以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)本発明の基本的考え方
本発明では、ポータブルタイプのカーナビゲーション装置が移動体としての車両に設置された際、モニタ一体形筐体部に搭載された加速度センサの加速度検出軸が車両の進行方向と一致していない状態にあると、重力加速度gや方位変化に伴う横Gが加速度センサの観測値に混入したり、加速度センサによる進行方向加速度のゲインが変化する等によって当該進行方向加速度の精度に大きな悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、本発明のカーナビゲーション装置では、モニタ一体形筐体部に搭載された加速度センサの加速度検出軸が車両の進行方向と一致していない取付状態であっても、上述のような悪影響を取り除いた高精度な進行方向加速度を算出し得るようにすることにより、GPS信号を一時的に受信できなくなったとき、加速度センサの検出結果に基づき自律的に推定された車両の進行方向加速度を用いて車両の速度を算出し、当該車両の速度に基づいて推定した高精度な現在位置を表示し得るようになされている。
これに加えて本発明のカーナビゲーション装置では、GPS信号を受信できなくなったときに推定した車両の現在位置の信頼性が高い場合にのみ、その現在位置を表示するようになされており、以下、そのための説明を行う。
(1−1)2つの座標軸間の関係
図1に示すように、xy座標系からx′y′座標系への変換行列Tを次式、
で表し、xy座標系からみた位置p(cosθ,sinθ)が、x′y′座標系からみた位置p′(1,0)であるとした場合、次式の関係が成立し、これが、2つの座標系の関係を表す最も基本的な関係式となる。
(1−2)角度を表す用語の定義
次に、カーナビゲーション装置のモニタ一体形筐体部を車内空間のセンターコンソールに取り付ける際の3種類の角度について定義する。
図2に示すように、前後・左右・上下が定義できる物体において、前後方向をx軸、左右方向をy軸、上下方向をz軸とし、x軸周りの回転角度φを「ティルト」と呼び(以下、これをティルト角度φと呼ぶ)、y軸周りの回転角度θを「スイング」と呼び(以下、これをスイング角度θと呼ぶ)、z軸周りの回転角度ψを「パン」と呼ぶ(以下、これをパン角度ψと呼ぶ)。
(1−3)道路傾斜が存在するときの地表面と車両との関係
次に、道路傾斜が存在するときの地表面と車両との関係について説明する。因みに、道路傾斜が存在しない地表面(路面)は、車両の進行方向に沿ったx軸、車両の進行方向とは直交した横方向(水平方向)に沿ったy軸、及び重力加速度方向に沿った鉛直方向のz軸によって表される。
(1−3−1)地表面の地表座標系と道路傾斜の車両座標系
図3に示すように、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系は、道路傾斜上で車両の進行方向に沿ったx′軸、道路傾斜上で車両の進行方向とは直交した横方向(水平方向)に沿ったy′軸、及び車両の高さ方向に沿ったz′軸によって表される。
この道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)では、車両がx′軸方向に沿って太矢印方向へ進行する際の後ろ向きに働く加速度成分の符号を正と定義し、車両が右折する際の左側方向に働く加速度成分の符号を正と定義し、車両の上向き方向に働く重力加速度成分の符号を正と定義している。但し、符号の正負については、これに限るものではなく、上述の条件と逆であっても良い。
この場合、地表面の地表座標系(x軸、y軸、z軸)と、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)とを関係付けるオイラー角で考えると、道路の進行方向における上り坂や下り坂を表す前後傾斜はy′軸周りのスイング角度θで示され、道路の進行方向と直交した横方向(水平方向)の右下下がりや左下下がりを表す左右傾斜は、x′軸周りのティルト角度φで示される。なお、z′軸周りの回転はパン角度ψで示されるが、当該パン角度ψによって表される道路の傾斜は存在しない。
因みに、道路の進行方向における上り坂の前後傾斜におけるスイング角度θは、次式
で表され、道路の進行方向と直交した横方向(水平方向)における右下下がりの左右傾斜におけるティルト角度φは、次式で表される。
(1−3−2)地表面と車両との関係を示す座標変換式
ここで、地表面の地表座標系(x軸、y軸、z軸)に対する道路傾斜上に位置した車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)の変換行列Aを、次式で定義する。
この場合、変換行列Aは、道路の前後傾斜が先で、道路の左右傾斜が後なので、前後傾斜の項に対して左右傾斜の項を右側から乗算するようになされている。
従って、地表座標系(x軸、y軸、z軸)は、次式で表される。
これにより、道路傾斜上に位置する車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)では、重力加速度gは、次式のように観測される。
(1−4)車両と3軸加速度センサとの関係
続いて、車両と、当該車両に取り付けられるモニタ一体形筐体部に搭載された3軸加速度センサとの関係について説明する。
(1−4−1)車両の車両座標系及び3軸加速度センサのセンサ座標系
図3に示したように、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)に対して、当該車両に対して任意の角度で取り付けられるモニタ一体形筐体部に搭載された3軸加速度センサのセンサ座標系については、図4に示すようにx″軸、y″軸及びz″軸で表される。
この場合、カーナビゲーション装置のモニタ一体形筐体部が車両に取り付けられたときの3軸加速度センサに対するセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)としては、当該モニタ一体形筐体部がユーザからみて上向き又は下向きに取り付けられた場合にy″軸周りのスイング角度θ′で示され、当該モニタ一体形筐体部がユーザからみて左下下がり又は右下下がりに取り付けられた場合にx″軸周りのティルト角度φ′で示され、当該モニタ一体形筐体部がユーザからみて右側運転席のドライバー向き又は左側助手席側のパッセンジャー向きに取り付けられた場合にz″軸周りのパン角度ψ′によって示される。
因みに、カーナビゲーション装置のモニタ一体形筐体部がユーザからみて上向きに取り付けられた場合にy″軸周りのスイング角度θ′は、次式
で表され、モニタ一体形筐体部がユーザからみて左下下がりに取り付けられた場合に、x″軸周りのティルト角度φ′は、次式、
で表され、モニタ一体形筐体部がユーザからみて右側運転席のドライバー向きに取り付けられた場合にz″軸周りのパン角度ψ′は、次式で表される。
(1−4−2)車両座標系とセンサ座標系との関係を示す座標変換式
ここで、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)に対する3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)の変換行列Bを、次式で定義する。
この(11)式で表される変換行列Bでは、パン角度ψ′、スイング角度θ′、ティルト角度φ′の順に右側から乗算されるように選定されており、以降の計算過程においては一度選定された乗算順序を崩さないようにしなければならない。
但し、変換行列Bとしては、パン角度ψ′、スイング角度θ′、ティルト角度φ′の順に限られるものではなく、例えば、道路の左右傾斜が3軸加速度センサの取付角度の3軸(x″軸、y″軸、z″軸)に分配されて観測される場合、ティルト角度φ′、スイング角度θ′、パン角度ψ′の順番に右側から乗算されるように選定されてもよく、一度選定された乗算順序を崩さなければ、その他種々の乗算順序であってもよい。
ここで、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)は、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)との関係で、次式のように表される。
従って、(12)式を変形すれば、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)は、次式のように表される。
ここで3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)は、道路傾斜上に位置している車両の車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)が、上述したように(6)式の関係を有することから、(13)式は、次式で表される。
従って、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)では、重力加速度gは、次式のように観測される。
この重力加速度gを表す(15)式では、変換行列Bの逆行列B−1に相当する部分が車両に対する3軸加速度センサの傾きを表し、かつ変換行列Aの逆行列A−1に相当する部分が地表面に対する車両の傾きを表している。
実際上、3軸加速度センサが車両に対して所定方向の傾きを持って取り付けられ、かつ道路傾斜上に車両が位置することにより当該車両が地表面に対して所定角度の傾きを持って存在している場合、重力加速度gは、次式のように観測される。
これに対して、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)では、当該3軸加速度センサが車両に対して一切傾きがない状態で取り付けられているが、道路の前後傾斜及び左右傾斜が存在することにより、地表面に対しては所定角度の傾きを持って取り付けられている状態の場合、重力加速度gは、次式のように観測される。
同様に、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)では、道路の前後傾斜及び左右傾斜が存在せず、地表面に対して車両が所定角度の傾きを一切持っていない状態で位置しているものの、3軸加速度センサが車両に対して所定角度の傾きを持って取り付けられている場合、重力加速度gは、次式のように観測される。
さらに、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸、z″軸)では、道路の前後傾斜については存在するが、道路の左右傾斜が存在せず、かつ3軸加速度センサが車両に対して一切傾きがない状態で取り付けられている場合、重力加速度gは、次式のように観測される。
(1−4−3)3軸加速度センサに対する運動加速度(進行方向加速度及び横G)
また、3軸加速度センサのセンサ座標系(x″軸、y″軸及びz″軸)では、車両の進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyを定義し、道路に前後傾斜及び左右傾斜が存在せず、車両に対して3軸加速度センサの取付け傾きだけが生じている場合、3軸加速度センサからみたときの進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyを表す運動加速度αについては、変換行列Bの逆行列B−1を用いて、次式
で表されるため、これを変換行列Bの逆行列B−1を用いて展開すると、次式のように観測される。
因みに、車両の加速時には後ろ向きのGがかかること、及び右カーブでは左向きの遠心力が発生することに留意して、3軸加速度センサのティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′に対する正負の符号が定められる。
なお、(20)式で示された運動加速度αは、上述したような車両に対する3軸加速度センサの取付け傾きが一切生じていない場合、(20)式において変換行列Bの逆行列B−1を用いる必要がないため、次式で表される。
(1−5)3軸加速度センサ観測値
3軸加速度センサに対するセンサ座標系(x″軸、y″軸及びz″軸)の重力加速度gと運動加速度αとを合成したものを、当該3軸加速度センサによって観測される3軸加速度センサ観測値ASと定義した場合、当該3軸加速度センサ観測値ASは、(15)式及び(20)式に基づいて、次式で表される。
