JP4810637B2 - 光触媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒活性を呈する光触媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタン等の金属酸化物を光触媒として用いた光触媒体は、クリーンな光エネルギーを化学エネルギーに変換する環境調和型プロセスへの適用が注目され、環境浄化等への応用研究が活発に行われている。特に、酸化チタンに窒素や硫黄等のアニオン元素をドーピングすることによって、紫外線領域のみならず可視光領域においても光活性を示すことが知られており、太陽光下、あるいは紫外光が微弱な屋内環境のもとや可視光源との組み合わせで窒素酸化物等の有害物質の分解除去、防臭、抗菌、防汚、親水材としての応用が研究されている。
【0003】
通常、酸化チタン等の金属酸化物は粉末として得られ、そのままの状態では取り扱いが難しいため、金属酸化物を含む光触媒体を有機繊維やプラスチック等の基材に練り込んで用いることが多い。しかしながら、光触媒体の光触媒効果により、これらの基材自体が劣化してしまう問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、表面にヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムの被覆層を形成した金属酸化物が開発されている。特開平11−267519には、陰イオン性界面活性剤を含有する水性スラリー中に二酸化チタンの微粒子を分散処理した後に、二酸化チタン微粒子の表面の少なくとも一部に多孔質リン酸カルシウムを被覆する技術が開示されている。具体的には、リン酸三カルシウムCa(POを初めとする種々の示性式で表されるリン酸カルシウム化合物を含む擬似体液に、NaCl,NaHCO,KCl,KHPO・3HO,MgCl・6HO,CaCl、NaSO又はNaF等を加えて水性スラリーを作成し、この水性スラリーに二酸化チタン微粒子を混合及び分散させ、40℃の温度で24時間保持することによって、二酸化チタン微粒子の表面に多孔質リン酸カルシウムを析出させる。
【0005】
このように、光触媒性のない多孔質リン酸カルシウムを表面に析出させ、二酸化チタンの表面に被覆バリアを形成し、光触媒体と有機繊維やプラスチック等の基材との直接の接触を防ぐことによって、基材の劣化を防止することができる。
【0006】
また、表面に設けられたリン酸カルシウムには、大気中の有害物質を吸着する効果があり、金属酸化物光触媒体による光触媒作用をより発揮させる効果があるといわれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、リン酸カルシウムを金属酸化物の表面に形成するために擬似体液が必要であった。そのため、非常に多くの化学物質を必要とし、さらにイオン濃度を最適な状態にするための調整処理やpHの調整を必要とする問題があった。
【0008】
また、リン酸カルシウムの析出の際に、24時間以上の長時間の処理を必要し、産業上の製造方法としては不十分なものであった。
【0009】
また、上述のようなリン酸カルシウムの作用があるにも関わらず、実際にはリン酸カルシウムによって被覆された金属酸化物光触媒体では、光触媒作用が低下する問題を生じていた。特に、可視光領域にて高い光触媒活性を有する窒素ドープ又は硫黄ドープされた金属酸化物光触媒体においては、リン酸カルシウムの被覆層の形成に伴って、光触媒作用の低下が著しかった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑みて、擬似体液を必要とせず、短時間に金属酸化物の表面にリン酸カルシウムを形成する光触媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記従来技術の問題を鑑みて、リン酸カルシウムの被覆層が形成され、可視光領域で高い光活性を呈する光触媒体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、被覆層としてリン酸カルシウムを有する金属酸化物を含む光触媒体の製造方法であって、少なくともカルシウムイオン及びリン酸イオン又は少なくともカルシウムイオン及びリン酸水素イオンを含む原料溶液に金属酸化物を浸けてマイクロ波を照射する工程を含み、当該金属酸化物の表面の少なくとも一部にリン酸カルシウムを被覆層として析出させ、さらに、前記原料溶液から前記リン酸カルシウムを析出させた金属酸化物を抽出する工程と、前記抽出した金属酸化物を300℃以上600℃以下で加熱する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
