JP4782973B2 - オーディオおよびビデオ信号の同期化 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明の背景および従来技術
本発明は、一般的に、符号化オーディオおよびビデオ情報の伝送に関する。さらに詳細には、本発明は、本明細書の請求項1および9に記載の、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおける、符号化ビデオ信号に対する符号化オーディオ信号の適応的タイムシフトに関する。また、本発明は、請求項14に記載のリアルタイムオーディオおよびビデオ情報の伝送用システムにも関する。
【0002】
オーディオおよびビデオ情報が共同して提供されるとき、つまり、対応するオーディオ信号と共に動画が放送されるとき、当該放送が人間の感覚に受入れられるためにオーディオ情報とビデオ情報の間にある程度の同時性が求められる。例えば、特定の視覚的事象の観察から推測可能な音は、このような画像情報の表示と時間的な同時性を有する必要がある。典型的には、話者の唇の動きが話者の声の再生と少なくとも相対的に一致している必要がある。しかし、人間の知覚は、オーディオ情報と、対応する視覚事象との間のごくわずかな狂いを識別することはできない。よって、その狂いが十分に小さい場合、人間に知覚されることなく、オーディオ情報はビデオ情報よりわずかに早く、または遅れて提供されてよい。実験では、80ms未満のワンウェイ・スキューは感知できず、150ms未満のワンウェイ・スキューは一般的に許容範囲内であることを示した。
【0003】
しかし、オーディオ信号および対応するビデオ信号が、信号間に400ms以上の偏差がある状態で放送される場合、当該放送は、非常に低品質であると知覚される。残念ながら、基本速度128kbpsのISDNで動作する今日のビデオ会議システムのほとんどのビデオ遅延は、400msのオーダーである(ISDNとは、Integrated Services Digital Networkである)。
【0004】
GSMでは、オーディオ遅延は、約90msである(GSMとは、Global System for Mobile communicationである)。音声信号をGSMによって伝送し、対応するビデオ信号を128kbpsビデオ会議システムを用いて送信する解決手法では、オーディオ信号とビデオ信号との間に80ms以下の偏差を維持するためにオーディオ信号に230msから390msの遅延を加えなければならない。オーディオ信号は、サンプリングされて通常20ms間隔で符号化オーディオフレームに供給されるディジタル符号化信号に変換されるので、オーディオ信号の遅延を発生させるクロック信号は非常に高精度でなければならない。
【0005】
特許文献EP,A1,0 577 216は、放送される音声信号を関連する話者の唇の動きと一致させるように、受信データの遅延を一定にするためにFIFO(First In/First Out)バッファを使用するオーディオ/ビデオ−インターフェースを記載している。所望の遅延間隔に対応する上限および下限しきい値の範囲を規定するバッファセンタリング信号に応じてFIFOバッファの蓄積量を制御する。バッファの蓄積量が下限しきい値より小さくなる場合、データが十分に遅延するまで同じデータ成分が繰返し読み出される。しかし、バッファの蓄積が上限しきい値レベルより大きくなる場合、遅延が所望のレベルに低下するまで以前に格納されたデータ成分の代わりに新しいデータ成分が上書きされる。
【0006】
受信オーディオ信号と受信ビデオ信号間に一定の遅延を維持する別の方法および構成がEP,A1,0 598 295に記載されている。ここでは、信号に特定の遅延を達成するために、オーディオ信号のサンプルがバッファメモリに一時的に格納される。バッファメモリに格納されたオーディオサンプル数がビデオ信号のn番目のフィード毎に検出される。この数が指定値に到達すれば、n個のビデオフィールドの間隔で到来する検査地点での、格納されたオーディオサンプル数が一定に維持されるよう、バッファメモリの読出しまたは書き込みアドレスをプリセットする。
【0007】
米国特許6 104 706号は、オーディオ、ビデオ、および、可能であれば他種のデータを、特定の優先順位を各パケットに割当てるパケットデータストリームに時間多重するという解決法を開示している。当該パケットデータストリームは、ほぼ優先順に伝送される。オーディオパケットには最高の優先順位が与えられ、次にビデオパケットが続く。他形式のデータを含むパケットは、最低の優先順位が与えられる。通信システムにおける予測平均システム遅延に等しい遅延時間を与えるFIFOバッファにおいて受信オーディオパケットの再生を遅らせることにより、受信機側で連続的なリアルタイムオーディオ再生が維持される。送信者と受信者の間の時間差を縮小または拡大すべくオーディオの再生を減速または加速する。
【0008】
