JP4815391B2 - モデルパラメータ推定演算装置及び方法、モデルパラメータ推定演算処理プログラム並びにそれを記録した記録媒体 - Google Patents

モデルパラメータ推定演算装置及び方法、モデルパラメータ推定演算処理プログラム並びにそれを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、動的モデルを有するシステムに対する理論的・経験的知識を活用するシステム同定法を用いて、当該動的モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータの推定演算装置及び方法、モデルパラメータ推定演算プログラム並びに当該プログラムを記録したコンピュータにより読取可能な記録媒体に関する。
あるシステムの制御系を設計したり、その挙動をシミュレートしたりするような場合には、システムの挙動を模擬できるモデルが必要となる。例えば、モデルベースのコントローラを設計する場合にはモデルが不可欠であるし、PID(Proportional Integral Derivative)補償器を用いる場合でも事前に制御系の挙動をシミュレートする際にモデルが必要となる。
一般に、モデルを構築する方法は、2つ(ないしは3つ)に大別される。
1つの方法は、いわゆる第一原理に基づいたモデリング(ホワイトボックスモデリングとか、物理モデリングと呼ばれる。)であり、システムを支配する物理化学的な自然法則(運動方程式、電磁界方程式、物質収支、熱収支、化学反応方程式など)に基づいてモデリングを行う方法である。大規模なシステムの場合は、サブシステムに分割してそれぞれモデリングを行い、それらを統合してシステム全体のモデルを構築するアプローチである。
もう1つの方法は、ブラックボックスモデリングと呼ばれるもので、システムに関する物理化学的な法則や先験的知識を利用しないアプローチである。システムをブラックボックスと見なして、観測された(有限個の)入出力データからモデルのパラメータを推定する方法であり、制御工学の分野ではシステム同定という。システムが比較的大規模あるいは複雑であり、物理化学法則のみによってその動特性が記述できないような場合に有効である。
さらには、(モデリング手法を3つに大別する場合には)3つ目の分類として、グレーボックスモデリングが存在する。これは、ホワイトボックスモデリングとブラックボックスモデリングの中間に位置づけられるもので、例えば、入出力データに加えて、物理化学的な自然法則を部分的に利用するようなモデリング手法である。
さて、モデリングの対象となるシステムには、多リンク構造のロボット(マニピュレータ)のように基本的な挙動が運動方程式で表現できるものもあるが、熱や化学反応を伴うプラント(例えば、化学プラントや燃焼炉など)のように、その動特性が自然法則から導き難いものもある。この場合、入出力データに基づいてモデルを構築するブラックボックスモデリングに頼らざるを得ない。
しかしながら、ブラックボックスモデリングにおいては、例えば、入力信号に対するPE性(Persistently Exciting:持続励振性)などのように満たすべき条件が存在する。ところが、現実のプロセスにおいては、システム同定用入出力データを採取する実験機会が限られていたり、印加できる同定入力の波形や大きさが限られている場合も多い。また、入出力データには、少なからず外乱やノイズも存在し、場合によっては、無視できないほど大きな外乱が存在する場合もある。例えば、ごみ焼却炉のように、不特定で多種多様のものを燃焼させるようなプロセスでモデルを構築する場合、ごみ供給機の速度入力に対して、実際に炉内に投入されるごみの種類や量はばらついてしまう。従って、ごみ供給機の速度を入力とし、炉内の温度を出力とするようなモデルを構築する場合、入出力データには大きな外乱が存在することになる。しかも、データ採取の機会も限られているため、外乱の影響を打ち消すのに十分な量のデータを取得することもできない。
このように、入出力データに無視できない外乱やノイズが存在し、印加できる同定入力の波形や大きさが制約を受け、入出力データを採取する実験機会も限られているようなプロセスでは、高精度にモデリングするのに十分な(質的・量的に十分な)データを揃えることができないため、モデリング作業は試行錯誤の繰り返しに頼らざるを得ず、モデルを構築するまでに莫大な時間を要していた。例えば、データの取得から、データ区間の選定、サンプリングタイムの調整、データの前処理(例えば、異常値の除去、フィルタリング等を含む。)、モデル次数の選定などを何度も何度も繰り返す必要があった。また、このように入出力データの質と量が限られている中で、高精度で信頼性のあるモデルを得ることは非常に困難であった。
特開2004−272916号公報。 足立修一著,「MATLABによる制御のためのシステム同定」,東京電機大学出版局,pp.1〜5,1996年11月30日発行。 片山徹著,「システム同定入門(システム制御情報ライブラリー9)」,朝倉書店,pp.4〜7,1994年5月25日発行。 Herbert J. A. F. Tulleken, "Grey-box Modelling and Identification Using Physical Knowledge and Bayesian Techniques", Automatica, Vol. 29, No. 2, pp.285-308, 1993. 片山徹著,「システム同定−部分空間法からのアプローチ−」,朝倉書店,pp.101〜107,185〜240, 足立修一著,「MATLABによる制御のための上級システム同定」,東京電機大学出版局,pp.179〜181,2004年3月10日。 B. D. O. Anderson et al., 荒木光彦訳,「制御装置の低次元化―その考え方と手法−」,システム/制御/情報,システム制御情報学会,Vol.34,No.9,pp.491〜499,平成2年9月。 大日方五郎,「平衡実現、ハンケルノルム及び連分数展開を用いた制御系の低次元化」,システム/制御/情報,システム制御情報学会,Vol.34,No.9,pp.508〜514,平成2年9月。
以上の問題点を解決するために、先験的知識を補うことによって、モデルを高精度化しようとしたものに以下の先行技術がある。
例えば、非特許文献1においては、モデルの安定性と定常利得の符号に関する先験的知識を制約条件として考慮したモデリング技術が開示されている。しかしながら、プロセスに対して考慮すべき先見的情報は、定常利得の符号や安定性だけではない。定常利得や応答速度のおよその値(取り得る値の範囲)、任意の入力に対する応答波形の概略は、理論的・経験的に既知の場合も多いが、本手法では、これらの先験的知識を考慮に入れることができない。従って、本手法では、定常利得や応答速度、任意の入力に対する応答波形に関する先験的知識に合致するモデルが得られるとは限らず、モデルの精度や信頼性が不十分であるという問題点があった。
また、特許文献1においては、まず、既存のモデリング手法を使って、入出力データから初期モデルを求めた後、この初期モデルのモデルパラメータとの誤差(重みつき誤差)が小さくなるように、かつ、定常利得や安定性、システムの応答に関する制約条件を満たすようにモデルパラメータを変更し、この変更されたモデルパラメータを新たなモデルとして求める手法が開示されている。しかしながら、変更後のモデルパラメータが、初期モデルのモデルパラメータと値が近いからといって、モデルの動特性が近いとは限らない。例えば、次式の1入力1出力で次数1の状態空間モデルについて考える。
Figure 0004815391
ここで、出力データy(k)、入力データu(k)、状態パラメータx(k)、モデルパラメータa,b,c,d(それぞれスカラーである。)に対して、初期モデルが(a,b,c,d)=(0.1,1.0,1.0,0.0)だったとする。この初期モデルに対して、b,cのパラメータが異なる2つのモデル、モデル1(a,b,c,d)=(0.1,0.9,0.9,0.0)、モデル2(a,b,c,d)=(0.1,0.2,5.0,0.0)を定義する。初期モデルとパラメータ空間上で値が近いのは、モデル1の方であるが、初期モデルと動特性が近いのはモデル2の方である。この場合、初期モデルとモデル2は全く同じモデルを表している。
