JP4825163B2 - 車両用サスペンション装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用サスペンション装置に関し、特に車輪のトーアウト傾向を抑制して車両の走行安定性を高める車両用サスペンション装置に関する。
従来技術として、制動時においても車輪のトーアウト傾向を抑制するか、若しくはトーイン傾向にする車両用サスペンション装置が特許文献1に記載されている。この車両用サスペンション装置では、車両側端部が車輪支持部材に連結され、かつ、前後2つの車体側端部が車両前後方向を軸とする環状の弾性部材を介して車体側接続部に連結されたリンク部材を有し、弾性部材を車体内側部材と車体外側部材の2部材としている。そして、リンク部材の前方側の車体側端部に介装された弾性部材は、車体内側部材をポアソン比が負の材料で構成するとともに、車体外側部材をポアソン比が正の材料で構成している。これに対し、リンク部材の後方側の車体側端部に介装された弾性部材は、車体内側部材をポアソン比が正の材料で構成するとともに、車体外側部材をポアソン比が負の材料で構成している。
そして、制動時の車輪に作用する車両の前後方向の力により、車体側の弾性部材のうち車両前方に位置する弾性部材は車体内側が圧縮されるとともに、車両後方に位置する弾性部材は車体外側が圧縮されるが、車両前方の弾性部材の車体内側部材および車両後方の弾性部材の車体外側部材は共にポアソン比が負の材料で構成しているため、これらの部材に作用する車両前後方向の成分の力によってその部材は車幅方向に寸法が増大し、車両のトーアウト傾向を抑制若しくはトーイン傾向にする。
また、特許文献2には、各車輪にトー角制御をするアクチュエータを設け、車両の旋回状態において適切に車輪のトー角制御を行なって、車両の旋回性を向上するサスペンション装置が記載されている。
特開平4−293606号公報(図1) 特開2005−343400号公報(図1)
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用サスペンション装置にあっては、車両が直進状態で減速状態にあるときに、車両の直進性を向上するために制動時に発生する前後力を利用してトー角制御を行うものである。
特許文献2の車両用サスペンション装置にあっては、アクチュエータを用いてトー角を制御するものであり、構成も複雑で、コストの高いものになっている。また、各車輪にアクチュエータを1つ設けた構成では、車輪の上下動によりトー角が変化してしまう場合もあり、凹凸路面における旋回状態でのトー角を安定に所定の角度に保持することができない。
そこで、本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、旋回状態において、適切にトー角の保持を行って車両の安定性を向上したり旋回性を向上したりすることができる車両用サスペンション装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、一端側に車輪支持部材に連結される車輪側端部および他端側に車体側接続部に連結される車体側端部を有するリンク部材を前後に並べて構成され、車輪側端部および車体側端部のうちの少なくとも一方が車幅方向に変形可能な弾性部材を介して連結される構成を4輪車両の各車輪に対してそれぞれ有するサスペンション装置において、4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの弾性部材の車幅方向における剛性を可変にする剛性可変手段と、車両の走行状態である車両状態を検出する車両状態検出手段と、路面の凹凸を検知する路面状態検知手段と、車両状態検出手段が検出した車両状態および路面状態検知手段が検知した路面の凹凸状態に応じて4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの剛性可変手段の剛性を個別に制御する制御手段と、を備え、剛性可変手段は、弾性部材の車体外側領域と車体内側領域とに区画された2つの室と、2つの室を接続する連通部と、2つの室内に充填された作動流体と、連通部に設けられた作動流体の流通を阻害または阻止する流通阻止手段と、を含み、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、転舵輪である前輪に対しては、前輪に加わる横力を受けて旋回内側方向へのトー角変更となるように、当該の流通阻止手段により作動流体の連通部の流通を阻害または阻止して、剛性可変手段が弾性部材の剛性を高めるとともに、後輪に対しては、後輪に加わる横力を受けてトーイン方向へのトー角変更となるように、当該の流通阻止手段により作動流体の連通部の流通を阻害または阻止して、剛性可変手段が弾性部材の剛性を高めることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、例えば、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、転舵輪である前輪に対しては、旋回時に、旋回内側の前輪の前後2つの車体側端部の内の後方の弾性部材の剛性を高め、旋回外側の前輪の前後2つの車体側端部の内の後方の弾性部材の剛性を高めることにより、旋回時に前輪に掛かる旋回外側方向からの横力を受けて左右の前輪のトー角を旋回内側方向に保持することができる。