特許文献EP,A1, 0 577 216は、オーディオチャネルのプログラマブル遅延回路を用いて、話者の唇の動きと対応する音声情報との間の同時性を達成する半自動式システムを記載している。ビデオチャネルで放映される映像の、サウンドに対応する動きが起こるエリアが手動で規定される。規定エリアに対して運動ベクトルが生成され、オーディオチャネルレベルと相関させてビデオおよびオーディオチャネル間の時間差を決定する。関連ビデオ情報と並行して音声信号を放送することができるように、プログラマブル遅延回路を制御してこの遅延を補正する。
【0009】
上述した全ての文献は、オーディオ信号の多様な遅延に言及している。しかし、コンピュータのシステムリソースを用いて遅延を発生させている場合、周知の方法を用いて知覚的に満足のいく結果を得ることは非常に困難である。実際、非リアルタイム動作システムを有するコンピュータは、割当てられたシステムリソースの十分な精度を維持し、人間の知覚により感じ得る程度の偏差範囲内で遅延オーディオ信号をビデオ信号と時間的に整合させることができない。もちろん、このようなコンピュータで、こういった信号間の偏差を人間の感覚で気づき得る程度以下に縮小することは同様に不可能である。
【0010】
発明の要旨
したがって、本発明の目的は、受信ビデオ信号に対して受信オーディオ信号を遅延させることにより上記問題を軽減することであり、またそれを対応する信号間に所望の時間的整合を維持するのに十分安定して行うことである。
【0011】
本発明の第1様態によれば、本目的は、冒頭で述べたような、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおいて、符号化ビデオ信号に対して符号化オーディオ信号を適応的にタイムシフトする方法により達成される。当該方法は、符号化オーディオ信号に所望される遅延と、符号化オーディオ信号のフレーム間隔との比率に対して隣接する2つの整数のうちの1つとして、フレーム遅延数をまず計算することを特徴とする。次いで、適合するビデオフレームを復号化する前に、フレーム遅延数と同数のオーディオフレームを順次格納する。その後適合するビデオフレームを復号化し、格納されたオーディオフレームを一連の格納順で復号化する。メッセージストリームの残りのオーディオフレームおよびビデオフレームのいずれに対しても、当該ストリームが終了するまで、これらのステップを繰り返す。
【0012】
本発明の第2様態によれば、本目的は、コンピュータ上で動作させたときに本発明の第1様態の方法を実施するソフトウェアを具備する、コンピュータの内部メモリに直接ロードできるコンピュータプログラムにより達成される。
【0013】
本発明の第3様態によれば、本目的は、本発明の第1様態の方法をコンピュータに実施させるプログラムが記録される、コンピュータが読込み可能な媒体により達成される。
【0014】
本発明の第4様態によれば、本目的は、冒頭で述べたような、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおいて符号化ビデオ信号に対し符号化オーディオ信号を適応的にタイムシフトする装置により達成される。当該装置は、双方とも受信オーディオフレームを順次格納する第1および第2バッファと、コントローラとを具備することを特徴とする。適用可能なシステム規格および/または当該装置が動作する伝送プロトコルに応じて、送信機は特定の速度でオーディオフレームを生成する。当該コントローラは、連続した2つのオーディオフレーム間のタイムスパンを表す第1フレーム間隔値の形式で、このパラメータに関する情報を内部に格納する。該コントローラは、受信オーディオフレームと受信ビデオフレームのタイミング指標から、所望の遅延値を取り出し、格納する。所望の遅延値とは、復号化オーディオおよびビデオ信号を最大偏差の範囲内で時間的に整合させるために、オーディオフレームに必要な遅延を表す。当該コントローラは、所望の遅延値と第1フレーム間隔値との比率に対して隣接する2つの整数のうちの1つとしてフレーム遅延数を計算する。さらに、当該コントローラは、遅延数オーディオフレームを第2バッファから読み出す間に遅延数オーディオフレームを第1バッファに格納することと、遅延数オーディオフレームを第1バッファから読出す間に遅延数オーディオフレームを第2バッファに格納することとを交互に制御し、それにより、遅延数とオーディオフレーム間隔の積に相当する時間を遅延させたオーディオフレームが前記バッファから読み出されるようにする。
【0015】
本発明の第5様態によれば、本目的は、伝送媒体を介して送信局から受信局へのリアルタイムオーディオおよびビデオ情報の伝送を行うシステムにより達成される。当該送信局は、オーディオ情報をオーディオフレームに符号化するオーディオ符号化ユニット、ビデオ情報をビデオフレームに符号化するビデオ符号化ユニット、およびオーディオフレームとビデオフレームをオーディオ/ビデオメッセージストリームに結合させるマルチプレクサを具備する。このメッセージストリームは、送信媒体を介して受信局に送信される。第1に、受信局は、本発明の第4様態による装置を具備する。受信局はまた、受信オーディオフレームからオーディオ信号を抽出するオーディオ復号ユニットと、受信ビデオフレームからビデオ信号を抽出するビデオ復号ユニットとを具備する。
