JP4802115B2 - ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置 - Google Patents

ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4802115B2
JP4802115B2 JP2007040914A JP2007040914A JP4802115B2 JP 4802115 B2 JP4802115 B2 JP 4802115B2 JP 2007040914 A JP2007040914 A JP 2007040914A JP 2007040914 A JP2007040914 A JP 2007040914A JP 4802115 B2 JP4802115 B2 JP 4802115B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fuel ratio
gas sensor
air
diagnosis
abnormality diagnosis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007040914A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008203140A (ja
Inventor
礼奈 鬼頭
典和 家田
雅泰 田中
浩 稲垣
雅樹 平田
隆広 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Spark Plug Co Ltd
Suzuki Motor Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
Suzuki Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Spark Plug Co Ltd, Suzuki Motor Co Ltd filed Critical NGK Spark Plug Co Ltd
Priority to JP2007040914A priority Critical patent/JP4802115B2/ja
Publication of JP2008203140A publication Critical patent/JP2008203140A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4802115B2 publication Critical patent/JP4802115B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Oxygen Concentration In Cells (AREA)

Description

本発明は、排気ガスの空燃比を検出するガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するためのガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置に関するものである。
従来より、自動車のエンジンなどの内燃機関の排気通路に取り付けられ、排気ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するガスセンサが知られている。そして、ガスセンサ(詳細には、ガスセンサを構成するセンサ素子)から出力される検出信号はECU(電子制御ユニット)に送信され、ECUでは、受信した検出信号に基づき排気ガスの空燃比を検出し、エンジンにおける燃料の噴射量の調整等の空燃比フィードバック制御が行われる。なお、このようなガスセンサとしては、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサが知られており、近年ではより精密な空燃比フィードバック制御を実現する等の目的から、排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアにセンサ出力値が変化する全領域空燃比センサが使用されるようになってきている。
ところで、ガスセンサを長期間使用した場合、ガスセンサのプロテクタ(詳細にはセンサ素子の周囲を覆って保護するプロテクタ)に形成されたガス流通孔や排気ガスをセンサ素子内部に導く多孔質部が目詰まりを起こす等の経時劣化を生ずることがある。ガスセンサにこのような劣化が生ずると、排気ガス中の特定ガス成分の濃度変化に応じたセンサ出力値の応答が劣化していないガスセンサ(即ち、正常時)と比べ遅くなる。
このようにガスセンサが劣化した場合、エンジンの運転性能の低下や燃費の低下、排気ガスの清浄性の低下等を招く虞があるため、ガスセンサの検出信号に基づいてガスセンサが異常状態にあるか否かの診断が行われている。例えば、ガスセンサの出力する検出信号の値がリッチ側とリーン側との間で反転を繰り返すときの周期(以下、「移行周期」という。)を求め、この移行周期が所定値以上であれば、ガスセンサが異常状態(劣化状態)にあると診断する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
具体的に、特許文献1では、ガスセンサの検出信号に基づく検出当量比KACTの値が所定上限値KLAFLMTHより大きい値となったときからアップカウントタイマtmWAVEによるタイマカウントを開始して、検出当量比KACTが所定上限値KLAFLMTHより大きい値となる度にカウンタNWAVEをインクリメントし、リッチ側からリーン側へ移行した回数を計数している。そのインクリメント時に、アップカウントタイマtmWAVEが所定時間TMWAVEより大きな値となっていれば、アップカウントタイマtmWAVEをカウンタNWAVEで除算することで、移行周期(周期tmCYCL)を求めている。そして、この周期tmCYCLが所定周期tmCYCLOK以上の値であった場合に、ガスセンサが異常状態にあると診断している。
特許第3377336号公報
しかしながら上記移行周期は、エンジンに供給される混合気の目標とする空燃比が反転する周期(以下「反転周期」という。)によって左右され、その目標空燃比の反転周期はエンジンの運転状態に応じて調整されるものであるため、特許文献1のように、移行周期を一定値(所定周期tmCYCLOK)と比較する方法では、異常状態の診断を精度よく行えるとは言い難かった。また、特許文献1では、異常状態の診断を行うための所定時間TMWAVEが経過していても、検出当量比KACTの値が所定上限値KLAFLMTHより大きい値となるタイミングまではアップカウントタイマtmWAVEによるタイマカウントが継続されることとなる。このため、ガスセンサの劣化状態が進行して移行周期(周期tmCYCL)が長くなった場合、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断結果が出るまで時間がかかってしまうという問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断を、より精度よく、早く行うことができるガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、内燃機関から排出される排気ガスに晒されたガスセンサの出力する当該排気ガス中の特定ガス成分の濃度に応じた検出信号に基づいて、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するためのガスセンサの異常診断方法であって、内燃機関に供給される混合気の目標空燃比が特定空燃比を境界にリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に反転した反転回数の計数が行われる目標空燃比反転回数計数工程と、前記反転回数の計数が開始されてから予め定められた複数回の回数に達するまでの期間である診断期間において、一定のタイミング毎に前記ガスセンサの前記検出信号が取得される検出信号取得工程と、前記診断期間において、前記検出信号がリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に移行した移行回数の計数が行われる移行回数計数工程と、前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断する異常診断工程とを有することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記異常診断工程では、前記移行回数と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記異常診断工程は、前記診断期間における前記移行回数の算出が複数回の当該診断期間に対し繰り返し行われる繰り返し計数工程を有し、前記複数回の診断期間に対応して得られた前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする。
また、請求項4に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記異常診断工程は、前記繰り返し計数工程により得られた複数回分の前記移行回数をすべて合計した移行回数合計値が算出される移行回数合計値算出工程を有し、前記移行回数合計値と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記診断期間において、取得された前記検出信号に、予め定められたなまし係数を用いたなまし演算を適用してなまし信号が算出されるなまし信号算出工程と、現在取得された検出信号と現在算出されたなまし信号との偏差が算出される偏差算出工程とを有し、前記異常診断工程では、前記移行回数に加え、前記偏差に基づいて前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記ガスセンサは、前記排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する酸素センサであることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、内燃機関から排出される排気ガスに晒されたガスセンサの出力する当該排気ガス中の特定ガス成分の濃度に応じた検出信号に基づいて、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するためのガスセンサの異常診断装置であって、内燃機関に供給される混合気の目標空燃比が特定空燃比を境界にリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に反転した反転回数を計数する目標空燃比反転回数計数手段と、前記反転回数の計数が開始されてから予め定められた複数回の回数に達するまでの期間である診断期間において、一定のタイミング毎に前記ガスセンサの前記検出信号を取得する検出信号取得手段と、前記診断期間において、前記検出信号がリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に移行した移行回数を計数する移行回数計数手段と、前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断する異常診断手段とを備えている。
また、請求項8に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、請求項7に記載の発明の構成に加え、前記異常診断手段は、前記移行回数と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする。
また、請求項9に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、請求項7に記載の発明の構成に加え、前記異常診断手段は、前記診断期間における前記移行回数の算出を複数回の当該診断期間に対し繰り返し行う繰り返し計数手段を備え、前記複数回の診断期間に対応して得られた前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする。
また、請求項10に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、請求項9に記載の発明の構成に加え、前記異常診断手段は、前記繰り返し計数手段により得られた複数回分の前記移行回数をすべて合計した移行回数合計値を算出する移行回数合計値算出手段を備え、前記移行回数合計値と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする。
また、請求項11に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、請求項7乃至10のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記診断期間において、取得された前記検出信号に、予め定められたなまし係数を用いたなまし演算を適用してなまし信号を算出するなまし信号算出手段と、現在取得された検出信号と現在算出されたなまし信号との偏差を算出する偏差算出手段とを備え、前記異常診断手段は、前記移行回数に加え、前記偏差に基づいて前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする。
また、請求項12に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、請求項7乃至11のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記ガスセンサは、前記排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する酸素センサであることを特徴とする。
請求項1に係る発明のガスセンサの異常診断方法は、ガスセンサが正常な状態にある場合に、内燃機関に供給される混合気の目標空燃比のリッチ側とリーン側と間での反転に追従するように検出信号がリッチ側とリーン側との間で移行するのに対し、ガスセンサが異常状態にある場合には、検出信号の移行が目標空燃比の反転に追従できなくなって遅れが発生することから、移行回数に差が生ずることに基づいて行うものである。従って、目標空燃比の反転回数に応じた診断期間を定め、その診断期間中における検出信号の移行回数を計数することで、診断期間を基準として、ガスセンサの異常状態の診断を行うことができる。診断期間は検出信号の移行の周期には影響されないので、ガスセンサが異常状態となり目標空燃比の反転の周期に対して検出信号の移行の周期に遅れが生じても、診断期間が長引くことはない。
