(実施の形態1)
全体構成と基本動作
図1に本発明のチューナ(10)のブロック図を示す。本発明のチューナは、低雑音アンプ部(11;図では「LNA」と記載した。)と、周波数変換部(12;図では「MIX」と記載した。)と、フィルタ部(13;図では「FLT」と記載した。)と、増幅部(14;図では「AMP」と記載した。)と、復調部(15;図では「DEM」と記載した。)と、局部発振部(16;図では「LO」と記載した。)と、制御部(4;図では「Controller」と記載した。)と、校正信号発生部(3)と、スイッチ(28)を含む。
アンテナ(9)で受信した高周波の受信信号は、スイッチ(28)を経て低雑音アンプ部(11)で増幅される。この増幅された受信信号は、周波数変換部(12)で高周波信号から元信号(以後「ベースバンド信号」という。)に変換される。アンテナで受信された受信信号は、高周波搬送波(以後「キャリア」という。)をベースバンド信号で変調した形になっている。周波数変換部(12)は、信号を非線形合成する手段である。非線形合成とは信号同士に加算以外の演算操作を行うことである。なお、ベースバンド信号がある帯域をベースバンド帯域という。
ここでは、周波数変換部(12)は、乗算回路であり、復調したいチャンネルのキャリア周波数と同一周波数の信号を受信した受信信号に乗算することで、受信信号を高周波信号からベースバンド信号に戻す事ができる。また、キャリア周波数よりも低い周波数の信号を受信信号に乗算することで中間周波数帯域(以後「IF帯域」という。)の信号(以後「IF信号」という。)とすることもできる。この様な操作をダウンコンバートという。よって、周波数変換部(12)の出力をダウンコンバートされた信号と呼ぶ。ダウンコンバートされた信号は、ベースバンド信号やIF信号を含む。また、周波数変換部(12)に供給され、受信信号に乗算される信号をLO信号(Local Oscillator信号)と呼ぶ。
LO信号の周波数はfoである。ダイレクトコンバージョン方式のチューナの場合、LO信号はキャリアと同一の高周波の信号になる。LO信号を発生するのは、局部発振部(16)である。局部発振部(16)は、位相が90度違う2種類のLO信号を発生する2相信号発生器を用いる。また、2種類のLO信号は、それぞれ180度位相が異なる信号を出力することもできる。結果、2相信号発生器は、ゼロ度、90度、180度、270度の4つの位相の信号を出力することもできる。
なお、受信はアンテナ(9)で受信するとしたが、ケーブル等から受信してもよい。また、アンテナ(9)で受信した信号が低雑音アンプ部(11)へ入力されるとしたが、その間に同調フィルタ(トラッキングフィルタ)などが介在してもよい。
図2に周波数変換部(12)の構成を示す。周波数変換部(12)は、乗算器(31、32)を含む。乗算器(31、32)は、平衡ミキサで構成される直交ミキサである。低雑音アンプ部(11)からのRF信号(図2ではRFsigと記した。)は、2系統に分かれてそれぞれ乗算器(31)と乗算器(32)に入力される。RF信号は、受信信号である。それぞれの乗算器には、局部発振部(16)からのLO信号が入力され、RF信号と乗算される。
ここで、局部発振部(16)からの位相ゼロ度のLO信号がRF信号と乗算される回路経路をI相、他方の回路経路をQ相と呼ぶ。RF信号を、位相が90度異なるこれら2つの回路経路で並列的に処理することで、RF信号に対するベースバンド信号やIF信号に対して、正負両方の周波数の信号を扱うことができる。
I相の乗算器(31)は、局部発振部(16)からのLO信号によって周波数変換された信号IF_Iを出力する。同じくQ相の乗算器(32)はIF_Qを出力する。本実施の形態の場合、IF_IおよびIF_Qは、ともに周波数変換されたベースバンド信号を含む信号である。
また、乗算器(31、32)は制御部(4)からの補償調整信号(a2)を受け、平衡が調整されることで2次歪みの補償ができる。具体的にはそれぞれの乗算器のバイアス電流を変更するなどであるが、調整手段はこれに限定されるものではない。乗算器(31、32)への補償調整信号は、それぞれa21、a22とする。
図1に戻って、ダウンコンバートされた信号は、フィルタ部(13)で不要な高周波成分を除去され所望の帯域の信号となる。フィルタ部(13)の構成の例としては、ダイレクトコンバージョン方式のチューナの場合は、ローパスフィルタとなる。また、低IF(Low Intermediate Frequency)方式のチューナである場合は、フィルタ部(13)は、ポリフェーズフィルタとバンドパスフィルタの組み合わせ等で構成する。
所望の帯域に変換された信号は、増幅部(14)により、後段で扱えるように増幅される。増幅された信号は、復調部(15)で復調される。本実施の形態では、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式の信号をダイレクトコンバージョン方式のチューナで受信する場合について説明を続ける。
図3にOFDM方式の場合の復調部(15)の構成を示す。復調部(15)は、A/D変換器(34)、ガードインタバル除去部(35)、FFT(Fast Fourier Transfer)処理部(36)、サブキャリア復調部(37)、パラレルシリアル変換部(38)を含む。増幅部(14)で増幅されたベースバンド信号(Sb)は、A/D変換器(34)でデジタル信号に変換される。
そして、ガードインタバル除去部(35:図では「GD−I」と記載した。)でガードインタバルの期間を削除する。ガードインタバルはOFDM方式の信号がマルチパスの影響を少なくするために有するシンボル信号以外の期間である。なお、ガードインタバル除去部(35)は校正信号(Sc)が低雑音アンプ部(11)に入力された場合は、ダウンコンバートされた校正信号を通過させる。
ガードインタバルを削除された信号は、FFT処理部(36)によって1シンボル期間ごとにFFT処理され、各サブキャリア毎のデジタル信号へ変換される。FFT処理とは入力された信号の各周波数成分の大きさ、位相等を検出する処理である。各サブキャアリアのデジタル信号はサブキャリア復調部(37)で復調され、パラレルシリアル変換部(38)でシリアルのデジタル信号に戻される。
なお、FFT処理部(36)は、検出した所定の周波数成分の大きさや位相といった情報を別途出力検出信号(8)として出力できる。どの周波数成分を出力するかは制御部(4)の指示で行うが、外部からの指示であってもよい。ガードインタバル除去部(35)は、ガードインタバル期間のほか、ダウンコンバートされた信号の所定の期間を検出し、若しくは到来のタイミングに関するタイミング通知信号(7)を出力できる。この意味でガードインタバル除去部(35)は、信号期間識別部とも言える。
また、A/D変換器(34)の後の信号を出力(110)として取り出すこともできる。また、図1では、復調部(15)への入力はI相とQ相の2つの信号が入力されるが、図3では1つの入力と省略して記載した。FFT処理部(36)までの信号は、I相、Q相の2相の信号として処理される。従って、A/D変換器(34)の出力(110)もI相、Q相の2相の信号があるものとする。また、図3ではサブキャリア復調部(37)を4つ描いたが、これは例示であって、サブキャリアの数だけ用意されるものである。
図1に戻って、以上のように、信号を受信している状態においては、アンテナ(9)、スイッチ(28)、低雑音アンプ部(11)、周波数変換部(12)、フィルタ部(13)、増幅部(14)、復調部(15)の経路で所望のベースバンド信号を取得する事が出来る。低雑音アンプ部(11)以降を受信回路系と呼ぶ。
次に受信回路系の歪補償校正について説明する。なお、歪補償とは、歪を相殺させることで、歪補償校正とは、歪補償の量を適正に調整することを言う。歪補償校正を行う際には、スイッチ(28)は校正信号発生部(3)側を選択する。スイッチ(28)の切り替え後、校正信号発生部(3)から校正信号(Sc)が受信回路系に入力される。
スイッチ(28)による選択や校正信号(Sc)の発生は、制御部(4)以外の制御装置の指示によって行われてもよいし、制御部(4)が行なってもよい。すなわち制御部(4)は1つである必要はなく、本明細書中での制御部の役目の一部を担う複数の制御部があってもよい。校正信号(Sc)はスイッチ(28)から受信回路系に入力される。制御部(4)は、校正信号(Sc)が受信回路系を通った結果、復調部(15)のFFT処理部(36)で検出される所定周波数成分の情報を出力検出信号(8)として受け取り、受信回路系の歪みを検知する。制御部(4)は検出したこの歪量に応じて補償調整信号(a2、a3)を出力し歪補償校正を行う。
校正信号(Sc)は常時発生していてもよいが、受信機全体の省電力には、歪補償校正する時だけ校正信号(Sc)を発生するようにするのがよい。従って、スイッチ(28)は物理的に回路経路を切替えるスイッチでなく、加算器等で置き換えてもよい。
本発明では、校正信号(Sc)は歪みを検出する周波数で、校正信号自身の歪みによる周波数成分をほとんど発生しないため、制御部(4)が検知した歪みは受信回路系での歪みとしてよい。この歪みをできるだけ小さくなるように歪補償するために低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)に対して制御部(4)は補償調整信号(a2、a3)を送る。このような歪補償校正によって受信回路系の歪を最小にすることができる。
本発明における校正信号発生部(3)は、次数の異なる歪み用校正信号を発生することができる。また、それぞれの校正信号は異なる位相の信号を発生することができる。具体的には、校正信号発生部(3)は2次および3次の歪用校正信号を発生し、それぞれの信号は位相が90度異なる2種類の信号を発生できる。これによって、周波数変換部(12)のI相およびQ相の乗算器を調整することができる。
なお、発生する校正信号を2次歪用および3次歪用としたのは、チューナとしては、これらの次数の歪の影響が大きいためであり、より次数の高い歪みを補償するための校正信号を発生してもよい。
校正信号発生部
次に校正信号発生部(3)について詳細を説明する。本実施の形態では、上述したようにOFDM方式のデジタルテレビジョンチューナを想定し、チューナ方式はダイレクトコンバージョン方式である。バンド幅は、7.61MHzで、サブキャリア間隔は1/448MHzである。
校正信号発生部(3)は、信号発生部(2;図1では「SG」と記載した。)と、乗算器(23、24、25、26)と、加算器(27)を含む。信号発生部(2)からは4つの変調信号(S1、S2、S3、S4)を発生することができる。これらの変調信号(S1、S2、S3、S4)の詳細は後述するが、デジタル信号を別の周波数のデジタル信号で変調した信号であり、−1と0と1または−1と1の値を持つデジタル信号である。これらの信号はまた、デジタル信号同士を論理演算したことによって得られた信号とも言える。4つの信号はそれぞれ別々の乗算器に入力される。