そもそも、状態空間表現の場合、モデルのパラメータは一意に決まらない(無数の値をとり得る)ので、モデルのパラメータの近さを評価関数とすることは意味がない。初期モデルを求めるときのみ入出力データを用いており、先見的情報に基づく制約条件をできるだけ満たすようにモデルパラメータを最適化計算する際には、初期モデルのみを規範としており、入出力データへの適合性を全く考慮していない。入出力データへの適合性は初期モデルを通して間接的に考慮されているだけであり、入出力データがモデリングに反映されているか否かは、初期モデルの精度に依存している。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、入出力データに基づいて離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するときに、質や量の不十分な入出力データからでも、精度と信頼性の高いモデルを構築することができるモデルパラメータ推定演算装置及び方法、モデルパラメータ推定演算処理プログラム並びにそれを記録した記録媒体を提供することにある。
第1の発明に係るモデルパラメータ推定演算装置は、入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算装置において、
インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件と、
マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件とを有し、
上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
のうち、少なくともいずれか1つに関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算手段を備えたことを特徴とする。
第2の発明に係るモデルパラメータ推定演算装置は、入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算装置において、
インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件を有し、
上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
のうち、少なくともいずれか1つ、及び
(c)マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方
に関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算手段を備えたことを特徴とする。
上記モデルパラメータ推定演算装置において、上記演算手段における制約条件はさらに、
マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件を有することを特徴とする。
上記モデルパラメータ推定演算装置において、上記評価関数は、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差に関する重み付きユークリッドノルムと、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差に関する重み付きユークリッドノルムと
の和で表されたことを特徴とする。
さらに、上記モデルパラメータ推定演算装置において、上記規範となるマルコフパラメータベクトルは、上記入力系列に対する応答波形の上下限制約条件の中間値に基づいて設定されたことを特徴とする。
またさらに、上記モデルパラメータ推定演算装置において、上記制約条件はステップ応答波形に関する制約条件であって、上記制約条件がインパルス応答系列であるマルコフパラメータで構成されたことを特徴とする。
また、上記モデルパラメータ推定演算装置において、上記演算手段は、上記マルコフパラメータベクトルに基づいて上記離散時間状態空間モデルのパラメータを演算したときに、演算後の離散時間状態空間モデルが最適化計算の際の制約条件を満たさなかった場合に、演算後の離散時間状態空間モデルから構成されるマルコフパラメータを上記規範として更新して、上記評価関数を最小化するようにマルコフパラメータベクトルを演算する制約条件付き最適化計算を繰り返すことを特徴とする。
第3の発明に係るモデルパラメータ推定演算方法は、入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算方法において、
インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件と、
マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件とを有し、
上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
のうち、少なくともいずれか1つに関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算ステップを含むことを特徴とする。
第4の発明に係るモデルパラメータ推定演算方法は、入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算方法において、
インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件を有し、
上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
のうち、少なくともいずれか1つ、及び
(c)マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方
に関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算ステップを含むことを特徴とする。
上記モデルパラメータ推定演算方法において、上記演算ステップはさらに、
マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件を有することを特徴とする。
上記モデルパラメータ推定演算方法において、上記評価関数は、
(a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差に関する重み付きユークリッドノルムと、
(b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差に関する重み付きユークリッドノルムと
の和で表されたことを特徴とする。
さらに、上記モデルパラメータ推定演算方法において、上記入力系列に対する応答波形の上下限制約条件の中間値に基づいて設定されたことを特徴とする。
またさらに、上記モデルパラメータ推定演算方法において、上記制約条件はステップ応答波形に関する制約条件であって、上記制約条件がインパルス応答系列であるマルコフパラメータで構成されたことを特徴とする。
また、上記モデルパラメータ推定演算方法において、上記演算ステップは、上記マルコフパラメータベクトルに基づいて上記離散時間状態空間モデルのパラメータを演算したときに、演算後の離散時間状態空間モデルが最適化計算の際の制約条件を満たさなかった場合に、演算後の離散時間状態空間モデルから構成されるマルコフパラメータを上記規範として更新して、上記評価関数を最小化するようにマルコフパラメータベクトルを演算する制約条件付き最適化計算を繰り返すことを含むことを特徴とする。
第5の発明に係るモデルパラメータ推定演算処理プログラムは、上記モデルパラメータ推定演算方法の演算ステップを含むことを特徴とする。
第6の発明に係るコンピュータで読取可能な記録媒体は、上記モデルパラメータ推定演算処理プログラムを記録したことを特徴とする。
従って、本発明に係るモデルパラメータ推定演算装置及び方法によれば、以下の特有の効果を有する。
(1)任意の入力に対する応答波形に関して制約条件を考慮できるので、幅広い先験的情報を活用してモデリングすることができる。その結果、質が悪く量の少ない入出力データからでも、精度と信頼性の高いモデルを求めることができる。
(2)精度と信頼性の高いモデルを使って制御系を設計したり、シミュレーションを実施したりできるので、制御系やシミュレーションの精度・信頼性も向上する。
(3)モデリングが困難で試行錯誤を特に要する多入力多出力系にも適用できる。
(4)マルコフパラメータ、又はその差分に対し、上下限制約を考慮しているので、あるいは、評価関数によってマルコフパラメータ又はその差分の絶対値が小さくなるように考慮しているので、マルコフパラメータから構成される応答波形が滑らかになるため、マルコフパラメータからモデルパラメータ(後述するA、B、C行列)を求める際に、制約条件が守られやすくなる。その結果、モデリングのパラメータ調整に要する手間が少なくなる。
(5)規範となるマルコフパラメータを上下限制約の中間に設定したり、任意に波形を設定することによって、規範モデル(後述する(20)式)が適切に求まらないシステムに対しても、応答波形の制約条件を満たすモデルが求まりやすくなる。精度の悪い規範モデルに変に引っ張られることが少ない。