また、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、後輪に対しては、旋回時に、例えば、旋回内側の後輪の前後2つの車体側端部の内の前方の弾性部材の剛性を高め、旋回外側の後輪の前後2つの車体側端部の内の後方の弾性部材の剛性を高めることにより、旋回時に後輪に掛かる旋回外側方向からの横力を受けて左右の後輪のトー角をトーイン状態に保持することができる。
前後2つの車輪側端部に剛性可変手段を有する弾性部材を介装する場合も同様に作用させることができる。
請求項2に記載の発明は、一端側に車輪支持部材に連結される車輪側端部および他端側に車体側接続部に連結される前後2つの車体側端部を有するリンク部材で構成され、車輪側端部および車体側端部のうちの少なくとも一方が車幅方向に変形可能な弾性部材を介して車体側接続部と連結される構成を4輪車両の各車輪に対してそれぞれ有するサスペンション装置において、4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの弾性部材の車幅方向における剛性を可変にする剛性可変手段と、車両の走行状態である車両状態を検出する車両状態検出手段と、路面の凹凸を検知する路面状態検知手段と、車両状態検出手段が検出した車両状態および路面状態検知手段が検知した路面の凹凸状態に応じて4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの剛性可変手段の剛性を個別に制御する制御手段と、を備え、剛性可変手段は、弾性部材の車体外側領域と車体内側領域とに区画された2つの室と、その2つの室を接続する連通部と、2つの室内に充填された作動流体と、連通部に設けられた前記作動流体の流通を阻害または阻止する流通阻止手段と、を含み、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、転舵輪である前輪に対しては、前輪に加わる横力を受けて旋回内側方向へのトー角変更となるように、当該の流通阻止手段により作動流体の連通部の流通を阻害または阻止して、剛性可変手段が弾性部材の剛性を高めるとともに、後輪に対しては、後輪に加わる横力を受けて旋回方向外側の逆相へのトー角変更となるように、当該の流通阻止手段により作動流体の連通部の流通を阻害または阻止して、剛性可変手段が弾性部材の剛性を高めることを特徴とする。
請求項2に係る発明によれば、例えば、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、転舵輪である前輪に対しては、旋回時に、旋回内側の前輪の前後2つの車体側端部の内の後方の弾性部材の剛性を高め、旋回外側の前輪の前後2つの車体側端部の内の後方の弾性部材の剛性を高めることにより、旋回時に前輪に掛かる旋回外側方向からの横力を受けて左右の前輪のトー角を旋回内側方向に保持することができる。
また、制御手段は、車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、路面状態検知手段が路面の凹凸を検知しているとき、後輪に対しては、旋回時に、例えば、旋回内側の後輪の前後2つの車体側端部の内の前方の弾性部材の剛性を高め、旋回外側の後輪の前後2つの車体側端部の内の前方の弾性部材の剛性を高めることにより、旋回時に後輪に掛かる旋回外側方向からの横力を受けて左右の後輪のトー角を旋回外側方向に保持することができる。
前後2つの車輪側端部に剛性可変手段を有する弾性部材を介装する場合も同様に作用させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明の構成に加えて、路面状態検知手段は、サスペンション構成部材に取り付けられたコイルと磁性体とから構成され、コイルに誘導発電された電気により路面の凹凸を検知することを特徴とする。
請求項3に係る発明によれば、路面状態検知手段は、容易にコイルに誘導された電気信号により路面の凹凸状態を検知することができる。
