JP4785323B2 - 水性ポリマー組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、第一ポリマーの粒子、第二ポリマーの粒子、およびワックスを含む水性ポリマー組成物に関する。さらに、本発明は、水性ポリマー組成物を基体上に施用する方法、および該水性ポリマー組成物から形成されるコーティングを有するように調製された物品に関する。該水性ポリマー組成物は、セメント質基体上にコーティングを提供するのに有用である。
【0002】
コンクリートの屋根用タイルは白華を受けやすく、白色無機質付着物がコンクリートの屋根用タイルの表面上に形成される。これらの白色無機質付着物は、表面上に不均一に分布し、見苦しいまだら模様の外観を呈する。白華によりさらに、着色されたコンクリートの屋根用タイルの彩度が減少することにより、コンクリートの屋根用タイルの外観が損なわれる。白華はコンクリートの屋根用タイルの硬化段階中にも起こり、これは典型的には一次白華と呼ばれる。白華はまた、セメント質基体が長期間、風雨にさらされることによっても起こり、典型的には、二次白華と呼ばれる。
【0003】
ポリマーコーティングは、コンクリートの屋根用タイルを風化から保護し、二次白華を最小限に抑えることが知られている。しかしながら、これらのポリマーコーティングは、典型的には透明なコーティングであるが、湿気の存在下で白色になる可能性がある。この望ましくない効果は、水白化(water whitening)と呼ばれる。さらに、ポリマーコーティングはコーティング表面と接触する水滴に対して障壁を提供し、コーティング表面が濡れるのを防止し、水がコーティング中およびその下の表面に浸透するのを防止する。一次白華および二次白華を最小限におさえ、水白化に対して耐性であり、水濡れ性が少ないポリマーコーティングが望まれている。
【0004】
日本特開昭63−18632号は、低分子量エマルジョンポリマーおよび高分子量エマルジョンポリマーを含む水性コーティング組成物を開示している。開示された水性コーティング組成物は、全ポリマーの15重量%以上が52000より小さい分子量を有し、全ポリマーの15重量%以上が255000より大きい分子量を有する広範囲の分子量分布を特徴とする。水性コーティング組成物を、コンクリートおよびモルタルをはじめとするさまざまな基体上に施用することができる。しかしながら、この特許は水性コーティング組成物を硬化していないコンクリートに施用し、その後コンクリートを硬化させて、一次および二次白華に対する耐性を有し、水白化耐性を有し、水濡れ性が少ないコートされたセメント基体を提供することを開示していない。
【0005】
本発明者らは驚くべきことに、高分子量を有する第一ポリマーの粒子、低分子量を有する第二ポリマーの粒子、およびワックスをブレンドすることにより、セメント屋根用タイルについて良好な水白化耐性、良好な白華耐性、および水ビーディング(water beading)の性質を有するコーティングを提供する水性ポリマー組成物を調製できることを見いだした。
【0006】
本発明の第一の態様において、第一ポリマーの粒子、第二ポリマーの粒子、ならびに第一ポリマーおよび第二ポリマーの合計重量に基づいて0.1〜10重量%のワックスを含み、第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し、第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し、第一ポリマーと第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物が提供される。
【0007】
本発明の第二の態様は:
第一ポリマーの粒子、第二ポリマーの粒子、ならびに第一ポリマーの粒子および第二ポリマーの粒子の合計重量に基づいて0.1〜10重量%のワックスを含み、第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し、第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し、第一ポリマーと第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物を調製する段階;該水性ポリマー組成物を未硬化のセメント質基体上に施用する段階;およびコートされた未硬化のセメント質基体を硬化させてコートされた未硬化セメント質基体を形成する段階を含む、コートされたセメント質基体を提供する方法に関する。
【0008】
本発明の第三の態様において:a)セメント質基体、ならびにb)第一ポリマーの粒子、第二ポリマーの粒子、ならびに第一ポリマーの粒子および第二ポリマーの粒子の合計重量に基づいて0.1〜10重量%のワックスを含み、第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し、第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し、第一ポリマーと第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物から形成されたコーティングを含む、コートされたセメント質基体を有する物品が提供される。
【0009】
本発明において使用される「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかを意味し、「(メタ)アクリルアミド」なる用語は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのいずれかを意味する。
【0010】
本発明において使用される「ガラス転移温度」または「Tg」とは、当該温度またはこれより高い温度においてガラス状ポリマーがポリマー鎖のセグメント運動を行う温度を意味する。ポリマーのTgは、たとえば、示差走査熱量分析(「DSC」)をはじめとするさまざまな技術により測定することができる。本明細書において記載するTgの具体的な値は、Tg値として熱流対温度転移における中点を用いて示差走査熱量分析により測定する。
【0011】
本明細書において使用する「セメント質基体」とは、セメントミックスから調製されるかまたはセメントミックスでコートされた表面を有する物品を意味する。セメントミックスは、セメント、砂、および水を含む混合物である。ポリマーを、所望により、該混合物中に混合してもよい。本明細書において用いられる「未硬化セメント質基体」とは、セメントミックスから調製されるか、またはセメントミックスでコートされた表面を含み、該セメントミックスが硬化していない物品を意味する。
【0012】
本発明の水性ポリマー組成物は、第一ポリマーの粒子と第二ポリマーの粒子を含む。第一ポリマーは第二ポリマーよりも高い分子量を有する。未硬化セメント質基体上に施用するのに適した水性ポリマー組成物における高分子量ポリマーと低分子量ポリマーのブレンドは、水白化耐性を有するコーティングを提供し、一次白華および二次白華を最小限に抑えるのに有用である。
【0013】
