JP4819321B2 - Akt活性特異的抑制ポリペプチド - Google Patents

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本発明は、セリンスレオニンキナーゼAkt(Protein Kinase B)の活性を特異的に抑制するポリペプチド、該ペプチドをコードするDNA及び該ポリペプチドを有効成分とするAkt活性の特異的阻害剤或いは該ポリペプチドを有効成分とする抗腫瘍剤等に関する。
Aktキナーゼ(Protein Kinase B:以下、Aktと表示する。)は1990年代の初めに相次いでウイルスv−Aktとの相同性を手がかりに見つけられたセリンスレオニンリン酸化酵素である。現在までに3つのサブタイプがあることが確認されている。これらの分子は80%程度の相同性があり、当初から癌化との関連性が注目されていた。特に、サイトカインの細胞内シグナル伝達の中で細胞死を抑制する中心的な役割を担っていることがわかり注目されている(Genes & Dev., 13:2905-2927, 1999; Annu. Rev. Biochem., 67:481-507, 1998; Biochem.J., 335: 1-13, 1998)。
このAktは、分子量約57kDで、プレクストリン相同ドメイン(pleckstrin homology domain:PHドメイン)にイノシトールリン酸が選択的に結合し、主に細胞膜への局在を規定する役割を果たす機能をN末端に持つ。また、C末端側には、リン酸化キナーゼドメインを持つ。ホスファチディルイノシトール−3−キナーゼ(Phosphatidylinositol 3-kinase:P13K)からのシグナルによりPHドメインにPIP3などが結合し、Akt分子が細胞膜に移行すること、並びにAktの三次構造を変化させることがその活性化に関与していると推測されている。
Aktの活性化にはスレオニン308基(Thr308)、セリン473基(Ser473)の2つのアミノ酸のリン酸化が必須であると考えられている。Thr308はPDK(phosphoinositide dependent kinase)によりリン酸化されることが知られているが、Ser473のリン酸化のプロセスは十分に解明されておらず、ILK(integrin linked kinase)やPDK2などのいくつかの不確定な分子がそのリン酸化のプロセスに関与している可能性が推測されているに過ぎない。また、最近Ser473のリン酸化に自己リン酸化が可能性も報告されている。
活性化されたAktは細胞死抑制に関与する分子のリン酸化を促進することが知られている。このAktによりリン酸化されるセリン/スレオニン近傍のアミノ酸配列はRXRXXS/Tとして知られている(J. Biol. Chem.in press,2000)。BAD.Caspace 9.FKHRI(forkhead transcription factor)などの分子はこれらのアミノ酸配列を持ち、Aktの生理的条件下での基質として知られている。不活性型BADがAktによりリン酸化され、リン酸化依存的に14−3−3タンパク質と結合し、活性型Bcl−2やBcl−XLなどの細胞死抑制作用のあるタンパク質を遊離する。これらの既知の機能並びに未解明の種々のターゲットを介してAktはアポトーシス抑制制御の中心的な役割を担っていると考えられている(Cell,96:857-868,1999)。
このようにセリン/スレオニンキナーゼAktは、細胞内タンパク質のセリン又はスレオニン残基を特異的にリン酸化する機能を有しており、該リン酸化機能によって多細胞器官へのシグナル伝達を媒介する役割を担っている。そして、該Aktのリン酸化機能によって細胞内の種々の機構が調節されている。例えば、有糸分裂、細胞増殖、細胞分化、脂質代謝の制御、免疫応答、炎症性応答、グリコーゲンの代謝の制御等、細胞内の種々の機構の調節に関与している。同時に、このことは、癌、肥満症、自己免疫障害、炎症、及び糖尿病(II型)のような広範囲な種々の疾患や障害に関与していることを意味する。
近年、Aktの活性化が、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、或いは、白血病及びリンパ系腫瘍のような血液系がん等に関与することが報告されている(Annu. Rev.Biochem. 68,965,1999)。これらの悪性腫瘍においてはAktの活性が上昇することから、Aktの活性化がこれらの悪性腫瘍の原因となっていると考えられている。最近、これらのセリン/スレオニンキナーゼの活性を、セリン/スレオニンキナーゼのHJループの誘導体であるショートペプチドを用いて調節し、上記のような疾患や障害の治療を行う試みもなされている(特表2002−500649号公報)。
一方で、プロトオンコジーンとしてTCL1が知られている。TCL1は、ヒトT細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)でその活性が上がることで注目され、これまでに3つの類似するサブタイプ(TCL1、MTCP1、TCL1b)があることが知られている(Oncogene,8:2475-2483,1993;Proc. Natl. Acad. Sci. USA,91:12530-12534,1994)。これらの遺伝子座、14q、32、χ28がT細胞受容体遺伝子座に転座することによりその発現が活性化され、ヒト白血病(T−PLL)を起こすことが知られている。しかし、13〜16kDの小さなタンパク質で、これまでに知られている特有な機能構造を持たないことから、その機能は全くわからなかった。
生理的条件下でのこれらの分子の発現は、比較的限定されている。TLC1発現は、分化早期(CD3-/CD4-/CD8-)T細胞、並びに形質細胞分化前までの各種B細胞のリンパ系細胞に限られている。また、MTCP1の生理的条件下での発現の詳細は不明であるが、最近の遺伝子発現の解析結果から活性化T細胞で発現が誘導されていることが確認された。TCL1bは、ごく最近クローニングされた分子で、TCL遺伝子座の極めて近くに存在する。マウスでは5種のサブタイプが存在し、ヒトでは1種のみが存在すると考えられている。この遺伝子の発現は分化初期の胚芽細胞で非常に高い発現があることが報告されている。
TCL1の遺伝子はクローニングされ、1324の塩基配列と113のTCL1のアミノ酸配列が明らかにされている(米国特許第5,985,598号明細書)。
しかし今まで、TCL1の機能については全く分かっていなかった。本発明者らは、Akt活性化のプロセスを解明する目的でAktに結合するタンパク質分子を酵母を用いたtwo−hybrid法によりヒトB細胞由来のライブラリーを用いて検索した結果、プロトオンコジーンTCL1がAktと結合することを見い出した。すなわち、TCL1がAktと結合し、多量体を形成し、その多量体のAktが活性化されることを示し、TCL1がAktの活性化を促すAktの活性補助因子であることを見い出した(Mol. Cell,6:395-407,2000)。更に、本発明者らは、TCL1がAktを介した細胞分裂、細胞死(アポトーシス)の抑制などを亢進し、白血病やヒトリンパ系の腫瘍の病因となっていることを明らかにし、その後の研究により、細胞内及び細胞外でのリコンビナントタンパクを使った免疫共沈法により、TCL1が異種のAkt分子間での重合形成を促進し、TCL1が異種のAkt分子の間でAktセリン472/473残基のリン酸化を促進することを示し、TCL1がAktを活性化する分子学的な機序を明らかにした(J. Biological Chemistry,277[5],3743-3751,2002)。
