JP4784521B2 - メタン発酵処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機性廃棄物のメタン発酵処理方法に関し、特に、発酵槽内でのメタン発酵の状態を監視して処理の安定化を図るメタン発酵処理方法に関する。
従来、家畜糞尿、剪定枝、稲または籾殻のような農畜産廃棄物、生ごみ、および廃水処理により発生する有機性汚泥といった有機性廃棄物をエネルギー源として利用する方法として、メタン発酵が知られている。近年、エネルギー源を、石油に代表される化石燃料から「バイオマス」と呼ばれる生物資源に転換する動きが活発化し、有機性廃棄物を原料としてメタンガスを生成させるメタン発酵に注目が集まっている。
メタン発酵は、糖等を基質として酸を生成する「酸生成工程」と、酢酸または水素からメタンを生成する「メタン生成工程」とに大別される工程を含み、メタン発酵には多種多様な微生物群集が関与する。このため、メタン発酵に係る微生物群集(以下、「メタン発酵菌群」と呼ぶ場合がある)を、メタン発酵がスムーズに進行する状態に維持することは必ずしも容易でない。また、メタン発酵は、固形物および有機物を高濃度で含む有機性廃棄物を原料とすることから、メタン発酵過程で生成される様々な代謝副産物も高濃度となって、メタン発酵菌群に与える影響が大きくなりやすい。
具体的には、メタン発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量が過大となった場合、メタン発酵過程で生成される有機酸(VFA)やアンモニア態窒素(NH−N)が発酵槽内に高濃度で蓄積される場合がある。VFAやNH−Nが蓄積されると、メタン発酵が阻害され、最悪の場合はメタン発酵が停止する場合がある。メタン発酵に関与する微生物は、活性汚泥を構成する好気性微生物に比べると増殖速度が遅いため、ひとたびメタン発酵が停止すると回復させることは容易ではない。
このため、有機性廃棄物は、発酵槽内での滞留時間が設計値の範囲内となるように発酵槽へ供給される。一般に、有機性廃棄物の滞留時間の設計値(すなわち、有機性廃棄物がメタン発酵槽に滞留する予定の時間)は、ある性状の有機性廃棄物がメタン発酵されるために必要な時間を予め求めることで決定される。有機性廃棄物の性状が一定の場合、滞留時間の設計値の範囲内となるように有機性廃棄物を供給すれば、発酵槽内の状態を把握して、発酵槽に対する負荷が課題となることを防止することはある程度、可能である。
しかし、有機性廃棄物の性状は、季節変動または発酵槽に投入するまでの保管条件といった要因により変化する。有機性廃棄物の性状の変化が設計値の範囲内であれば、メタン発酵が阻害される問題は生じにくいが、設計値を超えて発酵槽への負荷が過大となれば発酵が阻害される。
そこで、発酵槽内のVFA濃度、またはNH−N濃度を測定して、発酵槽内のメタン発酵の状態を判断する方法が考えられている。しかし、VFA濃度、またはNH−N濃度の測定には特別な機器が必要で、現在はオンサイトでの測定は容易ではなく、測定コストもかかる。このため、有機性廃棄物の性状の変動が大きく、発酵槽内が不安定化しやすい場合はVFA濃度やNH−N濃度を測定するコストも大きくなる。
一方、メタン発酵槽から発生するガスであってVFA、NH−N以外にメタン、二酸化炭素等を含むガス(以下、特に「発生ガス」と称する場合がある)の発生量を測定して発酵槽への有機性廃棄物の供給量を増減させる方法も提案されている(例えば特許文献1および特許文献2)。特許文献1に記載された方法では、発酵槽内でのガス発生量が基準値に達しない場合、メタン発酵菌群が含まれる発酵槽内の汚泥のpH、または発生ガスの二酸化炭素濃度に応じて、発酵槽の状態を判断して発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量を調整する。
また、特許文献2には固形の生ごみ、および泥状の有機性汚泥といった性状が異なる複数種類の有機性廃棄物をメタン発酵させる方法において、発酵槽内の状態を監視してメタン発酵の安定化を図る方法が開示されている。具体的には、発酵槽に供給する複数種類の有機性廃棄物の供給量をそれぞれ、測定し、各種有機性廃棄物から発生するガス発生量を予測した上で、実際の発酵槽内でのガス発生量を測定し、ガス発生量の予測値と実測値とを比較してガス発生量の低下を検知する。