これを展開した場合、3軸加速度センサ観測値ASは、次式のように表される。
但し、3軸加速度センサ観測値ASは、道路の前後傾斜が存在したとしても左右傾斜が存在しなければ、(24)式のティルト角度φが「0」となるため、次式
で表され、道路の前後傾斜があるものの、3軸加速度センサが車両に対して一切取付け傾きがない状態で取り付けられている場合、次式で表される。
同様に、3軸加速度センサ観測値ASは、3軸加速度センサが車両に対して取付け傾きがある状態で取付けられているものの、道路の前後傾斜が存在しなければ、次式
で表され、道路に前後傾斜があるものの、3軸加速度センサが車両に対して一切取付け傾きがない場合、次式、
で表され、道路の前後傾斜及び3軸加速度センサの取付け傾きが存在するものの、進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyの双方ともに存在しない場合、次式で表される。
(1−5−1)3軸加速度センサのオフセットとゲイン
ところで、電圧値として表される3軸加速度センサ観測値ASとしては、3軸加速度センサの零点オフセットOFとゲインGEのことを考慮する必要がある。
ここで3軸加速度センサの零点オフセットOFとは、3軸加速度センサに対して加速度成分が全く働いていないときのx″軸、y″軸及びz″軸にそれぞれ発生する電圧値([mV])を示す。
また3軸加速度センサのゲインGEとは、3軸加速度センサに対して例えば1gの負荷がかかったときのx″軸、y″軸及びz″軸にそれぞれ発生する電圧値(がどの程度変化するか([V/(m/sec2)])を示す。
この零点オフセットOF及びゲインGEを考慮したときの3軸加速度センサ観測値ADは、(23)式に基づいて、次式で表される。
なお、この(30)式中に含まれる3軸加速度センサ観測値ASの単位は、m/sec2であり、3軸加速度センサ観測値ADの単位としては、[mV]となる。
ここで零点オフセットOFは、次式
で表され、ゲインGEは、次式で表される。
従って、零点オフセットOF及びゲインGEを考慮したときの3軸加速度センサ観測値ADは、次式で表されることになる。
ここで、(33)式を構成する各要素のうち、ゲインGEx、GEy、GEz、零点オフセットOFx、OFy、OFz、車両に対する3軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′、3軸加速度センサ観測値ASにおける道路の前後傾斜を示すスイング角度θ、道路の左右傾斜を示すティルト角度φがそれぞれ未知数であるが、ゲインGEx、GEy、GEzに関しては3軸加速度センサの仕様書に記載されている値もしくは実際に検出された値を用い、道路の前後傾斜を示すスイング角度θについては、カーナビゲーション装置のモニタ一体形筐体部に内蔵された気圧センサの出力結果(気圧値)と対応付けられた高度情報を基に算出し、誤差は若干出るが道路の左右傾斜を示すティルト角度φはないものとして扱う。
但し、これら以外の例えば重力加速度gについては、GPS衛星から得られるGPS信号に基づいて算出した現在位置から緯度を取得し、緯度と重力加速度とが対応付けられた緯度−重力加速度変換テーブルから当該緯度に対応した重力加速度gを取得すればよい。
また、車両の進行方向加速度αxについては、GPS信号に基づく車両の走行速度に基づいてリファレンスとして算出することが可能であり、車両の横G(横方向加速度)αyについても、GPS信号に基づく車両の方位変化及び走行速度に基づきリファレンスとして算出することが可能である。
これにより(33)式では、そのうち未知数が3軸加速度センサの零点オフセットOFx、OFy、OFz、車両に対する3軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の6個になり、これらを求める必要がある。
(1−6)3軸加速度センサの取付角度及び零点オフセットの学習
ところで、3軸加速度センサの零点オフセットOFx、OFy、OFz及びゲインGEx、GEy、GEzを考慮した3軸加速度センサ観測値AD=Iと定義し、(30)式中に含まれる次式
と定義した場合、上述のI(3軸加速度センサ観測値AD)は、次式で表される。なお、式中のSθ、Cθについては、それぞれsinθ、cosθを意味するものとする。
ここで、(34)式中における変換行列Aの逆行列A−1は、地表面に対する道路の前後傾斜を表しており、これは気圧センサの出力結果(気圧値)に対応付けられている高度情報を基に導くことが可能であり、重力加速度g、進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyについても、上述したようにリファレンスとして算出可能であるため、(35)式中のEは既知数である。
この既知数Eは、(5)式に示したように変換行列Aの逆行列A−1を用いれば、次式のように変形することができる。
従って、(35)式では、車両に対する3軸加速度センサの取付け傾き(ティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′)と、3軸加速度センサの零点オフセットOFx、OFy、OFzとが未知であり、3軸加速度センサ観測値ADは、次式のように変形することができる。
この(37)式を更にニュートンラプソン法で用いられる形態に変形し、次式
のような3つの関数式fx、fy、fzに表す。
ここで、(38)式〜(40)式では未知数が零点オフセットOx、Oy、Oz、ティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の計6個あるのに対し、3つの関数式fx、fy、fzしか存在しないので、このままでは解くことができない。
但し、(38)式〜(40)式中の既知数Eの値は、毎秒得られるGPS信号に基づいて変化するため、少なくとも2秒間待てば、既知数Eの値が変化したそれぞれ異なる6種類の関数式fx1、fy1、fz1、fx2、fy2、fz2を得られるが、車両に加減速の変化がなければ、複数種類の関数式fx、fy、fzを得ることはできないので、あくまで加減速の変化が生じそうな10数秒分に相当する複数種類の関数式fx1〜fxt、fy1〜fyt、fz1〜fztを得るようになされている。
この場合、未知数の数(6個)よりも関数式fx1〜fxt、fy1〜fyt、fz1〜fztの数が遥かに多くなったので、その中から関数式fx1〜fxt、fy1〜fyt、fz1〜fztを満たすような尤もらしい未知数の値を得るべく最小二乗法を用いるようになされている。
これより多次元のニュートンラプソン法の適用を考える。基本的な1次元のニュートンラプソン法における変化量δは、次式
で表される。ニュートンラプソン法では、この変化量δが所定の収束判定閾値以下になったとき、未知数の値の真解が得られたと認識するようになされている。
この(41)式は、次式
のように変形され、これがN次元では、次式によって表される。
従って、この場合、具体的には次式
で表される左辺左側の偏導関数値と、右辺の関数値を計算することにより、左辺右側の最小二乗解(変化量δ)を求める。
このようにして求められた最小二乗解(変化量δ)を用いて、未知数の解を次式
によって算出し、この(45)式の左辺に示された未知数の解を用いて、再度(44)式により最小二乗解(変化量δ)を求め、この最小二乗解(変化量δ)を用いて(45)式の未知数の解を求めるといった繰返し計算を所定の回数分だけ行うようになされている。
ところで、(45)式で用いられる右辺第1項の初期値としては、次式によって与えられる。
この(46)式の初期値としては、ティルト角度(φ′)0、スイング角度(θ′) 0及びパン角度(ψ′) 0 が0[deg]であり、零点オフセット(OFx) 0、(OFy) 0、(OFz)
0 が、3軸加速度センサに対して作用する加速度に応じてそれぞれ0[V]〜5[V]の範囲で電位が変動する場合の、当該加速度が一切作用していない状態を示す電圧値2.5([V])となる。
この(45)式では、左辺が最終的な解であり、右辺第1項が(45)式により前回求められた未知数の解(学習結果)を示し、右辺第2項が上述した(44)式の変化量δを示している。この(45)式の左辺により、零点オフセットOFx、OFy、OFz、車両に対する3軸加速度センサの取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の6個の未知数が全て判明する。
このようにカーナビゲーション装置では、GPS信号の受信時に、零点オフセットOFx、OFy、OFz、ティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の計6個の未知数を解として求めることにより、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信出来ない走行環境下になったとき、3軸加速度センサの零点オフセットOFx、OFy、OFz、3軸加速度センサの取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を用いると共に、3軸加速度センサの運動加速度α及び重力加速度gを含む観測結果や路面の高度差に基づいて進行方向加速度を推定し得、これを基に積分計算することにより車両の速度や現在位置を算出(推定)し得るようになされている。
因みに、(44)式〜(46)式中における添え字のiは、ニュートンラプソン法による繰り返し計算時の繰返回数を表しており、例えば、(44)式の右辺に含まれる(fx1)iは、次式
を意味し、(44)式の左辺左側の行列に含まれる例えば∂(fx1)i/∂(ψ′)iは、∂fx1/∂ψ′に対して、((ψ′)i,(θ′)i,(φ′)i,(OFx)i,(OFy)i,(OFz)i)を代入したものを意味している。
また、fx1の添え字が示す数字は、例えば10数秒間分まとめて処理する際の秒数を示す。従って、例えば10秒間分まとめて処理するのであれば、(44)式の左辺左側では、fx1〜fx10、fy1〜fy10、fz1〜fz10まで存在し、そのときの行列サイズは30(=3×10)行6列になる。
なお、(45)式の左辺で得られた未知数の解としては、真値を中心にばらつきがある可能性が高く、また時間の経過と共に真値が変動する可能性もあるため、本発明では(45)式で得られる未知数の解を現時点までの例えば過去数秒〜過去数分間に渡って算出し、それを平均化又は平滑化することにより、そのときに応じた最終的な未知数の解を学習結果として求め得るようになされている。
(1−7)3軸加速度センサを用いた自律動作
ところで、3軸加速度センサ観測値ADは、(30)式と同様、次式のように表される。
この(48)式を進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyについて整理したとすると、次式
のように変形され、この(49)式中の変換行列Bは、次式
で表され、この(49)式中の右辺第2項は、次式で表される。
従って、上述の(49)式に対して(50)式及び(51)式を代入することにより、次式を得ることができる。
この(52)式によって、進行方向加速度αxを求めるには、道路の前後傾斜を表すy′軸周りのスイング角度θが必要である。このスイング角度θは、次式
により、高度差ΔHと、速度Vtとによって表される。
この時点での未知数は、速度Vt、進行方向加速度αx、及び道路の前後傾斜を表すスイング角度θであるが、これらを一つ一つ解くのではなく、最終的に求めたい速度Vtを一気に求めることを考える。
ここで、速度Vt−1は、これから最終的に求めたい速度Vtの一つ前の時点で判明した速度データである。従って、GPS信号を受信できていた状態からGPS信号を受信できなくなった最初の時点における速度Vt−1としては、GPS信号に基づいて最後に算出された速度V0があてはまる。
この場合、(52)式のうち、既知の部分をβ(以下、これを既知部分βと呼ぶ)としてまとめると、既知部分βは、次式
で表され、これを用いて(52)式を、次式
のように変形することができる。
ここで速度Vtと進行方向加速度αxとの関係は、次式
のように表すことができ、上述の(55)式、(57)式を代入することにより、(58)式は、次式のように変形することができる。