また、ガスセンサが正常な状態にある場合、目標空燃比の反転に対し検出信号の移行が追従するため、目標空燃比の反転回数と検出信号の移行回数とがほぼ同じとなる。エンジンの運転状態に応じて目標空燃比の反転周期が調整されても、目標空燃比の反転に対し検出信号の移行が追従する限り、目標空燃比の反転回数と検出信号の移行回数とがほぼ同じとなる。従って、診断期間中に目標空燃比の反転周期が変動しても、ガスセンサが正常な状態にある場合に得られる検出信号の移行回数には影響がないため、検出信号の移行回数に基づいてガスセンサが正常な状態にある場合と異常状態となった場合とを容易に区別することができ、異常状態の診断の精度をより高くすることができる。
また、検出信号の移行回数を計数する診断期間の長さが予め定められた複数回の目標空燃比の反転回数によって決められることから、上記のように、ガスセンサが正常な場合に得られる検出信号の反転回数は、その予め定められた複数回の目標空燃比の反転回数とほぼ同じとなる。従って、ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するにあたって、請求項2に係る発明のように、検出信号の移行回数に対するしきい値を定めて両者を比較すれば、精度よく容易にガスセンサの異常診断を行うことができる。
また、請求項3に係る発明のように、診断期間を複数回繰り返して行い、各診断期間にそれぞれ移行回数を求め、その移行回数に基づいてガスセンサの異常診断を行うことで、一度の診断期間において得られた移行回数から異常診断を行うよりも、より精度よく、ガスセンサの異常診断を行うことができる。
さらに、請求項4に係る発明のように、診断期間における検出信号の移行回数の計数を、複数回の診断期間に対し繰り返し行って移行回数合計値を求めれば、正常状態にある場合に取り得る移行回数合計値の範囲と、異常状態にある場合に取り得る移行回数合計値の範囲との差異をさらに明確にすることができ、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をより精度よく行うことができる。
また、請求項5に係る発明では、診断期間において、ガスセンサの出力する検出信号と、その検出信号をなましたなまし信号との偏差を求め、求めた偏差から、ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断している。このときなまし信号は、検出信号を基に算出されるものであって、ガスセンサの検出信号の変化に対して緩慢に追従するように変化する。このため、異常診断の対象であるガスセンサより出力される検出信号の値が、ガスセンサの個体間バラツキの影響によって狙い値よりも上側または下側の値を示す傾向にあっても、その検出信号との間で偏差を求めるための基準値であるなまし信号もまた、各ガスセンサの検出信号の変化に追従して変化する。従って同程度の劣化状態のガスセンサであっても、従来のように個体間バラツキに起因して求められる偏差がまちまちとなってしまうことを抑制することができる。このように、本発明のガスセンサの異常診断方法によれば、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をより精度よく行うことができる。そしてこのようななまし信号を用いた異常診断に加え、上記のような移行回数に基づくガスセンサの異常診断を行うことで、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をさらに精度よく行うことができる。
そして、このようなガスセンサの異常診断方法を、請求項6に係る発明のように、排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する構成の酸素センサに適用することで、この酸素センサの異常状態を精度よく、確実に検出することができる。
次に、請求項7に係る発明のガスセンサの異常診断装置は、ガスセンサが正常な状態にある場合に、内燃機関に供給される混合気の目標空燃比のリッチ側とリーン側と間での反転に追従するように検出信号がリッチ側とリーン側との間で移行するのに対し、ガスセンサが異常状態にある場合には、検出信号の移行が目標空燃比の反転に追従できなくなって遅れが発生することから、移行回数に差が生ずることに基づいて行うものである。従って、目標空燃比の反転回数に応じた診断期間を定め、その診断期間中における検出信号の移行回数を計数することで、診断期間を基準として、ガスセンサの異常状態の診断を行うことができる。診断期間は検出信号の移行の周期には影響されないので、ガスセンサが異常状態となり目標空燃比の反転の周期に対して検出信号の移行の周期に遅れが生じても、診断期間が長引くことはない。
また、ガスセンサが正常な状態にある場合、目標空燃比の反転に対し検出信号の移行が追従するため、目標空燃比の反転回数と検出信号の移行回数とがほぼ同じとなる。エンジンの運転状態に応じて目標空燃比の反転周期が調整されても、目標空燃比の反転に対し検出信号の移行が追従する限り、目標空燃比の反転回数と検出信号の移行回数とがほぼ同じとなる。従って、診断期間中に目標空燃比の反転周期が変動しても、ガスセンサが正常な状態にある場合に得られる検出信号の移行回数には影響がないため、検出信号の移行回数に基づいてガスセンサが正常な状態にある場合と異常状態となった場合とを容易に区別することができ、異常状態の診断の精度をより高くすることができる。
また、検出信号の移行回数を計数する診断期間の長さが予め定められた複数回の目標空燃比の反転回数によって決められることから、上記のように、ガスセンサが正常な場合に得られる検出信号の反転回数は、その予め定められた複数回の目標空燃比の反転回数とほぼ同じとなる。従って、ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するにあたって、請求項8に係る発明のように、検出信号の移行回数に対するしきい値を定めて両者を比較すれば、精度よく容易にガスセンサの異常診断を行うことができる。
また、請求項9に係る発明のように、診断期間を複数回繰り返して行い、各診断期間にそれぞれ移行回数を求め、その移行回数に基づいてガスセンサの異常診断を行うことで、一度の診断期間において得られた移行回数から異常診断を行うよりも、より精度よく、ガスセンサの異常診断を行うことができる。
さらに、請求項10に係る発明のように、診断期間における検出信号の移行回数の計数を、複数回の診断期間に対し繰り返し行って移行回数合計値を求めれば、正常状態にある場合に取り得る移行回数合計値の範囲と、異常状態にある場合に取り得る移行回数合計値の範囲との差異をさらに明確にすることができ、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をより精度よく行うことができる。
また、請求項11に係る発明では、診断期間において、ガスセンサの出力する検出信号と、その検出信号をなましたなまし信号との偏差を求め、求めた偏差から、ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断している。このときなまし信号は、検出信号を基に算出されるものであって、ガスセンサの検出信号の変化に対して緩慢に追従するように変化する。このため、異常診断の対象であるガスセンサより出力される検出信号の値が、ガスセンサの個体間バラツキの影響によって狙い値よりも上側または下側の値を示す傾向にあっても、その検出信号との間で偏差を求めるための基準値であるなまし信号もまた、各ガスセンサの検出信号の変化に追従して変化する。従って同程度の劣化状態のガスセンサであっても、従来のように個体間バラツキに起因して求められる偏差がまちまちとなってしまうことを抑制することができる。このように、本発明のガスセンサの異常診断方法によれば、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をより精度よく行うことができる。そしてこのようななまし信号を用いた異常診断に加え、上記のような移行回数に基づくガスセンサの異常診断を行うことで、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断をさらに精度よく行うことができる。
そして、このようなガスセンサの異常診断方法を、請求項12に係る発明のように、排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する構成の酸素センサに適用することで、この酸素センサの異常状態を精度よく、確実に検出することができる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明を具体化したガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、本発明のガスセンサの異常診断方法を実現可能な異常診断装置として、ガスセンサの出力する検出信号に基づきガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することが可能なECU(電子制御ユニット)5を例に説明する。また、ガスセンサとしては、全領域空燃比センサ1を例に説明する。図1は、ECU5と全領域空燃比センサ1との電気的な構成を説明するためのブロック図である。
なお、第1の実施の形態では、全領域空燃比センサ1とECU5との間に図示外の中継基板を介在させ、その中継基板上の一回路部として、後述するセンサ駆動回路部3を設けた場合を例に説明を行う。もっともセンサ駆動回路部3は、ECU5上の一回路部としてECU5に設けられる場合もある。従って、本発明における「ガスセンサの出力」とは、厳密には、全領域空燃比センサ1とセンサ駆動回路部3とから構成されるセンサユニット4の出力が相当するものではあるが、便宜上、全領域空燃比センサ1の出力として、以下の説明を行うものとする。
図1に示す全領域空燃比センサ1は、自動車のエンジンの排気通路(図示外)に取り受けられ、排気通路を流通する排気ガス中の特定ガス成分(例えば酸素)の濃度に基づき排気ガスの空燃比を検出するためのセンサである。全領域空燃比センサ1は、内部に細長で長尺な板状をなすセンサ素子10を、図示外のハウジング内に保持した構造を有する。全領域空燃比センサ1からは、このセンサ素子10の出力する信号を取り出すための信号線が引き出されており、全領域空燃比センサ1とは離れた位置に取り付けられる中継基板(図示外)上のセンサ駆動回路部3に電気的に接続されている。そして、全領域空燃比センサ1とセンサ駆動回路部3とから構成されるセンサユニット4の出力が、自動車のECU(電子制御ユニット)5に入力されている。ECU5では、センサユニット4からの出力、すなわち全領域空燃比センサ1の出力に基づき、エンジンの空燃比フィードバック制御を行う。
まず、センサ素子10の構造について説明する。センサ素子10は、排気ガス中の酸素濃度を検出するための検出体28と、検出体28を加熱するためのヒータ体27とから構成されている。検出体28は、ジルコニアを主体とする固体電解質体11,13,14と、アルミナを主体とする絶縁基体12とを、固体電解質体14,13,絶縁基体12,固体電解質体11の順に積層した構造を有する。固体電解質体11の積層方向両面には、白金を主体とする一対の電極19,20がそれぞれ形成されており、同様に、固体電解質体13の積層方向両面にも一対の電極21,22がそれぞれ形成されている。また、電極22は固体電解質体13,14に挟まれ、固体電解質体中に埋設された形態となっている。なお、固体電解質体11,13,14および絶縁基体12は、いずれも細長い短冊状の板体として形成されており、図1ではその板体の延長方向と直交する断面を示している。
絶縁基体12の延長方向の一端側には、固体電解質体11,13をそれぞれ積層方向側の一壁面としつつ、排気ガスを導入可能な中空の内部空間としてのガス検出室23が形成されている。このガス検出室23の幅方向の両端には、ガス検出室23内に排気ガスを導入する際の流入量を規制するための多孔質状の拡散律速部15が設けられている。上記した固体電解質体11上の電極20と、固体電解質体13上の電極21は、このガス検出室23内にそれぞれ露出されている。
次にヒータ体27は、アルミナを主体とし、上記検出体28と同様の板状をなす2枚の絶縁基体18,17を積層しつつ、両絶縁基体間に白金を主体とする発熱抵抗体26を挟んで埋設した構造を有する。ジルコニアからなる固体電解質体は常温では絶縁性を示すが、高温環境下(例えば600℃以上)では活性化され酸素イオン導電性を示すことが知られており、ヒータ体27は固体電解質体11,13,14を加熱して活性化させるためのものである。
ヒータ体27は、検出体28の固体電解質体11側の外層に配設されている。そしてヒータ体27の絶縁基体18と、検出体28の固体電解質体11との間には、ガスが流通可能な間隙が形成されている。この間隙内に配置された固体電解質体11上の電極19は、その表面がセラミックスからなる多孔質性の保護層24に覆われており、排気ガスに含まれるシリコン等の被毒成分によって電極19が劣化しないように保護されている。
このように構成されたセンサ素子10において、固体電解質体11とその積層方向両面に設けられた一対の電極19,20は、外部からガス検出室23内に酸素を汲み入れ、あるいはガス検出室23から外部へ酸素を汲み出す酸素ポンプセル(以下、固体電解質体11および電極19,20を総じて「Ipセル」ともいう。)として機能する。同様に、固体電解質体13とその積層方向両面に設けられた一対の電極21,22は、両電極間の酸素濃度に応じて起電力を発生させる酸素濃度検出セル(以下、固体電解質体13および電極21,22を総じて「Vsセル」ともいう。)として機能する。また、電極22は、ガス検出室23内の酸素濃度の検出のための基準となる酸素濃度を維持する酸素基準電極として機能する。なお、IpセルおよびVsセルの詳細な機能については後述する。
次に、センサ素子10に接続されるセンサ駆動回路部3の構成について説明する。センサ駆動回路部3は、ヒータ電圧供給回路31、ポンプ電流駆動回路32、電圧出力回路33、微小電流供給回路34および基準電圧比較回路35から構成され、センサ素子10から排気ガス中の酸素濃度に応じた電流値を電圧信号として得るための電気回路部である。なお前述したように、このセンサ駆動回路部3は後述するECU5の一回路部として設けられる場合もある。