特開平3−131396号公報 特開2005−111338号公報
従来、メタン発酵処理を安定的に行う技術が提案されているが、近年のメタン発酵の広がりを背景に、メタン発酵の原料とされる有機性廃棄物の種類も多様化している。このため、メタン発酵を安定させる更なる技術開発が求められている。
ところでメタン発酵は、原料の有機性廃棄物の全固形物(TS)濃度によって湿式メタン発酵と乾式メタン発酵とに分けられる。湿式メタン発酵では、スラリ状の有機性廃棄物を原料としてTS濃度4〜12質量%程度でメタン発酵させるのに対し、乾式メタン発酵では、固形の有機性廃棄物を原料としてTS濃度が15〜40質量%程度でメタン発酵を行う。
上述した特許文献1および特許文献2に記載された方法は、どちらの湿式メタン発酵に適用され、特許文献1に開示された方法は湿式メタン発酵を行う装置の立ち上げに際し、メタン発酵が行われる発酵槽内にメタン発酵菌群集を順調に増殖させるために用いられる方法である。一方、特許文献2に記載された方法は、メタン発酵処理装置の立ち上げが完了してメタン発酵菌群が発酵槽内に安定的に保持されるようになった後、有機性廃棄物が発酵槽に過剰に供給されること等によって処理が不安定化することを回避しようとする方法である。
乾式メタン発酵については、湿式メタン発酵に比べてTS濃度の高い有機性廃棄物を処理対象として多くのメタンガスを生成させることができる一方、湿式メタン発酵より高いTS濃度でメタン発酵を行うため、湿式メタン発酵に比べてもVFA等の代謝副産物による発酵阻害によって処理が不安定化しやすい傾向がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされ、VFA濃度あるいはNH−N濃度を測定する場合のように特別な測定機器を用いることなく、メタン発酵が不安定化することを防止できる有機性廃棄物のメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。本発明は特に、メタン発酵原料となる有機性廃棄物の性状が変化する場合においても、メタン発酵の安定化を図ることができるメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、従来、湿式メタン発酵に比べても安定化が困難であって乾式メタン発酵においても、処理の安定化を図ることができるメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、メタン発酵槽への有機性廃棄物供給量を測定し、そこからの発生ガスの予測発生値と実発生値とを求め、実発生値を予測発生値および過去の発生値と比較して有機性廃棄物の次回供給量を決定することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)発酵槽で有機性廃棄物を全固形物濃度15重量%以上の乾式メタン汚泥と混合して、乾式メタン発酵し、第1バッチにおける前記発酵槽に対する前記有機性廃棄物の供給量である第1供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を求め、 前前記第1バッチに続く第2バッチにおける記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第2供給量の有機性廃棄物について発生するガスの予測発生値を算出し、 前記第2供給量の有機性廃棄物を前記発酵槽に供給してから所定時間を経過した時点で当該第2供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を求め、 前記第2バッチの予測発生値と実発生値とを比較し、 前記第1バッチの実発生値と前記第2バッチの実発生値とを比較して前記第2バッチに続く第3バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第3供給量を決定する有機性廃棄物のメタン発酵処理方法