更に、本発明者らはPCR法を応用したTCL1オンコジーンのアミノ酸ランダムライブラリーを作成し、TCL1とAktの結合並びにTCL1の重合形成に必要なアミノ酸部位を同定し、また、TCL1のダイマー形成或いはAktとの結合能を欠く変異型TCL1を同定した。そして、この変異型TCL1はAktを活性化(in vitoro或いはin vivoとも)する能力を欠き、ミトコンドリア外膜の安定化、細胞死抑制、Aktの核内への移行などTCL1の各種機能を失うことを確認した(Molecular and Cellular Biology,22[5],1513-1525,2002)。すなわち、本発明者らはこれまで機能の分からなかったプロトオンコジーンTCL1が、Aktの活性補助因子であり、その活性化にAktとの結合、TLC1同士の重合形成が必須であることを見い出した。
特表2002−500649号公報。 米国特許第5,985,598号明細書。 Genes & Dev.,13:2905-2927,1999。 Annu.Rev.Biochem.,67:481-507,1998。 Biochem.J.,335:1-13,1998。 J. Biol. Chem.in press,2000。 Cell,96:857-868,1999。 Oncogene,8:2475-2483,1993。 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,91:12530-12534,1994。 Mol. Cell,6:395-407,2000。 J. Biological Chemistry,277[5],3743-3751,2002。 Molecular and Cellular Biology,22[5],1513-1525,2002。
本発明の課題は、セリンスレオニンキナーゼAkt(Protein Kinase B)の活性を特異的に抑制するポリペプチド、該ポリペプチドをコードするDNA、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体、及び該ポリペプチドを有効成分とするAkt活性の特異的阻害剤或いは該ポリペプチドを有効成分とする抗腫瘍剤等を提供することにある。
本発明者らは、機能の全く分かっていなかったプロトオンコジーンTCL1が、ヒト悪性腫瘍等に関与するAktに直接結合し、Aktの活性化を促す、すなわち、Aktの活性補助因子であることを明らかにし、更に、白血病やヒトリンパ系の腫瘍等の原因になっていることを明らかにしてきた。また、Aktと結合しない変異型TCL1はAktを活性化する能力を欠き、ミトコンドリア外膜の安定化、細胞死抑制、Aktの核内への移行などTCL1の各種機能を失うことを示してきた。これらの一連の研究から、TCL1(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基10〜24番目の部位がAktと結合する部位であり、該アミノ酸残基のポリペプチド配列を用いることにより、Aktの活性化に伴う細胞の増殖等を特異的に抑制することを見い出し、本発明を完成するに至った。
更に、TCL1と同様の機能を有するTCL1B及びMTCP1(ヒト)においても同様の機能があることを確認し、TCL1B(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基8〜22番目の部位、及びMTCP1(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基5〜19番目の部位が、Aktの活性化に伴う細胞の増殖を抑制することを見い出し、本発明をなした。更に、本発明においては、マウスTCL1のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基9〜24番目の部位、及び、ラットTCL1のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基9〜24番目の部位がAktの活性化に伴う細胞の増殖を抑制することを確認した。本発明のポリペプチドは、ホスホイノシチド(phsphoinositide:ホスファチジルイノシトール)のAktへの結合を競合的に阻害する。
すなわち、本発明はTCL1(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基10〜24番目の部位に相当するアミノ酸配列(配列表の配列番号1)、TCL1B(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基8〜22番目の部位に相当するアミノ酸配列(配列表の配列番号3)、MTCP1(ヒト)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基5〜19番目の部位に相当するアミノ酸配列(配列表の配列番号5)、TCL1(マウス)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基9〜24番目の部位(配列表の配列番号7)、及び、TCL1(ラット)のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基9〜24番目の部位(配列表の配列番号9)からなりAktの活性を特異的に抑制するポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA(配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10)からなる。
また、本発明は該ポリペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAktの活性を特異的に抑制するポリペプチド誘導体、及び、それらの配列をコードするDNA、或いは、該配列のDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAktの活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを包含する。更に、本発明は、該DNAを発現ベクターに組込んで、組換え発現ベクターを構築し、該ベクターを宿主細胞に導入して発現することにより、本発明のポリペプチドを製造する方法を包含する。
また、本発明は本発明のAkt活性を特異的に抑制するポリペプチドに特異的に結合する抗体を包含し、更には、本発明のポリペプチドを有効成分とするAkt活性の特異的阻害剤、及び、該ポリペプチドを有効成分とする悪性腫瘍等の予防、治療のための抗腫瘍剤としての利用を包含する。また、本発明においては、本発明のポリぺプチドをコードするDNAを生体細胞に導入し、該ポリペプチドを発現することにより、Aktの活性を特異的に抑制する方法を包含する。
すなわち具体的には本発明は、(1)配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドや(2)配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1〜2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドからなる。
また、本発明は、(3)以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子DNA。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1〜2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドや(4)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、又は配列番号10に示される塩基配列を含み、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAや(5)上記(3)又は(4)記載のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAからなる。
