さらに、網地を平面視した際の投影面における網目の内周の長さを4mm以下に設定することで、散弾が網目の中央部分に衝突した場合であっても、その散弾が衝突した網目を形成する網糸と発射された散弾との当接面積を広く確保することができる。従って、散弾が網目を通過することを抑制して、発射された散弾が広範囲に亘って飛散することを回避できるので、散弾を効率よく回収できるという効果がある。
また、支柱に展張されるネット層が複数枚のネットを重ねて構成されるので、散弾の衝撃力に対する強度を確保できる。よって、敷地面積の都合により射台からネット層の距離を十分に確保できない射撃場であっても設置できるという効果がある。また、複数枚のネットのうち少なくとも1枚が請求項1から5のいずれかに記載の散弾飛散防止ネットから構成されているので、散弾がネット層を突き抜けることを確実に抑制できるという効果がある。
さらに、ネット層は、1枚の散弾飛散防止ネットと比べて、散弾の衝撃力に対する強度を確保できる分、より射台に近い位置に配置できるので、ネット層の設置範囲を狭めることができる。即ち、射台から発射される散弾の飛散範囲は、射台からの距離が近いほど狭くなるので、ネット層の設置位置を射台に近づけることにより、ネット層の設置範囲を狭めることができる。よって、複数枚のネットを重ねて設置した場合であっても、ネットよりも材料コスト及び設置コストが高い支柱の本数を減らすことができるので、散弾飛散防止ネットの設置構造の全体としての材料コスト及び設置コストを抑制できるという効果がある。
また、複数枚のネットのうち散弾が発射される側に最も近い位置に配置される散弾衝撃低減ネットは、網地を平面視した際の投影面における網目の内周の長さが散弾飛散防止ネットよりも大きく設定されるので、散弾がネット層に衝突した際に、散弾衝撃低減ネットの網糸と散弾との当接面積を小さくすることができる。これにより、散弾衝撃低減ネットの網目から散弾を突き抜けやすくさせることができると共に、散弾が散弾衝撃低減ネットの網目を突き抜ける際に網糸にかかる負担を軽減させることができるので、散弾衝撃低減ネットの網糸の破損を抑制できる。
ここで、散弾飛散防止ネットは、網糸と散弾との当接面積が大きく確保されているので、複数枚のネットのすべてを散弾飛散防止ネットで構成する場合、散弾が発射される側に最も近い位置に配置される散弾飛散防止ネットに対して散弾の衝撃力が最も大きく作用する。このため、散弾が発射される側に最も近い位置に配置される散弾飛散防止ネットは、他の散弾飛散防止ネットと比べて早期に損傷する。
これに対し、散弾が飛散される側に最も近い位置に散弾衝撃低減ネットを配置することにより、散弾衝撃低減ネットの網糸と散弾との当接面積が小さくなり、散弾衝撃低減ネットの網目から散弾が突き抜けやすくなるので、散弾衝撃低減ネットの網糸にかかる負担を抑制できる。また、複数枚のネットのうち少なくとも1枚が散弾飛散防止ネットから構成されるので、散弾衝撃低減ネットを突き抜けることで衝撃力が低減した散弾を散弾飛散防止ネットによって受け止めることができる。従って、散弾がネット層を突き抜けることを抑制しつつ、散弾が発射される側に最も近い位置のネットの長寿命化を図ることができるという効果がある。
さらに、複数枚のネットのすべてが散弾飛散防止ネットで構成される場合と比べて、散弾衝撃低減ネットの内周の長さが大きく設定されているので、ネット層に対して風を通過させやすくすることができるという効果がある。
即ち、発射された散弾は、進むにつれて重力および空気抵抗により速度が低下するので、散弾飛散防止ネットを射台から離れた位置に設置することで、散弾飛散防止ネットに散弾が衝突した際の衝撃力が小さくなる。しかし、射撃場の敷地面積を考慮すると、射台から所定距離離れた範囲内(例えば、射台から80m離れた位置)に散弾飛散防止ネットを設置することが望ましい。
従って、網地の平面視方向から押圧される直径2mmの鉛玉を貫通する際に発生する押圧方向における最大抗力を9kgf以上に設定することで、射台から所定距離離れた位置に設置した散弾飛散防止ネットにより、散弾を十分に受け止めることができるので、射撃場内における散弾の回収作業を効率よく行うことができるという効果がある。
さらに、射台から発射される散弾は、射台から離れるにつれて飛散範囲が広がるので、その分、散弾飛散防止ネットの設置範囲を幅広く設置する必要がある。即ち、散弾飛散防止ネットを射台からより接近した位置に設置することで、散弾飛散防止ネットの設置範囲をより狭まることができる。よって、網地の平面視方向から押圧される投影面における幅寸法2mmの鉛玉を貫通する際に発生する押圧方向における最大抗力を大きく設定するほど、散弾飛散防止ネットを射台からより接近した位置に設置することができるので、散弾飛散防止ネットの設置コストを抑制できるという効果がある。
なお、ネットの強度は網糸の投影面における幅寸法、網糸を構成する繊維の材質またはネットの編網方法などの条件により異なる。しかしながら、それらの条件が変わるごとに、実際の速度で散弾飛散防止ネットに散弾を衝突させることで、散弾飛散防止ネットの強度を検証することは困難である。これに対し、網地の平面視方向から押圧される投影面における幅寸法2mmの鉛玉が網目を貫通する際に発生する押圧方向における最大抗力を調べることで、発射された散弾を受け止めるための強度を有するか否かの検証を行うことができる。よって、散弾の衝撃力に対する強度を確保した散弾飛散防止ネットを容易かつ確実に製造することができる。
また、「静的」とは、鉛玉を押圧する際の速度が、実際に散弾がネットに衝突する際の速度よりも十分に遅い速度であり、具体的には、手動で達成できる程度の速度であることを指す。
また、網地の伸び率が70%以下に設定されるので、衝突した散弾の衝撃力による網糸の伸長を抑制できる。よって、網糸の伸長による網目の拡張を抑制して、拡張した網目から散弾が通過することを抑制できる。従って、散弾が網目を突き抜けることをより抑制しつつ、散弾飛散防止ネットに衝突した散弾の跳ね返り距離を小さくすることができるという効果がある。
また、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階において、散弾に対して網糸が接触する当接面積をより大きく確保することができる。即ち、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階では、網糸に対する散弾の衝撃力が最も大きくなる。そのため、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階において、散弾と網糸との当接面積をより大きく確保することで、衝突した際の散弾の衝撃力を分散させることができるので、散弾との当接部分における網糸への負担を軽減できる。従って、散弾が衝突した際における網糸の負担を軽減することで、網糸が過度に伸長すること及び網糸が破断することを回避できるので、散弾が網目を突き抜けることをより確実に抑制できるという効果がある。
さらに、この場合、平面視において、一のネットの網目の位置と、他のネットの網目の位置とが自ずとずらされた状態となる。その結果、平面視におけるネット層の網目の投影面積が実質的に小さくなるので、散弾とネットの網糸との当接面積を増やすことができ、散弾がネット層を突き抜けることを抑制できる。
よって、散弾がネット層を通過することを確実に抑制できると共に、ネット層が受ける風圧の影響を抑制してネットを展張する支柱の負担を軽減でき、その結果、ネットの設置構造の設置コストを抑制できるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、射撃場100における散弾飛散防止ネット1の使用形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における散弾飛散防止ネット1が設置された射撃場100を模式的に表した模式図である。