水性ポリマー組成物中に含まれる第一ポリマーは、第二ポリマーよりも高い分子量を有する。第一ポリマーは、250000またはそれ以上の範囲、好ましくは500000またはそれ以上の範囲、より好ましくは750000またはそれ以上の範囲の重量平均分子量Mwを有する。第一ポリマーは水性ポリマー組成物中、20nm〜1000nmの範囲、好ましくは20nm〜500nm、より好ましくは20nm〜350nmの範囲の平均粒子直径を有する粒子として含まれる。
【0014】
水性ポリマー組成物中に含まれる第二ポリマーは、10000から150000の範囲、好ましくは20000から100000の範囲、より好ましくは25000から75000の範囲の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーである。第二ポリマーは水性ポリマー組成物中、20nm〜1000nmの範囲の平均粒子直径を有する粒子として含まれる。第二ポリマーは20nmから350nmの範囲の平均粒子直径を有するのが好ましく、20nmから250nmの範囲の平均粒子直径を有するのがより好ましい。
【0015】
第一ポリマーおよび第二ポリマーはそれぞれ、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを付加重合させることにより調製することができる。適当なエチレン性不飽和モノマーとしては、非イオン性モノマー、たとえば、(メタ)アクリル酸のC1〜C40エステルをはじめとする(メタ)アクリルエステル、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレンまたは置換スチレン;ブタジエン;酢酸ビニルまたは他のビニルエステル;ビニルモノマー、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン;およびアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルが挙げられる。他の適当なエチレン性不飽和モノマーとしては、イオン性モノマー、たとえば、酸モノマーまたはアミドモノマーが挙げられ、これらは第一ポリマーと第二ポリマーの重量に基づいて0.1重量%から7重量%の量において用いることができる。酸モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸が挙げられる。アミドモノマーの例としては、(メタ)アクリルアミドおよび一置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0016】
任意に、第一ポリマーまたは第二ポリマーは重合単位として、少なくとも1種の官能性モノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマーを含んでもよく、これはそれぞれ第一ポリマーまたは第二ポリマーの重量に基づいて10重量%の量で用いることができる。官能性モノマーの例としては、珪素含有エチレン性不飽和モノマー、たとえば、ビニルトリメトキシシランおよびメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;および架橋モノマーが挙げられる。適当な架橋モノマーとしては、アセトアセテート官能性モノマー、たとえば、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、および2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレート;ジビニルベンゼン、ポリヒドロキシル化合物の(メタ)アクリロイルポリエステル、ポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリアリルテレフタレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ヘキサメチレンビスマレイミド、トリアリルホスフェート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、グリセリルトリメタクリレート、ジアリルスクシネート、ジビニルエーテル、エチレングリコールのジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリメチロールプロパンジ−またはトリ−アクリレート、n−メチロール(メタ)アクリルアミド、およびその混合物が挙げられる。用いられるクロスリンカーモノマーの量は、クロスリンカーモノマーがフィルム形成を著しく妨害しないように選択される。一例において、第一ポリマーは重合単位として、第一ポリマーの重量に基づいて0.1〜5重量%の少なくとも1種の官能性モノマーを含む。第二の例において、第二ポリマーは重合単位として、第二ポリマーの重量に基づいて0.1〜5重量%の少なくとも1種の官能性モノマーを含む。第三の例において、第一ポリマーは重合単位として2重量%より少ない、好ましくは1重量%より少ない、より好ましくは0重量%のアセトアセテート官能モノマーを含む。第四の例において、第二ポリマーは重合単位として2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0重量%のアセトアセテート官能モノマーを含む。第五の例において、第一ポリマーまたは第二ポリマーは重合単位として0重量%の官能性モノマーを含み、第一ポリマーおよび第二ポリマーはどちらも重合単位として0重量%の官能性モノマーを含むのが好ましい。
【0017】
一例において、第一ポリマーは重合単位として第一ポリマーの重量に基づいて85重量%から99.9重量%の少なくとも1種の非イオン性モノマー、0.1重量%〜10重量%の少なくとも1種のイオン性モノマー、および0〜5重量%の少なくとも1種の官能性モノマーを含み、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和イオン性モノマー、および任意のエチレン性不飽和官能性モノマーの合計は100%である。
【0018】
もう一つの例において、第二ポリマーは重合単位として第一ポリマーの重量に基づいて85重量%〜99.9重量の少なくとも1種の非イオン性モノマー、0.1重量%〜10重量%の少なくとも1種のイオン性モノマー、および0〜5重量%の少なくとも1種の官能性モノマーを含み、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和イオン性モノマー、および任意のエチレン性不飽和官能性モノマーの合計は100%である。
【0019】
第一ポリマーのガラス転移温度は−10℃〜80℃の範囲であり、0℃〜60℃の範囲であるのが好ましく、10℃〜50℃の範囲であるのがより好ましい。第二ポリマーのガラス転移温度は−10℃〜80℃の範囲であり、0℃〜60℃の範囲であるのが好ましく、10℃〜50℃の範囲であるのがより好ましい。好ましい態様において、第一ポリマーおよび第二ポリマーは20℃〜40℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0020】