この(59)式を速度Vtについて整理すると、次式
によって表され、これを速度Vtについて解くと、当該速度Vtは、次式によって表される。
このようにカーナビゲーション装置では、GPS信号の受信時に、車両に対する3軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、3軸加速度センサの零点オフセットOx、Oy、Ozを予め学習して記憶しておいた後、ビル等の陰に隠れる等してGPS信号を受信できなくなった場合、予め学習しておいた3軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、3軸加速度センサの零点オフセットOx、Oy、Ozを用い、3軸加速度センサ観測値ADx″、ADy″、ADz″及び高度差ΔHに基づいて進行方向加速度αxを自律的に算出(推定)することができるので、その自律的に算出した進行方向加速度αxを基に車両の速度Vt(以下、これを自律速度Vtと呼ぶ)を求めることができる。
なおカーナビゲーション装置では、このようにして求めた車両の自律速度Vtを積分すれば、GPS信号を受信できない走行環境下であっても、当該車両の現在位置を正確に算出し、表示部の地図上に現在位置を継続して表示し得るようになされている。
(1−8)2軸加速度センサ観測値
上述したようにカーナビゲーション装置では、3軸加速度センサを用いてGPS信号が受信できない場合であっても車両の自律速度Vt及び現在位置を高精度に算出(推定)するようにした場合について述べたが、3軸加速度センサを用いるのではなく2軸加速度センサを用いても車両の自律速度Vt及び現在位置を高精度に算出(推定)することができる。なお、この場合、2軸加速度センサについても、前後方向及び左右方向の加速度を検出できるように配置する。
具体的には、上述の3軸加速度センサ観測値ADと同様の考え方によれば、GPS信号を受信できている場合、零点オフセットOFB及びゲインGEBを考慮したときの2軸加速度センサ観測値ADBは、(30)式と同様に、次式によって表される。
ここで上述したように、変換行列Aは(5)式で表され、変換行列Bは(11)式で表されることから、変換行列Aの逆行列A−1は、次式
で表され、変換行列Bの逆行列B−1は、次式で表される。
また、2軸加速度センサのゲインGEBは、次式
で表され、2軸加速度センサの零点オフセットOFBは、次式で表される。
ここで、(62)式を構成する各要素のうち、ゲインGEBx、GEBy、零点オフセットOFBx、OFBy、車両に対する2軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′、道路の前後傾斜を示すスイング角度θ、道路の左右傾斜を示すティルト角度φがそれぞれ未知数であるが、ゲインGEBx、GEByに関しては2軸加速度センサの仕様書に記載されている値もしくは実際に検出された値を用い、道路の前後傾斜を示すスイング角度θについては、カーナビゲーション装置のモニタ一体形筐体部に内蔵された気圧センサの出力結果(気圧値)と対応付けられた高度情報を基に算出し、誤差は若干出るが道路の左右傾斜を示すティルト角度φはないものとして扱う。
但し、これら以外の例えば重力加速度gについては、GPS信号に基づいて算出した現在位置から緯度を取得し、緯度と重力加速度とが対応付けられた緯度−重力加速度変換テーブルから当該緯度に対応した重力加速度gを取得すればよい。
また、車両の進行方向加速度αxについては、GPS信号に基づく車両の走行速度に基づいてリファレンスとして算出することが可能であり、車両の横G(横方向加速度)αyについても、GPS信号に基づく車両の方位変化及び走行速度に基づきリファレンスとして算出することが可能である。
これにより(62)式では、未知数が2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFBy、車両に対する2軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の5個になり、これらを求める必要がある。
(1−9)2軸加速度センサの取付角度及び零点オフセットの学習
ところで、2軸加速度センサの零点オフセットOFB及びゲインGEBを考慮した2軸加速度センサ観測値ADB=IBと定義し、上述した(62)式中の(34)式部分を用いれば、上述のIB(2軸加速度センサ観測値ADB)は、次式で表される。
ここで、(34)式中における変換行列Aの逆行列A−1は、地表面に対する道路の前後傾斜を表しており、これは気圧センサの出力結果(気圧値)に対応付けられている高度情報を基に導くことが可能であり、重力加速度g、進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyについても、上述したようにリファレンスとして算出可能であるため、(67)式中のEも既知数となる。
この既知数Eは、(63)式に示したように変換行列Aの逆行列A−1を用いれば、次式のように変形することができる。
(67)式では、車両に対する2軸加速度センサの取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、2軸加速度センサの零点オフセットOFBとが未知であり、IBと定義した2軸加速度センサ観測値ADBは、次式
のように変形することができる。
この(69)式を更にニュートンラプソン法で用いられる形態に変形し、次式のような2つの関数式fx、fyに表す。
ここで、(70)式及び(71)式では未知数が2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFBy、2軸加速度センサの車両に対する取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′計5個あるのに対し、毎秒2つの関数式fx、fyしか得られないので解くことができない。そこで、少なくとも3秒間以上待つことにより、未知数よりも多く、それぞれ異なる6種類の関数式fx1〜fx3、fy1〜fy3を得る。
但し、(70)式及び(71)式中に含まれる既知数の値は、毎秒得られるGPS信号に基づいて変化するため、少なくとも3秒間待てば、既知数の値が変化したそれぞれ異なる6種類の関数式fx1〜fx3、fy1〜fy3を得られるが、車両に加減速の変化がなければ、複数種類の関数式fx、fyを得ることはできないので、あくまで加減速の変化が生じそうな10数秒分に相当する複数種類の関数式fx1〜fxt、fy1〜fytを得るようになされている。
この場合、未知数の数(5個)よりも関数式fx1〜fxt、fy1〜fytの数が遥かに多くなったので、その中から関数式fx1〜fxt、fy1〜fytを満たすような尤もらしい未知数の値を得るべく最小二乗法を用いるようになされている。
これより多次元のニュートンラプソン法の適用を考える。1次元のニュートンラプソン法における変化量δは、上述したように(41)式で表される。ニュートンラプソン法では、この変化量δが所定判定閾値以下になったとき、未知数の解が得られたと認識するようになされている。
この(41)式は、上述したように(42)式のように変形され、これがN次元では、(43)式によって表される。
従って、この場合、次式
を繰り返し解けばよく、この(72)式中における左辺左側の偏導関数値と、右辺の関数値を計算することにより、左辺右側の最小二乗解(変化量δ)を求める。
このようにして求められた最小二乗解(変化量δ)を用いて、最終解を次式によって算出するようになされている。
ところで、(73)式で用いられる右辺第1項の初期値としては、次式
によって与えられる。この(73)式における右辺第1項の初期値としては、ティルト角度(φ′)0、スイング角度(θ′) 0及びパン角度(ψ′) 0 が0[deg]であり、零点オフセット(OFBx) 0、(OFBy) 0 が、2軸加速度センサに対して作用する加速度に応じてそれぞれ0[V]〜5[V]の範囲で電位が変動する場合の、当該加速度が一切作用していない状態を示す電圧値2.5([V])となる。
この(73)式では、左辺が最終的な解であり、右辺第1項が(73)式により前回求められた解を示し、右辺第2項が上述した最小二乗解(変化量δ)を示している。この(73)式の左辺により、2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFBy、車両に対する2軸加速度センサの取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の計5個の未知数が判明する。
このように2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFBy、2軸加速度センサの取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′の計5個の未知数を求めることにより、カーナビゲーション装置では、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信出来ない走行環境下になったとき、2軸加速度センサの観測値に基づいて進行方向加速度αxを推定し得、これを基に積分計算することにより車両の走行速度や現在位置を算出(推定)し得るようになされている。
因みに、(72)式〜(74)式中における添え字のiは、繰り返し計算時の繰返回数を表しており、例えば、(72)式の右辺に含まれる(fx1)iは、上述の(47)式を意味し、(72)式の左辺左側の行列に含まれる例えば∂(fx1)i/∂(ψ′)iは、∂fx1/∂ψ′に対して、((ψ′)i,(θ′)i,(φ′)i,(OFx)i,(OFy)i,(OFz)i)を代入したものを意味している。
また、fx1の添え字が示す数字は、例えば10数秒間分だけまとめて処理する際の秒数を示す。従って、例えば10秒間分まとめて処理するのであれば、(72)式の左辺第1項では、fx1〜fx10、fy1〜fy10まで存在する。
なお、(73)式の左辺で得られた未知数の解としては、真値を中心にばらつきがある可能性が高く、また時間の経過と共に真値が変動する可能性もあるため、本発明では(73)式で得られる未知数の解を現時点までの例えば過去数秒〜過去数分間に渡って算出し、それを平均化又は平滑化することにより、そのときに応じた最終的な解を学習結果として求め得るようになされている。
(1−10)2軸加速度センサを用いた自律動作
ところで、2軸加速度センサ観測値ADBは、(62)式に基づいて、次式
のように表され、これを進行方向加速度αxについて解くために、(75)式を変形することにより、次式が得られる。
ここで、2軸加速度センサでは、足りないz軸入力に相当する項をzとした場合、(76)式は、次式によって表される。
この(77)式では、変換行列Aの逆行列A−1、2軸加速度センサのゲインGEBx及びGEBy、変換行列Bの逆行列B−1、2軸加速度センサの零点オフセットOFBx及びOFBy、2軸加速度センサ観測値ADBx″及びADBy″、重力加速度gは全て既知であり、進行方向加速度αx及び横G(横方向加速度)αyだけが未知数であるため、(77)式を変形すると、次式のように表される。
この(78)式に対して、上述した(50)式及び(51)式を代入することにより展開すると、次式
を得ることができ、このうちの(81)式により、zは次式で表される。
上述の(79)式によって、進行方向加速度αxを推定するには、道路の前後傾斜を表すy′軸周りのスイング角度θが必要である。このスイング角度θは、上述した(55)式で表される関係式により高度差ΔHと、速度Vtとによって表される。
この時点での未知数は、速度Vt、進行方向加速度αx、及び道路の前後傾斜を表すスイング角度θであるが、これらを一つ一つ解くのではなく、最終的に求めたい自律速度Vtを一気に求めることを考える。
ここでも、速度Vt−1は、これから最終的に求めたい自律速度Vtの一つ前の時点で判明した速度データである。従って、GPS信号を受信できていた状態からGPS信号を受信できなくなった最初の時点における速度Vt−1としては、GPS信号に基づいて最後に算出された速度V0があてはまる。
この場合、(79)式のうち、既知の部分をβ(以下、これを既知部分βと呼ぶ)としてまとめると、既知部分βは、上述したように(56)式で表され、これを用いて(79)式を、上述した(57)式のように変形することができる。