図1に示すように、射撃場100は、競技用のクレー射撃を行うための場所である。射撃場100には、トラップ射撃を行う際に競技者が配置される射台であるトラップ射台(図示せず)と、スキート射撃を行う際に競技者が配置される射台であるスキート射台21と、トラップ射撃およびスキート射撃の双方の射台として利用可能な併用射台22とが設置されている。
なお、トラップ射撃とは、直線状に配置された射台から所定距離離れた位置に設置されるトラップ射出機31から発射される標的(クレー)を散弾銃で射撃する競技であり、標的は、トラップ射出機31から射台に対して離間する方向へ向けて発射される。即ち、トラップ射撃では、標的が図1における下側から上側に向けて移動する。また、スキート射撃とは、半円形状に配置された射台の一端側に設置されると共に標的を発射する第1スキート射出機(ハイハウス、プール)32a及び射台の他端側に設置されると共に標的を第1スキート射出機32aよりも低い位置から発射する第2スキート射出機32b(ローハウス、マーク)から発射される標的を散弾銃で射撃する競技であり、標的は、第1スキート射出機32aまたは第2スキート射出機32bから発射されると共に、第1スキート射出機32a及び第2スキート射出機32から略等間隔離れた位置、かつ、射台から所定位置離れた位置に設置されるセンターポール33上を経由して移動する。即ち、スキート射撃では、標的が図1における左右方向へ移動する。
また、射撃場100には、スキート射台21から約50m離れた位置に設置される第1散弾飛散防止部41と、併用射台22から約80m離れた位置に設置される第2散弾飛散防止部42と、スキート射台2から約100m離れた位置に設置される第3散弾飛散防止部43とが設置されている。
第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43は、射台から発射された散弾を受け止めることで、散弾が広範囲に飛散することを防止し、散弾の回収効率を向上させるための設備であり、第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43には、散弾飛散防止ネット1が張設されている。
なお、第1散弾飛散防止部41は、高さ20m、幅50mの散弾飛散防止ネット1が1枚、第2散弾飛散防止部42は、高さ20m、幅100mの散弾飛散防止ネット1が2枚、第3散弾飛散防止部43は、高さ10m、幅85mの散弾飛散防止ネット1が1枚、それぞれ張設されている。
次に、図2(a)を参照して、散弾飛散防止ネット1の展張形態について説明する。図2(a)は、第2散弾飛散防止部42を模式的に表した模式図である。なお、図2(a)では、理解を容易とするため、支柱51を除き、地中部分を断面視して図示している。また、第1散弾飛散防止部41及び第3散弾飛散防止部43は、展張される散弾飛散防止ネット1の枚数を除き、展張形態が第2散弾飛散防止部42と同一であるため、ここでは、第2散弾飛散防止部42についてのみ説明する。
図2(a)に示すように、散弾飛散防止ネット1は、発射された散弾を受け止めるための網であり、網地2と、その網地2の周縁を構成する周縁部3とを主に備えている。周縁部3は、散弾飛散防止ネット1の周縁部分を補強すると共に、散弾飛散防止ネット1をコンクリートで構成される支柱51に固定するための部位である。散弾飛散防止ネット1は、複数の支柱51間に架設されるワイヤ52に吊設されると共に、支柱51に配設された固定部材(図示せず)に固定されることで、複数の支柱51に展張されている。
なお、支柱51は、ウインチ(図示せず)を備えており、ウインチを操作することで、支柱51を伸縮させることができる。支柱51を伸縮させることで、ワイヤ52に吊設された散弾飛散防止ネット1を昇降させることができる。降雪時または強風時には、散弾飛散防止ネット1を降下させておくことで、支柱51にかかる負担を軽減することができる。
次に、図2(b)を参照して、網地2の構成について説明する。図2(b)は、網地2の拡大正面図である。なお、図2(b)では、図面を簡素化して理解を容易とするため、網地2を平面的に投影し、各網糸4の投影領域にハッチングを付した図が図示されている。よって、ハッチングが付されていない部分が網目(網地2の開口部分)の投影領域となる。
網地2は、ポリエステル繊維から構成される網糸4をラッセル網により編網したものであり、複数の開口である網目5を有している。網目5は、網地2を平面視した際の投影面(展張された状態で網地2を正面視した際の投影面、以下「投影面」と称す)において、略矩形状に形成されており、網目5の内周における一方向(図2(b)上下方向)の長さが略0.5mm、他方向(図2(b)左右方向)の長さが略1mmに設定されている。即ち、投影面における網目5の内周の長さが略3mmに設定されている。また、たて糸を構成する網糸4(図2(b)上下方向を長手方向とする網糸4)の投影面における幅寸法が略0.8mm、よこ糸を構成する網糸4(図2(b)左右方向を長手方向とする網糸4)の投影面における幅寸法が0.6mmに設定されている。なお、投影面における幅寸法とは、幅寸法の平均値を指すものとし、投影面と直交する方向における網糸4の幅寸法(網地2の厚み方向の寸法)は、投影面における網糸4の幅寸法と同等である。また、たて糸を構成する網糸4の投影面における幅寸法とよこ糸を構成する網糸4の投影面における幅寸法とが同じ寸法に設定されていてもよい。
さらに、網糸4がポリエステル繊維から構成されており、耐候性に優れているので、散弾飛散防止ネット1の耐用年数を長期化させることができる。また、ポリエステル繊維は吸水性が小さいので、雨天時において、吸水により網糸が重くなることを回避して、支柱51にかかる負担が過大になることを防止できる。なお、本実施の形態では、網糸4がポリエステル繊維から構成されているが、これに限られるものではなく、ポリエチレン繊維またはナイロン繊維等の合成繊維から構成されていてもよい。網糸4をポリエチレン繊維から構成することで、材料コストを抑制できると共に、ポリエステル繊維よりも比重が小さい分、散弾飛散防止ネット1の重量を小さくすることができる。また、網糸4をナイロン繊維から構成することで、ポリエステル繊維よりも強度が確保された散弾飛散防止ネット1を製造することができる。
ここで、本実施の形態では、投影面における網目5の内周の長さが略3mmに、網地2の伸び率(伸度)が50%、投影面における網地2全体の面積に対する網糸4の占有面積(投影面における散弾飛散防止ネット1の投影面積から網目5の面積Sの総和を差し引いた投影面積)の割合(以下「充実率」と称す)が71%に設定されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、投影面における網目5の内周の長さが4mm以下に、網糸4の投影面における幅寸法は一方が0.7mm以上、かつ、他方が0.4mm以上に、充実率が65%以上80%以下の範囲内に、網地2の伸び率が40%以上70%以下の範囲内に設定さればよい。
即ち、クレー射撃では、直径が2.0mm〜2.4mmの鉛製の散弾が主に用いられるので、投影面における網目5の内周の長さを散弾の内周よりも小さくすることで、発射された散弾に網糸4を当接させることができる。
