JP4787377B1 - ビス除去用のねじ回し工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビスの損傷凹部がすり鉢状になった状態であっても、操作エッジを損傷凹部の傾斜面に打込んで食込ませ、錆付いたビスを確実に取外せるねじ回し工具を提供する。
【解決手段】ドライバー軸2の先端に、リブ状突起11と断面V字状の谷溝12とを交互に形成する。各リブ状突起11は、谷溝12の第1谷面13および第2谷面14と、リブ周面15とで断面台形状に形成する。第1谷面13とリブ周面15の稜線部分に、損傷凹部7に食込む操作エッジ17を形成する。操作エッジ17をドライバー軸2の中心軸線に対して食込み角θだけ傾斜させて、ビスを緩め操作するときの操作エッジ17の先端の食込み始端19を、操作エッジ17の終端20よりも緩み回転方向の上手側に位置させる。使用時には、ドライバー軸2をその中心軸方向に叩打して、リブ状突起11に設けた操作エッジ17をビスの操作頭部5の損傷凹部7に食込ませる。
【選択図】図1

Description

本発明は、手動ドライバーや電動ドライバーなどのねじ回し工具に関し、とくにビス頭部の操作溝が破壊されているビスを除去するのに好適なビス除去用のねじ回し工具に関する。
本出願人は、この種のねじ回し工具を先に提案している(特許文献1)。そこでは、ドライバー軸の先端に、4個のリブ状突起と4個の谷溝とを交互に形成している。リブ状突起は先端へ向かって先すぼまり状に傾斜するリブ周面と、リブ周面を間に挟む谷溝の周面とで構成されており、その一方の稜線部分にビスを緩めるための操作エッジが設けてある。操作エッジに連続するリブ周面は同エッジの逃げ面になっており、リブ状突起の突起中心軸と直交し、しかも操作エッジを通る仮想平面より内側に傾斜する状態で形成してある。このねじ回し工具によれば、4個のリブ状突起を破壊された操作溝(以下、単に損傷凹部と言う。)に係合した状態において、扇形肉壁の基端隅部に操作エッジを係合させてビスを緩めることができる。ビスを緩める過程では、傾斜するリブ周面が操作溝の外端面に接触するのを避けて、操作エッジを扇形肉壁の基端隅部に確実に係合できる。
同様のねじ回し工具は特許文献2、および特許文献3にも開示されている。特許文献2のねじ回し工具は、ドライバー軸の先端に、縦方向の凹部と四半円錐状の逃げ面とを2個ずつ交互に形成し、凹部の削り面と逃げ面とが交差する稜線部分に削りエッジを設けている。一対の削りエッジはドライバー軸の先端へ向かって下り傾斜しており、ドライバー軸の中心軸と各削りエッジが挟む角度はそれぞれ70度に設定してある。ビスを緩めるときは、各削りエッジを損傷凹部の開口周縁に押付けて食込ませ、ドライバー軸の操作トルクを削りエッジを介してビス頭部に伝える。
特許文献3のねじ回し工具は、ドライバー軸の先端周面の一個所に、横断面がL字状の溝を形成し、溝の一方の周縁稜線部分を切刃にしている。切刃の一部には部分円弧状の切欠部が形成してある。ビスを緩めるときは、切欠部より下方の切刃を損傷凹部の周囲壁に食込ませて、ドライバー軸の操作トルクを切刃と切欠部の傾斜面を介してビス頭部に伝える。
本発明に係るドライバー軸においては、すり鉢状の損傷凹部に対する操作エッジの食込みを確実化するために、操作エッジをドライバー軸の中心軸に対して傾斜させるが、これに類似する構造は特許文献4に見ることができる。そこでは、リブ状突起の稜線のねじ込み側エッジ部分をドライバー軸の中心軸に対して傾斜させている。但し、特許文献4のねじ回し工具は、ビスをドライバー軸でねじ込む際に、操作ヘッド部が操作反力を受けて操作溝から浮き離れる現象(カムアウト現象)を防止するために、ねじ込み側エッジ部分を傾斜させている。つまり、すり鉢状の損傷凹部に対する食込みを確実化するために、操作エッジをドライバー軸の中心軸に対して傾斜させる本発明のねじ回し工具とは、主旨が異なる。