ここで自律速度Vtと進行方向加速度αxとの関係は、上述した(58)式のように表すことができ、上述の(55)式、(57)式を代入することにより、(58)式は、上述した(59)式のように変形することができる。
この(59)式を自律速度Vtについて整理すると、上述した(60)式によって表され、これを自律速度Vtについて解くと、当該自律速度Vtは、上述した(61)式によって表される。
このようにカーナビゲーション装置では、GPS信号の受信時に、車両に対する2軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFByを予め学習し記憶しておいた後、ビル等の陰に隠れる等してGPS信号を受信できなくなった場合、予め学習しておいた2軸加速度センサの取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、2軸加速度センサの零点オフセットOFBx、OFByを用い、2軸加速度センサ観測値ADBx″、ADBy″及び高度差ΔHに基づいて進行方向加速度αxを自律的に算出(推定)することができるので、その進行方向加速度αxを基に車両の自律速度Vtを求めることができる。
なおカーナビゲーション装置では、このようにして求めた車両の自律速度Vtを積分すれば、GPS信号を受信できない走行環境下であっても、当該車両の現在位置を正確に算出し、表示部の地図上に現在位置を継続して表示し得るようになされている。
(2)本発明におけるカーナビゲーション装置の具体的構成
次に、(1)で上述した本発明の基本的考え方を用いたカーナビゲーション装置の具体的構成について、GPS測位時(学習時)とGPS非測位時(自律時)とに分けてそれぞれ説明する。
(2−1)GPS測位時(学習時)におけるカーナビゲーション装置の構成
図5に示すように、カーナビゲーション装置1は、移動体としての車両に搭載され、GPS処理部3、気圧センサ4、2軸又は3軸の加速度センサ5、CPU(Central Processing Unit)構成でなる演算処理ブロック6によって構成されている。
この演算処理ブロック6は、図示しないROM(Read Only Memory)から基本プログラム及びナビゲーション情報算出プログラム等の各種アプリケーションプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、道路傾斜計算部10、学習処理部11及び自律計算部12といった各処理機能をソフトウェア的に実現し得るようになされている。
但し、カーナビゲーション装置1としては、これに限るものではなく、演算処理ブロック6における道路傾斜計算部10、学習処理部11及び自律計算部12をハードウェア的に構成するようにしても良い。
カーナビゲーション装置1では、GPSアンテナ2を介して複数のGPS衛星からのGPS信号を受信し、これら複数のGPS信号に基づきGPS処理部3により車両の速度Vを算出すると共に車両の方位データDを算出し、これらを演算処理ブロック6の道路傾斜計算部10及び学習処理部11へ送出する。
またカーナビゲーション装置1では、気圧センサ4によって検出された気圧値PRを演算処理ブロック6の道路傾斜計算部10へ送出すると共に、加速度センサ5によって観測される3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBを演算処理ブロック6の学習処理部11へ送出する。
道路傾斜計算部10の進行距離算出部21は、GPS処理部3から供給される速度Vに基づいて車両の進行距離Lmを算出し、その進行距離Lmを前後傾斜算出部23へ送出する。
また、道路傾斜計算部10の高度差算出部22は、一般的な気圧と高度との対応関係が予めテーブル化された気圧高度対応テーブルTBLを内部に記憶しており、時刻t0における気圧値PR0及び時刻t1における気圧値PR1を基に、気圧高度対応テーブルTBLから気圧値PR0及びPR1にそれぞれ対応した高度情報h0及びh1を読み出す。
そして高度差算出部22は、気圧値PR0に対応した車両の高度情報h0と、気圧値PR1に対応した車両の高度情報h1との差分である高度差ΔHを算出し、これを前後傾斜算出部23へ送出するようになされている。
前後傾斜算出部23は、進行距離算出部21から供給される進行距離Lmと、高度差算出部22から供給される高度差ΔHとに基づいて、車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)において道路の前後傾斜を示すスイング角度θを算出し、これを学習処理部11の取付角度及びオフセット学習処理部33へ送出する。
学習処理部11の加速度算出部31は、GPS処理部3から供給される速度Vを微分することにより車両の進行方向加速度αxをリファレンスとして算出し、これを取付角度及びオフセット学習処理部33へ送出する。
また学習処理部11の横G算出部32は、GPS処理部3から供給される方位データDを角速度算出部32Aによって微分することにより方位変化を表した角速度dDを算出し、同じくGPS処理部3から供給される速度V及び角速度dDに基づいて横G(横方向加速度)αyをリファレンスとして算出し、これを取付角度及びオフセット学習処理部33へ送出する。
取付角度及びオフセット学習処理部33は、加速度センサ5から供給される3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBと、加速度算出部31から供給される進行方向加速度αxと、横G算出部32から供給される横G(横方向加速度)αyとを基に、(1−6)で示した3軸加速度センサの取付角度及び零点オフセットの学習及び(1−9)で示した2軸加速度センサの取付角度及び零点オフセットの学習における説明に従って、加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz又はOFBx、OFBy、車両に対する加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を学習し得るようになされている。
このようなGPS測位時におけるカーナビゲーション装置1の学習処理手順をまとめてみれば、図6に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて算出された車両の速度V及び方位データDをGPSデータとしてGPS処理部3から学習処理部11で受け取ることにより取得し、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2においてカーナビゲーション装置1では、加速度センサ5の出力である3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBを学習処理部11の取付角度及びオフセット学習処理部33で受け取ることにより取得し、次のステップSP3へ移る。
ステップSP3においてカーナビゲーション装置1では、道路傾斜計算部10の進行距離算出部21で算出された進行距離Lm、及び高度差算出部22で算出された高度差ΔHに基づいて、前後傾斜算出部23により車両座標系(x′軸、y′軸、z′軸)において道路の前後傾斜を示すスイング角度θを算出し、次のステップSP4へ移る。
ステップSP4においてカーナビゲーション装置1では、ステップSP1で取得した車両の速度Vが速度情報として信頼たり得るデータであるか否かを当該速度Vに付加されているフラグに基づいて判断し、否定結果が得られたときは、速度Vが信頼できない速度情報に過ぎないため、次のステップSP16へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP4で肯定結果が得られると、カーナビゲーション装置1は次のステップSP5へ移り、GPS処理部3から受け取った速度Vを基に加速度算出部31により進行方向加速度αxをリファレンスとして算出すると共に、GPS処理部3から受け取った速度V及び角速度dDを基に横G算出部32により横G(横方向加速度)αyをリファレンスとして算出し、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6においてカーナビゲーション装置1は、3軸加速度センサ観測値AD及び上述の(36)式で示された既知数E、又は2軸加速度センサ観測値ADB及び上述の(68)式で示された既知数Eを学習用入力データとして設定し、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7においてカーナビゲーション装置1は、加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を求めるために必要な関数式が未知数よりも多いか否かを判定する。
ここで否定結果が得られると、このことは関数式が未知数よりも多くないため、これら未知数を求めることが出来ないことを表しており、このときカーナビゲーション装置1はステップSP16へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP7で肯定結果が得られると、このことは関数式が未知数よりも多いため、これら未知数を求めることが可能であることを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP8へ移る。
ステップSP8においてカーナビゲーション装置1は、このルーチンRT1における学習処理手順によって求められた前回の学習結果(加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′)の値を上述した(44)式又は(72)式の左辺左側の行列の値として初期値設定し、次のステップSP9へ移る。
ステップSP9においてカーナビゲーション装置1は、上述した(44)式又は(72)式中における左辺左側の偏導関数値と、右辺の関数値を計算し、次のステップSP10へ移る。
ステップSP10においてカーナビゲーション装置1は、上述した(44)式又は(72)式中における右辺の各要素(関数値)の合計が所定の収束判定閾値よりも小さくなったか否かを判定し、肯定結果が得られると次のステップSP15へ移り、否定結果が得られると次のステップSP11へ移る。
ステップSP11においてカーナビゲーション装置1は、上述した(44)式又は(72)式中の右辺における関数値の各要素の合計が、ニュートンラプソン法における所定の収束判定閾値よりも小さくなっていないので、ステップSP9で計算した偏導関数値及び関数値により、(44)式又は(72)式における左辺右側の最小二乗解(変化量δ)を求め、次のステップSP12へ移る。
ステップSP12においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP11で求めた最小二乗解(変化量δ)を用いて(45)式又は(73)式の左辺に相当する最終解(加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′)を求め、次のステップSP13へ移る。
ステップSP13においてカーナビゲーション装置1は、(44)式又は(72)式の左辺右側で示される最小二乗解(変化量δ)の各要素の合計が所定の収束判定閾値よりも小さいか否かを判定し、否定結果が得られると次のステップSP14へ移るのに対し、肯定結果が得られると次のステップSP15へ移る。
ステップSP14においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP9〜ステップSP14までの処理を繰返し行うニュートンラプソン法のループ回数が所定のループ回数閾値よりも少ないか否かを判定し、肯定結果が得られると、ステップSP9へ戻って、以降の処理を繰り返す。この場合、ステップSP9においてカーナビゲーション装置1は、直前に求められた加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を用いて、上述した(44)式又は(72)式中における左辺左側の偏導関数値と、右辺の関数値を計算する。
