JP4780500B2 - 超音波トランスデューサ - Google Patents

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Description

本発明は、圧電体を用いた超音波トランスデューサに関し、特に、同一周波数の縦波と横波の双方の機械的振動に対して使用可能な超音波トランスデューサに関する。
圧電体を用いた超音波トランスデューサ(以下、単に「トランスデューサ」とする)は、電気信号を機械的振動に、あるいは機械的振動を電気信号に変換するために用いられている。従来より、トランスデューサの圧電体には主に、酸化亜鉛(ZnO)から成る層であってc軸がその層に対して垂直方向に配向したものが用いられている。そのような垂直配向圧電体層を用いたトランスデューサでは、その層の上下に設けた電極の間に所定の周波数の交流電圧を印加することにより、圧電体層にその周波数の垂直方向の機械的振動を励起し、それによりトランスデューサに接する外部の媒質に縦波を生じさせることができる(縦波励振)。同様に、トランスデューサに接する外部媒体からその周波数の縦波振動をトランスデューサに与えることにより、圧電体層に機械的振動を与え、電極間にその周波数の交流電圧を発生させることができる。
このようなトランスデューサの使用例の1つに非破壊検査がある。非破壊検査では、トランスデューサを用いて発生させた機械的振動による波を被測定物内に投入し、被測定物内の亀裂等の欠陥で反射された波を検出することにより、欠陥等を検出する。この時、被測定物内に縦波のみを伝播させると、この縦波の振動方向に走る亀裂等を検出することができない。それに対して、被測定物に縦波の振動と横波の振動の双方を与えることができれば、縦波の振動では捉えることのできない亀裂等を横波の振動により捉えることができる。そこで、縦波と横波の双方を励振することができるトランスデューサが検討されている。非特許文献1及び2には、分極方向が層状の圧電体の法線に対して傾斜した圧電体層を用いたトランスデューサが記載されている。これらのトランスデューサでは、圧電体層に交流電圧を印加した時、圧電体層はそれに平行な方向及び垂直な方向のいずれにも振動することができるため、縦波、横波のいずれも励振することが可能である。
C. H. Chou 他、"Design and Implementation of Mixed-Mode Transducers"(「混合モードトランスデューサの設計と実装」)、IEEE Transactions on Ultrasonics and Frequency Control、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(電気電子学会)発行、(米国)、1989年3月、第36巻、第3号、第337-341頁 C. K. Jen 他、"Ultrasonic transducers for simultaneous generation of longitudinal and shear waves"(「縦波横波同時励振用超音波トランスデューサ」)、Journal of the Acoustical Society of America、Acoustical Society of America(アメリカ音響学会)発行、(米国)、1988年7月、第84巻、第1号、第26-29頁
非特許文献1及び2に記載のトランスデューサでは、上下の電極における電圧の極性が互いに逆になることから、縦波・横波共に、圧電体層の上下で逆位相になる奇数次モードの共振は出現するのに対して、圧電体層の上下で同位相になる偶数次モードの共振は出現しない。奇数次モードの周波数fLn(縦波)及びfSn(横波)は、圧電体層内での音速VL(縦波)及びVS(横波)並びに圧電体の厚さdを用いて、
fLn=VL/λ=(2n-1)VL/(2d)
fSn=VS/λ=(2n-1)VS/(2d)
((2n-1)次モード、n=1, 2, 3...、λ:圧電体層内での波長)と表される。
ここで、多くの圧電体では縦波の音速VLは横波の音速VSの約2倍であるため、上式にVL≒2VSを代入すると、
fLn≒2(2n-1)VS/(2d)
fSn≒(2n-1)VS/(2d)