(2)1のバッチの期間を5日以上10日以内とし、期間の初日から3日以上9日以内に前記実発生値を測定する(1)に記載の有機性廃棄物のメタン発酵処理方法。
有機性廃棄物を全固形物濃度15重量%以上の乾式メタン汚泥と混合して、乾式メタン発酵させる発酵槽において発生したガスの実発生値を測定する測定手段と、前記測定手段により測定され第1バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第1供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を記憶する記憶手段、前記第1バッチに続く第2バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第2供給量の有機性廃棄物について発生するガスの予測発生値を算出する算出手段、および、前記第2供給量の有機性廃棄物を前記発酵槽に供給してから所定時間を経過した時点で前記測定手段により測定された当該第2供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を前記第2バッチの予測発生値および前記第1バッチの実発生値と比較する比較手段を有する演算処理装置と、を備える有機性廃棄物のメタン発酵処理装置。
本発明は、畜産業に伴い発生する家畜糞尿、食品産業または家庭から発生する生ごみ、下水および屎尿処理等に伴って発生する有機性汚泥、その他、紙ごみ、草、廃菌床等の有機性廃棄物の処理に用いられる。本発明は、含水率が85質量%以下、特に30〜70質量%程度の固形有機性廃棄物の処理に好適に用いることができる。
本発明によれば、特別な測定機器を用いることなく、メタン発酵の状態を把握でき、有機性廃棄物の性状変化が大きい場合でも、メタン発酵の安定化を図ることができる。
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置の模式図である。処理装置は乾式メタン発酵を行う装置として構成され、貯留槽21、混合装置23、演算処理装置24、および発酵槽25を備える。
貯留槽21は、移送路31によって混合装置23と接続されており、メタン発酵処理に供される有機性廃棄物は貯留槽21に一時的に貯留され、移送路31を介して混合装置23に供給される。混合装置23は、導入路33および汚泥返送路36を介してメタン発酵が行われる発酵槽25と接続されている。
発酵槽25にはTS濃度が15〜50質量%の乾式メタン汚泥が保持され、5〜20kg−VS/m/日程度の高い負荷で、嫌気的条件下、乾式メタン発酵処理が行われる。発酵槽25で発生したガス(発生ガス)は、一端が発酵槽25に接続されたガス路37から取り出され、ガス路37の他端に接続されたガスタンク27に貯留される。ガス路37の途中には、発生ガスの発生量を測定するためにガス流量計F2が取り付けられており、ガス路37から取り出された発生ガスの流量が計測される。
発酵槽25には汚泥引抜路35の一端が接続されており、汚泥引抜路35を介して発酵槽25内からメタン汚泥が取り出される。汚泥引抜路35の他端は汚泥返送路36と排泥路38とに接続され、取り出されたメタン汚泥の一部は、汚泥返送路36を介して混合装置23に返送され、残部は余剰汚泥として排泥路38から系外へ排出することができる。
有機性廃棄物は、貯留槽21から取り出され移送路31を介して混合装置23に供給され、発酵槽25から取り出され汚泥返送路36から供給されたメタン汚泥と混合され、発酵槽25に投入される。発酵槽25からの一日あたりの汚泥引抜量は、槽内に保持される汚泥の1/4〜1倍、特に1/3〜1/2倍とし、汚泥返送量は循環比が1〜3回/週とすることが好ましい。
このように処理装置は、有機性廃棄物を発酵槽25外でメタン汚泥と混合した後、発酵槽25に供給するように構成されている。したがって、処理装置では、TS濃度が高い固形の有機性廃棄物であっても希釈水を加えることなく発酵槽25に供給でき、発酵槽25内を嫌気条件に維持することも容易である。ただし、本発明は、発酵槽25内に攪拌手段を設ける等して発酵槽25内で有機性廃棄物とメタン汚泥を混合する場合に適用することができ、湿式メタン発酵に適用することもできる。また、メタン発酵は高温(45〜60℃)で行うことが好ましいが、中温メタン発酵としてもよい。