更に本発明は、(6)上記(3)〜(5)のいずれか記載のAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを、遺伝子発現ベクターに組込んで構築したことを特徴とする組換え発現ベクターや(7)上記(6)記載の組換え発現ベクターを宿主細胞に導入し、発現することを特徴とするAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドを製造する方法からなる。
また本発明は、(8)上記(1)又は(2)記載のポリペプチドを有効成分とするAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(9)ポリペプチドがTCL1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜24の配列であることを特徴とする上記(8)記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(10)ポリペプチドがTCL1Bのタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基8〜22の配列であることを特徴とする上記(8)記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(11)ポリペプチドがMTP1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基5〜19の配列であることを特徴とする上記(8)記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(12)ポリペプチドがマウスTCL1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基9〜24の配列であることを特徴とする上記(8)記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(13)ポリペプチドがラットMTP1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基9〜24の配列であることを特徴とする上記(8)記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤や(14)上記(1)又は(2)記載のポリペプチドを有効成分とする、ホスホイノシチドのAktへの結合の阻害剤からなる。
更に本発明は、(15)上記(1)又は(2)記載のポリペプチドを有効成分とする抗腫瘍剤や(16)抗腫瘍剤が、悪性腫瘍の予防、治療のための薬剤であることを特徴とする上記(15)記載の抗腫瘍剤や(17)悪性腫瘍の治療が、乳がん、肺がん、白血病、又はリンパ系腫瘍の予防、治療であることを特徴とする上記(16)記載の抗腫瘍剤や(18)上記(3)〜(5)のいずれか記載のAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを生体細胞(ヒト生体細胞を除く)に導入し、該ポリペプチドを発現することにより、Aktのキナーゼ活性を特異的に抑制する方法からなる。
オンコジーンTCL1は、Akt(セリンスレオニンリン酸化酵素;Protein Kinase B)の活性補助因子であり、TCL1がAktに直接結合し、Aktの活性化を促す。本発明において、このTCL1のアミノ酸配列の中で、Aktに結合する部位を特定し、該TCL1、TCL1B、及びMTCP1のAktに結合する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドがAktの活性を特異的に抑えることを見い出すことにより、本発明のポリペプチドのAkt活性の特異的阻害剤としての利用を可能とした。これまでAktの特異的ペプチド阻害剤は知られていないことから、本発明のポリペプチドは、全く新しいタイプのAktの活性阻害剤としての利用が期待できるものである。
更に、Aktは細胞死を抑制する中心的な役割を担う細胞内シグナル分子であり、多くの癌細胞では、Aktが活性化され、アポトーシスが障害される。この結果、細胞死が減少し、細胞が異常に増殖し、癌の発症の原因となる。Aktはアポトーシスを制御する中心的な分子として知られており、重要な研究テーマとなっているが、この細胞死抑制機構の中心的分子Aktを特異的に阻害する薬剤は未だに開発されていない。本発明のAkt活性の特異的阻害剤は、アポトーシス制御など癌の発症の原因となる機構に関与するものであり、TCL1遺伝子の過剰発現や癌抑制遺伝子PTENの異常によるAKTの活性化が背景となる悪性腫瘍の予防又は治療薬の開発につながるものである。Aktの活性は、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、及び白血病或いはリンパ系腫瘍のような血液系腫瘍等の悪性腫瘍に関与することから、本発明のAkt活性の特異的阻害剤は、抗腫瘍剤(抗癌剤)として、これらのAktキナーゼの活性化が原因となる様々なヒト悪性腫瘍の予防、治療に用いることができる。
本発明は、Aktの活性を特異的に抑制するポリペプチド、すなわちヒトTCL1オンコジーンのアミノ酸残基10〜24のアミノ酸配列、ヒトTCL1Bのアミノ酸残基8〜22のアミノ酸配列、ヒトMTCP1のアミノ酸残基5〜19のアミノ酸配列、マウスTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列、及びラットTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、該アミノ酸配列は配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9に示される。また、本発明は、該ポリペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAktの活性を特異的に抑制するポリペプチド誘導体からなる。ヒトTCL1オンコジーンのアミノ酸残基配列10〜24のアミノ酸配列、ヒトTCL1Bのアミノ酸残基8〜22のアミノ酸配列、及びヒトMTCP1のアミノ酸残基5〜19のアミノ酸配列、マウスTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列、及びラットTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列は、配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10に示される。本発明は、該配列のDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAktの活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを包含する。
本発明のポリペプチドは、配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7及び配列番号9のアミノ酸配列からなるポリペプチドの構造を基本にして、周知のポリペプチドの合成法によって合成することができる。また、該ポリペプチドをコードするDNA配列を用いて遺伝子工学操作によって、製造することができる。ヒトTCL1オンコジーン全体の遺伝子のDNA配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、米国特許第5、985、598号明細書に開示されており、また、その遺伝子及びタンパク質の配列は、GenBankのデーターベースでアクセッションナンバー、X82240及びCAA57708によってアクセスすることができる。また、TCL1の遺伝子の全長(cDNA及びゲノムDNA)を組込んだベクターは、米国の微生物の寄託機関であるATCC(American Type Culture Collection)に特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく微生物の寄託として、受託番号75923及び75924でそれぞれ寄託されている。更に、マウスTCL1の遺伝子のDNA配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、NCIBのデーターベースでアクセッションナンバーNP_033363によって、ラットTCL1の遺伝子のDNA配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、アクセッションナンバーXP_345720によってアクセスすることができる。