【0016】
本発明が提案する、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおける符号化ビデオ信号に対応する符号化オーディオ信号の適応的タイムシフトは非常に精確であり、よって、符号化オーディオ信号と符号化ビデオ信号間の偏差が1つのオーディオフレームの時間間隔を超えることはない。これらの間隔は常に非常に短いので、人間の感覚が受け入れることができるオーディオおよびビデオ信号の時間的な整合を提供することができる。ほとんどの場合、人間がオーディオおよびビデオ信号間のシフトを識別することは不可能である。
【0017】
また、本発明による解決法は、比較的実行が容易であり、比較的低処理能力で済む。さらに、遅延間隔中に前記処理を実行するコンピュータの中央演算処理装置がブロックされることはない。
【0018】
最後に、本発明は、状況に応じて遅延値を実行モードで適応的に調整することを容易にする。
【0019】
添付図と添付付録を参照して、実施例として開示された好ましい実施形態を用いて本発明をさらに詳細に説明する。添付付録は、本発明の実施形態による方法を実施するコンピュータプログラムの一覧表を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態
図1Aは、第1フレーム間隔T=20msで符号化オーディオ情報を含むオーディオフレームF(1)−F(14)を伝送する時系列を示している。よって、第1オーディオフレームF(1)はt=0で送信され、次に、別のオーディオフレーム等が20ms遅れて続き、それが繰り返されている。
【0021】
図1Bは、図1のオーディオフレームF(1)−F(14)に含まれるオーディオ情報に対応する符号化ビデオ情報を含むビデオフレームF(1)−F(3)の時系列を示している。当該ビデオフレームF(1)−F(3)は、通常第1フレーム間隔Tより長い第2フレーム間隔で伝送される。ほとんどの実施形態においてこれが当てはまるとしても、少なくとも理論的には逆の関係も考えられる。
【0022】
この実施例では、第1ビデオフレームF(1)は、第1オーディオフレームF(1)より90ms遅れて受信機に到達する。よって、オーディオフレームの復号時間がビデオフレームの復号時間と等しいと仮定すると、復号化オーディオ信号を復号化ビデオ信号と時間的に整列させるために、前記受信オーディオフレームF(1)−F(14)を90ms遅延させなければならない。従って、受信オーディオフレームF(1)−F(14)に所望される遅延Dは90msである。しかし、オーディオ情報とビデオ情報との偏差が特定の値Δmax未満、例えば約80msである場合、人間の知覚がそのような偏差を識別することはできない。よって、オーディオ信号とビデオ信号間の偏差の大きさが、所望される遅延Dの最大値Δmax以内であれば許容範囲内である。
【0023】
オーディオフレームF(1)−F(14)は、各フレームF(1)−F(14)の受信からD±Δmax後にオーディオデコーダに到達するように遅延されるべきである。第1フレーム間隔TがΔmax未満であると仮定すると、実際のオーディオフレームの遅延が所望の遅延Dの第1フレーム間隔T1個分の範囲内となればそれで十分となる。第1フレーム間隔Tに対する共通の値は、今日使用されているオーディオ符号化システムでは20−30msのオーダーであるので、これは実際に安全な前提条件である。
【0024】
本発明によれば、オーディオフレームF(1)−F(14)の遅延は整数個のオーディオフレーム間隔で表される。さらに正確には、フレーム遅延数nは、所望の遅延Dと第1フレーム間隔Tとの比率に対して隣接する2つの整数の1つとして計算される。これは、数学的に以下のように表すこともできる。
Figure 0004782973
【0025】
図1Cは、図1AのオーディオフレームF(1)−F(14)を、上式(1)に従って計算された第1遅延数n’と第1フレーム間隔との積に相当する第1時間n’遅延させた時系列を示している。つまり、n’=int(90/20)=4であり、第1遅延時間n’=4×20ms=80msである。
【0026】
図1Dは、図1AのオーディオフレームF(1)−F(14)を、代わりに、式(2)に従って計算された第2遅延数n’’と第1フレーム間隔との積に相当する第2時間n’’遅延させた時系列を示している。つまり、n’’=int(90/20)+1=5であり、第2遅延時間n’’=5×20ms=100msである。
【0027】
第1の遅延時間n’および第2の遅延時間n’’は、双方とも所望の遅延D=90msとの偏差(10ms)を有するが、それは十分に最大偏差値Δmax(約80ms)以下である。実際には、提起された解決法により、時間間隔の最大偏差Δmaxが第1フレーム間隔T=20msと等しくなる。これは、人間の知覚により識別可能な値よりはるかに小さい値である。