本発明によれば、車両が所定の旋回状態であるときに、車輪に掛かる横力を利用して車輪のトー角を所定の方向に向け保持し、車両の旋回運動時の安定性の向上、車両の旋回性の向上に寄与することができる。
以下、本発明の実施の形態を図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両用サスペンション装置を適用した車両の概略構成図である。図2の(a)は左側のサスペンション装置を、斜め後上方から見た斜視図であり、図2の(b)は前方リンク部材および後方リンク部材の車体側端部の車両前後方向の軸に対する横断面である。
車両1は、駆動輪である前輪2FL、2FRと従動輪である後輪2RL、2RRを備えている。この車両1には、前後にサスペンションメンバが取り付けられており、前輪サスペンションメンバ(車体側接続部)15Aには前輪2FL、2FRが、後輪サスペンションメンバ(車体側接続部)15Bには後輪2RL、2RRが、サスペンション装置3を介して取り付けられている。
図1では、各サスペンション装置3は、車幅方向に伸び、略平行(車輪側がすぼまるように)に車両前後方向に配された前方リンク部材(リンク部材)11Aおよび後方リンク部材(リンク部材)11Bを備える。前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bのそれぞれの車輪側軸支部(車輪側端部)11a(図2の(a)参照)が、車輪支持部材13と車両前後方向を軸としてリンク接続している。また、前方リンク部材11A、および後方リンク部材11Bのそれぞれの車体側軸支部(車体側端部)11b(図2の(a)参照)が、サスペンションメンバ15A(またはサスペンションメンバ15B)と、それぞれ車両前後方向を軸としてリンク接続している。
前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bの車輪側軸支部11aおよび車体側軸支部11b(図2参照)は、ラバーブッシュを介して、それぞれ車輪支持部材13に固定された図示しない軸支ボルト、またはサスペンションメンバ15A(またはサスペンションメンバ15B)に固定された軸支ボルト18(図2の(b)参照)と前記したようにリンク接続する。
車体側軸支部11bには後記する電磁石(流通阻止手段)17を内蔵したラバーブッシュ31が内挿されている。電磁石17はコントロールユニット(制御手段)4により通電が制御される。
また、車両1には、ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ21と、車両横加速度Ayを検出する横加速度センサ22と、車速Vを検出する車輪速度センサ23と、操舵角δを検出する操舵角センサ24が備えられ、これらの検出信号はコントロールユニット4に入力される。ここでヨーレートセンサ21、横加速度センサ22、車輪速度センサ23、操舵角センサ24は本発明の車両状態検出手段を構成する。
そして、コントロールユニット4は、前記検出信号によって得られる車両状態量にもとづいて、所定の旋回運動が開始されたか、または所定の旋回運動中であるか否かを判断し、ドライバの転舵が旋回初期状態であるときには、各車輪2FL、2FR、2RL、2RRのトー角を車輪に掛かる横力により所定の方向に設定されるように、所要の電磁石17を通電状態に設定し、例えば、旋回運動が続いている間通電状態を維持する。
ここで、前記車両状態量は、ヨーレートセンサ21のヨーレートγ、横加速度センサ22の横加速度Ay、車輪速度センサ23の車速V、操舵角センサ24の操舵角δであり、操舵角δの代わりに図示しない操舵トルクセンサの操舵トルクを使用することも可能である。
また、コントロールユニット4は、前記した制御をするために図示しないCPU、プログラムを記憶させたROMやRAM等のメモリ、図示しないバッテリから電磁石17への通電をオン/オフするCPUに動作が制御されるリードスイッチ、前記各種センサからの信号をCPUに入力したりCPUからの信号を前記リードスイッチに出力したりするためのインターフェース回路等を含んでいる。
本実施の形態では、図2の(a)に示すようにサスペンション装置3は、ロアー側およびアッパー側の両方に前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bを有するいわゆるマルチリンク・サスペンション形式の構成をしている。
もちろん、ロアー側において前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bを有し、アッパー側は他の構成とするサスペンション装置の構成でも良い。
