JP4795282B2 - 加工条件探索装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、加工条件、即ち、制御パラメータの組み合わせと要求仕様の間の関係を網羅的に設計することは簡単ではなく、その結果、得られる加工条件は最適な場合もあるがそうでない場合も出てきてしまうという問題点があった。つまり、加工機の加工特性を事前の実験で取得するにあたり、制御パラメータの組み合わせの数が非常に多く、全ての加工条件による実験を実施することはコストと時間を要することに起因する。このため、要求仕様に対し事前に網羅的に最適な加工条件を検索できるシステムを設計することは困難である。
更に、加工条件と加工結果の関係を表す加工特性モデルを見出す技術も存在するが、モデルの利用方法としては、加工中に計測したデータから加工特性モデルを用いて加工状態を推測しサーボ送りに関する一つの制御パラメータを変更するために用いているのみで、複数の制御パラメータからなる加工条件を選択するものではない。
図1は、この発明の実施の形態1による加工条件探索装置を示す構成図である。
図示の装置は、加工機1、最適加工条件発生部2、加工特性モデル部3、実加工結果保持部4、実験加工条件発生部5を備えている。
加工機1は、本発明の対象とする加工プロセスを実行する産業用装置であり、例えば、金属の塊から何らかの形状を除去もしくは付加もしくは変形し、最終的に所望する形状を得て製品を作るためのものである。このような加工機1としては、切削加工機、放電加工機、レーザ加工機、電子ビーム加工機、プラズマ加工機、電解加工機、鍛造機、圧延機、溶接機、表面処理機等が該当する。尚、以下の実施の形態では、加工機1がワイヤカット放電加工機の場合について説明する。
図示のように、加工特性モデル部3には、加工条件を引数とする関数が3つ備えられている。加工条件を探索する段階においては、これらの関数により、加工速度、面粗さ、真直度、ワイヤ断線の発生の有無による加工完了・中断が推測できる。各関数は、別途定められる動作パラメータにより上記の入出力関係を変化させることができる。この動作パラメータの決定は、実加工結果保持部4に蓄積保持されているデータを処理することで行われる。それは、例えば重回帰分析、サポートベクターマシン、サポートベクター回帰、カーネル回帰、ベイズポイントマシン、ベイズ推定、最尤推定、応答曲面、ラジアスベイシスファンクションネットワーク、ニューラルネットワーク、といった関数モデルおよびパラメータ決定アルゴリズムの組み合わせを用いることで行われる。
図3に示す通り、実加工結果1件のデータについて、時刻、場所に始まる複数の項目(フィールド)の集合として保持し、実加工結果データの集合をテーブルで表し、項目のID番号で他のテーブルのデータを結合している。この実加工結果保持部4に保持されたデータは先に述べた加工特性モデル部3のモデルの形式およびモデル形式のパラメータを決定する際に参照される。
図4は、各部のデータの流れを示す説明図である。
また、図5は、各部の動作を示すフローチャートである。
実験加工条件発生部5は、先ず、複数の加工条件をグローバル探索加工条件として発生させる(図5におけるステップST1)。複数の加工条件とは例えば図6に示すごとく、7種類の制御パラメータについて、それぞれ2つのレベルに変化させた場合の、総計2の7乗通り、即ち、128通りの中から8通りのみを選び出して実験する場合の、各制御パラメータの組み合わせであり、この加工条件で加工実験を実施する。これは、いわゆるL8型直交表を用いて実験を行うものである。尚、L8に限らず、L4、L16、L32、L64、L9、L27、L81、L243、L12、L18、L36、L72などを使ってもよく、あるいは、多元配置、ラテン方格、グレコラテン方格、一様計画、D最適、G最適、A最適などの最適計画、応答曲面計画における複合計画、Box and Behnken計画、あるいはまったくのランダムな計画などを適宜用いる。
図7(a)に示すように、加工速度が計測され、全ての加工条件でワイヤ断線が発生していなかったとする(通常は加工速度が高いとワイヤ断線が発生しやすくなると言われている)。このときの加工速度に関する加工特性モデルを重回帰分析でパラメータを決定すると、
(推定加工速度)=(制御パラメータ1)−2×(制御パラメータ2)+3×(制御パラメータ3)制御パラメータ4)+1.8×(制御パラメータ5)−0.5×(制御パラメータ6)+(制御パラメータ7)