【0028】
図1Aから1Dに示した例示的方法が、フローチャートを用いて図2に概略的に示されている。第1ステップ200において、オーディオ/ビデオメッセージストリームを構成するオーディオフレームおよびビデオフレームが受信される。次のステップ205は、前のステップ200で受信したフレームからタイミング情報を抽出する。オーディオ/ビデオフレームは、リアルタイムトランスポートプロトコル(RTP(Real Time Transport Protocol))といった復元の時期を定めるサポートを行うトランスポートプロトコルで伝送されると仮定する。このプロトコルは、特定のフレームが生成された時点を示す各フレームにタイムスタンプを割当てる。よって、タイムスタンプを調査することにより、一緒に放送されるべきオーディーオおよびビデオフレームの組み合わせを決定し、対応する信号の時間的整合(Time alignment)を達成することができる。通常、受信したオーディオ/ビデオメッセージストリームにおけるフレームのタイムスタンプは、受信ビデオフレームに対して受信オーディオフレームをどの程度遅延させることが望ましいかを特定する。所望の遅延は、図1Cおよび図1Dに関して記載した上記方程式(1)および(2)に従って対応するフレーム遅延数nに変換される。RTPでは、タイムスタンプは32ビットを含み、初期値はランダムに設定される。タイムスタンプ値とこの初期値との差は、特定フレームの時間的位置(または時期)を示している。もちろん、フレームのタイミング情報を独自に示す他のいかなる方法も本発明による方法で同様に適用できる。
【0029】
次のステップ210は、適合するビデオフレームを復号する前に、フレーム遅延数nに等しい数の受信オーディオフレームを格納する。その後のステップ215は、適合するビデオフレーム、つまり、タイムスタンプが格納されたn個のオーディオフレームのタイムスタンプとほぼ一致するビデオフレーム、を復号する。実際、これは、オーディオフレームがビデオフレームよりわずかに高いおよび/または低い値を有するタイムスタンプを有してもよいことを意味する。次のステップ220は、格納されたn個のオーディオフレームを復号する。最後に、ステップ225は、オーディオ/ビデオメッセージストリームが終了したかを問い、終了した場合は、処理も終了する。そうでない場合、処理は第1ステップ200に戻る。
【0030】
図3は、本発明による装置300およびシステムの実施形態のブロック図を示している。当該システムは、送信局、伝送媒体および受信局を含む。当該受信局は、対応する復号化オーディオ信号および復号化ビデオ信号が最大偏差の範囲内で時間的に整列するように、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおける符号化ビデオ信号に対応する符号化オーディオ信号の適応的タイムシフトを行う装置を結果的に含む。
【0031】
音響および動画情報は、送信局で生成されマイクロフォン301およびビデオカメラ302により記録される。音響情報を形成するオーディオ信号は、マイクロフォン301からオーディオ符号化ユニット303に転送される。該オーディオ符号化ユニットは、信号をサンプリングし、サンプルをディジタル符号形式に変換し、第1フレーム間隔でマルチプレクサ305に供給されるオーディオフレームFを形成する。同様に、動画情報を表すビデオ信号は、ビデオカメラ302からビデオ符号化ユニット304に転送される。該ビデオ符号化ユニットは、信号をサンプリングし、サンプルをディジタル符号形式に変換し、第2フレーム間隔でマルチプレクサ305に供給されるビデオフレームFを形成する。
【0032】
当該マルチプレクサ305は、オーディオフレームFおよびビデオフレームFを、伝送媒体306を介して受信局に伝送されるオーディオ/ビデオメッセージストリームに結合させる。当該伝送媒体306は、通常インターネット上に割当てられる伝送リソースにより構成される。しかし、前記伝送媒体306は、固定、移動を問わず、任意の通信環境において設定された遅延属性および十分な帯域幅を有する任意の伝送リソースとすることができる。
【0033】
受信局の装置300は、オーディオ/ビデオメッセージストリームをデマルチプレクサ307に収集する。該デマルチプレクサは、前記ストリームをオーディオフレームFおよびビデオフレームFに分離する。さらに、デマルチプレクサ307は、到来するオーディオフレームFおよびビデオフレームFを時間順に配列する。これは、例えば、各フレームの発生時に送信側で各フレームに割当てられるフレームシーケンス番号に基づいて実施することができる。また、デマルチプレクサ307は、タイミング情報ts、tsを、受信フレームF、Fから抽出し、この情報をコントローラ312に送信する。さらに、当該コントローラ312は、オーディオ符号化ユニット303から発生した2つの連続オーディオフレームF間の間隔Tを示す値を内部に格納する。受信フレームF、Fに関連するタイミング情報ts、tsおよび間隔Tに基づき、コントロール312は、前述した方法に従って所望の遅延値Dおよび対応する遅延数nを計算する。当該遅延数nの値により、コントローラ312はスイッチA、B、CおよびD並びに装置300の他のユニットを制御する方法を決定し、よって本発明の本実施形態による方法を達成する。これについては、以下に図4を参照して詳述する。
