JP4820983B2 - 微生物群集、人工培地、微生物群集組成物、微生物群集の活性維持・増強方法、汚染土壌の浄化方法、土壌汚染物質の拡散防止方法 - Google Patents
微生物群集、人工培地、微生物群集組成物、微生物群集の活性維持・増強方法、汚染土壌の浄化方法、土壌汚染物質の拡散防止方法 Download PDFInfo
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Description
Sludge Blanket)反応装置によるPCB嫌気性分解の報告がある。但し、その嫌気性分解を行う微生物は特定されていない。
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、芳香族塩素化合物で汚染されていない湿地還元層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することにより得られる微生物群集であって、下記(1)の分解活性を示し、更に下記(2)及び/又は(3)に該当する分解活性維持能力を示すものである、微生物群集である。
(1)少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性を示す。
(2)殺菌土壌に対する5回以上の継代培養を繰り返しても初期分解活性以上の分解活性を維持できる。
(3)初期分解活性以上の分解活性を10ケ月以上維持できる。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る土壌微生物群集が水田のグライ層土壌の土壌微生物群集である、微生物群集である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る(1)の分解活性を示す土壌微生物群集が、前記土壌中培養を4ケ月以上行うことにより得られるものであり、前記第1発明又は第2発明に係る(1)〜(3)の分解活性及び分解活性維持能力を示す土壌微生物群集が、前記土壌中培養を10ケ月以上行うことにより得られるものである、微生物群集である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集であって、優占種として少なくとも Clostridium属の嫌気的微生物を含み、かつ、以下の(4)及び/又は(5)に該当する、微生物群集である。
(4)キノンプロファイル法による微生物群集構造解析においてメナキノン6,7のみが検出される。
(5)主として、δ,ε−サブクラスのプロテオバクテリアに属する微生物からなる。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集であって、その分解反応の主反応として芳香環のメタ位及びパラ位における脱塩素反応を起こし、かつ、汚染土壌中で検出される芳香族塩素化合物の主体をなす2塩素化物〜6塩素化物のいずれに対しても脱塩素活性を示す、微生物群集である。
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る芳香族塩素化合物の2塩素化物〜6塩素化物に対する脱塩素活性が、下記の式に定義する脱塩素化率として5%以上の値を示すものである、微生物群集である。
脱塩素化率(%)=〔1−(培養後全塩素化量/培養前全塩素化量)〕×100
(上記の式において、「全塩素化量」は、培地中の芳香族塩素化合物の2、3、4、5、6塩素化物のそれぞれの含有量を2P、3P、4P、5P、6Pであると規定した場合、(2P×2)、(3P×3)、(4P×4)、(5P×5)、(6P×6)の総和で与えられる。又、「培養前全塩素化量」、「培養後全塩素化量」とは、それぞれ、微生物群集の培養開始直前及び56日間の培養後における培地の全塩素化量を言う。)
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を接種するために調製される人工培地であって、任意の微生物培地と、これに対して添加される、孔隙に富む多孔質材料である人工生息場材とからなり、接種された微生物群集の嫌気的分解活性を10ケ月以上維持させ、及び/又は、2倍以上に増強させることができるものである、人工培地である。
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第7発明に係る多孔質材料が、活性炭、無機質材料製ビーズの集積体又は焼成土である、人工培地である。
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第7発明又は第8発明に係る多孔質材料の平均孔隙径が10〜800μmの範囲内である、人工培地である。
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第7発明〜第9発明のいずれかに係る多孔質材料に金属粉が混合されている、人工培地である。