移送路31は有機性廃棄物の移送量を調整することにより、発酵槽25に対する有機性廃棄物の供給量を制御できるように構成されている。例えば本実施態様では、移送路31をベルトコンベアで構成し、ベルトコンベアを駆動させるモータMの出力を制御することにより、発酵槽25に供給される有機性廃棄物の量を調整するようにしている。また、移送路31の途中には有機性廃棄物の移送量を測定する計測機器F1が取り付けられ、計測機器F1から有機性廃棄物の移送量を示す出力信号が出力される。
計測機器F1は第1の信号伝送路41を介して演算処理装置24と接続され、移送路31および混合装置23を介して発酵槽25に対する有機性廃棄物の供給量が演算処理装置24に入力される。また、演算処理装置24は、第2の信号伝送路43を介してガス流量計F2とも接続されており、ガス流量計F2で計測され出力された発生ガスの実発生値が入力される。
演算処理装置24は、例えば中央演算処理装置を備えるコンピュータで構成され、計測機器F1から送られた有機性廃棄物の供給量を入力値として、当該供給量に応じた発生ガスの予測発生値を算出する予測値演算プログラムを有する。また、演算処理装置24は、発生ガスの予測発生値と実発生値を比較演算処理する比較演算プログラムも備え、ある供給量の有機性廃棄物に対する発生ガスの予測発生値と実発生値とを比較して、両者の差を算出する。
以下、図2を参照して、図1の処理装置を用いて本発明に係る有機性廃棄物のメタン発酵処理方法を実施する手順について説明する。図2は、本発明の一実施態様に係る有機性廃棄物のメタン発酵処理方法のフローチャートである。
本実施態様では、7日間を1つの単位処理期間(バッチ)として、期間の初日から6日間をかけて第1供給量の有機性廃棄物を発酵槽25に投入する。そして、単位処理期間の最終日である7日目に、第1供給量の有機性廃棄物から発生するはずの発生ガスの予測発生値(第1予測発生値)と、第1供給量の有機性廃棄物から実際に発生した発生ガスの実発生値(第1実発生値)とを比較する。
以下、具体的に説明する。処理装置では、移送路31に計測機器F1が取り付けられており、1日あたりに発酵槽25に供給される有機性廃棄物量(以下、「1日供給量」と呼ぶ場合がある)は、計測機器F1により測定されて第1ステップS1で演算処理装置24に入力される。すなわち、第1ステップS1では、第1バッチの初日から6日までの6日間それぞれの1日供給量を積算して、第1バッチにおいて発酵槽25に投入された有機性廃棄物の量である第1供給量を演算処理装置24に入力する。
次に、第2ステップS2として、第1予測発生値を算出する。予測発生値は、例えば数式1にしたがって算出できる。
(数1)
予測発生値(Nm/m・バッチ)=(A×B)/V×D
数式1において、Aは有機性廃棄物の1日供給量を示し単位はkg/日、Bは有機性廃棄物の単位量(1kg)あたりから本来発生するはずの発生ガス量を示し単位はNm/kg、Vは発酵槽25の容積を示し単位はm、Dは1回のバッチにおいて有機性廃棄物を投入した日数を示す。Bは、予め馴養して定常状態に達したメタン汚泥を種汚泥とし、種汚泥と発酵槽25に投入する有機性廃棄物とを混合して発生ガス量を求める予備実験を行って求めればよい。
なお、数式1では、予測発生値として発生ガスの1バッチあたりの予測発生量(発酵槽1mあたり)を求めているが、予測発生値として発生ガスの単位時間あたりの予測発生量である予測発生速度(発酵槽1mあたり)を求めてもよい。例えば数式1においてD(1バッチにおける有機性廃棄物の投入日数)を乗じなければ、1日あたりの発生ガスの予測発生速度を求めることができる。発生ガスの予測値として単位時間あたりのガス発生速度を求める場合、実測値としても単位時間あたりのガス発生速度を求めるが、ここではガス発生量の予測値および実測値を求める場合を例として説明する。