さらに、上記光触媒体の製造方法において、前記光触媒体が可視光活性の光触媒体であることが好適である。
【0014】
さらに、上記光触媒体の製造方法において、前記原料溶液は、陰イオン性界面活性剤を含むことが好適である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の実施の形態における光触媒体の製造方法は、図1のように、原料である金属酸化物粉末及び原料溶液に対する混合工程ST100、分散工程ST102、マイクロ波照射工程ST104、抽出工程ST106及び加熱・乾燥工程ST108を含んでなる。
【0017】
原料の金属酸化物は、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化タングステン(WO)、酸化スズ(SnO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉄(FeTiO)、酸化ケイ素(SiO)のいずれか1つまたはこれらの組み合わせを含むことが好適である。
【0018】
金属酸化物は、粉状体、粒状体であっても良いし、ガラス、金属、プラスチック等の所定の基板上に形成された薄膜であっても良い。粉状体である場合には、一次粒子の平均粒径は0.001μm以上0.2μm以下であることが好適である。
【0019】
また、上記の金属酸化物に窒素又は硫黄の少なくとも1つをドープしたものを用いることがより好適である。窒素及び硫黄のドープは、金属酸化物に対して0.01原子%以上13原子%以下であることが好適である。特に、窒素をドーパントとして含有する酸化チタン(Ti−O−N)は、波長が380nm以上の可視光領域においても高い光触媒活性を呈するためより好適である。
【0020】
原料溶液は、イオン交換水を溶媒として、そこにカルシウムイオン(Ca2+)及びリン酸イオン((PO3−)あるいはリン酸水素イオン((HPO2 , (H2PO)を含む溶液を用いることができる。例えば、塩化カルシウム(CaCl)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素カリウム(KHPO)に、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)をさらに含んだ擬似体液を用いることができる。但し、これに限られるものではなく、Ca2+及び(PO3−を含むものであれば良い。
【0021】
原料溶液中のCa2+のイオン濃度は、アニオンをドープされた酸化チタン光触媒に対して0.01〜2.00重量比%、特に0.05〜1.00重量比%が好ましい。またこのとき、原料溶液中のCa2+のイオン濃度は0.1mM以上50mM以下、及び(PO3−あるいは(HPO2 ,(H2POのイオン濃度は0.1mM以上〜50mM以下であることが好適である。また、pHは3以上11以下であればよく、特に6以上9以下が好適である。
【0022】
原料溶液の溶媒としては、水を用いることが好適である。特に、光触媒体への汚染物の混入を避けるために、イオン交換水等の純度が高い水を用いることが好適である。また、水の他には、アルコール、アセトン等の有機溶剤を用いることも好適である。
【0023】
原料溶液には、さらに、陰イオン性界面活性剤を添加しても良い。陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等を少なくとも1つ含むことが好適である。
【0024】
本実施の形態における光触媒体の製造方法は、これらの原材料を用いて、以下の処理によって行われる。
【0025】
混合工程ST100では、金属酸化物と原料溶液を混合する。このとき、原料溶液100mlに対して金属酸化物を0.1mg以上10g以下の割合で混合することが好適である。これより混合量が多い場合は、リン酸カルシウムの析出量が過剰となり、結果物としての光触媒体の光触媒活性が低下する。また、これより混合量が少ない場合には、以下の処理におけるリン酸カルシウムの析出速度が低下し、産業上十分な処理速度を得ることが困難になる。