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、前記第10発明に係る金属粉が鉄粉又はチタン粉である、人工培地である。
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を、第7発明〜第11発明のいずれかに係る人工培地に接種して嫌気条件下で培養したものである、微生物群集組成物である。
上記課題を解決するための本願第13発明の構成は、前記第12発明に係る微生物群集の嫌気的分解活性が接種後10ケ月以上維持され、及び/又は、接種後2倍以上に増強されている、微生物群集組成物である。
上記課題を解決するための本願第14発明の構成は、前記第12発明又は第13発明において規定された微生物群集が、第1発明〜第6発明のいずれかに係る微生物群集である、微生物群集組成物である。
上記課題を解決するための本願第15発明の構成は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を、第7発明〜第11発明のいずれかに係る人工培地に接種して嫌気的条件下で培養することにより、接種前における微生物群集の嫌気的分解活性を10ケ月以上維持させ、及び/又は、2倍以上に増強させる、微生物群集の活性維持・増強方法である。
上記課題を解決するための本願第16発明の構成は、前記第15発明において規定された微生物群集が、第1発明〜第6発明のいずれかに係る微生物群集である、微生物群集の活性維持・増強方法である。
上記課題を解決するための本願第17発明の構成は、芳香族塩素化合物で汚染された土壌に対して、第1発明〜第6発明のいずれかに係る微生物群集又は第12発明〜第14発明のいずれかに係る微生物群集組成物を散布又は混合する、汚染土壌の浄化方法である。
上記課題を解決するための本願第18発明の構成は、芳香族塩素化合物で汚染された土壌地域に対して、第1発明〜第6発明のいずれかに係る微生物群集又は第12発明〜第14発明のいずれかに係る微生物群集組成物を含むバリヤー層を、当該土壌地域の周囲の土壌中に上下方向に構築し、及び/又は、当該土壌地域の底層の土壌中に水平方向に構築し、前記バリヤー層の外側への芳香族塩素化合物の拡散を防止する、土壌汚染物質の拡散防止方法である。
第1発明では、まず土着の優れた嫌気性微生物群集に着目し、これに対して嫌気的条件下に芳香族塩素化合物培地を提供して、有効な分解活性を誘導する。
本発明では微生物群集の採取源として湿地還元層土壌を用いるが、そのような土壌としては、低湿地や沼地等のグライ層土壌、例えば水田のグライ層土壌等が好ましく例示される。
湿地還元層土壌の微生物群集に対して芳香族塩素化合物の分解活性を誘導するには、ある程度の誘導期間(土壌中培養期間)を見込むことが望ましいが、特にPCBやダイオキシン類等の多環芳香族塩素化合物に対する十分な分解活性を誘導するためには、多環芳香族塩素化合物を投与して嫌気的条件下で4ケ月以上の期間を見込むことが好ましい。
本願発明者が得た芳香族塩素化合物分解性の微生物群集の一例については、その微生物群集の構造的特徴として、 Clostridium属の嫌気的微生物を優占種として含むこと、第4発明で前記した(4)及び/又は(5)に該当すること、等が判明している。従ってこの微生物群集は、専ら Dehalococcoides属細菌(前記の非特許文献4、5で報告されたもの)を主体とする微生物群集とは異なるものと考えられる。
本願発明者が得た芳香族塩素化合物分解性の微生物群集の一例については、その微生物群集における分解反応メカニズム面の特徴として、主反応が芳香環のメタ位及びパラ位における脱塩素反応であることが判明しているので、コプラナーPCB等の脱塩素反応に好適であると考えられる。
上記第5発明に係る芳香族塩素化合物分解性の微生物群集は、より具体的には、芳香族塩素化合物の2塩素化物〜6塩素化物に対する脱塩素活性が、第6発明に定義する「脱塩素化率」として、5%以上の値を示す。このように広範囲の芳香族塩素化合物に対して高い脱塩素活性を示す微生物群集は、今までに報告されたことがない。
本願発明者は、湿地還元層土壌の嫌気性微生物群集に対する上記のような分解活性誘導法によって、第1発明〜第6発明に述べるような優れた分解活性を示す微生物群集を得たが、更にその分解活性を増強し、かつ安定的に維持させる手段を研究する過程で、第7発明の人工培地の開発に成功した。
上記の第7発明における人工生息場材を構成する多孔質材料とは、より好ましくは、活性炭、無機質材料製ビーズの集積体又は焼成土である。現在までに集積された実験データから言えば、芳香族塩素化合物の分解活性を有する微生物群集をこのような人工培地に接種した場合に、人工生息場材が無機質材料製ビーズの集積体又は焼成土である場合には微生物群集の分解活性を約2倍に増強させることに成功し、人工生息場材が活性炭(特に第10発明に係る金属粉混合活性炭)であるには微生物群集の分解活性を約3倍に増強させることに成功している。
