する球面収差を補正するための互換素子である。さらに、収差補正素子501は、それぞれの光記録媒体に対して、対物レンズ106の開口切替えするための開口制限の機能を有する。
図11に収差補正素子の断面図、図12に上面図を示す。第1の回折面502の光束が通過する範囲内に、同心円状に分割された3つの領域として、中心の第1領域502a、中心から2番目の第2領域502b、中心から3番目の第3領域502cを有する。
第1領域502aは第3の光記録媒体127に対する開口数0.45の領域に相当し、第1領域502aには、波長405nmの第1光源の光束(λ1)をそのまま透過させ、第2,第3の光記録媒体117,127の基板厚の違いと、波長の違いより生じる球面収差を補正するように、第2,第3光源の光束(λ2,λ3)を回折させる回折構造が形成されている。
第2領域502bは、第3の光記録媒体127に対する開口数0.45の領域から第2の光記録媒体117に対する開口数0.65の領域に相当し、波長405nmの第1光源の光束(λ1)をそのまま透過させ、第2の光記録媒体117の基板厚の違いと、波長の違いより生じる球面収差を補正するように、第2光源の光束(λ2)を回折させ、かつ第3光源の光束(λ3)は、第3の光記録媒体127の記録面に集光しないような回折構造が形成されている。
第3領域502cは、第2の光記録媒体117に対する開口数0.65から第1の光記録媒体107に対する開口数0.85の領域に相当し、回折構造が形成されていない平坦部であり、第1,第2,第3光源の光束(λ1,λ2,λ3)をそのまま透過させるため、第1の光記録媒体107に対しては対物レンズ106より集光され、第2,第3の光記録媒体117,127に対しては集光されない構造となる。
それぞれの光記録媒体により反射された光束は、往路と同じ光路を逆にたどり、対物レンズ106,収差補正素子501,1/4波長板105、プリズム104を経て、偏光ビームスプリッタ103により反射され、検出レンズ108を経て、単一の受光素子110に導かれ、再生信号、サーボ信号を得る。
以上のような光ピックアップにおいて光軸補正素子601を配置することにより、異なる光源位置から出射した各光束の光軸を一致させることができ、記録面上の集光スポットの劣化を抑制することができる。また、同一の受光素子110内に照射させることができ、簡易な構成で3波長に対応した互換型の光ピックアップを実現することができる。
対物レンズ106を含めて、共通の光学系で達成できるため、光ピックアップの部品点数が少なく、光学系組付けのために調整すべき部分が少なくなるために生産性を向上でき、低コスト化や小型化を達成することができる。なお、受光素子110がそれぞれ個別に設けられた構成としても良い。
図13は本発明の実施形態の参考例2における光ピックアップの概略構成を示す図である。前述の参考例1の図1に示した光ピックアップでは、光軸補正素子601を光源101と集光光学系との間に配置したが、本参考例2では光軸補正素子601を検出光学系に配置して構成したものである。その他の材料,ピッチ,階段形状,格子溝深さ等はすべて参考例1と同様である。
図13に示すように、検出光学系のみに光軸補正素子602を設けると、単一の光検出器を用いた場合は,光検出器内の所定の検出面とそこに照射する各光束の相対的な位置を独立に調整でき,各サーボ信号を正しく検出することができる。また光録媒体上における光利用効率を上げることができ、簡易な構成で3波長に対応する互換型の光ピックアップを実現することができる。
図14は本発明の実施形態の参考例3の光ピックアップに用いる各光源の配置を示す図である。また、本参考例3における光ピックアップは前述した図1に示した構成と同様である。ただし、図1に示す光源101と光軸補正素子601に代えて光源201と光軸補正素子602とした点が異なる。
本参考例3の図14に示す光源は、参考例1,2と同様に3つの光源が1つのモジュール(光源201)として構成されている。しかし、各光源の配置が異なり、本参考例3では第1光源と第3光源を略同一の光軸上に置き、第2の光源を横にずらす構成とした。
本参考例3の光軸補正素子602は、等間隔直線状の格子溝パターンを有する5段の階段形状の回折素子であり、図15に光軸補正素子の断面図を示す。3つの波長(BD,DVD,CD)に対して共通光路中に配置されているため、それぞれの波長に対して所望の回折角度と回折効率を与えるような波長選択性を備えている。
本参考例3に用いた光源は、図14に示した通りDVDの第2光源(半導体レーザ101b)とBDの第1光源(半導体レーザ101a)との横ずれ量Δが110μmであり、図15に示す光軸補正素子602はDVDの光軸のみ補正する構成となり、405nm(BD),785nm(CD)の波長に対しては透過するのみであり、単なる透明基板として機能する。660nm(DVD)に対しては所定の角度で回折光を発生させ光軸を補正する。
