JP4771151B2 - マイクロミキサー - Google Patents

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Description

本発明は、2つの流体を混合するマイクロミキサーに関する。より詳細には、本発明は、微小な流入チャンネル、混合領域および流出チャンネルを有して成る静止型マイクロミキサーに関する。また、本発明は、かかるマイクロミキサーを有して成る混合ユニットにも関する。
近年、省エネルギー化または省スペース化の観点から、混合、化学反応および化学分析などの化学プロセスをマイクロ空間で実施することが行われている。例えば、マイクロ空間を有するマイクロミキサーは、可動部がなく省エネルギーとなる利点を有するだけでなく、比較的シンプルな構造であり大きなスペースを確保しなくてもよい利点を有している。このようなマイクロミキサーは、混合すべき流体の単位体積当りの接触界面積が増加するために混合効率が一般に良好となる。従って、マイクロミキサーは、従来のミキサーに取って代わるものとして注目を集めている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
マイクロミキサーでより効率的な混合を達成するには、マイクロミキサーの流路幅を狭くすることが簡易であるが、流路が狭くなるにつれて圧力損失が大きくなり、省エネルギー化の点で決して好ましいとはいえない。例えば、ドイツのIMM社[Institute for Microtechnology Mainz GmbH]から市販されているマイクロミキサーである標準型single mixerの流路は25〜50μmである(IMM社のマイクロミキサーは例えば非特許文献1に開示されている)。また、単位時間当りに混合される量を増やして生産性を上げるには、混合すべき流体の流速を上げる必要があるものの、流速の増加に伴って圧力損失が増加するので、流速を増加させるにも限度がある。従って、効率的な混合と生産性との双方を鑑みて、小さい圧力損失にも拘わらず優れた混合性能を有するマイクロミキサーが求められていた。
特開2005−288254号公報 特開2002−346353号公報 株式会社アイテック(IMM社の代理店)のホームページ、マイクロリアクター[online]、[平成18年4月20日検索]、インターネット〈http://www.itec-es.co.jp/product/microreactor.html〉
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の課題は、小さい圧力損失にも拘わらず優れた混合性能を有するマイクロミキサーを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、
流入チャンネル10aを流れる流体Aと、流体Aの流れに対して逆方向に流入チャンネル10bを流れる流体Bとを混合領域20で混合した後、流体Aと流体Bとを含んで成る混合物を流出チャンネル30から排出するマイクロミキサーであって、
少なくとも1つの流入チャンネル10a、
少なくとも1つの流入チャンネル10b、
流入チャンネル10aの終端部12aと流入チャンネル10bの終端部12bとが重なって形成されている少なくとも1つの混合領域20、ならびに
混合領域20に連通する少なくとも1つの流出チャンネル30
を有して成り、
流入チャンネル10aは、流入チャンネル10aの終端部12aにて拡がるように段差面14aを有し、流入チャンネル10bは、流入チャンネル10bの終端部12bにて拡がるように段差面14bを有し、かつ
混合領域20において、段差面14aに流体Bが衝突し、段差面14bに流体Aが衝突するように、終端部12aと終端部12bとが対向して配置されている、マイクロミキサーを提供する。
本発明のマイクロミキサーの混合領域では、段差面14aと段差面14bとが相互にオフセット状態(即ち「斜めにずれた状態」)で向かい合っており、流体Aが段差面14bに衝突する一方、流体Aに対して向流状態で流れる流体Bが段差面14aに衝突するので、流体Aと流体Bとが良好に接触し、混合されることになる。
本発明の好ましい態様では、マイクロミキサーが、
少なくとも2つの流入チャンネル10a、および
少なくとも2つの流入チャンネル10b
を有して成り、
各々の流入チャンネル10a,10bが2つの混合領域20を有している。この態様では、各々の流入チャンネル10aが、2つの隣接する混合領域20を有しており、それぞれの混合領域20が流入チャンネル10bに連通している。このようなマイクロミキサーは、その内部に複数の混合領域が設けられることになり、混合される流体Aと流体Bとの単位体積当りの接触界面積が大きくなる特徴を有している。