これに対し、ステップSP14で否定結果が得られると、繰返し計算のループ回数が所定のループ回数閾値よりも多いにも拘わらず、ステップSP10又はステップSP13で関数値の各要素の合計又は最小二乗解(変化量δ)の各要素の合計が収束しなかったことを表しており、このとき次のステップSP16へ移って未知数の解を求めることなく終了する。
ステップSP15においてカーナビゲーション装置1は、(45)式又は(70)式の左辺で求められた未知数の最終解を現時点まで過去数秒〜過去数分間に渡って算出し、その結果得られる複数個の最終解を用いて平滑化処理することにより、最も真値に近い最終解を学習結果として得、次のステップSP16へ移って処理を終了する。
なおカーナビゲーション装置1では、ステップSP15において平滑化処理に限るものではなく、処理量を減少させたいのであれば、単純な平均化処理することにより学習結果を得るようにしても良い。
(2−2)GPS非測位時(自律時)におけるカーナビゲーション装置の構成
図7に示すように、カーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信できない走行環境下になったので、GPS受信部3から速度V及び方位データDを受け取ることができなくなり、気圧センサ4からの気圧値PRを道路傾斜計算部10の高度差算出部22へ供給すると共に、加速度センサ5からの3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBを自律計算部12の速度算出部41へ供給する。
道路傾斜計算部10の高度差算出部22は、気圧高度対応テーブルTBLに基づいて、時刻t0における気圧値PR0に対応した高度情報と時刻t1における気圧値PR1に対応した高度情報との差分である高度差ΔHを算出し、これを自律計算部12の速度算出部41へ送出する。
また、学習処理部11の取付角度及びオフセット学習処理部33は、GPS信号を受信できているときに予め学習し記憶しておいた加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、車両に対する加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を自律計算部12の速度算出部41へ送出する。
自律計算部12の速度算出部41は、高度差算出部22から供給される高度差ΔHと、加速度センサ5から供給される3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBと、取付角度及びオフセット学習処理部33から供給される加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFByと、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′とを基に、(1−7)で示した3軸加速度センサを用いた自律動作又は(1−10)で示した2軸加速度センサを用いた自律動作の説明に従って、進行方向加速度αxを自律的に算出(推定)し、その進行方向加速度αxを基に車両の自律速度Vtを算出(推定)し得るようになされている。
従ってカーナビゲーション装置1では、このようにして求めた車両の自律速度Vtを積分することにより、GPS信号を受信できない走行環境下であっても、当該車両の現在位置を正確に算出し、表示部の地図上に現在位置を継続して表示し得るようになされている。
このようなGPS非測位時におけるカーナビゲーション装置1の自律速度算出処理手順をまとめてみれば、図8に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT2の開始ステップから入って次のステップSP21へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて算出された車両の速度V及び方位データDをGPSデータとしてGPS処理部3から学習処理部11で受け取ることにより取得し、次のステップSP22へ移る。
ステップSP22においてカーナビゲーション装置1は、気圧センサ4から供給される気圧値PRを道路傾斜計算部10の高度差算出部22で受け取ることにより取得し、次のステップSP23へ移る。
ステップSP23においてカーナビゲーション装置1は、高度差算出部22により気圧高度対応テーブルTBLを用いて高度差ΔHを算出し、次のステップSP24へ移る。
ステップSP24においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP21で取得した車両の速度Vが速度情報として信頼たり得るデータであるか否かを当該速度Vに付加されているフラグに基づいて判断し、肯定結果が得られたときは、速度Vが信頼できる速度情報であって、GPS信号を受信できている走行環境下にあるため、自律速度算出処理を行う必要がなく、次のステップSP27へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP24で否定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できない走行環境下であって、速度Vが信頼できない速度情報に過ぎないことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP25へ移る。
ステップSP25においてカーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できない走行環境下にあるので、予めGPS信号の受信時に学習しておいた加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを用いて、上述の(1−7)3軸加速度センサを用いた自律動作や、(1−10)2軸加速度センサを用いた自律動作で説明した計算方法により進行方向加速度αxを推定し、これを積分計算することにより車両の自律速度Vtを求め、次のステップSP26へ移る。
ステップSP26においてカーナビゲーション装置1は、このようにして求めた車両の自律速度Vtを出力し、GPS信号を受信できない走行環境下であっても、自律速度Vtに基づいて当該車両の現在位置を一段と正確に推定して表示部の地図上に現在位置を継続表示し、次のステップSP27へ移って処理を終了する。
(2−3)学習結果収束判断処理
次に、カーナビゲーション装置1において、GPS信号の受信時に予め求めた加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′及び零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzの学習結果の信頼性に応じて、GPS非測位時に自律的に求めた車両の自律速度Vtを用いたナビゲーション動作により現在位置を表示するか、あるいはGPS測位時の最後に算出されたGPS速度Vを用いたナビゲーション動作により現在位置を表示するかを判断する学習結果収束判断処理手順について例えば4通り説明する。
(2−3−1)学習回数による学習結果収束判断処理手順
図9に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT3の開始ステップから入って次のステップSP31へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて車両のGPS速度Vを測位できたか否かを判断する。
ここで、肯定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できている走行環境下にありGPS速度Vを測位できたことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP32へ移る。
ステップSP32においてカーナビゲーション装置1は、GPS処理部3によって算出されたGPS速度Vを学習処理部11の加速度算出部31で保持し、その保持したGPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP38へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP31で否定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できなくなったのでGPS速度Vを測位できなかったことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP33へ移る。
ステップSP33においてカーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信できていない走行環境下になったので、GPS信号の受信時に、加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを学習結果として求めた際の、平滑化処理又は平均化処理の回数(以下、これを学習回数と呼ぶ)が所定の学習回数閾値よりも多かったか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことは、学習回数が学習回数閾値よりも多いので、学習結果が収束しており、その学習結果の信頼性が高いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP34へ移る。
ステップSP34においてカーナビゲーション装置1は、学習結果の信頼性が高いと判断したので、GPS信号受信時に予め学習した加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを用いて推定した車両の自律速度Vtをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP38へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP33で否定結果が得られると、このことは学習回数が学習回数閾値よりも少なく、学習結果の信頼性が低いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP35へ移る。
ステップSP35においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP32で保持したGPS速度Vに付加されているフラグに基づいて当該GPS速度Vが信頼できる有効な速度情報であることを認識し、かつGPS信号を受信できなくなってから現時点までのGPS非受信時間が、所定のGPS速度有効時間閾値よりも少ないか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも短いので、ステップSP32で保持したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っていることを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP36へ移る。
ステップSP36においてカーナビゲーション装置1は、GPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、GPS非受信時間を1秒間分カウントしてインクリメントし、次のステップSP38へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP35で否定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも長いので、ステップSP32で保持したGPS速度が信頼たり得る速度情報ではないことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP37へ移る。
ステップSP37においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP32で保持したGPS速度を無効にして、ナビゲーション動作に用いられることを予め防止し、次のステップSP38へ移って処理を終了する。
このようにナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できているときは、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、車両がビルの陰等に隠れる等によりGPS速度Vを測位できなくなった場合、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性高いものであれば、その加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを用いて推定した自律速度Vtによりナビゲーション動作を実行する。
このときナビゲーション装置1は、図10(A)に示すように、GPS信号の受信時に測位したGPS速度Vに従ってナビゲーション動作を実行している場合、車両の現在位置を示すアイコンACを例えば赤色で表示し、最も信頼性の高いGPS速度Vに基づく位置表示であることをユーザに対して直感的に認識させ得るようになされている。
またナビゲーション装置1は、図10(B)に示すように、GPS信号を受信している状態(GPS速度測位状態)から、GPS信号を受信できなくなる状態(GPS非測位状態)へ遷移したとき、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性高いのであれば、自律速度Vtに従ってナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば橙色で表示し、自律速度Vtに基づく位置表示であることをユーザに対して直感的に認識させ得るようになされている。
しかしながらナビゲーション装置1は、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性の低いものであっても、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行するが、そうでない場合は誤ったナビゲーション動作を実行しかねないため、そのGPS速度Vを無効にすることにより、誤動作を予め防止して信頼性の高い高精度な現在位置を提示し得るようになされている。
このときナビゲーション装置1は、図10(C)に示すように、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性の低いものであっても、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば灰色で表示し、GPS非測位状態のときのGPS速度Vに基づく位置表示であることをユーザに対して直感的に認識させ得るようになされている。
(2−3−2)学習結果変化量による学習結果収束判断処理手順
図11に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT4の開始ステップから入って次のステップSP41へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて車両のGPS速度Vを測位できたか否かを判断する。
ここで、肯定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できている走行環境下にありGPS速度Vを測位できたことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP42へ移る。
ステップSP42においてカーナビゲーション装置1は、GPS処理部3によって算出されたGPS速度Vを学習処理部11の加速度算出部31で保持し、その保持したGPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP48へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP41で否定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できなくなったのでGPS速度Vを測位できなかったことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP43へ移る。
ステップSP43においてカーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信できていない走行環境下になったので、GPS信号の受信時に、加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを学習結果として求めた際の、最後の学習対象値とその一つ前の学習対象値との差分すなわち学習結果変化量が所定の学習結果変化量閾値よりも小さいか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことは、最後の学習対象値とその一つ前の学習対象値との学習結果変化量が学習結果変化量閾値よりも小さいので、最終的に求められた学習結果が収束しており、その学習結果の信頼性が高いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP44へ移る。
ステップSP44においてカーナビゲーション装置1は、学習結果の信頼性が高いと判断したので、最終的な学習結果である加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを用いて推定した車両の自律速度Vtをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP48へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP43で否定結果が得られると、このことは最後の学習対象値とその一つ前の学習対象値との学習結果変化量が学習結果変化量閾値よりも大きく、学習結果の信頼性が低いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP45へ移る。
ステップSP45においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP42で保持したGPS速度Vに付加されているフラグに基づいて当該GPS速度Vが信頼できる有効な速度情報であることを認識し、かつGPS信号を受信できなくなってから現時点までのGPS非受信時間が、所定のGPS速度有効時間閾値よりも少ないか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも少ないので、ステップSP42で保持したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っていることを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP46へ移る。
ステップSP46においてカーナビゲーション装置1は、GPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、GPS非受信時間を1秒間分カウントしてインクリメントし、次のステップSP48へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP45で否定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも多いので、ステップSP42で保持したGPS速度が信頼たり得る速度情報ではないことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP47へ移る。
ステップSP47においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP42で保持したGPS速度を無効にして、ナビゲーション動作に用いられることを予め防止し、次のステップSP48へ移って処理を終了する。
このようにナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できているときは、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、車両がビルの陰等に隠れる等によりGPS速度Vを測位できなくなった場合、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性高いものであれば、その加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを用いて推定した自律速度Vtによりナビゲーション動作を実行する。
この場合もナビゲーション装置1は、図10(A)及び(B)に示したように、GPS信号の受信時に測位したGPS速度Vに従ってナビゲーション動作を実行している場合、車両の現在位置を示すアイコンACを例えば赤色で表示し、GPS非測位状態で加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性高いのであれば、自律速度Vtに従ってナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば橙色で表示するようになされている。
しかしながらナビゲーション装置1は、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性の低いものである場合、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行するが、そうでない場合は誤ったナビゲーション動作を実行しかねないため、そのGPS速度Vを無効にすることにより、誤動作を予め防止して信頼性の高い高精度な現在位置を提示し得るようになされている。
このときもナビゲーション装置1は、図10(C)に示したように、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性の低いものであっても、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば灰色で表示するようになされている。
(2−3−3)進行方向加速度のダイナミックレンジによる学習結果収束判断処理手順
図12に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT5の開始ステップから入って次のステップSP51へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて車両のGPS速度Vを測位できたか否かを判断する。
ここで、肯定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できている走行環境下にありGPS速度Vを測位できたことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP52へ移る。
ステップSP52においてカーナビゲーション装置1は、GPS処理部3によって算出されたGPS速度Vを学習処理部11の加速度算出部31で保持し、その保持したGPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP58へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP51で否定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できなくなったのでGPS速度Vを測位できなかったことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP53へ移る。
ステップSP53においてカーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信できていない走行環境下になったので、GPS信号の受信時に、学習処理部11の取付角度及びオフセット学習処理部33により、加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを学習結果として求める際の、加速度算出部31から供給される進行方向加速度αxが車両の加速区間及び減速区間を含む広いダイナミックレンジ(以下、これを進行方向加速度範囲と呼ぶ)を持ち、その進行方向加速度範囲が所定の進行方向加速度範囲閾値よりも大きいか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことは、進行方向加速度範囲が所定の進行方向加速度範囲閾値よりも大きい、すなわち加速度算出部31から供給される進行方向加速度αxが車両の加速区間及び減速区間を含む広いダイナミックレンジを有することにより学習結果の精度が高いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP54へ移る。