また、局部発振部(16)からの位相違いのLO信号はそれぞれ2つの乗算器に入力される。具体的に述べると、乗算器(23)は、変調信号(S1)と局部発振部(16)の位相ゼロのLO信号が入力される。以下、乗算器(24)は変調信号(S2)と局部発振部(16)の位相ゼロのLO信号、乗算器(25)は変調信号(S3)と局部発振部(16)の位相90度のLO信号、乗算器(26)は変調信号(S4)と局部発振部(16)の位相90度のLO信号が、それぞれ入力される。
後述するように、変調信号(S1、S2、S3、S4)は、−1と0と1または−1と1の値を持つデジタル信号であるので、乗算器(23、24、25、26)はアナログスイッチにより実現でき、歪の少ない乗算機能を簡易なハードウェアにより低消費電力で容易に実装することができる。
ここで、校正信号発生部(3)の出力である校正信号(Sc)は、少なくとも局部発振部(16)の同一位相のLO信号に対して少なくとも二つの変調信号により変調した信号(以後「変調高周波信号」という)を加算して生成する。例えば局部発振部(16)の位相0度のLO信号を変調信号S1で変調した信号とS2で変調した信号を作り、それらの信号を加算する。このように、同一位相のLO信号を変調信号で変調した変調高周波信号を複数用意し、それらを加算することで歪の少ない校正信号の生成を可能にしている。
このとき、局部発振部(16)の位相90度のLO信号を変調信号で変調して生成した変調高周波信号をさらに加算しても良い。これは、変調信号S1からS4全てを同時に用いている場合に該当する。従って、同一位相だけでなく、異なる位相のLO信号を変調信号で変調した変調高周波信号を複数用意し、それらを加算してもよい。その際、少なくとも片方の位相において二つ以上の変調高周波信号を加算する。
信号の歪みは主として乗算器において発生する。具体的には、乗算器(ここでは23乃至26)等である。複数の信号を加算したものを乗算器にかけると、もとの信号同士の変調歪みも発生してしまう。しかし、それぞれの信号(ここでは変調信号S1ないし変調信号S4)を先に高周波帯域に変調しておき、それを加算すると元の信号同士に起因する歪みの発生が抑えられる。
図4を参照して、信号発生部(2)の構成について説明する。信号発生部(2)には、2次歪用信号発生部(40)と、3次歪用信号発生部(50)と、SGスイッチ(39)を含む。2次歪用信号発生部(40)と3次歪用信号発生部(50)はそれぞれ変調信号S1乃至変調信号S4の信号を発生する。それらの信号は、SGスイッチ(39)に入力される。SGスイッチ(39)は、2次歪用信号発生部(40)からの信号または、3次歪用信号発生部(50)からの信号を切り替えて出力する。
図5に2次歪用信号発生部(40)の構成を示す。2次歪用信号発生部(40)は、2つの矩形波信号源(41、42)と、2つの乗算器(46a、46b)を含む。これらの乗算器は論理演算素子で構成する。矩形波信号源(41)の周波数をf1、矩形波信号源(42)の周波数をf2とする。また、f2の値はf1の値の偶数倍となるようにする。後述するが、本実施の形態においては、歪検出のための周波数にスプリアスを持たない校正信号を作成するためにこの条件を用いた。
矩形波信号源(41)は、0と1の値を持つデューティー比1/2の矩形波であるデジタル信号を発生する。また、矩形波信号源(41)は、位相がゼロと90度の2種類の矩形波であるデジタル信号を発生する。矩形波信号源(42)は、−1と1の値を持つディーティー比1/2の矩形波であるデジタル信号を発生する。位相は1種類である。これらの信号が校正信号の基本信号となる。なお、矩形波であるデジタル信号を「矩形波デジタル信号」とも呼ぶ。従って、「矩形波信号」は矩形波であるデジタル信号と矩形波であるアナログ信号を含む。
矩形波信号源(41)からの位相ゼロの矩形波デジタル信号と、矩形波信号源(42)からの矩形波デジタル信号は、乗算器(46a)に入力される。乗算器(46a)は論理演算素子であるので、入力されたデジタル信号同士の演算結果が出力される。すなわち出力は、−1と0と1の値を有するデジタル信号となる。また、矩形波信号源(41)の位相90度の矩形波デジタル信号と、矩形波信号源(42)の矩形波デジタル信号は乗算器(46b)に入力される。ここでも乗算器(46b)は論理演算素子であるので同様に論理演算が行われ、出力は同じく−1と0と1の値を有するデジタル信号となる。乗算器(46a)と乗算器(46b)の出力は変調信号S1乃至変調信号S4となる。
このように、変調信号S1乃至変調信号S4は、論理演算素子である乗算器(46a)と乗算器(46b)を経て作成される信号であり、−1と0と1の値を取る3値デジタル信号(すなわち2ビット信号)である。乗算器(46a)と乗算器(46b)は、論理演算素子で構成したので、これらの乗算器は演算器と言え、特に論理積演算器と言える。また、より広義には、非線形合成部と言い換えることもできる。非線形合成部とは加算以外の操作を行う素子を含む意味である。例えば乗算や論理演算を行う素子が含まれることを意味する。基本信号に矩形波であるデジタル信号を用いたのは、基本信号同士の乗算を論理演算で得ることができるからである。これによって、アナログ信号同士を乗算する場合のような歪の発生を抑制することができる。
乗算器(46a)と乗算器(46b)の出力は、それぞれ変調信号S1および変調信号S2となる。また、それぞれ変調信号S3および変調信号S4の信号にもなる。すなわち、受信回路系のI相を校正する場合は変調信号S1および変調信号S2の信号として出力し、Q相側回路経路を補償校正する場合は変調信号S3および変調信号S4の信号として出力する。変調信号S1乃至変調信号S4の信号から校正信号は作成される。
変調信号S1乃至変調信号S4の出力の切り替えは、切替えスイッチ(48)にて行う。また、切替えスイッチ(48)は、変調信号S1から変調信号S4の信号を同時に出力することもできる。すなわち、乗算器(46a)の出力を変調信号S1および変調信号S3として、また乗算器(46b)の出力を変調信号S2および変調信号S4として同時に出力することもできる。
図6には3次歪用信号発生部(50)の詳細な構成を示す。3次歪信号発生部(50)は、3つの矩形波信号源(51、52、53)と、複素乗算部(57)を含む。矩形波信号源(51)は、周波数f1、デューティー比1/2の矩形波デジタル信号を発生し、また、位相がゼロと90度の2種類の矩形波デジタル信号を発生する。
矩形波信号源(52)は、周波数f2、デューティー比1/2の矩形波デジタル信号で、位相がゼロ度と90度の2種類の信号を発生する。矩形波信号源(53)は矩形波信号源(52)の2倍の周波数の信号を発生する。すなわち、周波数2*f2、デューティー比1/2の矩形波デジタル信号で、位相がゼロ度と90度の2種類を発生する。また、3つの矩形波信号源(51、52、53)は、それぞれ−1から1までの値の矩形波デジタル信号を発生する。ここでもf2の値はf1の値の偶数倍とした。なお、「*」は乗算を表す(以下同じ)。
複素乗算部(57)には、矩形波信号源(51)と矩形波信号源(52)からの位相がゼロと90度のそれぞれの矩形波デジタル信号が入力される。複素乗算部(57)は、これらの信号を複素数として乗算を行う。従って、複素乗算部(57)の出力は位相がゼロと90度の成分が出力される。位相がゼロの場合を変調信号S1、位相が90度の場合を変調信号S3とする。
矩形波信号源(53)の出力は直接3次歪用信号発生部(50)の出力となり、位相がゼロの場合は変調信号S2、位相が90度の場合は変調信号S4となる。3次歪用信号発生部(50)は、2次歪用信号発生部(40)の切替えスイッチ(48)に相当する部分を持たない。すなわち、3次歪を校正する際は変調信号S1ないし変調信号S4の信号を全て同時に出力する。
図7に複素乗算部(57)の内容を示す。複素乗算部(57)には、周波数f1の位相ゼロ度と90度の矩形波デジタル信号および周波数f2の位相ゼロ度と90度信の矩形波デジタル信号の4つの矩形波デジタル信号が入力される。出力信号の周波数はf1+f2の周波数となる。そして、4つの乗算器(61乃至64)と2つの加算器(65、66)から構成される。乗算器は2値信号に対する乗算を行う。
加算器(65)は2つの入力値を加算したものを、2で割った値を出力するもので、加算器(66)は2つの入力の差を2で割った値を出力する。これらの加算回路は2値を入力として3値信号を出力するものである。4つの乗算器(61乃至64)と2つの加算器(65、66)は論理演算素子である。つまり、複素乗算部(57)は論理演算素子により実現される。すなわち、複素乗算部(57)は非線形合成部と言える。
複素乗算部(57)の出力は、位相ゼロ度をcos成分、位相90度をsin成分とした際の複素計算の結果が得られる。具体的に記載すると、位相ゼロ度の出力(すなわち変調信号S1)は、cos(2*π(f1+f2)t)を基本波成分とするデジタル波であり、位相90度(すなわち変調信号S3)はsin(2*π(f1+f2)t)を基本波成分とするデジタル波である。このような処理を行うことで、イメージ信号(この場合はf1−f2の周波数の信号)の発生を抑えることができるため、複素乗算部(57)は、イメージ・リジェクション・ミキサとも呼ばれる。
校正信号と補償の説明
2次歪みの補償
図8を参照して2次歪用校正信号について説明する。なお、図1で示した本発明のチューナと図5で示した2次歪用信号発生部(40)については、適宜参照するものとする。
矩形波信号源(41)の周波数f1と矩形波信号源(42)の周波数f2は、以下のように決める。f2は受信信号帯域幅の半分より高い値を選び、f1は十分に低い値にする。局部発振部(16)が発生するLO信号の周波数foは、f2より十分に高い値である。従ってI相用の2次歪用校正信号は、S1*cos((2π*fo)*t)+S2*cos((2π*fo)*t)となる。このような場合、信号発生部(2)から変調信号S1および変調信号S2を出力すると、校正信号発生部(3)の出力すなわち校正信号は、図8(a)のような信号となる。
図8は、横軸が周波数で、縦軸が信号の強度を示す。実際には、多くの周波数で高調波による出力(スプリアス)があるが、説明に必要な近辺だけを示してある。最も大きな出力はfo+f2にあり、その脇にf1だけ離れたfo+f2+f1とfo+f2−f1がある。fo+f2から離れると共に強度は低下してゆく。ところで、周波数f1の信号はデューティー比1/2の矩形波デジタル信号であるので、偶数次高調波はゼロになる。