ヒータ電圧供給回路31は、センサ素子10のヒータ体27の発熱抵抗体26の両端に電圧Vhを印加して発熱させ、固体電解質体11,13,14の加熱を行う。微小電流供給回路34は、Vsセルの電極22から電極21側へ微小電流Icpを流し、電極22側に酸素イオンを移動させて酸素を溜め込ませることで、電極22を排気ガス中の酸素濃度を検出するための基準となる酸素基準電極として機能させる。電圧出力回路33は、Vsセルの電極21,22間に生ずる起電力Vsを検出するものである。基準電圧比較回路35は、予め定められた基準電圧(例えば450mV)と、電圧出力回路33にて検出した起電力Vsとの比較を行い、比較結果をポンプ電流駆動回路32にフィードバックするものである。ポンプ電流駆動回路32は、基準電圧比較回路35から得られた比較結果に基づき、Ipセルの電極19,20間に流すポンプ電流Ipを制御して、Ipセルによるガス検出室23内への酸素の汲み入れやガス検出室23からの酸素の汲み出しが行われるようにする。
次に、ECU5の構成について説明する。ECU5は、自動車のエンジンの駆動等を電子的に制御するための装置であり、全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)が入力される。また、その他の情報として、その他のセンサからの信号(例えば、エンジンのピストン位置や回転数を検出できるクランク角、冷却水の水温、燃焼圧などの情報)も入力され、制御プログラムの実行に従って燃料の噴射タイミングや点火時期の制御を行うものである。ECU5にはCPU6、ROM7、RAM8が設けられており、図示外の信号入出力部を介してセンサユニット4のセンサ駆動回路部3から得られる排気ガス中の酸素濃度に応じた出力(検出信号)をA/D変換した値(後述する空燃比実測値)がRAM8に記憶されて、後述する異常診断プログラムにて用いられる。
第1の実施の形態では、後述する異常診断プログラムの実行に従い、全領域空燃比センサ1からの出力値に基づいて、センサ素子10が異常状態にあるか否かの診断を行っている。異常診断プログラムはROM7に記憶されており、CPU6によって実行される。以下、ROM7およびRAM8の各記憶エリアについて図2,図3を参照して説明する。図2は、ROM7の記憶エリアの構成を示す概念図である。図3は、RAM8の記憶エリアの構成を示す概念図である。
ROM7には、後述する異常診断プログラムの他に、各種の制御プログラムや初期値等が記憶されている。図2に示すように、ROM7の異常診断プログラムに係る記憶エリアには、プログラム記憶エリア71、設定値記憶エリア72、初期化条件フラグ記憶エリア73、運転パラメータ条件フラグ記憶エリア74等が設けられている。
プログラム記憶エリア71には、異常診断プログラムを含め、各種プログラムがインストールされた際に記憶される。設定値記憶エリア72には、異常診断プログラムの実行時に使用される初期値や設定値等が記憶されている。具体的には、後述する異常診断プログラムの応答遅れ診断処理において、混合気の目標空燃比がリッチかリーンかを判定するための基準となる目標中心空燃比(例えば理論空燃比を基準とする場合には14.6)や、全領域空燃比センサ1の出力として得られる空燃比実測値と比較して排気ガスの空燃比がリッチかリーンかを判定するための基準となる実空燃比中央値が記憶されている。第1の実施の形態では、全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)をA/D変換した値(後述する空燃比実測値)の取り得る範囲の中央の値を実空燃比中央値とするが、この値はエンジンの制御形態によって適宜変更されるものであり、中央の値に限定するものではない。なお、目標中心空燃比が、本発明における「特定空燃比」に相当する。
また、第1の実施の形態では、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転した時を起点とし、それ以後に目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転する毎にその反転回数を数え、基準反転回数として定められた回数(例えば5回)に達するまでの期間を、異常診断のため全領域空燃比センサ1の出力を取得する診断期間としている。そしてこの診断期間中に、空燃比実測値についてもリッチ側からリーン側へ移行した回数を数え、基準移行回数として定められた回数(例えば3回)以下だった場合に全領域空燃比センサ1が異常状態にあると診断(判定)している。設定値記憶エリア72には、診断期間を決定するための基準反転回数や、移行回数のしきい値としての基準移行回数も予め定められて記憶されている。さらに、異常診断を開始する条件として全領域空燃比センサ1が活性化したか否かを判定する際に用いる基準値としてのセンサ活性判定値も記憶されている。
また、初期化条件フラグ記憶エリア73には、異常診断プログラムの実行の際に参照される初期化条件フラグの値が記憶される。初期化条件フラグは、異常診断プログラムとは異なる他の制御プログラムからの出力に応じ、あるいは直接書き込まれることにより立てられるフラグである。他の制御プログラムによりエンジンの状態が監視され、例えば自動車のイグニッションキーがOFFにされエンジンが停止された場合や、エンジンが不意に作動を停止(いわゆるエンスト)した場合などに1が記憶される。
また、運転パラメータ条件フラグ記憶エリア74には、異常診断プログラムの実行の際に参照される運転パラメータ条件フラグの値が記憶される。運転パラメータ条件フラグもまた、異常診断プログラムとは異なる別の制御プログラムにより立てられるフラグである。CPU6により実行される別の制御プログラムによりエンジンを中心としたシステム全体の稼働状況が監視され、例えばエンジンの回転数や冷却水の水温などが、予め設定された正常とみなせる値の範囲内で所定時間(例えば1秒間)維持された場合に、エンジンの運転状況が正常であるとして1が記憶される。なお、エンジンの回転数や冷却水の水温の正常とみなせる範囲として、第1の実施の形態では、エンジン回転数が2000rpm以上5000rpm以下であり、水温が50℃以上300℃以下である範囲(条件)を設定している。また、ROM7には図示外の各種記憶エリアも設けられている。
次に、RAM8の記憶エリアについて説明する。図3に示すように、RAM8の異常診断プログラムに係る記憶エリアには、フラグ記憶エリア81、目標空燃比記憶エリア82、空燃比実測値記憶エリア83、目標空燃比反転回数記憶エリア84、実空燃比移行回数記憶エリア85等が設けられている。フラグ記憶エリア81には、異常診断プログラムの実行時に利用されるフラグが一時的に記憶される。ところで、CPU6では、異常診断プログラムとは別に燃料の噴射タイミングおよび噴射量を制御するプログラムが実行されており、そのプログラムにおいて、混合気の目標とする空燃比がエンジンの運転状態に応じて決定されている。目標空燃比記憶エリア82には、そのプログラムにおいて使用される記憶エリアから読み込まれた目標空燃比が記憶される。
また、空燃比実測値記憶エリア83には、センサ駆動回路部3より出力される全領域空燃比センサ1の出力として、Ipセルに流されたポンプ電流IpをA/D変換した値が空燃比実測値として記憶される。目標空燃比反転回数記憶エリア84には、リッチ側とリーン側との間で繰り返し反転する混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ移行したときを1回としてカウントした回数が記憶される。実空燃比移行回数記憶エリア85にも同様に、全領域空燃比センサ1の出力として排気ガスの空燃比を示す空燃比実測値がリッチ側からリーン側へ移行したときを1回としてカウントした回数が記憶される。また、RAM8には図示外の各種記憶エリアも設けられている。
ところで、上記したフラグ記憶エリア81には、計測完了フラグ、目標空燃比フラグ、実空燃比フラグ、異常判定フラグ等が記憶される。計測完了フラグは、センサの異常診断が完了した時点で立てられるフラグである。第1の実施の形態の異常診断プログラムでは、1回のエンジンの駆動開始から停止までの間に一度、センサの異常診断が行われるように構成されており、上記運転パラメータ条件フラグおよび計測完了フラグと、ROM7に記憶される初期化条件フラグを用いて、異常診断のための各処理を実施するか否かが決定される。
また、目標空燃比フラグは、目標空燃比記憶エリア82に記憶された目標空燃比がリッチかリーンかを判定した結果に従って立てられるフラグである。設定値記憶エリア72に記憶された目標中心空燃比を目標空燃比と比較し、目標空燃比がリッチである場合に1が記憶され、リーンである場合に0が記憶される。同様に実空燃比フラグは、空燃比実測値記憶エリア83に記憶された空燃比実測値がリッチかリーンかを判定した結果に従って立てられるフラグである。設定値記憶エリア72に記憶された実空燃比中央値を空燃比実測値と比較し、空燃比実測値がリッチである場合に1が記憶され、リーンである場合に0が記憶される。異常判定フラグは、異常診断プログラムによってセンサが異常状態にあると診断(判定)された場合に立てられるフラグである。異常判定フラグの値はCPU6により実行される他のプログラムにおいて参照され、1が記憶されている場合に全領域空燃比センサ1に異常が生じたことを運転者に報知する処理等の実施に用いられる。
次に、全領域空燃比センサ1を用いて排気ガスの酸素濃度(空燃比)を検出する動作について簡単に説明する。まず、図1に示すように、微小電流供給回路34によりVsセルの電極22から電極21に向けて微小電流Icpを流す。この通電より、電極21側から電極22側に固体電解質体13を介して酸素が汲み込まれ、電極22が酸素基準電極として機能する。そして、電圧出力回路33により両電極21,22間に発生する起電力Vsを検出し、この起電力Vsを基準電圧比較回路35で基準電圧(例えば450mV)と比較する。ポンプ電流駆動回路32では、基準電圧比較回路35による比較結果に基づいて、起電力Vsが基準電圧となるようにIpセルの電極19,20間に流すポンプ電流Ipの大きさや向きを制御する。
例えば、ガス検出室23内に流入した排気ガスの空燃比がリッチであった場合、排気ガス中の酸素濃度が薄いため、Ipセルにおいて外部からガス検出室23内に酸素を汲み入れるように、電極19,20間に流すポンプ電流Ipが制御される。一方、ガス検出室23内に流入した排気ガスの空燃比がリーンであった場合、排気ガス中には多くの酸素が存在するため、Ipセルにおいてガス検出室23から外部へ酸素を汲み出すように、電極19,20間に流すポンプ電流Ipが制御される。このときのポンプ電流Ipが全領域空燃比センサ1の出力(空燃比実測値)としてECU5に出力され、そのポンプ電流Ipの大きさと向きから排気ガス中に含まれる酸素濃度、ひいては排気ガスの空燃比を検出できるのである。
ECU5では、エンジンの制御等に係る複数のプログラムがCPU6により実行されており、そのうちの1つである異常診断プログラムでは、取得した全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)に対する演算処理等が行われ、全領域空燃比センサ1が異常状態にあるか否かの診断が行われる。以下、図4〜図6のフローチャートに従って、図1〜図3および図7,図8を参照しながら、異常診断プログラムの各処理について説明する。図4は、異常診断プログラムのメインルーチンのフローチャートである。図5は、異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。図6は、異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。図7は、ガスセンサが異常状態にない場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従して変化する様子の一例を示すグラフである。図8は、ガスセンサが異常状態にある場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従できず遅延して変化する様子の一例を示すグラフである。なお、フローチャートの各ステップについては「S」と略記する。また、図6,図7に示すグラフの時間軸における各タイミングを「T」と略記する。
異常診断プログラムは、図2に示すROM7のプログラム記憶エリア71に記憶されており、例えばイグニッションキーをONした場合などを契機にECU5のCPU6が稼働されると、エンジンを制御するための他のプログラムと共にCPU6により実行される。
図4に示す、異常診断プログラムのメインルーチンが実行されると、まず初期化処理が行われ、RAM8に異常診断プログラムに使用される変数やフラグ、カウンタ等の記憶エリアが確保される(S10)。次にセンサユニット4のセンサ駆動回路部3に指示が送信され、全領域空燃比センサ1の固体電解質体11,13,14の活性化のため、ヒータ電圧供給回路31によるヒータ体27への通電が行われる。また、センサユニット4より固体電解質体13の内部抵抗値を示すセンサ抵抗値信号がA/D変換回路(図示外)を介して取得される。このセンサ抵抗値信号の大きさを、予め定められ設定値記憶エリア72に記憶されているセンサ活性判定値と比較することにより、全領域空燃比センサ1の活性化の有無の判断が行われる(S11)。このとき全領域空燃比センサ1が活性化していないと判断された場合には、全領域空燃比センサ1が活性化するまでセンサ抵抗値信号の取得とセンサ活性判定値との比較が繰り返し行われる(S11:NO)。
なお、図1に図示していないが、センサ駆動回路部3は、公知のセンサ抵抗値検出回路を備えている。このセンサ抵抗値検出回路は、具体的に、微小電流供給回路34とは別に設けられた電流供給回路より一定値の電流をVsセルに対して定期的に供給し、その際にVsセルの電極21,22間に発生する電位差をセンサ抵抗値信号として検出し、この信号をECU5に出力している。このとき、センサ素子10のVsセルにおける温度とセンサ抵抗値信号との間には相関関係があり、センサ抵抗値信号に基づいてセンサ素子10の温度を検出することが可能となる。
図4に戻り、全領域空燃比センサ1が活性化したと判断されると(S11:YES)、次に異常診断プログラムとは別途実行されるタイマプログラム(図示外)が起動され、実行が開始される(S12)。タイマプログラムは、異常診断プログラムの各処理を実行するタイミングの基準となるカウント値を一定時間間隔でインクリメント(あるいはデクリメントであってもよい。)するプログラムである。異常診断プログラムは、メインプログラムのS13〜S25の処理を10msec毎に1度、繰り返し実行するように構成されており、カウント値は前回の実行時から10msecが経過したか否かを判断するために用いられる。このため、S13においてタイマプログラムの現在のカウント値をリセットし、その時点を基準に時間計測を開始する処理が行われる(S13)。