TCL1B全体の遺伝子のDNA配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. ,96(6),2949-2951,1999)に示されており、NCBIのデーターベースにおいて、アクセッションナンバー:AF_110465によってアプローチすることができる。また、MTCP1全体の遺伝子のDNA配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は文献(Oncogene 8(9),2475-2483,1993)に示されており、NCBIのデーターベースにおいて、アクセッションナンバー:BC_002600によってアプローチすることができる。
本発明のポリペプチドを遺伝子工学操作によって製造するには、上記のようなDNA配列の情報から合成によりDNAを作製するか、或いは、上記のようなTLC1の遺伝子源から本発明のDNAを制限酵素を用いて切り出して取得し、該遺伝子を適宜の発現ベクターに組込み、該組換えベクターを宿主細胞に導入し、発現することによって取得することができる。本発明において、種々のポリペプチド誘導体は、該ポリペプチドをコードする塩基配列のDNAを作製し、該DNAを用いて、発現ベクターを構築し、該発現ベクターを公知の適宜の宿主に導入して、発現することにより製造することができる。種々のポリペプチド誘導体をコードするDNA配列の変異は、周知の遺伝子工学的遺伝子変異手段によって行うことができる。
本発明のポリペプチドを遺伝子工学操作によって製造するには、該ポリペプチドをコードするDNAを公知の発現ベクターに組込み、組換え発現ベクターを構築し、これを宿主細胞に導入して発現することにより行う。組換え発現ベクターの宿主細胞への導入は適宜公知の方法を用いることができる。例えば、原核生物の宿主としては、大腸菌、枯草菌、シュードモナス属の菌株を挙げることができ、該原核生物を宿主として使用する場合のベクターとしては、pUC19,pBR322又はpBR327のような大腸菌株等のベクターを用いることができ、プロモーターとして、例えばトリプトフアン・プロモーター、PLプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、マーカー遺伝子として、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等を用いることができる。
真核微生物の宿主としては、酵母が一般に広く用いられ、発現ベクターとしては、例えばYRp7等を用いることができる。高等動物の培養細胞を宿主とする場合には、COS細胞、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)等を用いることができる。プロモーターとしては、例えばアデノウイルス2主後期プロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、サイトメガロウイルス、ラウスザルコーマーウイルスからのプロモーターを、マーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、メトトレキセート耐性ジヒドロ葉酸還元酵素(DHR)遺伝子等を用いることができる。その他、BmN4細胞、Sf9細胞、Sf21細胞等の昆虫細胞を宿主として用いることができる。
本発明においては、ヒトTCL1のアミノ酸残基10〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチド等、本発明のポリペプチドを用いることにより、ホスホイノシド(ホスファチジルイノシトール)との結合を阻害する結果、Akt(protein Kinase B)活性、細胞増殖、抗腫瘍効果を得ることができる。このペプチドは、リコンビナント蛋白としての投与、ウイルスベクターを用いた投与法、哺乳類発現ベクターを用いた投与法が考えられる。TATペプチド(HIVウイルスの蛋白の一部)との融合法によるペプチドの導入法も利用できる。その他、エレクトロポーレーション、薬理学的に考えられる細胞内導入法を用いることもできる。ペプチドの安定化を図る意味でのペプチドの修飾、PEG(polyethylene Glycol)、FCR(FC Receptor)、他のペプチドとの融合ペプチドの作製などを用いることができる。
本発明は、ヒトTCL1のアミノ酸残基10〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列(配列表の配列番号2に示される塩基配列)、ヒトTCL1Bのアミノ酸残基8〜22のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列(配列表の配列番号4に示される塩基配列)、ヒトMTCP1のアミノ酸残基5〜19のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列(配列表の配列番号6に示される塩基配列)、マウスTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列(配列表の配列番号8に示される塩基配列)、又は、ラットTCL1のアミノ酸残基9〜24のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列(配列表の配列番号10に示される塩基配列)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAktの活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを包含する。
ここで、「塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
本発明は本発明のAkt活性を特異的に抑制するポリペプチドに特異的に結合する抗体を包含する。該抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を挙げることができる。該抗体の作製は、本発明のポリペプチドを抗原として、常法により作製することができる。本発明の抗体は、TCL1、TCL1B、又はMTCP1のAktへの結合部位に特異的に結合することにより、TCL1、TCL1B、又はMTCP1のAktへの結合を特異的に阻害することが考えられる。また、本発明の抗体はTCL1、TCL1B、又はMTCP1ポリペプチドとの抗原抗体反応により、組織細胞、血清などにおけるTCL1、TCL1B、又はMTCP1遺伝子に関わる疾患の検出に用いることができる。本発明の抗体を用いた免疫学的測定には、例えばRIA法、ELISA法、蛍光抗体法等公知の免疫学的測定法を用いることができる。
本発明においては、本発明のポリペプチドを有効成分として、Akt活性の特異的阻害剤として、及び、該ポリペプチドを有効成分として、悪性腫瘍等の予防、治療のための抗腫瘍剤として用いる。本発明のポリペプチドを有効成分として、Akt活性の特異的阻害剤として、及び、悪性腫瘍等の予防、治療のための抗腫瘍剤として用いるには、該ポリペプチドをそれ単独で、或いは、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することにより製剤化して用いることができる。これらのAkt活性の特異的阻害剤又は悪性腫瘍等の予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。