また、投影面における網目5の内周の長さを4mm以下に設定することで、散弾が網目5の中央部分に衝突した場合であっても、その散弾が衝突した網目5を形成する網糸4と発射された散弾との当接面積を広く確保することができる。これにより、発射された散弾を受け止めやすくすることができるので、散弾が網目5を通過することを抑制できる。従って、発射された散弾が広範囲に亘って飛散することを回避できるので、散弾を効率よく回収できる。なお、網目5の内周を形成する一つの辺の長さを0.4mm以上、網目5の内周の長さを2mm以上、網糸4の投影面における幅寸法を1mm以下に設定することで、網地2の編網作業を容易に行うことができるので、散弾飛散防止ネット1の製造コストを抑制することができる。
また、網糸4の投影面における幅寸法を0.4mm以上に設定することで、網糸4の強度を確保できるので、衝突した散弾の衝撃力による網糸4の破断を防止できる。また、網糸4の投影面における幅寸法を大きく設定するほど、網糸4の強度を大きく確保できるので、網糸4を構成する合成繊維(フィラメント)が経年劣化しても、発射される散弾を受け止めるための十分な強度をより長く保持できる。よって、散弾飛散防止ネットの耐用期間を長期化させることができるので、散弾飛散防止ネット1の設置に伴う維持コストを抑制できる。
なお、網糸4の投影面における幅寸法および網目5の内周の長さを上記範囲内で設定しつつ、充実率を65%以上80%以下、好ましくは70%以上78%未満に設定することが望ましい。即ち、充実率を65%以上、好ましくは70%以上に設定することで、発射された散弾に対する網糸4の当接面積を大きく確保できるので、散弾を受け止めやすくすることができる。よって、散弾が網目を突き抜けることを抑制できる。
一方、充実率を高く設定するほど、散弾飛散防止ネット1が受ける風圧が大きくなるため、散弾飛散防止ネット1を支持する支柱51に対する負担が大きくなる。この場合、支柱51の強度を高めることや、支柱51間の距離を小さくするために支柱51の本数を増加させて、支柱51の1本あたりの負担を軽減することが必要となるので、散弾飛散防止ネット1の設置コストが大きくなる。従って、充実率を80%以下、好ましくは78%以下に設定することで、散弾飛散防止ネット1にかかる風圧を抑制できるので、散弾飛散防止ネット1の設置コストを抑制できる。
さらに、網地2の伸び率を40%以上に設定することで、散弾飛散防止ネット1に衝突した散弾の衝撃力を吸収することができる。よって、散弾飛散防止ネット1に衝突した散弾が跳ね返ることを抑制することができるので、散弾飛散防止ネット1に衝突した散弾を、散弾飛散防止ネット1から所定の範囲内に落下させることができる。従って、散弾飛散防止ネット1に受け止められた散弾の飛散範囲を小さくすることができるので、散弾の回収効率を向上させることができる。一方、網地2の伸び率が70%以下に設定されるので、衝突した散弾の衝撃力による網糸4の伸長を抑制できる。よって、網糸4の伸長による網目5の拡張を抑制して、拡張した網目5から散弾が通過することを抑制できる。従って、網地2の伸び率を40%以上70%以下の範囲内で設定することで、散弾が網目5を突き抜けることをより抑制しつつ、散弾飛散防止ネット1に衝突した散弾の跳ね返り距離を小さくすることができる。
次に、図3を参照して、散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験の結果について説明する。図3(a)は、直径が2.4mmの散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験(以下「試験1」と称す)の結果を示した表であり、図3(b)は、直径が2.0mmの散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験(以下「試験2」と称す)の結果を示した表である。
この試験では、ポリエステル繊維から構成される網糸により編網され、たて糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.8mm、よこ糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.6mmに設定されると共に、網目の内周の長さが4.5mm、4.0mm、3.5mm及び3.0mmに設定された4種類のネットを用いる。なお、網目は、投影面において、形状が略矩形状に形成されると共に、網目の内周における一方向の長さと他方向の長さとの比が1:2に設定されるものとする。
射台から所定距離離れた位置に幅寸法が3m、高さ寸法が2mのネットを設置すると共に、射台に対してネットの反対側に、幅寸法が3m、高さ寸法が2mのコンクリートパネルを設置する。射台から散弾銃を用いて散弾を発射した後、ネット及びコンクリートパネルの間にある散弾の数を、ネットを突き抜けた散弾の数量として計測する。また、試験1では、トラップ射撃で主に使用される、直径が2.4mmの鉛散弾が300粒内包された質量24gの装弾(トラップ7.5号)を使用し、試験2では、スキート射撃で主に使用される、直径が2.0mmの鉛散弾が480粒内包された質量24gの装弾(スキート9号)を使用した。
図3(a)に示すように、試験1の試験結果によれば、網目の内周の長さが4.5mmのネットは、射台から100m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が0発だったのに対し、射台から80m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が10発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが4.5mmに設定されたネットは、射台から100m以上離れた位置に設置した場合に、散弾飛散防止ネットとして有効である。
網目の内周の長さが4.0mmのネットは、射台から80m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が2発だったのに対し、射台から75m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が11発であった。この結果により、網目の内周の長さが4.0mmに設定されたネットは、射台から80m以上離れた位置に設置した場合に、散弾飛散防止ネットとして有効であると考えられる。
網目の内周の長さが3.5mmのネットは、射台から75m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が4発だったのに対し、射台から70m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が14発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.5mmに設定されたネットは、射台から75m以上離れた位置に設置した場合に、散弾飛散防止ネットとして有効である。
網目の内周の長さが3.0mmのネットは、射台から60m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が2発だったのに対し、射台から50m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が55発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.0mmに設定されたネットは、射台から60m以上離れた位置に設置した場合に、散弾飛散防止ネットとして有効である。