【0026】
原料溶液を入れる容器は、ガラス容器、プラスチック容器等の電磁波を透過する容器であることが好適である。例えば、ガラスビーカーなどを用いることができる。
【0027】
また、基板上に形成された金属酸化物薄膜に対して処理を行う場合には、原料溶液中に薄膜が形成された基板を液浸する。
【0028】
分散工程ST102では、原料溶液中に金属酸化物をほぼ無沈降のスラリーとして分散させる。分散処理には、通常広く用いられている機械式のスラリー分散機を用いることができる。但し、金属酸化物が基板上の薄膜である場合には、この工程の処理は不要である。
【0029】
マイクロ波照射工程ST104では、金属酸化物を分散させた原料溶液に対してマイクロ波を照射し、金属酸化物の表面にリン酸カルシウムを析出させる。
【0030】
マイクロ波の照射電力密度は、原料溶液量に対して0.01W/ml以上10W/ml以下であることが好適である。また、マイクロ波の周波数は、10MHz以上50GHz以下であることが好適である。特に、1GHz以上10GHz以下であることがより好適である。マイクロ波の照射時間は、30秒以上1時間以下であることが好適である。
【0031】
マイクロ波照射は、原料溶液が沸騰しないように維持しながら行う。具体的には、原料溶液を40℃以上80℃以下の温度に維持しながらマイクロ波照射を行うことが好適である。特に、60℃以上80℃以下に維持しながら処理することがより好ましい。
【0032】
但し、これらのマイクロ波の照射条件は、原料溶液中のイオン濃度、混合した金属酸化物量、金属酸化物の形態(粉状体であるか薄膜であるか)、金属酸化物の平均粒径、マイクロ波の照射電力密度及び周波数、原料溶液の容器の材質等に伴って適宜変更することによって、結果物であるリン酸カルシウムの組成、被覆率、形状を制御することができる。
【0033】
抽出工程ST106では、原料溶液からリン酸カルシウムを析出させた金属酸化物を抽出する。抽出は、濾紙等のフィルタを用いて、金属酸化物粉体を濾過することによって行うことができる。また、金属酸化物が基板上に形成されている場合には、原料溶液から基板を取り出すだけで良い。
【0034】
また、抽出処理を行わず、原料溶液をそのままスラリーやコーティング液として用いることも出来る。この場合は、使用の用途に応じて、pH処理等によって原料溶液の特性を調整することが好ましい。
【0035】
加熱・乾燥工程ST108では、取り出された金属酸化物を加熱して乾燥させる。このとき、加熱温度は100℃以上600℃以下であることが好適である。特に、300℃以上600℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、特に限定されるものではないが、10分以上5時間以下であることが好ましい。
【0036】
本実施の形態では、抽出工程ST106及び加熱・乾燥工程ST108を行ったが、これらの工程を省略することもできる。但し、以下の実施例で説明するように、加熱・乾燥処理を行うことによって光触媒体の作用を向上させることができる。
【0037】
以上の処理によって、金属酸化物の表面にリン酸カルシウムを析出させた光触媒体を得ることができる。本実施の形態によって得られる光触媒体の態様の一例を、図2に示す。リン酸カルシウムは、図2(a)のように、金属酸化物の表面から突き出した板状の析出物として形成される。また、処理条件の変化に伴って、図2(b)のように、金属酸化物の表面から突き出した円錐状の析出物として形成される場合もある。
【0038】
リン酸カルシウムの組成は、Ca(POを主成分とする化合物であり、具体的には、第三リン酸カルシウム(Ca(PO)、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO・(OH))、第二リン酸カルシウム二水塩(CaHPO・2HO)、オクタカルシウムホスフェート(Ca(PO・5HO)又はテトラカルシウムホスフェート(CaO(PO)等が含まれる。特に、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO・(OH))であることが好ましい。但し、これら例示した化合物に限定されるものではなく、多孔質リン酸カルシウムであれば良く、少量の不純物を含有するものであっても良い。