再表2007−20681号公報(段落番号0038、図1、図4) 特表2003−525762号公報(段落番号0010、図2) 特許第4272608号公報(段落番号0024、0025、図1) 特許第3954323号公報(段落番号0011、図2)
特許文献1のねじ回し工具は、ビス頭部に扇形肉壁の基端部分が残っている限り、操作エッジを扇形肉壁の基端隅部に係合させてビスを緩めることができる。しかし、図3に示すように、扇形肉壁が跡形もなく削られて損傷凹部がすり鉢状になってしまうと、操作エッジを係合させることができず、ビスを除去することができなくなる。特許文献3のねじ回し工具においても同様のことが言え、損傷凹部がすり鉢状になったビスを緩めることはできない。
その点、特許文献2のねじ回し工具は、一対の削りエッジを損傷凹部の開口周縁に押し付けて食込ませるので、損傷凹部がすり鉢状に削られていたとしても、そのことを無視することができる。しかし、特許文献2のねじ回し工具は、電動ドリルの大きなトルク出力を前提として、削りエッジの食込み動作とねじ緩め動作とを同時に行うので、すり鉢状の損傷凹部の開口周縁が削りエッジで削られるだけで、ビスを緩められないことが多い。また、削りエッジの押付け力が不足すると、削りエッジが損傷凹部の開口周縁に沿って滑り移動することもある。
本発明の目的は、損傷凹部がすり鉢状に削られた状態であったとしても、操作エッジを損傷凹部の傾斜面に打込んで食込ませることができ、錆付いたビスや締結面に膠着したビスを確実に取外すことができるビス除去用のねじ回し工具を提供することにある。
本発明に係るビス除去用のねじ回し工具は、ドライバー軸2の先端に、複数個のリブ状突起11と断面V字状の谷溝12とが交互に形成されており、ドライバー軸2をその中心軸方向に叩打して、リブ状突起11に設けた操作エッジ17をビスの操作頭部5の損傷凹部7に食込ませる。各リブ状突起11は、リブ状突起11を間にして対向する谷溝12の第1谷面13および第2谷面14と、両谷面13・14の外周縁どうしを繋ぐリブ周面15とに囲まれて断面台形状に形成する(図4参照)。第1谷面13とリブ周面15とが交差する稜線部分に、損傷凹部7に食込む操作エッジ17を形成する。図1に示すように、操作エッジ17をドライバー軸2の中心軸線に対して食込み角θだけ傾斜させて、ビスを緩め操作するときの操作エッジ17の先端の食込み始端19を、操作エッジ17の終端20よりも緩み回転方向の上手側に位置させてあることを特徴とする。
各リブ状突起11の先端部分に、操作部3の先端へ向かって傾斜する先端斜面16を形成する。操作エッジ17と先端斜面16とが損傷凹部7の傾斜凹面9に同時に食込むようにする(図5参照)。
先端斜面16とリブ周面15とが交差する稜線部分に食込みエッジ18を設ける。図9に示すように、食込みエッジ18と操作エッジ17とが挟む角度を鋭角に設定して、先端斜面16が逃げ角α1の分だけ傾斜させている。
ドライバー軸2の先端面を凹面23で形成する(図10参照)。
操作部3にリブ状突起11と谷溝12とを互に5個以上ずつ形成する。
操作エッジ17の食込み角θを2度以上、15度以下に設定する。
本発明に係るねじ回し工具においては、リブ状突起11の操作エッジ17をドライバー軸2の中心軸線に対して食込み角θだけ傾斜させるようにした。このように、操作エッジ17を傾斜させると、ビスを緩め操作するとき、操作エッジ17の先端の食込み始端19を他に先行して損傷凹部7の傾斜凹面9に食込ませることができる。また、リブ状突起11を構成する第2谷面14に作用する叩打反力Rの分力F1によって、操作エッジ17および食込み始端19を、ねじ軸側へ向かって斜めにしかも螺旋状に食込ませることができる。従って、本発明のねじ回し工具によれば、損傷凹部7がすり鉢状に削られた状態であったとしても、操作エッジ17を損傷凹部7の傾斜凹面9に食込ませてビスを緩め操作することができ、錆付いたビスや締結面に膠着したビスであっても確実に取外すことができる。さらに、操作エッジ17および食込み始端19をねじ軸側へ向かって斜めにしかも螺旋状に食込ませるので、ドライバー軸2が操作反力を受けて傾斜凹面9から浮き離れるのをよく防止しながら、錆付いたビスなどの除去を的確に行うことができる。