次に、初期化条件フラグ記憶エリア73の初期化条件フラグが参照される(S15)。上記したように初期化条件フラグは異常診断プログラムとは異なる他の制御プログラムにより値が管理されており、異常診断プログラムの実行時には前回エンジンを停止した際に1が書き込まれているのでS16に進む(S15:YES)。そしてS16では、異常診断プログラムで一時使用される各変数やフラグをリセットする処理が行われる(S16)。具体的には、フラグ記憶エリア81の目標空燃比フラグ、実空燃比フラグ、異常判定フラグ、計測完了フラグ、および初期化条件フラグ記憶エリア73の初期化条件フラグにそれぞれ0が記憶され、目標空燃比反転回数記憶エリア84の目標空燃比反転回数、および実空燃比移行回数記憶エリア85の実空燃比移行回数にもそれぞれ0が記憶される。その後S25に進む。
S25では、S12で実行が開始されたタイマプログラムのカウント値が参照される。カウント値はS13においてリセットされており、S25で参照されたときに10msecに相当する値未満だった場合には待機し、カウント値の参照が継続して行われる(S25:NO)。そしてカウント値が10msecに相当する値以上となれば(S25:YES)、S13に戻り、再度カウント値がリセットされて、S15〜S25の処理が繰り返されることとなる。
2周目となるS15の処理では初期化条件フラグが0となっているので(S15:NO)、S18に進み、運転パラメータ条件フラグ記憶エリア74の運転パラメータ条件フラグが参照される(S18)。上記したように運転パラメータ条件フラグは異常診断プログラムとは異なる別の制御プログラムにより値が管理されており、エンジンの回転数や冷却水の水温が予め設定された正常とみなせる値の範囲に達しないうちは、初期状態、すなわち0が記憶されている(S18:NO)。従ってS25に進み、上記同様、10msecの経過を待ってS13に戻る。
エンジンの回転数や冷却水の水温が予め設定された正常とみなせる値の範囲内に収まり、その状態が所定時間維持された場合、運転パラメータ条件が成立したとして、上記別の制御プログラムにより運転パラメータ条件フラグ記憶エリア74の運転パラメータ条件フラグに1が記憶される。するとS18の処理ではS20に進めるようになるので(S18:YES)、次にフラグ記憶エリア81の計測完了フラグが参照される(S20)。S16の処理で計測完了フラグには0が記憶されているので(S20:NO)、S21に進む。
S21では、目標空燃比の取得が行われる。ECU5では、全領域空燃比センサ1の出力として得られる排気ガスの空燃比の情報に基づいてエンジンに供給する混合気の空燃比を調整し、それにあわせ燃料の噴射量や噴射タイミングなどを制御する、いわゆる空燃比フィードバック制御が行われている。その空燃比フィードバック制御を行うためのプログラムでは、混合気の空燃比の調整のため、エンジンに供給する混合気の空燃比の目標とする目標空燃比の設定を行い、それに従った燃料噴射を制御している。S21の処理では、そのプログラムで設定された現時点(S21が実行されたタイミング)における目標空燃比の取得が行われ、取得された目標空燃比が目標空燃比記憶エリア82に記憶される(S21)。
次いで全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)すなわち空燃比実測値が取得される(S22)。空燃比実測値は、前述したようにIpセルに流れるポンプ電流Ipの値をA/D変換したものであり、空燃比実測値記憶エリア83に記憶される。なお、S22において、全領域空燃比センサ1より出力される検出信号を一定のタイミング毎(例えば10msec毎)に取得する処理が、本発明における「検出信号取得工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「検出信号取得手段」に相当する。
そしてS23に進み、応答遅れ診断処理のサブルーチン(図5,図6参照)がコールされる(S23)。ところで、応答遅れ診断処理のサブルーチンから戻るとS25に進み10msecの経過を待機してS13に戻ることとなるが、全領域空燃比センサ1の異常診断が完了するまで、計測完了フラグは0のまま維持されるようになっている。従ってメインルーチンのS13〜S25までの処理は、以降も今回と同様の処理順に進められるので、ここではS23からコールされる図5,図6の応答遅れ診断処理について、図7のグラフを参照しつつ説明する。
図5に示すように、応答遅れ診断処理のサブルーチンでは、まず、全領域空燃比センサ1の検出した現在の排気ガスの空燃比がリッチ側にあるかリーン側にあるかを判定する処理を行うため、フラグ記憶エリア81の実空燃比フラグが参照される(S30)。初期状態では空燃比実測値が実空燃比中央値を基準にリッチ側かリーン側かの判定がなされておらず、S16(図4参照)の処理により0が設定され、仮に、前回の排気ガスの空燃比がリーンであった状態に設定されている(S30:NO)。そこで現在の排気ガスの空燃比がリッチ側にあるかリーン側にあるかを確認するため、空燃比実測値記憶エリア83に記憶された現在の排気ガスの空燃比に対応した空燃比実測値と、設定値記憶エリア72に記憶された実空燃比中央値とが比較される(S35)。例えば図7に示すT0タイミングに応答遅れ診断処理が初めて実行された場合、1点鎖線で示される空燃比実測値がリッチ側かリーン側かの判定基準としての実空燃比中央値より小さい値であるので、このT0タイミングでは、図5に示すように、現在の排気ガスの空燃比がリッチ側にあると判断され(S35:YES)、フラグ記憶エリア81の実空燃比フラグに1が記憶されてS40(図6参照)に進む(S36)。
次いで、目標空燃比についても同様に、リッチ側にあるかリーン側にあるかの判定が行われる。図6に示すように、まず、フラグ記憶エリア81の目標空燃比フラグが参照される(S40)。初期状態では目標空燃比が目標中心空燃比を基準にリッチ側かリーン側かの判定がなされておらず、S16(図4参照)の処理により0が設定され、仮に、目標空燃比がリーン側にある状態とされている(S40:NO)。そこで実際の目標空燃比がリッチ側にあるかリーン側にあるかを確認するため、目標空燃比記憶エリア82に記憶された目標空燃比と、設定値記憶エリア72に記憶された目標中心空燃比との比較が行われる(S45)。例えば図7に示すT0タイミングに応答遅れ診断処理が初めて実行された場合、点線で示される目標空燃比が目標中心空燃比より小さい値であるので、このT0タイミングでは、図6に示すように、目標空燃比がリッチ側にあると判断され(S45:YES)、フラグ記憶エリア81の目標空燃比フラグに1が記憶される(S46)。
第1の実施の形態では、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行したとき、および目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転したときの回数を求めて異常診断を行うため、これら空燃比がリーン側からリッチ側へ移行または反転した場合あるいは変化のない場合には何も行わず、メインルーチンに戻る。そして10msecの経過後(図4、S25)、新たな目標空燃比の取得と、新たな全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)の取得とが行われ(図4、S21,S22)、次周の応答遅れ診断処理が再度実施される(S23)。
以後、例えば図7におけるT0〜T2タイミングのように排気ガスの空燃比がリッチ側にある間、空燃比実測値は実空燃比中央値より小さい値となるため(図5、S30:YES,S31:NO)、実空燃比フラグは1のまま維持される。また、目標空燃比についても同様に、例えば図7におけるT0〜T2タイミングのように目標空燃比がリッチ側にある間は目標中心空燃比より小さいため(図6、S40:YES,S41:NO)、目標空燃比フラグは1のまま維持されて、メインルーチンに戻る。
そしてT2タイミング(図7参照)において目標空燃比が反転し、目標中心空燃比以上となると(図6、S40:YES,S41:YES)、図6に示すように、他の制御プログラムで設定されている混合気の目標空燃比がリーン側に移行したと判断され、フラグ記憶エリア81の目標空燃比フラグに0が記憶される(S42)。
次に、目標空燃比反転回数記憶エリア84に記憶された目標空燃比反転回数が、設定値記憶エリア72に記憶された基準反転回数(例えば5回)以上の回数となったか否かの確認が行われる(S50)。初めてこの処理が実行された際には、S16(図4参照)において目標空燃比反転回数に0が記憶されているのでS60に進み(S50:NO)、その目標空燃比反転回数が0か否か確認が行われる(S40)。目標空燃比反転回数が0である場合には実空燃比移行回数がリセットされて(S60:YES,S61)、そうでなければ実空燃比移行回数のリセットは行われない(S60:NO)。この処理において異常診断の診断(判定)対象となる実空燃比移行回数をリセットすることによって、このタイミング(図7におけるT2タイミング)が、ガスセンサの異常診断を行う診断期間を開始する起点とされる。診断期間は、目標空燃比反転回数が基準反転回数に達するまで継続し、その間、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に移行した回数、すなわち実空燃比移行回数が計数されることとなる。S60,S61の処理は、診断期間の起点(図7におけるT2タイミング)以前に計数された実空燃比移行回数を無効とし、診断期間中にて排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に移行した回数のみを計数するためのリセット処理である。その後S63に進み、目標空燃比反転回数に1が加算されてから(S63)、メインルーチンに戻る。なお、S63において目標空燃比反転回数に1を加算する処理が、本発明における「目標空燃比反転回数計数工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「目標空燃比反転回数計数手段」に相当する。
図7のT2タイミング以降、目標空燃比はリーン側へ反転したものの、排気ガスの空燃比は即座にリーン側へ移行するわけではなく、T2〜T3タイミングのように、リッチ側からリーン側へ移行途中の状態となる。次周以降の応答遅れ診断処理では、図5に示すように、排気ガスの空燃比がリッチ側であることから実空燃比フラグが1のまま維持され(S30:YES,S31:NO)、図6に示すように、目標空燃比がリーン側であることから目標空燃比フラグが0のまま維持されて(S40:NO,S45:NO)、そのままメインルーチンに戻る処理が繰り返される。
そして図7のT3タイミングに、空燃比実測値が実空燃比中央値以上の値となり、図5に示すように、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行したと判断されると(S30:YES,S31:YES)、実空燃比フラグに0が記憶されると共に(S32)、実空燃比移行回数に1が加算される(S33)。このタイミングでは目標空燃比はリーン側のままであり、図6に示すように、目標空燃比フラグが0のまま維持されて(S40:NO,S45:NO)、そのままメインルーチンに戻る。なお、S33において実空燃比移行回数に1を加算する処理が、本発明における「移行回数計数工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「移行回数計数手段」に相当する。
図7に示す、T3〜T4タイミングでは、排気ガスの空燃比および目標空燃比が共にリーン側となり、実空燃比フラグが0のまま維持され(図5、S30:NO,S35:NO)、目標空燃比フラグも0のまま維持されて(図6、S40:NO,S45:NO)、そのままメインルーチンに戻る処理が繰り返される。そしてT4タイミングに目標空燃比がリッチ側に反転され、T5タイミング移行には排気ガスの空燃比もリッチ側に移行する。応答遅れ診断処理では、T4タイミング以降の最初の実行時に、目標空燃比が目標中心空燃比より小さくなることから目標空燃比フラグに1がセットされることとなる(図6、S40:NO,S45:YES,S46)。同様に、T5タイミング以降の最初の実行時に、空燃比実測値が実空燃比中央値より小さくなることから実空燃比フラグに1がセットされることとなる(図5、S30:NO,S35:YES,S36)。
そして目標空燃比が再びリッチ側からリーン側へ反転されるまで(T5〜T7タイミング)、目標空燃比はリーン側にあり、排気ガスの空燃比もリーン側の値を示し、それぞれに対応する目標空燃比フラグと実空燃比フラグとが共に1となっている。従って、図5,図6に示す応答遅れ診断処理では、T0〜T2タイミングと同様に、そのままメインルーチンに戻る処理が繰り返される(図5、S30:YES,S31:NO,図6、S40:YES,S41:NO)。
以降、図7におけるT7〜T12タイミング、T12〜T17タイミング、T17〜T22タイミング、T22〜T27タイミングには、T2〜T7タイミングと同様の処理が行われる。その間、目標空燃比が目標中心空燃比以上となってリッチ側からリーン側に反転するT7,T12,T17,T22タイミングでは、前回までの目標空燃比反転回数が基準反転回数(例えば5回)より小さい値となっているため(図6、S50:NO)、T2タイミングと同様に、目標空燃比反転回数が1ずつ加算されてそのままメインルーチンに戻ることとなる(図6、S63)。また、空燃比実測値が実空燃比中央値以上の値となって排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に移行するT8,T13,T18,T23タイミングには、それぞれ、T3タイミングと同様に、実空燃比移行回数が1ずつ加算される(図5、S30:YES,S31:YES,S33)。
図7のT27タイミングに再び目標空燃比が目標中心空燃比以上となってリッチ側からリーン側に反転するが、このとき、前回までの目標空燃比反転回数が5回となっており、図6に示すS50の処理が行われたときには基準反転回数以上となっているため(S50:YES)、計測完了フラグに1が記憶されて診断期間が終了する(S65)。そしてS70に進み、診断期間中に計数した実空燃比移行回数と、設定値記憶エリア72に記憶された基準移行回数とを比較することによって、異常診断が行われる(S70)。このとき、実空燃比移行回数が基準移行回数以上であれば(S70:NO)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常がなく正常であると診断され(S75)、そのままメインルーチンに戻る。一方、実空燃比移行回数が基準移行回数より小さいと(S70:YES)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常があると診断され、フラグ記憶エリア81の異常判定フラグに1が記憶されて(S76)、メインルーチンに戻る。なお、S70において、実空燃比移行回数を基準移行回数と比較してガスセンサが異常状態にあるか否かを診断(判定)する処理が、本発明における「異常診断工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「異常診断手段」に相当する。