【0034】
オーディオフレームFは、第1遅延スイッチAを介して入力データ形成ユニット308に送られる。スイッチAが第1の位置1に配置されると、オーディオフレームFは、前記スイッチAを介して入力データ形成ユニット308を通過することができ、そこでは到来したオーディオフレームFが遅延バッファに順番に格納するのに適切なデータ構造に従って配列される。これは、例えば、オーディオフレームFのデータサイズおよび/または構造を示す、第1群の変数から第2群の変数への転換を伴うことができる。しかし、第1遅延スイッチAが第2の位置0に配置されると、到来するオーディオフレームは遅延は加えられずに(第2の位置0に配置された)第2遅延スイッチDに送られ、その後、オーディオフレームFはオーディオ復号化ユニット313に到達する。当該第1遅延スイッチAおよび当該第2遅延スイッチDは、双方共コントローラ312により制御され、計算された遅延数nがゼロであるときに、それぞれ第2の位置0に配置される。
【0035】
だが、遅延数nが計算されてゼロより大きな値を持つ場合、コントローラ312は、第1遅延スイッチAと第2遅延スイッチDをそれぞれ第1の位置に配置する。これにより、到来するオーディオフレームFが、入力データ形成ユニット308を介し、第2の位置0に初期配置される第1バッファスイッチBに供給され、その結果オーディオフレームFがFIFO型(FIFO=First in/First Out)の第1バッファ309に順番に入力されることとなる。同時に、以前に格納されたオーディオフレームFが(存在する場合、)FIFO型の第2バッファ310から出力データ供給ユニット311を介してオーディオ復号化ユニット313に順番に読み出される。当該出力データ供給ユニット311は、復号に適切なデータ構造に従ってオーディオフレームFを再配列する。これは、例えば、オーディオフレームFのデータサイズおよび/または構造を示す、第2群の変数を第1群の変数に戻す転換を伴うことができる。新しいオーディオ/ビデオメッセージストリームの先頭部では第2バッファ310は空であり、これは最初の段階において、空のオーディオフレームFであるゼロ信号が第2バッファ310から取り出されることを意味する。
【0036】
遅延数nと同数のオーディオフレームFが第1バッファ309に格納されると、コントローラ312は、第1バッファスイッチBを第1の位置1に配置する。これと並行して、第2バッファスイッチCが第2の位置0に配置される。次いで、オーディオフレームFが替わって第2バッファ310に順番に供給される。同時に、以前の遅延間隔の間、第1バッファ309に格納されたオーディオフレームFがこのバッファ309から読み出される。遅延数n個のオーディオフレームFが格納されると、コントローラ312は、バッファスイッチBとCの位置を再度切換える。第1バッファ309および第2バッファ310から読出して交互に格納を行う効果は、オーディオフレームFが遅延数nと遅延速度間隔Tとの積に相当する分だけ遅延されてオーディオ復号化ユニット313に供給されるということである。
【0037】
コントローラ312は、受信したオーディオフレームFおよびビデオフレームFのタイミング情報ts、tsを連続的に登録し、それに基づいて更新された遅延数nを計算する。現在値より大きな遅延数nが計算される場合、バッファ309、310に格納されるオーディオフレームFのシーケンスは長くなり、現在値より小さな遅延数nが計算される場合、バッファ309、310に格納されるオーディオフレームFのシーケンスは反対に短くなる。
【0038】
後者の場合、遅延数nの減少分と同数のオーディオフレームFを廃棄する必要がある。これは、関連バッファから十分な数のダミーの読出しを実施して、対応するオーディオフレームFを廃棄することにより達成できる。当然、ある遅延間隔から別の遅延間隔に移る瞬間にこのような廃棄を実行することができる。しかし、遅延数nの値が2以上減少する場合、高い値から低い値への移行を段階的に行うことにより、出力信号を知覚的に改善することができる。
【0039】
図3は、バッファ309と310を2つの独立したユニットとして示している。当然、これは、バッファが単一のメモリ回路に含まれる構成を排除するものではなく、バッファが同じメモリエリアを有する独立した部分を構成することを排除するものでもない。
【0040】
