JP4814846B2 - 対象物衝突模擬装置、その方法、そのプログラム、及びその記録媒体 - Google Patents
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弾性体の衝突の模擬方法については、コンピュータグラフィックスの分野から、非特許文献1〜3に示すように、いくつかの手法が提案されている。
R. Keiser, M. Muller, B. Heidelberger, M. Teschner, and M. Gross, "Contact Handling for Deformable Point-Based Objects," Proc. of Vision, Modeling, Visualization VMV'04, pp. 339-347, Stanford, USA, Nov. 2004 J. Spillmann and M. Teschner, "Contact Surface Computation for Coarsely Sampled Deformable Objects," Proc. of Vision, Modeling, Visualization VMV'05, pp. 289-296, Erlangen, Germany, Nov. 2005 G. Hirota, S. Fisher, and M. C. Lin "Simulation of non-penetrating Elastic Bodies Using Distance Fields," Technical Report TR00-018, University of North Carolina at Chapel Hill, 2000
更に、質点が貫入増加状態にある場合には、貫入防止部を備えても良い。貫入防止部は、適用部で求めた質点の速度ベクトルvI,iと位置ベクトルxI,iとを、貫入解消状態となるように調整する。
(xi−xj)・nj=zji・nj<0 (1)
ただし、zji・njはベクトルzjiとベクトルnjとの内積を示す。式(1)を満たすということは、差ベクトルzjiと投影点の法線ベクトルnjとが90度より大きい内角をなしているということである。
まず、対象物A、Bの運動量L1、L2を求める。対象物A、Bの運動量L1、L2は、対象物A、Bを構成している全質点の運動量の和とできる。つまり、以下の式(2a)(2b)により求める。
L1=Σi=1 Pm1、iv1、i(p) (2a)
L2=Σi=1 Qm2、iv2、i(p) (2b)
L1=Σi=1 Pm1、ivI、i(p)=veq−1(p)Σi=1 Pm1、i
=M1・veq−1(p) (3a)
L2=Σi=1 Qm2、iv2、i(p)=veq−2(p)Σj=1 Qm2、i
=M2・veq−2(p) (3b)
veq−1(p)=L1/M1 (4a)
veq−2(p)=L2/M2 (4b)
式(3a)(3b)、式(4a)(4b)において、対象物A、Bの等価速度veq−1(p)、veq−2(p)は、連続弾性体と同じ質量、同じ運動量を持つ剛体の移動速度、すなわち、連続弾性体を剛体に置き換えた場合、両者が力学的に等価の状態にあるための必要速度として解釈できる。
M1veq−1(p)+M2veq−2(p)=M1v’eq−1(p)+M2v’eq−2(p) (5)
ただし、v’eq−1(p)、v’eq−2(p)はそれぞれ、対象物A、Bの衝突後の等価速度である(以下、衝突後等価速度という)。左辺が衝突前の対象物A、Bの運動量の和であり、右辺が衝突後の対象物A、Bの運動量の和である。対象物A、Bの衝突を考慮する際、反発係数を考慮することが好ましい。当該反発係数eは以下の式(6)で表すことができる。
e=(veq−1(p)−veq−2(p))/(v’eq−2(p)−v’eq−1(p)) (6)
