JP4823545B2 - リチウム電池用正極活物質の製造方法及びリチウム電池用正極活物質並びにリチウム電池 - Google Patents
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Description
代表的な二次電池としては鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウム電池等が知られているが、特に、リチウム電池は、小型化、軽量化、高容量化が可能であり、しかも、高出力、高エネルギー密度を有していることから、大いに期待されており、研究も盛んに行われている。
このリチウム電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極と、負極と、非水系の電解質により構成されている。
この正極活物質としては、金属酸化物、金属硫化物、あるいはポリマー等が用いられ、例えば、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、セレン化ニオブ(NbSe2)、酸化バナジウム(V2O5)等のリチウム非含有化合物、あるいはLiMO2(M=Co、Ni、Mn、Fe等)、LiMn2O4等のリチウム複合酸化物等が知られている。
しかしながら、Coは、地球上に偏在しかつ希少な資源であるため、コストが高くつく他、安定供給が難しいという問題があり、そこで、Coに替わる資源として、地球上に豊富に存在し、しかも安価なNiやMnをベースにした正極活物質、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等を用いた正極材料が提案され、実用に供されるようになった。
一方、LiMn2O4は、正スピネル型構造を有し、かつ空間群Fd3mを有することから、リチウム電極に対し4V級というLiCoO2と同等の高い電位を有し、しかも、合成が容易、高い電池容量等の優れた特徴を有するために、非常に有望な材料として注目され、実用化もされてきた。
このLiMn2O4は、この様に優れた材料ではあるが、このLiMn2O4を用いた電池では、高温保存時における容量劣化が大きく、また、Mnが電解液に溶解してしまうこともあり、したがって、安定性や充放電サイクル特性が充分でないという問題点が残されていた。
このLiFePO4は、金属リチウム(Li)に対して3.3V程度の電位を示し、充放電可能な正極材料として用いることが可能である。
リチウム遷移金属リン酸塩のようなリン酸塩系物質は、従来、いわゆる固相法が用いられていたが、最近では、水熱合成法で各種有機酸を用いることにより、遷移金属のリン酸化合物の微結晶を得る方法も提案されている(特許文献3参照)。
また、固相法では、粒子径を小さくするには、より低温かつ短時間で焼成するのがよいのであるが、この場合、合成時の焼成温度が低いために合成時の結晶化度や粒径を制御することが難しく、得られるリチウム金属リン酸化合物は小さな結晶子が無秩序に並んだ構造を有するものとなる。したがって、リチウム金属リン酸化合物の結晶相は十分に生成・発達せず、結晶性も低いものとなり、粒子内のイオンの拡散性や電子伝導性が悪く、充放電時の分極が大きくなるという問題点があった。
水熱法では、原料を含む溶液にクエン酸のような高温で分解する水溶性有機酸を添加すれば、この溶液を均一化することができるために、高結晶性かつ微粒子のリチウム金属リン酸化合物(LixAyD2PO4)が得られる。しかしながら、この水熱法においても、オートクレーブ等の耐圧容器を用いてバッチ式合成を行う際に、収量を増やすために耐圧容器を大型化すると、耐圧容器の大型化に伴って昇温速度を低くせざるを得ず、微粒化に影響を及ぼすクエン酸の分解反応速度が限定されるという問題点があった。
前記有機酸は、ヒドロキシカルボン酸またはカルボン酸であることが好ましく、前記ヒドロキシカルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
したがって、結晶性に優れ、形状及び粒径の揃ったLixAyDzPO4を主成分とするリチウム電池用正極活物質を容易に製造することができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
まず、前記溶液またはスラリーを温度(1)、例えば−80℃以上かつ300℃以下の温度に保持し、次いで、この溶液またはスラリーを温度(1)より高くかつ室温(25℃)以上かつ800℃以下の温度(2)に保持して溶液またはスラリー内にLixAyDzPO4を主成分とする結晶核を析出させ、その後、結晶核を含む溶液またはスラリーを温度(3)に保持し、この溶液またはスラリー中の結晶核を成長させる。