よって、コントローラ312が装置300のスイッチA、B、CおよびDを制御して、オーディオ復号化ユニット313に供給されるオーディオフレームFと、ビデオ復号化ユニット315に供給されるビデオフレームFとを、第1フレーム間隔Tと同じ最大スキュー時間で時間的に整列する。その結果として、対応する復号化オーディオ信号および対応する復号化ビデオ信号は、最大偏差の範囲(および人間の感覚で識別可能な範囲)内で時間的に整列して、スピーカ314およびビデオモニタ316を介してオペレータに放送される。
【0041】
ビデオフレームFの復号化にオーディオフレームFの復号化よりも長い時間がかる場合、またはその逆の場合、所望の遅延値Dを調整して、復号化オーディオ信号および復号化信号を最大偏差の範囲内で時間的に整列するようにそれを補償する。
【0042】
図4は、図3のコントローラ312により制御される、本発明による方法の実施形態をフローチャートで示している。フレーム間隔ごとにステップ401で処理が開始され、現在の遅延数nがゼロであるかを問う。この問いへの回答が肯定である場合、次のステップ402は、遅延数nが変更されるべきかを問う。遅延数nがゼロ値に維持される場合、処理はステップ403に進み、出力信号を入力信号と同一に設定する(すなわち、図3において、到来するオーディオフレームFがデマルチプレクサ307から第1遅延スイッチAを介して直接第2遅延スイッチDに送られる)。その後、処理は遅延数nがゼロで終了し、第1ステップ401に戻る。
【0043】
ステップ402の問いへの回答が肯定である場合、その次のステップ404で遅延数nは新しい値に更新される。次のステップ405は再度遅延数nがゼロであるかを問い、(可能性は低いが)ゼロである場合、処理がステップ403に継続する。そうでない場合、ステップ406で入力データが形成される。これは、到来するオーディオフレームFが(入力データ形成ユニット308において)時間順に配列されることを意味する。その後、ステップ407は、遅延間隔が終了したか、つまり、遅延数nの値の変更が実行可能な時期になったかを調査する。ステップ407の問いへの回答が肯定である場合、ステップ408は、遅延数nの値が実際に変更されるべきかを問う。変更されるべきである場合、パラメータは次のステップ409で新しい値を割当てられ、次のステップ410で第1バッファスイッチBはその位置を切換える。そうでない場合、処理はステップ408からステップ410に直接継続し、ここで、第1バッファスイッチBは、到来するオーディオフレームFが直前の遅延間隔と異なるバッファ(つまり、309または310)に供給されるように切換えられる。
【0044】
次のステップ411は、第1バッファスイッチBの現在値を調査し、このスイッチBが第2の位置0に配置されていると検出される場合、処理はステップ412に継続する。このステップは、到来するオーディオフレームFのサイズがゼロであるか、つまり、バッファに格納されるべきデータが存在するかを問う。このようなデータが存在する場合、次のステップ413はデータを第1バッファ309に書き込む(つまり、オーディオフレームFが第1バッファ309に順次格納される)。しかし、ステップ412が到来するオーディオフレームFのサイズがゼロであると検出する(つまり、バッファ309に格納するデータがない)場合、次のステップ414は、第2バッファ310が空であるかを問い、空である場合は、出力データ供給ユニット311に供給される出力信号が、次のステップ415でゼロに設定される。そうでない場合、ステップ416は、第2バッファ310から第2バッファスイッチCを介して出力データ供給ユニット311にデータ(格納されたオーディオフレームF)を読み出す。
【0045】
ステップ411で、第1バッファスイッチBが第1の位置1に配置されていると認識された場合、処理はステップ417に継続し、到来するオーディオフレームFのサイズがゼロであるか(つまり、到来するデータが存在するか)を問う。空でないオーディオフレームFが受信される場合、次のステップ418は、そのデータを第2バッファ310に書き込み(つまりオーディオフレームFが第2バッファ310に順次格納され)、処理はステップ419に継続する。しかし、ステップ417で、到来するオーディオフレームのサイズがゼロである(第2バッファ310に格納するデータが存在しない)と認識された場合、処理はステップ419に直接継続する。このステップは第1バッファ309が空であるかを問い、空である場合、出力データ供給ユニット311に供給される出力信号が次のステップ420でゼロに設定される。そうでない場合、ステップ421は、第1バッファ310から第2バッファスイッチCを介して出力データ供給ユニット311にデータ(つまり、格納されたオーディオフレームF)を読み出す。その後、処理はゼロより大きな遅延数nで終了し、第1ステップ401に戻る。
【0046】
本発明の実施形態による方法を実施するコンピュータプログラムのリストを付録として添付する。
【0047】
本明細書で使用される、「具備する/具備した」という表現は、言及された特徴、整数、ステップまたは部品の存在を明確にするために採用されている。しかし、その用語により、1つ以上の別の特徴、整数、ステップまたは部品、またはその一群の存在または追加を除外するものではない。