(6)得られたモデルは必然的に先験的情報に合致したものとなる。従来法では、入出力データからモデルを求めてから、そのモデルが先験的情報に合致するか検証し、合致しない場合には、再度、モデリング工程を(最初から、あるいは、途中から)やり直す必要があった。特に、外乱やノイズの大きなプロセス、印加できる入力波形が限られたプロセス、採取できるデータ数が少ないプロセスにおいては、先験的情報に合致したモデルを構築することが困難であり、入出力データの採取・データ区間の選定・サンプリングタイムの調整・データの前処理などを試行錯誤しながら繰り返す必要があり、モデリング工程に多大な時間と労力を要した。先験的情報を予め考慮に入れることによって、モデリング工程における試行錯誤・やり直しの回数を大幅に減らすことが可能となり、短期間で精度と信頼性の高いモデルを構築できるようになる。その結果、制御系構築やシミュレーションによる検討のリードタイムが短縮化され、早い段階からそれらの効果を享受することができる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
図1は本発明の一実施形態に係るモデルパラメータ推定演算装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態のモデルパラメータ推定演算装置10は、図1に示すように、ディジタル計算機を含むように構成され、例えば図2のモデルパラメータ推定演算処理を実行することにより、モデルパラメータ推定演算結果を表示して出力する。モデルパラメータ推定演算装置10は、入出力データに基づいて任意の入力数と出力数を有するシステムのモデルパラメータを推定して演算するモデルパラメータ推定演算装置であり、
(a)当該モデルパラメータ推定演算装置10の動作及び処理を演算及び制御するコンピュータのCPU(中央演算処理装置)20と、
(b)オペレーションプログラムなどの基本プログラム及びそれを実行するために必要なデータを格納するROM(読み出し専用メモリ)21と、
(c)CPU20のワーキングメモリとして動作し、図2のモデルパラメータ推定演算処理において必要なパラメータやデータを一時的に格納するRAM(ランダムアクセスメモリ)22と、
(d)例えばハードディスクメモリで構成され、入力パラメータのデータやシミュレーション結果のデータなどのデータを格納するデータメモリ23と、
(e)例えばハードディスクメモリで構成され、CD−ROMドライブ装置45を用いて読みこんだ図2のモデルパラメータ推定演算処理プログラムを格納するプログラムメモリ24と、
(f)所定のデータや指示コマンドを入力するためのキーボード41に接続され、キーボード41から入力されたデータや指示コマンドを受信して所定の信号変換などのインターフェース処理を行ってCPU20に伝送するキーボードインターフェース31と、
(g)CRTディスプレイ43上で指示コマンドを入力するためのマウス42に接続され、マウス42から入力されたデータや指示コマンドを受信して所定の信号変換などのインターフェース処理を行ってCPU20に伝送するマウスインターフェース32と、
(h)CPU20によって処理されたデータや設定指示画面などを表示するCRTディスプレイ43に接続され、表示すべき画像データをCRTディスプレイ43用の画像信号に変換してCRTディスプレイ43に出力して表示するディスプレイインターフェース33と、
(i)CPU20によって処理されたデータ及び所定のモデルパラメータ推定演算結果などを印字するプリンタ44に接続され、印字すべき印字データの所定の信号変換などを行ってプリンタ44に出力して印字するプリンタインターフェース34と、
(j)図2のモデルパラメータ推定演算処理プログラムが記憶されたCD−ROM45aからモデルパラメータ推定演算処理プログラムのプログラムデータを読み出すCD−ROMドライブ装置45に接続され、読み出されたモデルパラメータ推定演算処理プログラムのプログラムデータを所定の信号変換などを行ってプログラムメモリ24に転送するドライブ装置インターフェース35と、
(k)入力信号発生器51からのアナログ入力信号をA/D変換するA/D変換器25aと、上記アナログ入力信号に応答してモデリング対象システム50から出力されるアナログ出力信号を検出して出力する出力信号検出器52からのアナログ出力信号をA/D変換するA/D変換器25bとを含む入力インターフェース25とを備える。
ここで、これらの回路20−25及び31−34はバス30を介して接続される。なお、A/D変換器25a,25bによりA/D変換された入力データ及び出力データはバス30を介してデータメモリ23に格納される。
次いで、本実施形態に係るモデルパラメータ推定演算装置10において用いるモデルパラメータ推定演算処理の推定演算方法について以下に詳述する。
この推定演算方法の要旨は、以下の処理を実行することを特徴としている。すなわち、任意の入力に対する応答波形に関する制約条件を、インパルス応答系列であるマルコフ(Marcov)パラメータの関数で構成し、少なくともマルコフパラメータの大きさ(又は、マルコフパラメータの差分の大きさ)に関する制約条件を構成し、上記制約条件の下で、最小化すべき評価関数をJとし、マルコフパラメータG(k)(k=1,2,…,N;Nは入出力データ長である。)の各要素から構成されるマルコフパラメータベクトルをθとし、規範とするマルコフパラメータ
Figure 0004815391
の各要素から構成されるマルコフパラメータベクトルをθrefとし、出力データy(k)から構成される出力データベクトルをYdataとし、入力データu(k)から構成される行列をΨとしたときに、上記各評価関数及び上記各ベクトルは次式で表される。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、P<Nであり、k>Pにおいて、G(k)≒O(零行列)である。また、Grs(k)は行列G(k)の行展開であり次式のように表される。
Figure 0004815391
に対して次式で表される。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391

Figure 0004815391
の行展開である。また、次式のように表される。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、重み行列W,WにおいてW≠O(零行列)又はW≠O(零行列)である。すなわち、重み行列W,Wのうち少なくともどちらかは零行列ではなく、一方は零行列であってもよい。本発明の本実施形態に係るモデルパラメータ推定演算処理は、上記制約条件の下で、評価関数Jを最小化するマルコフパラメータベクトルθを算出し、マルコフパラメータベクトルθから離散時間状態空間モデルのパラメータを求めることを特徴としている。
次いで、具体的なモデルパラメータ推定演算方法について以下に詳述する。
例えば実際のプラント装置から取得した入出力データ(l入力数m出力;ここで、l,mはそれぞれ自然数である。)に対し、非特許文献1に記載されているように、フィルタリング、異常値の除去、デシメーション、データの切り出し等によって前処理された入力データ系列(入力データ行列)Udata及び出力データ系列(出力データ行列)Ydataを次式で表す。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
はl次の実数ベクトルを表す。なお、
Figure 0004815391
はl次の実数ベクトルの集合を示す。また、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおけるm次の出力データベクトルを表す。なお、ベクトルや行列の右上の添え字Tは、ベクトルや行列の転置を表すものとする。
また、モデリング対象となるシステムについて、ある既知の次式の入力系列Uを当該モデルのシステムに印加したときの出力系列に関し、その上限値Ymax及び下限値Yminが先験的情報として分かっていたとする。
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおけるl次の既知入力ベクトルを表す。上記上限値Ymaxは次式で表される。
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおけるm次の出力ベクトルの上限値を表す。また、上記下限値Yminは次式で表される。
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおけるm次の出力ベクトルの下限値を表す。