また、本発明の好ましい態様では、流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび流出チャンネル30の横断面の平均寸法が、100μm〜2000μm程度、特に200μm〜1000μmである。従って、本発明のマイクロミキサーでは、従来のマイクロミキサーよりも流路が比較的大きく、流体AおよびBの圧力損失が抑えられている。ここでいう「平均寸法」とは、流入チャンネル10a,10bまたは流出チャンネル30の長さ全体にわたる横断面の寸法(長さ)の平均値を意味している。
本発明のマイクロミキサーは、流路が比較的大きいにもかかわらず、混合される2流体の単位体積当り接触界面積を大きくすることができるので、流体の圧力損失を低く抑えつつ2流体の混合を達成できる効果を有している。そのため、混合すべき流体を比較的速い流速で供給した場合であっても、より多くの混合物を比較的短い時間で得ることができる。また、本発明のマイクロミキサーでは、混合すべき流体の流速が速くなると、流体の流れが段差面(14a,14b)により強く衝突して乱されるので、流速の増加によって混合領域20での2流体の混合が促進される。換言すれば、本発明のマイクロミキサーは、混合すべき流体の流速の増加に伴って混合特性が向上する効果も有している。
更に、本発明のマイクロミキサーは、いわゆるスタティックミキサーであるために、混合に必要な動力は、実質的には流体を供給する送液手段の動力のみである。
発明を実施するための形態
以下に、本発明のマイクロミキサーを詳細に説明する。なお、本明細書において「チャンネル」とは、流体A,Bが流れる流路を意味しているが、その横断面の形状は必ずしも円形に限定されるものではなく、例えば、楕円形、矩形、正方形および多角形などの形状であってもよい。また、本明細書において「流体」とは、流入チャンネルおよび流出チャンネルを流れることができる液体、気体およびそれらの混合物のことを指しているが、これらに特に限定されるものではない。例えば、固形粒子が液体に分散したスラリーも、本明細書でいう「流体」に含めることができる。
まず、流入チャンネル10a,10bおよび混合領域20を模式的に示した図1Aおよび図1Bを参照して、本発明のマイクロミキサーの混合原理を説明する。流入チャンネル10aおよび流入チャンネル10bは、図1Aに示すように、段差面(即ち、横方向面)14aおよび14bをそれぞれ有しており、終端部12aおよび12bで拡がっている。混合領域20は、図1Bに示すように、流入チャンネル10aの終端部12aと流入チャンネル10bの終端部12bとが全体的または部分的に対向して重なることによって形成されている。図示するように、混合領域20では、段差面14aと段差面14bとはオフセット状態で向き合っており、流体Aの流れ(図1Bでは下から上へと向かう流れ)が阻止されるように段差面14bが設けられていると共に、流体Bの流れ(図1Bでは上から下へと向かう流れ)が阻止されるように段差面14aが設けられている。流体Aは、混合領域20に流入すると段差面14bに衝突する一方、流体Bも同様に、混合領域20に流入すると段差面14aに衝突するので、混合領域20では流体Aと流体Bとの良好な接触が確保されることになり、両者が緊密に混合される。流体Aおよび流体Bは、それぞれ段差面14bおよび段差面14aに衝突すると流れが乱されるので、そのような乱れによって流体Aと流体Bとの混合が促進される。
混合領域20で混合された流体Aおよび流体Bは、混合領域20に連通する流出チャンネル30(図示せず)を流れることによってマイクロミキサーから排出される。流出チャンネル30は、混合領域20に連通する限り、いずれの方向に延在してもよいが、流入チャンネル10a,10bが延在する方向と直交する方向(図1Aの紙面の垂直方向)に延在していることが好ましい。
図2A(a)に流入チャンネル10aを模式的に示す。流入チャンネル10aの横断面の最大寸法D10aと、流入チャンネル10aの終端部12aの横断面の最小寸法D12aとの比(D10a:D12a)は、好ましくは1:1.1〜1:5であり、より好ましくは1:1.2〜1:3であり、例えば1:1.4である。ここで「流入チャンネル10aの横断面の最大寸法D10a」とは、流体Aの流れ方向と直交するP方向における流入チャンネル10aの横断面の最大の寸法(長さ)を意味しており、「終端部12aの横断面の最小寸法D12a」とは、P方向における終端部12aの横断面の最小の寸法(長さ)を意味している。流入チャンネル10aの横断面の最大寸法D10aは、好ましくは100μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば700μmである。