本発明のAktの活性を特異的に抑制するポリペプチドを癌などの予防・治療に用いる場合は、タンパク質、ペプチド又は抗体などの巨大分子と非共有結合体を形成し、ポリペプチドの構造を変化させ、ポリペプチドの分子を細胞内にデリバリーすることができるChariot(Active Motif社製)等の細胞毒性のない試薬を用い、Aktの活性を特異的に抑制するポリペプチドを癌細胞に直接接種することができる。なお、投与量は、疾病の種類、患者の体重、投与形態等により適宜選定することができる。本発明のAkt活性の特異的阻害剤又は抗腫瘍剤の投与の対象としては、Aktの活性化が原因となる各種疾病の予防或いは治療を挙げることができ、特には、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、及び白血病或いはリンパ系腫瘍のような血液系腫瘍等の悪性腫瘍の予防、治療を挙げることができる。
本発明においては、本発明のAkt活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを生体細胞に導入し、該ポリペプチドを発現することにより、Aktの活性を特異的に抑制することができる。該Akt活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを生体細胞に導入するための動物細胞用発現ベクターとしては、上記本発明のポリペプチドをコードするDNAが動物細胞用ベクターにインテグレイトされているものであればどのようなものでもよく、かかる動物細胞用ベクターとしては、上記本発明のポリペプチドをコードするDNAを宿主細胞内で発現させることができる発現系であれば特に制限されない。例示すれば、染色体、エピソーム及びウイルスに由来する発現系、例えば、細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス由来のベクター、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。
これら発現系は、発現を起こさせるだけでなく、発現を調節する制御配列を含んでいてもよい。また、本発明の動物細胞用発現ベクターには、リポソームも含まれる。これら動物細胞用ベクターの中でも、アデノウイルスベクターが、安全性や使用の便からして特に好ましい。癌などの予防・治療においては病変部位に直接(インサイチュウ)投与することが好ましく、例えば、アデノウイルス発現ベクターを利用する場合は、癌組織等の病変部位に該ベクターの懸濁液を直接接種することができる。また、本発明のAkt活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを収納したリポソームを用いる場合も、癌組織等の病変部位に該リポソームの懸濁液を直接接種することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[Akt及びTCL1結合配列の同定]
酵母two−hybridスクリーニング及びβ−Galの半定量法を用いてアミノ酸部分変異TCL1クローンとAktとの相互作用について検討した(MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY,Mar. 2002,P.1513-1525)。
[Akt−TCL1の結合部位同定のためのTCL1(ヒト)アミノ酸ランダムミュテーションラブラリースクリーニング]
(材料及び方法)
1.TCL1ライブラリー
pGAD424(Clontech社)中のヒト全長TCL1を、5´−CCACCAAACCCAAAAAAAGAGATCGAATTCATG及び5´−ATTCATAGATCTCTGCAGGTCGACGGATCCTCAからなるプライマーを用いてPCR法で増幅し、ランダムTCL1アミノ酸ライブラリーを作製した。
2.TCL1のアミノ酸変異体の作製
TCL1のアミノ酸置換変異体(D16G、K30M、Q46R、174V、M106V、36−38A、又は36A/38Δ)を下記のプライマーを用いて、PCRによって調製し、天然型と変異型をpGAD424(Clontech社)、pME18SHA(Mol. Cell 6:395-407)、又はpCMV Flag(Kodak社)発現ベクターにサブクローンした。
用いたプライマーは次のとおり(変異したコドンは、小文字で示した):D16Gに対しては、5´−ATG GCC GAG TGC CCG ACA CTC GGG GAG GCA GTC ACC GAC CAC CCG ggc CGC CTG TGG GCC;K30Mに対しては、5´−GTG TAT TTG GAC GAG atg CAG CAC GCC TGG CTG;Q46Rに対しては、5´−G ATA AAG GAT AGG TTA cgg TTA CGG GTG CTC TTG;174Vに対しては、5´−CCA AGC CTG CTG CCT gtc ATG TGG CAG CTC TAC;M106Vに対しては、5´−ATC ATC GGA TCC TCA GTC ATC TGG CAG CAG CTC GAG AAG cac GTC CTC C;36−38Aに対しては、5´−CAG CAC GCC TGG CTG gcc gcg gcc ATC GAG ATA AAG GAT及び逆相補配列;及び36A/38Δに対しては、5´−GCC TGG CTG gcc TTA ATC GAG ATA及び逆相補配列。TCL1のアミノ酸置換変異体(D16G、K30M、Q46R、174V、M106V、36−38A、又は36A/38Δ)の変異位置を図1に示す。
3.酵母ツーハイブリドスクリーニング
TCL1及びAktタンパク質の相互作用を検出するために、酵母ツーハイブリドタンパク質相互作用検出システムによるスクリーニングを行った。
Y190細胞(Clontech社)を、リチウムアセテート法を用いて、既報(Mol. Cell 6:395-407;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11534-11539)に準じて、ヒトAkt2(Akt2/PAS2−1)及びTCL1ランダムライブラリーを酵母に発現した。3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(SIGMA社)の存在下に、cDNAライブラリーからの約104個のクローンをスクリーニングした。
His+コロニーをフィルター−リフトアッセイ(filter-lift assay)を用いて、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)活性を測定した。酵母クローンはβ−Galの強度により、3−h−ポジティブ(++)、8−h−ポジティブ(+)、及び24−h−ネガティブ(−)クローンのカテゴリーに分類した。ヌクレオチドのシークエンシングのために、それぞれのカテゴリーから10クローンを選択した。
4.定量的β−Galアッセイ
Y190細胞(Clontech社)を、野生型、D16G、K30M、Q46R、174V、M106VのTCL1と共に、Akt2/PAS2−1を用いて、pGAD424(Clontech社)ベクターを用いて酵母に発現した。TCL1変異体は、PCRベースの部位変異(PCR-based site-directed mutagenesis)及び/又はQuikchangeキット(Stratagene社)により生成した。液体β−Galアッセイは、ONPG(O-nitrophenyl-β-D-galactoppyranoside;Sigma社)を用いて結合度の定量を行った(Mol. Cell 6:395-407)。示された値は、ウエスタン ブロット分析(GAL4活性化ドメイン抗体[Ab]:Clontech社)によって定量し、各々の酵母のトランスフォーマントの発現によって標準化した。
[実験及び結果]