となる。即ち、横波共振周波数fSnはVS/(2d)のほぼ奇数倍になるのに対して、縦波共振周波数fLnはVS/(2d)のほぼ偶数倍になる。
従って、非特許文献1及び2に記載のトランスデューサは、縦波と横波を同一周波数で励振させることができず、それゆえ、縦波と横波を同時に励振することもできない。
このように縦波と横波を同時に励振することができない非特許文献1及び2に記載のトランスデューサにを用いて、縦波と横波の両方を利用した非破壊検査を行うためには、縦波周波数fLnと同じ周波数の交流電圧を圧電体層の間に印加して縦波を発生させることにより行う測定と、横波周波数fSnと同じ周波数の交流電圧を圧電体層の間に印加して横波を発生させることにより行う測定と、を行うという2回の操作が必要になる。
本発明が解決しようとする課題は、同じ周波数の縦波と横波を同時に励振することができるトランスデューサを提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、
第1の圧電体層と第2の圧電体層を上下電極の間に設けて成る超音波トランスデューサにおいて、
前記第1圧電体層の分極ベクトル(第1分極ベクトル)がトランスデューサに平行な面(トランスデューサ面)の法線に対して傾斜するように配向しており、
前記第2圧電体層の分極ベクトル(第2分極ベクトル)が前記法線に対して傾斜するように配向しており、
前記第1分極ベクトルのトランスデューサ面への射影が前記第2分極ベクトルのトランスデューサ面への射影と逆方向であり、
前記第1分極ベクトルの前記法線への射影が、前記第2分極ベクトルの前記法線への射影と同方向である、
ことを特徴とする。
本発明に係るトランスデューサによれば、同一周波数の縦波と横波を同時に励振することができる。そのためこのトランスデューサは、例えば被測定物内部で様々な方向に走る亀裂等を縦波の振動と横波の振動を同時に利用して検出する非破壊検査の振動源として好適に用いることができる
本発明に係るトランスデューサの一実施形態を、図1を用いて説明する。このトランスデューサ10は、圧電体層11を上部電極121と下部電極122で挟んだ構成を有する。圧電体層11は、厚さがd1である第1圧電体層111と、厚さがd2である第2圧電体層112を重ねたものである。第1圧電体層111では分極のベクトル(第1分極ベクトル)P1がトランスデューサ面αの法線131に対して角度θ1だけ傾斜し、第2圧電体層112では分極のベクトル(第2分極ベクトル)P2が該法線131に対して角度θ2だけ傾斜している。そして、トランスデューサ面αへの第1分極ベクトルP1の射影P1Sは、同面αへの第2分極ベクトルP2の射影P2Sと逆方向である。また、前記法線131への第1分極ベクトルP1の射影P1Lは、同法線131への第2分極ベクトルP2の射影P2Lと同方向である。
このトランスデューサの動作を、図2を用いて説明する。上部電極121と下部電極122の間に交流電圧が印加されると、第1圧電体層111及び第2圧電体層112には、縦波の生成に寄与する法線方向の圧縮振動(縦波振動)と、横波の生成に寄与するトランスデューサ面に平行な方向のすべり振動(横波振動)の両方の振動が生じる。
縦波振動については、図2(a)に示すように、射影P1Lと射影P2Lが同方向であるため、第1圧電体層111と第2圧電体層112は同位相で振動し、それにより、第1圧電体層111の上面と第2圧電体層112の下面は180°異なる位相を持つ。従って、縦波は奇数次の振動モードを持つ。奇数次の振動モードのうち強度が最大になるのは1次モードである。
一方、横波振動については、図2(b)に示すように、射影P1Sと射影P2Sが逆方向であるため、第1圧電体層111と第2圧電体層112は逆位相で振動し、それにより、第1圧電体層111の上面と第2圧電体層112の下面は同じ位相を持つ。従って、横波は偶数次の振動モードを持つ。偶数次の振動モードのうち強度が最大になるのは2次モードである。
1次モードの縦波振動の共振周波数fL1と2次モードの横波振動の共振周波数fS2は、
fL1=VL/λ=VL/(2d)
fS2=2VS/λ=VS/d