ここで、射撃場の敷地面積を考慮すると、射台からの距離が80m以内の位置に設置することが望ましい。試験1の結果から判断すると、トラップ射撃が行われる場所に設置するネット(例えば、図1における第2散弾飛散防止部42に張設される散弾飛散防止ネット1)としては、網目の内周の長さが4.0mm以下に設定されたネットが有効である。
また、散弾飛散防止ネットを射台から接近した位置に設置するほど、発射される散弾の飛散範囲が狭まる分、散弾飛散防止ネットの設置範囲を狭くできるので、散弾飛散防止ネットの設置コストを抑制できる一方、散弾に対する重力および空気抵抗の影響が小さくなるので、衝突する際の散弾の衝撃力が大きくなる。この点について、試験1の結果から判断すると、散弾飛散防止ネットを射台から接近した位置に設置する場合には、散弾飛散防止ネットの網目の内周の長さを小さく設定することで、散弾の突き抜けを抑制できると考えられる。なお、トラップ射撃では標的が射台から離間する方向へ(図1における下側から上側へ)移動する。そのため、散弾の直径および標的の飛翔距離を勘案すると、散弾飛散防止ネットは、トラップ射撃用の射台から70m以上離れていることが望ましい。
図3(b)に示すように、試験2の試験結果によれば、網目の内周の長さが4.0mmのネットを1枚設置し、射台から80m離れた位置に設置した場合、ネットを突き抜けた散弾の数が17発であった。また、網目の内周の長さが4.0mmのネットを2枚重ねて設置し、射台から80m離れた位置に設置した場合、ネットを突き抜けた散弾の数が3発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが4.0mmに設定されたネットは、射台から80m以上離れた位置に2枚重ねて設置した場合に、散弾飛散防止ネットとして有効である。
網目の内周の長さが3.5mmのネットを1枚設置した際、射台から80m離れた位置に設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が1発だったのに対し、射台から70m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が27発であった。また、網目の内周の長さが3.5mmのネットを2枚重ねて設置した際、射台から80m離れた位置に設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が1発だったのに対し、射台から70m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が27発であった。さらに、網目の内周の長さが3.5mmのネットを3枚重ねて設置した際、射台から50m離れた位置に設置した場合には、ネットを突き抜けた散弾が1発だったのに対し、射台から40m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が29発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.5mmに設定されたネットは、射台から80m以上離れた位置に1枚設置した場合、射台から60m以上離れた位置に2枚重ねて設置した場合、または、射台から50m以上離れた位置に3枚重ねて設置した場合に散弾飛散防止ネットとして有効である。
網目の内周の長さが3.0mmのネットを1枚設置した際、射台から60m離れた位置に設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が1発だったのに対し、射台から50m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が57発であった。また、網目の内周の長さが3.0mmのネットを2枚重ねて設置した場合、射台から50m離れた位置に設置した際には、ネットを突き抜けた散弾が3発だったのに対し、射台から40m離れた位置にネットを設置した場合では、ネットを突き抜けた散弾が76発であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.0mmに設定されたネットは、射台から60m以上離れた位置に1枚設置した場合、射台から50m以上離れた位置に2枚重ねて設置した場合に散弾飛散防止ネットとして有効である。
ここで、試験1と試験2との試験結果を比較すると、射台から80m離れた位置に網目の内周の長さが3.5mm又は4.0mmに設定されたネットを1枚配置した場合、試験2の場合が試験1の場合よりも突き抜けた散弾の数が多くなった。これは、使用される散弾の直径が試験1よりも試験2の方が小さいことにより、散弾が網目を突き抜けやすくなったものと考えられる。
なお、網糸の投影面における幅寸法を大きく設定すると共に、網目の内周の長さを小さく設定することで、網目から散弾が突き抜けることを回避する方法が考えられる。しかし、この場合、散弾飛散防止ネットの充実率が大きくなり、風がネットを通過しにくくなるため、ネットを展張する支柱51(図2(a)参照)への負担が大きくなる。
これに対し、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて使用することで、直径が2.0mmの散弾が衝突した場合であっても、散弾が網目を突き抜けることを抑制できる。即ち、散弾飛散防止ネットを2枚重ねた場合では、散弾が1枚目の散弾飛散防止ネットを突き抜けたとしても、2枚目の散弾飛散防止ネットに衝突する際の衝撃力が、1枚目の散弾飛散防止ネットに衝突する際の衝撃力よりも低減しているので、2枚目の散弾飛散防止ネットで散弾を受け止めやすくすることができる。
また、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて使用することで、発射される散弾を網糸に衝突させやすくできる。即ち、網目の面積Sが比較的大きく設定された場合であっても、正面視において、各網目の位置をずらしつつ2枚の散弾飛散防止ネットを設置することで、網目の投影面積を実質的に小さくすることができる。よって、発射された散弾が1枚目の散弾飛散防止ネットの網糸に接触することなく突き抜けた場合であっても、2枚目の散弾飛散防止ネットの網糸に接触しやすくなるので、散弾が散弾飛散防止ネットを突き抜けることを抑制できる。
さらに、散弾の衝撃力に対する強度が同等である場合、2枚の散弾飛散防止ネットの各網目の位置を一致させつつ2枚の散弾飛散防止ネットを重ねて使用することで、充実率がより高く設定された1枚の散弾飛散防止ネットを使用する場合と比べて、散弾飛散防止ネットの網目の面積の総和がより大きく確保されている分、風が散弾飛散防止ネットを通過しやすいので、風圧の影響を抑制できる。よって、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて使用することで、散弾の衝撃力に対する強度を確保して散弾の突き抜けを抑制しつつ、風圧の影響を抑制して設置コストを抑制できる。
よって、スキート射台21(図1参照)のように、スキート射撃が行われる場所に設置するネット(図1における第1散弾飛散防止部41に張設される散弾飛散防止ネット1)では、射台から80m離れた位置に、網目の内周の長さが4.0mm以下に設定したネットを2枚重ねて設置することで有効になる。
ここで、射台から散弾飛散防止ネットまでの距離が大きくなるほど、発射された散弾が衝突する際の衝撃力が小さくできる一方、射台から発射される散弾の飛散範囲が広くなる。よって、射台から散弾飛散防止ネットまでの距離が大きく設定した場合、網目の内周の長さが大きくなり、風が散弾飛散防止ネットを通過しやすくなる反面、散弾飛散防止ネットの設置範囲が広くなるので、必要な支柱51の数が多くなり、設置コストが増大する。特に、スキート射撃では、標的が図1における左右方向へ移動するため、トラップ射撃と比べて、散弾の飛散範囲が幅広くなる。従って、設置する位置が射台から離れるほど、散弾飛散防止ネットを幅広く設置する必要がある。