第一ポリマーまたは第二ポリマーは、塊状重合、沈殿重合、懸濁重合、または乳化重合技術により調製することができる。重合は一段プロセスであってもよいし、また多段プロセスであってもよい。塊状重合または沈殿重合技術による調製の後、第一ポリマーまたは第二ポリマーを水性メディア中に分散させて、それぞれ第一ポリマー分散液または第二ポリマー分散液を調製することができる。第一ポリマー分散液を得るための第一ポリマーの調製法として、乳化重合が好ましい方法である。第二ポリマー分散液を得るための第二ポリマーの調製法として、乳化重合が好ましい方法である。
【0021】
コーティング用途において使用するための乳化重合によるポリマーの調製は、当該分野においてよく知られている。乳化重合の実施は、D.C. Blackley, Emulsion Polymerization (Wiley,1975)に詳細に記載されている。公知乳化重合技術は、本発明のエマルジョンポリマーを水性分散型ポリマーとして調製するために用いることができる。乳化重合の実施は、H. Warson, The Applicationsof Synthetic Resin Emulsions, Chapter 2 (Ernest Benn Ltd., London 1972)に記載されている。
【0022】
したがって、非イオン性モノマー、イオン性モノマー、および任意の官能性モノマーを包含するエチレン性不飽和モノマーは、アニオン性または非イオン性分散剤(界面活性剤ともいう)で乳化させることができ、たとえば、全モノマー重量に基づいて0.05重量%から10重量%の分散剤を使用する。アニオン性および非イオン性分散剤の組合せも用いることができる。高分子量ポリマー、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、およびビニルアルコールを乳化安定剤および保護コロイドとして、アクリル酸などの高分子電解質と同様に用いることができる。酸性モノマー、特に低分子量のもの、たとえば、アクリル酸およびメタクリル酸は水溶性であり、したがって、使用される他のモノマーの乳化を助ける分散剤として働く。
【0023】
適当なアニオン性分散剤としては、たとえば、高級脂肪族アルコールスルフェート、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム;アルキルアリールスルホネート、たとえば、イソプロピルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはカリウムあるいはナフタレンスルホン酸イソプロピル;アルカリ金属高級アルキルスルホスクシネート、たとえば、ナトリウムオクチルスルホスクシネート、ナトリウムN−メチル−N−パルミトイラウレート、ナトリウムオレイルイソチオネート;およびアルキルアリールポリエトキシエタノールスルフェート、スルホネート、またはホスフェートのアルカリ金属塩、たとえば、1から5個のオキシエチレン単位を有するナトリウムtert−オクチルフェノキシポリエトキシエチルスルフェート;およびアルキルポリエトキシエタノールスルフェート、スルホネート、およびホスフェートのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0024】
適当な非イオン性分散剤としては、約7から18個の炭素原子および約6から約60個のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール、たとえば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール、メチルオクチルフェノキシポリエトキシエタノール;メチレン−結合アルキルフェノールのポリエトキシエタノール誘導体;硫黄含有試薬、たとえば、約6から60モルの酸化エチレンとノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、またはアルキルチオフェノール(アルキル基は6から16個の炭素原子を含む)との縮合から調製されるもの;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの長鎖カルボン酸、またはトールオイルにおいて見られる酸の混合物のようなものの1分子あたり6から60個のオキシエチレン単位を有する酸化エチレン誘導体;オクチル、デシル、ラウリル、またはセチルアルコールなどの長鎖アルコールの類似した酸化エチレン縮合体、疎水性炭化水素鎖を有するエーテル化またはエステル化ポリヒドロキシ化合物の酸化エチレン誘導体、たとえば、6から60個のオキシエチレン単位を含むソルビタンモノステアレート;1またはそれ以上の疎水性酸化プロピレンセクションと結合した酸化エチレンセクションのブロックコポリマーが挙げられる。アルキルベンゼンスルホネートとエトキシル化アルキルフェノールの混合物を用いることもできる。
【0025】
第一ポリマーまたは第二ポリマーは重合単位として少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和結合を有する共重合性界面活性剤を含んでもよい。
【0026】
好ましくは、第一ポリマーを含む分散液は、第一ポリマーの重量に基づいて合計量が2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の界面活性剤を含む。好ましくは、第二ポリマーを含む分散液は、第二ポリマーの重量に基づいて合計量が2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の界面活性剤を含む。さらに多量の界面活性剤を用いると、水白化耐性が低下し、一次および二次白華耐性が低下する。好ましい例において、水性ポリマー組成物は、第一ポリマーと第二ポリマーの合計重量に基づいて、合計量が2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の界面活性剤を含む。
【0027】
フリーラジカルタイプの重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウムまたはカリウムを単独で用いてもよいし、あるいはピロ亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、またはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの還元成分も含むレドックス系の酸化成分として用いてもよい。還元成分はしばしばアクセレレーター(accelerator)ともいう。開始剤およびアクセレレーター(通常触媒という)、触媒系、またはレドックス系を、共重合させるモノマーの重量に基づいてそれぞれ約0.01%未満〜3%までの割合において用いることができる。レドックス触媒系の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/Fe(II)および過硫酸アンモニウム/亜硫酸水素ナトリウム/ハイドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。重合温度は10℃〜90℃、またはそれ以上であり、公知のように使用される触媒系について最適化できる。乳化重合はシードしてもよいし、シードしなくてもよい。シード重合が好ましく、非シード重合よりもより均一な物理的性質を有するポリマーの水性分散液が得られる傾向がある。