すなわち、2*f1といったオフセット周波数成分は校正信号(Sc)では発生せず、局部発振部(16)の周波数foの周辺にはfo±f1、fo±3*f1といったスプリアスは発生するものの、fo±2*f1の信号は発生しない。f2を大きく設定したのは、校正信号における受信信号帯域内の信号レベルを小さくするためである。
この校正信号(Sc)を受信回路系に入力し、局部発振部(16)によるLO信号を用いる周波数変換部(12)で周波数変換を行うと、図8(b)のような信号になる。ここで、周波数変換部(12)での操作は周波数foだけ周波数を下げることである。従って、図8(a)のfoは図8(b)のf=0の点に周波数変換される。
このとき、校正信号(Sc)には、fo±2*f1の信号はないので、校正信号(Sc)を周波数変換した結果からは、2*f1という信号は出てこない。すなわち、2*f1という信号が復調部(15)からの出力で確認されたとすると、これは低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)等の受信回路系で発生した2次歪みであることがわかる。
さらに、強度の大きな信号であるfo+f2やfo+f2−f1、fo+f2+f1は、それぞれf2、f2−f1、f2+f1に周波数変換される。f2は受信信号帯域幅の半分より高いため、2*f1よりも十分周波数は高い。f2が受信信号帯域幅の半分より十分に高いために、校正信号の受信信号帯域内の成分が小さくなる。従って、ダイナミックレンジがあまり高くないA/D変換器(34)やOFDM処理部部(36)を用いても、歪によって発生した信号成分を精度良く検出できる。
このように、校正信号発生部(3)からの校正信号(Sc)を受信回路系に入力し、復調部(15)が有するFFT処理部(36)からの2*f1の信号成分を検出することで、受信回路系の2次歪み量を知る事が出来る。
この結果を制御部(4)が受け取り、2*f1の信号成分が最小になるように2次歪み補償調整信号(a2)を調整することで、受信回路系の2次歪みを歪補償校正する。受信回路系全体で見ると2次歪みは低雑音アンプ部(11)においても発生し、低雑音アンプ部(11)の出力信号の平衡もずれている。そこで、周波数変換部(12)の平衡ミキサである乗算器(31)および乗算器(32)の平衡を調整することにより低雑音アンプ(11)を含めた平衡を調整し、受信回路系全体の2次歪みを補償校正する。
次に2次歪用校正信号と2次歪の補償校正の手順を具体的に例示する。f1を1/14MHz(0.071MHz)とし、f2を64/7MHz(9.14MHz)とする。これは、f2が受信信号帯域幅の半分より高く、f1を受信信号帯域幅の半分より低いという上記の条件を満たしている。またf2はf1の偶数倍にもなっている。
f2−f1は127/14MHz(約9.07MHz)となり、チャンネルの帯域すなわち受信信号帯域幅(7.61MHz)の半分より十分に高い。また2次歪みは復調部(15)の出力において2/14MHz(=1/7MHz)の成分を調べ、この成分が小さくなるように2次歪補償調整信号で周波数変換部(12)を調整すればよい。2/14MHzは、2*f1の周波数に相当する。
図1乃至図3を参照して、周波数変換部(12)の乗算器(31)の調整を説明する。乗算器(31)はI相の回路経路である。まず、信号発生部(2)により変調信号S1およびS2を出力する。変調信号S3およびS4はゼロとする。そして、ベースバンド信号(Sb)における1/7MHzの信号成分を復調部(15)により検出し、その信号成分の値に応じて2次歪み補償調整信号(a21)を調整する。この調整は、ベースバンド信号(Sb)における1/7MHzの信号成分の大きさが最小になるように行う。
復調部(15)はFFT処理部(36)を含むので、ベースバンド信号(Sb)における1/7MHz信号をベクトルとして検出できる。2次歪みによって発生するベースバンド信号(Sb)における1/7MHzの信号のベクトルの方向は、矩形波信号源(41、42)の出力信号の位相および受信器における2次歪補償の過不足によってきまるので、2分法やニュートン法を用いて2次歪補償調整信号(a21)の最適値を探索する事が出来る。
次に乗算器(32)を調整する。乗算器(32)はQ相の回路経路である。信号発生部(2)により変調信号S3およびS4を出力し、変調信号S1およびS2はゼロとする。乗算器(31)を調整するのと同じように2次歪補償調整信号(a22)を調整してベースバンド信号の2*f1の信号成分が最小になるようにする。このときは、2次歪みによって発生するベースバンド信号(Sb)における1/7MHzの信号成分のベクトル方向が乗算器(31)を調整するときとは異なる。以上のようにI相およびQ層の回路経路を別々に調整して、受信回路系の2次歪みを補償校正する。
3次歪みの補償
次に図9を参照して、3次歪用の校正信号について説明する。3次歪用校正信号は、3次歪用信号発生部(50)で変調信号(S1乃至S4)を発生させ、信号発生部(2)から出力され、そして、周波数がfoである局部発振部(16)のLO信号と乗算されて作られる。3次歪用校正信号(Sc)は図9(a)のようになる。
図9(a)は、図8(a)と同じく、横軸が周波数、縦軸は強度を表す。強度の大きな信号は、fo+f1+f2とfo+2*f2である。ここで、foに近い3次歪みは、2*(fo+f1+f2)−(fo+2*f2)=fo+2*f1である。しかし、f1の偶数次高調波の項はゼロになるので、校正信号(Sc)には、fo+2*f1の成分はない。つまりこのようになるようにf1とf2を選択するわけである。従ってこの校正信号(Sc)を受信回路系に入力して局部発振部(16)で周波数変換した後の信号に2*f1の成分があれば、それは受信回路系で発生した3次歪みであることがわかる。
また、この校正信号で発生する2次歪みはfo+f1+f2とfo+2*f2等が発生するが、局部発振部(16)で周波数変換した後の信号はf1+f2若しくは2*f2であり、2*f1の信号の周波数より充分高い。すなわち、3次歪みを検出する2*f1の信号は他の信号の影響を受けないように設定されている。
このように、受信信号帯域幅の半分よりある程度高い周波数f2と十分に低い周波数f1を選び、上記に説明したような3次歪用校正信号をつくることで、校正信号(Sc)中における受信信号帯域内の信号成分を小さく抑えることができるので、復調部(15)のA/D変換器(34)やFFT処理部(36)のダイナミックレンジがあまり大きくなくても、歪信号成分を精度良く検出することができ、精度の高い歪補償校正が可能となる。
次に3次歪用の校正信号を具体的に例示する。矩形波信号源(51)の周波数f1は1/14MHzとする。この信号はデューティー比1/2の矩形波デジタル信号である。矩形波信号源(52)の周波数f2は64/7MHzとする。f1とf2は2次歪用校正信号の場合と同じである。従って、3次歪として2*f2の信号を発生する矩形波信号源(53)の周波数は128/7MHzとなる。この場合の校正信号Scは、レベルが−30dBmとなるように生成する。3次歪は復調部(15)により1/7MHzの信号を検出することにより測定する。1/7MHzは2*f1の信号である。
この場合においても、校正信号(Sc)の受信信号帯域内の信号のレベルは信号全体のレベルより約29dB低い値となるので、復調部(15)の分解能があまり高くなくても歪によって発生した信号を感度よく検出することができる。また、デューティー比1/2の矩形波デジタル信号は偶数次の高調波成分をもたないので、校正信号(Sc)自体に対しては2*f1であるオフセット(1/7)MHzにスプリアスを持たず、感度のよい3次歪の検出が可能である。
復調部(15)で検出した3次歪に基づいて、制御部(4)は、低雑音アンプ部(11)に対して3次歪補償調整信号(a3)を出力する。3次歪みの場合も検出した3次歪み、すなわち、1/7MHzの周波数成分がゼロになるように調整を行う。
ここで、周波数変換部(12)においても3次歪は発生するが、2つの平衡ミキサである乗算器(31と32)の特性がそろっている場合は、低雑音アンプ部(11)と周波数変換部(12)において発生する3次歪を3次歪補償調整信号(a3)により調整してヌル・ポイントに調整することができる。しかし、2つの平衡ミキサの3次歪の特性が完全に揃うわけではないので、受信回路系の3次歪である1/7MHzもしくは−1/7MHzの信号をゼロにできない場合もある。その場合は、これらの信号が最小になるように調整する。
以上のように本実施の形態では、矩形波信号源からデューティー比1/2で、一方の周波数が他方の偶数倍になる矩形波デジタル信号を2種類発生させ、それらの信号をもとに4種類の2値若しくは3値のデジタル信号、すなわち4種類の変調信号を作成し、それぞれの変調信号で局部発振部(16)のLO信号を高周波に変換した後、加算することで、歪検出周波数にはスプリアスのない校正信号を作成した。
また、校正信号をデジタル信号を使って作成することにより、乗算器(46a、46b、57)を論理演算素子で構成することができ、さらに歪みが少ない校正信号を作成した。この校正信号を用いることで校正信号の歪み分を考慮することなく、受信回路系だけのひずみを補償することができる。
また、校正信号として使用する2種類の矩形波デジタル信号の、一方の周波数を受信信号帯域幅の半分より高くし、他方を十分低くすることで、受信信号帯域内の校正信号成分を小さくすることができる。このためダイナミックレンジが小さいA/D変換器(35)やFFT処理部(36)を復調部(15)で用いても精度よく歪みを検出できる。
なお、本実施の形態では、校正信号は、局部発振部(16)の同一位相のLO信号に対して少なくとも二つの変調信号により変調した変調高周波信号を加算して生成すると説明した。例えば、局部発振部(16)の位相0度のLO信号を変調信号S1とS2でそれぞれ変調し、それらの得られた信号を加算する。
ここで、変調信号は2値若しくは3値のデジタル信号であり、乗算器(23乃至26)はアナログスイッチで実現できる。これは言い換えると、2値若しくは3値のデジタル信号でオンオフするスイッチにLO信号を入力しているとも言える。すなわち、変調信号の値が「1」の時は、LO信号をそのまま通過させ、ゼロの時はLO信号を通過させない。また、値が「−1」の時はLO信号を反転して出力する。
特に局部発振部(16)が位相ゼロの出力に対して、ゼロ度と180度をペアで出力している場合は、変調信号の値が「−1」の時は位相が180度のLO信号を出力させることにすれば、容易に実現できる。
このように校正信号は、LO信号で変調信号を変調して作成しているばかりでなく、LO信号を変調信号でスイッチングしているという見方もできる。従って、本実施の形態で説明した信号発生部(2)は、乗算器(23乃至26)のスイッチ制御のための信号であればよい。たとえば、変調信号と同じ信号を出力するためのデータ列を情報として記録したテーブルをメモリとして有するMPU(Micro Processing Unit)などである。また、MPUはプログラムによる動作が可能であるので、テーブルを有するのではなく、プログラムによって変調信号と同じ信号を出力させるようにしてもよい。