と表される。ここで、dは第1圧電体層111と第2圧電体層112を合わせた圧電体層11全体の厚さ、即ちd1+d2である。前述のように、圧電体層内での縦波の音速VLは圧電体層内での横波の音速VSのおよそ2倍であるため、上式にVL≒2VSを代入すると、
fL1≒2VS/(d1+d2)
fS2≒2VS/(d1+d2)
、即ち、
fL1≒fS2
となる。このように、本発明に係るトランスデューサにより、縦波の共振周波数と横波の共振周波数をほぼ一致させることができる。
実際には、角度θ1やθ2の値によるVLとVSの値の変化、圧電体層の配向の乱れ、あるいは圧電体層の材料の特性等により、VLがVSの2倍からずれる場合があり、その場合にはfL1とfS2は完全には一致しない。また、トランスデューサを支えるために基板を用いることも、fL1とfS2がずれる原因となる。しかし、そのような場合であっても、fL1とfS2のずれはわずかであり、縦波及び横波の周波数はそれぞれfL1及びfS2を中心とする分布を持つため、それら2つの分布が重なる周波数において縦波と横波を同時に励振させることができる。
縦波の共振周波数と横波の共振周波数は共に、圧電体層内に生じる定在波の波長に依存し、その波長は厚さd1とd2の和(d1+d2)及び圧電体内での音速により定まる。すなわち、縦波と横波の周波数は個々の圧電体層の厚さd1及びd2、あるいは角度θ1及びθ2にはほとんど依存しない。そのため、同一周波数の縦波と横波を同時に励振するという目的を達する限りにおいては、d1とd2、及びθ1の絶対値とθ2の絶対値は異なる値でもよい。しかし、d1とd2、あるいはθ1の絶対値とθ2の絶対値が異なると、縦波では本来の奇数次モードの振動に加えて偶数次モードの振動も生じ、同様に横波では本来の偶数次モードの振動に加えて奇数次モードの振動も生じてしまう。そのため、d1とd2、あるいはθ1の絶対値とθ2の絶対値は同じ値であることが望ましい。
前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層の材料には任意の圧電体を用いることができる。例えば、従来のトランスデューサにおいても使用されているZnO(酸化亜鉛)やAlN(窒化アルミニウム)等のウルツ鉱構造を有する圧電体を好適に用いることができる。ウルツ鉱構造を有する圧電体は、図3に示すように、六方晶の単位格子を持ち、An+から成る層(A層)とBn-から成る層(B層)が交互に積層し、B層はその上下にある2枚のA層から等距離の位置よりもc軸の1方向にずれた位置に配置される。この結晶構造により、ウルツ鉱構造を有する圧電体は外部電界が印加されなくともc軸に平行な方向に自発分極(極性)を持つ、という特徴を有する。
図4に、ZnOについて、縦波の振動に寄与する電気機械結合定数k'33と、横波の振動に寄与する電気機械結合定数k'15のc軸と外部電界の成す角度θ(θ1及びθ2に該当)による変化を計算で求めた結果を示す。
電気機械結合定数k'15はθ=28°において最大となり、9 °〜54°において0.2以上の値となる。一般に放射媒質(トランスデューサから放射された振動を伝搬させる媒質であり、例えば、非破壊検査では被測定物に該当する。)中では縦波よりも横波の方が減衰しやすいことから、横波への変換損失を抑えて横波の強度を高めるためには、θ1やθ2の絶対値は、電気機械結合定数k'15が上記の値以上となる9°〜54°とすることが望ましい。
一方、k'15とk'33はθ=12°において同じ値となる。縦波と横波を同程度の変換効率で励振させる場合には、θ1やθ2の絶対値は12°程度とするとよい。
図5に、第1圧電体層及び第2圧電体層にZnOを用いた本発明のトランスデューサについて、θ1及びθ2の絶対値を(a)28°、(b)12°、(c)23°とした場合における縦波及び横波の変換損失を計算した結果を示す。ここで、(c)のθ12=23°という角度は、理論上、縦波の速度VLが横波の速度VSのちょうど2倍になる時の角度である。(a)では、(b)及び(c)の場合よりも、横波の変換損失が小さくなっており、横波の強度を高めることができる。(b)では、(a)及び(c)の場合よりも、縦波の変換損失と横波の変換損失が近い値となり、縦波と横波を同程度の変換効率で励振させることができる。(c)では、横波の変換損失については(a)のものに比較的近い値が得られ、縦波の変換損失については(a)のものよりも約2dB小さくすることができる。