このような回折格子の波長選択性は、回折面に刻まれる格子溝深さや形状、材料の分散特性をコントロールすることで設定することができる。前述したように、(表1)のような条件に階段形状の1段の高さを設定すると、所望の回折次数を最も効率よく得ることができる。
所望の回折効率を得るため、本参考例3は5段の階段形状を設定した。階段形状が5段の場合は、第1,第3光源の波長405nm,785nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数倍になるようにし、0次回折光の効率を最大にする。第2光源の波長660nmに対しては、1段分の位相差が波長の0.2倍と波長の整数倍を足した値になるようにして+1次回折光の効率を最大にする。
また、光軸補正素子602の材料としては、例えばアッベ数νd=58と、d線の屈折率nd=1.48として、格子溝深さDが略6.4μmのとき、波長405nm,785nmの0次回折光に対しては略100%、波長660nmの+1次回折光に対しては83%の高い効率を得ることができ、実用上十分な性能が得られる。また、材料としては、紫外線硬化樹脂を含むあらゆる光学樹脂、光学ガラスに適応可能である。
図16は5段の階段形状とした光軸補正素子材料のアッベ数νdと各波長の回折効率を示す。アッベ数νdが58程度と分散が低い材料を用いることで、前述の(表2)に示した条件を満足することができ、3つの波長で高効率の回折効率を得ることができる。
波長785nmは波長405nmに対して略2倍長い。また、1段分の高さが、波長785nmおよび波長405nmに対しても位相差が波長の整数倍になるよう設定する必要がある。したがって、前記の条件を満足するためには、低分散材料が必要となる。
低分散材料を用いることで、格子溝深さを低くすることができ、効率の良い光軸補正素子を提供することができる。
図16に示すように、回折効率は、λ1で90%以上、λ2で90%以上、λ3で60%以上の高い効率を得るためには、アッベ数をνd≧40とすることが望ましい。
前述したように、アッベ数νdを40以上とすることにより、回折効率は、λ1で90%以上、λ2で90%以上、λ3で80%以上の高い効率が得られる。ちなみに、アッベ数νdが40より小さくなると、λ2,λ3での回折効率が悪化し望ましくない。
なお、5段の階段形状の格子溝深さD=6.4μmに限定されるものではなく、例えば図17にd線の屈折率nd=1.48の材料において、階段形状が4段で格子溝深さD=4.8μmのBD(405nm)の0次回折光、DVD(660nm)の1次回折光、CD(785nm)の0次回折光の効率を示す。アッベ数νdが58程度と低分散材料を用いることで、所望の回折効率を高くすることができる。
本参考例3の光ピックアップのコリメートレンズ102は、第1光源の波長405nmの光軸に合わせてコリメートレンズ102の光軸を調整する。コリメートレンズ102の焦点距離fCLが10mmの場合、光源の横ずれ量Δ=110μmから第3光源の光軸ずれは、sinθ=Δ/fCLより0.63degとなる。また、光軸補正素子602のピッチΛは、回折角度をθとすると、sinθ=λ3/Λ=Δ/fCLとなるため、約60μmとなる。
以上のような光ピックアップにおいて光軸補正素子602を配置することにより、異なる光源位置から出射した各光束の光軸を一致させることができ、同一の受光素子110内に照射させることができるため、簡易な構成で3波長に対応した互換型の光ピックアップを実現することができる。
図18は本発明の実施形態1の光ピックアップに用いる各光源の配置を示す図である。また、本実施形態1における光ピックアップは前述した図1に示した構成と同様である。ただし、図1に示す光源101と光軸補正素子601に代えて光源301と光軸補正素子603とした点が異なる。
本実施形態1の図18に示す光源は、参考例1〜3と同様に3つの光源が1つのモジュール(光源301)として構成されている。しかし、各光源の配置が異なり、本実施形態1では第1光源,第2光源,第3光源を光軸に対して垂直方向にずらす構成とした。
本実施形態1の光軸補正素子603は、等間隔直線状の格子溝パターンを有するブレーズ状の回折素子であり、図19に光軸補正素子の断面図を示す。2つの異なる材料を積層した構成であり、3つの波長(BD,DVD,CD)に対して共通光路中に配置されているため、それぞれの波長に対して所望の回折角度と回折効率を与えるような波長選択性を備えている。
本実施形態1に用いた光源は図18に示したようにBDの第1光源(半導体レーザ101a)とDVDの第2光源(半導体レーザ101b)の光源間隔をΔ12、DVDの第2光源(半導体レーザ101b)とCDの第3光源(半導体レーザ101c)の光源間隔をΔ23とする。また、光軸補正素子603は波長405nm,660nm,785nmに対してすべて同じ回折次数で回折される。そして、所定の角度で回折光を発生させ光軸を補正する。