前輪2FL、2FR用のサスペンション装置3では、図2の(a)には図示してないが、車輪支持部材13の上部と下部に略垂直方向のキングピン軸を中心に左右方向に車輪2FL、2FRのトー角を可変とする図示しない軸支部があり、それにより図示しない車輪ハブを保持するステアリングナックルが連結している。
図2の(b)に示すように前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bの車体側軸支部11bは、環状になっており、内部に外周を外筒30に囲まれ、内周を内筒34で囲まれた環状のラバーブッシュ(弾性部材)31を嵌め込む。ラバーブッシュ31の内筒34の内周側においてサスペンションメンバ15A、15Bに固定された軸支ボルト18の外周と摺動する。
ラバーブッシュ31は、車体側軸支部11bに対して周方向に相対回転運動をしないように、図示しない回り止め構造を車体側軸支部11bと外筒30の間に有している。
さらに、ラバーブッシュ31は、その環状体の内部に図2の(b)に示すように車体外側領域と車体内側領域とに区画された2つの室32A、32Bを有し、その2つの室32A、32Bは、細い管状の連通部33により互いに接続されている。連通部33の周囲には環状に電磁石17が配置されている。そして、室32A、32Bには作動流体として磁性流体が充填されている。
電磁石17が非通電状態の場合に、車輪2(図2では、車輪2FL、2FR、2RL、2RRを代表して単に車輪2と表示する)に車幅方向の横力が働くと、室32A、32Bの内の一方が押しつぶされ、押し出された磁性流体が連通部33を通過して他方の側の室に移動し、ラバーブッシュ31は横力に応じて歪む。
しかし、電磁石17が通電状態の場合には、車輪2に車幅方向の横力が働いても、磁性流体が連通部33において電磁石17により粘性が高まり流れが阻害され、流通抵抗となる。室32A、32Bの内の一方が押圧を受けて押し出された磁性流体は、連通部33を通過して他方の室に流れるのを阻害され、ラバーブッシュ31は横力に応じて歪むことができず、あたかもラバーブッシュ31の剛性が高まった状態のようになる。ここで、ラバーブッシュ31内に構成された室32A、32B、連通部33および電磁石17は本発明の剛性可変手段を構成する。
次に、このコントロールユニット4で行われる電磁石17の通電、非通電の制御処理について、図3に示すフローチャートに従って説明する。この電磁石17の通電、非通電の制御処理は、所定時間毎(例えば、10msec毎)の一定周期の処理によって実行される。
先ずステップS01で、初期状態のリセットとして、左右の旋回運動状態を示すフラグをリセットする(IFLAG=0)。次いで、ステップS02において各センサから車両状態量を取得する。具体的には、前記各センサで検出されたヨーレートγ、横加速度Ay、車速V、操舵角δを読み込む。
次いで、ステップS03では、旋回運動開始または旋回運動中か、否かを判定する。車両が旋回運動を開始したことはヨーレートγや横加速度Ayが所定の閾値以上を示さなくとも、車速Vが所定の閾値以上で、かつ、操舵角δの絶対値が所定値の閾値以上であれば車両が旋回運動を開始したと判定できる。また、車速Vが所定の閾値以上で、操舵角δの絶対値が所定値の閾値未満でも、ヨーレートγや横加速度Ayが所定の閾値以上であれば、車両の旋回運動が続いていると判定できる。
ステップS03において旋回運動開始または旋回運動中の場合(Yes)は、ステップS04へ進み、そうでない場合(No)はステップS09へ進む。
ステップS04では、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はステップS05へ進み、IFLAG≠0の場合(No)はステップS08へ進む。ステップS05では、操舵角δにもとづいて左旋回か右旋回を判定する。左旋回の場合はステップS06へ進みIFLAG=−1とし、ステップS08へ進む。右旋回の場合はステップS07へ進みIFLAG=+1とし、ステップS08へ進む。
ステップS04、ステップS06、ステップS07からステップS08に進んで、IFLAGの値−1(左旋回)、+1(右旋回)に応じて、横力を受けて旋回内側にトー角を設定するように前輪2FL、2FRを制御し、横力を受けてトーインとするように後輪2RL、2RRを制御する。
この制御の具体的方法を図4を参照しながら説明する。図4は左旋回時に旋回外側方向から各車輪に付与される横力により、車輪のトー角を設定する作用を説明する図であり、(a)は前輪のトー角を旋回内側方向に制御することを示し、(b)は後輪のトー角をトーイン状態に制御することを示し、(c)は(b)の変形として後輪のトー角を旋回外側方向に制御することを示す。
なお、図4の(c)は、「その他の変形例」のところで説明する。