v’eq−1(p)=
{M1veq−1(p)+M2veq−2(p)+M2e(veq−2(p)−veq−1(p))}/(M1+M2) (7a)
v’eq−2(p)=
{M1veq−1(p)+M2veq−2(p)+M1e(veq−1(p)−veq−2(p))}/(M1+M2) (7b)
全系衝突衝撃力計算部12は、衝突後等価速度ベクトルv’eq−1(p)、v’eq−2(p)を用いて、全系衝突衝撃力ベクトルFIを求める(ステップS10)。運動量保存の法則により、以下の式(8a)、(8b)が成り立つ。
M1veq−1(p)+F1Δt=M1v’eq−1(p) (8a)
M2veq−2(p)+F2Δt=M2v’eq−2(p) (8b)
F1=M1(v’eq−1(p)−veq−1(p))/Δt (9a)
F2=M2(v’eq−1(p)−veq−1(p))/Δt (9b)
f1D,i=kDm1,i│F1│n1,i (10a)
f2D,i=kDm2,i│F2│n2,i (10b)
aeq−1=(v’eq−1(p)−veq−1(p))/Δt (11a)
aeq−2=(v’eq−2(p)−veq−2(p))/Δt (11b)
f1R,i=kR│F1│ua1 (12a)
f2R,i=kR│F2│ua2 (12b)
ただし、ua1、ua2はそれぞれ、aeq−1、aeq−2の単位ベクトルであり、kRは比例定数である。
f1,i=f1D,i+f1R,i (13a)
f2,i=f2D,i+f2R,i (13b)
m1,iv1、i(p)+f1,iΔt=m1,iv1、i(p+1) (14a)
m2,iv2、i(p)+f2,iΔt=m2,iv2、i(p+1) (14b)
x1,i(p+1)=x1,i(p)+v1、i(p)Δt (15a)
x2,i(p+1)=x2,i(p)+v2、i(p)Δt (15b)
この実施例1の対象物模擬装置2のように、全系衝突衝撃力FIを、弾性衝撃力fID,iと剛性衝撃力fIR,iとに分けて考えることで、リアルで自然な対象物同士の衝突を模擬できる。
貫入増加状態・・・衝突質点が更に、衝突している対象物の領域内部に進み、より深い貫入へ移行しようとしている状態
貫入解消状態・・・衝突質点が衝突している対象物の内部から離れ、貫入を解消する方向へと進もうとしている状態
v’I,i(p+1)・vI,i(p+1)≦0 (16)
ここで、計算量を削減するため、v’I,i(p+1)=−vI,i(p+1)とすることが好ましい。
v’’I,i(p+1)=cvI,i’(p+1) (17)
ただし、cは比例定数である。cの値は、計算結果が不自然にならない限り1でよい。不自然になる場合は、適切な挙動が得られるように、cを調整する。cが大きいほど、すばやい貫入解消が実現する。しかし、極端に大きなcは不自然な衝突挙動を誘発する。そこで、cの値は0.5<c<1.5にするのがよい。
ステップS262において、貫入増加状態質点がない場合は、速度ベクトルvI,i(p)の向きを変更する過程(ステップS264)に進まず、速度ベクトルvI,i(p+1)のゲインを調整する過程(ステップS268)に進む。
この実施例2の対象物衝突模擬装置30のように、貫入防止部22を設けることで、貫入防止を達成し、かつ、対象物が弾性体であっても、自然な衝突を模擬できる。実施例1、2では、対象物が2つの場合を説明したが、対象物が3つ以上の場合であっても、対象物衝突模擬装置2、30を適用できる。