図2A(b)に流入チャンネル10bを模式的に示す。流入チャンネル10bの横断面の最大寸法D10bと、流入チャンネル10bの終端部12bの横断面の最小寸法D12bとの比(D10b:D12b)は、好ましくは1:1.1〜1:5であり、より好ましくは1:1.2〜1:3であり、例えば1:1.4である。ここで「流入チャンネル10bの横断面の最大寸法D10b」とは、流入チャンネル10aの場合と同様、流体Bの流れ方向と直交するP方向における流入チャンネル10bの横断面の最大の寸法(長さ)を意味しており、「終端部12bの横断面の最小寸法D12b」とは、P方向における終端部12bの横断面の最小の寸法(長さ)を意味している。流入チャンネル10bの横断面の最大寸法D10bは、好ましくは100μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば700μmである。
また、流入チャンネル10aの段差面14aの長さL14aと、流入チャンネル10aの終端部12aの長さL12aとの比(L14a:L12a)は、好ましくは1:0.1〜1:10であり、より好ましくは1:0.2〜1:5であり、例えば1:2.5である。図2B(a)に示すように、「流入チャンネル10aの段差面14aの長さL14a」とは、流入チャンネル10aが横方向に拡がることにより形成された横方向面の長さを意味しており、「終端部12aの長さ」とは、流入チャンネル10aが延在する方向の終端部12aの長さを意味している。流入チャンネル10aの終端部12aの長さL12aは、好ましくは10μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、400μmである。
流入チャンネル10aの場合と同様、流入チャンネル10bの段差面14bの長さL14bと、流入チャンネル10bの終端部12bの長さL12bとの比(L14b:L12b)は、好ましくは1:0.1〜1:10であり、より好ましくは1:0.2〜1:5であり、例えば1:2.5である。図2B(b)に示すように、「流入チャンネル10bの段差面14bの長さL14b」とは、流入チャンネル10bが横方向に拡がることにより形成された横方向面の長さを意味しており、「終端部12bの長さ」とは、流入チャンネル10bが延在する方向の終端部12bの長さを意味している。流入チャンネル10bの終端部12bの長さL12bは、好ましくは10μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、400μmである。
流入チャンネル10aの段差面14aは、流体Bの衝突に好適な角度で設けられていることが好ましい。例えば、図2C(a)に示すような「流入チャンネル10aでの流体Aが流れる方向と段差面14aとが成す角度α14a」は、好ましくは30°〜150°であり、より好ましくは60°〜120°であり、例えば90°である。同様に、流入チャンネル10bの段差面14bは、流体Aの衝突に好適な角度で設けられていることが好ましい。例えば、図2C(b)に示すような「流入チャンネル10bでの流体Bが流れる方向と段差面14bとが成す角度α14b」は、好ましくは30°〜150°であり、より好ましくは60°〜120°であり、例えば90°である。
同様に、図2D(a)に示すように、流入チャンネル10aの段差面14aと終端部12aとが成す角度β14aが流体Bの衝突に好適な角度で設けられることが好ましい。角度β14aは、好ましくは30°〜150°であり、より好ましくは60°〜120°であり、例えば90°である。また、図2D(b)に示すように、流入チャンネル10bの段差面14bと終端部12bとが成す角度β14bが流体Aの衝突に好適な角度で設けられることが好ましい。角度β14bは、好ましくは30°〜150°であり、より好ましくは60°〜120°であり、例えば90°である。
流入チャンネル10aの段差面14aおよび/または段差面14bは、平面に限定されるものではなく、曲面であってもかまわない。また、図2C(a)または図2D(a)に示すように、流入チャンネル10aの拡がり始める部分aおよび拡がりが終了する部分aが角張った形状を有していることに限定されず、部分aおよび部分aが角を形成せず曲面になっていてもよい。同様に、図2C(b)または図2D(b)に示すように、流入チャンネル10bの拡がり始める部分bおよび拡がりが終了する部分bも角張った形状を有していることに限定されず、部分bおよび部分bが曲面を有するように滑らかに形成されてもよい。なお、段差面14a,14bおよび終端部12a,12bも含めて流入チャンネル10a,10bを形成する面は、平滑面であっても粗面であってもかまわないが、流体の圧力損失が抑制される点で平滑面が好ましい。
流入チャンネル10aと流入チャンネル10bとが組み合わされて形成された混合領域20では、図2Eに示すように、流入チャンネル10aの拡がり始める部分aと流入チャンネル10bの拡がり始める部分bとが矢印F方向にて向き合って設けられることが好ましい。また、図2Eに示すように、流入チャンネル10aの拡がりが終了する部分aは流入チャンネル10bの中央線F上に配置されることが好ましく、同様に、流入チャンネル10bの拡がりが終了する部分bは流入チャンネル10aの中央線F上に配置されることが好ましい。