【0028】
本発明の重要な面は、第一ポリマーおよび第二ポリマーの分子量である。乳化重合プロセスにおいて、本発明の第一ポリマーまたは第二ポリマーの分子量を調節するために、連鎖移動剤、たとえば、メルカプタン、ポリメルカプタン、およびポリハロゲン化合物を重合混合物において使用して、第一ポリマーおよび第二ポリマーについて特定された範囲内の分子量を得ることができる。用いることができる連鎖移動剤の例としては、長鎖アルキルメルカプタン、たとえば、t−ドデシルメルカプタン、アルコール、たとえば、イソプロパノール、イソブタノール、ラウリルアルコール、またはt−オクチルアルコール、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、およびトリクロロブロモエタンが挙げられる。一般に、全モノマー重量に基づいて0.1〜3重量%が用いられる。別法として、開始剤量を増加させるか、または開始剤量を増加させて連鎖移動剤と組み合わせることにより、適当な分子量を得ることができる。第二ポリマーを調製するための好ましい重合プロセスは、連鎖移動剤の存在下で乳化重合させることを含む。第二ポリマーを調製するためのより好ましい重合法は、長鎖アルキルメルカプタンの存在下での乳化重合を含む。
【0029】
第一ポリマーまたは第二ポリマーを調製するための重合法は、熱またはレドックスタイプ;すなわち、開始剤種の熱分解によりフリーラジカルを単独で生成させることができるか、またはレドックス系を用いることができる。重合させるモノマーのすべてまたは一部を含むモノマーエマルジョンは、モノマー、水、および界面活性剤を用いて調製することができる。水中触媒を含有する触媒溶液は別に調製してもよい。モノマーエマルジョンおよび触媒溶液を乳化重合中、重合容器中に同時に供給することができる。反応容器自体にはじめから水を入れておいてもよい。反応容器はさらに、シードエマルジョンを含んでもよく、さらに初期投入量の重合触媒を含んでいてもよい。乳化重合中の反応容器の温度は、冷却して重合反応により発生する熱を除去するか、または反応容器を加熱することにより調節することができる。数種のモノマーエマルジョンを反応容器中に同時に供給してもよい。複数のモノマーエマルジョンを同時に供給する場合、これらは異なるモノマー組成を有するものであってもよい。異なるエマルジョンを同時に供給する順序および速度は、乳化重合プロセス中に変更することができる。反応容器の内容物のpHも乳化重合プロセス中に変更することができる。第一ポリマーまたは第二ポリマーを調製するための乳化重合プロセスのpHは、7未満であるのが好ましく、5−6の範囲であるのがより好ましい。
【0030】
一例において、水性ポリマー組成物中の第一ポリマー粒子の平均粒子直径および第二ポリマー粒子の平均粒子直径はいずれも60nm〜170nmの範囲であり、70m〜150nmの範囲であるのがより好ましい。この例において、水性ポリマー組成物を未硬化セメント質基体上に施用して、光沢のあるコートされたセメント質基体を得ることができる。
【0031】
水性ポリマー組成物は第一ポリマーおよび第二ポリマーを1:3〜3:1、好ましくは7:13〜13:7、最も好ましくは2:3〜3:2の乾燥重量比において含む。第一ポリマーおよび第二ポリマーのポリマーブレンドの平均ガラス転移温度は15℃〜50℃の範囲である。
【0032】
一例において、水性ポリマー組成物は第一ポリマーおよび第二ポリマーを1:1の乾燥重量比において含む。
【0033】
水性ポリマー組成物はワックスも含む。ワックスは本発明の水性ポリマー組成物から形成されたコーティングの表面上の水ビーディング(beading)を増大させる。水ビーディングはコーティング表面の濡れ性の減少およびコーティングおよびその下の基体中への水の浸透の減少を示すと考えられる。水性ポリマー組成物は、水性ポリマー組成物の重量に基づいて、0.1重量%〜10重量%のワックスを含み、好ましくは0.3重量%〜5重量%のワックスを含み、より好ましくは0.5重量%〜4重量%のワックスを含む。多量のワックスは硬化段階中の水の放出を抑制するので、10重量%を越えるワックスは、未硬化のセメント質基体および水性ポリマー組成物からのコートされたセメント質基体の調製に悪影響を及ぼす。
【0034】
適当なワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、パラフィンワックス、およびその混合物が挙げられる。一例において、水性組成物は酸化ポリオレフィンワックス、たとえば、米国特許第6169148B1号において開示された方法により調製されるようなものを含む。ワックスは、アニオン性ワックスエマルジョン、非イオン性ポリエチレンエマルジョン、非イオン性パラフィンエマルジョン、およびアニオン性パラフィン/ポリエチレンエマルジョン等のエマルジョンとして、またはポリエチレン粉末および変成合成ワックス粉末などの粉末として得られる。好ましいワックスはアニオン性パラフィン/ポリエチレンエマルジョンである。
【0035】
本発明の水性ポリマー組成物は、第一ポリマー分散液、第二ポリマー分散液、および水性ポリマー組成物の任意の成分を混合することにより調製することができる。水性ポリマー組成物または任意の成分が不安定にならないならば、水性ポリマー組成物の成分を任意の順序で添加することができる。
【0036】
本発明の水性ポリマー組成物は、1種以上の第一ポリマー粒子を含んでもよいし、あるいは1種以上の第二ポリマー粒子を含んでもよい。たとえば、水性ポリマー組成物は、500000の重量平均分子量を有する第一ポリマー粒子、1000000の重量平均分子量を有する第一ポリマー粒子、150000より小さい分子量を有する第二ポリマーの粒子のポリマー混合物を含んでもよい。分子量、粒子直径、Tgおよび第一ポリマー粒子または第二ポリマー粒子のポリマー組成は、所望の塗布性を水性ポリマー組成物に賦与するために変更することができる。好ましくは、水性ポリマー組成物の全ポリマー重量に基づいて、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の第一ポリマーおよび第二ポリマーを含む。
【0037】
水性ポリマー組成物は、造膜助剤ならびにエタノール、プロパノール、およびアセトンなどの水混和性溶剤を少量含むことができる水性メディアを含む。ポリマー混合物の最低フィルム形成温度を下げるために造膜助剤を添加することができる。適当な造膜助剤としては、たとえば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。水性ポリマー組成物は、水性ポリマー組成物の全重量に基づいて10重量%未満の溶剤、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の溶剤を含んでもよい。好ましくは、水性ポリマー組成物は溶剤を含まない無溶剤水性組成物である。
【0038】