また、上記で説明した2次歪および3次歪の補償校正は、それぞれ別々に行う。理想的には2次歪補償および3次歪補償は独立しているが、実際にはある程度の依存性があるため、好ましくはそれぞれの補償校正を繰り返して行い2次および3次の歪がともに十分に小さくなるようにするのがよい。
また、2次歪の歪補償校正において、I相とQ相の歪補償校正を同時に行ってもよい。この場合は、変調信号S1、S2と変調信号S3、S4を同時に発生させる。これは、切替えスイッチ(48)でS1乃至S4を全て出力させるようにする。S3、S4はS1、S2とそれぞれ同じ信号である。しかし、これらの信号は局部発振部(16)からの異なる位相の信号が乗算されるため、位相の異なる校正信号が加算された状態の校正信号(Sc)が受信回路系に入力される。
この校正信号(Sc)に対してI相およびQ相の2次歪によって発生するベースバンド信号(Sb)における2*f1(上記の説明で1/7MHzの信号)の信号成分のベクトルは互いに直交に近い角度を示す。すなわち、位相の異なる2*f1の信号がI相の歪およびQ相の歪として検出される。そこで、それぞれのベクトル成分の大きさを小さくするように2次補償調整信号(a12およびa22)の値を調整する。
さらに、この際にI相の校正信号とQ相の校正信号の周波数を変えてもよい。すなわち、変調信号S1、変調信号S2に出力するための矩形波信号源とは別の矩形波信号源を変調信号S3、変調信号S4用として用意し、それぞれに使う周波数を異なる周波数にすることにより、より干渉のすくない状態で歪測定が可能になり、その測定に応じた補償校正が可能になる。
また、上記で説明した2次歪用校正信号および3次歪用校正信号の具体的な数値は、一例であるに過ぎず、デューティー比が1/2の矩形波デジタル信号であって、f1は受信信号帯域幅の1/4より低い周波数でありかつ十分に低い周波数であり、f2は受信信号帯域幅の半分より高い周波数であり、f2がf1の偶数倍となる組み合わせであれば、同様の結果を得ることができる。
また、本実施の形態では、校正信号の作成に矩形波デジタル信号を用いたが、矩形波信号であればよい。また、矩形波信号は、デューティー比1/2で一方の周波数が他方の周波数の偶数倍異なる矩形波信号を用いたが、デューティー比1/3で一方の周波数が他方の周波数の3の倍数倍異なる矩形波信号の組合せでもよい。
すなわち、まず校正信号は複数種類の矩形波信号を用いる。一番低い周波数以外の矩形波信号の周波数は、一番周波数の低い矩形波信号(Smin)の周波数(fmin)に、一番周波数の低い矩形波信号(Smin)のデューティー比を分数(k/m:「k」と「m」はそれぞれ整数)で表したときの分母(m)の値に整数倍の値を乗じた値(n*m*fmin:「n」は整数)になっていればよい。
その際、歪を検出する周波数は、一番低い周波数の矩形波信号(Smin)の周波数(fmin)に、その矩形波信号のデューティー比を分数(k/m)で表現したときの分母の値(m)の整数倍の値を乗じた周波数(l*m*fmin:「l」は整数)であればよい。
また、本実施の形態のように校正信号には、2値若しくは3値のデジタル信号を用いるのが好ましいが、周波数の関係を同じにした矩形波や正弦波のアナログ信号で置き換えてもよい。
また、本実施の形態では複素乗算部(57)を用いたが、特にこれに限定されるものではなく、通常の乗算器を用いてもよい。
また、本実施の形態では、矩形波信号源(41、42)による2値信号を合成し、変調信号S1ないしS4を生成してから、局部発振部(16)のLO信号を変調し校正信号(Sc)を生成したが、LO信号に対してカスケードに変調をかけるようにしてもよい。そのようにすることで、校正信号(Sc)生成における歪の発生がさらに抑えられる。
また、本実施の形態では、2次歪を周波数変換部(12)で行い、3次歪を低雑音アンプ部(11)で補償するようにしたが、2次歪を低雑音アンプ部(11)、3次歪を周波数変換部(12)で行ってもよい。また2次および3次歪を低雑音アンプ部(11)だけで行ってもよいし、周波数変換部(12)だけで行なってもよい。
また、矩形波信号源や局部発振部(16)には2相信号発生器を用いた場合を説明したが、特に限定されるものではなく、単相の信号発生器を組み合わせてもよい。
本実施の形態においては、変調信号S1からS4を生成するのに2値のデジタル信号を用いて生成していたが、2値のアナログ信号(アナログの矩形波)などをもとに変調信号S1からS4を生成するようにしてもよい。生成される信号が2値または3値信号であるので、アナログ信号処理を用いても歪の少ない信号を生成することができる。すなわち、校正信号の基本信号はアナログ信号であってもよい。
また、本実施の形態においては変調信号S1からS4を生成するのに2値のデジタル信号を用いていたが、2値である必要はなく、さらに多値のデジタル信号を用いてもよい。信号を多値化することにより、スプリアス強度の調整などを行うことができる。その場合、結果として生成される変調信号S1からS4は4値以上のデジタル信号になる場合があるが、乗算器23から26の実現方法に配慮を加えることにより、歪校正信号(Sc)に対して歪検出信号の周波数にスプリアスを持たせないようにすることができる。
低雑音アンプ部(11)においては、外部からの信号によりそのゲインが可変となっている。低雑音アンプ部での歪の大きさは、低雑音アンプ部のゲインによっても変化する。受信回路系の歪が問題となるのは、受信信号が比較的小さい場合なので低雑音アンプ部(11)のゲインが最大となっている場合が多い。したがって、歪補償は通常は低雑音アンプ部(11)のゲインが最大の状態において校正する。しかし、妨害波のレベルが高いと低雑音アンプ部(11)の信号が飽和してしまう場合があるので、その際は低雑音アンプ部(11)のゲインを下げなければならない。するとそのような場合、歪補償を校正しなおす必要がある。そこで、受信状態において設定されている低雑音アンプ(11)のゲインに応じて、歪補償校正を行うようにしても良い。この場合には、低雑音アンプ部(11)のゲインが変化したことを歪補償校正のきっかけとすればよい。また、低雑音アンプ部(11)のゲインの各値に対して歪補償を適切に行う補償調整信号の値を予め校正しておき、それらの値を記憶しておく。そして、低雑音アンプ部(11)のゲインの値に応じて、記憶しておいた歪補償調整信号の値で歪補償校正を行うようにしても良い。
本実施の形態においては、LO信号を変調信号S1からS4で変調する際に乗算器(実際にはアナログスイッチ)を用いていたが、変調する手段は乗算器である必要はなく、他の変調手段を用いてもよい。例えば、バイポーラ素子によりチューナICが実現されている場合は、ギルバートセルなどのミキサにより変調手段を実現してもよい。なお、チューナICとは、IC上にチューナを作成したものをいう。従って、S1ないしS4でLO信号を変調する乗算器は、他の変調手段を含めて、変調部と言い換えても良い。
また、本実施の形態はOFDM方式の信号で説明したが、本発明はOFDM方式の信号に対するチューナに限定されるものではない。また、本実施の形態で示したチューナの構成要素は、他の実施の形態でも適用することができ、他の実施の形態で示したチューナの構成要素を適宜本実施の形態の構成要素と置き換えてもよい。
また、本発明のチューナは、モノリシックICもしくはMOSタイプのIC上に作成されてもよい。また、本発明のチューナはデジタルテレビやデジタルラジオなどの受信専用機器だけでなく、トランシーバーや携帯電話などの通信機器に適用してもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる周波数の校正信号の例を示す。本実施の形態では、OFDM方式のデジタル・テレビのチューナを想定する。チューナはヘテロダイン方式の1種である低IF方式である。OFDMのサブキャリア間隔は1/1008MHzであり、中間周波数におけるIF帯域は0.24MHzから0.65MHzである。
図10に本実施の形態のチューナ全体のブロック図を示す。局部発振部(16)の発振周波数(fo)は受信信号の中心周波数とは異なるが、本実施例においてはイメージ信号もFFT処理部(36)で処理するので、ハードウェアの形態としては実施の形態1と同じである。実施の形態1との違いとしては、実施の形態1(図1)のスイッチ(28)の機能が第1のアンプ(71)と加算器(72)と低雑音アンプ部(11)に実現されている。低雑音アンプ部(11)はさらに第2のアンプ(73)とバッファ(74)からなる。3次歪みの校正はこのバッファ(74)で行う。
図11には第1のアンプ(71)、加算器(72)、第2のアンプ(73)、バッファ(74)の具体的な構成を示す。図11では、第1のアンプ(71)と加算器(72)と第2のアンプ(73)とバッファ(74)に大きく分かれる。
アンテナ(9)からの高周波信号は、F_rf_in(80)に入力される。アンテナ(9)からの高周波信号は、第1段目のアンプ(71)で最初の増幅を行なう。第1段目のアンプ(71)の出力は第2段目のアンプ(73)でさらに増幅される。第2段目のアンプ(73)は3つのFET(Field Effect Transistor)からなる。
校正信号(Sc)は加算器(72)から入力される。3次歪みは主として第2段目のアンプ(73)で発生するので、その手前から入力する必要があるからである。
第2段目のアンプ(73)からの出力(81と82)は、バッファ(74)に入力される。バッファ(74)で、3次歪みの補償を行う。補償調整信号(a3)を調整するとFET(83)とFET(84)において、受信回路系が発生する3次歪とは逆相の歪を故意に生成させることができる。そして、その信号を加算することで3次歪みを補償する。出力はBuf_out_n(85)とBuf_out_p(86)として出力される。
図12に信号発生部(2)および2次3次歪用信号発生部(90)の構成を示す。基本信号を生成する矩形波信号源(91)の出力信号周波数f3は(8/7)MHz(約1.14MHz)であり、矩形波信号源(92)の出力信号周波数f4は(8/9)MHz(約0.89MHz)である。
本実施の形態では2次歪みと3次歪みを同時に検出する。従って、信号発生部(2)には2次3次歪用信号発生部(90)だけを有する。この点は実施の形態1とが2次歪用と3次歪用の2種類の歪用信号発生部を有していた点と異なる。