図11A〜Dは対象物衝突模擬装置2、30を用いていない離散要素近似力学系モデルを用いた、上唇と下唇との閉口運動シミュレーションの結果である。図12A〜Dは対象物衝突模擬装置30を用いた上唇と下唇との閉口運動シミュレーションの結果である。図13A〜Dはそれぞれ、図11A〜Dの中央縦断面を示した図であり、図14A〜Dはそれぞれ、図12A〜Dの中央縦断面を示した図である。また、対象物衝突模擬装置30において、反発係数e=0とする。図11A、図12Aはt=0.00秒、図11B、図12Bはt=0.04秒、図11C、図12Cはt=0.16秒、図11D、図12Dはt=0.42秒、の口唇の挙動を示している。t=0.00秒、t=0.04秒、t=0.16秒、t=0.42秒、はそれぞれ初期状態、衝突開始、衝突展開中及びシミュレーション終了の時刻に対応する。このことは以下の図15〜図20についても同様である。
一方、図12A〜D、図14A〜Dより理解されるように、対象物衝突模擬装置30を用いると、衝突検知及び衝突挙動のモデリングを設けてから行ったシミュレーションによる衝突挙動で、有効な衝突検知はもちろん、衝突後挙動では、境界面における貫入が防止され、更に衝突に伴う弾性変形も、自然に実現されていることが分かる。
e=0.0の反発係数を持つモデル(図15、図18)にて最後まで上唇と下唇の相互接触状態が維持している。これに対して、e=0.5の反発係数を持つモデル(図16、図19)においては、衝突後、上唇と下唇が跳ね返るような挙動でお互いに遠ざかり、最後は開口の状態に戻っていることが分かる。また、e=1.0の反発係数を持つモデル、つまり、図16、図19に示すように、反発係数の増加につれ更に著しくなる。これは反発係数が大きいほど速い速度で跳ね返ってくるという、反発係数の力学的定義とも合致する結果である。
Claims (10)
- 複数の対象物をそれぞれ離散質点(以下、「質点」という。)及び粘弾性要素による離散系モデルで近似して、当該対象物同士の衝突を模擬する対象物衝突模擬装置であって、
対象物同士が衝突状態かを確認する衝突確認部と、
前記対象物の衝突後の等価速度ベクトルveq−I(ただし、Iは対象物を示す値)を運動量保存の法則により求める衝突後等価速度計算部と、
前記等価速度ベクトルveq−Iを用いて、全系衝突衝撃力ベクトルFIを運動量保存の法則により求める全系衝突衝撃力計算部と、
質点の質量mI,i(ただし、iは質点を示す値)と、前記全系衝突衝撃力ベクトルのスカラー量│FI│と、質点の法線ベクトルnI,iを用いて、運動量保存の法則と弾性体の衝突を同時に考慮した質点ごとの弾性衝撃力ベクトルfID,iを求める弾性衝撃力計算部と、
前記全系衝突衝撃力ベクトルのスカラー量│FI│と、衝突後の対象物の等価加速度ベクトルaeq−Iを用いて、質点ごとの剛性衝撃力ベクトルfIR,i =k R |F I |u aI (但し、k R は比例定数であり、u aI は等価加速度ベクトルa eq−I の単位ベクトル)を求める剛性衝撃力計算部と、
前記弾性衝撃力ベクトルfID,iと、前記剛性衝撃力ベクトルfIR,iを加算して、質点ごとの衝突衝撃力ベクトルfI,iを求める衝突衝撃力計算部と、
前記衝突衝撃力ベクトルf I,iから、あらかじめ定めた時間Δt後の質点の速度ベクトルvI,iと位置ベクトルxI,iとを求める適用部と、
を備えることを特徴とする対象物衝突模擬装置。 - 請求項1記載の対象物衝突模擬装置であって、
前記衝突後等価速度計算部は、反発係数を用いて、衝突後の等価速度ベクトルを計算することを特徴とする対象物衝突模擬装置。 - 請求項1または2記載の対象物衝突模擬装置であって、
衝突質点が更に、衝突している対象物の領域内部に進み、より深い貫入へ移行しようとしている貫入増加状態にある場合には、
前記適用部で求めた質点の速度ベクトルvI,iと位置ベクトルxI,iとを、
衝突質点が衝突している対象物の内部から離れ、貫入を解消する方向へと進もうとしている貫入解消状態となるように調整する貫入防止部も備えることを特徴とする対象物衝突模擬装置。 - 請求項3記載の対象物衝突模擬装置であって、
前記貫入防止部は、
質点の速度ベクトルvI,iと、質点の法線ベクトルniを用いて、全ての前記衝突した質点の中から、貫入増加状態にある質点を探索する貫入増加状態質点探索手段と、