とモデルをたてることができる。
先ず、実験加工条件発生部5から、加工条件が出力されると、図示しない制御装置は、その加工条件を加工機1に送信する(ステップST11)。また、制御装置はNCプログラムを送信する(ステップST12)と共に、加工開始指示を行う(ステップST13)。加工機1では、送信された加工条件を受信し(ステップST21)、NCプログラムを受信すると(ステップST22)、加工開始指示待ちを行い、制御装置からの加工開始指示を受信すると(ステップST23)、加工を開始する(ステップST24)。
即ち、900aは上述した加工実験の試行による加工条件の探索動作を示し、900bは最適加工条件の検索動作を示している。尚、図中の加工特性モデル部3や実加工結果保持部4は同様の構成を示している。また、最適加工条件の検索動作900bでは、加工特性モデル部3は、最適加工条件発生部2から与えられた加工条件の中で、加工条件の探索動作900aで更新した加工特性モデルに基づいて最適条件を出力し、最適加工条件発生部2は、これを加工機1に出力する。
実施の形態2では、上記実施の形態1で説明した「ある種の評価関数」として、次のようなものを考える。
図10に示すように、白抜きの丸で示されるような加工速度の実験値(実加工速度)が得られているとする。そのとき、加工特性モデルを建てて、加工速度の推定値を得る。図10中の実線にこれを示す。同時に推定値が分散して取りうる値の上限と下限を加工特性モデルより得る。図10中の破線にこれを示す。尚、図10の横軸は加工条件、縦軸はその加工条件により得られる加工速度である。
図10においては、加工特性モデルとして、実測値の変則的な移動平均
Y=(Y(i−1)+Y(i)+Y(i+1))/3
を用いている。分散も同様、前後1つずつのサンプリング点を用いている。
加工条件x、加工速度yとするとき、加工速度の加工特性モデルがパラメータθを持つ関数fで表されているとする。
y=f(y|x,θ)
θは実験により得られたデータDにより、p(θ|D)なる確率分布で推定できるとする。
但し、
p(θ|D)=p(D|θ)p(θ)/∫p(D|θ)p(θ)dθ
である(ベイズの定理)。
q(y|x,D)=∫p(y|x,θ)p(θ|D)dθ
とすると、このqは加工速度の推定値の確率分布となる。
結局、
y=∫Y・q(Y|x,D)dY
と推測され(平均値)、そのときの分散は、
σ2=∫(Y−y)・q(Y|x,D)dY
と推測できる。これにより、q(y|x,D)なる確率分布を評価関数として用いることにして、q(y|x,D)が平均的に同じ値になるようなDを実験により得ることにすればよい。
本実施の形態では、加工不能に陥る加工条件についての加工特性モデルを、探索実験を実施することで作成する探索アルゴリズムについて説明する。
例えば、ワイヤ放電加工機においては、加工に用いるワイヤの径、材質、ワークの材質と形状が決められたとして、加工条件の選び方によってはワイヤが断線してしまい加工不能に陥ることがある。あるいは、切削加工機においては、先端工具が破損して加工不能に陥ることがある。加工不能に陥る原因はいくつかあるが、加工が行われる間隙への加工エネルギー投入過多が主因である。言葉を返せば加工エネルギー量として加工不能に陥るより少し小さい値を選択すれば加工速度が速くなるので、このような値を与える加工条件を最適な加工条件として選択することができる。
図11は、パラメータX1とX2による加工結果が良かったか、加工不能に陥ったかを表した説明図である。この例では、各パラメータは離散的な値をとり、かつ最小値、最大値の制限があるので、加工条件としての組み合わせは図11の点線の交わる格子点のいずれかを選択することになる。
このように加工の良否を与える加工条件が何点か得られているとき、図12に示すような実線(式(1)で表される)を所定の方法で定めることで、未だ実験していない加工条件を含めて、加工の良否を推定する加工特性モデルを得る。つまり、この実線の白丸側の格子点の加工条件は全て良い加工条件で、実線の黒丸側は全て不良な加工条件であると推定するのである。