それぞれの矩形波信号源が発生する矩形波デジタル信号はデューティー比1/2であり、位相もゼロ度と90度の2種類の信号を出力する。矩形波信号源(91)の位相ゼロ度の矩形波デジタル信号は変調信号(S1)となり、位相90度の矩形波デジタル信号は変調信号(S3)となる。同様に、矩形波信号源(92)の位相ゼロ度の矩形波デジタル信号は変調信号(S2)となり、位相90度の矩形波デジタル信号は変調信号(S4)となる。
図13にIF帯域とf3、f4、2次歪み、3次歪みの周波数の関係を示す。周波数変換部(12)でダウンコンバートされた校正信号は2種類の周波数(f3、f4)の矩形波信号から構成される。そしてそれぞれの信号はIF帯域より高い周波数に設定した。すなわち、これらの信号はIF帯域にはスプリアスを持たない。2次歪みはf3−f4の周波数に、3次歪みは2*f4−f3に発生する。
また、これらの信号は局部発振部(16)のLO信号を乗算することで一度高周波に周波数変換してから加算されているので、ほとんど歪みのない校正信号となっていた。従って、2次歪や3次歪となる上記周波数に信号成分が検出されれば、受信回路系によって生じた歪と判断できる。すなわち、受信回路系自体の歪みを補償することができる。このように校正信号に用いる矩形波デジタル信号の周波数は、実施の形態1で示した関係だけでなく、受信信号帯域幅より高い周波数に設定することもできる。
歪補償校正は実施の形態1と同じように行なう。すなわち、校正信号発生部(3)から校正信号(Sc)を出力し、加算器(72)から受信回路系に入力する。復調部(15)のFFT処理部(36)の出力から、歪量を検出する。そして制御部(4)は、2次歪みを補償校正する場合は16/63MHzの信号成分が最小になるように周波数変換部(12)を2次歪み補償調整信号(a2)で調整する。
また3次歪みを補償校正する場合は、制御部(4)は復調部(15)のFFT処理部(36)の出力から40/63MHzの信号成分が最小になるように、低雑音アンプ部(11)を調整する。低雑音アンプ部(11)の調整は、上記で説明したように、バッファ(74)で調整する。
なお、本実施の形態で示した加算器(72)および低雑音アンプ部(11)の構成は他の実施の形態でも適用することができる。
(実施の形態3)
校正信号による受信回路系の補償校正は、受信動作を中断するか若しくは受信していない期間に行われる。しかし、テレビ受信機は、機器の電源がONになっている限り常に受信状態にある。そこで、テレビ受信機やラジオ受信機においては、信号を受信中に校正信号による補償校正動作を行う必要が生じる。本実施の形態では、OFDM方式でのデジタルテレビ放送等の受信中に歪補償校正を行う実施形態を説明する。
OFDM方式では、信号を送信する時、シンボル信号を送出する前に通常ガードインタバルという期間を設けて、シンボル信号の最後の部分を送出する。これはマルチパスと呼ばれる現象が発生しても受信側において信号を正しく受信することを可能とするために挿入される期間である。この期間を利用して校正信号による受信回路の歪補償校正を行う。なお、OFDMにおいてはガードインターバルにおいても信号は送信されており、通常はチューナは受信状態を継続している。
図14に本実施の形態の受信機の構成を示す。実施の形態2の受信機の構成とほぼ同じであるが、復調部(15)からFFTの出力(8)だけでなく、ガードインタバル信号を制御部(4)に入力する。ガードインタバル信号は、図3のガードインタバル除去部(35)から出力されるタイミング通知信号(7)で、ガードインタバルの期間が到来したこと、若しくは到来するであろうタイミングを通知する場合には、このように呼ぶ。
制御部(4)はガードインタバル信号(7)によってチューナがガードインタバルの期間を受信していることを知り、校正信号(Sc)を発生させ、FFT処理部(36)の所定の周波数成分が最小になるように低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)を調整する。この時、ガードインタバル除去部(35)は校正信号(Sc)をFFT処理部(36)に通す。なお、図14では加算器(72)を有する構成を示したが、この部分は図1のスイッチ(28)で構成してもよい。
周波数設定は実施の形態1と同じであるとする。すなわち、OFDM方式のデジタルテレビジョンチューナを想定し、チューナ方式はダイレクトコンバージョン方式である。バンド幅は、7.61MHzで、サブキャリア間隔は1/448MHzである。シンボル信号を送出する期間とガードインタバルの期間はそれぞれ896μsと112μsであるとする。このガードインタバルの期間の真中の56μsの期間を用いて歪補償校正を行う。
図15にOFDM方式の受信信号とチューナの動作の関係を示す。受信信号は、ガードインタバルの期間(100)とシンボル信号の期間(101)が交互に送信されてくる。この時チューナは、ガードインタバルの期間(100)には、歪補償校正動作を行い(104および105)、シンボル信号を受信している期間(101)はシンボル信号を受信(103)する。2次歪みの補償校正(104)と3次歪みの補償校正(105)は交互に行う。なお、ガードインタバル期間(100)には、歪補償校正動作を行っていない期間(102)が存在してもよい。
2次歪補償校正の場合についても3次歪補償校正においても、校正信号の基本周期は(1/14)MHzであるので、原理的にはその逆数である14μsの期間があれば歪補償校正を行うことができる。しかし、歪補償校正の期間を長く取ることによりS/Nの観点から歪検出能力が上がる。そこで2次と3次の歪み補償校正を複数のガードインタバルの期間(100)に渡って行なうのが好適である。すなわち、歪補償校正信号を入れて歪成分を検出する動作を複数のガードインタバルにおいて行い、それらの結果を総合して歪信号の検出をして歪補償校正を行う。
また、2次および3次の歪み補償校正をそれぞれ複数のガードインタバルにおける歪補償校正信号に対するベースバンド信号の総和を取ってから歪信号成分を検出するようにしてもよいし、複数のガードインタバルにおいて歪補償校正信号に対して検出された歪信号成分の総和を取るようにしてもよい。もちろん、1回のガードインタバルの期間(100)に2次および3次の歪み補償校正をおこなってもよい。
また、ガードインタバル中においては、復調部は種々の処理を行う必要があるので、FFT処理を行なうことは負担になる。そのため、歪信号検出に要する計算量は少ない方が望ましい。歪信号検出のためには、ベースバンド信号における周波数(1/7)MHzの信号成分のみを検出すればよいので、ベースバンド信号と周波数(1/7)MHzのサイン波の内積およびベースバンド信号と周波数(1/7)MHzのコサイン波の内積のみを計算するようにしてもよい。
図16にこの場合の受信機の構成を示す。増幅部(14)の出力であるベースバンド信号をA/D変換した後の信号(110)を制御部(4)に入力し、この信号に所望周波数(この場合1/7MHz)のサイン波およびコサイン波の内積を計算する。従って、この場合はFFTの信号(8)は制御部(4)には入力する必要はない。
また、歪補償校正信号に対するベースバンド信号には歪によって発生した信号以外にはベースバンド帯域内には(1/7)MHzの整数倍のスプリアスが含まれないので、周波数(1/7)MHzの信号成分を検出するために、ベースバンド信号と周波数(1/7)MHzの2相の矩形波との内積を取るようにしてもよい。
この場合、信号検出に乗算を必要とせず、加算および減算のみで済むので、信号検出に要する資源を少なく抑えることができる。さらに、歪信号の位相が既知である場合は、ベースバンド信号と1相の矩形波との内積を取ることにより歪信号を検出することができる。
本実施の形態によれば、OFDM方式のガードインタバルの期間中に、校正信号を用いて受信回路系を歪補償校正するので、利用者は受信機が補償動作をしていることを意識せず受信回路系を最善の状態に保持できる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、校正信号による受信回路の補償動作をエラーレートに基づいて行う。図17に本実施の形態の構成を示す。復調部(15)の後段にエラーレート測定部(17:図では「BER」と記した。)が配置される。エラーレート測定部(17)は、復調部(15)により復調された信号のエラーレートを測定し、エラーレート信号(111)を出力する。エラーレート信号(111)は、制御部(4)に入力される。
制御部(4)は、エラーレートの値に応じて、校正信号(Sc)を用いた受信回路系の歪補償校正を行う。歪補償校正動作は、制御部(4)から校正信号発生部(3)の信号発生部(2)へ信号発生の指示信号(115)によって行なわれる。なお、本実施の形態では、指示信号(112)を明示したが、他の実施の形態においても適宜あるものとしてよい。
図18に本実施の形態のチューナの歪補償校正動作の処理フローを示す。歪補償校正動作を開始(S1000)するのは、チューナの制御部(4)若しくはチューナ以外の制御装置の指示によってもよい。または、チューナの電源投入をきっかけとしてもよい。歪補償校正動作が開始されたら、チャンネルが変更されたか否かを判断する(S1002)。
これは、局部発振部(16)の周波数が変更されたことで判断してもよいし、チューナ以外の制御装置のチャンネル変更の指示に基づいても良い。チャンネルが変更された場合(S1002のY分岐)は、歪補償校正動作(S1007)を行なう。チャンネル変更時に歪補償校正動作を行うことにより、テレビ受信を行なっているユーザの意思により歪補償校正を行い、受信状態を良好な状態にする手段を与えることができる。
この場合は、局部発振部(16)の周波数が変更されているので、制御部(4)はガードインタバルの期間をガードインタバル信号(7)で検知し、信号発振部(2)へ校正信号(Sc)の発生を指示する。そして、歪補償校正を行う。
次にエラーレートがThmaxより大きい場合(S1003のY分岐)は、短い期間(Ts)毎(S1004)に歪補償校正動作(S1007)を行う。Thmaxは、視聴に耐える画像を受信できていないほど、高いエラーレートの最低値を示す。この場合は、一定期間(Ts)毎に歪補償校正を行う。また、この場合は、受信信号に対して同期がとれていない場合もあり、ガードインタバルの期間に関わらず、制御部(4)が内部に有する内部時計に基づいて歪補償校正動作を行う。
エラーレートがある一定値(Th)より大きい場合(S1005のY分岐)は、ある範囲の時間間隔(Tm)毎(S1006)にガードインタバルの期間において歪補償校正(S1007)を行う。一定値(Th)は、視聴に耐える画像を受信再生できているものの、高いレベルのエラーレートとする。従って、TmはTs以上であるのが望ましい。周期的に歪補償校正動作を行うのは、一応視聴可能ではあるものの、歪補償校正によってより低いエラーレートを実現できる可能性があるからである。この場合は、ガードインタバルの期間を検知して歪補償校正動作を行う。