さて、モデリング対象となるシステムのモデル式を次式で表す。
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおけるn次の状態ベクトルである。また、
Figure 0004815391
はサンプル時点kにおける出力ベクトル(モデルによる計算値)であり、
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
は、それぞれn行n列、n行l列、m行n列の定数行列である。なお、
Figure 0004815391
はm行n列の実数行列の集合を表す。(7)式のシステムのマルコフパラメータ(インパルス応答系列)
Figure 0004815391
を用いると、よく知られているようにサンプル時点kにおける出力ベクトルは次式で表される。
Figure 0004815391
ここで、マルコフパラメータ(行列)G(k)の各要素を次式とする。
Figure 0004815391
また、マルコフパラメータ(行列)G(k)を行展開した縦ベクトルを
Figure 0004815391
と定義し、入力ベクトルu(k)の転置ベクトルを出力数(m個)だけブロック対角に並べた行列を
Figure 0004815391
と定義すると、(9)式を次式に書き換えることができる。
Figure 0004815391
さらに、
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
と定義すると、(2)式の入力系列Udataが加えられたときのk=1〜Nにおける出力ベクトルのモデル計算値Yは次式で表される。
Figure 0004815391
さて、求めるモデルが安定、すなわち、Aのすべての固有値が負であれば、(8)式のマルコフパラメータは十分大きなサンプル時点において0(零行列)に収束する。そこで、サンプル時点Pを越える時点においては、(8)式のマルコフパラメータはO(零行列)とおいて差し支えないものとする。すなわち、k>Pにおいて、マルコフパラメータ(行列)G(k)=O(零行列)が成り立つとする。一般に(2)式と(3)式の入出力データを採取するときには、モデリング対象となるシステムの収束時間よりも長く入出力データを採取するので、入出力データ長NはPよりも大きくなる(N>P)。以上を考慮すると、(15’)〜(17’)式は、それぞれ次式で表される。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
さて、(4)式の任意の入力系列
Figure 0004815391
に対する応答系列は同様に
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
先験的情報(ある入力系列が加わったときの出力応答の上下限)を満たすためには(20)式の
Figure 0004815391
が上下限に入ればよいので、先験的情報を満たすための制約条件式は次式で表される。
Figure 0004815391
一方、規範(参照)となるマルコフパラメータを
Figure 0004815391
とし、(10)〜(11)式と同様に行展開した縦ベクトル
Figure 0004815391
を用いて、
Figure 0004815391
と定義する。
ここで、
Figure 0004815391
は、例えば、入出力データ系列から部分空間法などの既存のモデリング手法を用いて求めたモデル
Figure 0004815391
に対して、
Figure 0004815391
として求める。
ここで、制約条件(20)式の下で、評価関数
Figure 0004815391
又は
Figure 0004815391
を最小化するマルコフパラメータθを求める。
ここで、wは、規範となるマルコフパラメータと同定するモデルのマルコフパラメータの誤差を小さくするための重み係数であり、wは、入出力データへのフィッティング度合いを調整する重み係数であり、それぞれ0以上の実数である(0でもよいが、wとwがともに0であることはない)。また、Wは、規範となるマルコフパラメータと同定するモデルのマルコフパラメータの誤差を小さくするための重み行列であり、それぞれの要素に異なった重みをつけることができる。Wは、入出力データへのフィッティング度合いを調整する重み行列であり、それぞれの要素に異なった重みをつけることができる。重み行列WとWは、通常、対角行列にすることが多く、その対角要素はそれぞれ0以上の実数である。また、重み行列WとWは零行列でもよいが、重み行列WとWがともに零行列となることはない。
なお、
Figure 0004815391
はユークリッドノルムを表し、任意の縦ベクトルqに対し、
Figure 0004815391
である。
また、制約条件(20)式の下で、(25)式の評価関数J、又は(25’)式の評価関数Jを最小化するマルコフパラメータθを求める問題は、二次計画問題として知られ、市販のパッケージソフト等を用いて解くことができる。
求まったマルコフパラメータベクトル
Figure 0004815391
に対して、各要素Grs(k)からマルコフパラメータを構成し((11)式から(10)式を求める。)、ホー・カルマン(Ho-Kalman)の実現問題(例えば、非特許文献3及び4参照。)に従って、(7)式のA、B、C行列を求める。このとき、モデルの次数を低次に設定してしまうと、(20)式のような満たすべき制約条件を満たさなくなってしまう可能性がある。そこで、この段階では、高次のモデルを求めておく。
そして、(7)式のA、B、C行列から、平衡実現に基づくモデル低次元化手法(例えば、非特許文献6及び7参照。)により、低次のモデル式に近似する。
さて、上記では制約条件式として(20)式を考慮したが、任意の応答波形に関する制約条件式だけでは、マルコフパラメータの各要素gij(k)(i=1〜m;j=1〜l)の大きさが非現実的に大きく求まってしまったり(マルコフパラメータの絶対値が大きい=ステップ応答が急激に変化する)、その差分
Figure 0004815391
(ここで、
Figure 0004815391
)が大きくなりステップ応答波形が尖ったり(ギザギザ状になったり)する可能性がある(図4参照。)。
例えば、簡単のために1入力1出力系においてステップ応答波形に関して制約条件を設定した場合を考える。制約条件(20)式の下で、評価関数J((25)式又は(25’)式で表される。)を最小化して求まったマルコフパラメータθが図9のようであったとする。
図9から明らかなように、ステップ応答は上下限制約YmaxとYminの間に存在しているが、マルコフパラメータの大きさに制約を設けないと、図9(a)のように、ステップ応答波形が急激に変化したり、マルコフパラメータの差分に制約を設けないと、図9(a)のようにステップ応答波形がギザギザ状になったりする可能性があることがわかる。その結果、最終的に求まるモデル((7)式のA、B、C行列)が不必要に高次なものになるおそれがあるし、逆に低次のモデルでフィッティングしようとすると応答波形に関する制約条件を満たさなくなってしまうおそれがある。
そこで、ステップ応答波形を急激に変化させないようにするためには、(20)式の制約条件とは別に、マルコフパラメータの各要素gij(k)に対して制約条件を次式のごとく設定すればよい。
Figure 0004815391
この制約条件は、インパルス応答系列
Figure 0004815391
の上下限、言い換えると、次式のステップ応答系列の差分の上下限について、先験的情報がある場合に有効である。
Figure 0004815391
ここで、
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ただし、
Figure 0004815391
である。
例えば、すべての入力からすべての出力へのステップ応答波形の利得がすべて正で、単調増加である(逆応答や振動がない)ことが先験的情報として分かっている場合には、(26)式において、マルコフパラメータθmin=O(零ベクトル)とすればよい。
また、ステップ応答波形を尖らさない(ギザギザ状にしない)ためには、(20)式の制約条件とは別に、マルコフパラメータの差分
Figure 0004815391
(ただし、
Figure 0004815391
)に対して制約条件を次式のごとく設定すればよい。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、Imlは(m×l)行(m×l)列の単位行列であり、Δθmax,Δθminはマルコフパラメータの差分の上下限制約ベクトルである。