実線の方程式を定める所定の方法とは、例えば、各実験点から実線に降ろした法線の長さを各実験点から実線への距離と定義し、全ての実験点からの距離の和が最小になるように実線の方程式の係数を選択する方法である。あるいはサポートベクターマシン(http://www.kernel-machines.org/)の考え方にあるマージン(実験点からの距離)が最大になるように実線の方程式の係数を定める方法である。以下、実線のことを識別境界と呼ぶことにする。
そして、全ての候補について、加工特性モデル部3は次のことを計算する。あるi番目の候補が対応する加工条件で加工実験を行ったら良い加工であることが分かったと仮定して識別境界を再計算する。再計算は先に述べた所定の方式による。この結果、新たな識別境界候補として下式(2)を得る。
先ず、実験加工条件発生部5より加工機1に数点の加工条件を与えて、初期加工実験を行い(ステップST31)、図11のような結果を得る。このような結果は実加工結果保持部4に保持され、加工特性モデル部3はこの結果に基づいて、図12に示すような識別境界を決定する(ステップST32)。そして、図13中の星印で示すような格子点の候補を発生させ(ステップST33)、ステップST34において、まだ実験していない点が残っている場合は、全ての実験点の候補について式(4)に示すようなDiを計算する(ステップST35)。そして、全てのDiが一定値以下であるかを判定し(ステップST36)、この条件を満たさなかった場合、実験加工条件発生部5は、最大のDiを与えるiを選択してこれを次の実験点とする(ステップST37)。次に、ステップST37で決定した実験点で実際に実験を行って加工結果を取得し、実加工結果保持部4に保持する(ステップST38)。その後はステップST32に戻り、以降、この手順を繰り返していく。
尚、上記の説明では、式(4)を用いてDiを決定したが、下式(5)または(6)を用いても同様の結果を得ることができる。
図17は、実施の形態4による加工条件探索装置の構成図である。
実施の形態4は、複数の加工機1−1〜1−nが、パーソナルコンピュータ100とネットワーク101を介して接続された例である。パーソナルコンピュータ100には、最適加工条件発生部2、加工特性モデル部3、実加工結果保持部4、実験加工条件発生部5と共に、計量手段6が設けられている。ここで、最適加工条件発生部2〜実験加工条件発生部5は、加工機1−1〜1−nに対して並列的に処理を行うよう構成されている以外の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。計量手段6は、それぞれの加工機1−1〜1−nを用いて加工実験を行った場合、加工機1−1〜1−n毎のデータ量を計量する手段である。また、計量手段6は、加工実験結果をいずれかの加工機1−1〜1−nに送信した場合は、その加工実験結果を得た加工機1−1〜1−nの情報とデータ量を通知する機能を有している。
実施の形態5は、加工特性モデルとして、加工の進行状況を示す加工安定度を含むようにしたものである。
例えば、加工機、特に放電加工機は、加工中に予定通りに一定のペースで加工が進行する場合と、加工が止まったり進んだり、完全に止まったり、加工の進行状況が乱れる場合がある。このような加工の進行状況を示す値を加工安定度と称することとする。
上記各実施の形態では、一定の進行ペースを保ったか否かにかかわらず加工が終了したもののみを採用していたが、本実施の形態では、加工実験中の安定度も含めて実加工結果保持部4に記録しておくことで、実験加工条件発生部5は、加工が終了しなかった場合をも含めて、全ての加工実験データを採用する。これにより、判断に用いる加工実験データの数が増えるので、最適な加工条件が発見できるまでの時間が短くなり、加工速度および安定度という2つの数値により、最適加工条件発生部2は、より詳細な方針の下での最適加工条件を選択することが可能となる。加工安定度の求め方は次の通りである。
y=f(y|x,θ)
尚、θは事前の実験により得られたデータDにより、p(θ|D)なる確率分布で推定できるとする。
但し、
p(θ|D)=p(D|θ)p(θ)/∫p(D|θ)p(θ)dθである(ベイズの定理)。
q(y|x,D)=∫p(y|x,θ)p(θ|D)dθ
とし、
y=∫Y・q(Y|x,D)dY
本実施の形態では、加工不能に陥る加工条件についての加工特性モデルを、探索実験を実施することで作成する探索アルゴリズムについて説明する。即ち、好ましくない加工状態に陥る加工条件と、そうでない加工条件を識別する識別境界を、実験を繰り返すことで正確なものにする方法について説明する。