このように広い波長領域において高い効率を得られる回折格子は、積層されているアッベ数νdの異なる2種類の材料と格子溝深さをコントロールすることで設定することができる。
例えば、d線の屈折率nd=1.7,アッベ数νd=30の高分散の材料と、屈折率nd=1.8,アッベ数νd=70の低分散の材料を積層し、格子溝深さ5.5μmのブレーズ状の回折素子にすると、BD,DVDは90%以上、CDは78%と高い効率を得ることができる。また、材料としては、紫外線硬化樹脂を含むあらゆる光学樹脂、光学ガラスに適応可能である。
図20は積層型のブレーズ状の回折素子の格子溝深さと1次回折効率の関係を示す図である。図20に示すように、格子溝深さを5.5μmとすると3つの波長で高効率の1次回折効率を得ることができる。なお、材料の組み合わせや格子溝深さはこれに限定されるものではない。
第1〜第3光源の光源間隔について、図18を用いて説明する。光ピックアップの光軸からBD,DVD,CDの各光源までの距離をΔ1,Δ2,Δ3として、本実施形態4の光ピックアップにおけるコリメートレンズ102の焦点距離をfCL、回折素子のピッチをΛとすると、(数1)が成り立つ。
(数1)
Δ1/fCL=λ1/Λ
Δ2/fCL=λ2/Λ
Δ3/fCL=λ3/Λ
したがって、fCLを10mm、Λ=25μmとすると、Δ1=162μm,Δ2=264μm,Δ3=314μmとなり、光源間隔Δ12=102μm,Δ23=50μmとなる。すなわち、BDとDVD,DVDとCDの光源間隔が、Δ12:Δ23=(λ2−λ1):(λ3−λ2)=略2:1の関係になっていれば良い。
なお、光源間隔は、前述に限定されものではなく、fCLが長くなるほど、またピッチΛを狭くするほど、光源間隔は広くなる。
以上のように、BDとDVD,DVDとCDの光源間隔が、略2:1の関係になっていれば、すべて1次回折光を利用して、異なる光源位置から出射した各光束の光軸を一致させることができ、同一の受光素子内に照射させることができるため、簡易な構成で3波長に対応した互換型の光ピックアップを実現することができる。
図21は本発明の実施形態の参考例4における光ピックアップの概略構成を示す図である。前述の参考例1の図1に示した光ピックアップでは、3つの光源が1つのモジュール(光源101)として構成されていたが、本参考例4は、2つの光源が1つのモジュール(光源401)、残りの1つの光源は単一光源として、光ピックアップを構成したものである。
図21に示す光ピックアップは、3種類の光記録媒体に情報の記録、消去または再生をするものである。以下、この複数の光記録媒体は、透明基板厚さt1の第1の光記録媒体107(BD)、および透明基板厚さt2の第2の光記録媒体117(DVD)と、透明基板厚さt3の第3の光記録媒体127(CD)として説明する。なお、各光記録媒体の透明基板は厚さt1=0.1mm,t2=0.6mm,t3=1.2mmである。
光ピックアップは、光源として第1光源である第1の光記録媒体107に用いる青色レーザ(波長λ1=405nm)と、第2光源である第2の光記録媒体117に用いる赤色レーザ(波長λ2=660nm)と、第3光源である第3の光記録媒体127に用いる赤外レーザ(波長λ3=785nm)を有し、λ1<λ2<λ3となっている。これら第1光源(半導体レーザ101a),第2光源(半導体レーザ101b),第3光源(半導体レーザ101c)は、記録、再生する光記録媒体に応じて使用される。また、本参考例4においては、第2光源と第3光源の2つの光源が1つのモジュール(光源401)として構成されている。第2光源と第3光源から出射される光束は略同一方向となるように並べ、且つ光束の光軸は、ずらして配置されている。
図21に示す光ピックアップは、第1光源(半導体レーザ101a)から出射した光束の発散角を変換するコリメートレンズ202、第2光源(半導体レーザ101b),第3光源(半導体レーザ101c)から出射した光束の発散角を変換する発散角変換レンズ212、光路合成手段である波長選択性ビームスプリッタ213、光軸補正素子601、偏光ビームスプリッタ103,プリズム104,1/4波長板105,収差補正素子501,対物レンズ106,検出レンズ108,受光素子110より構成される。対物レンズ106の開口数(NA)は第1光源の光束に対してはNA0.85、第2光源の光束に対してはNA0.65、第3光源の光束に対してはNA0.45とする。