【0048】
本発明は、添付図の実施形態に限定されず、請求の範囲内で自由に変更することができる。
添付付録
Figure 0004782973
Figure 0004782973
Figure 0004782973
Figure 0004782973

【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A−Dは、本発明に従って、オーディオフレームを適合するビデオフレームに対してどのように遅延させるかを、時系列を用いて表している。
【図2】 図2は、本発明による一般的な方法をフローチャートで図示している。
【図3】 図3は、本発明による装置およびシステムの実施形態のブロック図である。
【図4】 図4は、本発明による方法の実施形態をフローチャートで示している。

Claims (15)

  1. 対応する復号化オーディオ信号と対応する復号化ビデオ信号とを最大偏差(Δmax)の範囲内で時間的に整列するように、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおいて、第2フレーム間隔(Tv)を有するビデオフレーム(F )に分割された符号化ビデオ信号に対して、第1フレーム間隔(T )を有するオーディオフレーム(F )に分割された符号化オーディオ信号を適応的にタイムシフトする方法であって、
    対応する符号化オーディオ信号およびビデオ信号を最大偏差の範囲内で時間的に整列するために、符号化オーディオ信号の所望の遅延(D)を決定し、
    所望の遅延(D)と第1フレーム間隔(T)との比率に対して隣接する2つの整数の1つとしてフレーム遅延数(n)を計算する過程と、
    適合するビデオフレーム(F(1))を復号する前に、フレーム遅延数(n)と同数のオーディオフレーム(F(1)−F(5))を順次格納する過程と、
    適合するビデオフレーム(F(1))を復号する過程と、
    格納されたオーディオフレーム(F(1)−F(5))を格納順に復号する過程と、
    オーディオ/ビデオメッセージストリームの、残りのオーディオフレーム(F(6)−F(k))およびビデオフレーム(F(2)−F(m))に対して上記過程を繰り返す過程とを特徴とする方法。
  2. フレーム遅延数(n)が所望の遅延(D)と第1フレーム間隔(T)との比率の整数部分に等しいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. フレーム遅延数(n)が所望の遅延(D)と第1フレーム間隔(T)との比率の整数部分に1を加算したものに等しいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記オーディオ/ビデオメッセージストリームが再生の時期を定めるサポートを行うトランスポートプロトコルで受信されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 各オーディオフレーム(F)および各ビデオフレーム(F)は、特定のフレーム(F;F)が作成された時点を示すタイムスタンプを割当てられることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 所望の遅延(D)が、受信されたオーディオ/ビデオメッセージストリームのオーディオフレーム(F)およびビデオフレーム(F)にそれぞれ割当てられたタイムスタンプから決定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. コンピュータ上で実行されると請求項1ないし請求項6のいずれかの過程を実施するソフトウェアを具備し、コンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれかの過程をコンピュータに実施させるプログラムが記録された、コンピュータで読取り可能な媒体。
  9. 対応する復号化オーディオ信号および対応する復号化ビデオ信号が最大偏差(Δmax)の範囲内で時間的に整列するように、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおいて、第2フレーム間隔(Tv)を有するビデオフレーム(F )に分割された符号化ビデオ信号に対して、第1フレーム間隔(T )を有するオーディオフレーム(F )に分割された符号化オーディオ信号を適応的にタイムシフトする装置であって、
    受信オーディオフレーム(F)を順次格納する第1バッファ(309)と、
    受信オーディオフレーム(F)を順次格納する第2バッファ(310)と、
    連続して発生した2つのオーディオフレーム(F)間のタイムスパンを示す第1フレーム間隔の値(T)を格納し、