各操作エッジ17の食込み始端19を通る仮想円の直径D2を、損傷凹部7の開口縁の仮想円の直径D1より小さく設定すると、各操作エッジ17の食込み始端19を損傷凹部7の傾斜凹面9に対してねじ軸心に沿って確実に食込ませることができる。また、操作エッジ17および食込み始端19を傾斜凹面9に食込ませた状態で、操作トルクをビスに確実に伝えることができる。因みに、削りエッジを損傷凹部の開口周縁に押付けて食込ませる特許文献2のねじ回し工具においては、食込み動作とねじ緩め動作とを同時に行うので、開口周縁が削りエッジで連続して切削されやすく、ねじ緩め方向の操作トルクをビスに確実に伝えることができない。
各リブ状突起11の先端部分に、操作部3の先端へ向かって傾斜する先端斜面16を形成すると、操作エッジ17と先端斜面16を損傷凹部7の傾斜凹面9に同時に食込ませることができる。この食込み状態におけるリブ状突起11の食込み面積S1は、図7、図8に示すように、先端斜面16を備えていないリブ状突起11の食込み面積S2に比べて格段に大きい。従って、ねじ緩め方向の操作トルクをビスに確実に伝えて、ビスの除去をより確実に行うことができる。また、リブ状突起11の食込み面積S1が大きい分だけ、食込み面に作用する単位面積あたりのねじ緩め方向の操作力を小さくできるので、食込み部分の肉壁が破壊されるのをよく防止できる。
先端斜面16のテーパー角度を、損傷凹部7の傾斜凹面9のテーパー角度より大きく設定すると、操作部3を損傷凹部7にあてがった状態において、食込み始端19を他の部位に先行して損傷凹部7の傾斜凹面9に接当させることができる。従って、ドライバー軸2を叩打する際に、食込み始端19および操作エッジ17をさらに確実に傾斜凹面9に食込ませて、緩み方向の操作トルクをビスに確実に伝えることができる。
食込みエッジ18と操作エッジ17とが挟む角度を鋭角に設定して、先端斜面16を逃げ角α1の分だけ傾斜させると、食込み始端19を鋭く尖らせて、より小さな叩打力で食込み始端19および操作エッジ17を損傷凹部7の傾斜凹面9に食込ませることができる。また、食込み始端19が傾斜凹面9に食込む過程では、先端斜面16に作用する叩打反力の分力で、食込み始端19および操作エッジ17をねじ軸側へ向かって斜めにしかも螺旋状に食込ませることができる。
ドライバー軸2の先端面を凹面23で形成すると、先端斜面16の先端縁の傾斜凹面9に対する食込みを促進でき、従って、操作エッジ17および先端斜面16が傾斜凹面9に食込んだ状態におけるリブ状突起11の食込み面積S1をさらに拡大することができる。
操作部3にリブ状突起11と谷溝12とを互に5個以上ずつ形成すると、傾斜凹面9にリブ状突起11を打込む際に、リブ状突起11に作用する叩打反力を5個所以上に分散させて小さくできる。従って、叩打されるときの強い衝撃でリブ状突起11が破壊されるのを避けて、操作部3の耐久性を向上できる。また、筋状の凹凸面からなる傾斜凹面9により多くのリブ状突起11を食込ませて、緩み方向の操作トルクをビスの操作頭部5に的確に伝えることができる。
操作エッジ17の食込み角θを2度以上、15度以下に設定するのは、食込み角θが2度未満であると、操作エッジ17を損傷凹部7に効果的に食込ませることが困難となるからである。また、食込み角θが15度を越えると、リブ状突起11の強度が低下して食込み始端19が破損しやすくなるからである。
本発明に係る操作部の詳細構造を示す正面図である。 本発明に係る手動ドライバーの正面図である。 本発明に係る操作部と損傷凹部の斜視図である。 図1におけるA−A線断面図である。 本発明に係る操作部を損傷凹部に食込ませた状態の断面図である。 本発明に係るリブ状突起の食込み作用を示す説明図である。 リブ状突起の損傷凹部に対する食込み面積を示す断面図である。 先端斜面を備えていないリブ状突起の食込み面積を示す断面図である。 先端斜面の構造を変更した別の実施例を示す斜視図である。 さらに別の実施例を示す操作部の断面図である。