ZnO以外の圧電体材料を第1圧電体層及び前記第2圧電体層に用いる場合にも、分極と外部電界の成す角度θによる電気機械結合定数k'15の変化を計算又は実験により求め、その値が大きくなるように角度θを決定すればよい。但し、電気機械結合定数k'15が大きい値を持つ角度θにおいて電気機械結合定数k'33が0に近づくと、縦波の強度が小さくなってしまうため、トランスデューサの使用目的等により適宜、縦波の強度と横波の強度を角度θにより調整するとよい。
本発明に係るトランスデューサの一実施例を、図6〜図11を用いて説明する。本実施例では、ZnOから成る第1圧電体層及び第2圧電体層を有するトランスデューサ20を作製した。作製したトランスデューサ20は、図6に示すように、石英製基板24の上に、アルミニウムから成る下部電極222、ZnOから成る第2圧電体層212、ZnOから成る第1圧電体層211及び銅から成る上部電極221がこの順で積層された構造を有する。第1圧電体層211及び第2圧電体層212の厚さ及び分極ベクトルの方向については後述する。上部電極221及び下部電極222の厚さはそれぞれ0.15μm及び0.11μmであり、上部電極221の面積は、トランスデューサ20の入力インピーダンスが50Ωになるように、本実施例ではおよそ1.6mm2とした。
本実施例のトランスデューサ20の製造に用いたRFマグネトロンスパッタリング装置30について、図7を用いて説明する。このRFマグネトロンスパッタリング装置30は、同一の径を持ち同軸に配置された円盤状の陽極31及び陰極32を有する。また、陰極32の下側にマグネトロン回路33を有する。陽極31の下側には、板状の部材の一表面に基板Sを固定可能な基板台34が設けられている。基板台34は、基板Sの表面が陽極31及び陰極32の中心を通る軸上に位置するように配置が調整され、陽極31に固定される。これら各部は、真空容器(図示せず)内に配置される。
トランスデューサ20の製造方法を説明する。まず、通常の抵抗加熱型蒸着装置を用いて、石英製基板24の表面にアルミニウムを蒸着することにより、下部電極222を作製した。次に、RFマグネトロンスパッタリング装置30の陰極32の上面にZnOから成るターゲット39を載置すると共に、下部電極222が蒸着された面を表面として石英製基板24を基板台34に取り付けた。ここで、石英製基板24の下端はターゲット39の表面から15mmの位置に配置し、上端はターゲット39の表面から45mmの位置に配置した。次に、真空室内を排気したうえで、真空室内の圧力が1.0Paになるようにアルゴンと酸素の混合ガス(混合比3:1)を真空室内に導入した。そして、石英製基板24の温度を300℃に維持しながら、マグネトロン回路33に200Wの高周波電力を投入することによりZnOターゲット39をスパッタした。これにより、スパッタされたZnOの粒子が下部電極222の表面に堆積し、第2圧電体層212が形成された。
次に、第2圧電体層212の表面に、以下の方法により第1圧電体層211を作製した。上述のように得られた第2圧電体層212は、ターゲット39から離れるに従って厚さが薄くなると共に、トランスデューサ面の法線とc軸の成す角度が大きくなる。そこで、その法線とc軸の成す角度が所定の大きさ(本実施例では26°とした。)になる位置を予備実験により特定し、その位置を通り圧電体層に垂直な軸を中心として石英製基板24を180°回転させた。本実施例では、その位置はターゲット39から25mm、基板の下端から10mm離れたところであった。そのうえで、第2圧電体層212を作製した時と同じ条件で第2圧電体層212の表面に第1圧電体層211を作製した。
その後、上記所定位置を中心とする面積1.6mm2の領域内に、通常の蒸着法により銅を蒸着させることにより、上部電極221を作製した。
図8に、得られたトランスデューサ20について、縦断面の電子顕微鏡写真を示す。なお、この縦断面は、後述の測定に支障を生じさせないために、上記所定位置からわずかにずれた、上部電極221がない位置においてトランスデューサ20を切断することにより得た。また、下部電極222は、第1圧電体層211及び第2圧電体層212と比較すると非常に薄い(約1/50)ため、この電子顕微鏡写真では識別することができない。