人工生息場材たる多孔質材料は、細孔の平均孔隙径が、10〜800μmの範囲内であることが特に好ましい。平均孔隙径が10μm未満である場合には、必要な微生物の構成種が共生し難くなることが懸念される。一方、平均孔隙径が800μmを超える場合には、必要な微生物の構成種以外の微生物群による妨害が起こり易くなることが懸念される。
人工培地に接種された微生物群集の分解活性を安定的に維持し及び/又は増強する上で、人工生息場材には金属粉を混合しておくことが、特に好ましい。そのような効果は、人工生息場材としての活性炭に金属粉を混合した場合に特に顕著である。
上記した理由から、人工生息場材に混合する金属粉としては、鉄やチタン等の還元性である金属の粉がとりわけ好ましい。
少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物の嫌気的分解活性を有する微生物群集を、第7発明〜第11発明に係る人工培地に接種して嫌気条件下で培養すると、上記した理由から、微生物群集の芳香族塩素化合物に対する分解活性が更に安定的に維持され、及び/又は、増強された微生物群集組成物を得ることができる。
上記した第12発明の微生物群集組成物においては、より具体的には、接種前に微生物群集が示していた芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性が、接種後10ケ月以上(好ましい場合には2年半以上)維持され、及び/又は、接種後2倍以上に増強され得る。
人工培地に接種する微生物群集は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性を有する限りにおいて限定されないが、特に第1発明〜第6発明に係る微生物群集を接種することが好ましい。この場合、特に多環芳香族塩素化合物に対する優れた嫌気的分解活性が、良好に維持され、及び/又は、増強される。
上記した第12発明の場合と同じ理由から、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を、第7発明〜第11発明に係る人工培地に接種して嫌気的条件下で培養すると言う方法により、接種前における微生物群集の嫌気的分解活性を10ケ月以上(好ましい場合には2年半以上)維持させ、及び/又は、2倍以上に増強させ得る。
上記した第15発明の方法において、人工培地に接種する微生物群集は、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性を有する限りにおいて限定されないが、特に第1発明〜第6発明に係る微生物群集を接種することが好ましい。この場合、特に多環芳香族塩素化合物に対する優れた嫌気的分解活性が、良好に維持され、及び/又は、増強される。
以上に述べた点から、芳香族塩素化合物で汚染された土壌に対して、第1発明〜第6発明に係る微生物群集又は第12発明〜第14発明に係る微生物群集組成物を散布又は混合すると言う、汚染土壌の優れた浄化方法が提供される。
芳香族塩素化合物で汚染された土壌を浄化するに当たり、上記した第17発明のような方法も有用であるが、一般論として微生物浄化法に共通する処理能力の量的限界を考慮した場合、第18発明のように当該汚染土壌地域の周囲、及び/又は、底層にバリヤー層を構築し、少なくともバリヤー層の外側への芳香族塩素化合物の拡散を防止する、と言う方法も極めて有効である。
本発明において、芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性を示す微生物群集を取得する方法は、微生物群集の採取源として芳香族塩素化合物で汚染されていない湿地還元層土壌の土壌微生物群集を利用する点、及び、このような湿地還元層土壌に芳香族塩素化合物を投与して、嫌気的条件下で土壌中培養する点に特徴がある。
上記の方法により本発明に係る芳香族塩素化合物分解性の微生物群集が得られるが、この微生物群集の第1の特徴点は、PCBやダイオキシン類のような多環芳香族塩素化合物にも有効な分解活性を示す点である。第2の特徴点は、分解反応の主反応として、芳香環のメタ位及びパラ位における脱塩素反応を起こす点である。このような微生物群集は、例えばコプラナーPCBの分解に有利であると考えられる。第3の特徴点は、多環芳香族塩素化合物も含めた芳香族塩素化合物の多様な同族体に対して広範囲な脱塩素活性を示すことであって、より具体的には、芳香族塩素化合物の2塩素化物〜6塩素化物に対する脱塩素活性が、前記した「脱塩素化率」として5%以上の値を示すと言うデータが得られている。