流入チャンネル10a、流入チャンネル10bをそれぞれ少なくとも2つ設ける場合には、図3に示すように整列して設けることが好ましい。具体的には、整列した複数の流入チャンネル10aの各々の出口と、同様に整列した複数の流入チャンネル10bの各々の出口とが、相互にずれて向き合うように整列することが好ましい。図示されるように、各々の流入チャンネル10aの終端部12aにて2つの混合領域20が形成されると共に、各々の流入チャンネル10bの終端部12bにて2つの混合領域20が形成されることになる。換言すれば、各々の流入チャンネル10aが、2つの隣接する混合領域20を有しており、それぞれの混合領域20が流入チャンネル10bに連通している。このような態様では、図示されるように、流体Aは混合領域20に流入する直前に二手に分かれて流体Aと流体Aとなり、流体Aおよび流体Aのそれぞれが別個の混合領域20に流入することになる。同様に、流体Bも混合領域20に流入する直前に二手に分かれて流体Bと流体Bとなり、流体Bおよび流体Bのそれぞれが別個の混合領域20に流入することになる。
また、流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび混合領域20は、一方向にのみ並んで整列する態様のみならず、それぞれが縦方向および横方向とマトリクス状に整列して設けられる態様であってもよい。より具体的に説明すれば、図3にて矢印で示す横方向に流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび混合領域20がそれぞれ整列して並んでいるだけでなく、図3の平面(即ち、紙面)を垂直に貫く縦方向にも流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび混合領域20がそれぞれ整列して並んでいてもよい。例えば、横方向に整列させる流入チャンネル10a、10bおよび混合領域の各々の個数nは、2〜10であることが好ましい。同様に、縦方向に整列させる流入チャンネル10a、10bおよび混合領域の各々の個数nは、2〜10であることが好ましい。このように、流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび混合領域20が縦方向および横方向に整列する態様では、一方向(図3に示す態様では紙面を垂直に貫く縦方向)に沿って配列されている混合領域20を相互に連通させることができる。
このように、本発明のマイクロミキサーでは複数の混合領域20を設けることができるので、混合すべき流体Aと流体Bとの2流体の単位体積当りの接触界面積を大きくすることができる。つまり、本発明のマイクロミキサーでは、多量の流体を大きい接触界面積で効率よく混合することができ且つ圧力損失を抑えることができる。
ここで、「流入チャンネル10a、流入チャンネル10bおよび混合領域20がそれぞれ縦方向および横方向とマトリクス状に設けられているマイクロミキサー」は、A半分およびB半分の2つの部材から構成することができる。このようにして形成されるマイクロミキサーは、A半分とB半分とを有して成り、
A半分の面50aに、少なくとも1つの溝60aが設けられ、溝60aにおいて少なくとも2つのチャンネル10aが溝60aの長手方向に沿って終端しており、
B半分の面50bに、少なくとも1つの連続突起70bが設けられ、連続突起70bの両側のそれぞれにおいて少なくとも2つの流入チャンネル10bが連続突起70bに沿って終端しており、また
溝60aの長手方向の中央線と連続突起70bの長手方向の中央線とが略一致するように、A半分の面50aとB半分の面50bとが接しているマイクロミキサーであることが好ましい。図4にA半分の面50aおよびB半分の面50bを模式的に示し、図5にA半分およびB半分の斜視図を示す。また、図6には、A半分とB半分とが結合される直前の態様を斜視図にて示す。
溝60aは相互に平行に設けられていることが好ましく、連続突起70bも同様に相互に平行に設けられていることが好ましい。また、溝60aには、例えば図4に示すような位置に流出チャンネル30が設けられている。