エラーレートがある一定値(Th)以下の場合は歪補償校正を行わない(S1005のN分岐)。エラーレートが小さいということは、良好な受信が確立しているのであるから受信回路系の歪補償校正をする必要はないからである。このように本実施の形態では、エラーレートによって歪補償校正動作の周期を変更することで、受信状態に応じた歪補償校正が行える。
なお、歪補償校正動作は、2次歪みおよび3次歪みを同時に行なっても良いし、ガードインタバル毎に行なっても良いし、また複数回の平均で行なっても良い。この点、実施の形態3と同じである。また、本実施の形態ではエラーレートを指標に歪補償校正動作の周期を変更したが、受信信号のSNR(Signal to Noise Ratio)等を指標としてもよい。
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態1における歪補償校正を実施するタイミングやチューナのフロントエンド部の電源制御に関するものである。
欧州などでモバイル用の地上波デジタルテレビ放送で用いられているDVB-Hにおいては、タイムスライシングと呼ばれている方法が採用されている。DVB-Hとは欧州のデジタル放送の標準化団体DVB(Digital Video Broadcasting Project)が策定した携帯電話機などのモバイルテレビ用の地上波デジタル放送の仕様である。
タイムスライシングとは、複数番組を時分割多重して送信し、受信側では、受信すべき番組のバーストだけを受信し、それ以外の間はフロントエンド部の電源を遮断できるようにする技術をいう。このようにすることで受信機の消費電力を抑えられると言う効果がある。タイムスライシングを行なうと、受信機のフロントエンド部分は電源を細かくON/OFFすることになる。また、電源をONにするタイミングを知るために、この送信波には、どの番組に対するデータがどのタイミングで送信されるかの情報も一緒に送信される。
図19(a)に、送信される信号の模式図を示す。横方向は時間を表し、バースト(図では「burst」と記載した。)が左から右方向に時間に沿って送信される様子を示す。各バーストには、図15で示すシンボル信号の期間(101)とガードインタバルの期間(100)が複数個存在する。なお、バーストの中にさらにシンボル信号とガードインタバルの組のまとまりがあってもよいし、複数個のバーストを1つのまとまりとしてもよい。
このバーストは送信される信号を論理的に分けられるという意味であり、信号自体は連続したOFDM方式の信号そのものである。従って、本実施の形態で想定する受信する信号および校正信号の生成に関しては実施の形態1と同じである。
図19(a)では、太字枠のバースト(113)が所望の受信すべきバーストであるとする。それ以外のバースト(114)には、その他の番組などの情報が送られている。図19(b)には、本実施の形態のチューナの動作のタイミングを示す。横軸は図19(a)と同じ時間軸である。
チューナが受信すべきバーストの期間はチューナは受信動作を行う期間(116:図では「receive」と記載した。)。このバーストを受信する以外の間はチューナのフロントエンド部分は電源をOFFにする(図では「Power off」と記載)。従って、このバーストを受信する前にフロントエンドの電源を入れ、ウォームアップする期間(115)が必要である(図では「WU」と記載した。)。本実施の形態のチューナはさらにウォームアップした後、受信動作を行う前に校正動作(117)を行う。(図では「cal」と記載)。
図20に、チューナの構成図を示す。校正信号発生部(3)、低雑音アンプ部(11)、制御部(4)、周波数変換部(12)、フィルタ部(13)、増幅部(14)、復調部(15)、局部発振部(16)は、図1と同じである。なお、ここで制御部(4)は第1の制御部(4)とする。また、復調部(15)は、受信信号を復調するとともに、校正信号が受信回路系に入力された際に歪を検出する周波数成分を出力する点は、実施の形態1で説明した通りである。
本実施の形態では、これらの構成に加え、復調部(15)の出力を解読する復号部(17)と、復号部(17)で解読した情報に基づき、電源を制御する第2の制御部(5)を有する。
なお、校正信号発生部(3)、低雑音アンプ部(11)、周波数変換部(12)、フィルタ部(13)、増幅部(14)、復調部(15)、局部発振部(16)を含めてフロントエンド部(6)と呼ぶ。
復号部(17)は復調部(15)で復調した信号を解読する。本実施の形態で説明するタイムスライシングでは、先に説明したように、映像信号や音声信号以外に、どの番組のデータがどのタイミングで放送されているかといった番組情報を含んだ送信信号の送信情報を送信信号に乗せる。復号部(17)は、これらの映像信号や音声信号以外の情報を第2の制御部(5)に送る。
第2の制御部(5)は、これらの情報を解読し、フロントエンド部(6)への電源をいつONにするかを制御する。なお、第2の制御部(5)は、時計を内蔵しているとして説明を行なう。
次に本実施の形態のチューナの動作について説明する。受信信号の中心周波数となるfoが、チューナに与えられ、局部発振部(16)は指示された周波数foのLO信号を出力する。受信信号はアンテナ(9)から低雑音アンプ部(11)を経て、周波数変換部(12)でダイレクトコンバージョンされて、ベースバンド信号に戻される。フィルタ部(13)、増幅部(14)、復調部(15)を経て、復調された信号になるのは、実施の形態1と同じである。
復調された信号は、復号部(16)にて所定の方式でデコードされる。デコードされた結果は、映像信号や音声信号の他に、EPG(Electric Program Guide)といった番組情報や、時刻、システム用の通信情報といった映像信号や音声信号以外のパケット情報が復元され出力される。
これらのうち、少なくとも送信されているバーストに関する情報は、第2の制御部(5)に送られる。送信されているバーストに関する情報とは、チューナが受信する受信信号の送信情報に含まれる。また、送信されているバーストに関する情報は、現在受信している受信信号中で送られるバーストの種類と、バーストの送信情報を含む。バーストの送信情報は、送信されているバーストの送信順序などであり、特定のバーストを選択して受信できる情報であれば特に限定するものではない。
第2の制御部(5)は、送信されているバーストに関する情報から、受信すべきバーストを特定し、次の受信タイミングまで、フロントエンド部(6)への供給電力を遮断する。
遮断した後、第2の制御部(5)は、内部時計によって次の受信時刻の到来を待つ。なお、受信時刻ではなく、受信までの時間を待機してもよい。受信時刻到来の所定時間前が来たら、第2の制御部(5)はフロントエンド部(6)に電力を供給する。電力を供給した後、一定時間はウォームアップのための時間であり、この間には、局部発振部(16)におけるPLLのロックアップを行なう。そして、ウォームアップ終了後、第2の制御部(5)の指示により、受信回路系の歪補償校正を行う。この歪補償校正は実施の形態1と同じでよい。そして、歪補償校正の後、次のバーストの受信を行なう。バーストの受信が終了したら、次のバースト受信時刻に先立つウォームアップまで、フロントエンド部(6)の電力を遮断する。
このように本実施の形態では、タイムスライシングを行なう通信環境において、目的のバーストを受信するのに先立って歪補償校正を行う。このようにすることによって、フロントエンド部(6)のON/OFFに伴って、低雑音アンプ部(11)や、周波数変換部(12)の歪特性が変わってしまったとしても、常に校正した状態に保つ事ができ、チューナの特定を一定の状態に維持する事が出来る。
なお、本実施の形態では、バーストを受信するのに先立って毎回、歪補償校正を行うように説明したが、毎回行う必然性はないので、適宜歪補償校正を行わないでバーストを受信する場合があってもよい。すなわち、3バーストを受信する間に1回の歪補償校正を行うなど、決まった間隔で歪補償校正を入れても良い。また、実施の形態4で示したエラーレートに基づいて、歪補償校正の間隔を決めても良い。
また、本実施の形態においては、バーストを受信する直前に歪補償校正を行っているが、バーストを受信する直前でなくても良く、バーストを受信した直後でも良いし、その他バーストを受信していない期間でも良い。
また、本実施の形態では、復調部(15)をフロントエンド部(6)に加えていないが、加えてもよい。タイムスライシングを行なうと、復調部(15)は受信したデータを蓄積しておき、受信していない期間にFFT処理などができるため、早いクロックを必要としないといった効果が期待される。この場合復調部(15)には、受信していない期間にも電力の供給が必要であるため、本実施の形態ではフロントエンド部(6)から復調部(15)をはずした。しかし、それに限定する必要はなく、復調部(15)はフロントエンド部(6)として受信していない期間は電力を供給しないようにしてもよい。
また、フロントエンド部(6)と復調部(15)、復号部(17)、第2の制御部(5)は、それぞれ、同一のICチップ上にあってもよいし、いくつかのチップに分けられていても良い。フロントエンド部(6)と復調部(15)はアナログ信号処理が中心となり、復号部(17)と第2の制御部(5)はデジタル信号処理が中心となるため、それぞれ1チップとするのが製造しやすい。しかし、特に限定するものではなく、すべて同じチップ上に作成されていてもよいし、それぞれの構成要素を適当に組合せ、1チップとしてもよいし、それぞれを別々のチップに作成してもよい。なお、本明細書を通じて、チップはウェハ上にICを作成し、必要な部分のICをウェハから切り出した物をいう。ICチップともいう。
また、本実施の形態は欧州のデジタルテレビ放送の規格DVB-Hを例に上げたが、これに限定されるものではない。また、本実施の形態では制御部(4)と第2の制御部(5)は別々のものとして説明したが、これらは1つの制御部で兼ねてもよい。
(実施の形態6)
これまでの実施の形態では、OFDM方式のガードインタバルの期間を利用して受信回路系の補償校正を行っていたが、本実施の形態では、シンボル信号の受信中に校正信号によって補償校正動作を行う。送信波は、あるチャンネルに隣接するチャンネルとの干渉を避けるために、帯域内の隣接チャンネルとの境界付近には、信号を送らないようにしている。この部分をガードバンドという。本実施の形態では、この帯域内に設定されたガードバンド部分を使って歪補償校正を行う。
本実施の形態で説明するのは、OFDM信号により連続的に送信される信号をダイレクトコンバージョン方式で連続的に受信する場合である。チューナの構成は図17と同じである。本実施の形態で想定するのは以下の条件である。