さらに、(20)式の制約条件において、ステップ応答以外の応答波形(例えばインパルス応答など)に関する制約条件を定めたような場合で、ステップ応答系列
Figure 0004815391
Figure 0004815391
に関しても制約条件を設定しておく場合には、(20)式の制約条件とは別に、制約条件式として次式を考慮すればよい。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
ここで、Θmax,Θminはステップ応答系列
Figure 0004815391
に関する上下限制約ベクトルである。
なお、(20)式、(26)式、(27)式、(29)式の制約条件は任意に組み合わせ可能であり、例えば、すべての制約条件を考慮する場合には、次式のようにすればよい。
Figure 0004815391
(31)式の制約条件の下で(25)式又は(25’)式を最小化する二次計画問題を解けばよい。
複数の入力パターンに対する応答波形に関して制約条件をつけることも可能であり、i番目の入力パターンによって構成される(16)式の行列を
Figure 0004815391
とし、応答波形の上下限を定めた(5)式、(6)式のベクトルをそれぞれYi,max,Yi,minとすると、L個の入力パターンに関する応答波形の制約条件式は次式で表される。
Figure 0004815391
図2は図1のモデルパラメータ推定演算装置10によって実行されるモデルパラメータ推定演算処理を示すフローチャートである。また、図3は図2のモデルパラメータ推定演算処理を実行するときの一実施例であって、ごみ焼却炉における蒸気弁解度(入力波形データ(a))と蒸気流量(出力波形データ(b))とを示す波形図である。以下、図2のモデルパラメータ推定演算処理のフローチャートを参照して、本実施形態に係るモデルパラメータ推定演算処理について以下に説明する。ここでは、図3に示すような入出力データ系列(ごみ焼却炉における蒸気弁開度と蒸気流量)を用いたケースを例に説明する。
[ステップS1]
モデリング対象システムに対して入力信号発生器51からアナログ入力信号を印加し、これに応答してモデリング対象システム50から出力されるアナログ出力信号を出力信号検出器52により検出する。アナログ入力信号は入力インターフェース25内のA/D変換器25aに入力されてA/D変換された後、データメモリ23に格納される。また、アナログ出力信号は入力インターフェース25内のA/D変換器25bに入力されてA/D変換された後、データメモリ23に格納される。
[ステップS1A]
次いで、先験的情報に基づき、ステップ応答領域の上下限制約を設定する。ここでは、図4に示すように、ステップ応答の上限と下限の波形をそれぞれ設定した。図4(a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、最適化計算によって求めたマルコフ列積算値(数66や数73のように、マルコフパラメータを積算した値である。)及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、図4(b)は実現問題によるモデル(4次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。求めるモデルのステップ応答波形は、この上限と下限に挟まれる領域に存在することになる。なお、上下限制約の設定にあたっては、図1のマウス42又はキーボード41(入力装置)を用いて入力する。ここで、例えばキーボード41を用いて折線の座標を入力してもよい。先験的情報を記憶している装置から、自動的にステップ応答領域のデータ(上下限制約データ)を入力してデータメモリ23に格納してもよい。
[ステップS2]
ステップ応答波形の制約条件だけでは、ステップ応答波形がギザギザ状になることも考えられる。特に、入出力データに大きな外乱や雑音が乗っている場合には、その可能性が大きくなってギザギザ状になると考えられる(図4参照)。ステップ応答波形がギザギザ状になると、ホー・カルマンの実現問題で求めた(7)式のシステムが、あるいは、それを低次元化したシステムが、ステップ応答の上下限値から外れてしまうおそれがある。
そこで、ステップ応答波形(=マルコフパラメータの積算値)が滑らかになるように、マルコフパラメータ(=インパルス応答系列)(あるいはマルコフパラメータの差分(
Figure 0004815391
;ただし
Figure 0004815391
))にも上下限制約を設定する。
つまり、(20)式の制約条件式と(27)式の制約条件式を考慮する。ここでは、マルコフパラメータの差分の絶対値が0.002以下になるように、かつ、サンプル時点kが大きくなるほど(Pに近づくほど)、マルコフパラメータの差分の絶対値の上限値が小さくなるようにした(図10)。図10は本発明に係る変形例においてマルコフパラメータの差分値の絶対値を時間経過につれて小さくするように設定した一例を示す図である。図10に示すように、マルコフパラメータの差分の絶対値を小さくすることによって、サンプル時点kのマルコフパラメータがサンプル時点k−1に対して急激に変化しないようになる。言い換えれば、マルコフパラメータの積算値であるステップ応答波形の傾きが急激に変化しなくなる。ステップ応答波形の傾きが急激に変化しないということは、ステップ応答波形に尖った部分やギザギザ部分が存在しにくくなり、ステップ応答波形を滑らかにする効果がある。
また、本モデリング対象は、安定なシステムであるため、ステップ応答波形は発散せずにある値に収束する。たとえ、ステップ応答波形に振動成分や逆応答があったとしても、その波形の変化は徐々に緩やかになりながらある値に収束すると考えられる(図11)。図11(a)はステップ入力の入出力波形データの一例を示し、図11(b)は上記ステップ入力に対する出力波形データを示す波形図である。
図11から明らかなように、ステップ応答波形の差分(すなわちマルコフパラメータ)は、巨視的に見れば徐々に小さくなることが考えられ、さらに、その差分(すなわちマルコフパラメータの差分)も巨視的に見れば徐々に小さくなると考えられる。
そこで、このような先験的情報を活用して、マルコフパラメータの差分の絶対値が(巨視的に)徐々に小さくなるように制約条件を定めることによって、最適化計算によって求まるマルコフパラメータの信頼度を上げる効果がある。また、マルコフパラメータからホー・カルマンの手法によって(7)式のA、B、C行列を求める際や、平衡実現に基づくモデル低次元化手法により、低次のモデル式に近似する際にも、元のマルコフパラメータ(二次計画問題を解いて求めたマルコフパラメータ)gij(k)の持っていた情報の欠落量を少なくし、応答波形に関する制約条件式((20)式)を満たしやすくする効果がある。もし、二次計画問題を解いた結果、サンプル時点kが大きくなってからマルコフパラメータ(又はその差分)が大きくなるような(ステップ入力に対して時間が経過してから大きく応答波形が変化するような)解が求まったとすると、ホー・カルマンの手法によって(7)式のA、B、C行列を求める際に不安定なモデルが求まったり、応答波形に関する制約条件式((20)式)から逸脱するようなモデルが求まったりする可能性が高くなる。これは、安定かつ低次のシステムにおいて、時間が経ってからステップ応答が急激に変化することは考えにくいためである。
なお、マルコフパラメータもしくはその差分の上下限の設定にあたっては、図1のように、マウスで波形42を入力し、又はキーボード41で折線の座標を入力するなど入力装置を用いて入力してもよいし、先験的情報を記憶している記憶装置から、自動的にステップ応答領域のデータを入力してデータメモリ23に格納してもよい。
[ステップS3]
既存のモデリング手法によって規範となるモデルを同定する。ここでは、部分空間法(例えば、特許文献4及び5参照。)によって求めた2次のモデルを規範モデルとした。
[ステップS4]
次いで、(22)〜(24)式に従って、規範モデルのマルコフパラメータを構成する。規範モデルのマルコフパラメータの積算値((22)式のθrefの積算値)
Figure 0004815391
を図5に示す。なお、本実施例は1入力1出力系なので当該システムの関数は次式で表される。
Figure 0004815391
図5(a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、最適化計算によって求めたマルコフ列積算値(マルコフパラメータの積算値)、及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、図5(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理によって得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。なお、規範モデルマルコフパラメータの積算値は、ステップ応答波形に対する上限値と下限値((5)式のYmax(k)及び(6)式のYmin(k)に対応する。)の制約を満たしていないことに注意する。