水性ポリマー組成物のpHは典型的には7〜10の範囲である。pHを調節するために、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアミン、たとえば、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジメチルアミノエタノール、およびトリエチルアミンをはじめとするさまざまな塩基を添加することができる。水性ポリマー配合物は、保存料、たとえば、殺生物剤および殺カビ剤、消泡剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、光開始剤、レオロジー改良剤、着色剤、および低分子量アニオン性ポリマーを含んでもよい。水性ポリマー組成物の不揮発性成分の固形分は、水性ポリマー組成物の重量に基づいて10重量%から70重量%である。一例において、水性ポリマー組成物は、水性ポリマー組成物の重量に基づいて10重量%から60重量%の範囲の固形分を有し、スプレーによる施用に適している。
【0039】
水性ポリマー組成物は、顔料、たとえば、二酸化チタン、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、および米国特許第6045871号に記載されているような不透明化ポリマーを含んでもよい。これらの顔料は水性ポリマー組成物中の固体の全重量に基づいて、0〜25重量%の範囲の量において水性ポリマー組成物中に存在してもよい。
【0040】
透明なコーティングは、透明で、その下にある基体の色が彩度が著しく減少しないで見えるような乾燥コーティングである。一例において、水性ポリマー組成物は基体上に透明なコーティングを提供する。この例において、第一ポリマーのガラス転移温度と第二ポリマーのガラス転移温度の差は10℃未満であり、好ましくは差は7℃以下であり、より好ましくは5℃以下である。さらに、透明なコーティングを提供するために、水性ポリマー組成物は、施用された乾燥フィルム厚で乾燥コーティングを実質的に不透明にするような成分を含まないのが好ましい。
【0041】
セメント質基体の例としては、屋根用タイル、壁用タイル、屋根板、屋根用スレート、中庭床などのコンクリートスラブ、セメント塗壁、ビルの外壁に用いられるラップサイディング、およびコンクリートパイプが挙げられる。セメント質基体は、着色表面を得るために、顔料、セメント、および砂を含む顔料スラリー(カラーコートということが多い)でコートしてもよい。
【0042】
水性ポリマー組成物は、公知方法、たとえば、スプレーとして、コテまたはナイフを用いて、注入、ブラッシング、およびカーテンコーティングなどによりセメント質基体上に施用することができる。スプレー法は、たとえば、エアアシステッドスプレー、エアレススプレー、ベルまたはディスクスプレー、高体積低圧スプレー、およびエアアシステッド静電スプレーであってもよい。水性ポリマー組成物は、1つのコートまたは複数のコートとして施用することができ、コート間で乾燥してもしなくてもよく、2.5μm〜250μmの範囲の厚さの乾燥フィルムを得る。水性ポリマー組成物を、周囲条件で、たとえば、10℃〜30℃の範囲の温度で乾燥してもよい。別法として、水性ポリマー組成物を乾燥させるために熱を加えることができ、たとえば、25℃〜10℃の温度範囲で加熱する。本発明の一方法において、水性ポリマー組成物を未硬化セメント質基体上に施用し、未硬化セメント質基体を硬化させて、コートされたセメント質基体を得る。別法として、カラーコートをまず未硬化セメント質基体上に施用し、続いて水性ポリマー組成物をカラーコート上に施用してもよい。水性ポリマー組成物を硬化段階の前に乾燥させてもよいし、未硬化セメント質基体の硬化中に乾燥させてもよい。一例においては、コートされた未硬化セメント質基体を周囲条件で硬化させる。別の例においては、硬化は、コートされた未硬化セメント質基体を調温調湿条件のチャンバー中に導入することにより行われる。適当な温度および湿度条件は、35℃〜100℃の範囲の温度および95%もの相対湿度である。硬化を行うのに必要な時間は、4〜12時間の範囲であり、温度および相対湿度によって変わる。
【0043】
試験法
重量平均分子量測定:第一ポリマーおよび第二ポリマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン溶剤を用いたゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。測定はポリメチルメタクリレート均等物に基づいた。分子量を測定の前に、第一ポリマー粒子分散液および第二ポリマー粒子分散液をAmberlite IRN−77イオン交換樹脂(AmberliteはRohm and Haas Co.の登録商標である)で脱イオン化した。
平均粒子直径測定:ポリマー粒子の平均直径を、光散乱技術を採用したBrookhaven BI−90パーティクルサイザーを用いて測定した。粒子直径を測定するために、0.1〜0.2グラムの水性ポリマー分散液のサンプルを蒸留水で合計40mlに希釈した。2mlをアクリルセル中に分配した。粒子直径を1000サイクルにわたって測定した。測定を3回繰り返し、3つの値の平均値を記載した。
一次白華度の試験法:硬化直後のコートされたセメント質基体の外観により、一次白華の程度を評価した。サンプルを白華の徴候について目視で観察した。白色付着物のないサンプルは許容できる一次白華耐性を有するとみなし、「なし」の評点をつけた。
二次白華耐性度の試験法:コートされたセメント質基体を米国特許第4999218号に記載されているようにして60℃水浴(Precision Water Bath 270型循環水浴)からの水分の凝縮水に一日曝す促進実験室試験において二次白華耐性の程度を試験した。試験は、コートされた面を60℃の水上4cmで、水に面して保持する金属格子上で水浴上にコートされたセメント質基体をおくことにより行った。
【0044】
スケール0(黒)から100(白)までのスケールにしたがって黒から白を測定するL*スケールを用いた比色測定により二次白華耐性の程度を測定した。コートされたセメント質基体が黒色のスラリーコートを有し、白華により基体表面上に白色付着物が形成されるので、L*値は白華の程度が増大するにつれ増大した。初期L*値を測定した後、コートされたセメント質基体を水浴中に入れた。セメント質基体を水浴から取り出し、18時間乾燥させた後、最終L*値を測定した。L*値の差、ΔL*=(最終L*値)−(初期L*値)により二次白華を測定した。許容できるΔL*値は、0以下であり、これは許容できる二次白華耐性であることを示す。
水白化耐性試験:促進実験室試験において水白化耐性の程度を評価した。コートされたセメント質基体を60℃水浴(Precision Water Bath 270型循環水浴)からの湿分の凝縮水に24時間曝した。コートされた面を60℃の水に面して水面上4cmに保持する金属格子上で水浴上にコートされたセメント質基体を設置した。コートされたセメント質基体を水浴から取り出した直後に評価した。
【0045】