これに対し、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合では、より射台に接近した位置に散弾飛散防止ネットを設置することができるので、その分、散弾飛散防止ネットの設置範囲が狭くなる。よって、散弾飛散防止ネットの展張に必要な支柱51の本数を減らすことができるので、設置コストを抑制できる。
また、射台から50m離れた位置にネットを設置した場合、網目の内周の長さが3.5mmに設定されたネット3枚重ねて使用した場合と、網目の内周の長さが3.0mmに設定されたネットを2枚重ねて使用した場合とでは、ネットを突き抜けた散弾の数に大きな違いは見られなかった。よって、網目の内周の長さを小さく設定することで、散弾の突き抜けの回避に必要な散弾飛散防止ネットの枚数を減らすことができるので、その分、散弾飛散防止ネットの設置コストを抑制できる。
次に、図4(a)を参照して、散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験の結果について説明する。図4(a)は、直径が2.0mmである散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験(以下「試験3」と称す)の結果を示した表である。
この試験では、ポリエステル繊維から構成される網糸により編網され、たて糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.8mm、よこ糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.6mm、網目の内周の長さが4mmに設定されると共に、網地の伸び率が40%、50%、60%、70%及び80%に設定された5種類のネットを用いる。なお、網目は、投影面において、形状が略矩形状に形成されると共に、網目の内周における一方向の長さと他方向の長さとの比が1:2に設定されるものとし、網地の伸び率の調整は、網糸を構成するポリエステル繊維の原料を調整することにより行うものとする。
射台から所定距離離れた位置に幅寸法が3m、高さ寸法が2mのネットを設置すると共に、射台に対してネットの反対側に、幅寸法が3m、高さ寸法が2mのコンクリートパネルを設置する。射台から散弾銃を用いて散弾を発射した後、ネット及びコンクリートパネルの間にある散弾の数を、ネットを突き抜けた散弾の数量として計測する。なお、網地の伸び率は、JIS L1018−1999 8.14.2に準じて測定したものである。
図4(a)に示すように、試験1の試験結果によれば、網地の伸び率が40%及び50%のネットでは、ネットを突き抜けた散弾が0発、網地の伸び率が60%のネットでは、ネットを突き抜けた散弾が2発、網地の伸び率が70%のネットでは、ネットを突き抜けた散弾が5発だったのに対し、網地の伸び率が80%のネットでは、ネットを突き抜けた散弾が13発だった。
この結果により、網地の伸び率が80%に設定されたネットでは、衝突した散弾の衝撃力により網糸が伸長しやすくなるため、投影面における網目の投影面積が大きく拡張し、網目を散弾が通過しやすくなったと考えられる。よって、網地の伸び率を70%以下に設定することで、衝突した散弾の衝撃力による網糸の伸長を抑制できるので、網糸の伸長による網目の投影面積の拡張を抑制でき、その結果、拡張した網目から散弾が通過することを抑制できる。
次に、図4(b)を参照して、散弾飛散防止ネットの突き抜け強力検証試験の結果について説明する。図4(b)は、散弾に対する散弾飛散防止ネットの突き抜け強力検証試験(以下「試験4」と称す)の結果を示した表である。
この試験では、ポリエステル繊維から構成される網糸により編網され、たて糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.8mm、よこ糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.6mmに設定されると共に、網目の内周の長さを4.5mm、4.0mm、3.5mm及び3.0mmに、網地の伸び率を40%、50%、60%、70%及び80%に設定し、網目の内周の長さ及び網地の伸び率の条件をそれぞれ組み合わせた20種類のネットと、一方向に作用する荷重を測定センサを有する棒状の計測軸およびその計測軸が連結されると共に計測軸により測定された荷重の測定値をデジタル表示する表示部を有する本体部を備える荷重計測器(株式会社イマダ製デジタルフォースゲージ)を用いる。なお、網目は、投影面において、形状が略矩形状に形成されると共に、網目の内周における一方向の長さと他方向の長さとの比が1:2に設定されるものとし、網地の伸び率の調整は、網糸を構成するポリエステル繊維の原料を調整することにより行うものとする。
10cm×15cmのネットの試験片に対して、荷重計測器の計測軸に装着された、先端部分が直径2.0mmの鉛から構成される球状に形成された治具の先端部分を、網地の平面視方向から100mm/分の送り速度で、網目に静的に押し当てる。押し当てた治具が網目を治具の先端部が突き抜けるまでの過程において、計測軸に作用した荷重の最大値を測定する。この試験を20回行い、各試験において測定した最大値の平均値を算出し、その算出値を突き抜け強力とする。
図4(b)に示すように、試験4の結果によると、網目の内周の長さが小さく設定されるほど、突き抜け強力が大きくなり、網地の伸び率が小さいほど、突き抜け強力が大きくなると考えられる。ここで、試験2及び試験3の結果より、網目の内周が4mm以下かつ網地の伸び率が70%以下に設定されることが望ましいと考えられることから、散弾飛散防止ネットに必要な突き抜け強力が9kgf以上であることが望ましいと考えられる。よって、直径2mmの鉛製の散弾が網目を突き抜ける際に必要とされる荷重を9kgf以上に設定することで、射台から80m離れた位置に設置した場合に、発射された散弾が網目を通過することを抑制できる。
なお、散弾飛散防止ネットは、飛翔する標的との接触によるクレー射撃競技の支障を防止すべく、射台から所定距離離れた位置(例えば、射台から35m離れた位置)に設置する必要がある。従って、突き抜け強力を25kgf以下に設定することで、散弾の突き抜けを十分に抑制しつつ、散弾飛散防止ネットの製造コストを抑制できる。
次に、図4(c)を参照して、散弾飛散防止ネットに衝突した散弾の跳ね返り距離検証試験の結果について説明する。図4(c)は、散弾飛散防止ネットに衝突した散弾の跳ね返り距離検証試験(以下「試験5」と称す)の結果を示した表である。
この試験では、ポリエステル繊維から構成される網糸により編網され、たて糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.8mm、よこ糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.6mm、網目の内周の長さが4mmに設定されると共に、網地の伸び率が20%、30%、40%及び50%に設定された4種類のネットを用いる。なお、網目は、投影面において、形状が略矩形状に形成されると共に、網目の内周における一方向の長さと他方向の長さとの比が1:2に設定されるものとし、網地の伸び率の調整は、網糸を構成するポリエステル繊維の原料を調整することにより行うものとする。