[ステップS5]
(25)式の評価関数の重み係数(w,w)を設定する。規範モデルのマルコフパラメータへのフィッティングを考慮しない場合には、w=0としてもよい。ここでは、重み係数w=w=1とした。なお、(25’)式の評価関数においては、重み行列W、Wをともに単位行列とした場合に相当する。
[ステップS6]
ステップS1A及びS2の制約条件の下、(25)式の評価関数を最小化するマルコフパラメータを二次計画問題を解くことによって求める。求めたマルコフパラメータの積算値((15)式のθの積算値
Figure 0004815391
に対応する。)を図5に示す。図5から明らかなように、求めたマルコフパラメータの積算値は、ステップ応答波形に対する上限値と下限値((5)式のYmax(k)、(6)式のYmin(k)に相当)の制約を満たしており、意図通りにマルコフパラメータが求まっていることが確認できる。
[ステップS7]
ホー・カルマンの手法で実現問題を解くことによって、(7)式のA、B、C行列を求める。ここでは10次のモデルを求めた。求めたA、B、C行列を用いてステップ応答波形を描画したものを図5(b)に示す。求めたA、B、C行列は、ステップ応答波形に関する制約条件を満たしていることが確認できる。
[ステップS8−S11]
平衡実現に基づき、モデルを低次元化する。求まったモデルが制約条件を満たすなど許容範囲であることを確認し、同定されたモデルパラメータをデータメモリ23に格納し、CRTディスプレイ43に表示して出力し、モデリングを終了する。なお、本実施例では、10次のモデルを2次のモデルに低次元化した。ステップS9でNOのときは、規範マルコフ列を所定の方法で更新した後ステップS5に戻り、上記の処理を繰り返す。
以上のモデルパラメータ推定演算処理によって、求まったモデルを図5(b)に示す。図5(b)から明らかなように、最終的に得られたモデル(低次元化されたモデル)のステップ応答波形は予め定めた上下限制約の間に入っており、意図通りにモデルが求まったことを確認できる。
なお、ステップS2の制約条件を加えない場合には、マルコフパラメータから安定してモデルパラメータが求まらなかった。すなわち、マルコフパラメータからホー・カルマンの実現問題によって10次のモデルを求めたが不安定なモデルとなってしまった。試行錯誤でパラメータを調整した結果、ホー・カルマンの方法で低次(4次)のモデルを求め、2次のモデルに低次元化した(図4(b)参照。)。ステップ応答が上下限制約に入ったものの、ステップS2の制約条件を付け加えた場合に比べて、モデリングに時間を要することとなった。
また、ステップS2において、マルコフパラメータそのものに制約条件をつけてもよい。つまり、インパルス応答に制約をつけたものになる。ここでは、マルコフパラメータの絶対値が0.01以下になるように、かつ、サンプル時点kが大きくなるほど(Pに近づくほど)、マルコフパラメータの絶対値の上限値が小さくなるようにした。以上によって求めたモデルを図6に示す。図6(a)は実施例においてステップ応答の上限波形及び下限波形、マルコフ列積算値及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、図6(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理においてマルコフパラメータに制約条件を付与したときに得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。図6(b)から明らかなように、求まったモデルは、ステップ応答に関する上下限制約を満たしていることがわかる。
図7(a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、マルコフ列積算値及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、図7(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理において規範モデルのマルコフパラメータを求めるときにステップ応答の上下限制約の中間値を用いたときに得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。ここでは、中間値として平均値を用いた。
さらに、ステップS3〜S4において、規範となるマルコフパラメータを求める際、ステップ応答の上下限制約の中間値を用いてもよい(図7(a))。つまり、ステップ応答の上下限制約の中間値を差分したものを規範マルコフパラメータとする。求まったモデルは、図7(b)から明らかなように、ステップ応答に関する上下限制約を満たしていることが確認できる。あるいは、直接、規範となるマルコフパラメータを指定してもよい。例えば、ステップ応答の上下限制約の領域内で、先験的情報に基づき適当な波形を入力あるいは手書きし、その差分を規範マルコフパラメータとして採用してもよい。
さらに、ステップS8において、求まったモデルが制約条件を満たさない場合、求まったモデルでマルコフパラメータを構成し、これを(22)式の最適化計算の際の規範マルコフパラメータθrefとして更新してもよい。求まったモデルを規範モデルとして更新することによって、徐々にステップ応答制約に入るようにモデルが改善することが期待できる。
さらに、ステップ8で平衡実現に基づきモデルを低次元化する際、周波数重み付きの平衡実現(例えば、非特許文献6及び7参照。)を用いてもよい。外乱や雑音の影響を受けがちな高周波成分を無視し、応答波形の特徴的な低周波成分を重視して低次元化できるため、低次元化後のモデルが応答波形制約から外れる可能性が小さくなると考えられる。
本実施例では、ステップ応答波形に関する制約条件を扱ったが、任意の入力に対する出力応答波形に関して、制約条件を与えてもよい。例えば、正弦波入力に関する応答波形制約を考慮することによって、任意の周波数における利得や位相に関する制約を考慮することができる。例えば、角周波数(角速度)ω[rad/s]における利得の上限値と下限値がそれぞれGmax、Gminであり、位相遅れの上限値と下限値がそれぞれφmax、φminであることが先験的に分かっているような場合には、図12に示すように周期2π/ωで振幅1の正弦波入力に対し、振幅がGminからGmaxの間で、かつ、正弦波入力に対して位相遅れがφminとφmaxの間となるような正弦波形がすべて包含できるように上限値と下限値((5)式のYmax(k)、(6)式のYmin(k)に相当)を定めればよい。ここで、図12は本発明に係る変形例において正弦波入力に関する応答波形制約を考慮したときの出力波形データ(a)及び入出力波形データ(b)を示す波形図である。
また、(31)式や(32)式で示したように複数の制約条件を組み合わせることができる。複数の先験的情報を活用することによって、より高精度で信頼性の高いモデルを求めることができる。
さらに、マルコフパラメータに関して、その大きさに対する制約条件式((26)式)、その差分の大きさに対する制約条件式((27)式)、その積和の大きさに対する制約条件式((29)式)を考慮する代わりに、マルコフパラメータの大きさ、差分の大きさ、積和の大きさに関して、評価関数で考慮することによって、それぞれの大きさを抑制してもよい。つまり、(25)式や(25’)式の評価関数Jの代わりに、次式を用いてもよい。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
Figure 0004815391
なお、重み係数w〜wはそれぞれ0以上の実数であり、重み行列W〜Wはそれぞれ対角行列で、その対角要素はそれぞれ0以上の実数である。もちろん、次式のように組み合わせてもよい。
Figure 0004815391
Figure 0004815391
(21)式の制約条件の下で、(33)〜(40)式のいずれかの評価関数を最小化する問題(二次計画問題)を解いてマルコフパラメータを求めればよい。(26)式、(27)式、(29)式のように制約条件として考慮した場合には、不適切な制約条件を設定した場合には、すべての制約を満たす解が存在しなくなる可能性もあるが、(33)〜(40)式のように評価関数として考慮することによって、解が求まる可能性を高くすることができる。また、マルコフパラメータの大きさ、差分の大きさ、積和の大きさに対して、それぞれできるだけ大きさを抑制したいが、明確な制約条件を定め難いときには、評価関数として考慮することが有効である。