【0039】
また、図3のように、その断面は窒素又は硫黄の少なくとも1つがドープされたバルク部と、窒素及び硫黄のいずれも含まない表面層との二重構造を有する酸化チタン粒状体に対して、その表面にリン酸カルシウムを析出させることもできる。二重構造を有する酸化チタンは、窒素ドープされたバルク部の外周に、熱酸化法やプラズマ照射法、ゾル・ゲル法などを用いて無ドープの表面層を形成することによって得ることができる。
【0040】
無ドープの酸化チタンの表面層は窒素ドープされた酸化チタンよりも親水性が高いため、表面層を有さない窒素ドープの酸化チタンに対して、より高い光触媒作用を発揮することができる。この二重構造の酸化チタンの表面にリン酸カルシウムを析出させることによって、表面層の親水作用とリン酸カルシウム被覆層の吸着作用との相乗効果によって高い光触媒作用を得ることができる。
【0041】
さらに、二重構造とすることによって、無ドープ層である表面層がバッファ層として働き、リン酸カルシウムの析出によるバルク部への光触媒作用に対する悪影響を防止することができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、リン酸カルシウムを析出させる時間を従来の1/20程度まで短縮することができる。また、加熱・乾燥工程による加熱処理の時間を考慮しても、従来の1/5程度まで製造時間を短縮することが可能となる。
【0043】
また、原料溶液には、Ca2+及び(PO3−あるいはリン酸水素イオン((HPO2 , (H2PO)少なくとも含まれていれば良く、擬似体液の製造のように多種類のイオン濃度の調整を必要としないため、製造工程を簡略化することができる。
【0044】
さらに、リン酸カルシウムにより被覆された金属酸化物を加熱及び乾燥処理することにより、光触媒作用の低下を抑制できる。さらに、リン酸カルシウムの吸着作用等によって、光触媒作用を向上することができる。特に、可視光領域にて高い光触媒活性を有する窒素ドープ又は硫黄ドープされた金属酸化物光触媒体においてその効果は著しい。
【0045】
本実施の形態によって得られた光触媒体は、天然繊維、人工繊維、プラスチック、紙、車室内におけるシート、パッケージトレイ等の内容部品、タッチパネル、ハンドル等の自動車部品、造花、空気清浄機フィルタ、ミラー、ガラス、外壁、タイル、浴室内部材等に用いることによってその効果を発揮することができる。
【0046】
<実施例1>
以下、可視光領域(420nm以上)において光触媒活性を有する金属酸化物である窒素ドープされた酸化チタン(Ti−O−N)を処理した実施例を示す。
【0047】
窒素ドープされた酸化チタン粉末(Ti−O−N)は、酸化チタン(TiO)粉末(石原産業製,ST01)を、アンモニアを含む気流中で600℃にて3時間の加熱処理を行うことによって作製した。
【0048】
原料溶液は、イオン交換水1リットルに、CaClを100mg、NaHPOを1150mg及びKHPOを200mg加えてCa2+及び(PO3−を含む溶液を作製した。本実施例では、さらにNaClを8.0g、KClを200mg、MgCl・6(HO)を100mg及び界面活性剤を加え、その原料溶液を27ml用いて処理を行った。
【0049】
この原料溶液27mlに、上記の窒素ドープされた酸化チタン(Ti−O−N)を2.0g混合し、さらにイオン交換水を加えて277mlの原料溶液とした。また、スラリー分散機によって、酸化チタンを原料溶液中で無沈降となるように分散させた。このとき、溶液のpHは8.5であった。
【0050】
その後、照射電力70W及び周波数2.45GHzのマイクロ波を10分間照射して、窒素ドープ酸化チタン粉末の表面にリン酸カルシウムを析出させた。
【0051】
さらに、フィルタを用いて、原料溶液から酸化チタン粉末を抽出し、大気中において100℃、200℃及び300℃のそれぞれの温度で1時間の加熱・乾燥処理を行った。以上により、窒素ドープされた酸化チタン表面にリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトなど)を析出させた光触媒体を得ることができた。
【0052】