図7は、図4のX方向から見たA半分およびB半分の断面を模式的に示しており(但し、流出チャンネル30は図示せず)、図7(a)がA半分とB半分とを結合させる直前の態様を示し、図7(b)がA半分とB半分とを結合させた後の態様を示している。図4、図6および図7を参照すると、溝60aの長手方向の中央線と連続突起70bの長手方向の中央線とが略一致するようにA半分の面50aとB半分の面50bが接することによって、混合領域20がマトリクス状(即ち、縦方向および横方向)に形成されることが理解できよう。この場合、溝60aの長手方向または連続突起70bの長手方向に沿って形成される混合領域20が相互に連通した形態となることに留意されたい。流入チャンネル10aを流れる流体Aが衝突することになる混合領域20の段差面14bは、図4(b)の拡大図に示すように、B半分の面50bにおける連続突起70bの基部と流入チャンネル10bの出口(穴の周縁)との間の領域Rに相当する。流入チャンネル10bを流れる流体Bが衝突することになる混合領域20の段差面14aは、図4(a)の拡大図に示すように、A半分の面50aの溝60a内の流入チャンネル10aの出口(穴の周縁)と溝60bの周縁との間の領域Rに相当する。
図4に示すように、チャンネル10aの横断面の最小寸法Daは連続突起70bの幅方向長さW70bよりも10〜500μm大きいことが好ましく、また、チャンネル10bの横断面の最小寸法Dbは隣接する2つの溝60aの間の距離I60aよりも10〜500μm大きいことが好ましい。ここで「チャンネル10a,10bの横断面の最小寸法」とは、流体Aの流れ方向と直交するP方向における流入チャンネル10a,10bの横断面の最小の寸法(長さ)を意味しており、横断面が円形の場合には流入チャンネル10a,10bの直径を表している。これにより、図3に示すように、チャンネル10aを流れる流体Aが混合領域20に流入する直前で連続突起70bに衝突し、流体Aと流体Aと二手に分かれて混合領域20に流入できるだけでなく、チャンネル10bを流れる流体Bも同様に混合領域20に流入する直前で溝60aの間の領域(即ち、隣接する2つの溝60aの間の領域)に衝突し、流体Bと流体Bと二手に分かれて混合領域20に流入できることになる。
なお、隣接する2つの溝60aの間の距離I60aが、連続突起70bの幅方向長さW70bに略等しいことが好ましい(図4参照)。これにより、図3に示すように、流体Aを二手に分ける作用を有する部分の長さWと、流体Bを二手に分ける作用を有する部分の長さWとが等しくなる。
図8を参照にして、A半分とB半分とからマイクロミキサーを形成する場合の各種寸法を説明する。なお、流入チャンネル10a,10bの横断面が円形である場合を例にとって説明する。
A半分の溝60aの幅方向長さW60aは、好ましくは110μm〜10000μmであり、より好ましくは500μm〜1500μmであり、例えば、1000μmである。溝60aの長手方向長さL60aは、好ましくは2mm〜1000mmであり、より好ましくは5mm〜50mmであり、例えば、10mmである。溝60aの深さH60aは、好ましくは10μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、400μmである。隣接する2つの溝60aの間の距離I60aは、好ましくは90μm〜1090μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、400μmである。
B半分の連続突起70bの幅方向長さW70bは、好ましくは90μm〜1090μmであり、より好ましくは150μm〜800μmであり、例えば、400μmである。また、連続突起70bの長手方向長さL70bは、好ましくは2mm〜1000mmであり、より好ましくは5mm〜50mmであり、例えば、7mmである。連続突起70bの高さH70bは、好ましくは10μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、400μmである。隣接する2つの連続突起70bの間の距離I70bは、好ましくは110μm〜10000μmであり、より好ましくは500μm〜1500μmであり、例えば、1000μmである。
溝60aにて終端する流入チャンネル10a,10bの横断面の直径は、好ましくは100μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、700μmである。また、流入チャンネル10a、10bのそれぞれの個数nは、好ましくは2〜100であり、より好ましくは5〜20である。
更に、A半分とB半分とから得られるマイクロミキサーにおける混合領域20の各々の大きさは、好ましくは0.1〜10mmであり、より好ましくは1〜5mmである。
ある好適な態様において、図9に示すように、溝60aにおいて少なくとも1つの流出チャンネル30が終端していることが好ましい。これにより、溝60aを介して流入チャンネル10aと流出チャンネル30とが連通するようになり、流体Aと流体Bの混合物が溝60aを介して混合領域から流出チャンネル30へと流れることになる。なお、流出チャンネル30の横断面の直径は、流入チャンネル10a,10bと同様、好ましくは100μm〜2000μmであり、より好ましくは200μm〜1000μmであり、例えば、700μmである。