図4の(a)に示すように、左旋回をすると前輪2FL、2FRには右側からの横力Fsが働く。そこで、コントロールユニット4により、A〜Dで示した車体側軸支部11bの内、B、Dで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。前輪2FLではAの車体側軸支部11bは車幅方向に伸びるようにラバーブッシュ31が変形し、Bで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に伸びず、前輪2FLが旋回内側方向に向く。前輪2FRではCの車体側軸支部11bは車幅方向に縮小するようにラバーブッシュ31が変形し、Dで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に縮小せず、前輪2FRが旋回内側方向に向く。つまり、前輪2FL、2FRは横力Fsが働くとき旋回内側方向のトー角状態になるように制御される。
なお、サスペンション装置3がマルチリンク・サスペンションの構成の場合は、アッパー側もロアー側も図4の(a)に示すように車体側軸支部11bの内、B、Dで示す軸支部11bの電磁石17を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。
右旋回の場合も、コントロールユニット4により、A〜Dで示した車体側軸支部11bの内、B、Dで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。
図4の(b)に示すように、左旋回をすると後輪2RL、2RRには右側からの横力Fsが働く。そこで、コントロールユニット4により、E〜Hで示した車体側軸支部11bの内、E、Hで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。後輪2RLではFの車体側軸支部11bは車幅方向に伸びるようにラバーブッシュ31が変形し、Eで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に伸びず、後輪2RLが旋回外側方向に向く。後輪2RRではGの車体側軸支部11bは車幅方向に縮小するようにラバーブッシュ31が変形し、Hで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に縮小せず、後輪2RRが旋回内側方向に向く。つまり、後輪2RL、2RRは横力Fsが働くときトーイン状態になるように制御される。
なお、サスペンション装置3がマルチリンク・サスペンションの構成の場合は、アッパー側もロアー側も図4の(b)に示すように車体側軸支部11bの内、E、Hで示す軸支部11bの電磁石17を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。
右旋回の場合は、コントロールユニット4により、E〜Hで示した車体側軸支部11bの内、F、Gで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。
図3に戻ってフローチャートの説明を続ける。
ステップS08の後ステップS02に戻り、制御を繰り返す。
ステップS03においてステップS09へ進んだ場合は、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はそのままステップS02に戻り、制御を繰り返す。IFLAG=0でない場合(No)はIFLAG=0とし(ステップS10)、トー角制御を解除する(ステップS11)。具体的には、ステップS08において所定の電磁石17を通電状態としていたのを、非通電状態にする。その後ステップS02に戻り、制御を繰り返す。
なお、ここでは、左右の旋回運動が連続することはないと想定してフローチャートを組んであるが、左右の連続旋回運動を想定する場合は、ステップS04を削除し(スキップし)、繰り返し処理の中でステップS03において旋回運動開始または旋回運動中と判定された場合は、ステップS05で旋回方向を常に判定するようにしても良い。
以上、本実施の形態によれば、所定の閾値以上の車速Vの場合に、車両が旋回運動を開始したとき、前輪2FL、2FRに掛かる横力を利用して旋回内側方向にトー角を制御するので旋回性が向上する。
また、同様に車両が旋回運動を開始したとき、後輪2RL、2RRに掛かる横力を利用してトーイン状態になるようにトー角を制御するので旋回運動時の安定性が向上する。
さらに、このようなトー角制御を車体側軸支部11bの弾性部材であるラバーブッシュ31に構成した磁性流体を充填した2つの室32A、32Bと、連通部33と、連通部33の周囲に配置した電磁石17と、により実現しているので、特許文献2に示されたようなアクチュエータを用いたトー角変更装置を必要とせず、コストの安い軽量な構成とすることができる。