図18は探索実験が進行しつつあるときの、ある時点での識別境界と次の探索実験点をどこに選ぶのかということを説明するための説明図である。図中、X1,X2は二つの加工条件パラメータであり、fと示した太い実線が現時点での識別境界である。このとき、次の実験点Sn+1の候補を識別境界近傍の加工条件パラメータの格子点の一つを選んだとして、その候補点を実験した結果、好ましくない結果が観測された場合には新たな識別境界gを得ることが出来ると予測される。一方、好ましい結果が観測された場合には、新たな識別境界hを得ることが出来ると予測される。これらの値は次のように表される。
ここで、ステップST31〜ステップST34及びステップST38は、実施の形態3の図15のフローチャートと同様である。即ち、ステップST31では、数点の加工条件にて初期加工実験を行う。次にステップST32にて、その時点で得られている実験結果(複数の実験点ごとの加工結果)から加工特性モデル部3は識別境界を決定する(サポートベクターマシンを用いる)。次に、ステップST33にて、実験加工条件発生部5は、ステップST32で定めた識別境界付近の格子点を次の実験候補点とする。格子点は図13に示すごとく選択する。尚、ここではこの操作を候補の発生と呼ぶことにする。既に全ての格子点を実験しつくしている場合には終了するが、そうでない場合にはステップST41に進む。ステップST41では、加工特性モデル部3により、発生した全ての候補点について、上記の面積(あるいは体積、あるいは体積に相当する量)を計算する。そして、ステップST42にて、実験加工条件発生部5は、この値が最大になる候補点を次の実験点として選択する。ステップST38にて、ステップST42にて選択された実験点を実際に加工実験し加工結果を取得する。そしてステップST32に戻り、以下これらの処理を繰り返す。
実施の形態7は、実施の形態6において示した次の候補点の選択方法の他の例について示すものである。実施の形態6では、候補を一つに選択するため、識別境界gおよびhに挟まれた領域の面積(あるいは体積、あるいは体積に相当する量)を計算し、その値が最大になる候補点を選択していたが、実施の形態7では、図20に示すように(面積についての場合のみ示すが、体積の場合でも効果は同等である)、ある候補点について、識別境界fとgの面積差Afg、識別境界fとhの面積差Afhを計算し、それらの差を計算する。このとき、全ての候補点についてこの差を計算し、その差が最も小さくなる候補点を次の実験点として選択する。尚、図中、X1,X2は二つの加工条件パラメータである。
ここで、ステップST51及びステップST52における実験点の選択方法以外は図19に示した実施の形態6の動作と同様であるため、実験点の選択についてのみ説明する。ステップST34において、まだ実験していない点があった場合、加工特性モデル部3は、全ての実験点の候補について、識別境界fとhとの面積の差Afh(Sn+1)と、識別境界fとgとの面積の差Afg(Sn+1)との差を計算する(ステップST51)。そして、この値が最小となる候補点を求め、実験加工条件発生部5はこの候補点を次の実験点として選択する(ステップST52)。
実施の形態7は、実施の形態6において示した次の候補点の選択方法の更に他の例について示すものである。実施の形態6では候補を一つに選択するため、識別境界gおよびhに挟まれた領域の面積(あるいは体積、あるいは体積に相当する量)を計算しその値が最大になる候補点を選択していたが、実施の形態8では図22に示すように(面積についての場合のみ示すが、体積の場合でも効果は同等である)、ある候補点について、fとgの面積差Afg、fとhの面積差Afhを計算し、それらの差と和を用いて、和÷(差+1.0)という値を計算する。このとき、全ての候補点についてこの値を計算し、その値が最も大きくなる候補点を次の実験点として選択する。尚、図中、X1,X2は二つの加工条件パラメータである。
また、実施の形態8において、fとhとの面積の差をAfh(Sn+1)、fとgとの面積の差をAfg(Sn+1)とした場合、Sn+1は次のように表される。
ここで、ステップST61及びステップST62における実験点の選択方法以外は図19に示した実施の形態6の動作と同様であるため、実験点の選択についてのみ説明する。ステップST34において、まだ実験していない点があった場合、加工特性モデル部3は、全ての実験点の候補についてAfh(Sn+1)とAfg(Sn+1)の和÷(差+1.0)を計算する(ステップST61)。そして、この値が最も大きくなる候補点を求め、実験加工条件発生部5はこの候補点を次の実験点として選択する(ステップST62)。