Akt−TCL1の結合に必要なアミノ酸残基を決定するために、PCR−介在−ランダム変異によるランダムTCL1ライブラリーを作製した。置換されたDNAヌクレオチドは各々dATPは1,4%、dTTPは3.8%、dGTPは4.0%、及びdCTPは1.4%の発生率であった。このライブラリーにおけるヌクレオチド置換の総頻度は、2.7%であり、挿入−削除率は0.09%であった。ライブラリーのサイズは、約2.5×104であった。置換部位は、シークエンスされた25サンプルクローンにおいて、全TCL1分子の90%以上に分散していた。
次に、各々のクローンとAkt2との相互作用を調べるために、酵母ツーハイブリドスクリーニングを行った。酵母クローンは、β−Galリフティングアッセイにおけるブルーカラー反応の強度に基づいて3つのカテゴリーに分類した。(3hでβ−Galポジティブ〔++〕、8hでβ−Galポジティブ〔+〕、及びネガティブ〔−〕)。各々のカテゴリーの10クローンのヌクレオチド配列を決定した。++クローンは、野生型TCL1又はP5、P15、D43、L45、P61、M75、及びD88部位の変異体を含んでおり、該クローンはβ−Gal活性に影響を与えず、該残基はAkt相互作用に対して反応しなかった。観察された、Aktと低い相互作用(8hポジティブ〔+〕)を示す10クローンのアミノ酸置換体と、TCL1のアミノ酸配列を並べて示した(図1)。
これらのクローンの中で、特定の残基において、明らかに置換体の堆積が見い出された。10クローンのうちの9クローンにおいて、D16、K30、Q46、I74、又はM106におけるアミノ酸の少なくとも1つにおいて置換体が見い出された。陰性のクローン(−)は、ヌクレオチドの挿入、大量の削除を伴う挿入、構造シフト、及び/又は大量の変異体を含まなかった。それ故に、それ以上の分析から除外した。本発明者は、低下したAkt相互作用を示したクローンは、Akt−TCL1相互作用に必要なアミノ酸残基を含むに違いないとの仮説をたてた。そこで、部位特異的突然変異誘発法を用いて、TCL1に個々の変異体(D16G、K30M、Q46R、I74V、又はM106V)を作製した。D16G及びI74V変異体は、β−Galリフティングアッセイ(図2)及び、定量的液体β−Galアッセイ(図3)に示されるように、D16G、174Vにおいて変異体Aktとの結合が劇的に低下する結果となった。
(TCL1−誘導Akt活性化に必要な、Akt及びTCL1ホモダイマーによる会合)
in vitro キナーゼアッセイにおいて、野生型TCL1は、Aktキナーゼ活性を増大した。このことは、Akt Ser−473リン酸化の程度と優位に相関した。しかしながら、D16G TCL1は、薬量を増加しても試験において、Aktキナーゼ活性に影響がなかった(図4)。D16G TCL1は、GSK 3αのリン酸化、Akt Ser−473リン酸化とも変化を与えなかった。D16G TCL1は、Aktキナーゼ活性によって評価した。同様に、Aktに結合するが、ホモダイマーを形成しない36−38A TCL1は(in vitroキナーゼアッセイにおいて、リン酸化GSK−3α及びSer−473 Aktでの判定による)Aktキナーゼ活性を高めることができない(図5)。これらのことから、Aktと結合しない変異型TCL1は、Aktの活性化する能力(in vitro及びIn vivoとも)を欠くことを示した。
(Akt及びTCL1結合配列の作製)
これまでに行われていたTCL1の結晶構造の解析結果から(Molecular and Cellular Biology,Mar.2002,p.1513-1525)、D16は第一βシートの最初の部位に存在し、この第一βシートと第4βシートで作られる平面上にAktキナーゼが結合することが考えられた。これらの一連の 研究に基づき、TCL1蛋白分子におけるAktとの結合アミノ酸、第16残基(Asparadic Acid)近傍のTCL1オンコジンのアミノ酸残基配列10−24(表1)が、Aktと結合し、Aktの活性化を抑制する阻害剤となりうるのではないかと考えた。
上記仮定に基づき、このTCL1とAKTの結合部近傍のペプチド、すなわち、TCL1のアミノ酸残基10〜24(「10/24」と表示する。)近傍のペプチド並びにコントロールペプチドの二つのペプチドを作製した(表2)。ペプチドは、通常のペプチド合成機で作製してあり、ゲル濾過又はHPLCで精製してある。北海バイオシステム、米国企業で作製されたものを用いた。
[TCL1の10/24ペプチドのアッセイ]
1.MTTアッセイを用いた細胞増殖試験
MTTアッセイを用いた細胞の増殖試験を行った。すなわち、WST−8試薬 [2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt] (347-07621, Dojin, Kumamoto, Japan)アッセイを用いた細胞の増殖実験において、このTLC1オンコジーンのアミノ酸酸残基配列10/24ペプチド(NH2- - AVTDHPDRLWAWEKF -COOH)がAKT活性化に伴う細胞の増殖を特異的に抑制することを確認した(図6)。
この方法では、T4細胞株を用いた無刺激下での細胞増殖試験で10/24ペプチドを0−50μMの濃度で前処置し、48時間後にWST−8試薬アッセイ法を用いてその増殖能を測定し、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーを用いたELISA法により (Model 550; BioRad, Tokyo, Japan).測定した。
2.免疫共沈法による結合試験
10/24ペプチドの特異的な細胞増殖抑制の原因を検討するために、免疫共沈法を用いて、10/24ペプチドがAktキナーゼと特異的に結合することを確認した(図7)。この方法では、AKTキナーゼをヒト293細胞に過剰発現し、採取した細胞溶液を10/24ペプチド(NH2- - AVTDHPDRLWAWEKF -COOH)と約2時間インキュベーションする。更に、この処置を行った細胞溶液に、Aktに融合したエピトープに対する特異抗体の結合したアガロースビーズを加え、2−3時間共−インキュベーション(co-incubation)した。その後、この抗体の結合したアガロースビーズを用いて付着する細胞溶液中の分子を免疫沈降し、特異抗体を用いたウエスターンブロット法により、Aktキナーゼとの結合を検討した。
2.脂質−タンパク プルダウンアッセイ
TCL1の10/24ペプチドについて、リン脂質−タンパク プルダウンアッセイ(Lipid-protein pull down assay)を行った。
方法:脂質−タンパク プルダウンアッセイは PIP Beads (PI (3,4,5) P3 Echelon Bioscience Incorporated) を使って行った。10/24NH2- AVTDHPDRLWAWEKF -COOH または コントロールとしてβC NH2- EKQHAWLPLTIE-COOH) を用いた。50ngのAKT kinase (unactivated, Upstate Biotechnology, #14-279) を用いて2時間4℃で処置後に25μlのPIP Beads (PI (3,4,5) P3 Echelon Bioscience Incorporated)を加えて(10mM Hepes,pH7.4、0.25% NP−40、140mM NaCl)を含む溶液で洗浄後、Akt抗体 (Cell Signaling) を使ってウエスタンブロットを行った(図8)。図左側の3つのレーンでは、1−400μMでAKTとの結合をDose−Dependentに抑制しており、図右側のコントロールペプチドでは全く抑制していない。これらの結果から、このペプチド(NH2- - AVTDHPDRLWAWEKF -COOH)はAktキナ?ゼに対するホスホイノシチド(Phosphoinositide:(PI (3,4,5) P3)の結合を競合的に抑制することが確認された。したがって、これがAkt活性化抑制の機序と考えられた。