水白化耐性は目視で1〜10のスケールで特徴づけた。10はコートされたセメント質基体表面が白化していないことを表し、5はコートされたセメント質基体が中程度に白化していることを表し、1はコートされたセメント質基体表面がひどく白化していることを表す。5以上の値が許容される。
【0046】
実施例1 水性ポリマー組成物および比較水性ポリマー組成物の調製
比較例A Tg=26℃の第二ポリマーを含む比較水性ポリマー組成物の調製600gの脱イオン水(DI水)、60.9gのナトリウムドデシルベンゼンスルホネート(23%活性)、910gのブチルアクリレート(BA)、1064gのメチルメタクリレート(MMA)、26.0gのメタクリル酸(MAA)、および20.0gのn−ドデシルメルカプタン(nDDM)を混合することによりモノマーエマルジョンを調製した。1ガロンの撹拌したリアクターに、1070gのDI水および26gのナトリウムドデシルベンゼンスルホネート(23%活性)を添加した。リアクター内容物を85℃に加熱した後、2gの炭酸ナトリウムの20gのDI水中溶液をリアクターに添加した。次に、90.0gのモノマーエマルジョンを添加し、続いて40gのDI水で洗浄した。その直後に、6gの過硫酸アンモニウムの30gのDI水中溶液を添加した。温度を82℃に維持しながら残りのモノマーエマルジョンをリアクターに添加した。別のフィードにおいて、2gの過硫酸アンモニウムの120gのDI水中溶液をリアクターに添加した。最終反応混合物を28%水性アンモニアで中和してpH9.0にし、第二ポリマーの粒子を含む水性分散液を得た。第二ポリマーは、45.5BA/53.2MMA/1.3MAAの組成、26℃のTg、および53000の重量平均分子量を有していた。
【0047】
292gの水、118.8gのTexanol造膜助剤(TexanolはEastman Chemical Co.の登録商標である)、47.1gのTamol165分散剤(TamolはRohm and Haas Companyの登録商標である)、61.9gのMichemlube743ワックス(MichemlubeはMichaelman Chemical Inc.の登録商標である)、1.0gのDrewplus L−108消泡剤(DrewplusはDrew Industrial Division of Ashland Chemical Co.の登録商標である)、および11.9gのSurfynol104E界面活性剤(SurfynolはAir Products and Chemical Inc.の登録商標である)を連続して第二ポリマーの粒子を含む水性分散液に添加することにより比較水性ポリマー組成物を調製した。比較水性ポリマー組成物(比較例A)は、104nmの平均粒子直径、44.5%の固形分、5.9×10−2Pascal−秒(Pa−s)のBrookfield粘度を有していた。
【0048】
比較例B Tg=26℃の第一ポリマーを含む比較水性ポリマー組成物の調製n−DDMを添加しない以外は比較例Aの方法にしたがって第一ポリマーを含む水性分散液を調製した。第一ポリマーを含む水性分散液は平均粒子直径が104nmであり、pHが8.1、固形分が42.5重量%であった。第一ポリマーは、重量基準で45.5BA/53.2MMA/1.3MAAの組成を有し、Tg26℃、重量平均分子量9.92×105であった。
【0049】
比較例Aにおいてと同様に第一ポリマーの水性分散液を含む比較水性ポリマー組成物を調製した。比較水性ポリマー組成物(比較例B)は、44.5%の固形分、および4.8×10−2Pa−sのBrookfield粘度を有していた。
【0050】
実施例1.1 Tg=0℃の水性ポリマー組成物の調製
等量の比較例Aのポリマーおよび比較例Bのポリマーを混合することにより、第二ポリマーの粒子、低分子量ポリマー、および第一ポリマーの粒子、高分子量ポリマーを含む水性ポリマー組成物を調製した。この組成物、実施例1.1は、43.5重量%の固形分、5.6×10−2Pa−sのBrookfield粘度を有していた。第一ポリマーおよび第二ポリマーはガラス転移温度が26℃であり、第一ポリマーと第二ポリマーのガラス転移温度の差、ΔTgが0℃であった。
【0051】
比較例C Tg=30℃の第一ポリマーを含む分散液の調製
600gのDI水、60.9gのドデシルベンゼンスルン酸ナトリウム(23%活性)、842gのブチルアクリレート、1132gのメチルメタクリレート、および26.0gのメタクリル酸を混合することによりモノマーエマルジョンを調製する以外は比較例Aの方法に従って、Tg=30℃の第一ポリマーを含む水性分散液を調製した。さらに、n−DDMを添加しなかった。第一ポリマーは、重量平均分子量が932000,平均粒子直径が118nmであった。
【0052】
比較例Aにおいて記載したように、水、造膜助剤、分散剤、ワックス、消泡剤、および界面活性剤を水性分散液に添加して、比較例Cを得た。比較例Cは固形分44.5%、Brookfield粘度6.5×10−2Pa−sであった。
【0053】
比較例D Tg=30℃の第二ポリマーを含む水性分散液の調製
600gのDI水、60.9gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%活性)、842gのブチルアクリレート、1132gのメチルメタクリレート、26.0gのメタクリル酸、および20.0gのn−ドデシルメルカプタンを混合することによりモノマーエマルジョンを調製する以外は比較例Aの方法に従って、Tg=30℃の第二ポリマーを含む水性分散液を調製した。第二のポリマーは、54000の重量平均分子量および113nmの平均粒子直径を有していた。
【0054】
比較例Aにおいて記載したように、水、造膜助剤、分散剤、ワックス、消泡剤、および界面活性剤を水性分散液に添加して、比較例Dを得た。比較例Dは44.5重量%の固形分および5.8×10−2Pa−sのBrookfield粘度を有していた。
【0055】
比較例E Tg=40℃の第二ポリマーを含む分散液の調製
600gのDI水、60.9gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%活性)、686gのブチルアクリレート、1288gのメチルメタクリレート、26.0gのメタクリル酸、および20.0gのn−ドデシルメルカプタンを混合することによりモノマーエマルジョンを調製する以外は比較例Aの方法に従って、Tg=40℃の第二ポリマーを含む水性分散液を調製した。第二のポリマーは、55500の重量平均分子量および114nmの平均粒子直径を有していた。
【0056】
比較例Aにおいて記載したように、水、造膜助剤、分散剤、ワックス、消泡剤、および界面活性剤を水性分散液に添加して、比較例Eを得た。比較例Eは44.5重量%の固形分および6.7×10−2Pa−sのBrookfield粘度を有していた。
【0057】
実施例1.2 ΔTg=0℃の水性ポリマー組成物の調製
等量の比較例Cおよび比較例Dを混合することにより水性ポリマー組成物を調製した。
【0058】
実施例1.3 ΔTg=4℃の水性ポリマー組成物の調製
等量の比較例Cおよび比較例Aを混合することにより水性ポリマー組成物を調製した。
【0059】
実施例F ΔTg=10℃の比較水性ポリマー組成物の調製