また、特許文献1におけるような車体側軸支部11bに用いる弾性部材のポアソン比によるよりもより確実に、そして、旋回方向に応じてトー角制御の方向を可変に設定できる。
(第1の変形例)
次に本実施の形態に対する第1の変形例を図1、図5、および図6を参照しながら説明する。
車両1が凹凸路面で旋回運動をする場合、前輪2FL、2FRの上下動により車輪のトー角がぶれ、旋回運動中の軌跡が乱れることがある。
そこで、第1の変形例では、前記した旋回中の横力を利用したトー角制御を、凹凸の路面での旋回運動に限って利用する。そのため、前輪2FL、2FRのサスペンション装置3のショックアブゾーバ41(図6参照)には、路面凹凸検知センサ(路面状態検知手段)25が設けられ、コントロールユニット4に信号線が接続されている。
路面凹凸検知センサ25は、磁石42とコイル43とから構成される。この路面凹凸検知センサ25は、車輪2FL、2FRの上下動によりショックアブゾーバ41が伸縮するとき、磁石42とコイル43との上下方向の相対位置が変化することに対応して、コイル43を通過する磁束が変化してコイル43に誘導電流が発生することを利用するものである。
この誘導電流を整流回路44で直流に変換して、コントロールユニット4への信号電流とする。信号電流値が大きいほど路面状態量である路面の凹凸度合いや凹凸の頻度において、路面の凹凸度合いが大きく、凹凸の頻度が高いことを示す。
本変形例では図5に示すフローチャートのように制御する。ここで、図3に示したフローチャートと同じ制御内容のステップについては重複する説明を省略する。
先ずステップS21で、初期状態のリセットとして、左右の旋回運動状態を示すフラグをリセットする(IFLAG=0)。次いで、ステップS22において各センサから車両状態量と路面状態量を取得する。具体的には、前記各センサで検出されたヨーレートγ、横加速度Ay、車速V、操舵角δと、路面状態を示す信号電流値を読み込む。
次いで、ステップS23では、旋回運動開始または旋回運動中か、否かを判定する。車両が旋回運動を開始したことはヨーレートγや横加速度Ayが所定の閾値以上を示さなくとも、車速Vが所定の閾値以上で、かつ、操舵角δの絶対値が所定値の閾値以上であれば車両が旋回運動を開始したと判定できる。また、車速Vが所定の閾値以上で、操舵角δの絶対値が所定値の閾値未満でも、ヨーレートγや横加速度Ayが所定の閾値以上であれば、車両の旋回運動が続いていると判定できる。
ステップS23において旋回運動開始または旋回運動中の場合(Yes)は、ステップS24へ進み、そうでない場合(No)はステップS30へ進む。
ステップS24では路面が凹凸状態か否かを判定する。これは信号電流が所定の閾値以上を示すか否かで判定すれば容易に行なえる。特に、前輪2FL、2FRのバネ下が共振するような場合の信号電流値を閾値として設定すれば、共振状態においてトー角制御が起動するように設定することもできる。
路面が凹凸状態の場合(Yes)はステップS25へ進み、路面が凹凸状態でない場合(No)はステップS30へ進む。
以後、ステップS25〜ステップS29は、図3のフローチャートにおけるステップS04〜ステップS08にそれぞれ対応し、ステップS30〜S32は図3のフローチャートにおけるステップS09〜S11にそれぞれ対応する。
第1の変形例によれば、凹凸路面において車両が旋回運動する場合の、前輪2FL、2FRのトー角を制御して旋回運動時の軌跡の乱れを防止できる。
なお、本第1の変形例において、電磁石17に通電する電流を路面凹凸検知センサ25により発電した信号電流を利用しても良い。そのようにすることにより、有効に電力を利用できると共に、サスペンション装置3のエネルギ吸収機能にも寄与し、バネ下共振時に有効にエネルギを吸収しつつ、前輪2FL、2FRのトー角を制御して旋回運動時の軌跡の乱れを防止できる。
(その他の変形例)
(1) 実施の形態およびその第1の変形例においては、前方リンク部材11Aおよび後方リンク部材11Bの車体側軸支部11bに内挿されたラバーブッシュ31に剛性可変手段である室32A、32B、連通部33および電磁石17を設けたが、逆に剛性可変手段を車輪側軸支部11aに設けるものとしても良い。
(2) 実施の形態およびその第1の変形例においては、車両1の旋回運動における前輪2FL、2FRに掛かる横力を利用してトー角を旋回方向内側に設定するようにしたが、後輪2RL、2RRと同じように操向ハンドルによる操舵角δ方向に対してトーイン状態になるように制御しても良い。
また、実施の形態およびその第1の変形例においては、後輪2RL、2RRを、車両1の旋回運動における後輪2RL、2RRに掛かる横力を利用してトー角をトーイン状態に設定するようにしたが、旋回性を高めるように、例えば、左旋回時に図4の(c)に示すように旋回方向外側に逆相状態になるように制御しても良い。