[免疫共沈法による10/24ペプチドとAktサブタイプ分子との結合試験]
免疫共沈法を用いて、10/24ペプチドとAktサブタイプ、Akt1、Akt2、Akt3分子との結合試験を行った。
方法:Aktキナーゼを293細胞(ATCC)に過剰発現した細胞溶液、すなわち、pCMV6中のAkt1、Akt2、又はAkt3を、293細胞(ATCC)にカルシウムフォスフェート法により発現させ、過剰発現した細胞を採取し、溶解し、そして、プロテインG/Aアガロース混合物(50%v/v、ProG/A、Pharmacia)で前処理した。Akt、又はコントロールペプチド(βC)を400μMで細胞溶解液に添加し、4℃で3時間、ProG/Aでインキュベートし、抗Flag M2抗体(Sigma)を添加した。得られた免疫沈降物を洗浄後、ウエスターンブロット法(anti-HA antibody、3F10, Boehringer Mannheim)により、Aktキナーゼとの結合を確認した。結果を、図7に示す。図に示されるように、10/24ペプチドは、Aktの3種類のサブタイプ分子、Akt1、Akt2、及びAkt3のいずれとも結合した。
[GSKを基質として用いたAktキナーゼアッセイによるAkt活性化抑制効果試験]
Aktは、GSK(Glycogen Synthesis Kinase 3)のリン酸化を促進することがわかっている。このGSKを基質として用いて、Aktキナーゼアッセイを行い、10/24ペプチドによるAktの活性化抑制試験を行った。
方法:イン ビトロ Aktキナーゼ アッセイは(Cell Signaling社製、#9840、)のキットを用いて行った。哺乳細胞から抽出したリコンビナントAkt蛋白を200μMの濃度のペプチドと混合し2時間反応させた。リン酸化反応は4分間、30度で行った。反応はSDSゲルで解析の後、ウエスタン ブロット法によりGSKのリン酸化を定量した。結果を、図8に示す。図8に示されるように、10/24ペプチドは、AktのGSKペプチドに対するリン酸化能を効果的に抑制(図の左側の3つのレーンで黒いバンドが薄くなっているのがGSKのリン酸化を抑制していることを示している)した。同様なAktキナーゼ活性抑制効果は10-24(AVTDHPDRLWAWEKF)のうちの11−23の繰り返し配列を持つペプチド(NH2- VTDHPDRLWAWEK -RRR- VTDHPDRLWAWEK -COOH)を用いても認められた。
[マウス線維芽細胞腫瘍細胞(QrSP−11)におけるAktリン酸化の活性化抑制効果試験]
マウス線維芽細胞腫瘍QrSP−11細胞における10/24ペプチドとコントロールペプチドのAKTのリン酸化(セリン473残基、スレオニン308残基)の活性化抑制効果について検討した。
方法:QrSP−11細胞を50mMの濃度のペプチドと16時間混合する。その後PDGF(PDGF-AB ,Sigma, 3226)で刺激する。細胞を脱リン酸化酵素阻害剤の存在下で溶解し、SDSゲルで解析、各種抗体(Cell Signaling; anti-Akt #9272, anti-pThr308 #9275L, and anti-pSer473 #9271L)を用いてECL (Amersham)によりウェスタンブロットを行う。結果を、図9に示す。図に示されるように、10/24ペプチド処理した細胞では図の右端に示す示されるように、セリン473とスレオニン308のリン酸化が共に抑制されている。すなわち、図の左から2列目及び4列目のような黒いバンドが右端のものでは薄くなっているのが10/24ペプチドによってリン酸化の抑制が起こっていることを示している。
[10/24ペプチドのAktの細胞膜移行及び活性化抑制効果試験]
293細胞(ATCC)を用い、10/24ペプチドのAktの細胞膜移行及び活性化抑制効果について試験した。
方法:293細胞(ATCC)に1mgのAKTをFuGENE6(Roche Diagnostics)を用いて過剰発現する。16時間後血清を除去し、細胞をPDGF−AB(Sigma社製, #3226)を用いて10分間刺激する。細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、FITC−conjugated anti-HA抗体(12CA5, MBL)又はphospho-Ser 473抗体(587−F11,Cell Signaling)を用いて染色し、Nikon社製共焦点顕微鏡を用いて観察する。
結果を、図10に示す。図に示されるように10/24処理をした細胞(g−i)では、コントロールペプチド(a−f)と比べてAktの細胞膜移行や活性化が抑制されているのが確認された(d又はfに示されるように細胞の周囲が緑又は黄色に光るのであるが、10/24ペプチドでは、jやiに示されるように、この効果が抑制されている:参考図面)。すなわち、実験の結果から、10/24ペプチドは、細胞内におけるAKTの細胞膜への移行と同時に活性化を抑制することを確認した。本来AKTは細胞の表面に移行し活性化されるのであるが、10/24ペプチドで処理した細胞では、このAKTの膜への移行、活性化が抑制されることを確認した。
[10/24ペプチドによるアポトーシスの誘導と抗腫瘍効果]
ヒトT白血病細胞株(T4:human T cell leukemia cells)を用いて10/24ペプチドの細胞死に対する効果を検討した。
方法:T4細胞株を用いた無刺激下で10/24ペプチド(10/24pepetide NH2――AVTDHPDRLWAWEKF −COOH)を0−30μMの濃度で前処置し、48時間後にPropidium Iodideで染色し、FACS(Beckton Dickinson社製)により細胞死(アポトーシス)を判定した。また、この抗腫瘍効果のAKT依存性を確かめるため、myr−AKT(恒常的に活性化されたAKT)を過剰発現した。
結果を、図11に示す。図に示されるように、10/24ペプチドはコントロールペプチドと比べて、細胞死(アポトーシス)を増強することが判明した。同様な細胞死の増強傾向は、Dexame thasoneによる細胞死の誘導下でも確認された。myr−AKTを過剰発現した結果、細胞死は抑制され(図11、△)、10/24ペプチドがAKT依存的に効果を発揮していることが、確認された。
[10/24ペプチドによるin vivo抗腫瘍効果]
移植腫瘍細胞を用いて、10/24ペプチドのin vivoにおける抗腫瘍効果を検討した。
方法:マウスの線維芽細胞株QrSP−11細胞をC57BL/6マウスの腹壁に移植し、ペプチドによる腫瘍増殖抑制効果を検討した。腫瘍細胞に直接10/24ペプチド或いはコントロールペプチドを注入し(1匹について2μMづつ週に3回投与した、図に矢印で示す。)腫瘍径を測定し、その体積を計算した。結果を、図12に示す。図に示されるように、10/24ペプチドでは腫瘍増殖を効果的に抑制することが確認された。
[10/24ペプチド処理によるマウス腫瘍の組織学的な検討]
実施例8の実験的マウス腫瘍を9日目に採取し、肉眼所見、ヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin-Eosin:H&E)染色(細胞の核などの状態を観察する方法)、TUNEL (Tdt-mediated dUTP nick end labeling, #MK500, Takara)免疫染色(アポトーシスというがん細胞の特殊な死に方を組織学的に同定する方法)、phospho Akt (Ser473)モノクローナル抗体(587F11,Cell Signaling、AKTキナーゼのリン酸化を判定し、活性化を見る方法)により組織学的に検討した。結果を、図13に示す。