第2ステップS2に続く第3ステップS3では、第1実発生値として、第1バッチの初日から期間最終日の7日目までに実際に発生したガスの発生量を演算処理装置24に入力して記憶させる。本実施態様では発酵槽25で実際に発生するガスの発生量はガス流量計F2で測定されて出力され、演算処理装置24に自動的に入力され記憶される。
第4ステップS4は、第2ステップS2で得られた第1予測発生値(ここでは第1予測発生量)と、第3ステップS3で得られた第1実発生値(ここでは第1実発生量)とを比較して、比較結果を第1演算結果として出力する。本実施態様では、第1演算結果も演算処理装置24に記憶させる。
上記手順により、第1バッチを終了した後、第2バッチに入る。第2バッチでは、第1バッチと同様の手順で第2供給量の有機性廃棄物を6日間かけて発酵槽25に供給する。第2供給量は、第1演算結果に基づいて決定してもよく、例えば、第1実発生値が第1予測発生値と同じであれば、第1供給量と同じ量としてよく、第1実発生値が第1予測発生値を下回っていれば第1供給量より少なくし、逆に第1実発生値が第1予測発生値を上回っていれば第1供給量より多くしてよい。
第2バッチでは、上述した第1ステップS1〜第4ステップS4を行い、第4ステップ終了後、第3供給量を決定するため、第5ステップS5に進む。第5ステップでは、第2バッチの第4ステップS4で得られた第2演算結果に応じ3つのステップのいずれかを選択する。具体的には、第2バッチについて、実発生値と予測発生値を比較した結果、実発生値が予測発生値を下回れば第6ステップとしてS6−1を選択し、実発生値と予測発生値が同じであれば第6ステップとしてS6−2を選択し、実発生値が予測発生値を上回れば第6ステップとしてS6−3を選択する。
第6ステップS6−1〜S6−3では、第2バッチでの発生ガスの実測値(第2実発生量)と、第1バッチでの発生ガスの実測値(第1実発生量)とが比較される。第2バッチにおいて実発生値が予測発生値を下回った場合、第6ステップS6−1において、第2実発生値と第1実発生値とが比較され、第2実発生値が第1実発生値を下回れば第3供給量を第2供給量より少なくするAが選択され、第2実発生値が第1実発生値と同じであれば第3供給量をやや少なくするB、第2実発生値が第1実発生値を上回れば、第3供給量を第2供給量と同じにするCが選択される。
第2バッチの実発生値が予測発生値と同じであれば、第2実発生値と第1実発生値とを比較する第6ステップS6−2において、第2実発生値が第1実発生値を下回れば第3供給量を第2供給量よりやや少なくするBが選択され、第2実発生値が第1実発生値と同じであれば第3供給量を第2供給量と同じにするCが選択され、第2実発生値が第1実発生値を上回れば、第3供給量を第2供給量より多くするやや多くするDが選択される。
第2バッチの実発生値が予測発生値を上回れば、第2実発生値と第1実発生値とを比較する第6ステップS6−3において、第2実発生値が第1実発生値を下回れば第3供給量を第2供給量よりやや少なくするBが選択され、第2実発生値が第1実発生値と同じであれば第3供給量を第2供給量と同じにするCが選択され、第2実発生値が第1実発生値を上回れば、第3供給量を第2供給量より多くする多くするEが選択される。
なお、「実発生値と予測発生値とが同じ」「実発生値同士が同じ」という場合、値のずれが±2%以内程度であることを意味し、「実発生値が予測発生値を下回る」「第2実発生値が第1実発生値を下回る」という場合、(第2)実発生値が予測発生値(または第1実発生値)の2%以下であることを意味するものとする。また、「実発生値が予測発生値を上回る」「第2実発生値が第1実発生値を上回る」という場合、(第2)実発生値が予測発生値(または第1実発生値)の2%以上であることを意味するものとする。
さらに、「第3供給量を第2供給量より多くする」とは、第2供給量に対して5〜15質量%程度、増量することを意味し、「第3供給量を第2供給量よりやや多くする」とは、第2供給量に対して3〜10質量%程度、増量することを意味するものとする。同様に、「第3供給量を第2供給量より少なくする」とは、第2供給量に対して5〜15質量%程度、減量することを意味し、「第3供給量を第2供給量よりやや少なくする」とは、第2供給量に対して3〜10質量%程度、減量することを意味するものとする。「第3供給量を第2供給量と同じとする」とは、実質的に同じとすることを意味するものとする。