    復号化オーディオおよびビデオ信号を最大偏差の範囲内で時間的に整列するためにオーディオフレーム(F)に必要な遅延を示す所望の遅延値(D)を、受信オーディオ/ビデオメッセージストリームにおける、受信オーディオフレーム(F)および受信ビデオフレーム(F)のタイミング指標(ts,ts)から獲得および格納し、
    所望の遅延値(D)と第1フレーム間隔値(T)との比率に対して隣接する2つの整数のうちの1つとしてフレーム遅延数(n)を計算し、
    遅延数(n)個のオーディオフレーム(F)を第2バッファ(310)から読出す間に遅延数(n)個のオーディオフレーム(F)を第1バッファ(309)に格納することと、遅延数(n)個のオーディオフレーム(F)を第1バッファ(309)から読出す間に遅延数(n)個のオーディオフレーム(F)を第2バッファ(310)に格納することとを制御する、
    コントローラ(312)とを具備することを特徴とする装置。
  10. 第1バッファスイッチ(B)および第2バッファスイッチ(C)を具備し、
    前記コントローラ(312)がオーディオフレーム(F)を第1バッファ(309)または第2バッファ(310)のいずれかに格納するために第1バッファスイッチ(B)を制御し、 前記コントローラ(312)がオーディオフレームを第1バッファ(309)または第2バッファ(310)のいずれかから読出すために第2バッファスイッチ(C)を制御することを特徴とする請求項9に記載の装置。
  11. 第1遅延スイッチ(A)および第2遅延スイッチ(D)を具備し、
    前記コントローラ(312)が、対応するオーディオフレーム(F)をバッファ(309;310)を介して供給することにより受信オーディオ信号に遅延を加算するか、または、対応するオーディオフレーム(F)に遅延を加えずに転送するために、第1スイッチ(A)を制御し、
    前記コントローラ(312)が、バッファ(309;310)から遅延オーディオフレーム(F)を読み出すか、または、第1遅延スイッチ(A)を介して非遅延オーディオフレーム(F)を読出すために、第2遅延スイッチ(D)を制御することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の装置。
  12. オーディオ/ビデオメッセージストリームを受信して、それをオーディオフレーム(F)およびビデオフレーム(F)に分離し、
    各フレームに割当てられたタイミング指標(ts)に基づいて時系列順にオーディオフレーム(F)およびビデオフレーム(F)を配列し、
    オーディオフレーム(F)、およびオーディオフレーム(F)とビデオフレーム(F)のタイミング指標(ts,ts)をコントローラ(312)に転送する、デマルチプレクサ(307)を具備することを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の装置。
  13. 入力データ形成ユニット(308)および出力データ供給ユニット(311)を具備し、
    該入力データ形成ユニット(308)が、遅延すべきオーディオフレーム(F)をデマルチプレクサ(307)から受信し、このようなフレームを、遅延バッファに順次格納するのに適したデータ構造に従って配列し、
    該出力データ供給ユニット(311)が、その後復号化オーディオ信号に復号するフレームを復号および供給するのに適したデータ構造に従って、遅延オーディオフレーム(F)を再配列することを特徴とする請求項12に記載の装置。
  14. リアルタイムオーディオおよびビデオ情報を、送信局から伝送媒体(306)を介して受信局に伝送するシステムであって、
    該送信局が、オーディオ情報をオーディオフレーム(F)に符号化するオーディオ符号化ユニット(303)と、ビデオ情報をビデオフレーム(F)に符号化するビデオ符号化ユニット(304)と、オーディオフレーム(F)およびビデオフレーム(F)を、伝送媒体(306)を介して送信されるべきオーディオ/ビデオメッセージストリームに結合させるマルチプレクサとを具備し、
    該受信局が、請求項9ないし13のいずれかによる装置と、受信オーディオフレーム(F)からオーディオ信号を抽出するオーディオ復号化ユニット(313)と、受信ビデオフレーム(F)からビデオ信号を抽出するビデオ復号化ユニット(315)とを具備するシステム。
  15. 前記送信局が、
    音響データを登録し、オーディオ信号をオーディオ符号化ユニット(303)に転送するマイクロフォン(301)と、
    画像データを記録し、ビデオ信号をビデオ符号化ユニット(304)に転送するビデオカメラ(302)とを具備し、
    前記受信局が、
    オーディオ復号化ユニット(313)からオーディオ信号を受信し、対応する音響信号を供給するスピーカ(314)と、
    ビデオ復号化ユニット(315)からビデオ信号を受信し、対応する画像信号を表示するビデオモニタ(316)とを具備することを特徴とする請求項14に記載のシステム。
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