これまでの実施の形態では、加工中に発生する好ましくない状態として、主としてワイヤ放電加工機における断線現象を説明に用いてきたが、断線現象のみならず加工中に観測される様々な現象を元に好ましい状態と好ましくない状態を識別することで探索実験の繰り返しが成立する。実施の形態9ではそのような他の識別の方法を説明する。
実施の形態10は、次の実験点の候補を発生する場合に、それまでの実験点が一様に分布しているかを調べ、一様に分布していなかった場合は、まだ実験していない候補点のなかでいずれかの点をランダムに選択して実験を行うようにしたものである。
図26は、実施の形態10の加工条件探索装置の動作を示すフローチャートであり、これは、実施の形態3、6、7、8のステップST33の動作の詳細を示している。
これら実施の形態において、ステップST33では、候補点として現時点での識別境界の付近の格子点を候補として発生するとしていたが、本実施の形態においてはステップST33での手順をより複雑なものに拡張している。即ち、これまでの実験点が実験可能な空間内に一様に分布しているかどうかをカイ二乗検定により検定する(ステップST331)。検定の結果、一様であるという仮説が棄却された場合にQの値に1を代入し、棄却されない場合にはQに−1を代入する。ステップST332において、Q<0であった場合(即ち、実験点が一様に分布していると判断された場合)には、他の実施の形態と同様に、現時点での識別境界の付近の格子点を候補として発生し(ステップST333)、ステップST34に進む。
実施の形態11は、加工中に観測される様々な現象を元に好ましい状態と好ましくない状態を識別する判定手法の変更を実行する例を示している。
例えば、実施の形態9では、加工中に観測される様々な現象を元に好ましい状態と好ましくない状態を識別することで探索実験の繰り返しを行う例を示したが、実施の形態11では、加工中に観測される様々な現象を元に好ましい状態と好ましくない状態を識別する判定手法の変更を実行する。
例えば実施の形態3で説明したように、候補点の発生後、実験点が一つに定められ(ステップST71)、この実験点によって実験加工が行われ(ステップST72)、実験加工結果が得られる(ステップST73)。更に、実験加工結果によって識別境界を決定し(ステップST74)、この識別境界に基づいて最適加工条件を選択して(ステップST75)、実加工を実施する(ステップST76)。あるいは、ステップST75の後、ステップST71に戻る。
これまでの実施の形態では、加工中に発生する好ましくない状態として、主としてワイヤ放電加工機におけるワイヤ断線領域を高速に正確化する例を説明してきたが、実施の形態12では、加工速度の高い加工条件を探索する構成について説明する。
尚、本実施の形態では、正確化の進み具合の数値化として、サポートベクターマシンで言うところのマージンが1.0未満となる格子点の数を用いたが、1.0以外の敷居値であってももちろん良い。また、正確化の進み具合の数値として、実施の形態6、7、8などで説明した候補点の評価値の最大値を用いても良い。このような場合であっても、やはり探索が進行するにつれ、候補点の評価値は徐々に小さくなっていき、最終的にゼロになる。これらの方法を用いても同様の効果が得られる。
実施の形態1に示したように、実験の開始時に、直交表あるいは、多元配置、ラテン方格、グレコラテン方格、一様計画、D最適、G最適、A最適などの最適計画、応答曲面計画における複合計画、Box and Behnken計画、あるいはまったくのランダムな計画などを適宜用いることとしていた。これらは実験対象がどのような応答をもつか定かではないときに、出来るだけ少ない実験数でより正確な応答の全容がわかることを期待して実験の計画を立てる方法である。一方、実験する対象の応答が、経験や過去の実験により、事前にある程度はわかっていることもある。そのような場合には前記実験計画手法のみに頼らず、実験点を事前知識に基づいて追加すればよい。
また、事前知識に基づいて加工実験点を与えるに当たり、各実験点を個別に指定する方法や、数式を用いてある範囲内や選択する規則を指定する方法がある。