等量の比較例Cおよび比較例Eを混合することにより比較水性ポリマー組成物を調製した。
【0060】
【表1】
表1.1 水性ポリマー組成物および比較水性ポリマー組成物
【0061】
実施例2 コートされたセメント質基体の調製
未硬化セメント質基体の調製:850gのタイプIポルトランドセメントおよび2550gの45メッシュ砂を添加し、HobartミキサーN−50型(Hobart Canada,Ontario,Canada)で混合することにより、砂/セメント混合物を調製した。次に、408gのDI水をゆっくりと添加し、砂/セメント混合物中に混合して、コンクリートミックスを調製した。コンクリートミックスを直径8.5cmのペトリ皿中に注ぎ、スパチュラで表面を平らにして、なめらかな表面にすることにより、サンプルパティ(Patty−A)を調製した。
【0062】
100gのBayferrox318M黒色酸化鉄(Mobay Corporation)を931gのDI水に撹拌しながら添加することにより黒色スラリーを調製した。次に、2000gのタイプIポルトランドセメントを連続して撹拌しながらゆっくり添加して、均一な混合物を得た。次に、砂を混合物中によく混合して黒色スラリーが得られるまで1000gの100メッシュ砂を添加した。黒色スラリーの層(厚さ約0.4mm)をなめらかにしたコンクリートタイル表面上に施用して、未硬化のセメント質基体サンプルを形成した。
【0063】
水性ポリマー組成物または比較水性ポリマー組成物の層(厚さ約0.025mm)をスプレーにより未硬化セメント質基体サンプルの黒色表面上に施用した。コートされた未硬化セメント質基体の硬化は、相対湿度75%の湿度/オーブンチャンバー中、50℃で5時間の硬化条件に暴露して達成し、コートされたセメント質基体を得た。
【0064】
実施例3 コートされたセメント質基体の評価
硬化後、コートされたセメント質基体サンプルについて一次白華の初期値および初期L*値を測定した。その後、水白化耐性および二次白華の程度を測定した。水性ポリマー組成物および比較組成物の結果を表3.1に記載する。
【0065】
【表2】
表3.1 コートされたセメント質基体サンプルの性質
【0066】
表3.1の結果は、実施例1.1−1.3に例示されるような水性ポリマー組成物から、許容される水白化耐性、一次白華耐性、および二次白華耐性の組合せを有するコートされたセメント質基体が得られたことを示す。対照的に、第一ポリマーと第二ポリマーのガラス転移温度の差がある比較水性ポリマー組成物である比較例Fは、許容される水白化耐性および二次白華耐性を有していなかった。比較例Aからは許容できない水白化耐性、および許容できない二次白華耐性を有するコーティングが得られた。比較例Bからは許容できない二次白華耐性を有するコーティングが得られた。
【0067】
実施例4 コートされたセメント質基体に関する水ビーディングの評価
等部の比較例Aの低分子量ポリマーおよび比較例Bの高分子量ポリマー、および分散剤、消泡剤、界面活性剤、および造膜助剤を含む比較水性ポリマー組成物(比較例G)を調製した。比較例Gはワックスを含んでいなかった。
【0068】
実施例2の手順に従い、ワックスを含む実施例1.1の水性ポリマー組成物、またはワックスを含まない比較例Dからコンクリート屋根用タイルを調製した。
【0069】
蒸留水の液滴をコートされた表面に置き、コートされた表面上の水滴を目視で観察することにより、コートされたコンクリート屋根用タイルの表面上の水ビーディングを評価した。実施例1.1の水性ポリマー組成物から形成されたコーティングを有するコンクリート屋根用タイルの表面上では水滴が観察され、許容できる水ビーディングが示された。比較例Gから形成されたコーティングを有するコンクリート屋根用タイルについて、水はコーティングに浸透し、残りの水はコーティングの表面上を流れ、許容できない水ビーディングであることがわかった。結果から、ワックスを含む水性ポリマー組成物は許容できる水ビーディングを有していたことがわかる。
Claims (10)
- (a)第一ポリマーの粒子;
(b)第二ポリマーの粒子;および
(c)水性ポリマー組成物の重量に基づいて0.1重量%から4重量%のワックスを含み;
前記第一および第二ポリマーはそれぞれ、重合単位として前記各ポリマーの重量に基づいて、
85重量%から99.9重量%のエチレン性不飽和非イオン性モノマーであって、(メタ)アクリル酸のC 1 〜C 40 エステル、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
0.1重量%〜10重量%のエチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマーであって、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和酸モノマー、または(メタ)アクリルアミドおよび一置換(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和アミドモノマー;および
0〜5重量%の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーであって、珪素含有エチレン性不飽和モノマー、アセトアセテート官能性モノマー、ジビニルベンゼン、ポリヒドロキシル化合物の(メタ)アクリロイルポリエステル、ポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリアリルテレフタレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ヘキサメチレンビスマレイミド、トリアリルホスフェート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、グリセリルトリメタクリレート、ジアリルスクシネート、ジビニルエーテル、エチレングリコールのジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリメチロールプロパンジ−またはトリ−アクリレート、n−メチロール(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーを含み、
該エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマー、および任意の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーの合計は100%であり;
前記第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し;前記第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し;前記第一ポリマーと前記第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物であって、該水性ポリマー組成物の全ポリマー重量に基づいて前記第一ポリマーおよび前記第二ポリマーを少なくとも90重量%含む水性ポリマー組成物。 - 前記第一および第二ポリマーのガラス転位温度がそれぞれ20℃〜40℃である請求項1に記載の水性ポリマー組成物。