図の写真に示されるように、肉眼的所見においては、10/24ペプチド処理ではコントロールと比較して明らかに腫瘍が縮小しているのが観察され、H&E染色においては、10/24ペプチド処理では、細胞死が増加しているのが観察され、TUNEL染色においては、10/24ペプチド処理では、アポトーシスの細胞が増加しているのが観察され、また、Akt活性化においては、10/24ペプチド処理ではAktの活性化が抑制されているのが観察された。すなわち、10/24ペプチド処理によるマウス腫瘍の組織学的な検討により、10/24ペプチドは腫瘍の増殖を抑え、アポトーシスを増加させ(H&E, TUNEL)、また、AKT活性を阻害すること(p473染色)が確認された。
本発明の実施例の試験において、構築し、観察された、Aktと低い相互作用(8hポジティブ〔+〕)を示す10クローンのアミノ酸置換体について、TCL1のアミノ酸配列と並べて示した図である。 本発明の実施例の試験において、部位特異的突然変異誘発を用いて導入したTCL1の変異体(D16G、K30M、Q46R、I74V、又はM106V)と野生型TCL1を用いて、β−Galリフティングアッセイを行った結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、部位特異的突然変異誘発を用いて導入したTCL1の変異体(D16G、K30M、Q46R、I74V、又はM106V)と野生型TCL1を用いて、定量的液体β−Galアッセイを行った結果を示すを示す図である。 本発明の実施例の試験において、TCL1−誘導Akt活性化に必要な、Akt及びTCL1ホモダイマーによる会合を調べるために、野生型TCL1について、in vitro キナーゼアッセイを行った結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、TCL1−誘導Akt活性化に必要な、Akt及びTCL1ホモダイマーによる会合を調べるために、変異TCL1(36−38A TCL1)について、in vitroキナーゼアッセイを行った結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、AKT活性化に伴う細胞の増殖を特異的に抑制することを確認するために、TLC1オンコジーンのアミノ酸酸残基配列10/24ペプチドを用いてMTTアッセイを行った結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、免疫共沈法を用いて、10/24ペプチドとAktサブタイプ、Akt1、Akt2、Akt3分子との結合試験を行った結果のウェスタンブロットの写真である。 本発明の実施例の試験において、GSK(Glycogen Synthesis Kinase 3)を基質として用いて、Aktキナーゼアッセイを行い、10/24ペプチドによるAktの活性化抑制試験を行った結果のウェスタンブロットの写真である。 本発明の実施例の試験において、マウス線維芽細胞腫瘍QrSP−11細胞における10/24ペプチドとコントロールペプチドのAKTのリン酸化(セリン473残基、スレオニン308残基)の活性化抑制効果について、各種抗体を用いてウェスタンブロットを行った結果の写真である。 本発明の実施例の試験において、293細胞(ATCC)を用い、10/24ペプチドのAktの細胞膜移行及び活性化抑制効果について試験した結果の顕微鏡を用いて観察した写真である。 本発明の実施例の試験において、ヒトT白血病細胞株(T4:human T cell leukemia cells)を用いて10/24ペプチドの細胞死に対する効果を検討した結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、移植腫瘍細胞を用いて、10/24ペプチドのin vivoにおける抗腫瘍効果を検討した結果を示す図である。 本発明の実施例の試験において、移植腫瘍細胞を用いて、10/24ペプチドのin vivoにおける抗腫瘍効果を検討した実験的マウス腫瘍を9日目に採取し、肉眼所見、肉眼的所見における観察、H&E染色における観察、TUNEL染色における観察、Akt活性化における観察の結果を示す写真である。

Claims (15)

  1. 配列表の配列番号1、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチド。
  2. 配列表の配列番号1、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列において、N末端及びC末端のそれぞれ1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなり、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチド。
  3. 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子DNA。
    (a)配列番号1、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)配列番号1、配列番号7、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列において、N末端及びC末端のそれぞれ1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなり、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチド。
  4. 配列番号2、配列番号8、又は配列番号10に示される塩基配列を含み、かつAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNA。
  5. 請求項3又は4記載のAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを、遺伝子発現ベクターに組込んで構築したことを特徴とする組換え発現ベクター。
  6. 請求項記載の組換え発現ベクターを宿主細胞に導入し、発現することを特徴とするAktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドを製造する方法。
  7. 請求項1又は2記載のポリペプチドを有効成分とするAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤。
  8. ポリペプチドがヒトTCL1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜24の配列であることを特徴とする請求項記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤。
  9. ポリペプチドがマウスTCL1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基9〜24の配列であることを特徴とする請求項記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤。
  10. ポリペプチドがラットTCL1のタンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸残基9〜24の配列であることを特徴とする請求項記載のAktのキナーゼ活性の特異的阻害剤。
  11. 請求項1又は2記載のポリペプチドを有効成分とする、ホスホイノシチドのAktへの結合の阻害剤。
  12. 請求項1又は2記載のポリペプチドを有効成分とする抗腫瘍剤。
  13. 抗腫瘍剤が、悪性腫瘍の予防、治療のための薬剤であることを特徴とする請求項12記載の抗腫瘍剤。
  14. 悪性腫瘍の治療が、乳がん、肺がん、白血病、又はリンパ系腫瘍の予防、治療であることを特徴とする請求項13記載の抗腫瘍剤。
  15. 請求項3又は4記載Aktのキナーゼ活性を特異的に抑制するポリペプチドをコードするDNAを生体細胞(ヒト生体細胞を除く)に導入し、該ポリペプチドを発現することにより、Aktのキナーゼ活性を特異的に抑制する方法。
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