ここで、図7に示すように、全領域空燃比センサ1が正常な状態にあり、空燃比実測値が目標空燃比の反転に良好に追従して変化している場合、空燃比実測値は、T2〜T27タイミングの診断期間中、T3,T8,T13,T18,T23タイミングにそれぞれ実空燃比中央値を基準にリッチ側からリーン側の値に移行する。このため、実空燃比移行回数は比較的多くなり(図7では5回)、目標空燃比反転回数(図7では5回)に近づくこととなる。
一方、図8に示すように、全領域空燃比センサ1が異常状態にあり、空燃比実測値が目標空燃比の反転に良好に追従できず遅延が生じている場合、空燃比実測値は、T2〜T27タイミングの診断期間中、T11,T21タイミングにそれぞれ実空燃比中央値を基準にリッチ側からリーン側の値に移行する。このため、実空燃比移行回数は比較的少なくなる(図8では2回)。基準移行回数は両者を区別可能な回数(例えば3回)に設定されており、図5,図6の応答遅れ診断処理では、これをしきい値として異常判定フラグの値の決定が行われる。異常判定フラグの値はCPU6により実行される他のプラグラムにおいて繰り返し参照されており、参照時に1が記憶されていれば、例えば運転者への報知等が行われるのである。なお、診断期間が開始される前のT1タイミングにも、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行し、実空燃比移行回数がカウントされている。しかし、上記したように、診断期間の開始時にS60,S61の処理で実空燃比移行回数がリセットされるので、実空燃比移行回数は、診断期間中にのみ、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行した回数がカウントされることとなる。
そして、図4に示す、次回以降のS13〜S25の処理では、計測完了フラグに1が記憶されているため(S20:YES)、S25に進み、以降、応答遅れ診断処理が実行されることはない。しかし、イグニッションキーのOFFやエンストなどの発生により初期化条件フラグに1が記憶されてS16の処理が行われ、計測完了フラグに再度0が記憶されると、また応答遅れ診断処理が行われるようになる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係るガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態における診断期間を複数回繰り返し行って、各診断期間において求めた実空燃比移行回数をすべて合計した実空燃比積算移行回数をもって基準移行回数(第1の実施の形態とは回数が異なる。)と比較することにより、ガスセンサが異常状態にあるか否かの診断を行うものである。図9に、第2の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートを示す。
第2の実施の形態では、図示しないが、RAM8に、計測回数記憶エリアおよび実空燃比積算移行回数記憶エリアが設けられている。計測回数記憶エリアには、診断期間を繰り返し実施する回数をカウントする変数としての計測回数が記憶され、初期値には0が記憶される。実空燃比積算移行回数記憶エリアには、1回の診断期間が終了する毎に実空燃比移行回数をその都度加算することで、基準繰り返し回数分の実空燃比移行回数を合算して求める変数としての実空燃比積算移行回数が記憶され、初期値には0が記憶される。また、ROM7の設定値記憶エリア72には、診断期間を繰り返し実施する回数を定めた基準繰り返し回数(例えば3回)が記憶されている。なお、実空燃比積算移行回数が、本発明における「移行回数合計値」に相当する。
そして図4に示す、異常診断プログラムのメインルーチンのS16において、第2の実施の形態では、第1の実施の形態でリセットされた各フラグや変数に加え、計測回数および実空燃比積算移行回数のリセットを行う。また、図9に示す、第2の実施の形態の応答遅れ診断処理では、S50の判定処理でYESとなった場合にS51〜S58の処理を追加し、S58からS65の処理に接続もしくはメインルーチンに戻ると共に、S65から接続されるS71にて、基準移行回数と比較する対象を実空燃比積算移行回数とする。
上記を除き第2の実施の形態における異常診断装置の構成や、異常診断プログラムのその他の処理については第1の実施の形態と同様であるので、以下、応答遅れ診断処理を中心に説明し、その他の部分は省略または簡略化して説明する。なお、図9において、第1の実施の形態と同様の処理については同一のステップ番号を付している。
第1の実施の形態と同様に、CPU6により図4に示した異常診断プログラムのメインルーチンが実行され、初期化条件フラグ、運転パラメータ条件フラグ、および計測完了フラグによる場合分けの各条件が揃うと、図5,図9に示す、応答遅れ診断処理のサブルーチンが実施されるようになる。そして、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転したタイミング(図7に示すT2タイミング)より、診断期間が開始される(図9、S40:YES,S41:YES,…,S61)。診断期間中は第1の実施の形態と同様に、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行する毎に実空燃比移行回数が1加算される(図5、S30:YES,S31:YES,…,S33)。同様に、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転する毎に目標空燃比反転回数が1加算される(図9、S40:YES,S41:YES,…,S63)。そして、目標空燃比反転回数が基準反転回数(例えば5回)以上となると(図9、S50:YES)、1回目の診断期間が終了する。
このとき、図9に示すように第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、2回目の診断期間が開始される。すなわちS51に進み、目標空燃比反転回数記憶エリア84の目標空燃比反転回数に1が記憶される(S51)。そしてRAM8の所定の記憶エリアの実空燃比積算移行回数が読み込まれ(初期状態では0)、1回目の診断期間中に計数した実空燃比移行回数と加算されて、その加算結果が新たな実空燃比積算移行回数としてRAM8の所定の記憶エリアに上書き記憶される(S52)。この処理の後、2回目の診断期間において実空燃比移行回数を0から計数するため、実空燃比移行回数記憶エリア85に0が記憶される(S53)。さらに、RAM8の所定の記憶エリアに記憶された計測回数(初期状態では0)に1が加算される(S57)。なお、S52において、複数回繰り返される個々の診断期間中に得られたそれぞれの実空燃比移行回数を加算(合計)した実空燃比積算移行回数を求める処理が、本発明における「移行回数合計値算出工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「移行回数合計値算出出手段」に相当する。
次に、計測回数が基準繰り返し回数以上となったかの確認が行われる(S58)。この処理では診断期間が基準繰り返し回数に定められた回数(例えば3回)分、繰り返し行われたかの確認がなされる。1回目の診断期間の終了後ではまだ満たされていないので(S58:NO)、そのままメインルーチンへ戻る。以降の応答遅れ診断処理では、上記同様、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転する毎に目標空燃比反転回数が1加算され(S40:YES,S41:YES,…,S63)、その一方で、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行する毎に実空燃比移行回数が1加算される(図5、S30:YES,S31:YES,…,S33)。そして、目標空燃比反転回数が再び基準反転回数(例えば5回)以上となると2回目の診断期間が終了し(S50:YES)、1回目と同様にS51〜S57の処理が実行される。なお、S58において、計測回数が基準繰り返し回数以上となるまで計測完了フラグを0で維持し、診断期間を繰り返し実施させる処理が、本発明における「繰り返し計数工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「繰り返し計数手段」に相当する。
このように診断期間は、一の診断期間が終了する毎に1加算される計測回数が基準繰り返し回数未満であるうちは繰り返される(S58:NO)。各診断期間中は、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行する毎に実空燃比移行回数に1が加算され(図5、S31:YES,…,S33)、診断期間が終了すれば(S50:YES)、その診断期間中に求められた実空燃比移行回数が実空燃比積算移行回数に上乗せ加算される(S52)。
そして計測回数が基準繰り返し回数以上となったとき(S58:YES)、診断期間が次周以降繰り返し実施されないように、計測完了フラグに1が記憶される(S65)。実空燃比積算移行回数には、それまでに行われた各診断期間の実空燃比移行回数の合計が求められた状態となり、この実空燃比積算移行回数が、設定値記憶エリア72の基準移行回数と比較される(S71)。例えば基準繰り返し回数が3回に設定されていれば、基準移行回数としては、3回分の診断期間中に排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に移行する回数として、ガスセンサが異常である場合と正常である場合とを区別可能な回数があらかじめ実験等により求められ、記憶されている。実空燃比積算移行回数が基準移行回数以上であれば(S71:NO)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常がなく正常であると診断される(S75)。一方、実空燃比積算移行回数が基準移行回数より小さければ(S71:YES)、全領域空燃比センサ1の出力に異常があると診断され、フラグ記憶エリア81の異常判定フラグに1が記憶されるのである(S76)。そしてこの異常判定フラグの値が、運転者への報知等に用いられる。
このように第2の実施の形態では、実空燃比積算移行回数として得られる値が大きくなり、全領域空燃比センサ1が正常な場合に得られる実空燃比積算移行回数と、異常状態にある場合に得られる実空燃比積算移行回数との間の差を、より広げることができるので、異常診断の精度を高めることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係るガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態で行った実空燃比移行回数に基づく異常診断に加え、空燃比実測値に対し、後述するなまし演算を行って算出した実空燃比なまし値と空燃比実測値との差分(偏差)に基づいて異常診断を行うことで、異常診断の精度をより高めたものである。図10に、第3の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートを示す。
第3の実施の形態では、図示しないが、ROM7の設定値記憶エリア72に、実空燃比なまし値を算出する際に用いられるなまし係数αの値(例えば0.2)や、上記偏差に基づいて全領域空燃比センサ1が異常状態にあるか否かを診断(判定)する際に比較される基準値としての異常診断基準値が記憶されている。
また、図示しないが、RAM8には、実空燃比なまし値記憶エリアおよび面積合計値記憶エリアが設けられている。実空燃比なまし値記憶エリアには、全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)として得られた(現在の)空燃比実測値と前回のなまし演算で算出した実空燃比なまし値とを、なまし係数αで与えられる一定の割合で掛け合わせるなまし演算を行ってなました(現在の)実空燃比なまし値が記憶される。具体的には、実空燃比なましは以下の式によって与えられる。
実空燃比なまし値=α×空燃比実測値+(1−α)×(前回の)実空燃比なまし値 ・・・ (1)
(ただし、αは0<α<1で与えられるなまし係数であり、第1の実施の形態では0.2である。)
また、面積合計値記憶エリアには、算出された実空燃比なまし値と空燃比実測値との差分の絶対値を偏差として求め、その偏差を加算した値、すなわち積分値が、面積合計値として記憶される。
そして異常診断プログラムのメインルーチンのS16(図4参照)において、第3の実施の形態では、第1の実施の形態でリセットされた各フラグや変数に加え、面積合計値のリセットが行われる。また、図10に示す、第3の実施の形態の応答遅れ診断処理では、図6に示す第1の実施の形態の応答遅れ診断処理と比較して、以下の各処理が追加されている。まず、S41で目標空燃比が目標中心空燃比以上の値となった場合(S41:YES)に、S50に進む前に、現在の空燃比実測値を実空燃比なまし値に代入する処理が追加されている(S43)。次に、S40で目標空燃比フラグが1出なかった場合(S40:NO)、S41で目標空燃比が目標中心空燃比未満の値であった場合(S41:NO)に、メインルーチンに戻る前に、実空燃比なまし値を算出し(S47)、実空燃比なまし値と空燃比実測値との差分から偏差を求め(S77)、その偏差を面積合計値に加算する処理(S78)が追加されている。また、S60で目標空燃比反転回数が0であった場合(S60:YES)、S63に進む前に、面積合計値をリセットする処理が追加されている(S62)。第1の実施の形態と同様に、診断期間は異常診断プログラムの実行後最初に目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転したタイミングを起点として開始されるが、それ以前の期間にも偏差の面積合計値への加算が行われており、この処理により、診断期間の開始以前に加算された面積合計値がリセットされる。そしてS63の処理後、メインルーチン戻る前に、上記のS77,S78の処理を経るようにしている。さらに、S70で実空燃比移行回数が基準移行回数以上であった場合(S70:NO)、S75に進む前に、面積合計値が異常診断基準値未満であるか否かを判定する処理が追加されている(S72)。このとき面積合計値が異常診断基準値未満であればS75に進み、面積合計値が異常診断基準値未満以上であればS76に進むようにしている。