これにより、LixAyDzPO4の微結晶を連続して製造することができる。
まず、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法が適用される製造装置について説明する。
図1は、リチウム電池用正極活物質の製造装置を示す概略構成図であり、結晶性、形状及び粒径が制御されたLixAyDzPO4を主成分とするリチウム電池用正極活物質を連続して製造する装置である。
この溶液(またはスラリー)Sは、水を主成分とする溶媒に、リチウム電池用正極活物質の成分であるLi成分、P成分、A成分及びD成分を加え、必要に応じて水に可溶な有機酸を加え、攪拌・混合したものである。
この反応槽8には、結晶核を含む溶液(またはスラリー)S’を攪拌する攪拌機11、結晶核を含む溶液(またはスラリー)S’を温度(3)に加熱し保持するヒーター12、反応槽8内を所定の圧力のアルゴン(Ar)ガス雰囲気にするためのArボンベ13及びArガスの圧力を測定するための圧力計14が設けられている。
この製造装置では、これら原料タンク1からポンプ27に至るそれぞれの作動は、図示しない制御装置により制御されている。
この製造装置は、溶液(またはスラリー)が原料タンク1から送り出された後、配管2、5、反応槽8、配管21を経由して容器24にて回収されるまで、外部の雰囲気から隔離された閉鎖型の反応系となっている。
また、反応槽8の温度範囲についても、結晶核を所定の大きさ及び形状の結晶に成長させることのできる温度範囲であればよく、低温部6及び結晶核析出部7と同様、特に限定するものではないが、加熱、冷却のいずれかの方法を採用することにより、−80℃から800℃まで設定することが可能である。
まず、LixAyDzPO4の原料となる溶液(またはスラリー)Sを調整し、原料タンク1に貯留する。
水を主成分とする溶媒に、LixAyDzPO4の原料となるLi成分、P成分、A成分(但し、AはCo、Ni、Mn、Fe、Cu、Crから選択された1種)、D成分(但し、DはMg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素から選択された1種または2種以上かつ前記Aと異なる)を加え、攪拌・混合し、溶液(またはスラリー)Sを調整する。ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
その理由は、水は安価であり、臨界点付近で誘電率の大きな変化を示すことから、温度、圧力の操作により容易に各物質に対する溶解度等の溶媒物性を制御することが可能だからである。
D成分としては、Mg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素各々のうちA成分と異なる元素の金属塩のうち1種または2種以上が用いられ、例えば、Al2(SO4)3、MgSO4、Ti(SO4)2等の硫酸塩、Al(CH3COO)3、Mg(CH3COO)2等の酢酸塩、AlCl3、CaCl2、TiCl4等の塩化物、等のような金属塩が好ましい。
水に可溶な有機酸を加えることにより、難溶性物質を生成せずに均一に溶液化された溶液(またはスラリー)を調整することができる。
(A)金属イオンに対するキレート効果が高いことから、生じたLiFePO4等のLixAyDzPO4結晶核の成長を抑制する。
(B)分解時に還元性を示すため、A成分やD成分の酸化を防止する。例えば、A成分としてFeを用いる場合、Feの2価から3価への酸化を防止する。
この有機酸は、Li成分、P成分、A成分及びD成分を加えて出発原料を調整する際に、これらの成分と同時に添加してもよく、これらの成分を混合した後に添加してもよい。
ここで、溶液(またはスラリー)Sをドライアイスを加えたエタノールからなる寒剤を用いて冷却すれば、−80℃、あるいはその近辺にまで冷却可能である。また、溶液(またはスラリー)Sをヒーターにより加熱すれば、有機溶剤の耐熱温度である300℃まで加熱可能である。
低温部6と結晶核析出部7との間に急峻な温度勾配があるので、ここを通過する溶液(またはスラリー)Sは急激な温度変化による急激な化学反応により、極めて微小なLixAyDzPO4の結晶核を瞬時にしかも多量に生成することとなる。
同時に、Arボンベ13及び圧力計14により反応槽8内部の雰囲気が、例えば、0.1〜30MPaのAr雰囲気に保たれる。