さらには、マルコフパラメータの大きさ、差分の大きさ、積和の大きさに対して、あるものは制約条件として、また、あるものは評価関数として考慮するようにしてもよいし、制約条件と評価関数の両方で考慮するようにしてもよい。制約条件と評価関数の両方で考慮することによって、マルコフパラメータの大きさ、差分の大きさ、積和の大きさに関して、制約条件に入ることを保証しながら、かつ、それらの大きさができるだけ小さくなるような解を求めることができる。
<変形例>
上記の実施形態では、求めたマルコフパラメータからホー・カルマンの手法を用いて(7)式のモデルパラメータA、B、C行列を求めたが、マルコフパラメータをA、B、C行列に変換することなく、マルコフパラメータをそのまま用いて、制御系を設計したり、シミュレーションに用いたりすることができる。例えば、任意の入力系列
Figure 0004815391
に対する応答をシミュレーションする場合は、出力系列を
Figure 0004815391
とし、
Figure 0004815391
Figure 0004815391
とすると、出力のシミュレーションの結果は次式で表される。
Figure 0004815391
図8にシミュレーション結果を示す。図7の事例で求めたマルコフパラメータθを用いて図8(a)のような入力波形に対する応答を求めた結果を図8(b)に示す。ここで、マルコフパラメータからA,B,C行列を求めることなく、シミュレーションできることが分かる。
また、マルコフパラメータを用いて制御系を設計する場合には、例えば、モデル予測制御手法を用いればよい。制御対象となるシステムのインパルス応答系列
Figure 0004815391
あるいは、ステップ応答系列
Figure 0004815391
Figure 0004815391
があれば制御系を構成できるので、ホー・カルマンの手法を用いて(7)式のモデルパラメータA、B、C行列を求める必要がない。
以上によれば、ホー・カルマンの手法を用いて(7)式のモデルパラメータA、B、C行列を求める際、あるいは、平衡実現によってモデルを低次元化する際に生じる誤差(情報の欠落)がない(応答波形に関する制約条件を逸脱することもない)ので、それだけ高精度なシミュレーションや制御系の設計ができる可能性がある。また、それだけモデルを求める際に必要な労力や計算量も少なくてすむ。
以上の実施形態又は実施例においては、図2のモデルパラメータ推定演算処理プログラムデータをCD−ROM45aに格納して実行するときにプログラムメモリ24にロードして実行しているが、本発明はこれに限らず、CD−R、CD−RW、DVD、MOなどの光ディスク又は光磁気ディスクの記録媒体、もしくは、フロッピーディスクなどの磁気ディスクの記録媒体など種々の記録媒体に格納してもよい。これらの記録媒体は,コンピュータで読み取り可能な記録媒体である。また、図2のモデルパラメータ推定演算処理のデータを予めプログラムメモリ24に格納して当該処理を実行してもよい。
以上詳述したように、本発明に係るモデルパラメータ推定演算装置及び方法によれば、以下の特有の効果を有する。
(1)任意の入力に対する応答波形に関して制約条件を考慮できるので、幅広い先験的情報を活用してモデリングすることができる。その結果、質が悪く量の少ない入出力データからでも、精度と信頼性の高いモデルを求めることができる。
(2)精度と信頼性の高いモデルを使って制御系を設計したり、シミュレーションを実施したりできるので、制御系やシミュレーションの精度・信頼性も向上する。
(3)モデリングが困難で試行錯誤を特に要する多入力多出力系にも適用できる。
(4)マルコフパラメータ、又はその差分に対し、上下限制約を考慮しているので、あるいは、評価関数によってマルコフパラメータ又はその差分の絶対値が小さくなるように考慮しているので、マルコフパラメータから構成される応答波形が滑らかになるため、マルコフパラメータからモデルパラメータ(A、B、C行列)を求める際に、制約条件が守られやすくなる。その結果、モデリングのパラメータ調整に要する手間が少なくなる。
(5)規範となるマルコフパラメータを上下限制約の中間に設定したり、任意に波形を設定することによって、規範モデル((20)式)が適切に求まらないシステムに対しても、応答波形の制約条件を満たすモデルが求まりやすくなる。精度の悪い規範モデルに変に引っ張られることが少ない。
(6)得られたモデルは必然的に先験的情報に合致したものとなる。従来法では、入出力データからモデルを求めてから、そのモデルが先験的情報に合致するか検証し、合致しない場合には、再度、モデリング工程を(最初から、あるいは、途中から)やり直す必要があった。特に、外乱やノイズの大きなプロセス、印加できる入力波形が限られたプロセス、採取できるデータ数が少ないプロセスにおいては、先験的情報に合致したモデルを構築することが困難であり、入出力データの採取・データ区間の選定・サンプリングタイムの調整・データの前処理などを試行錯誤しながら繰り返す必要があり、モデリング工程に多大な時間と労力を要した。先験的情報を予め考慮に入れることによって、モデリング工程における試行錯誤・やり直しの回数を大幅に減らすことが可能となり、短期間で精度と信頼性の高いモデルを構築できるようになる。その結果、制御系構築やシミュレーションによる検討のリードタイムが短縮化され、早い段階からそれらの効果を享受することができる。
本発明の一実施形態に係るモデルパラメータ推定演算装置10の構成を示すブロック図である。 図1のモデルパラメータ推定演算装置10によって実行されるモデルパラメータ推定演算処理を示すフローチャートである。 図2のモデルパラメータ推定演算処理を実行するときの一実施例であって、ごみ焼却炉における蒸気弁解度(入力波形データ(a))と蒸気流量(出力波形データ(b))とを示す波形図である。 (a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、最適化計算によって求めたマルコフ列積算値及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、(b)は実現問題によるモデル(4次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。 (a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、最適化計算によって求めたマルコフ列積算値(マルコフパラメータの積算値)、及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理によって得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。 (a)は実施例においてステップ応答の上限波形及び下限波形、マルコフ列積算値及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理においてマルコフパラメータに制約条件を付与したときに得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。 (a)は実施例において、ステップ応答の上限波形及び下限波形、マルコフ列積算値及び規範モデルのマルコフ列積算値を示す波形図であり、(b)は図2のモデルパラメータ推定演算処理において規範モデルのマルコフパラメータを求めるときにステップ応答の上下限制約の中間値を用いたときに得られた、実現問題によるモデル(10次)による推定波形及び低次元化モデル(2次)による推定波形を示す波形図である。 シミュレーション結果であって、(a)は入力波形の波形図であり、(b)はマルコフパラメータを用いて図8(a)のような入力波形に対する結果を示す波形図である。 簡単のために1入力1出力系においてステップ応答波形に関して制約条件を設定した場合において、制約条件(20)式の下で、評価関数J((25)式又は(25’)式で表される。)を最小化して求まったマルコフパラメータθを示す図である。 本発明に係る変形例においてマルコフパラメータの差分値の絶対値を時間経過につれて小さくするように設定した一例を示す図である。 (a)はステップ入力の入出力波形データの一例を示し、(b)は上記ステップ入力に対する出力波形データを示す波形図である。 本発明に係る変形例において正弦波入力に関する応答波形制約を考慮したときの出力波形データ(a)及び入出力波形データ(b)を示す波形図である。
符号の説明
10…モデルパラメータ推定演算装置、
20…CPU、