この第3の実施の形態においても、上記を除き第2の実施の形態における異常診断装置の構成や、異常診断プログラムのその他の処理については第1の実施の形態と同様であるので、以下、図11,図12に示すグラフを参照しながら応答遅れ処理を中心に説明し、その他の部分は省略または簡略化して説明する。図11は、ガスセンサが異常状態にない場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従して変化する様子の一例を示すグラフである。図12は、ガスセンサが異常状態にある場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従できず遅延して変化する様子の一例を示すグラフである。なお、図10において、第1の実施の形態と同様の処理については同一のステップ番号を付している。
第1の実施の形態と同様に、CPU6により図4に示した異常診断プログラムのメインルーチンが実行され、初期化条件フラグ、運転パラメータ条件フラグ、および計測完了フラグによる場合分けの各条件が揃うと、図5,図10に示す、応答遅れ診断処理が実施されるようになる。応答遅れ診断処理は、目標空燃比の取得(図4、S21)と全領域空燃比センサ1の出力(検出信号)の取得(図4、S22)と共に、10msec毎に繰り返し実施される(図4、S25)。
診断期間は、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転したタイミング(図11に示すT2タイミング)より、開始される(図9、S40:YES,S41:YES,…,S61)。診断期間中には、第1の実施の形態と同様に、排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側へ移行する毎(図11に示すT3,T8,T13,T18,T23タイミング)に、実空燃比移行回数が1加算されている(図5、S30:YES,S31:YES,…,S33)。同様に、混合気の目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転する毎(図11に示すT7,T12,T17,T22,T27タイミング)に、目標空燃比反転回数が1加算されている(図9、S40:YES,S41:YES,…,S63)。
また図10に示すように、診断期間中に、応答遅れ診断処理が実施される毎(10msec毎)に、目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転した場合(S40:YES,S41:YES)を除き、実空燃比なまし値の算出が行われている。設定値記憶エリア72に記憶されたなまし係数αの値と、実空燃比なまし値記憶エリアに記憶された前回の実空燃比なまし値(初期状態ではS10の初期化処理により0が記憶されている。)と、空燃比実測値記憶エリア83に記憶された空燃比実測値とがそれぞれ読み込まれ、上記(1)の式に従って実空燃比なまし値が算出される(S47)。この算出結果は、実空燃比なまし値記憶エリアに上書き記憶される。なお、S47において、実空燃比なまし値を算出する処理が、本発明における「なまし信号算出工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「なまし信号算出手段」に相当する。
実空燃比なまし値の算出後はS77に進み、実空燃比なまし値記憶エリアに記憶された今回(現在)の実空燃比なまし値と、空燃比実測値記憶エリア83に記憶された今回(現在)の空燃比実測値とが読み込まれ、差分の絶対値が偏差として算出される(S77)。この偏差は、図11においては1点鎖線で示される空燃比実測値と2点鎖線で示される実空燃比なまし値との高さの差として示されるものである。
次いで図10に示すように、面積合計値記憶エリアから面積合計値が読み込まれ(初期状態ではS16の処理により0が記憶されている。)、この面積合計値にS77で算出された偏差を加算した結果が、面積合計値記憶エリアに上書き記憶される(S78)。このように、診断期間においてS47,S77,S78の処理が繰り返し実施されることによって、図11において、空燃比実測値のグラフ(1点鎖線)と実空燃比なまし値のグラフ(2点鎖線)とに囲まれた部分の面積を面積合計値として求める処理が行われることとなる。なお、S77において、空燃比実測値と実空燃比なまし値との差分を偏差として算出する処理が、本発明における「偏差算出工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「偏差算出手段」に相当する。また、診断期間中、偏差合計値を加算することで、診断期間に得られたすべての偏差を合計した面積合計値を算出する処理が、本発明における「偏差合計値算出工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明における「偏差合計値算出手段」に相当する。
なお、診断期間において、目標空燃比がリッチ側からリーン側へ反転した場合に(S40:YES,S41:YES)、空燃比実測値を実空燃比なまし値として上書き記憶することで、なまし具合をほぼ定期的に初期状態、すなわち、なまされていない状態に戻す処理が行われている。
そして、目標空燃比反転回数が基準反転回数(例えば5回)以上となると(図10、S50:YES)、診断期間が終了する。第1の実施の形態と同様に計測完了フラグに1が記憶され(S65)、実空燃比積算移行回数と基準移行回数との比較によって異常診断が行われる(S70)。診断期間中に計数した実空燃比移行回数が基準移行回数より小さければ(S70:YES)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常があると診断される(S76)。
一方、実空燃比移行回数が基準移行回数以上の場合には(S70:NO)、さらに、面積合計値と異常診断基準値との比較によって異常診断が行われる(S72)。面積合計値がROM7の設定値記憶エリア72に記憶された異常診断基準値よりも小さい場合(S72:YES)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常があると診断されてメインルーチンに戻る(S76)。しかし面積合計値が異常診断基準値以上であれば(S72:NO)、全領域空燃比センサ1の出力の応答性に異常がなく正常であると診断されてメインルーチンに戻る(S75)。なお、S70において実空燃比移行回数と基準移行回数とを比較し、さらに、S72において、面積合計値を異常診断基準値と比較して、ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断(判定)する処理が、本発明の請求項5における「異常診断工程」に相当し、この処理を実行するCPU6が、本発明の請求項11における「異常診断手段」に相当する。
ここで、図11に示すように、全領域空燃比センサ1が正常な状態にあり、空燃比実測値が目標空燃比の反転に良好に追従して変化している場合、空燃比実測値がリーン側とリッチ側とで交互に変動する機会が多くなるため、偏差も比較的大きな値を取る機会が多くなるので、診断期間中における面積合計値は比較的大きな値となる。一方、図12に示すように、全領域空燃比センサ1が異常状態にあり、空燃比実測値が目標空燃比の反転に良好に追従できず遅延が生じている場合、目標空燃比の変動に対し空燃比実測値は比較的緩やかに変動するため、偏差は比較的大きな値を取る機会が少なくなり、診断期間中における面積合計値は比較的小さい値となる。異常診断基準値は両者を区別可能な値に設定されており、図10のS72では、これをしきい値とした異常判定フラグの値の決定が行われる。異常判定フラグの値はCPU6により実行される他のプラグラムにおいて繰り返し参照されており、参照時に1が記憶されていれば、例えば運転者への報知等が行われるのである。このように、異常診断プログラムでは、診断期間中に求めた実空燃比移行回数が基準移行回数以上となり、且つ、診断期間中に求めた面積合計値が異常診断基準値以上となった場合に、初めて、全領域空燃比センサ1が正常状態にあると診断することで、異常診断の精度をより高めることができる。
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、応答遅れ診断処理は10msec毎に繰り返し実行されるようにしたが、必ずしも処理時間間隔を10msecに限定するものではなく、任意に設定可能である。また、前述したように、センサ駆動回路部3をECU5の一回路部として構成してもよい。あるいは、センサ駆動回路部3にマイクロコンピュータを搭載し、そのマイクロコンピュータによって異常診断プログラムを実行できるようにしてもよい。
また、診断期間が決定される基準反転回数を5回としたが、これに限らず、1回でも2回でも、あるいは6回以上でもよい。また、基準移行回数についても3回に限るものではなく、基準反転回数にあわせて任意に設定可能であり、ガスセンサが正常な状態と異常が生じた状態とを区別可能な回数を設定すればよい。また、目標空燃比反転回数の計数を目標空燃比がリッチ側からリーン側に移行したタイミングに行ったが、リーン側からリッチ側に反転したタイミングに行ってもよい。同様に、実空燃比移行回数の計数を排気ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に移行したタイミングに行ったが、リーン側からリッチ側に移行したタイミングに行ってもよい。さらに、本実施の形態では、イグニッションキーがONされる毎に1回だけ、ガスセンサの応答遅れ診断処理を行う構成としたが、診断回数はこれに限定されず、イグニッションキーがONされてOFFされるまでの間繰り返しガスセンサの応答遅れ診断処理を行うようにしてもよい。
また、S31およびS35で空燃比実測値と実空燃比中央値との比較を行う際に、ノイズの影響等により全領域空燃比センサ1の出力値が小刻みに上下した場合を考慮して、実空燃比中央値からノイズの取り得る範囲の最大値を差し引いた値を求め、これを空燃比実測値と比較してもよい。あるいは予めノイズの影響を考慮した実空燃比中央値を設定してもよい。
また、初期化条件フラグや運転パラメータ条件フラグは異常診断プログラムとは異なる他のプログラムにより値が管理されるとしたが、異常診断プログラムが他のプログラムからそれらのフラグの値(またはそれに相当する出力)を取得してもよい。あるいは、異常診断プログラムがそれらの条件の成立の有無を確認する処理を有してもよい。
また、第2の実施の形態では、診断期間を複数回繰り返して行い、各診断期間に得られた実空燃比移行回数を加算して実空燃比積算移行回数を求め、これを基準移行回数と比較することで異常診断を行ったが、各診断期間が終了する毎に実空燃比移行回数と基準移行回数とを比較してその都度異常診断を行ってもよい。具体的には図9に示すフローチャートにおいて、S51の後のS52の処理を削除し、図6のS70の判断処理を行ってS75またはS76に分岐し、その後はS53に接続する。そしてS65の処理の後はメインルーチンに戻るようにする。このようにすれば診断期間の度にガスセンサの異常診断を行え、一度でも異常状態にあると診断(判定)されれば異常判定フラグが1となるので、ガスセンサが正常な状態にあると診断(判定)された場合の信頼性を高めることができる。
また、第2の実施の形態で行った実空燃比移行積算回数に基づく異常診断に加え、第3の実施の形態で空燃比実測値と実空燃比なまし値との差分(偏差)から求めた面積合計値を、複数回繰り返される診断期間毎に加算した面積積算値に基づいて異常診断を行って、異常診断の精度をさらに高めてもよい。例えば図13に示す異常診断プログラムの応答遅れ診断処理の変形例のフローチャートのように、図6に示した第1の実施の形態の応答遅れ診断処理に対し、図9に示した第2の実施の形態と同様のS51〜S58の処理を追加し、S70の処理をS71の処理に置き換える。さらに、図10に示した第3の実施の形態と同様のS43,S47,S62,S72,S77,S78の処理を追加する。そして、新たにS53とS57の処理の間に、診断期間が終了する毎にその診断期間中に求めた面積合計値を面積積算値に加算するS55の処理と、次の診断期間において新たな面積合計値を求めるため面積合計値をリセットするS56の処理とを追加する。また、S72の処理に置き換え、S71で実空燃比積算移行回数が基準移行回数より少ない場合に面積積算値と異常診断基準値とを比較し、面積積算値が異常診断基準値以上であれば正常と診断(判定)し(S73:NO,S75)、面積積算値が異常診断基準値よりも小さければ異常と診断(判定)するS73の処理を行うとよい。
このようにすれば、第2の実施の形態のように診断期間を繰り返し実施すると共に、各診断期間において、第3の実施の形態のように空燃比実測値と実空燃比なまし値との偏差(差分)を合計した面積合計値を求めつつ、それらを加算した面積積算値を、実空燃比積算移行回数を求める工程と同様に求めることができる。そして、各診断期間中に求めた実空燃比移行回数を合計した実空燃比積算移行回数が基準移行回数以上となり、且つ、各診断期間中に求めた面積合計値を合計した面積積算値が異常診断基準値以上となった場合に、初めて、全領域空燃比センサ1が正常状態にあると診断することで、異常診断の精度をさらに高めることができる。
ECU5と全領域空燃比センサ1との電気的な構成を説明するためのブロック図である。 ROM7の記憶エリアの構成を示す概念図である。 RAM8の記憶エリアの構成を示す概念図である。 異常診断プログラムのメインルーチンのフローチャートである。 第1の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。 第1の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。 ガスセンサが異常状態にない場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従して変化する様子の一例を示すグラフである。 ガスセンサが異常状態にある場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従できず遅延して変化する様子の一例を示すグラフである。 第2の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。 第3の実施の形態に係る異常診断プログラムの応答遅れ診断処理のフローチャートである。 ガスセンサが異常状態にない場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従して変化する様子の一例を示すグラフである。 ガスセンサが異常状態にある場合において、空燃比実測値が目標空燃比の反転に追従できず遅延して変化する様子の一例を示すグラフである。 異常診断プログラムの応答遅れ診断処理の変形例のフローチャートである。
符号の説明
1 全領域空燃比センサ
3 センサ駆動回路部
4 センサユニット
5 ECU
6 CPU
7 ROM
8 RAM
10 センサ素子