A半分およびB半分から構成されるマイクロミキサーでは、図10に示すように、マイクロミキサーに流体Aを供給する単一の流入管40aが複数の流入チャンネル10aの全てに連通するように接続され、また、マイクロミキサーに流体Bを供給する単一の流入管40bが複数の流入チャンネル10bの全てに連通するように接続されることが好ましい。同様に、マイクロミキサーには、混合物をマイクロミキサーから排出する単一の流出管40cが複数の流出チャンネル30の全てに連通するように接続されることが好ましい。
ここで、図11(a)に示すように、流入チャンネル10aと流入管40aとを接続するマイクロミキサー中のキャビティの横断面の面積S40aと、複数の流入チャンネル10aの横断面の総面積S10a(即ち、複数の流入チャンネル10aの横断面の面積を全て足し合わせた面積)との比(S40a:S10a)は、好ましくは1:1〜1:20であり、より好ましくは1:5〜1:10である。同様に、図11(b)に示すように、流入チャンネル10bと流入管40bとを接続するマイクロミキサー中のキャビティの横断面の面積S40bと、複数の流入チャンネル10bの横断面の総面積S10b(即ち、複数の流入チャンネル10bの横断面の面積を全て足し合わせた面積)との比(S40b:S10b)は、好ましくは1:1〜1:20であり、より好ましくは1:5〜1:10である。
A半分およびB半分から構成されるマイクロミキサーに供給される流体Aおよび流体Bの流速は、好ましくは0.1〜100ml/minであり、より好ましくは1〜10ml/minである。
A半分およびB半分の材質は特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウムもしくはステンレス鋼、耐食性合金(例えば、ハステロイ、インコネル、ステライト)などの金属材料、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂もしくはポリカーボネート樹脂などの高分子材料、または、石英ガラス、ソーダ石灰ガラスもしくはアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス材料などであってもよい。また、A半分およびB半分の加工法も特に限定されるものでなく、例えば、一般的な機械加工技術を用いることによって、A半分およびB半分を製造してよい。更に、A半分とB半分とを一体に接合させた際に流体のリークが防止されるように、A半分の面50aおよび/またはB半分の面50bには、流入チャンネル10a,10b、溝60aおよび連続突起70bを全て包囲するようなシール溝80を設け(図5または図12参照)、その溝にOリングなどのシール材(例えばシリコーン材料)を配置することが好ましい。なお、A半分とB半分とをボルトネジで一体に締結して結合できるように、A半分およびB半分の周縁部には、面50aおよび面50bに対して垂直な方向にボルトネジ用のネジ穴85が設けられていることが好ましい(図5または図12参照)。更には、面50aと面50bとが正確に合わせられるように、A半分の面50a(またはB半分の面50b)に位置決めピン90aが設けられると共に、それに対応する位置決め穴90bがB半分の面50b(またはA半分の面50a)に設けられていることが好ましい(図5または図12参照)。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることは当業者には容易に理解されよう。例えば、本発明のマイクロミキサーに対して、流体Aおよび流体Bをマイクロミキサーに供給する送液手段を設けて混合ユニットを構築してもよい。この場合、送液手段としては例えばシリンジポンプを挙げることができる。シリンジポンプの吐出圧は、0.1MPa〜10MPaが好ましく、0.1MPa〜1MPaがより好ましい。また、そのような送液手段に加えて、流体A、流体Bおよびそれらの混合物の温度を調整する温調手段を付加的にマイクロミキサーに設けてもよい。温調手段としては、マイクロミキサー自体に設けられる温調ジャケット、および/または、流入管40a,40bおよび流出管40cに対して設けられる二重管構造の温調手段などが挙げられる。二重管構造の温調手段では環状部分を熱媒体が流れることになる。流体A、流体Bおよびそれらの混合物の温度は、それらの流体が可能となる温度、例えば−80℃〜300℃となるように温調することが好ましい。更に、温調手段と共に又は温調手段に代えて、マイクロミキサー、流入管40a,40bおよび/または流出管40cの外側に対して保温材(断熱材)を設けてもよい。
なお、使用に際しては、本発明のマイクロミキサーを単独で用いる態様のみならず、複数のマイクロミキサーを直列に接続して使用してもよい。また、混合すべき流体が多い場合等では、複数のマイクロミキサーを並列に接続して使用してもよい。