射台から所定距離離れた位置に幅寸法が3m、高さ寸法が2mのネットを設置する。射台から散弾銃を用いて散弾を発射した後、ネットに衝突して跳ね返った散弾のうち、最もネットから離間した散弾とネットと距離を計測する。
図4(c)に示すように、試験5の結果によると、網地の伸び率が大きく設定されるにつれて、散弾の跳ね返り距離が小さくなった。これは、網地の伸び率が大きく設定されることで、ネットが衝突した散弾の衝撃力をより吸収することができたと考えられる。よって、網地の伸び率を40%以上に設定することで、散弾の衝撃力を十分に吸収して、散弾の跳ね返りを抑制できる。
次に、図5を参照して、散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験の結果について説明する。図5は、直径が2.0mmの散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験(以下「試験6」と称す)の結果を示した表である。
この試験では、ポリエステル繊維から構成される網糸により編網され、たて糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.8mm、よこ糸を構成する網糸の投影面における幅寸法が0.6mmに設定されると共に、網目の内周の長さが3.0mmに設定された散弾飛散防止ネットを用いる。なお、網目は、投影面において、形状が略矩形状に形成されると共に、網目の内周における一方向の長さと他方向の長さとの比が1:2に設定されるものとする。
射台から所定距離離れた位置に幅寸法が3m、高さ寸法が2mの散弾飛散防止ネットを1〜3枚設置すると共に、射台に対して散弾飛散防止ネットの反対側に、幅寸法が3m、高さ寸法が2mのコンクリートパネルを設置する。また、散弾飛散防止ネットを複数枚重ねて設置する際には、平面視において一の散弾飛散防止ネットの網目の位置と他の散弾飛散防止ネットの網目の位置とをずらした状態で重ねて設置する。射台から散弾銃を用いて散弾を発射した後、射台に最も近い位置に設置される散弾飛散防止ネット(以下「1枚目のネット」と称す)に着弾した散弾の数を着弾数として、コンクリートパネル及びそのコンクリートパネルに対向する散弾飛散防止ネットの間にある散弾の数を、散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数量として計測する。また、試験6では、スキート射撃で主に使用される、直径が2.0mmの鉛散弾が480粒内包された質量24gの装弾(スキート9号)を使用した。
図5に示すように、試験6の試験結果によれば、射台から60m離れた位置に散弾飛散防止ネットを1枚設置した場合では、着弾数が114発だったのに対し、散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が1発(0.9%)であった。また、射台から50m離れた位置に散弾飛散防止ネットを1枚設置した場合では、着弾数が174発だったのに対し、散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が63発(36.2%)であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.0mmに設定された散弾飛散防止ネットを1枚設置する場合、射台から60m以上離れた位置に設置することで、散弾の突き抜けを有効的に抑制できると考えられる。
射台から50m離れた位置に散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合では、着弾数が149発だったのに対し、2枚の散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が6発(4.0%)であった。また、射台から40m離れた位置に散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合では、着弾数が278発だったのに対し、2枚の散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が92発(33.1%)であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.0mmに設定された散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置する場合、射台から50m以上離れた位置に設置することで、散弾の突き抜けを有効的に抑制できると考えられる。
射台から29m離れた位置に散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合では、着弾数が337発だったのに対し、2枚の散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が132発(39.2%)であった。また、射台から29m離れた位置に散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置した場合では、着弾数が330発だったのに対し、3枚の散弾飛散防止ネットを突き抜けた散弾の数が0発(0.0%)であった。この結果から判断すると、網目の内周の長さが3.0mmに設定された散弾飛散防止ネットは、射台から少なくとも29m以上離れた位置に設置することで、散弾の突き抜けを有効的に抑制できると考えられる。
また、試験6において、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合、試験後の1枚目のネットに重ねて設置される散弾飛散防止ネット(以下「2枚目のネット」と称す)には、網糸の損傷が目視で確認されたのに対し、散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置した場合、試験後の2枚目のネットには、網糸の損傷は目視で確認されなかった。また、1枚目のネットにおいても、散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置した場合では、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置した場合と比べて、網糸の損傷箇所が少なくなっていた。この結果から判断すると、散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置する場合では、散弾飛散防止ネットを2枚重ねて設置する場合と比べて、各散弾飛散防止ネットの損傷を抑制できると考えられる。なお、この理由としては、複数枚の散弾飛散防止ネットが網目の位置をずらした状態で設置されることで、散弾が1枚目のネットに衝突する際に、2枚目のネットや3枚目のネットに対しても同時に当接し、散弾に対して同時により多くの散弾飛散防止ネット1の網糸を当接させることができたことが考えられる。
以上のように、散弾飛散防止ネット1を複数重ねることにより、散弾の衝撃力に対する強度を確保して散弾の突き抜けをより確実に防止することができる。従って、敷地面積の都合によりトラップ射台、スキート射台21及び併用射台22から第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43までの距離を十分に確保できない射撃場であっても、複数枚の散弾飛散防止ネット1を重ねて設置することで散弾の飛散を有効的に抑制できる。さらに、複数枚の散弾飛散防止ネット1を重ねて設置することで各散弾飛散防止ネット1の損傷を抑制できるので、各散弾飛散防止ネット1の長寿命化を図ることができる。