21…ROM、
22…RAM、
23…データメモリ、
24…プログラムメモリ、
25…入力インターフェース、
25a,25b…A/D変換器、
30…バス、
31…キーボードインターフェース、
32…マウスインターフェース、
33…ディスプレイインターフェース、
34…プリンタインターフェース、
35…ドライブ装置インターフェース、
41…キーボード、
42…マウス、
43…CRTディスプレイ、
44…プリンタ、
45…CD−ROMドライブ装置、
45a…CD−ROM、
50…モデリング対象システム、
51…入力信号発生器、
52…出力信号検出器。

Claims (16)

  1. 入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算装置において、
    インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件と、
    マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件とを有し、
    上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
    のうち、少なくともいずれか1つに関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算手段を備えたことを特徴とするモデルパラメータ推定演算装置。
  2. 入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算装置において、
    インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件を有し、
    上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
    のうち、少なくともいずれか1つ、及び
    (c)マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方
    に関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算手段を備えたことを特徴とするモデルパラメータ推定演算装置。
  3. 上記演算手段における制約条件はさらに、
    マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件を有することを特徴とする請求項2記載のモデルパラメータ推定演算装置。
  4. 上記評価関数は、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差に関する重み付きユークリッドノルムと、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差に関する重み付きユークリッドノルムと
    の和で表されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算装置。
  5. 上記規範となるマルコフパラメータベクトルは、上記入力系列に対する応答波形の上下限制約条件の中間値に基づいて設定されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載のパラメータ推定装置。
  6. 上記制約条件はステップ応答波形に関する制約条件であって、上記制約条件がインパルス応答系列であるマルコフパラメータで構成されたことを特徴とする請求項1乃至記載のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算装置。
  7. 上記演算手段は、上記マルコフパラメータベクトルに基づいて上記離散時間状態空間モデルのパラメータを演算したときに、演算後の離散時間状態空間モデルが最適化計算の際の制約条件を満たさなかった場合に、演算後の離散時間状態空間モデルから構成されるマルコフパラメータを上記規範として更新して、上記評価関数を最小化するようにマルコフパラメータベクトルを演算する制約条件付き最適化計算を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算装置。
  8. 入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算方法において、
    インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件と、
    マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件とを有し、
    上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
    のうち、少なくともいずれか1つに関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算ステップを含むことを特徴とするモデルパラメータ推定演算方法。
  9. 入出力データに基づいて、離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを推定演算するモデルパラメータ推定演算方法において、
    インパルス応答系列であるマルコフパラメータの関数で構成された任意の入力系列に対する応答波形に関する制約条件を有し、
    上記入出力データに基づいて、上記制約条件の下で、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差と、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差と
    のうち、少なくともいずれか1つ、及び
    (c)マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方
    に関する評価関数を最小化するように上記離散時間状態空間モデルのモデルパラメータを演算する演算ステップを含むことを特徴とするモデルパラメータ推定演算方法。
  10. 上記演算ステップにおける制約条件はさらに、
    マルコフパラメータの大きさと、マルコフパラメータの差分との少なくとも一方に関する制約条件を有することを特徴とする請求項記載のモデルパラメータ推定演算方法。
  11. 上記評価関数は、
    (a)マルコフパラメータベクトルと規範となるマルコフパラメータベクトルとの誤差に関する重み付きユークリッドノルムと、
    (b)上記出力データベクトルと、マルコフパラメータと上記入力データにより計算される出力予測値(推定値)との誤差に関する重み付きユークリッドノルムと
    の和で表されたことを特徴とする請求項乃至10のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算方法。
  12. 上記規範となるマルコフパラメータベクトルは、上記入力系列に対する応答波形の上下限制約条件の中間値に基づいて設定されたことを特徴とする請求項乃至11のうちのいずれか1つに記載のパラメータ推定方法。
  13. 上記制約条件はステップ応答波形に関する制約条件であって、上記制約条件がインパルス応答系列であるマルコフパラメータで構成されたことを特徴とする請求項乃至12記載のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算方法。
  14. 上記演算ステップは、上記マルコフパラメータベクトルに基づいて上記離散時間状態空間モデルのパラメータを演算したときに、演算後の離散時間状態空間モデルが最適化計算の際の制約条件を満たさなかった場合に、演算後の離散時間状態空間モデルから構成されるマルコフパラメータを上記規範として更新して、上記評価関数を最小化するようにマルコフパラメータベクトルを演算する制約条件付き最適化計算を繰り返すことを含むことを特徴とする請求項乃至13のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算方法。
  15. 請求項乃至14のうちのいずれか1つに記載のモデルパラメータ推定演算方法の演算ステップを含むことを特徴とするモデルパラメータ推定演算処理プログラム。
  16. 請求項15記載のモデルパラメータ推定演算処理プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータにより読取可能な記録媒体。
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