一例として、図5に示すようなA半分とB半分とを結合することによって、図10に示すような外観を有するマイクロミキサーを製造し、その混合特性を評価した。実施例で用いたマイクロミキサーの仕様を表1に示す。
Figure 0004771151
混合特性の評価には、o−ニトロフェノールのクロロホルム溶液と塩基性緩衝溶液(NaOH/NaHCO)との反応からo−ニトロフェノレートが生成する反応系を利用した。換言すれば、流体Aとしてo−ニトロフェノールのクロロホルム溶液および流体Bとして塩基性緩衝溶液(NaOH/NaHCO)を用い、それらをマイクロミキサーで混合してo−ニトロフェノレートを生成させ、その生成量を測定することによって混合率を評価した。o−ニトロフェノールと塩基性緩衝溶液(NaOH/NaHCO)との反応は次のように表すことができる。
Figure 0004771151
評価は次のように行った。o−ニトロフェノールのクロロホルム溶液(1M)と塩基性緩衝溶液(NaOH/NaHCO)とをマイクロミキサーに供給することによってマイクロミキサーから得られる混合物Mmixerを、クロロホルムを含んだサンプル瓶に採取した。次いで、分光光度計(島津製作所製、UV−2200)によって混合物MmixerのUV吸収スペクトル(430nm)を測定し、混合物Mmixerの吸光度Amixerを求めた(即ち、マイクロミキサーで生成したo−ニトロフェノレートの量を求めた)。その一方、バッチ式反応容器を用いることによって、o−ニトロフェノールのクロロホルム溶液と塩基性緩衝溶液(NaOH/NaHCO)とを20分以上攪拌して反応させて混合物Mbatchを得た。次いで、その混合物MbatchのUV吸収スペクトル(430nm)を分光光度計(島津製作所製、UV−2200)によって測定し、混合物Mbatchの吸光度Abatchを求めた(即ち、バッチ式反応容器で生成したo−ニトロフェノレートの量を求めた)。そして、混合物Mbatchが十分に混合された状態であると仮定して、以下の式に示すように、吸光度Abatchに対する吸光度Amixerの割合からマイクロミキサーの混合率(%)を算出した。
混合率(%)=Amixer/Abatch×100
比較例として、マイクロミキサーの代わりに、内部に内径1mmのT字形状チャンネルを有するT型ミキサー(ステンレス製)を用い、その混合率(%)を同様に求めた。
図13に、供給する流体の流速をパラメーターとしたマイクロミキサー(実施例)およびT型ミキサー(比較例)の混合率の結果を示す。
図13から分かるように、実施例のマイクロミキサーでは、流速の増加に伴って混合率が増加し効率的な混合を達成することができたが、一方、比較例のT型ミキサーでは、混合率が約30%と低く、流速の増加に伴う混合率の増加は見られなかった。実施例のマイクロミキサーでは、流体の圧力損失を抑えつつ効率的な混合が達成できることを理解されよう。
本発明のマイクロミキサーは、原材料の攪拌・混合・反応を行うことができるので、化学産業にてファインケミカル等の生産に用いることができるだけでなく、医療産業、製薬産業、バイオ関連産業または食品産業など幅広い産業においても利用することができる。
図1Aは、流入チャンネル10a,10bを模式的に示した断面図である。 図1Bは、本発明のマイクロミキサーの原理を示した断面図であり、混合領域20が形成されるように流入チャンネル10a,10bを組み合わせた態様を示している。 図2A(a)は、流入チャンネル10aの横断面の最大寸法D10aおよび終端部12aの横断面の最小寸法D12aを模式的に示した断面図であり、図2(b)は、流入チャンネル10bの横断面の最大寸法D10bおよび終端部12bの横断面の最小寸法D12bを模式的に示した断面図である。 図2B(a)は、チャンネル10aの段差面14aの長さL14aおよび終端部12aの長さL12aを模式的に示した断面図であり、図2B(b)は、チャンネル10bの段差面14bの長さL14bおよび終端部12bの長さL12bを模式的に示した断面図である。 図2C(a)は、流体Aが流れる方向と段差面14aとが成す角度α14aを模式的に示した断面図であり、図2C(b)は、流体Bが流れる方向と段差面14bとが成す角度α14bを模式的に示した断面図である。 図2D(a)は、流入チャンネル10aの段差面14aと終端部12aとが成す角度β14aを模式的に示した断面図であり、図2C(b)は、流入チャンネル10bの段差面14bと終端部12bとが成す角度β14bを模式的に示した断面図である。 図2Eは、混合領域20が形成されるように流入チャンネル10a,10bを組み合わせた態様を模式的に示した断面図である。 図3は、流入チャンネル10aおよび流入チャンネル10bが少なくとも2つ設けられた態様を模式的に示す断面図である。 