なお、試験6においては、1〜3枚の散弾飛散防止ネット1を設置する場合について試験を行ったが、4枚以上の散弾飛散防止ネット1を重ねて設置してもよい。4枚以上の散弾飛散防止ネット1を重ねて設置することで、重ねて設置される散弾飛散防止ネット1を突き抜ける散弾の数を抑制できる。
また、支柱51間に1枚の散弾飛散防止ネット1を展張する場合と比べて、支柱51間に複数枚の散弾飛散防止ネット1を重ねて設置する場合では、散弾の衝撃力に対する強度を確保できる分、トラップ射台、スキート射台21及び併用射台22により近い位置に第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43を設置できるので、第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43の設置範囲を狭めることができる。
即ち、トラップ射台、スキート射台21又は併用射台22から発射される散弾の飛散範囲は、トラップ射台、スキート射台21又は併用射台22からの距離が近いほど狭くなるので、第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43の設置位置をトラップ射台、スキート射台21及び併用射台22に近づけることにより、第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43の設置範囲を狭めることができる。よって、複数枚の散弾飛散防止ネット1を重ねた場合であっても、散弾飛散防止ネット1よりも材料コスト及び設置コストが高い支柱51の本数を減らすことができるので、第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43の全体としての材料コスト及び設置コストを抑制できる。
次に、散弾の衝撃力に対する散弾飛散防止ネットの強度検証試験(「以下「試験7」と称す」の結果について説明する。この試験では、試験6において、散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置して行った試験の1枚目のネットとして、網目の内周の長さが3.0mmに設定された散弾飛散防止ネットの代わりに、網目の内周の長さが5.0mmに設定された散弾衝撃低減ネットを用いる。なお、散弾衝撃低減ネットは、網目の内周の長さを除き、散弾飛散防止ネットと同じネットであり、試験7は、1枚目のネットとして散弾衝撃低減ネットを用いる点を除き、試験6において散弾飛散防止ネットを3枚重ねて設置して行った試験と同条件である。
試験7によれば、2枚の散弾飛散防止ネット及び散弾衝撃低減ネットを全て突き抜けた散弾は発見されなかった。これにより、3枚のネットを重ねて設置する場合、1枚目のネットを散弾飛散防止ネットよりも網目の内周の長さが大きく設定された散弾衝撃低減ネットを用いたとしても、3枚のネットを散弾が突き抜けることを抑制できると考えられる。
さらに、試験7において1枚目のネットとして用いた散弾衝撃低減ネットは、試験6において1枚目のネットして用いた散弾飛散防止ネットと比べて、網糸の損傷箇所が少なくなっていた。また、試験7における2枚目のネットは、試験6における2枚目のネットと比べて、散弾の弾痕が多く見られた。これは、散弾が散弾衝撃低減ネットに衝突した際に、散弾衝撃低減ネットの網糸と散弾との当接面積が小さくなったことにより、散弾衝撃低減ネットの網目から散弾が突き抜けやすくなったと考えられる。また、その結果、散弾が散弾衝撃低減ネットの網目を突き抜ける際に網糸にかかる負担を軽減させることができ、散弾衝撃低減ネットの網糸の損傷を抑制できたと考えられる。
以上のように、3枚のネットを重ねて使用する場合、1枚目のネットには散弾の衝撃力が最も大きく作用するため、網糸と散弾との当接面積が大きく確保されている散弾飛散防止ネットを1枚目のネットとして使用した場合、1枚目のネットとしての散弾飛散防止ネットは、2枚目および3枚目の散弾飛散防止ネットと比べて早期に損傷する。
これに対し、1枚目のネットとして散弾衝撃低減ネットを使用することにより、散弾衝撃低減ネットの網糸と散弾との当接面積が小さくなり、散弾衝撃低減ネットの網目から散弾が突き抜けやすくなるので、散弾衝撃低減ネットの網糸にかかる負担を抑制できる。また、散弾衝撃低減ネットは網目の内周の長さが5.0mm、即ち、散弾の直径に対する円周よりも小さく設定されているので、散弾が散弾衝撃低減ネットの網目を突き抜ける際に、散弾が散弾衝撃低減ネットの網糸に当接させることができる。さらに、2枚目のネットおよび3枚目のネットとして散弾飛散防止ネットが使用されているので、散弾衝撃低減ネットを突き抜けたことで衝撃力が低減した散弾を散弾飛散防止ネットによって確実に受け止めることができる。
従って、複数枚のネットを重ねて設置する場合、1枚目のネットとして、散弾飛散防止ネット1よりも網目の内周の長さが大きく設定された散弾衝撃低減ネットを用いることによって、散弾が複数枚のネットを突き抜けることを抑制しつつ、1枚目のネットの長寿命化を計ることができる。
さらに、複数のネットを重ねて設置する場合、1枚目のネットとして散弾衝撃低減ネットを使用することによって、複数枚のネットのすべてが散弾飛散防止ネット1で構成される場合と比べて、散弾衝撃低減ネットの内周の長さが大きく設定されている分、複数枚のネットに対して風を通過させやすくすることができる。
なお、散弾衝撃低減ネットの網目の内周の長さ寸法は、散弾飛散防止ネット1の網目の内周の長さよりも大きく、かつ、散弾の直径に対する円周よりも小さく設定されていればよく、4.0mm以上、かつ、6.0mm以下に設定されることが好ましい。
また、試験7では、2枚の散弾飛散防止ネット1に1枚の散弾衝撃低減ネットを重ねて設置する場合に試験を行ったが、ネットを2枚以上重ねて構成し、それら2枚以上のネットのうち少なくとも1枚を散弾飛散防止ネットですると共に散弾飛散防止ネットに複数枚の散弾衝撃低減ネットを射台に最も近い位置から重ねて設置してもよい。
また、本実施の形態および試験1から7のいずれにおいても、複数枚のネットを重ねて設置する際、対向する各ネットは互いに接触した状態で設置されている。
以上、実施の形態に基づき、本発明を実施したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態では、網地2が網糸4をラッセル編により編網したラッセル網で構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、網地2が他の方法により編網されていてもよい。他の方法としては、例えば、有結節網または無結節網などが例示される。
また、上記実施の形態では、スキート射台21から約50m離れた位置に設置される第1散弾飛散防止部41と、併用射台22から約80m離れた位置に設置される第2散弾飛散防止部42と、スキート射台21から約100m離れた位置に設置される第3散弾飛散防止部43が設置され、それら第1散弾飛散防止部41、第2散弾飛散防止部42及び第3散弾飛散防止部43に散弾飛散防止ネット1が展張される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、散弾飛散防止ネット1が展張される位置は、射撃場の面積、形状等を勘案し、適宜決定してもよい。