光触媒体の触媒作用の測定は、光触媒反応によるアセトアルデヒドから二酸化炭素(CO)への分解反応を用いて行った。具体的には、1リットルの容器内にアセトアルデヒドを500ppmの濃度で満たし、そこに光触媒体0.1gを入れ、可視光を照射した場合の容器内のCO濃度の上昇から光触媒作用を測定した。可視光は、白色蛍光管からの光を紫外線カットフィルタを介して0.9mW/cmのエネルギー密度で照射した。
【0053】
図4に、本実施例によって得られた光触媒体の触媒作用の測定結果をグラフとして示す。光触媒体を作成後に、自然乾燥させただけでは、リン酸カルシウム析出処理前と比較して反応速度が60%低下した。しかしながら、100℃又は200℃の加熱・乾燥処理を加えることによって、反応速度は75%まで回復した。さらに、300℃の加熱・乾燥処理を加えた場合には、リン酸カルシウム析出処理前と比較して105%まで反応速度が向上した。
【0054】
また、X線回折及びX線電子分光法(XPS)を用いて、加熱・乾燥処理無しの光触媒体と300℃加熱・乾燥処理後の光触媒体との結晶性及び組成を分析した。結晶性においては、光触媒体間に差はみられなかった。また、いずれの組成比もCaが0.7原子%及びPが1.2原子%であり、またCa及びPの化学的な結合状態にも差は見られなかった。すなわち、加熱・乾燥処理によって、リン酸カルシウムの脱離は生じていない。
【0055】
加熱・乾燥処理によって光触媒活性が向上する理由としては、表面のリン酸カルシウムの構造が安定し、ガス吸着性が向上したことが考えられる。また、検出レベル以下の濃度において、酸化チタン(Ti−O−N)の表面を覆っていた触媒反応阻害物質が脱離したことが考えられる。
【0056】
上記の方法では、リン酸カルシウム成分、光触媒粉末、界面活性剤をすべて水中に混合して同時に機械分散処理してからマイクロ波処理を施したが、光触媒粉末をあらかじめ分散させたスラリを用意し、それにリン酸カルシウム成分を有する水溶液を混合した後にマイクロ波処理を施しても同様に、リン酸カルシウムを光触媒の表面に析出させることができる。
【0057】
<実施例2>
Ti−O−N光触媒粉末は、酸化チタン(TiO)粉末(多木化学製,A100)と尿素を等モル混合したものを400℃で1時間加熱し、その表面残留物を硫酸で洗浄した後さらに水洗浄したものを120℃で乾燥させたのちに微粉砕して作製した。
【0058】
原料溶液は、イオン交換水1リットルに、CaClを100mg、NaHPOを1150mg及びKHPOを200mg加えてCa2+及び(PO3−を含む溶液を作製した。本実施例では、さらにNaClを8.0g、KClを200mg、MgCl・6(HO)を100mg加え、その原料溶液を1350ml用いて処理を行った。
【0059】
また光触媒スラリーとして、Ti−O−N光触媒粉末25gとイオン交換水225gを混合したものに界面活性剤を加えて機械式の分散機を用いて無沈降となるように分散させたものを作製した。
【0060】
その後、上記2種の溶液を混合し、周波数2.45GHzのマイクロ波を、照射電力1400Wで30秒照射した後につづけて70Wで15分間照射して、酸窒化チタン粉末光触媒の表面にリン酸カルシウムを析出させた。
【0061】
また、X線回折及びX線電子分光法(XPS)を用いて、リン酸カルシウムの組成を分析した。その結果、Caが0.2原子%、Pが1.2原子%であり、Pはリン酸イオンを形成していることが明らかとなった。
【0062】
光触媒体の触媒作用の測定は、光触媒反応によるアセトアルデヒドから二酸化炭素(CO)への分解反応を用いて行った。具体的には、1リットルの容器内にアセトアルデヒドを500ppmの濃度で満たし、そこに光触媒体0.1gを入れ、可視光を照射した場合の容器内のCO濃度上昇から光触媒作用を測定した。可視光は、白色蛍光管からの光を、紫外線カットフィルタを介して0.9mW/cmのエネルギー密度で照射した。
【0063】
その結果、23時間の可視光照射後の生成CO2濃度は、リン酸カルシウム析出前のサンプルで293.2ppmであったのに対し、本発明のマイクロ波照射によりリン酸カルシウムを析出させたサンプルでは259.9ppmであった。表面にリン酸カルシウムが形成されたことにより活性サイトが減少し、ガス反応速度がやや低下したが実用上問題のないレベルであることがわかった。
【0064】
上記実施例では、粉末作製時の熱処理温度を400℃としたが、250−600℃の範囲内であればいずれの温度でもよい。また、酸化チタン/尿素の混合比も0.1−1000の範囲内であればよい。また洗浄も硫酸に限らず他の薬品を用いてもよい。