図4は、A半分の面50aおよびB半分の面50bを模式的に示した上面図である。 図5は、A半分およびB半分を示した斜視図である。 図6は、本発明のマイクロミキサーの分解斜視図であり、A半分とB半分とが結合される直前の態様を示している。 図7は、図4のA半分およびB半分をX方向から見た断面を模式的に示した図であって、図7(a)がA半分とB半分とを結合させる直前の態様を示し、図7(b)がA半分とB半分とが結合された後の態様を示している。 図8は、溝60aおよび連続突起70bを模式的に示した斜視図である。 図9は、複数の流出チャンネル30が設けられた面50aを模式的に示した上面図である。 図10は、本発明のマイクロミキサーの外観を示した斜視図である。 図11は、流入チャンネル10a,10bと流入管40a,40bとを接続するマイクロミキサー中のキャビティの横断面および流入チャンネル10a,10bの横断面を模式的に示した断面図である。 図12は、A半分の面50aおよびB半分の面50bを示した上面図であり、シール溝、ネジ穴、位置決めピンおよび位置決め穴を模式的に示している。 図13は、実施例および比較例の結果を示したグラフである。
符号の説明
10a…流体Aが流れる流入チャンネル、10b…流体Bが流れる流入チャンネル、12a…流体Aが流れる流入チャンネルの終端部、12b…流体Bが流れる流入チャンネルの終端部、14a…流体Aが流れる流入チャンネルの段差面、14b…流体Bが流れる流入チャンネルの段差面、20…混合領域、30…流出チャンネル、40a,40b…流入管、40c…流出管、50a…A半分の面、50b…B半分の面、60a…溝、70b…連続突起、80…シール溝、85…ネジ穴、90a…位置決めピンおよび90b…位置決め穴。

Claims (6)

  1. A半分とB半分とが結合されて成るマイクロミキサーであって、
    A半分の面50aには、少なくとも1つの溝60aが設けられ、溝60aにおいて少なくとも2つの流入チャンネル10aが溝60aの長手方向に沿って整列して終端していると共に、少なくとも1つの流出チャンネル30が終端しており、
    B半分の面50bには、少なくとも1つの連続突起70bが設けられ、連続突起70bの両側のそれぞれにおいて少なくとも2つの流入チャンネル10bが連続突起70bに沿って整列して終端しており、
    溝60aの長手方向の中央線と連続突起70bの長手方向の中央線とが一致するように、A半分の面50aとB半分の面50bとが接してA半分とB半分とが結合されることでマイクロミキサーが構成されており、これによって、マイクロミキサーの混合領域20が連続突起70bと溝60aとの相互の組み合わせから形成されており、
    混合領域20においては、流入チャンネル10aを流れる流体Aが衝突する段差面14bと、流入チャンネルBを流れる流体Bが衝突する段差面14aとが相互に斜めにずれた状態となっており、これによって、段差面14bに衝突した流体Aと段差面14aに衝突した流体Bとが混合領域20で混合されることになり、該混合された混合物が溝60aを介して流出チャンネル30へと流れて排出される、マイクロミキサー。
  2. 流入チャンネル10aを流れる流体Aは、連続突起70bに衝突して二手に分かれてそれぞれの流体A1およびA2が別個の隣接する混合領域20へと流入すると共に、
    流入チャンネル10bを流れる流体Bは隣接する2つの溝60aの間の領域に衝突して二手に分かれてそれぞれの流体B1およびB2が別個の隣接する混合領域20へと流入することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロミキサー。
  3. 流入チャンネル10aの横断面の最小寸法が連続突起70bの幅方向長さよりも大きく、流入チャンネル10bの横断面の最小寸法が隣接する2つの溝60aの間の距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロミキサー。
  4. 隣接する2つの溝60aの間の距離が、連続突起70bの幅方向長さに等しいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロミキサー。
  5. 流体Aが流れる方向と段差面14aとが成す角度α14aが、60°〜120°であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロミキサー。
  6. 流体Bが流れる方向と段差面14bとが成す角度α14bが、60°〜120°であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロミキサー。
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