ステップSP54においてカーナビゲーション装置1は、学習結果の精度が高いと判断したので、最終的な学習結果である加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを用いて推定した車両の自律速度Vtをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP58へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP53で否定結果が得られると、このことは進行方向加速度範囲が所定の進行方向加速度範囲閾値よりも小さい、すなわち学習結果の精度が低いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP55へ移る。
ステップSP55においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP52で保持したGPS速度Vに付加されているフラグに基づいて当該GPS速度Vが信頼できる有効な速度情報であることを認識し、かつGPS信号を受信できなくなってから現時点までのGPS非受信時間が、所定のGPS速度有効時間閾値よりも少ないか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも少ないので、ステップSP52で保持したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っていることを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP56へ移る。
ステップSP56においてカーナビゲーション装置1は、GPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、GPS非受信時間を1秒間分カウントしてインクリメントし、次のステップSP58へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP55で否定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも多いので、ステップSP52で保持したGPS速度が信頼たり得る速度情報ではないことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP57へ移る。
ステップSP57においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP52で保持したGPS速度を無効にして、ナビゲーション動作に用いられることを予め防止し、次のステップSP58へ移って処理を終了する。
このようにナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できているときは、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、車両がビルの陰等に隠れる等によりGPS速度Vを測位できなくなった場合、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が精度の高いものであれば、その加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを用いて推定した自律速度Vtを用いてナビゲーション動作を実行する。
この場合もナビゲーション装置1は、図10(A)及び(B)に示したように、GPS信号の受信時に測位したGPS速度Vに従ってナビゲーション動作を実行している場合、車両の現在位置を示すアイコンACを例えば赤色で表示し、GPS非測位状態で加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が精度が高いのであれば、自律速度Vtに従ってナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば橙色で表示するようになされている。
しかしながらナビゲーション装置1は、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が精度の低いものである場合、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行するが、そうでない場合は誤ったナビゲーション動作を実行しかねないため、そのGPS速度Vを無効にすることにより、誤動作を予め防止して信頼性の高い高精度な現在位置を提示し得るようになされている。
このときもナビゲーション装置1は、図10(C)に示したように、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が精度の低いものであっても、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば灰色で表示するようになされている。
(2−3−4)学習結果変化量及び進行方向加速度のダイナミックレンジの組み合わせによる学習結果収束判断処理手順
図13に示すようにカーナビゲーション装置1は、ルーチンRT6の開始ステップから入って次のステップSP61へ移り、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて車両のGPS速度Vを測位できたか否かを判断する。
ここで、肯定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できている走行環境下にありGPS速度Vを測位できたことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP62へ移る。
ステップSP62においてカーナビゲーション装置1は、GPS処理部3によって算出されたGPS速度Vを学習処理部11の加速度算出部31で保持し、その保持したGPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP68へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP61で否定結果が得られると、このことはGPS信号を受信できなくなったのでGPS速度Vを測位できなかったことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP63へ移る。
ステップSP63においてカーナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できていた走行環境下からGPS信号を受信できていない走行環境下になったので、GPS信号の受信時に、加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを学習結果として求めた際の、最後の学習対象値とその一つ前の学習対象値との差分すなわち学習結果変化量が所定の学習結果変化量閾値よりも小さかったか否かを判定すると共に、学習処理部11の取付角度及びオフセット学習処理部33により、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを学習結果として求める際の、加速度算出部31から供給される進行方向加速度αxの進行方向加速度範囲が所定の進行方向加速度範囲閾値よりも大きいか否かを判定する。
ここで2つの判定条件を全て満たすことにより肯定結果が得られると、このことは、学習結果の信頼性が高いと共に精度が高いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP64へ移る。
ステップSP64においてカーナビゲーション装置1は、学習結果の信頼性及び精度が高いと判断したので、最終的な学習結果である加速度センサ5の取付け傾きを示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを用いて推定した車両の自律速度Vtをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、次のステップSP68へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP63で否定結果が得られると、このことは学習結果の信頼性だけが高く精度が低いこと、学習結果の精度は高いが信頼性が低いこと、もしくは学習結果の信頼性及び精度の双方共に低いことを表しており、このときカーナビゲーション装置1は次のステップSP65へ移る。
ステップSP65においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP62で保持したGPS速度Vに付加されているフラグに基づいて当該GPS速度Vが信頼できる有効な速度情報であることを認識し、かつGPS信号を受信できなくなってから現時点までのGPS非受信時間が、所定のGPS速度有効時間閾値よりも少ないか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも少ないので、ステップSP62で保持したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っていることを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP66へ移る。
ステップSP66においてカーナビゲーション装置1は、GPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力した後、GPS非受信時間を1秒間分カウントしてインクリメントし、次のステップSP68へ移って処理を終了する。
これに対してステップSP65で否定結果が得られると、このことはGPS非受信時間がGPS速度有効時間閾値よりも多いので、ステップSP62で保持したGPS速度が信頼たり得る速度情報ではないことを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP67へ移る。
ステップSP67においてカーナビゲーション装置1は、ステップSP62で保持したGPS速度を無効にして、ナビゲーション動作に用いられることを予め防止し、次のステップSP68へ移って処理を終了する。
このようにナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できているときは、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、車両がビルの陰等に隠れる等によりGPS速度Vを測位できなくなった場合、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性及び精度の高いものであれば、その加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを用いて推定した自律速度Vtによりナビゲーション動作を実行する。
この場合もナビゲーション装置1は、図10(A)及び(B)に示したように、GPS信号の受信時に測位したGPS速度Vに従ってナビゲーション動作を実行している場合、車両の現在位置を示すアイコンACを例えば赤色で表示し、GPS非測位状態で加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性及び精度共に高いのであれば、自律速度Vtに従ってナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば橙色で表示するようになされている。
しかしながらナビゲーション装置1は、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性又は精度の何れか一つだけでも低い場合、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行するが、そうでない場合は誤ったナビゲーション動作を実行しかねないため、そのGPS速度Vを無効にすることにより、誤動作を予め防止して信頼性の高い高精度な現在位置を提示し得るようになされている。