本発明に係る人工培地は、芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を接種するために調製されるものであって、任意の微生物培地と、これに対して添加される人工生息場材とからなる。人工生息場材とは、孔隙に富む多孔質材料である。
(人工生息場材)
ガラスビーズ 4〜8g(培地20mLあたり)
(培地:pH7.0)
K2 HPO4 0.5g(培地1Lあたり)
(NH4 )2 SO4 0.5g(培地1Lあたり)
MgSO4 ・7H2 O 0.1g(培地1Lあたり)
FeSO4 ・7H2 O 0.02g(培地1Lあたり)
Yeast extract 0.5g(培地1Lあたり)
Na-acetate 8g(培地1Lあたり)
Na-lactate 10g(培地1Lあたり)
resazurin 0.001g(培地1Lあたり)
〔微生物群集組成物及び微生物群集の活性維持・増強方法〕
以上のように構成される人工培地に、本発明に係る微生物群集、あるいは公知のものも含めてその他の芳香族塩素化合物分解性の適宜な微生物群集を接種し、微生物群集組成物を構成することにより、嫌気的条件下において、その微生物群集の芳香族塩素化合物に対する分解活性を有効に維持させ、及び/又は、増強させることができる。微生物群集の接種法は限定されないが、例えば微生物群集の培養物の土壌懸濁物を接種源とする方法や、培養物上清液を接種すると言う接種法を採用することができる。
本発明によれば、以上に述べた各種の微生物群集又は微生物群集組成物を芳香族塩素化合物で汚染された土壌に対して適用することにより、優れた浄化効果を期待することができる。具体的な適用方法としては、例えば微生物群集又は微生物群集組成物を汚染土壌に対して散布し、又は混合することができる。
芳香族塩素化合物非汚染水田より中粗粒強グライ土壌を採取した。採取直後の土壌はPCB分解活性をほとんど示さなかった。
実施例1で用いたと同様の水田土壌4gを、オートクレーブ中で121°C×30分の熱処理を毎日1回、3日間繰り返すと言う殺菌処理に供し、実施例1と同じPCB剤混合物を5ppm添加したもとで、これを炭素源を含む液体培地で飽和した全20mLの植継ぎ用培地を準備した。この植継ぎ用培地に対して実施例1で得られた微生物群集を含む土壌培地1mLを接種する植継ぎを行った後、実施例1と同様の条件で嫌気培養し、PCBに対する嫌気的分解活性の維持・増強(PCB分解性微生物の集積)を検討した。更に、同じ要領で、新たに準備した上記と同様の全20mLのPCB添加植継ぎ用培地に対して前培養物の一部を接種する植継ぎを繰り返す継代培養を行った。
1)植継ぎ用培地の炭素源として乳酸、酢酸又はグルコースを用いた場合。
2)脱塩素反応に配慮して植継ぎ用培地の性質(酸化還元電位)をシステイン塩酸塩、チオグリコール酸又は硫化ナトリウムの添加により変化させた場合。
3)植継ぎ用培地に対する土壌中微生物群の接種量を0.1〜10mLの範囲内で変更した場合。
4)植継ぎ後の培養温度を、4〜30°Cの範囲内での種々の一定温度に設定した場合。
5)培養期間をそれぞれ14日、28日、56日に設定した場合。
6)培養条件として、振とう培養又は静置培養を行った場合。
a)植継ぎ用培地全20mLに対して、前培養物を1mL程度接種する。
b)植継ぎ用培地に炭素源は必要で、特に乳酸及び/又は酢酸が優れる。
c)還元剤無添加で、30°C程度での8週間程度の嫌気的培養を行う。
実施例2で15回の継代培養(各8週間)により約2年半近いPCB分解活性維持に成功している系統について、各継代培養でのPCBの分解活性を図2に示す。図2においては、継代回数を横軸に示し、縦軸にその継代培養における培養後の(8週間経過後の)全PCB残留率を示した。この培養後全PCB残留率は培養前の全PCB回収量に対する培養後全PCB残留量のパーセンテージで示した。培養期間中、PCBの10%未満の土壌吸着が認められた。図2において、第9回目の継代培養での全PCB残留率が100%前後となっているのは、前記の図1(b)の場合と同じ理由で、分解は起こっているものの分解率が低く見積もられているためである。
実施例2における継代8週間経過後の微生物群集につき、キノンプロファイル法により群集構造解析を行ったところ、メナキノン6,7のみが検出された。従って、継代維持されている微生物群集は、主としてδ,ε−サブクラスのプロテオバクテリアに属する微生物からなることが分かった。
gel electrophoresis )法による解析も行い、各バンドについてランダムクローニングによるシーケンス解析を行い、微生物群集の解析も行った。それによると、少なくとも Clostridium属の嫌気的微生物を優占種として含み、その他にも、 Dehalococcoides属細菌、Pseudomonas 属細菌、Sedimentbacter属細菌、Peptostreptococcaceas 属細菌、Acetoanaerobacter 属細菌等も検出される場合があったが、条件によってその結果は異なった。更に、クロロ安息香酸による嫌気的集積物中や、嫌気的TCE脱塩素微生物集積物中から得られた未同定株が検出された。