受信する信号のサブキャリアの間隔は(1/1008)MHzであり、サブキャリアの本数は5617本である。したがってベースバント信号におけるサブキャリアの最大周波数は(2808/1008)MHz(約2.785MHz)となる。OFDM復調を行う際にFFT演算を用いるので、計算の効率化のため実際には(8192-1)本のサブキャリア算出演算を行なう。
OFDMに使用されているサブキャリアの最大周波数より大きく、使用されていないサブキャリアに関しては、復調により計算した値が使われないようにしている。そこで、使用されているサブキャリアのすぐ外側に歪信号検出用の信号周波数を設定することにより、受信動作中であっても歪補償校正を実行可能とする。この際歪信号の検出は、通常の信号受信に用いるFFTの結果を用いることができる。即ち、FFT処理部(36)は、使われていないサブキャリアに対してもFFT処理をおこなっている。
補償校正は以下の手順に従う。まず、制御部(4)はエラーレート測定部(17)のエラーレートの値に応じて補償校正を行うか否かを決める。これは図18のフローに従ってよい。補償校正を行う場合は、受信した信号のシンボル信号の期間に、校正信号を受信信号が入力されている加算器(72)を通じて受信回路系に入力する。シンボル信号の期間に校正信号を受信回路系に入力するのは、復調部(15)のFFT処理部(36)の出力で歪を検出するからである。
シンボル信号の期間を検出するのは、ガードインタバル除去部(35)からのタイミング通知信号(7)に基づいて制御部(4)が判断してもよいし、タイミング通知信号(7)自体にシンボル信号の期間である旨の信号をのせて、シンボル通知信号として制御部(4)に通知してもよい。
次に制御部(4)は、復調部(15)のFFT処理部(36)が出力する所定の周波数成分の信号(8)を受け取り、この信号の大きさに応じて低雑音アンプ部(11)と周波数変換部(12)に対して歪補償調整信号を出力する。
図21に信号発生部(2)の構成を示す。本実施の形態では、2次歪み用の校正信号と3次歪み用の校正信号は同じf3の周波数を用いるが、f4に相当する信号はそれぞれに異なる。従って、信号発生部(2)は、矩形波信号源を3つ有する2次3次歪用信号発生部(120)で構成される。矩形波信号源(121)は周波数f3の信号を、矩形波信号源(122)は周波数f4の信号を、矩形波信号源(123)は周波数f5の信号を出力する。
また、本実施の形態の2次3次歪用信号発生部(120)には、f4またはf5を選択するために、切替えスイッチ(124)を有する。切替えスイッチ(124)は、制御部(4)の指示によって切り替わる。それぞれの矩形波信号源で発生するのは、デューティー比1/2の矩形波である点は、これまでの実施の形態と同じである。
次に校正信号について説明する。本実施の形態では、シンボル信号の受信中に補償校正動作を行うので、歪補償校正信号は受信信号帯域中にスペクトルを持たないようにする必要がある。歪補償校正信号は信号レベルが高いので、信号受信に重大な障害をもたらしてしまうからである。
まず、2次歪補償校正の場合、矩形波信号源(121)の周波数f3は(1024/63)MHz(約16.25MHz)とし、矩形波信号源(122)の周波数f4の値は(848/63)MHz(13.46MHz)に設定する。すると、2次歪によって発生する信号はf3−f4の周波数(2816/1008)MHz(2.794MHz)のサブキャリアに発生する。校正信号(Sc)は、高周波帯域に周波数変換した後、加算されているので、歪みが生じにくい。
さらに、変調信号(S1、S2、S3、S4)はデジタル信号なので、信号発生器(2)内の乗算器は論理回路により実現でき、歪は発生しない。また、校正信号発生器(3)の中における乗算器(23、24、25,26)はスイッチング素子で構成できるため、さらに歪が少ない。また、f3およびf4は、ベースバンド帯域より高い周波数なので、ベースバンド帯域内にスプリアスは発生しない。
従って、2次歪みとなる上記周波数の信号は受信回路系による歪みとみなせる。またこの2次歪みは、サブキャリアの最大周波数(2808/1008)MHz(約2.785MHz)より約8kHzだけ外の周波数となる。そのため受信信号に与える影響は少ない。
この周波数のサブキャリアに発生した2次歪成分はフィルタ部(13)による遮断をほとんど受けずにOFDM復調部(15)に供給され、その歪成分がベースバンド信号のOFDM処理部(36)による処理の際に同時に検出される。OFDM処理部のFFT処理部はこの周波数もサブキャリア算出用に計算しているからである。したがって、検出された周波数(2816/1008)MHzのサブキャリア信号により、受信回路系の2次歪を検出することができる。そして、その結果に応じて2次歪補償調整信号a2を調整することにより、2次歪補償校正を受信動作中に行うことができる。
図22に2次歪み補償校正の場合の周波数の関係を示す。図22(a)は、図17の加算器(72)の出力での受信信号と歪み校正信号の関係を示す。受信信号は周波数foで変調されて送信されており、それをアンテナ(9)で受信した。歪み校正信号(Sc)も局部発振部(16)の周波数foの高周波信号によって高周波帯域に変調されている。
このような信号を低雑音アンプ部(11)と周波数変換部(12)を通す事によって、周波数foのダウンコンバートが行なわれ、受信回路系で2次歪が生じると、2次歪みの成分が最大周波数のサブキャリアのわずかに外側、すなわちガードバンド部分に発生する。この様子を図22(b)に示す。2次歪の成分は、隣接チャンネルにはかぶらないようにする。制御部(4)は、この歪成分の量によって増幅部(11)や周波数変換部(12)に対して歪補償校正を行う。
3次歪補償校正の場合、f3は2次歪みの場合と同じ周波数(約16.25MHz)を用い、もう一方の信号は矩形波信号源(123)の周波数f5の信号を選択する。f5の値は(600/63)MHz(約9.52MHz)である。すると、3次歪によって発生する信号は2*f5−f3の周波数(2816/1008)MHzのサブキャリアに発生する。
この周波数のサブキャリア信号はベースバンドフィルタによる遮断をほとんど受けずにOFDM復調部(15)に供給され、その信号成分が受信信号のOFDM復調の際に同時に検出される。したがって、検出された周波数(2816/1008)MHzのサブキャリア信号により、受信回路系の2次歪を検出することができ、その結果に応じて3次歪補償調整信号(a3)を調整することにより、3次歪補償校正を受信動作中に行うことができる。
図23に3次歪み補償校正の際の周波数の関係を示す。図23(a)は、図17の加算器(72)の出力での受信信号と歪み校正信号の関係を示す。受信信号は周波数foで変調されて送信されており、それをアンテナ(9)で受信した。歪み校正信号(Sc)も局部発振部(16)の周波数foのLO信号によって高周波帯域に変調されている。
このような信号を低雑音アンプ部(11)と周波数変換部(12)を通す事によって、周波数foのダウンコンバートが行なわれ、受信回路系で3次歪が発生すれば、3次歪みの成分が最大周波数のサブキャリアのわずかに外側、すなわちガードバンド部分に発生する。
この様子を図23(b)に示す。なお、図23(a)と(b)は適宜横軸のスケールは変えて示してある。隣接チャンネルとの関係は、2次歪の場合と同じで、3次歪の成分は、隣接チャンネルにはかぶらないようにする。なお、この3次歪みの成分は2次歪みの成分と同じ周波数(2816/1008)MHzで検出できる。
本実施の形態は、歪信号の検出が、受信信号のOFDM復調と同時に検出することができるので、新たに歪信号検出のための演算を必要とせず、消費電力および必要とするハードウェア資源の面から非常に有用である。
また、本実施の形態では、補償校正動作をシンボル信号の受信期間を用いて行っていたが、歪により発生する信号の検出を受信の際のOFDM復調とは別に行うようにすれば、補償校正動作は信号の受信状況に全く依存しない。すなわち、シンボル信号の受信期間又はガードインタバルの期間を区別若しくは判別することなく受信回路系の補償が可能になる。
本実施の形態においては、歪検出のための信号周波数をベースバンド信号の最高サブキャリア周波数よりわずかに高く設定したが、受信信号の中で振幅が常にゼロであるサブキャリアが存在していれば、歪検出のための信号周波数をそのサブキャリアに対応する周波数としてもよい。
(実施の形態7)
本実施の形態では、より正確に受信回路系を校正するために、大きさの異なる校正信号を受信回路系に入力し、校正信号発生部(3)で生じる歪みと受信回路系で生じる歪みを分別する。本実施の形態によると、仮に校正信号自体に歪みが生じてしまったとしても、受信回路系だけの歪み補償をすることができる。
図24に、本実施の形態の構成を示す。本実施の形態では、減衰量切り替えの機能を持ったアッテネータ部(5)を校正信号発生部(3)内に設ける。アッテネータ部(5)は、信号発生部(2)から加算器(72)までの間に設けられる。
図25には、アッテネータ部(5)の構成を示す。アッテネータ部(5)には、第1のアッテネータZ1(111)と第2のアッテネータZ2(112)と、いずれかのアッテネータを選択するATスイッチ(110)を含む。ATスイッチ(110)は、いずれかのアッテネータを選択する切り替え信号(Ca)によって、いずれかのアッテネータを、校正信号発生部(3)と加算器(72)の間に挿入する。
校正信号に歪みが含まれる場合、受信回路系を通ることで生じる歪みの大きさは校正信号の大きさによって変化する。例えば、2次歪に関しては、校正信号の振幅を1/2にしたとき、校正信号に含まれる歪成分は振幅が1/2になるが、受信回路系で発生する歪の振幅は1/4になる。
同様に、3次歪についても、校正信号の振幅を1/2にしたとき、校正信号に含まれる歪成分は振幅が1/2になるが、受信装置で発生する歪の振幅は1/8になる。従って、校正信号の振幅を変えて少なくとも2回、歪成分を検出すれば、受信装置で発生した歪の大きさを検出することができる。
より具体的な例で説明する。第1のアッテネータZ1(111)の減衰量を20dB、第2のアッテネータZ2(112)の減衰量を26dBとする。切替え信号(Ca)がゼロの時は第1のアッテネータZ1(111)を選択し、また1の時は第2のアッテネータZ2(112)を選択するものとする。従って、切替え信号(Ca)の値によって、校正信号(Sc)の振幅は2倍(6dB)変化することになる。
まず、2次歪の検出について説明する。校正信号発生部(3)から2次歪み用の校正信号を出力する。初めに、切り替え信号(Ca)の値をゼロとし、アッテネータ部(5)での減衰量を20dBに設定する。このとき、復調部(15)により検出された2次歪に対する周波数成分の振幅(符号を含める)がA21であったとする。すると、受信回路系の歪によって発生した分をA2R,校正信号に歪成分が含まれていたことにより発生した分をA2Cとすると、