Claims (12)

  1. 内燃機関から排出される排気ガスに晒されたガスセンサの出力する当該排気ガス中の特定ガス成分の濃度に応じた検出信号に基づいて、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するためのガスセンサの異常診断方法であって、
    内燃機関に供給される混合気の目標空燃比が特定空燃比を境界にリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に反転した反転回数の計数が行われる目標空燃比反転回数計数工程と、
    前記反転回数の計数が開始されてから予め定められた複数回の回数に達するまでの期間である診断期間において、一定のタイミング毎に前記ガスセンサの前記検出信号が取得される検出信号取得工程と、
    前記診断期間において、前記検出信号がリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に移行した移行回数の計数が行われる移行回数計数工程と、
    前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断する異常診断工程と
    を有することを特徴とするガスセンサの異常診断方法。
  2. 前記異常診断工程では、前記移行回数と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの異常診断方法。
  3. 前記異常診断工程は、前記診断期間における前記移行回数の算出が複数回の当該診断期間に対し繰り返し行われる繰り返し計数工程を有し、
    前記複数回の診断期間に対応して得られた前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの異常診断方法。
  4. 前記異常診断工程は、前記繰り返し計数工程により得られた複数回分の前記移行回数をすべて合計した移行回数合計値が算出される移行回数合計値算出工程を有し、
    前記移行回数合計値と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサの異常診断方法。
  5. 前記診断期間において、取得された前記検出信号に、予め定められたなまし係数を用いたなまし演算を適用してなまし信号が算出されるなまし信号算出工程と、
    現在取得された検出信号と現在算出されたなまし信号との偏差が算出される偏差算出工程と
    を有し、
    前記異常診断工程では、前記移行回数に加え、前記偏差に基づいて前記ガスセンサが異常状態にあるか否かが診断されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガスセンサの異常診断方法。
  6. 前記ガスセンサは、前記排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する酸素センサであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサの異常診断方法。
  7. 内燃機関から排出される排気ガスに晒されたガスセンサの出力する当該排気ガス中の特定ガス成分の濃度に応じた検出信号に基づいて、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断するためのガスセンサの異常診断装置であって、
    内燃機関に供給される混合気の目標空燃比が特定空燃比を境界にリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に反転した反転回数を計数する目標空燃比反転回数計数手段と、
    前記反転回数の計数が開始されてから予め定められた複数回の回数に達するまでの期間である診断期間において、一定のタイミング毎に前記ガスセンサの前記検出信号を取得する検出信号取得手段と、
    前記診断期間において、前記検出信号がリッチ側からリーン側またはリーン側からリッチ側に移行した移行回数を計数する移行回数計数手段と、
    前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断する異常診断手段と
    を備えたことを特徴とするガスセンサの異常診断装置。
  8. 前記異常診断手段は、前記移行回数と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする請求項7に記載のガスセンサの異常診断装置。
  9. 前記異常診断手段は、前記診断期間における前記移行回数の算出を複数回の当該診断期間に対し繰り返し行う繰り返し計数手段を備え、
    前記複数回の診断期間に対応して得られた前記移行回数に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする請求項7に記載のガスセンサの異常診断装置。
  10. 前記異常診断手段は、前記繰り返し計数手段により得られた複数回分の前記移行回数をすべて合計した移行回数合計値を算出する移行回数合計値算出手段を備え、
    前記移行回数合計値と予め定められたしきい値との比較結果に基づき、前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする請求項9に記載のガスセンサの異常診断装置。
  11. 前記診断期間において、取得された前記検出信号に、予め定められたなまし係数を用いたなまし演算を適用してなまし信号を算出するなまし信号算出手段と、
    現在取得された検出信号と現在算出されたなまし信号との偏差を算出する偏差算出手段と
    を備え、
    前記異常診断手段は、前記移行回数に加え、前記偏差に基づいて前記ガスセンサが異常状態にあるか否かを診断することを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載のガスセンサの異常診断装置。
  12. 前記ガスセンサは、前記排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに検出信号の出力値が変化する酸素センサであることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載のガスセンサの異常診断装置。
JP2007040914A 2007-02-21 2007-02-21 ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置 Active JP4802115B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007040914A JP4802115B2 (ja) 2007-02-21 2007-02-21 ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007040914A JP4802115B2 (ja) 2007-02-21 2007-02-21 ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008203140A JP2008203140A (ja) 2008-09-04
JP4802115B2 true JP4802115B2 (ja) 2011-10-26