【0065】
<実施例3>
以下、金属酸化物として窒素ドープされた酸化亜鉛(Zn−O−N)を処理した実施例を示す。
【0066】
窒素ドープされた酸化亜鉛粉末(Ti−O−N)は、酸化亜鉛粉末を、流量比にしてアンモニア/アルゴン=2/1の気流中で400℃×1時間の加熱処理を行うことによって作製した。
【0067】
原料溶液は、実施例1と同様に作製した。原料溶液27mlに、上記の窒素ドープされた酸化亜鉛(Ti−O−N)を2.0g混合し、さらにイオン交換水を加えて277mlの原料溶液とした。また、スラリー分散機によって、酸化亜鉛を原料溶液中で無沈降となるように分散させた。
【0068】
その後、照射電力70W及び周波数2.45GHzのマイクロ波を10分間照射して、酸化亜鉛粉末の表面にリン酸カルシウムを析出させた。
【0069】
さらに、フィルタを用いて、原料溶液から酸化亜鉛粉末を抽出し、大気中において加熱・乾燥処理を行った。以上により、窒素ドープされた酸化亜鉛表面にリン酸カルシウムを析出させた光触媒体を得ることができた。
【0070】
光触媒体の触媒作用の測定は、実施例1と同様に、光触媒反応によるアセトアルデヒドから二酸化炭素(CO)への分解反応を用いて行った。その結果、実施例1と同様に可視光領域において高い光触媒作用を有することが判明した。
【0071】
また、XPSを用いて測定した結果、Caが0.4原子%及びPが0.3原子%であった。また、化学的な結合状態の解析から、表面にPO4−が含まれていることが判明した。また、原料溶液に含まれるNa、Cl、Mg2+、(COはいずれも0.1原子%以下であり、選択的にヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムが析出していることが明らかになった。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、擬似体液を作成するための複雑なイオン濃度調整を必要とせず、産業上十分な程度に短い処理時間をもって、金属酸化物の表面にリン酸カルシウムを形成する光触媒体の製造方法を提供することができる。
【0073】
さらに、本発明によれば、表面にリン酸カルシウムの被覆層を有し、可視光領域で高い光活性を呈する光触媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における光触媒体の製造方法のフローチャートを示す図である。
【図2】 本発明の実施の形態において作製された光触媒体の形態の例を示す図である。
【図3】 本発明の実施の形態において作製された窒素ドープされた金属酸化物光触媒体の断面構造を示す図である。
【図4】 実施例1における酸化チタン(Ti−O−N)によるアセトアルデヒドの分解作用を示すグラフである。
【符号の説明】
100 金属酸化物、102 リン酸カルシウム、200 ドープされた金属酸化物のバルク、202 ドープされていない金属酸化物の表面層、204 リン酸カルシウム。

Claims (3)

  1. 被覆層としてリン酸カルシウムを有する金属酸化物を含む光触媒体の製造方法であって、
    少なくともカルシウムイオン及びリン酸イオン又は少なくともカルシウムイオン及びリン酸水素イオンを含む原料溶液に金属酸化物を浸けてマイクロ波を照射する工程を含み、
    当該金属酸化物の表面の少なくとも一部にリン酸カルシウムを被覆層として析出させ、さらに、前記原料溶液から前記リン酸カルシウムを析出させた金属酸化物を抽出する工程と、
    前記抽出した金属酸化物を300℃以上600℃以下で加熱する工程と、
    を含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の光触媒体の製造方法において、さらに、
    前記光触媒体が可視光活性の光触媒体であることを特徴とする光触媒体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の光触媒体の製造方法において、
    前記原料溶液は、さらに、陰イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
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