上記の実施例1〜実施例4では殺菌土壌を用いて継代培養を行ったが、微生物群集のPCBに対する嫌気的分解活性が長期安定的に維持される一方、その分解活性が顕著に向上することはなかった。そこで、微生物群集のPCB分解活性を更に顕著に向上させる人工培地の開発を試みた。
人工培地の人工生息場材として、粒径0.5mmのガラスビーズ(の集積体)と、実施例1で用いたと同様の水田土壌に対して550°Cで24時間の焼成を行った焼成土とを用いた。これらの人工培地の組成は下記に示す。そして、前記した殺菌土壌と同量のこれら人工培地(液体培地)に対して実施例1と同濃度にPCB剤混合物を添加したもとで、前記した殺菌土壌の場合と同様に、実施例1で得られた微生物群集を含む土壌の一部を接種する植継ぎを行い、嫌気的条件下での継代培養を繰り返した。
(人工生息場材)
ガラスビーズ 4〜8g(培地20mLあたり)
(培地:pH7.0)
K2 HPO4 0.5g(培地1Lあたり)
(NH4 )2 SO4 0.5g(培地1Lあたり)
MgSO4 ・7H2 O 0.1g(培地1Lあたり)
FeSO4 ・7H2 O 0.02g(培地1Lあたり)
Yeast extract 0.5g(培地1Lあたり)
Na-acetate 8g(培地1Lあたり)
Na-lactate 10g(培地1Lあたり)
resazurin 0.001g(培地1Lあたり)。
(人工生息場材)
焼成土 4〜8g(培地20mLあたり)
(培地:pH7.0)
K2 HPO4 0.5g(培地1Lあたり)
(NH4 )2 SO4 0.5g(培地1Lあたり)
MgSO4 ・7H2 O 0.1g(培地1Lあたり)
FeSO4 ・7H2 O 0.02g(培地1Lあたり)
Yeast extract 0.5g(培地1Lあたり)
Na-acetate 8g(培地1Lあたり)
Na-lactate 10g(培地1Lあたり)
resazurin 0.001g(培地1Lあたり)。
人工培地の人工生息場材として、金属粉混合活性炭を用いた。即ち、活性炭に微生物群集を定着させるため、実施例5−1に従って粒径0.5mmのガラスビーズの集積体を人工生息場材とする人工培地による継代培養を行った培養物を接種源とし、鉄粉50重量%を混合した固形の鶏糞活性炭1粒(約3cm:TYK株式会社製)を前記のガラスビーズ集積体人工培地に入れた後、この培地に実施例1と同濃度に前記のPCB剤混合物を添加したもとで、嫌気条件下に4週間培養した。
Claims (17)
- 芳香族塩素化合物で汚染されていない水田のグライ層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することによって得られる微生物群集であって、下記の(1)の分解活性を示し、更に下記の(2)及び/又は(3)に該当する分解活性維持能力を示すものであることを特徴とする微生物群集。
(1)少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対する嫌気的分解活性を示す。
(2)殺菌土壌に対する5回以上の継代培養を繰り返しても初期分解活性以上の分解活性を維持できる。
(3)初期分解活性以上の分解活性を10ケ月以上維持できる。 - 前記(1)の分解活性を示す土壌微生物群集が前記土壌中培養を4ケ月以上行うことにより得られるものであり、前記(1)〜(3)の分解活性及び分解活性維持能力を示す土壌微生物群集が前記土壌中培養を10ケ月以上行うことにより得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の微生物群集。
- 芳香族塩素化合物で汚染されていない水田のグライ層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することによって得られる、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集であって、優占種として少なくとも Clostridium属の嫌気的微生物を含み、かつ、以下の(4)及び/又は(5)に該当することを特徴とする微生物群集。
(4)キノンプロファイル法による微生物群集構造解析においてメナキノン6,7のみが検出される。
(5)主として、δ,ε−サブクラスのプロテオバクテリアに属する微生物からなる。 - 芳香族塩素化合物で汚染されていない水田のグライ層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することによって得られる、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集であって、その分解反応の主反応として芳香環のメタ位及びパラ位における脱塩素反応を起こし、かつ、汚染土壌中で検出される芳香族塩素化合物の主体をなす2塩素化物〜6塩素化物のいずれに対しても脱塩素活性を示すことを特徴とする微生物群集。