光ピックアップの半導体レーザ101a,光源401(半導体レーザ101b,101c)からの出射光は、それぞれコリメートレンズ202,発散角変換レンズ212により略平行光にされる。コリメートレンズ202,発散角変換レンズ212を通過した光束は、波長選択性ビームスプリッタ213により光路を合成される。この波長選択性ビームスプリッタ213は、405nmの光束を透過させ、660nm,785nmの光束を反射するよう構成される。
波長選択性ビームスプリッタ213は、405nmの光束と、660nmの光束の光軸が一致するよう配置される。光軸補正素子601において光源401の2つの光源の位置ずれにより発生する光軸ずれを補正し、偏光ビームスプリッタ103に入射し、プリズム104により偏向される。そして、1/4波長板105,収差補正素子501,対物レンズ106を介して光記録媒体の記録面に集光されることにより、情報の記録,再生が行われる。
第1,第2,第3の光記録媒体107,117,127からの反射光は対物レンズ106,1/4波長板105を通過した後、偏光ビームスプリッタ103により入射光と分離して偏向され、検出レンズ108により受光素子110上に導かれ、再生信号,フォーカス誤差信号,トラック誤差信号が検出される。
本参考例4の光軸補正素子601は、等間隔直線状の格子溝パターンを有する2段の階段形状の回折素子であり、図22に光軸補正素子の断面図を示す。3つの波長(BD,DVD,CD)に対して共通光路中に配置されているため、それぞれの波長に対して所望の回折角度と回折効率を与えるような波長選択性を備えている。
本参考例4に用いた光源は、図21と参考例1に示した通りCDの第3光源(半導体レーザ101c)とDVDの第2光源(半導体レーザ101b)との横ずれ量Δが110μmであり、図21に示す光軸補正素子601はCDの光軸のみ補正する構成となり、405nm(BD),660nm(DVD)の波長に対しては透過するのみであり、単なる透明基板として機能する。785nm(CD)に対しては所定の角度で回折光を発生させ光軸を補正する。
本参考例4では図22に示すように矩形形状とし、3つの波長のうち、405nm,660nmの第1,第2光源の光束に対しては0次回折光、785nmの第3光源の光束に対しては1次回折光を使用する。なお、0次回折光とは、入射光の入射する際の進行方向をそのまま保つ透過光のことである。
そして、所望の回折効率を得るため、本参考例4では矩形形状、つまり前述した(表2)において2段の階段形状を設定した。2段の場合は、第1,第2光源の波長405nm,660nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数倍になるようにし、0次回折光の効率を最大にする。第3光源の波長785nmに対しては、1段分の位相差が波長の1/2倍と波長の整数倍を足した値になるようにし+1次回折光の効率を最大にする。この光軸補正素子601の材料としては、石英を用いた。
2段の階段形状の格子溝深さDと各波長の回折効率の関係を図23に示す。格子溝深さDが2.68μmのとき、λ1=405nm,λ2=660nmの0次回折光に対しては96%,73%、λ3=785nmの+1次回折光に対しては40%の高い効率を得ることができ、実用上十分な性能が得られる。
階段形状の回折格子の回折効率は、段数が多いほど、前述の図4の破線に示すような鋸歯形状のキノフォーム形状に近づくため、回折効率は向上する。しかしながら、段数が多いと一段あたりのピッチが狭くなり、製造が困難になって製造誤差のだれなどによる影響で効率低下が発生する。
また、階段の1段の高さが低い方が回折効率が良く、波長や温度変動による効率低下の影響を受けにくい。そのため、回折構造としては、格子溝深さDが低く、段数Mが多い方が望ましい。
この材料としては、紫外線硬化樹脂を含むあらゆる光学樹脂、光学ガラスに適応可能である。なお、2段の階段形状に限定されるものではなく、例えば実施形態1および参考例1〜3に記述した光軸補正素子で構成されても良い。
以上のように構成した光ピックアップにおいて、光軸補正素子601により異なる光源位置(半導体レーザ101b,半導体レーザ101c)から出射した各光束の光軸を一致させることができ、また光路合成手段である波長選択性ビームスプリッタ213と集光光学系の間に配置することにより、異なる光源モジュール(半導体レーザ101a,光源401から出射した光軸を一致させることができ、記録面上の集光スポットの劣化を抑制することができる。また、同一の受光素子110内に照射させることができ、簡易な構成で3波長に対応した互換型の光ピックアップを実現することができる。
対物レンズ106を含めて、共通の光学系で達成できるため、光ピックアップの部品点数が少なく、光学系の組付けのために調整すべき部分が少なくなるために生産性を向上でき、低コスト化や小型化を達成することができる。