- 前記第一ポリマーのガラス転移温度と前記第二ポリマーのガラス転移温度の差が10℃未満である請求項1記載の水性ポリマー組成物。
- 前記第二ポリマーの前記粒子が20nmから350nmの範囲である請求項1記載の水性ポリマー組成物。
- コートされたセメント質基体を提供する方法であって、
a)1)第一ポリマーの粒子;
2)第二ポリマーの粒子;および
3)水性ポリマー組成物の重量に基づいて0.1重量%から10重量%のワックスを含み;
前記第一および第二ポリマーはそれぞれ、重合単位として前記各ポリマーの重量に基づいて、
85重量%から99.9重量%のエチレン性不飽和非イオン性モノマーであって、(メタ)アクリル酸のC 1 〜C 40 エステル、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
0.1重量%〜10重量%のエチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマーであって、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和酸モノマー、または(メタ)アクリルアミドおよび一置換(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和アミドモノマー;および
0〜5重量%の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーであって、珪素含有エチレン性不飽和モノマー、アセトアセテート官能性モノマー、ジビニルベンゼン、ポリヒドロキシル化合物の(メタ)アクリロイルポリエステル、ポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリアリルテレフタレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ヘキサメチレンビスマレイミド、トリアリルホスフェート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、グリセリルトリメタクリレート、ジアリルスクシネート、ジビニルエーテル、エチレングリコールのジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリメチロールプロパンジ−またはトリ−アクリレート、n−メチロール(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーを含み、
該エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマー、および任意の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーの合計は100%であり;
前記第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し;前記第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し;前記第一ポリマーと前記第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物を調製する段階;
b)前記水性ポリマー組成物を未硬化のセメント質基体上に施用して、コートされた未硬化セメント質基体を形成する段階;および
c)前記のコートされた未硬化セメント質基体を硬化させて、前記のコートされたセメント質基体を形成する段階を含む方法。 - 前記第一および第二ポリマーのガラス転位温度がそれぞれ20℃〜40℃である請求項5に記載の方法。
- 前記第一ポリマーのガラス転移温度と前記第二ポリマーのガラス転移温度の差が10℃未満である請求項5記載の方法。
- 前記第二ポリマーの前記粒子が20nmから350nmの範囲である請求項5記載の方法。
- a)セメント質基体;および
b)1)第一ポリマーの粒子;
2)第二ポリマーの粒子;および
3)水性ポリマー組成物の重量に基づいて0.1重量%から4重量%のワックスを含み;
前記第一および第二ポリマーはそれぞれ、重合単位として前記各ポリマーの重量に基づいて、
85重量%から99.9重量%のエチレン性不飽和非イオン性モノマーであって、(メタ)アクリル酸のC 1 〜C 40 エステル、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
0.1重量%〜10重量%のエチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマーであって、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和酸モノマー、または(メタ)アクリルアミドおよび一置換(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和アミドモノマー;および
0〜5重量%の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーであって、珪素含有エチレン性不飽和モノマー、アセトアセテート官能性モノマー、ジビニルベンゼン、ポリヒドロキシル化合物の(メタ)アクリロイルポリエステル、ポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリアリルテレフタレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ヘキサメチレンビスマレイミド、トリアリルホスフェート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、グリセリルトリメタクリレート、ジアリルスクシネート、ジビニルエーテル、エチレングリコールのジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリメチロールプロパンジ−またはトリ−アクリレート、n−メチロール(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーを含み、
該エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和酸モノマーまたはエチレン性不飽和アミドモノマー、および任意の珪素含有エチレン性不飽和モノマーまたは架橋モノマーの合計は100%であり;
前記第一ポリマーが250000またはそれ以上の重量平均分子量を有し;前記第二ポリマーが150000またはそれ以下の重量平均分子量を有し;前記第一ポリマーと前記第二ポリマーの重量比が1:3から3:1の範囲である水性ポリマー組成物から形成されたコーティングを含むコートされたセメント質基体を含む物品。 - 前記水性ポリマー組成物が前記セメント質基体の硬化前に前記セメント質基体上に施用される請求項9記載の物品。
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