図9に、第1圧電体層211及び第2圧電体層212につき、X線回折測定により得られた、上記所定位置における(0002)面極点図を示す。極点図では、仰角ψ=32°、方位角φ=90°付近を中心とする第1圧電体層211での回折による強度分布411と、仰角ψ=26°、方位角φ=270°付近を中心とする第2圧電体層212での回折による強度分布412が見られる。
これらの測定結果から、上記所定位置付近では、第1圧電体層211のc軸は32°(=θ1)、第2圧電体層212のc軸は26°(=θ2)、それぞれ圧電体層(すなわち、トランスデューサ面)の法線に対して傾斜していることが明らかになった。そして、c軸の傾斜方向、即ち自発分極のベクトルの方向は、第1圧電体層211では右下から左上に向かい、第2圧電体層212では左下から右上に向かう方向であった。即ち、トランスデューサ面への第1分極ベクトルP1の射影P1Sは同面への第2分極ベクトルP2の射影P2Sと逆方向であり、同面の法線への第1分極ベクトルP1の射影P1Lは、該法線への第2分極ベクトルP2の射影P2Lと同方向である。また、第1圧電体層211及び第2圧電体層212の厚さd1及びd2はそれぞれ5.81μm及び5.63μmである。
図10に、得られたトランスデューサ20における縦波及び横波の変換損失の測定結果、及びこれら変換効率を計算で求めた結果を示す。ここで、変換損失の計算にはトランスデューサ20におけるθ1, θ2, d1, d2の測定値を用いた。計算結果は実験結果をよく再現している。実験結果より、縦波では278MHz、横波では266MHz、という互いに近い周波数でそれぞれ変換損失が最小、即ち強度が最大になることが示された。これら周波数は、縦波では1次モードにおける周波数に、横波では2次モードにおける周波数に、それぞれ対応する。また、最小変換損失は縦波で15dB、横波で9dBであって十分に小さく、波の強度は十分に大きい。そして、変換損失の測定結果は、おおむね260〜285MHzの周波数領域内ではほとんど変化しないため、得られたトランスデューサ20はこの周波数領域において縦波と横波の双方を十分な強度で同時に励振することができる。
本実施例のトランスデューサ20では、上述のようにθ1の絶対値とθ2の絶対値、及びd1とd2が異なるが、同一周波数の縦波と横波を同時に励振するという目的は達成されている。但し、θ1とθ2、及びd1とd2が異なることにより、図10に示すように、縦波では1次モードL1の他に、本来は共振しない偶数次の2次モードL2の振動が出現し、同様に横波では2次モードS2の他に、本来は共振しない奇数次の1次モードS1及び3次モードS3の振動が出現している。本来は共振しないこれらの振動モードを解消させるためには、θ1の絶対値とθ2の絶対値、あるいはd1とd2を同じ値にすればよい。
図11に、本発明に係るトランスデューサを製造するための装置の他の例を概略構成図で示す。陽極31Aと陰極32Aの間に、基板Sをそれに平行な1方向に移動させる搬送装置51を設ける。搬送装置51には、ベルト上に基板Sを固定可能なコンベアや、基板Sを固定する基板台をレールで保持しながら移動させる装置等を用いることができる。また、搬送装置51と陰極32Aの間であって、陰極32Aから十分に離れた位置にスリット52を設ける。更に、陰極32Aの下側にマグネトロン回路33を設ける。この装置を使用する際には、陰極32Aの上面に、圧電体材料から成るターゲット39Aを載置する。
この装置50を用いて本発明に係るトランスデューサを製造する方法を説明する。予め表面に下部電極を形成した基板24(S)を搬送装置51に固定し、搬送装置51により基板241の表面に平行な1方向に移動させながらマグネトロン回路33に高周波電力を投入してターゲット39Aをスパッタする。これにより圧電体の粒子を生成し、スリット52を通して圧電体粒子を基板24の表面に入射させる。この時、陰極32Aとスリット52が十分に離れているため、基板24の表面に入射する圧電体の粒子は1方向を指向し、また、その方向は陰極32Aとスリット52の位置により調節することができる。こうして、所定の結晶軸(例えばZnOのc軸)が基板24の面から所定の方向に傾斜した第2圧電体層が得られる。次に、基板24を垂直な軸の周りに180°回転させて搬送装置51に固定し、基板24を上記1方向に移動させながら、同様の方法により第2圧電体層上に圧電体粒子を入射させることにより、第1圧電体層を形成することができる。