ここでは、微小なLixAyDzPO4の結晶核を基に、結晶性が良く、均一な粒径及び形状のLixAyDzPO4微結晶に徐々に成長させる必要があるので、温度(3)は温度(2)以下であることが好ましい。
ここでは、熟成の際の温度、雰囲気及び圧力を一定に保持しているので、微小な結晶核を基にLixAyDzPO4微結晶を容易かつ大量に、しかも連続的に生成することができる。
以上により、LixAyDzPO4微結晶、あるいはLixAyDzPO4微結晶を含む溶液(またはスラリー)S”を連続して製造することができる。
しかも、装置構成が簡単であり、しかも安価であるから、製造コストを大幅に削減することができる。
本実施形態の溶液(またはスラリー)Sを原料とする粉末合成は、各種金属酸化物、リン酸化合物、シュウ酸化合物、水酸化物等の粉末を合成する水熱合成に適用可能である。
(実施例)
0.2molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、0.1molの硫酸鉄(II)(FeSO4)、0.1molのオルトリン酸(H3PO4)、0.1molのクエン酸及び純水を、総量が0.2リットル(L)となる様に混合し、均一な透明溶液を得た。
また、反応槽8内を8MPaのAr雰囲気とし、その温度を170℃とした。その後、得られた生成物を濾過により分離・回収し、水洗後乾燥し、試料1を得た。
0.2molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、0.1molの硫酸鉄(II)(FeSO4)、0.1molのオルトリン酸(H3PO4)、0.1molのクエン酸及び純水を、総量が0.2Lとなる様に混合し、均一な透明溶液を得た。
次いで、この透明溶液を容量が0.3Lのオートクレーブに収納し、窒素雰囲気の下、170℃にて3時間保持し、反応させた。
その後、オートクレーブ内の生成物を濾過により分離・回収し、水洗後乾燥し、試料2を得た。
これらの図によれば、実施例で得られた試料1は、100nm程度の極めて微小な微結晶であることが分かった。一方、比較例で得られた試料2は、500nm程度の粗大な結晶であり、しかも結晶径に大きなばらつきがあることが分かった。
2 配管
3 ポンプ
4 原料供給部
5 配管
6 低温部
7 結晶核析出部
8 反応槽
11 攪拌機
12 ヒーター
13 Arボンベ
14 圧力計
21 配管
22 逆止弁
23 背圧弁
24 容器
25 水槽
26 配管
27 ポンプ
Claims (6)
- LixAyDzPO4(但し、AはCo、Ni、Mn、Fe、Cu、Crから選択された1種、DはMg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素から選択された1種または2種以上かつ前記Aと異なる、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)にて表されるリチウム電池用正極活物質の製造方法であって、
水を主成分とする溶媒に、前記LixAyDzPO4の原料となるリチウム(Li)成分、リン(P)成分、A成分及びD成分を加えて温度(1)の溶液またはスラリーとし、次いで、この溶液またはスラリーを前記温度(1)と異なる温度(2)に保持して結晶核を析出させ、次いで、この溶液またはスラリー中の結晶核を温度(3)にて成長させることを特徴とするリチウム電池用正極活物質の製造方法。 - 前記溶媒に、さらに、水に可溶な有機酸を加えることを特徴とする請求項1記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
- 前記有機酸は、ヒドロキシカルボン酸またはカルボン酸であることを特徴とする請求項2記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
- 前記ヒドロキシカルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸の群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項3記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたことを特徴とするリチウム電池用正極活物質。
- 請求項5記載のリチウム電池用正極活物質を正電極に用いてなることを特徴とするリチウム電池。
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