(実施例)図1ないし図8は本発明に係るねじ回し工具を手動ドライバーに適用した実施例を示す。図2において手動ドライバーは、グリップ1と差換え式のドライバー軸2とで構成してある。ドライバー軸2は工具鋼を素材とする断面が六角形の棒材からなり、その先端部分に丸棒状の操作部3を備えている。図2においてグリップ1の下端には、ドライバー軸2の装着状態を保持するチャック4が設けてあり、このチャック4を図示していないばねに抗して上向きに押し込み操作することにより、ドライバー軸2をグリップ1から抜出すことができる。
図3に、操作頭部5に設けた扇形肉壁6が跡形もなく削られて、損傷凹部7がすり鉢状になった皿ビスを示している。このような筋状の凹凸面からなる損傷凹部7は、ねじ軸がさび付いている場合や、操作頭部5が締結座に膠着している場合などに形成されることが多く、とくに、駆動トルクが大きな電動ドライバーを十文字状の操作溝8にあてがって緩める際に形成されやすい。
操作部3は、ドライバー軸2を旋削して丸棒状に形成してあり、その先端(下端)にリブ状突起11と断面V字状の谷溝12とが交互に7個ずつ等間隔おきに形成してある。谷溝12は、第1谷面13と第2谷面14とを備えたV字状の溝からなり、谷溝12の溝底部分は丸められている(図4参照)。
リブ状突起11は、リブ状突起11を間にして対向する第1谷面13および第2谷面14と、両谷面13・14の外周縁どうしを繋ぐリブ周面15とに囲まれて断面台形状に形成する。リブ状突起11の先端(下端)部分に、操作部3の先端へ向かって傾斜する先端斜面16が形成してある。先端斜面16は、操作部3の先端周縁に面取り加工を施して形成されるテーパー面からなり、谷溝12の加工に先行して形成される。第1谷面13とリブ周面15とが交差する稜線部分に、ビスを緩め操作するときに損傷凹部7に食込む操作エッジ17が形成され、先端斜面16とリブ周面15とが交差する稜線部分に食込みエッジ18が形成される。操作エッジ17と食込みエッジ18との交差部分が、操作エッジ17の食込み始端19となる。
手動ドライバーでビスを緩め操作するときは、操作部3を損傷凹部7にあてがった状態で、グリップ1をドライバー軸2の中心軸方向に叩打して、リブ状突起11の操作エッジ17を操作頭部5の損傷凹部7に食込ませる。このとき、操作エッジ17を損傷凹部7に効果的に食込ませるために、図1に示すように操作エッジ17をドライバー軸2の中心軸線に対して食込み角θだけ傾斜させている。また、ビスの操作頭部5に形成された損傷凹部7の開口縁の仮想円の直径をD1とするとき(図3参照)、各操作エッジ17の食込み始端19を通る仮想円の直径D2(図4参照)を、開口縁の仮想円の直径D1より小さく設定して、各操作エッジ17の食込み始端19が損傷凹部7の傾斜凹面9に確実に食込むようにしている。食込み始端19を通る仮想円の直径D2は、操作部3の直径に一致している。
操作部3を損傷凹部7にあてがった状態において、食込み始端19が他の部位に先行して損傷凹部7の傾斜凹面9に接当させるために、図7に示すように先端斜面16のテーパー角度を、損傷凹部7の傾斜凹面9のテーパー角度より大きく設定している。傾斜凹面9のテーパー角度は、ビスの操作溝8と係合するドライバーの先端角度に概ね等しく、53〜60度前後である。
上記のように、操作エッジ17を食込み角θだけ傾斜させることにより、操作エッジ17の食込み始端19は操作エッジ17の終端20よりも、ビスを緩め操作するときの緩み回転方向の上手側に位置することになる。この実施例では、操作エッジ17の食込み角θを5度とした。食込み角θは、リブ状突起11と谷溝12の形成個数によって1度から45度の範囲内で選択することができるが、より好ましくは2度以上15度以下とする。食込み角θが2度未満であると、操作エッジ17を損傷凹部7に効果的に食込ませることが困難となり、食込み角θが15度を越えると、リブ状突起11の強度が低下して食込み始端19が破損しやすくなる。