例えば、本実施の形態では、第1散弾飛散防止部41がスキート射台21から50m離れた位置に設置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スキート射台21から第1散弾飛散防止部41までの距離が25m以上60m以下の位置に設置することが望ましい。スキート射台21から第2散弾飛散防止部42までの距離を25m以上に設定することで、散弾が散弾飛散防止ネット1に衝突する際の衝撃力を低減させることができるので、散弾が散弾飛散防止ネット1を突き抜けることを抑制できる。また、スキート射台21から第1散弾飛散防止部41までの距離を25m以上に設定することで、第1スキート射出機32a及び第2スキート射出機32bから発射される標的の飛空領域を確保してスキート射撃の競技に支障が生じることを防止できると共に、散弾飛散防止ネット1がスキート射台21の近くに設置されることによりスキート射撃の競技者に対して与える圧迫感を抑制できる。一方、スキート射台21から第1散弾飛散防止部41までの距離を60m以下に設定することで、発射される散弾の飛散範囲が狭くできるので、その分、散弾飛散防止ネット1の設置範囲を狭くして、散弾飛散防止ネット1の設置コストを抑制できる。
さらに、本実施の形態では、第2散弾飛散防止部42が併用射台22から80m離れた位置に設置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、併用射台22又はトラップ射台から第2散弾飛散防止部42までの距離が70m以上85m以下の位置に設置することが望ましい。併用射台22又はトラップ射台から第2散弾飛散防止部42までの距離を70m以上に設定することで、散弾が散弾飛散防止ネット1に衝突する際の衝撃力を低減させることができるので、散弾が散弾飛散防止ネット1を突き抜けることを抑制できる。また、トラップ射撃では、標的が射台から離間する方向へ移動する。そのため、併用射台22又はトラップ射台から第2散弾飛散防止部42までの距離を70m以上に設定することで、飛翔する標的が散弾飛散防止ネット1に衝突することによるトラップ射撃競技への支障を防止すると共に、標的との衝突により散弾飛散防止ネットが破損することを防止できる。
さらに、上記実施の形態では、第1散弾飛散防止部41及び第2散弾飛散防止部42に展張される散弾飛散防止ネット1の高さ寸法が20mに設定され、散弾飛散防止ネット1が隣接する支柱51間の上端部分から地上付近までほぼ全体に展張される場合(図2(a)参照)を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、散弾飛散防止ネット1が支柱51の上部(例えば、支柱51の上端部分から支柱51の高さ寸法の1/2〜2/3までの位置)にのみ展張されてもよい。これにより、散弾飛散防止ネット1の高さ寸法を小さくできるので、散弾飛散防止ネット1の材料コストを抑制できる。また、散弾飛散防止ネット1が受ける風圧の影響を小さくできるので、支柱51の設置コストを抑制できる。
また、クレー射撃においては、散弾は射台から上方へ向けて発射されるので、支柱51間の上部にのみ散弾飛散防止ネット1を設置したとしても、発射される散弾の大部分を散弾飛散防止ネット1に着弾させることができる。従って、支柱51間の上部にのみ散弾飛散防止ネット1を展張した場合であっても、散弾の飛散を抑制することができるので、散弾を効率的に回収することができる。なお、支柱51間の上部にのみ設置された散弾飛散防止ネット1の下方を散弾が通過したとしても、その散弾の射台からの飛距離が短く、射撃場の敷地内に散弾が落下するので、散弾を回収することができ、射撃場の場外へ飛散して回収不能となった散弾によって射撃場周辺の環境が汚染されることを未然に防止できる。
また、本実施の形態では、投影面における網目5の形状が略矩形状である場合を説明したが、これに限られるものではなく、網目が多角形状に形成されていればよい。
ここで、図6を参照して、網目の形状の変形例について説明する。図6は、変形例における網地の拡大正面図である。なお、図6では、図面を簡素化して理解を容易とするため、網地を平面的に投影し、各網糸の投影領域にハッチングを図が図示されている。
図6(a)から図6(c)に示すように、網糸を編網することで形成される網目の形状としては、略正方形、略三角形または略六角形などが例示される。ここで、投影面における網目の形状としては、四角形以上の多角形であること、さらには、四角形または正六角形であることが望ましい。即ち、網目の内周の長さが一定である場合に、投影面における網目の形状が三角形である場合と比べて、網目の投影面積をより大きくすることができる。よって、散弾の網目の通過を抑制しつつ、散弾飛散防止ネットに当たる風を網目から逃がしやすくすることができる。また、投影面における網目の形状を四角形または六角形にすることで、網地の編網箇所の数を抑制して、網地の編網作業を効率化しつつ、網目を規則的に配列させることで、散弾の衝撃力に対する突き抜け強度を均等に設定することができる。
また、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階において、散弾に対して網糸が接触する当接面積をより大きく確保することができる。即ち、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階では、網糸に対する散弾の衝撃力が最も大きくなる。そのため、発射された散弾と網糸とが接触する初期段階において、散弾と網糸との当接面積をより大きく確保することで、衝突した際の散弾の衝撃力を分散させることができるので、散弾との当接部分における網糸への負担を軽減できる。従って、散弾が衝突した際における網糸の負担を軽減することで、網糸が過度に伸長すること及び網糸が破断することを回避できるので、散弾が網目を突き抜けることをより確実に抑制できる。
さらに、上記実施の形態では、複数枚のネットを重ねて設置する場合に、対向する各ネットが互いに接触した状態で設置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、対向する各ネットを互いに所定間隔を隔てた状態で重ねて設置してもよい。これにより、対向する各ネットの間から風を通過させることができる。
さらに、この場合、平面視において、一のネットの網目の位置と、他のネットの網目の位置とが自ずとずらされた状態となる。その結果、平面視における複数枚のネットの網目の投影面積が実質的に小さくなるので、散弾と複数枚のネットの網糸との当接面積を増やすことができ、散弾が複数枚のネットを突き抜けることを抑制できる。
ここで、網目の投影面積を小さくする方法として、1枚のネットの網糸の投影面における幅寸法を大きく設定すると共に、網目の内周の長さを小さく設定する方法が考えられる。しかし、この場合では、ネットの投影面における網地全体に対する網糸の占有面積の割合が大きくなるため、風がネットを通過しにくくなる。よって、風圧の影響を受けやすく、ネットを展張する支柱への負担が大きくなる。
これに対し、複数枚のネットが、一のネットと他のネットとを所定の間隔を隔てつつ重ねて設置され、一のネットの網目の位置と他のネットの網目の位置とが自ずとずらされた状態になることで、各ネットの充実率を小さくしつつ、平面視における複数枚のネットの網目の投影面積を実質的に小さくできる。よって、散弾が複数枚のネットを通過することを確実に抑制できると共に、複数枚のネットが受ける風圧の影響を抑制してネットを展張する支柱の負担を軽減でき、その結果、ネットの設置構造の設置コストを抑制できる。
なお、対向する各ネットの間の間隔は0.5mm以上かつ5cm以下であることが好ましく、この範囲において、対向する各ネットを互いに接触させた状態で重ねて設置して行った上記実施の形態における試験1から7と同様の試験結果が得られる。また、3枚以上のネットを重ねて設置する場合、各ネット間の間隔は、同じであっても異なっていてもよい。