- 前記芳香族塩素化合物の2塩素化物〜6塩素化物に対する脱塩素活性が、下記の式に定義する脱塩素化率として5%以上の値を示すものであることを特徴とする請求項4に記載の微生物群集。
脱塩素化率(%)=〔1−(培養後全塩素化量/培養前全塩素化量)〕×100
(上記の式において、「全塩素化量」は、培地中の芳香族塩素化合物の2、3、4、5、6塩素化物のそれぞれの含有量を2P、3P、4P、5P、6Pであると規定した場合、(2P×2)、(3P×3)、(4P×4)、(5P×5)、(6P×6)の総和で与えられる。又、「培養前全塩素化量」、「培養後全塩素化量」とは、それぞれ、微生物群集の培養開始直前及び56日間の培養後における培地の全塩素化量を言う。) - 芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を接種するために調製される人工培地であって、任意の微生物培地と、これに対して添加される、孔隙に富む多孔質材料である人工生息場材とからなり、接種された微生物群集の嫌気的分解活性を10ケ月以上維持させ、及び/又は、2倍以上に増強させることができるものであることを特徴とする人工培地。
- 前記多孔質材料が、活性炭、無機質材料製ビーズの集積体又は焼成土であることを特徴とする請求項6に記載の人工培地。
- 前記多孔質材料の平均孔隙径が10〜800μmの範囲内であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の人工培地。
- 前記多孔質材料に金属粉が混合されていることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の人工培地。
- 前記金属粉が鉄粉又はチタン粉であることを特徴とする請求項9に記載の人工培地。
- 芳香族塩素化合物で汚染されていない水田のグライ層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することによって得られる、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を、請求項6〜請求項10のいずれかに記載の人工培地に接種して嫌気条件下で培養したものであることを特徴とする微生物群集組成物。
- 前記微生物群集の嫌気的分解活性が接種後10ケ月以上維持され、及び/又は、接種後2倍以上に増強されていることを特徴とする請求項11に記載の微生物群集組成物。
- 前記請求項11又は請求項12において規定された微生物群集が請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微生物群集であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の微生物群集組成物。
- 芳香族塩素化合物で汚染されていない水田のグライ層土壌の土壌微生物群集に芳香族塩素化合物を投与し、嫌気的条件下で土壌中培養することによって得られる、少なくとも多環芳香族塩素化合物を包含する芳香族塩素化合物に対して嫌気的分解活性を示す微生物群集を、請求項6〜請求項10のいずれかに記載の人工培地に接種して嫌気的条件下で培養することにより、接種前における微生物群集の嫌気的分解活性を10ケ月以上維持させ、及び/又は、2倍以上に増強させることを特徴とする微生物群集の活性維持・増強方法。
- 前記請求項14において規定された微生物群集が請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微生物群集であることを特徴とする請求項14に記載の微生物群集の活性維持・増強方法。
- 芳香族塩素化合物で汚染された土壌に対して、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微生物群集又は請求項11〜請求項13のいずれかに記載の微生物群集組成物を散布又は混合することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
- 芳香族塩素化合物で汚染された土壌地域に対して、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微生物群集又は請求項11〜請求項13のいずれかに記載の微生物群集組成物を含むバリヤー層を、当該土壌地域の周囲の土壌中に上下方向に構築し、及び/又は、当該土壌地域の底層の土壌中に水平方向に構築し、前記バリヤー層の外側への芳香族塩素化合物の拡散を防止することを特徴とする土壌汚染物質の拡散防止方法。
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