谷溝12は、フライスカッターの回転平面をドライバー軸2の中心軸線に対して5度傾斜させ、さらにフライスカッターの送り方向線を、ドライバー軸2の中心軸を通る基準平面に対して5度上向きに傾斜させた状態で切削することにより形成してある。フライスカッターの送り方向線を5度上向きに傾斜させることにより、谷溝12の深さを先端から上方の溝終端へ向かって徐々に浅くすることができる。また、フライスカッターの回転平面を5度傾斜させることにより、操作エッジ17をドライバー軸2の中心軸線に対して5度傾斜させることができ、同時に第1谷面13と第2谷面14のそれぞれがドライバー軸2の中心軸線に対して5度傾く状態で形成される。
以上のように構成したねじ回し工具は、以下の要領でビスを除去する。まず、操作部3の先端を損傷凹部7の傾斜凹面9にあてがい、グリップ1の上面をハンマーで叩打して、図5に示すように、食込み始端19と操作エッジ17を傾斜凹面9に食込ませる。食込み始端19および操作エッジ17が傾斜凹面9に食込む際には、先端斜面16と操作部3の先端面も同時に傾斜凹面9に食込む。
このとき、リブ状突起11がドライバー軸2の中心軸線方向へ食込んだとすると、食込み始端19および操作エッジ17は、図6に想像線で示すように損傷凹部7の傾斜凹面9に食込むことになる。しかし実際には、リブ状突起11が食込む過程で、第2谷面14に叩打反力Rの分力F1が作用するため、リブ状突起11は図6に破線で示すように損傷凹部7の傾斜凹面9に食込む。つまり、食込み始端19および操作エッジ17は傾斜凹面9に対して、図1に矢印Pで示す反時計回転方向へ食込みながらドライバー軸2の中心軸線方向へ食込む。その結果、食込み始端19および操作エッジ17は、それぞれの食込み動作が合成された向き、具体的には斜め下向きへ螺旋状に食込むことになる。換言すると、リブ状突起11は叩打力と第2谷面14のくさび作用とによって、斜め下向きへ螺旋状に食込むことになる。
また、食込み始端19および操作エッジ17が損傷凹部7の傾斜凹面9に食込む場合には、図7に示すように、先端斜面16も傾斜凹面9に食込む。この食込み面積を先端斜面16が形成されていない図8のリブ状突起11と比較すると、両者のねじ軸芯方向の食込み深さaを一定とするとき、先端斜面16を備えたリブ状突起11の食込み面積S1は、先端斜面16を備えていないリブ状突起11の食込み面積S2に比べて格段に大きい。従って、リブ状突起11が第2谷面14のくさび作用によって斜め下向きへ螺旋状に食込むことと相俟って、ドライバー軸2に作用する操作トルクを7個のリブ状突起11で操作頭部5に適確に伝えて、ビスを確実に緩めることができる。
このように、操作エッジ17を食込み角θだけ傾斜させたドライバーによれば、扇形肉壁6が跡形もなく削られたすり鉢状の損傷凹部7であっても、リブ状突起11を傾斜凹面9に確実に食込ませることができ、ねじ部がさび付き、あるいは操作頭部5が膠着したビスを確実に除去できる。因みに、先端斜面16を備えていないリブ状突起11の食込み面積S2を、先端斜面16を備えたリブ状突起11の食込み面積S1に一致させる場合には、リブ状突起11をより深く打ち込む必要があり、最悪の場合に操作頭部5が破壊するおそれがある。
また、食込み始端19および操作エッジ17を傾斜凹面9の中途部に食込ませることにより、図5に示すように、操作部3の下端面と損傷凹部7の底面との間に隙間が形成されるので、損傷凹部7に異物が入り込んでいたとしても、支障なくビスを除去できる。リブ状突起11を7個設けるので、ビスを緩めるときの操作トルクを7個所に分散させることができ、従って、食込み肉壁に作用する力を小さくして、食込み肉壁が削られてしまうのを回避できる。