図24は本発明の実施形態の参考例5における光ピックアップの概略構成を示す図である。前述の参考例4の図21に示した光ピックアップでは、光軸補正素子601を光路合成手段(波長選択性ビームスプリッタ213)と集光光学系との間に配置したが、本参考例5では光軸補正素子601を検出光学系に配置して構成したものである。その他の材料,ピッチ,階段形状,格子溝深さ等はすべて実施形態1および参考例1〜4と同様である。
図24に示すように、検出光学系のみに光軸補正素子601を設けると、単一の光検出器を用いた場合は,光検出器内の所定の検出面とそこに照射する各光束の相対的な位置を独立に調整でき,各サーボ信号を正しく検出することができる。また光録媒体上における光利用効率を上げることができ、簡易な構成で3波長に対応する互換型の光ピックアップを実現することができる。
図25は本発明の実施形態の参考例6における光ピックアップの概略構成を示す図である。図1で示した参考例1の収差補正素子501と光軸補正素子601を一体に形成し構成した補正素子605を設けたものである。図26に補正素子の断面図を示す。一体に形成とは、同じ材料で一体成形されていても良いし、別々の素子を張り合わせて形成されていても良い。
図27は本発明の実施形態2における光情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。図27に示す構成は、光情報処理装置の一形態であり、前記実施形態1および参考例1〜3に記載のいずれかの光ピックアップを用いて、光記録媒体に対する情報の再生,記録,消去のうちの少なくとも1つを行う装置である。
図27に示すように、光情報処理装置は光学ピックアップ91、送りモータ92およびスピンドルモータ98等により構成されており、これらは光情報処理装置全体を制御するシステムコントローラ96により制御される。そして、光ピックアップ91のトラッキング方向への移動は、送りモータ92とサーボ制御回路93で構成される制御駆動手段により行われる。例えば、光記録媒体99を再生する場合、システムコントローラ96からのコントロール信号がサーボ制御回路93と変復調回路94に供給される。
サーボ制御回路93では、スピンドルモータ98を設定された回転数で回転させるとともに送りモータ92を駆動する。
変復調回路94には、光ピックアップ91の光検出器により検出されたフォーカシングエラー信号,トラッキングエラー信号および光記録媒体99のどこを読み出しているかの位置情報等が供給される。フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号はシステムコントローラ96を介してサーボ制御回路93に供給される。
サーボ制御回路93は、フォーカシング制御信号によってアクチュエータのフォーカシングコイルを駆動し、トラッキング制御信号によってアクチュエータのトラッキングコイルを駆動する。トラッキング制御信号の低域成分はシステムコントローラ96を介してサーボ制御回路93に供給され、送りモータ92を駆動する。これらによって、フォーカシングサーボ、トラッキングサーボおよび送りサーボのフィードバックサーボが行われる。
また、光記録媒体99のどこを読み出しているかの位置情報は変復調回路94により処理され、スピンドル制御信号としてスピンドルモータ98に供給され、光記録媒体99の再生位置に応じた所定の回転数に制御駆動され、ここから実際の再生が開始される。そして、変復調回路94により処理されて復調された再生データは外部回路95を介して外部に伝送される。
データを記録する場合、フォーカシングサーボ,トラッキングサーボおよび送りサーボのフィードバックサーボをかけるまでは再生と同様の過程を経る。
外部回路95を介して入力される入力データを光記録媒体99のどこに記録するかのコントロール信号が、システムコントローラ96からサーボ制御回路93および変復調回路94に供給される。
サーボ制御回路93では、スピンドルモータ98を所定の回転数に制御するとともに、送りモータ92を駆動して光ピックアップ91を情報記録位置に移動させる。
また、外部回路95を介して変復調回路94に入力された入力信号は、記録フォーマットに基づく変調が行われ、光ピックアップ91に供給される。光ピックアップ91では出射光の変調および出射光パワーが制御されて、光記録媒体99への記録が開始される。
光記録媒体99の種類は再生データ信号で判別する。また、光記録媒体99の種類を判別する方法として、トラッキングサーボ信号やフォーカスサーボ信号を用いても良い。
再生専用の光情報処理装置および記録と再生の両方の処理可能な光情報処理装置に具備される光ピックアップに、本発明の光軸補正手段を用いた光ピックアップを具備していれば、波長の異なる2種類以上の光記録媒体に対して情報の記録,消去,再生の最適な処理をすることができ、かつ小型で部品点数や調整工程が少ない光情報処理装置を提供することができる。