図4の(c)に示すように、左旋回をすると後輪2RL、2RRには右側からの横力Fsが働く。そこで、コントロールユニット4により、E〜Hで示した車体側軸支部11bの内、E、Gで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。後輪2RLではFの車体側軸支部11bは車幅方向に伸びるようにラバーブッシュ31が変形し、Eで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に伸びず、後輪2RLが旋回外側方向に向く。後輪2RRではHの車体側軸支部11bは車幅方向に縮小するようにラバーブッシュ31が変形し、Gで示す車体側軸支部11bは剛性が高まり車幅方向に縮小せず、後輪2RRが旋回外側方向に向く。つまり、後輪2RL、2RRは横力Fsが働くとき、共に旋回外側方向に向く逆相状態になるように制御される。
右旋回の場合も、コントロールユニット4により、E〜Hで示した車体側軸支部11bの内、E、Gで示す軸支部11bの電磁石17(図1、図2の(b)参照)を通電状態にしてラバーブッシュ31の剛性を高める。
(3) 実施の形態およびその第1の変形例において、図2に示すようなマルチリンク・サスペンション形式のサスペンション装置3を例に説明したがそれに限定されるものではない。図7に示すようなA型アーム(リンク部材)11Cを用いたサスペンション装置3Aにおいても、前方および後方の車体側軸支部11bに前記剛性可変手段を設けても実現できる。
ダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置の場合は、アッパー側およびロアー側の両方のAアーム11Cの前方および後方の車体側軸支部11bに前記剛性可変手段を設けると良い。
(4) 実施の形態およびその第1の変形例において、ラバーブッシュ31の車体外側領域および車体内側領域の室32A、32B内の作動流体を磁性流体とし、連通部33において電磁石17により流れを阻害したり阻害しなかったりすることでラバーブッシュ31の剛性を可変としたがそれに限定されるものではない。図8に示すように作動流体をラバーブッシュ31と両立性のある通常の粘性流体、例えば、オイルとし、連通部33に重力と磁力で上下動する金属製のボール弁19を配して、電磁石17が通電時にボール弁19を上方に吸着して、連通部33を閉塞させるような構造としても良い。
本発明の実施の形態における車両用サスペンション装置を適用した車両の概略構成図である。 (a)は左側のサスペンション装置を、斜め後上方から見た斜視図であり、(b)は前方リンク部材および後方リンク部材の車体側端部の車両前後方向の軸に対する横断面である。 コントロールユニットにおけるトー角制御の流れを示すフローチャートである。 左旋回時に旋回外側方向から各車輪に付与される横力により、車輪のトー角を設定する作用を説明する図であり、(a)は前輪のトー角を旋回内側方向に制御することを示し、(b)は後輪のトー角をトーイン状態に制御することを示し、(c)は(b)の変形として後輪のトー角を旋回外側方向に制御することを示す。 第1の変形例におけるコントロールユニットにおけるトー角制御の流れを示すフローチャートである。 路面凹凸検知センサの構成を示す図であり、(a)は路面凹凸検知センサのサスペンション装置への取り付け方法を説明する図であり、(b)は路面凹凸検知センサの作用を説明する図である。 Aアームを用いたサスペンション装置における適用を説明する図である。 剛性可変手段の変形例を説明する図である。
符号の説明
1 車両
2、2FL、2FR、2RL、2RR 車輪
3 サスペンション装置
4 コントロールユニット(制御手段)
11A 前方リンク部材(リンク部材)
11B 後方リンク部材(リンク部材)
11C Aアーム(リンク部材)
11a 車輪側軸支部(車輪側端部)
11b 車体側軸支部(車体側端部)
13 車輪支持部材
15A 前輪サスペンションメンバ(車体側接続部)
15B 後輪サスペンションメンバ(車体側接続部)
17 電磁石(剛性可変手段、流通阻止手段)
18 軸支ボルト
19 ボール弁(剛性可変手段、流通阻止手段)
21 ヨーレートセンサ(車両状態検出手段)
22 横加速度センサ(車両状態検出手段)
23 車輪速度センサ(車両状態検出手段)
24 操舵角センサ(車両状態検出手段)
25 路面凹凸検知センサ(路面状態検知手段)
31 ラバーブッシュ(弾性部材)
32A、32B 室(剛性可変手段)
33 連通部(剛性可変手段)
42 磁石
43 コイル
44 整流回路

Claims (3)