図9は、操作部3の一部を変更したドライバー軸2の別の実施例を示す。そこでは、先端斜面16を凹面で形成し、さらに食込みエッジ18と操作エッジ17とが挟む角度を鋭角に設定して、先端斜面16を逃げ角α1の分だけ傾斜させた。このように、先端斜面16を食込み始端19の逃げ面として形成することにより、食込み始端19を鋭く尖らせて、より小さな叩打力で食込み始端19および操作エッジ17を損傷凹部7の傾斜凹面9に食込ませることができる。また、傾斜凹面9に食込む過程では、先端斜面16に叩打反力の分力が作用するため、食込み始端19および操作エッジ17は、斜め下向きへ螺旋状に食込むことになる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
図10は、ドライバー軸2の先端面を凹面23で形成して、先端斜面16の先端縁(下端縁)の傾斜凹面9に対する食込みを容易化した。このように、先端斜面16の先端縁の食込みを促進することにより、操作エッジ17および先端斜面16が傾斜凹面9に食込んだ状態におけるリブ状突起11の食込み面積S1をさらに拡大して、ビスの除去をさらに確実に行うことができる。
上記の実施例では、操作部3にリブ状突起11と谷溝12を7個ずつ設けたが、リブ状突起11と谷溝12とは少なくとも2個ずつ設けてあればよく、より好ましくは5個以上設けることが好ましい。本発明は手動ドライバー以外に、電動ドライバー用のドライバービットに適用することができ、その場合にはドライバービットを傾斜凹面9に打込んで食込ませたのち、ドライバービットを電動ドライバーに装着してビスを緩め操作するとよい。
2 ドライバー軸
3 操作部
5 ビスの操作頭部
7 ビスの損傷凹部
9 損傷凹部の傾斜凹面
11 リブ状突起
12 谷溝
13 第1谷面
14 第2谷面
15 リブ周面
16 先端斜面
17 操作エッジ
19 食込み始端

Claims (6)

  1. ドライバー軸(2)の先端に、複数個のリブ状突起(11)と断面V字状の谷溝(12)とが交互に形成されており、ドライバー軸(2)をその中心軸方向に叩打して、リブ状突起(11)に設けた操作エッジ(17)をビスの操作頭部(5)の損傷凹部(7)に食込ませるビス除去用のねじ回し工具であって、
    各リブ状突起(11)は、リブ状突起(11)を間にして対向する谷溝(12)の第1谷面(13)および第2谷面(14)と、両谷面(13・14)の外周縁どうしを繋ぐリブ周面(15)とに囲まれて断面台形状に形成されており、
    第1谷面(13)とリブ周面(15)とが交差する稜線部分に、損傷凹部(7)に食込む操作エッジ(17)が形成されており、
    操作エッジ(17)をドライバー軸(2)の中心軸線に対して食込み角(θ)だけ傾斜させて、ビスを緩め操作するときの操作エッジ(17)の先端の食込み始端(19)が、操作エッジ(17)の終端(20)よりも緩み回転方向の上手側に位置させてあることを特徴とするビス除去用のねじ回し工具。
  2. 各リブ状突起(11)の先端部分に、操作部(3)の先端へ向かって傾斜する先端斜面(16)が形成されており、
    操作エッジ(17)と先端斜面(16)とが損傷凹部(7)の傾斜凹面(9)に同時に食込む請求項1に記載のビス除去用のねじ回し工具。
  3. 先端斜面(16)とリブ周面(15)とが交差する稜線部分に食込みエッジ(18)が設けられており、
    食込みエッジ(18)と操作エッジ(17)とが挟む角度を鋭角に設定して、先端斜面(16)が逃げ角(α1)の分だけ傾斜させてある請求項2に記載のビス除去用のねじ回し工具。
  4. ドライバー軸(2)の先端面が凹面(23)で形成してある請求項2または3に記載のビス除去用のねじ回し工具。
  5. 操作部(3)にリブ状突起(11)と谷溝(12)とが交互に5個以上ずつ形成してある請求項1から4のいずれかひとつに記載のビス除去用のねじ回し工具。
  6. 操作エッジ(17)の食込み角(θ)が、2度以上、15度以下に設定してある請求項1から5のいずれかひとつに記載のビス除去用のねじ回し工具
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