第2バッチに続く第3バッチでは、演算処理装置24から出力制御信号路42を介してモータMの出力を制御する制御信号を送って有機性廃棄物の移送量を調整し、第2バッチで実行された第6ステップで決められた第3供給量の有機性廃棄物を6日間で発酵槽25に供給するようにする。具体的には、移送路31に設けられた計測機器F1を用いて、貯留槽21から取り出される有機性廃棄物量を測定し、第3バッチにおける有機性廃棄物の供給量が第3供給量となるように、移送路31の移送スピードを調整すればよい。
第3バッチでは第2バッチと同様の操作を行い、第5ステップでは第3実発生値と第3予測発生値とを比較し、第6ステップでは第2実発生値と第3実発生値とを比較して第3バッチに続く第4バッチにおける有機性廃棄物の供給量を決定する。以下、第4バッチ以降も同様とする。
乾式メタン発酵では、発酵槽25に対する有機物負荷は有機物(600℃での強熱減量可能な有機物。以下「VS」と略する場合がある)として5〜20kg−VS/m/日程度の高い負荷での運転が可能であるが、上述したとおり、高濃度のVFA等が蓄積することによるメタン発酵への影響も大きい。発酵槽25に供給する有機性廃棄物の量に応じたガス発生の予測値と実測値とを単に比較するだけでは、メタン発酵の進行履歴を考慮できずに、有機性廃棄物の供給量を必要以上に変動させてしまうおそれがあるが、本発明では過去におけるガス発生の実測値を勘案することでメタン発酵の実情をより反映させた供給量制御ができる。
[実施例]
以下、実施例について説明する。実施例として、図1に示す処理装置を用い、豚糞と廃棄紙との混合物を有機性廃棄物として乾式メタン発酵処理した。有機性廃棄物は、水分が70質量%、VSが25.6質量%で、乾重ベースで85.3%が強熱減量可能で、VSの45%がメタン発酵で分解されうる分解性有機物であった。
まず、メタン発酵処理に先立ち、上記有機性廃棄物についての発生ガスの予測値を求める計算式を得るため、図3の実験装置を用いて実験を行った。実験装置は、恒温槽51内に設置された発酵槽としての容量3Lのセパラブルフラスコ53を備える。セパラブルフラスコ53は、メタン発酵により発生するガスを捕捉して計量するため、透明チューブ55で水槽50に立設したガスホルダ52と接続した。ガスホルダ52の内部にはパラフィンオイル54を入れ、適宜、ガスをサンプリングするためにバルブ58を取り付けたガス取出管56を設けた。
セパラブルフラスコ53の外で、後述する種汚泥1,000gと上記有機性廃棄物5〜200gとを混合した後、混合物をセパラブルフラスコ内に入れ、50〜55℃に維持されるように設定した恒温槽51内に設置し、7日間、嫌気条件下でメタン発酵させた。種汚泥としては、予め培養されTS濃度が15〜30質量%の乾式メタン汚泥を用いた。種汚泥は、1kgの種汚泥によって7日間で15gのセルロースの約80%を分解する程度の活性を有していた。
セパラブルフラスコ53から発生するガス発生量は、実験開始後6日目で定常状態に達し、上記有機性廃棄物についての単位有機性廃棄物量あたりのガス発生量は0.0806Nm/kgであると測定された。なお、バルブ58を開いてガス取出管56から取り出した発生ガスの成分を分析したところ、発生ガスのメタン濃度は55%であった。
上記実験結果から、次の条件で上記有機性廃棄物をメタン発酵させる場合における1バッチあたりの発生ガスの予測発生値(予測発生量)を求める計算式として、数式2が得られた。その条件とは、発酵槽25の容積を700Lとした処理装置を用いて、1バッチの期間を7日間とし、1バッチあたりの有機性廃棄物の供給を6日間に分けて行う(1日あたりの有機性廃棄物の供給量はAkg)ようにするものである。
(数2)
予測発生量(Nm/m・バッチ)=0.0806×A/0.7×6