このときもナビゲーション装置1は、図10(C)に示したように、加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性又は精度の何れか一つでも低い場合であって、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行し、そのときの車両の現在位置を示すアイコンACを例えば灰色で表示するようになされている。
(3)動作及び効果
以上の構成において、カーナビゲーション装置1は、GPS衛星からのGPS信号を受信できる走行環境下で、モニタ一体形筐体部に搭載されている加速度センサ5の加速度検出軸が車両の進行方向と一致していない場合の取付角度を示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、加速度センサ5の零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを予め学習し記憶しておくことにより、GPS信号が受信できなくなったときに備える。
このときカーナビゲーション装置1は、加速度センサ5の車両に対する取付角度を示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、加速度センサ5の零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzを学習処理の現時点まで過去数秒〜過去数分間に渡って算出し、それらを平滑化又は平均化することにより求めた学習結果を記憶しておくようにしたことにより、加速度センサ5の取付角度及び零点オフセットOFの値を一段と真値に近付けることができ、値としての確からしさを向上させることができる。
また、加速度センサ5から供給される3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBの観測値としては、上述した(24)式〜(29)式及び(33)式等のように、センサ座標系(x″軸、y″軸及びz″軸)の各軸にそれぞれ振り分けられている重力加速度g分が予め考慮されているため、加速度センサ5の取付角度を示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、加速度センサ5の零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzとが重力加速度gによる誤差の影響がない状態で高精度に求められることになる。
そしてカーナビゲーション装置1は、その後、GPS信号を受信できなくなったとき、予め学習しておいた加速度センサ5の取付角度を示すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′と、加速度センサ5の零点オフセットOFx(OFBx)、OFy(OFBy)、OFzと、当該加速度センサ5によって観測される3軸加速度センサ観測値AD又は2軸加速度センサ観測値ADBと、高度差ΔHとを用いて車両の進行方向加速度αxを高精度に推定することができるので、その進行方向加速度αxを基に車両の速度Vtや現在位置を正確に算出し、表示部の地図上に現在位置を継続表示することができる。
このように本発明のカーナビゲーション装置1では、車両に設置するだけで、モニタ一体形筐体部の加速度センサ5の車両に対する取付角度及び零点オフセットOFを自動的に算出するようになされているので、車速パルスを用いる従来のカーナビゲーション装置に比べて取付け及び取り外しの煩雑な手間をユーザに強いることなく、かつ、他の車両に設置される度に改めて加速度センサ5の車両に対する取付角度及び零点オフセットOFを自動的に算出することができる。
すなわち本発明のカーナビゲーション装置1では、車両に設置するだけの簡単な手間だけで、加速度センサ5の車両に対する取付角度及び零点オフセットOFを自動的に算出し、GPS信号を受信できない走行環境下になったときでも、加速度センサ5の観測値を基に車両の走行速度及び現在位置を高精度に算出し、ナビゲーション動作を高精度に継続することができる。
さらに本発明のカーナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できているときは、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行するものの、車両がビルの陰等に隠れる等によりGPS速度Vを測位できなくなった場合、GPS信号の受信時に予め求めておいた加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFの学習結果が信頼性高いものであれば、その加速度センサ5の取付け傾き及び零点オフセットOFを用いて推定した自律速度Vtによりナビゲーション動作を実行することにより、GPS速度Vを測位できなくなったとき以降であっても、車両の現在位置を示すアイコンACの位置精度を保持したままナビゲーション動作を継続することができる。
一方、カーナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できなくなったときに、学習結果が信頼性の低いものであっても、GPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っているときには、そのGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を実行することにより、GPS速度Vを測位できなくなった瞬間から僅かな時間であれば、最後のGPS速度Vを用いてナビゲーション動作を継続し、車両の現在位置を示すアイコンACの位置精度を大きく劣化させることなく提示し続けることができる。
ところで、カーナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できなくなったときに、学習結果が信頼性の低いものであり、かつGPS受信時に測位したGPS速度Vが現時点であっても信頼たり得る速度情報としての鮮度を保っていない場合、そのGPS速度Vを無効にすることにより、アイコンACをそのままの位置で停止させた状態で表示し、誤ったナビゲーション動作が行われることを予め防止することができる。
以上の構成によれば、カーナビゲーション装置1では、GPS速度Vを測位できなくなったときの加速度センサ5の取付角度及び零点オフセットOFに対する学習結果の信頼性に応じて自律速度Vtをナビゲーション動作に用いるべく出力するか否かを決定し、学習結果の信頼性が低い場合でも、GPS速度Vを測位できなくなる前のGPS速度Vの鮮度に応じてGPS速度Vをナビゲーション動作に用いるべく出力するか否かを決定することにより、車両の走行中にGPS信号を受信できなくなったときでも、ナビゲーション動作の信頼性を低下させることなく、表示部の地図上に車両の現在位置を高精度に継続表示することができる。
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、3軸又は2軸の加速度センサ5がモニタ一体形筐体部に搭載されているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3軸又は2軸の加速度センサ5が、モニタとは別体型の筐体部や、筐体部とは別体のモニタに搭載されているようにしても良い。
また上述の実施の形態においては、本発明のカーナビゲーション装置1を移動体としての車両に搭載するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、船舶、電車、その他種々の移動体に搭載するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を得るために、ニュートンラプソン法という計算手法を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、加速度センサ5の零点オフセットOFx、OFy、OFz、又はOFBx、OFBy、加速度センサ5の取付け傾きを表すティルト角度φ′、スイング角度θ′及びパン角度ψ′を得ることができれば、ニュートンラプソン法以外のその他種々の計算手法を用いるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、気圧センサ4により検出される気圧値PRを用いて高度差ΔHを算出し、その高度差ΔHを基に道路の前後傾斜を表すy′軸周りのスイング角度θを求めるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、傾斜角度の変化量を角速度として求めることが可能なピッチレイトセンサを用いて道路の前後傾斜を表すy′軸周りのスイング角度θを求めるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、ルーチンRT6により学習結果量及び進行方向加速度のダイナミックレンジの組み合わせによる判断基準を用いた学習結果収束判断処理手順を実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ルーチンRT3の学習回数とルーチンRT4の学習結果変化量との組み合わせによる判断基準を用いた学習結果収束判断処理手順を実行するようにしたり、ルーチンRT3の学習回数とルーチンRT5の進行方向加速度範囲との組み合わせによる判断基準を用いた学習結果収束判断処理手順を実行するようにしたり、或いは、ルーチンRT3の学習回数とルーチンRT4の学習結果変化量と、ルーチンRT5の進行方向加速度範囲との組み合わせによる判断基準を用いた学習結果収束判断処理手順を実行するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、演算処理ブロック6がROMから読み出して展開したナビゲーション制御プログラムに従って上述したルーチンRT3における学習回数による学習結果収束判断処理手順〜ルーチンRT6の学習結果変化量及び進行方向加速度のダイナミックレンジの組み合わせによる学習結果収束判断処理手順を実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、記録媒体からインストールしたナビゲーション制御プログラムや、インターネットからダウンロードしたナビゲーション制御プログラムに従ってルーチンRT3における学習回数による学習結果収束判断処理手順〜ルーチンRT6の学習結果変化量及び進行方向加速度のダイナミックレンジの組み合わせによる学習結果収束判断処理手順を学習処理手順を実行するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、加速度センサ5の取付角度と零点オフセットOFを同時に求めるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、取付角度だけを求めた後、オフセットOFを求めるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、進行方向加速度算出手段としての加速度算出部31、横方向加速度算出手段としての横G算出部32、加速度センサとしての加速度センサ5、高度差算出手段としての高度差算出部22、傾斜算出手段としての前後傾斜算出部23、取付角度算出手段としての取付角度及びオフセット学習処理部33によってナビゲーション装置をソフトウェア的に構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、進行方向加速度算出手段、横方向加速度算出手段、加速度センサ、高度差算出手段、傾斜算出手段及び取付角度算出手段をハードウェア的に構成するようにしても良い。
1……カーナビゲーション装置、2……GPSアンテナ、3……GPS処理部、4……気圧センサ、5……加速度センサ、6……演算処理ブロック、10……道路傾斜計算部、11……学習処理部、12……自律計算部、21……進行距離算出部、22……高度差算出部、23……前後傾斜算出部、31……加速度算出部、32……横G算出部、33……取付角度及びオフセット学習処理部、41……速度算出部。