実施の形態6、実施の形態7、実施の形態8において、次の実験点候補を発生した後、すべての実験点候補についてある数式に基づいてそれぞれの実験点候補の評価値を計算することにしていた。実施の形態14では、次の実験点候補を発生したのち、これまでの実験点により得られた加工速度を用いて加工速度予測モデル(加工条件を引数とする加工速度回帰式)を構築し、この加工速度予測モデルを用いてすべての実験点候補により得られるであろう加工速度の予測値を計算する。そして、この予測値をキーにして実験点候補を降順にソートし、上位100点のみを次の実験点候補とする。すなわち高い加工速度が得られることが予測される実験点候補100点について、ある数式に基づいてそれぞれの実験点候補の評価値を計算することにする。図は省略する。
実施の形態6、実施の形態7、実施の形態8において、例えばサポートベクターマシンを用いて、好ましくない結果がもたらされた加工条件と好ましい結果がもたらされた加工条件を識別する境界を得ることにしていた。サポートベクターマシンによるモデルはいくつかのパラメータを調整することが出来、簡単に言えば識別境界の表現力を調節できる。例えば複雑な識別境界を描きたいときにはあるパラメータの値を大きくすれば良い。しかしその際の欠点としてサポートベクターマシンの数式を処理するのに要する時間が増大することがある。そのパラメータの値を小さくすれば計算時間は短くなるが、すべての実験点の結果を正しく識別できる識別境界を作れないことが起きる。
Claims (5)
- 実験加工条件を発生する実験加工条件発生部と、
前記実験加工条件発生部から出力された加工条件で加工を行い、実加工結果を出力する加工機と、
前記加工機から出力された実加工結果に基づいて、所定の加工条件が入力された場合の最適加工条件である加工特性モデルを生成する加工特性モデル部とを備え、
前記加工特性モデル部は、加工条件の探索実験を繰り返している時、ある時点で得られている実加工結果に基づいて、加工特性を表現するモデルを更新し、更新された加工特性モデルについて、加工条件を引数とする評価関数を備え、
前記実験加工条件発生部は、前記評価関数を用いて、当該評価関数の値が最大になる加工条件を求め、その加工条件を次の実験点として選択することを特徴とする加工条件探索装置。 - 加工特性モデル部は、得られた実加工結果に基づいて、好ましい結果と好ましくない結果が観測される識別境界fを求めると共に、当該識別境界fに基づいて、ある条件で加工を行った場合に、好ましい結果が観測される新たな識別境界gと、好ましくない結果が観測される新たな識別境界hとで挟まれる領域が最大となる条件を求め、実験加工条件発生部は、前記条件を次の実験点として選択することを特徴とする請求項1記載の加工条件探索装置。
- 加工特性モデル部は、得られた実加工結果に基づいて、好ましい結果と好ましくない結果が観測される識別境界fを求めると共に、当該識別境界fに基づいて、ある条件で加工を行った場合に、好ましい結果が観測される新たな識別境界hと前記識別境界fとで挟まれる領域と、好ましくない結果が観測される新たな識別境界gと前記識別境界fとで挟まれる領域の差が最小となる条件を求め、実験加工条件発生部は、前記条件を次の実験点として選択することを特徴とする請求項1記載の加工条件探索装置。
- 加工特性モデル部は、得られた実加工結果に基づいて、好ましい結果と好ましくない結果が観測される識別境界fを求めると共に、当該識別境界fに基づいて、ある条件で加工を行った場合に、好ましい結果が観測される新たな識別境界hと前記識別境界fとで挟まれる領域と、好ましくない結果が観測される新たな識別境界gと前記識別境界fとで挟まれる領域との和÷差の値が最大となる条件を求め、実験加工条件発生部は、前記条件を次の実験点として選択することを特徴とする請求項1記載の加工条件探索装置。
- 加工特性モデル部は、次の実験点の候補を発生する場合、それまでの実験点が一様に分布しているかを判定し、一様であった場合は、現在の識別境界付近の値を次の実験点の候補として選択し、一様でないと判定した場合は、まだ実験していない値をランダムに次の実験点の候補として選択することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の加工条件探索装置。
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