本発明に係るトランスデューサの一実施形態を示す縦断面図。 本発明に係るトランスデューサの動作を説明するための縦断面図。 ウルツ鉱構造を示す概略図。 ZnOの電気機械結合定数k'33及びk'15の計算結果を示すグラフ。 第1圧電体層及び第2圧電体層にZnOを用いた本発明のトランスデューサについて、θ1及びθ2の絶対値を(a)28°、(b)12°、(c)23°とした場合における縦波及び横波の変換損失の計算結果を示すグラフ。 本発明に係るトランスデューサの一実施例を示す縦断面図。 本発明に係るトランスデューサの一実施例の製造に用いたRFマグネトロンスパッタリング装置20を示す縦断面図。 本実施例のトランスデューサの縦断面を撮影した電子顕微鏡写真。 本実施例のトランスデューサにおける第1圧電体層211及び第2圧電体層212のX線回折測定の結果を示す極点図。 本実施例のトランスデューサにおける縦波及び横波の変換損失の測定結果及び計算結果を示すグラフ。 本発明に係るトランスデューサの製造装置の他の例を示す概略構成図。
符号の説明
10、20…トランスデューサ
11…圧電体層
111、211…第1圧電体層
112、222…第2圧電体層
121、221…上部電極
122、222…下部電極
131…第1圧電体層111の法線
132…第2圧電体層112の法線
24…石英製基板
30…RFマグネトロンスパッタリング装置
31、31A…陽極
32、32A…陰極
33、33A…マグネトロン回路
34…基板台
39…ZnOターゲット
411…第1圧電体層211での回折による強度分布
412…第2圧電体層212での回折による強度分布
50…トランスデューサ製造装置
51…基板搬送装置
52…スリット

Claims (6)

  1. 第1の圧電体層と第2の圧電体層を上下電極の間に設けて成る超音波トランスデューサにおいて、
    前記第1圧電体層の分極ベクトルである第1分極ベクトルが超音波トランスデューサに平行な面の法線に対して傾斜するように配向しており、
    前記第2圧電体層の分極ベクトルである第2分極ベクトルが前記法線に対して傾斜するように配向しており、
    前記第1分極ベクトルの前記面への射影が、前記第2圧電体層の分極ベクトルの前記面への射影と逆方向であり、
    前記第1分極ベクトルの前記法線への射影が、前記第2圧電体層の分極ベクトルの前記法線への射影と同方向である、
    ことを特徴とする超音波トランスデューサ。
  2. 前記法線と前記第1分極ベクトルの成す角度の絶対値と、前記法線と前記第2分極ベクトルの成す角度の絶対値が略同一であることを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
  3. 前記第1圧電体層の厚さと前記第2圧電体層の厚さが略同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ。
  4. 前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層の材料がウルツ鉱構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
  5. 前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層の材料が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
  6. 前記法線と前記第1分極ベクトルの成す角度の絶対値と、前記法線と前記第2分極ベクトルの成す角度の絶対値が5°〜45°であることを特徴とする請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
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