Family

ID=39780809

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007040914A Active JP4802115B2 (ja) 2007-02-21 2007-02-21 ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4802115B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8505370B2 (en) 2010-11-22 2013-08-13 Toyota Motor Engineering & Manufacturing Norh America, Inc. Method and system to diagnose exhaust gas sensor deterioration
JP7529555B2 (ja) 2020-12-16 2024-08-06 株式会社ジェイテクトサーモシステム センサ劣化診断装置、熱処理装置、センサ劣化診断方法、および、プログラム
CN115306526B (zh) * 2022-08-24 2024-05-31 联合汽车电子有限公司 一种检测信息处理方法、装置、介质、传感器及ems系统

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61196149A (ja) * 1985-02-27 1986-08-30 Fuji Heavy Ind Ltd O2センサ劣化警報装置
JPH10169494A (ja) * 1996-12-11 1998-06-23 Unisia Jecs Corp 排気浄化触媒の診断装置及び酸素センサの異常診断装置
JP2006336591A (ja) * 2005-06-03 2006-12-14 Toyota Motor Corp 酸素センサの異常検出装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008203140A (ja) 2008-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4802116B2 (ja) ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置
JP4874918B2 (ja) ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置
EP1961942B1 (en) Diagnostic method and control apparatus for gas sensor
JP5021697B2 (ja) ガス濃度湿度検出装置
JP5438053B2 (ja) センサ制御装置、センサ制御システムおよびセンサ制御方法
US7636624B2 (en) Diagnostic method and control apparatus for gas sensor
JPH073403B2 (ja) 酸素濃度センサの異常検出方法
JPH079417B2 (ja) 酸素濃度センサの異常検出方法
JPH073404B2 (ja) 酸素濃度センサの異常検出方法
JP4802115B2 (ja) ガスセンサの異常診断方法、ガスセンサの異常診断装置
JP4885804B2 (ja) ガスセンサの異常診断方法、およびガスセンサ制御装置
JPH073405B2 (ja) 酸素濃度センサの異常検出方法
JP4874894B2 (ja) ガスセンサの異常診断方法、および、ガスセンサ制御装置
US9769877B2 (en) Heater control apparatus for gas sensor
JP2020085489A (ja) センサ制御装置およびセンサ制御方法
JP4960314B2 (ja) ガスセンサのむだ時間遅れ劣化診断方法、ガスセンサのむだ時間遅れ劣化診断装置
JP4580115B2 (ja) ガス濃度センサの異常診断方法
JP6587815B2 (ja) センサ制御装置およびセンサ制御システム
JP6805072B2 (ja) ガス濃度検出装置
JP3869629B2 (ja) 空燃比センサの活性判定装置
JPH10185857A (ja) 全領域空燃比センサの劣化状態検出方法及び装置
JP5788834B2 (ja) ガスセンサ制御装置
JP2001317400A (ja) 空燃比センサの活性判定装置
JP2020003456A (ja) 酸素センサの制御装置及び酸素センサの制御方法
JP2018128353A (ja) ガスセンサ制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100112

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110713

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110719

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110808

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140812

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4802115

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250