前記貫入増加状態にある質点に対して、速度ベクトルvI,iとの内積が負となる貫入解消速度ベクトルv’’I,iを求める貫入解消速度計算手段と、
前記適用部で求めた質点の速度ベクトルvI,iを、前記貫入解消速度ベクトルv’’I,iに置き換える置き換え手段と、
を備えることを特徴とする対象物衝突模擬装置。 - 複数の対象物をそれぞれ離散質点(以下、「質点」という。)及び粘弾性要素による離散系モデルで近似して、当該対象物同士の衝突を模擬する対象物衝突模擬方法であって、
衝突確認部が、対象物同士が衝突状態かを確認する衝突確認過程と、
衝突後等価速度計算部が、前記対象物の衝突後の等価速度ベクトルveq−I(ただし、Iは対象物を示す値)を運動量保存の法則により求める衝突後等価速度計算過程と、
全系衝突衝撃力計算部が、前記等価速度ベクトルveq−Iを用いて、全系衝突衝撃力ベクトルFIを運動量保存の法則により求める全系衝突衝撃力計算過程と、
弾性衝撃力計算部が、質点の質量mI,i(ただし、iは質点を示す値)と、前記全系衝突衝撃力ベクトルのスカラー量│FI│と、質点の法線ベクトルnI,iを用いて、運動量保存の法則と弾性体の衝突を同時に考慮した質点ごとの弾性衝撃力ベクトルfID,iを求める弾性衝撃力計算過程と、
剛性衝撃力計算部が、前記全系衝突衝撃力ベクトルのスカラー量│FI│と、衝突後の対象物の等価加速度ベクトルaeq−Iを用いて、質点ごとの剛性衝撃力ベクトルfIR,i =k R |F I |u aI (但し、k R は比例定数であり、u aI は等価加速度ベクトルa eq−I の単位ベクトル)を求める剛性衝撃力計算過程と、
衝突衝撃力計算部が、前記弾性衝撃力ベクトルfID,iと、前記剛性衝撃力ベクトルfIR,iを加算して、質点ごとの衝突衝撃力ベクトルfI,iを求める衝突衝撃力計算過程と、
適用部が、前記衝突衝撃力ベクトルf I,iから、あらかじめ定めた時間Δt後の質点の速度ベクトルvI,iと位置ベクトルxI,iとを求める適用過程と、
を有することを特徴とする対象物衝突模擬方法。 - 請求項5記載の対象物衝突模擬方法であって、
前記衝突後等価速度計算過程は、反発係数を用いて、衝突後の等価速度ベクトルを計算することを特徴とする対象物衝突模擬方法。 - 請求項5または6記載の対象物衝突模擬方法であって、
衝突質点が更に、衝突している対象物の領域内部に進み、より深い貫入へ移行しようとしている貫入増加状態にある場合には、
前記適用過程で求めた質点の速度ベクトルvI,iと位置ベクトルxI,iとを、衝突質点が衝突している対象物の内部から離れ、貫入を解消する方向へと進もうとしている貫入解消状態となるように調整する貫入防止過程も有することを特徴とする対象物衝突模擬方法。 - 請求項7記載の対象物衝突模擬方法であって、
前記貫入防止過程は、
貫入増加状態質点探索手段が、質点の速度ベクトルvI,iと、質点の法線ベクトルniを用いて、全ての前記衝突した質点の中から、貫入増加状態にある質点を探索する貫入増加状態質点探索ステップと、
貫入解消速度計算手段が、前記貫入増加状態にある質点に対して、速度ベクトルvI,iとの内積が負となる貫入解消速度ベクトルv’’I,iを求める貫入解消速度計算ステップと、
置き換え手段が、前記適用部で求めた質点の速度ベクトルvI,iを、前記貫入解消速度ベクトルv’’I,iに置き換える置き換えステップと、
を有することを特徴とする対象物衝突模擬方法。 - 請求項5〜8何れかに記載の対象物衝突模擬方法の各過程をコンピュータに実行させるための対象物衝突模擬プログラム。
- 請求項9記載の対象物衝突模擬プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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