A21=A2R+A2C
の関係が成り立つ。
次に、切り替え信号(Ca)の値を1とし、アッテネータ部(5)の減衰量を26dBに設定する。すなわち、校正信号(Sc)の振幅を1/2にする。このとき、復調部(15)により検出された2次歪に対する周波数成分の振幅(符号を含める)がA22であったとする。すると、
A22=(A2R/4)+(A2C/2)
の関係が成り立つので、これらの連立方程式を解くことによりA2Rつまり、受信回路系での歪みの値を知ることができる。たとえば、
1/2*A2R=A21−2*A22
の式を用いて計算することができる。
すなわち、制御部(4)は、復調部(15)の最初の校正信号による出力A21を記憶しておき、2度目の校正信号による所定の周波数成分A22を検知しながら、A21−2*A22がゼロになるように2次歪みを歪補償校正する。制御部(4)は最初の所定の周波数成分A21を記憶しておくメモリを内部に有するのは、いうまでもない。
3次歪の場合も同様に歪補償校正を行うことができる。まず、切り替え信号(Ca)の値をゼロとし、アッテネータ部(5)の減衰量を20dBに設定する。このとき、復調部(15)により検出された3次歪に対する周波数成分の振幅(符号を含める)がA31であったとする。このうち、受信回路系の歪によって発生した分をA3R,校正信号に歪成分が含まれていたことにより発生した分をA3Cとすると、
A31=A3R+A3C
の関係が成り立つ。
次に、切り替え信号(Ca)の値を1とし、アッテネータ部(5)の減衰量を26dBに設定する。このとき、復調部(15)により検出された2次歪に対する周波数成分の振幅(符号を含める)がA22であったとする。すると、
A32=(A3R/8)+(A3C/2)
の関係が成り立つので、これらの連立方程式を解くことによりA3Rの値を知ることができる。たとえば、
3/4*A3R=A31−2*A32
の式を用いて計算することができる。
すなわち、制御部(4)は、復調器(15)の最初の校正信号による所定の周波数成分A31を記憶しておき、2度目の校正信号による所定の周波数成分A32を検知しながら、A31−2*A32がゼロになるように3次歪みを補償校正する。
歪の少ない校正信号の生成は装置の規模が大きくなったり、消費電力が多くなってしまう傾向がある。本実施の形態の歪補償校正動作であれば、仮に校正信号自体に歪があった場合でも受信回路系だけによる歪を補償することができる。
(実施の形態8)
本発実施の形態は、校正信号発生部(3)が外部に用意されている場合について説明する。校正信号発生部(3)がチューナ内に装備されることによって、低雑音アンプ部(11)や、周波数変換部(12)の消費電流を低くして、温度、受信状態等の状況の変化の都度、受信回路系を補償校正しチューナ全体の省電力化が図れる点はこれまでの実施の形態で説明したとおりである。
しかし、チューナが使用される環境にあまり変化がなく、状況に応じた補償が必要でない場合は、チューナ内に校正信号発生部(3)を有することは、ほとんど使用しない機能のために回路面積をとることとなり、小型化の障害となる。そのような場合、校正信号発生部(3)を外部で用意し、工場出荷時の際、若しくはメンテナンスの時だけ外部からの校正信号によって、受信回路系を補償校正する機能も有用となる。
本実施の形態で例示するのも、OFDM方式のデジタル・テレビ・チューナまたはそれに使用するチューナICの歪補償校正である。チューナはダイレクト・コンバージョン方式である。このチューナの受信信号であるOFDM信号のサブキャリア間隔は(1/224)MHzであり、バンド幅は7.61MHzである。このチューナまたはチューナICの歪補償校正を外部に歪補償校正信号発生装置(5)を用意して行う。
図26に、本実施の形態のチューナ(10)および校正信号発生部(3)の構成を示す。チューナ(10)は、低雑音アンプ部(11)と、周波数変換部(12)とフィルタ部(13)と増幅部(14)と復調部(15)と、制御部(15)と局部発振部(16)を含み、これらは実施の形態6までと同じ構成要素である。校正信号発生部(3)は、外部に用意されておりチューナ(10)内には有していない。
外部に用意されチューナ(10)内に有していないとは、少なくとも同一のICチップ内にはないことを意味する。もちろん、同じボード内、同じ受信装置内に校正信号発生部(3)がないことを含む。これまでの実施の形態においても、制御部(4)には、内部にメモリを有していたが、本実施の形態ではより明確にするためにメモリ(150)を明示した。
また、本実施の形態の受信機(10)には、外部からの基準周波数信号frefに基づいて、局部発振部(16)を駆動させるPLL装置(18)を有する。校正信号発生器(3)は、チューナの外部にあり、基準周波数信号源(130)と、基準周波数信号源(130)の出力する信号に基づいて発振するPLL装置(131a、131b)と、それぞれのPLL装置によって駆動する電圧制御発振器(132aと132b)と、これらの電圧制御発振器の出力を加算する加算器(133)を含む。
加算器(133)の出力はチューナ(10)の低雑音アンプ部(11)に入力される。なお、基準周波数信号源(130)の出力は、受信機のPLL装置(18)にも供給される。また、本実施例における基準周波数信号源(130)は、アナログ信号を発生するが矩形波デジタル信号でもよい。
以上のような構成で受信回路系の歪補償校正を以下のように行う。基準周波数信号源(130)の出力信号の周波数は(1/6)MHzである。PLL装置(18)は局部発振器(16)の出力周波数が700MHzとなるように制御を行う。2次歪を検出する際には、PLL装置(131a)は電圧制御発振器(132a)の周波数が730MHz、PLL装置(131b)は電圧制御発振器(132b)の周波数が(730+1/3)MHz となるように制御する。
このような設定にすることで、それぞれの電圧制御発振器の校正信号は、ダウンコンバートによって30MHzと30MHz+1/3MHzの信号に周波数変換される。これらの信号は受信信号帯域幅である7.61MHzの半分より十分に高いので、ベースバンド帯域内にスプリアスを持たない。従って2次歪となる1/3MHzの信号は受信回路系で発生した歪と考えてよい。
3次歪を検出する際も、同様にPLL装置(131a)は電圧制御発振器(132a)の周波数が760MHz、PLL装置(131b)は電圧制御発振器(132b)の周波数が(730+1/6)MHz となるように制御する。3次歪は2*(30+1/6)−60MHzの周波数に現れ、2次歪の場合と同じく1/3MHzとなる。従って、2次歪の検出および3次歪の検出はともにベースバンド信号(Sb)の1/3MHzの信号成分を復調部(15)により検出することにより行う。
歪補償校正の手順は、上記のように検出した受信回路系の2次歪および3次歪に対して、低雑音アンプ部(11)と周波数変換部(12)に対してそれぞれ3次歪補償、2次歪補償を行うことで、受信回路系全体の歪を補償する。この際、調整された2次歪補償調整信号(a2)および3次歪補償調整信号(a3)の値はメモリ(150)に記憶される。
メモリ(150)は外部信号により回路を焼き切って永久的に記憶するヒューズや、PN接合をショートさせるザッピング、通常のROMなどでもよい。
本実施の形態の構成はチューナICの歪補償校正の歪検出手段をIC内部に持たせるので、ベースバンド信号をICの外部に取り出す必要がなくなる。すなわち、アナログ信号の出力手段を省略することができることにより、チューナICのパッドを少なくできる。また、IC製造時にウェハ上で歪補償校正工程を行うことができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態8に加えて、さらに制御部(4)もチューナ(10)の外に出してしまった場合を説明する。本実施の形態の構成を図27に示す。実施の形態7に加えてチューナ(10)からは、復調部(15)の歪検出出力端子(140)と、周波数変換部(12)への歪補償調整信号入力端子(142)と低雑音アンプ部(11)への歪補償調整信号入力端子(144)が設けられている。
低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)の歪補償量を調整する部分は、ヒューズやザッピングなどによって特性を変化させ固定することで調整可能な素子で構成される。これらの調整は外部からの信号によって行なわれる。なお、特性の固定とは、固定のための信号を用いる場合を含めるが、調整するための信号をなくすことで、特性が変化しなくなる場合を含む。
このようなチューナの歪補償校正は、実施の形態8と同様に校正信号を外部から受信回路系に入力し、復調部(15)からの出力から歪成分を検出する。これに基づいて制御部(4)で歪補償調整信号を作成し、歪補償調整信号入力端子(142)および(144)から歪補償調整信号を入力する。これらの信号によって低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)の歪補償量を調整する素子の特性を調整する。チューナの外部の意味は実施の形態8と同じである。
調整された素子は、再度歪補償調整信号入力端子に制御部がつながれ、歪補償調整信号が入力されるまで、そのままの値を保持する。本実施の形態は復調部(15)からの歪検出出力端子(140)や歪補償調整信号入力端子(142、144)を、チューナを校正するチップ上に設けておけば、ウェハ上でチューナの歪補償を校正することができる。なお、チップもウェハも半導体基板と呼ぶことができる。
なお、本実施の形態では、外部からの信号によって低雑音アンプ部(11)や周波数変換部(12)の歪補償を行う部分の素子の特性を調整し固定する場合を説明したが、ウェハ上で歪補償を行う場合など、レーザーでトリミングすることで素子の特性を調整し固定してもよい。
一般に、デジタル回路を有するICには、デジタル回路部分が所望の動作をするかをチェックするために、内部の状態を設定したり内部の状態を検出したりする手段(例えばスキャンパスなど)を持っている。これらの手段を本実施の形態における歪補償調整信号入力端子(142、144)や歪検出出力端子(140)として用いても良い。
また、歪補償調整信号入力端子(142、144)や歪検出出力端子(140)は、物理的な接触によって信号をやりとりする端子に限らず、例えば光などを用いた非接触での信号の交換や、電磁波を用いた無線通信などの方法を用いてもよい。
また、歪検出出力端子(140)は、歪み成分だけの出力だけでなく、復調部で復調された全部の信号が出力されていてもよい。これら非接触の場合も含めて歪補償調整信号入力端子(142、144)を調整信号入力部と呼び、歪検出出力端子(140)を歪検出出力部と呼ぶ。