  1. 一端側に車輪支持部材に連結される車輪側端部および他端側に車体側接続部に連結される車体側端部を有するリンク部材を前後に並べて構成され、
    前記車輪側端部および前記車体側端部のうちの少なくとも一方が車幅方向に変形可能な弾性部材を介して連結される構成を4輪車両の各車輪に対してそれぞれ有する車両用サスペンション装置において、
    前記4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの前記弾性部材の車幅方向における剛性を可変にする剛性可変手段と、
    車両の走行状態である車両状態を検出する車両状態検出手段と、
    路面の凹凸を検知する路面状態検知手段と、
    前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態および前記路面状態検知手段が検知した前記路面の凹凸状態に応じて前記4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの前記剛性可変手段の剛性を個別に制御する制御手段と、
    を備え
    前記剛性可変手段は、前記弾性部材の車体外側領域と車体内側領域とに区画された2つの室と、該2つの室を接続する連通部と、前記2つの室内に充填された作動流体と、前記連通部に設けられた前記作動流体の流通を阻害または阻止する流通阻止手段と、を含み、
    前記制御手段は、前記車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、前記路面状態検知手段が前記路面の凹凸を検知しているとき、
    転舵輪である前輪に対しては、該前輪に加わる横力を受けて旋回内側方向へのトー角変更となるように、当該の前記流通阻止手段により前記作動流体の前記連通部の流通を阻害または阻止して、前記剛性可変手段が前記弾性部材の剛性を高めるとともに、
    後輪に対しては、該後輪に加わる横力を受けてトーイン方向へのトー角変更となるように、当該の前記流通阻止手段により前記作動流体の前記連通部の流通を阻害または阻止して、前記剛性可変手段が前記弾性部材の剛性を高めることを特徴とする車両用サスペンション装置。
  2. 一端側に車輪支持部材に連結される車輪側端部および他端側に車体側接続部に連結される車体側端部を有するリンク部材を前後に並べて構成され、
    前記車輪側端部および前記車体側端部のうちの少なくとも一方が車幅方向に変形可能な弾性部材を介して連結される構成を4輪車両の各車輪に対してそれぞれ有する車両用サスペンション装置において、
    前記4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの前記弾性部材の車幅方向における剛性を可変にする剛性可変手段と、
    車両の走行状態である車両状態を検出する車両状態検出手段と、
    路面の凹凸を検知する路面状態検知手段と、
    前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態および前記路面状態検知手段が検知した前記路面の凹凸状態に応じて前記4輪車両の各車輪に対応したそれぞれの前記剛性可変手段の剛性を個別に制御する制御手段と、
    を備え
    前記剛性可変手段は、前記弾性部材の車体外側領域と車体内側領域とに区画された2つの室と、該2つの室を接続する連通部と、前記2つの室内に充填された作動流体と、前記連通部に設けられた前記作動流体の流通を阻害または阻止する流通阻止手段と、を含み、
    前記制御手段は、前記車両状態検出手段が車両の旋回運動開始を検出し、かつ、前記路面状態検知手段が前記路面の凹凸を検知しているとき、
    転舵輪である前輪に対しては、該前輪に加わる横力を受けて旋回内側方向へのトー角変更となるように、当該の前記流通阻止手段により前記作動流体の前記連通部の流通を阻害または阻止して、前記剛性可変手段が前記弾性部材の剛性を高めるとともに、
    後輪に対しては、該後輪に加わる横力を受けて旋回方向外側の逆相へのトー角変更となるように、当該の前記流通阻止手段により前記作動流体の前記連通部の流通を阻害または阻止して、前記剛性可変手段が前記弾性部材の剛性を高めることを特徴とする車両用サスペンション装置。
  3. 前記路面状態検知手段は、サスペンション構成部材に取り付けられたコイルと磁性体とから構成され、前記コイルに誘導発電された電気により路面の凹凸を検知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンション装置。
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