実施例では、発酵槽25内に、含水率75〜80質量%のメタン発酵汚泥600〜700kgを保持し、試験開始後3週間目(すなわち第3バッチ)以降は、当該バッチにおける有機性廃棄物の供給量を、図2に示したフロー図に従い決定した。実施例では、図2のフロー図の第6ステップでAが選ばれた場合は7%の減量、Bが選ばれた場合は3%の減量、Cが選ばれた場合は増減なし、Dが選ばれた場合は3%の増量、Eが選ばれた場合は7%の増量とした。
表1に、第5バッチ(実験開始から第29日目からスタートする期間)以降の各バッチにおける有機性廃棄物の供給量、発生ガスの予測発生値(1バッチあたりの予測発生量)と実発生値、当該バッチの直前のバッチにおける発生ガスの実発生値、および第6ステップにおける判断結果を示す。
Figure 0004784521
表1に示すとおり、実験期間中、メタン発酵が停止することも大幅に阻害されることもなく、安定した運転ができた。また、発酵槽25の状態に応じて有機性廃棄物の供給量を増量することもできたため発酵槽25のメタン発酵能力を十分に活用できた。
本発明は、有機性廃棄物からバイオマスエネルギーとしてのメタンガスを得るために用いることができる
本発明を実施するために用いられるメタン発酵処置装置の模式図。 本発明の一実施態様に従いメタン発酵供給量を決定するフロー図。 実施例で用いた有機性廃棄物のガス発生量測定実験の装置模式図。
符号の説明
10 メタン発酵処理装置
21 貯留槽
23 混合装置
24 演算処理装置
25 発酵槽
F1 測定機器
F2 流量計

Claims (3)

  1. 有機性廃棄物を全固形物濃度15重量%以上の乾式メタン汚泥と混合して、発酵槽で乾式メタン発酵させる有機性廃棄物のメタン発酵処理方法であって、
    第1バッチにおける前記発酵槽に対する前記有機性廃棄物の供給量である第1供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を求め、
    前記第1バッチに続く第2バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第2供給量の有機性廃棄物について発生するガスの予測発生値を算出し、
    前記第2供給量の有機性廃棄物を前記発酵槽に供給してから所定時間を経過した時点で当該第2供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を求め、
    前記第2バッチの予測発生値と実発生値とを比較し、
    前記第1バッチの実発生値と前記第2バッチの実発生値とを比較して前記第2バッチに続く第3バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第3供給量を決定する有機性廃棄物のメタン発酵処理方法。
  2. 1のバッチの期間を5日以上10日以内とし、期間の初日から3日以上9日以内に前記実発生値を測定する請求項1に記載の有機性廃棄物のメタン発酵処理方法。
  3. 有機性廃棄物を全固形物濃度15重量%以上の乾式メタン汚泥と混合して、乾式メタン発酵させる発酵槽において発生したガスの実発生値を測定する測定手段と、
    前記測定手段により測定され第1バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第1供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を記憶する記憶手段、前記第1バッチに続く第2バッチにおける前記発酵槽に対する有機性廃棄物の供給量である第2供給量の有機性廃棄物について発生するガスの予測発生値を算出する算出手段、および、前記第2供給量の有機性廃棄物を前記発酵槽に供給してから所定時間を経過した時点で前記測定手段により測定された当該第2供給量の有機性廃棄物について実際に発生したガスの実発生値を前記第2バッチの予測発生値および前記第1バッチの実発生値と比較する比較手段を有する演算処理装置と、を備える有機性廃棄物のメタン発酵処理装置。
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